肺炎球菌 / レジオネラ尿中抗原の感度と特異度 (090206 140724) (140724) 研修医が経験したレジオネラ肺炎症例は 1 群ではなかったとのこと 確かに 臨床的 に問題になるのは 1 群だけではない 文献 9 の内容を追加記載 市中肺炎は診療所レベルでも良くみる疾患の一つである ガイドラインでも 肺炎の迅速診断キ ットの使用を推奨している 肺炎球菌 レジオネラ尿中抗原の感度と特異度を調べてみた ( 参考文献 8 より引用 ) 肺炎球菌 参考文献 1 には studies of 215 patients (31 with culture-proven S. pneumoniae) found 86-90% sensitivity and 71-94% specificity (JAMA 1999 Oct 6;282(13):1218) と記載されている どちらかと いうと特異度の方が高そうだが幅がある 参考文献 2 には 感度と特異度に関して以下のような記載がある
Dominguez らが 2001 年に報告した成績では本キット (Binax) の感度は 80.4%(41/51) 特異度は 97.2%(69/71) であったとしている 104 例の市中肺炎を対象とした同様の検討においても, 感度 77.7%, 特異度 98.8% という成績が報告されている 敗血症を合併した肺炎球菌感染症 107 症例におけるプロスペクティブな検討においても, 尿中抗原検査の感度は 82%, 特異度は 97% であったことが報告されている 大体 感度が 80% くらいで 特異度が 95% 程度だとすると 陽性尤度比は 16 陰性尤度比は 0.21 と計算できる 注意すべき点は小児において偽陽性が多いことである 上咽頭のバリアーが未熟であったり IgA が低いこと 潜在的な中耳炎が関連しているとも言われているようだ また 抗原は一度陽性になると 数週間は排泄されるため 既疾患なのか新規発症なのかの判断を慎重に行う必要がある レジオネラ 参考文献 3 には urine antigen test highly sensitive and specific for L. pneumophila serogroup 1 which causes most legionella infection in US, but does not diagnose significant minority of legionella infections caused by other serotypes と記載されており 感度と特異度は高いというだけで 具体的な数値は言及していない 参考文献 2 には以下のように記載されている Dominguez らはレジオネラ肺炎患者の尿を用いて Binax 社と Biotest 社の ELISA 法を比較し それぞれ感度が 63.8% 66.7% であったこと 尿を濃縮することによりこれが 88.9% 86.7% に上昇することを報告している Helbig らは同様の study を Binax NOW Binax EIA Biotest EIA で比較し, 感度がそれぞれ 79.7% 79.1% 83.4% であったとしている ( この論文に関しては後で考察 ) 1999 年にオランダのフラワー展示場で発生したレジオネラ肺炎集団感染事例の患者 (188 例 ) を対象とした検討において,Binax NOW Binax EIA Biotest EIA の感度はそれぞれ 72% 69% 71% であったことが報告されている 感度は大体 70% 前後といったところと思うが 特異度が不明 参考文献 4 では以下のように示さ れており これを元に感度と特異度を計算すると 感度は 47% 特異度は 100% である なんだか
感度は低すぎるし 特異度は高すぎるような気も ( 参考文献 4 より引用 ) Clinical Queries でヒットした論文を適当に眺めてみても 比較的特異度が高い研究が多い 参考文献 5 でも Sensitivity and specificity reach 80 % and 100 %, respectively. と記載されている 参考文献 6 でも Sensitivity and specificity were estimated as 82.9% and 99.0%, respectively, for the SAS Legionella Test, and 91.4% and 100%, respectively, for the Binax Now urinary antigen test. と感度は結構高い 参考文献 7 では特異度は 97.1% としている レジオネラ尿中抗原検査の注意点として 1 型のレ ジオネラしか検出しない ( それでも レジオネラ肺炎の原因の 50% は 1 型である ) 全てのレジオネ ラを含めると感度が 80% 程度まで下がっていることが分かる ( 参考文献 7 より引用 ) 文献 9 は感染の状況によっても感度が異なることを示している トータルでの感度は 80% くらいだ が 市中感染 旅行関連の感染 院内感染のケースで感度が異なるようだ 安易に否定できない という点は十分に肝に銘じておきたい
( 参考文献 9 より引用 ) 仮に 感度を 80% 特異度を 95% とすると 陽性尤度比は 16 陰性尤度比は 0.21 と計算できる ( 肺炎球菌も同じ感度 特異度で計算した ) 肺炎球菌のときと同様に 発症後数週間は陽性を示すので解釈 ( 偽陽性 ) に注意する どちらの検査も有用なことは間違いないが 陰性だからと言って必ずしも除外は出来ない検査で あることがわかった 最近の感染の既往があるときには偽陽性である可能性も考慮する必要があ る 使うときには十分に注意して利用したい 参考文献 1. Pneumonia Dynamed. Updated 2009 Jan 28 12:32 PM 2. 舘田一博. 肺炎球菌レジオネラ. 臨床と微生物.34(4):267-272.2007 3. Legionnaire's disease. Dynamed. Updated 2009 Jan 26 02:53 PM 4. レジオネラ凝集反応用抗原 生研 添付文書 5. Ewig S, Tuschy P, Fätkenheuer G. Diagnosis and treatment of legionella pneumonia. Pneumologie. 2002 Nov;56(11):695-703. 6. Diederen BM, Peeters MF. Evaluation of the SAS Legionella Test, a new immunochromatographic assay for the detection of Legionella pneumophila serogroup 1 antigen in urine. Clin Microbiol Infect. 2007 Jan;13(1):86-8. 7. Helbig JH, Uldum SA, Lück PC, Harrison TG. Detection of Legionella pneumophila antigen in urine samples by the BinaxNOW immunochromatographic assay and comparison with both Binax Legionella Urinary Enzyme Immunoassay (EIA) and Biotest Legionella Urin Antigen EIA. J Med Microbiol. 2001 Jun;50(6):509-16.
8. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 日本呼吸器学会ホームページ http://www.jrs.or.jp/home/modules/glsm/index.php?content_id=16 9. Helbig JH, Uldum SA, Bernander S, Lück PC, Wewalka G, Abraham B, Gaia V, Harrison TG. Clinical utility of urinary antigen detection for diagnosis of community-acquired, travel-associated, and nosocomial legionnaires' disease. J Clin Microbiol. 2003 Feb;41(2):838-40. PubMed PMID: 12574296; PubMed Central PMCID: PMC149701.