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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお


( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

エネルギー代謝に関する調査研究

平成24年7月x日

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

平成14年度研究報告

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

Microsoft Word - 【HP用】170807_最終版_プレスリリース.docx

第6号-2/8)最前線(大矢)

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

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学位論文の要約

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Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

メディカルスタッフのための腎臓病学2版

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

博第265号

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

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犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

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シトリン欠損症説明簡単患者用

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

2011年度版アンチエイジング01.ppt

2006 PKDFCJ

核内受容体遺伝子の分子生物学

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報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

スライド 1

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

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スライド 1

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

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この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

説明書

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

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[PRESS RELEASE] 2011 年 4 月 26 日東京大学医学部附属病院 経口糖尿病薬の副作用による浮腫発症のメカニズムを同定 経口糖尿病薬として知られるチアゾリジン誘導体は 細胞核内の受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ (PPAR) に結合し 代謝に関連する遺伝子の転写を調節してインスリン作用を増強させます この働きによってインスリン抵抗性が改善し血糖値も下がるため 糖尿病の治療に広く使用されています しかし副作用として体液貯留を伴う浮腫を生じることがあり また心不全が悪化することもあるため 心機能が著しく低下している場合には使用できません チアゾリジン誘導体による浮腫発症のメカニズムとして 腎臓の遠位尿細管ナトリウム輸送体遺伝子の発現が増加することが原因の一つと考えられてきましたが詳細は不明でした この度 東京大学医学部附属病院腎臓 内分泌内科講師関常司と教授藤田敏郎らのグループは 近位尿細管では遠位尿細管と異なり PPARに結合したチアゾリジン誘導体が遺伝子転写の調節を介さずに速やかに腎臓のナトリウム再吸収を亢進させることを発見しました ( 米国雑誌 Cell Metabolism オンライン版にて日本時間 5 月 4 日午前 1 時に発表 ) この発見は これまで主に遺伝子転写調節を介して働くと考えられてきた PPAR の新たな生理機能を明らかにしたもので チアゾリジン誘導体による浮腫発症の予防や 浮腫を起こさない新しい糖尿病薬の開発につながることが期待されます 研究の背景 ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ (PPAR) は核内受容体の一種であり 細胞の核内で種々の遺伝子の転写を調節しています 体内に広く分布しており 特に脂肪組織においては脂肪細胞の分化誘導 ( 分化を引き起こすこと ) や アディポサイトカインと呼ばれる生理活性物質の産生などを調節します チアゾリジン誘導体 ( 用語解説 1) がPPAR に結合すると アディポサイトカインの中でもインスリンへの感受性を亢進させるアディポネクチンの産生が増加することなどにより インスリン作用が増強します 肥満を伴う 2 型糖尿病ではインスリン抵抗性 ( 用語解説 2) を示すことが多く このような場合にチアゾリジン誘導体は特に大きな血糖低下作用を発揮します しかしチアゾリジン誘導体は副作用として体液貯留を引き起こし 約 10% の症例で浮腫を生じることが知られています また

体液貯留によって心不全が増悪することもあり 心機能の著しく低下した症例では使用できません チアゾリジン誘導体による浮腫発生のメカニズムの一つとして 腎臓の遠位尿細管 ( 用語解説 3) でのナトリウム輸送体遺伝子の発現増加が提唱されていました 遠位尿細管ナトリウム輸送体遺伝子の中でも特にナトリウムチャンネル (ENaC) の発現が増加することにより 遠位尿細管でのナトリウム再吸収が亢進し 浮腫が生じると考えられていました しかし 当初浮腫発症に関与すると考えられたナトリウムチャンネルについてはその後否定的な報告がなされました また一般に遠位尿細管でのナトリウム輸送だけが亢進しても近位尿細管 ( 用語解説 4) のナトリウム輸送は抑制されて浮腫が起きないことが多いため 浮腫発症の詳細は不明でした 研究の内容 この度 当院腎臓 内分泌内科講師関常司と同教授藤田敏郎らのグループはチアゾリジン誘導体が PPARによる遺伝子転写調節を介さない細胞内情報伝達経路を使って腎臓の近位尿細管におけるナトリウム輸送を亢進させることを明らかにしました 主に遺伝子転写を調節すると考えられていた PPARが 腎臓の近位尿細管において遺伝子転写調節を介さない迅速なナトリウム輸送刺激シグナルを伝達することが初めて示されました 近位尿細管では管腔 ( 尿 ) 側の細胞膜にナトリウム プロトン交換輸送体 NHE3( 用語解説 5) が発現し 反対 ( 血管 ) 側の細胞膜にはナトリウム 重炭酸共輸送体 NBCe1( 用語解説 6) が発現しています これらの輸送体の働きにより近位尿細管では糸球体で濾過されたナトリウムの約 以上を再吸収しています ラットやウサギの近位尿細管にチアゾリジン誘導体を作用させると数分以内に NHE3 と NBCe1 輸送体の機能が著明に亢進しました 輸送体機能亢進のメカニズムを詳細に検討したところ チアゾリジン誘導体と結合した PPARが Src( 用語解説 7) などの細胞内情報伝達物質を介して迅速に刺激シグナルを伝えていることがわかり 同様の現象はヒトの近位尿細管でも確認されました 一方 PPARを発現していないマウス由来の培養細胞ではこうした刺激シグナルは認めませんでしたが PPAR 遺伝子を発現させると刺激シグナルが回復しました またこの細胞に遺伝子転写調節機能をなくした PPAR 遺伝子を発現させても 同様に刺激シグナルが回復しました しかしチアゾリジン誘導体が結合しないようにした PPAR 遺伝子を発現させた場合には 刺激シグナルが回復しませんでした さらに Src を発現していない細胞では刺激シグナルを認めませんでした 以上の詳細な解析により 近位尿細管におけるチアゾリジン誘導体の刺激シグナルには PPARと Src の結合が必要ですが PPARの遺伝子転写調節機能は必要としないことが明らかにされました すなわちチアゾリジン誘導体は 近位尿細管と遠位尿細管のナトリウム再吸収をそれぞれ異なるメカニズムによって亢進させるため 浮腫を起こしやすいことが判明しました

今後の展望 チアゾリジン誘導体が遠位尿細管だけでなく近位尿細管のナトリウム輸送を亢進させることが明らかになったため より慎重な浮腫の早期対策が必要であることが明らかになりました また PPARが遺伝子転写調節を介さないシグナルを伝達することが明らかになったため 浮腫を起こさない新しい糖尿病薬の開発につながることも期待されます 用語解説 1) チアゾリジン誘導体当初血糖降下作用を基に開発された経口糖尿病薬で その後 PPARに結合しインスリン作用を増強することが明らかになった 日本ではピオグリタゾン ( 商品名アクトス ) が使用されている 2) インスリン抵抗性肥満や炎症などによりインスリンの作用が低下した状態 3) 遠位尿細管腎臓の構成単位であるネフロンの後半部分 糸球体で濾過されたナトリウムのうち数 % を再吸収する 4) 近位尿細管腎臓の構成単位であるネフロンの初めの部分 糸球体で濾過されたナトリウムのうち約 60% 以上を再吸収する 5) ナトリウム プロトン交換輸送体 NHE3 近位尿細管の管腔側でプロトン分泌と交換にナトリウムを再吸収する輸送体 6) ナトリウム 重炭酸共輸送体 NBCe1 近位尿細管の血管 ( 基底 ) 側で重炭酸と一緒にナトリウムを再吸収する輸送体 7)Src 蛋白質のチロシン残基をリン酸化する酵素の一種で 細胞増殖や輸送体活性調節などのシグナル伝達系として働く

発表雑誌 雑誌名 : Cell Metabolism 論文名 : Thiazolidinediones enhance sodium-coupled bicarbonate absorption from renal proximal tubules via PPAR-dependent non-genomic signaling 掲載日時 : 日本時間 5 月 4 日午前 1 時 ( 米国東部標準時間 5 月 3 日正午 ) にオンライン版に掲載 注意事項 報道の解禁時間は 日本時間 5 月 4 日 ( 水 ) 午前 1 時 ( 米国東部標準時間 5 月 3 日 ( 火 ) 正午 ) です 新聞掲載は 5 月 4 日朝刊以降解禁となりますのでご注意ください 参照 URL Cell Metabolism 誌ホームページ (http://www.cell.com/cell-metabolism/home) -------------------------------------------------------------------------------- 本件に関するお問合せ先 東京大学医学部附属病院腎臓 内分泌内科担当 : 関常司電話 :03-3815-5411( 内線 :33008) FAX:03-5800-8806 E-mail:georgeseki-tky@umin.ac.jp 取材に関するお問合せ先 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター担当 : 小岩井 渡部電話 :03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp --------------------------------------------------------------------------------

Endo Y et al., Cell Metabolism 2011 HCO 3 - Na + H + Na + illustrated by H. Yamada