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東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 9-59, 23 向精神作用を有する薬物の分析調査について ( 平成 2 年度 ) 中嶋順一 a,, 鈴木仁 a, 吉田正雄 a, 長嶋真知子 a a, 清水雅子, 牛山慶子 a, 高橋美佐子 a, 植村望美 a, 金井千恵子 a, 阿部朋弘 a, 荒金眞佐子 a, 深谷晴彦 b, 濱野朋子 a, 守安貴子 a a, 中江大 平成 2 年度に行った市販製品中における向精神作用を有する薬物の調査結果を報告する. 薬物の機器分析は, 主にフォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフィー (LC/PDA), 電子イオン化質量分析計付ガスクロマトグラフィー (GC/EI-MS) を用い, 必要に応じて核磁気共鳴 (MR) スペクトル測定法及び単結晶 X 線構造解析法にて構造解析を行った. 調査した 製品のうち, 全ての製品から何らかの薬物が検出された. 検出された薬物は, 総数 35 種の薬物が検出され, そのうち新たに検出された薬物 ( 新規検出薬物 ) は 26 種, 薬事法指定薬物 9 種であった. 市販製品の分析の結果, 新規検出薬物はカチノン系薬物及びその他類似薬物が 8 種 (-ethylmethcathinone, - methylbuphedrone, MPHP, α-pvt, 5-IAI, methiopropamine, ethylphenidate, AH-792), カンナビノイド系薬物は 8 種 (AM2232, JWH-22--(-pentenyl) analog, JWH-22--(5-hydroxypentyl) analog, EAM-22, -methoxy-am22, UR-, XLR-, A-836339, APICA -(5-fluoropentyl) analog, ADBICA, EI, APIACA -(5-fluoropentyl) analog, AB-PIACA, AB- FUBIACA, ADB-FUBIACA, PB-22, 5F-PB-22, BB-22) の併せて 26 種であった. 特に,A-836339 は分子内に硫黄原子を含むカンナビノイド系薬物化合物としては初めての検出例で その構造解析には単結晶 X- 線構造解析法が有用であった. キーワード : 違法ドラッグ, 指定薬物,LC/PDA,GC/EI-MS, 単結晶 X- 線構造解析. はじめに昨今, 向精神作用を有する薬物, いわゆる違法 ( 脱法 ) ドラッグ等の乱用による健康被害が発生し, 国内外において大きな社会問題となっている. これらの問題に適切に対処するためには, 次々に検出される薬物の機器分析データが極めて重要である. 東京都では, 薬物乱用による健康被害の未然防止を目指し, 平成 8 年度から違法 ( 脱法 ) ドラッグの流通実態調査を行っている. 本報では平成 2 年度に行った 製品の調査で, 新たに検出された薬物 26 種のフォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフィー (LC/PDA) 及び電子イオン化質量分析計付ガスクロマトグラフィー (GC/EI-MS) を中心とした機器分析データと, 併せて単結晶 X- 線構造解析法による硫黄原子を含む薬物の構造決定例について報告する. 実験方法. 試料平成 2 年 月 ~ 平成 25 年 3 月に当センターに搬入された 製品を試料とした. なお, これらは都内の違法ドラッグ販売店, 露店, あるいはインターネットを通じ購入され たもので, それらの性状と製品数は, 液体が29 製品, 粉末が22 製品, 防虫シートと称するものが2 製品, 植物片が57 製品であった. なお植物片はいわゆる脱法ハーブと称されるものであった. 2. 標準品カチノン系薬物及びその他類似薬物 8 種 [- ethylmethcathinone (), -methylbuphedrone (2), MPHP (3), α-pvt (), 5-IAI (5), methiopropamine (6), ethylphenidate (7) 及びAH-792 (8)] の化学構造を Fig. に示した. カンナビノイド系薬物 8 種 [AM2232 (9), JWH-22--(-pentenyl) analog (), JWH-22--(5-hydroxypentyl) analog (), EAM- 22 (2), -methoxy-am22 (3), UR- (), XLR- (5), A-836339 (6), APICA -(5-fluoropentyl) analog (7), ADBICA (8), EI (9), APIACA -(5-fluoropentyl) analog (2), AB-PIACA (2), AB-FUBIACA (22), ADB- FUBIACA (23), PB-22 (2), 5F-PB-22 (25) 及びBB-22 (26) の化学構造をFig. 2, 3に示した. 薬物 -3,5-5 及び7-26 はCayman Chemical 社から購入したものを使用した. 薬物 は当センターにて合成し構造決定したものを使用し, 薬 a 東京都健康安全研究センター薬事環境科学部医薬品研究科 69-73 東京都新宿区百人町 3-2- b 東京薬科大学機器中央分析センター 92-392 東京都八王子市堀之内 32-

5 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 23 物 6 は製品から抽出し, 各種機器分析を用い構造決定した ). : -Ethylmethcathinone 2: -Methylbuphedrone 3: MPHP : α-pvt Cl Cl H 5: 5-IAI 6: Methiopropamine 7: Ethylphenidate 8: AH-792 Fig. Chemical structures of cathinone derivatives (-) and other category drugs (5-8) 9: AM2232 : JWH-22--(-pentenyl) analog : JWH-22--(5-hydroxypentyl) analog F 2: EAM-22 S F 3: -methoxy-am22 : UR- 5: XLR- 6: A-836339 7: APICA -(5-fluoropentyl) analog 8: ADBICA 9: EI Fig.2. Chemical structures of cannabinoids (9-2) 2: APIACA -(5-fluoropentyl) analog H 2 H F 2: AB-PIACA 22: AB-FUBIACA 23: ADB-FUBIACA 2: PB-22 F 25: 5F-PB-22 26: BB-22 Fig.3. Chemical structures of cannabinoids (2-26)

東京健安研セ年報,6, 23 5 2. 試薬核磁気共鳴 (MR) スペクトル測定法の溶媒として重水素化クロロホルム ( 和光純薬工業株式会社製 ) を用い,.% ギ酸含有アセトニトリルはLC/MS 用, その他の試薬はHPLC 用または特級を用いた. 3. 試料溶液の調製液体試料は, その µlに5% メタノールまたはアセトニトリル9 µlを加えて, それぞれLC/PDAまたはGC/EI- MSの試料溶液とした. 粉末試料は,.-.3 mgを量り5% メタノールまたはアセトニトリルを用いて抽出し, それぞれLC/PDAまたはGC/EI-MSの試料溶液とした. 防虫シートと称する試料は, 約 cm 四方を製品から切り取り, アセトニトリル mlを加え抽出し,lc/pdaまたはgc/ei-ms の試料溶液とした. 植物片試料は, 全量を取り出し, 四分法によってわけた/ 量 ( 約.75 g) を乳鉢に採り, アセトニトリルを約 5 ml 加え, 乳棒で磨り潰し, 抽出液を 5 mlのメスフラスコに移した. 同じ操作を繰り返し, 同液で全量 5 mlとした. いずれの抽出液も µmのメンブランフィルターでろ過し,lc/pda 及びGC/EI-MS 用試験溶液とした. 各試料溶液は, 使用する分析機器の分析感度に合わせて適宜希釈して使用した.. 分析方法 2-5) LC/PDAは, 既法に準じ, カチノン系薬物及びその他類似薬物 (-8) はリン酸酸性下ラウリル硫酸ナトリウム (SDS) を用いたイオンペア法による分析を実施した. 条件は以下のとおりである. 機器,Alliance PDA System ( ウォーターズ株式会社製 ); カラム,L-column(5 mm.6 mm i.d., 粒径 5 µm, 一般財団法人化学物質評価研究機構製 ); カラム温度, ; 溶離液 A, アセトニトリル / 水 / リン酸 (3:7:) ドデシル硫酸ナトリウム (SDS)2.8 g/l; 溶離液 B, 同 (7:3:)SDS 2.8 g/l; グラジエント条件, 分溶離液 A 75 %, 3 分溶離液 A 75 %; 流量, ml/ 分 ; 注入量, µl; 測定波長,2 ; データ解析,Empower 2 ( ウォーターズ株式会社製 ). カンナビノイド系薬物 (9-26) はギ酸アンモニウム水溶液 -ギ酸含有アセトニトリルの移動相を用いて分析した. その条件は以下のとおりである. 機器,ACQUITY UPLC PDA system ( ウォーターズ株式会社製 ); カラム ACQUITY UPLC HSS T3.8 µm (5 mm 2. mm i.d., ( ウォーターズ株式会社製 ); カラム温度, ; 溶離液 A,5 mm ギ酸アンモニウム緩衝液 (ph = 3.5 ); 溶離液 B,. % ギ酸含有アセトニトリル (LC/MS 用 ); グラジエント条件, - 分, 溶離液 A/B = 99/, - 6.85 分, 同 99/ /9, 6.85 8.85 分, 同 /9 /. ; 流量,.6 ml/ 分 ; 注入量, µl; 測定波長,2 ; データ解析,Empower 2 ( 同上 ). GCはGC/EI-MS(789A/5975C, アジレント テクノロ ジー株式会社製 ) を用い分析した. その条件は以下のとおりである. カラム及びカラム温度,HP-5MS(3 m mm i.d., 膜厚 µm, アジレント テクノロジー株式会社製 ),5 ( 分 ) / 分 35 ( 分 ); キャリアーガス,He; ガス流量, ml/ 分 ; 注入法, スプリット ( スプリット比 :) またはスプリットレス ; 注入口温度, 25 ; 注入量, µl; イオン化法,EI 法 ; イオン化電圧, 7 ev; トランスファーライン温度,25 ; 四重極温度, 5 ; イオン源温度,25 ; データ解析, ChemStation ( アジレント テクノロジー株式会社製 ). 薬物の構造決定は,MR(JM-ECA5 型, 日本電子株式会社製 ), 高分解能精密質量測定装置 (Micro-Tof, ブルカー ダルトニクス株式会社製 ) 及び単結晶 X- 線構造解析装置 (Smart Apex Ⅱ CCD diffractometer, ブルカー ダルトニクス株式会社製 ) を用いて行った. 結果及び考察. 平成 2 年度薬物分析調査結果 6- Table 及び2 に平成 2 年度の調査結果を示した. 文献 2) を基に標準品を整備し, これを用いて機器分析を実施した. 結果を概観すると, 検出された薬物数は26 種類に達することが明らかとなった. 薬物 3 等のように 種類の製品で検出されるものもあれば, 薬物,2,5 及び 2のように 種類以上の製品に検出されるものもあり, これらは市販製品での薬物の流行状況が反映される結果と考察される. またTable 3 に示すとおり, 指定薬物 9 種類のいずれかまたは複数を含む製品が流通していることも明らかとなった. 規制される薬物が増加するに伴い, 規制薬物と未規制物質を誤認することなく, 迅速に判別することがより困難となってきている. また, ひとつの製品に複数の薬物が検出されることも多く, 分析を更に難しくしている要因となっている. 現在, 薬物 -26 はいずれも規制物質とされており, 今後これらが市販品に含有されることが想定されるため, 以下にLC/PDA 及びGC/EI-MSによる分析結果を示す. なお, 検査現場においては, これら複数の分析手法を併用し, 薬物を誤認することがないよう検査を実施している. 2. 平成 2 年度新規検出薬物の分析データ () LC/PDA Fig. にカチノン系薬物及びその他類似薬物 (-8) の保持時間とPDAスペクトルを示した. いずれの薬物もイオンペア法条件下において検出が可能であった. 薬物 及び2 は分子量が同じで, 化学構造の差異はごくわずかであるが, 保持時間の差は約 分あり, 両者の識別は可能であった. PDAスペクトルを比較すると, 薬物 (-3) はカチノン系に属し,262 から265 に極大のスペクトルを示し, これらのスペクトルパターンは酷似していた. 一方, 薬物 (-8) は, カチノン系薬物とは基本骨格が異なり, そ

52 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 23 Table. The results of newly detected illegal drugs [cathinone derivatives (-) and other category drugs (5-8)] found in the fiscal year 22. The number of o. Common name Chemical name samples detected -Ethylmethcathinone -(-ethylphenyl)-2-(methylamino)propan--one 2 -Methylbuphedrone 2-(methylamino)--(-methylphenyl)butan--one 8 3 MPHP -(-methylphenyl)-2-(pyrrolidin--yl)hexan--one α-pvt 2-(pyrrolidin--yl)--(thiophen-2-yl)pentan--one 5 5-IAI 5-iodoindan-2-amine 3 6 Methiopropamine 2-methylamino--(thiophen-2-yl)propane 3 7 Ethylphenidate Ethyl 2-phenyl-2-(piperidin-2-yl)acetate 8 AH-792 3,-dichloro--((-(dimethylamino)cyclohexyl)methyl)benzamide Table 2. The results of newly detected illegal drugs [cannabinoids (9-26)] found in the fiscal year 22. o. Common name Chemical name The number of samples detected 9 AM2232 5-[3-(-naphthoyl)-H-indol--yl]pentanenitrile 2 JWH-22--(-pentenyl) analog (-methylnaphthalen--yl)[-(pent--en--yl)-h-indol-3-yl]methanone 2 JWH-22 -(5-hydroxypentyl) analog [-(5-hydroxypentyl)-H-indol-3-yl](-methylnaphthalen--yl)methanone 2 EAM-22 (-ethylnaphthalen--yl)[-(5-fluoropentyl)-h-indol-3-yl]methanone 6 3 -Methoxy-AM22 [-(5-fluoropentyl)-H-indol-3-yl](-methoxynaphthalen--yl)methanone 2 UR- (2,2,3,3-tetramethylcyclopropan--yl)(-pentyl-H-indol-3-yl)methanone 5 XLR- [-(5-fluoropentyl)-H-indol-3-yl](2,2,3,3-tetramethylcyclopropan--yl)methanone 3 6 A-836339 -[3-(2-methoxyethyl)-,5-dimethyl-2(3H)-thiazolylidene]-2,2,3,3- tetramethylcyclopropanecarboxamide 7 APICA -(5-fluoropentyl) analog -(-adamantyl)--(5-fluoropentyl)-h-indole-3-carboxamide 8 ADBICA -(-amino-3,3-dimethyl--oxobutan-2-yl)--pentyl-h-indole-3-carboxamide 9 EI -(naphthalen--yl)--pentyl-h-indole-3-carboxamide 2 APIACA -(5-fluoropentyl) analog -(-adamantyl)--(5-fluoropentyl)-h-indazole-3-carboxamide 2 AB-PIACA -(-amino-3-methyl--oxobutan-2-yl)--pentyl-h-indazole-3-carboxamide 6 22 AB-FUBIACA -(-amino-3-methyl--oxobutan-2-yl)--(-fluorobenzyl)-h-indazole-3- carboxamide 23 ADB-FUBIACA -(-amino-3,3-dimethyl--oxobutan-2-yl)--(-fluorobenzyl)-h-indazole-3- carboxamide 2 PB-22 Quinolin-8-yl -pentyl(h-indole)-3-carboxylate 3 25 5F-PB-22 Quinolin-8-yl -(5-fluoropentyl)-H-indole-3-carboxylate 26 BB-22 Quinolin-8-yl -(cyclohexylmethyl)-h-indole-3-carboxylate 3 Table 3. The results of regulated drug-compounds as designated substances found in the fiscal year 22. Common name Chemical name bk-mdea 2-ethylamino--(3,-methylenedioxyphenyl)propan--one Desethylpyrovalerone -(-methylphenyl)-2-(pyrrolidin--yl)propan--one Pentedrone 2-(methylamino)--phenylpentan--one α-pbp -phenyl-2-(pyrrolidin--yl)butan--one α-pvp -phenyl-2-(pyrrolidin--yl)pentan--one AM22 [-(5-fluoropentyl)-H-indol-3-yl] (naphthalen--yl)methanone AM22 {-[(-methylpiperidin-2-yl)methyl]-h-indol-3-yl}(naphthalen--yl)methanone AM2233 (2-iodophenyl){-[(-methylpiperidin-2-yl)methyl]-H-indol-3-yl)methanone MAM-22 [-(5-fluoropentyl)-H-indol-3-yl] (-methylnaphthalen--yl)methanone The number of samples detected のスペクトルパターンも大きく異なった. Fig. 5 及びFig. 6 にカンナビノイド系薬物 (9-26) の保持時間とPDAスペクトルを示した. いずれの薬物もギ酸アンモニウム水溶液 - ギ酸含有アセトニトリルを移動相とした条件下で検出可能であった. ナフトイルインドール系に属 する薬物 (9-2) は, いずれも22 から223 及び33 から35 で極大を持つ特徴的なスペクトルパターンを示した. 薬物 3もナフトイルインドール系に属し, そのナフタレン骨格にメトキシル基がついたもので22 から23 に変曲点を示すスペクトルパターンが特徴的で

東京健安研セ年報,6, 23 53 あった. 薬物 ( 及び5) は, いずれもシクロプロパン骨格を有する薬物で,29, 25 付近及び32 付近に極大を示した. 薬物 6のスペクトルは,297 で極大を示し, 他の薬物とパターンが異なった. なお,6の詳細については後述する. 薬物 (7 及び8) は, 共にインドール骨格を有し, 両者は酷似するスペクトルパターンを示した. 薬物 9はインドール骨格とナフタレン骨格がアミド結合したもので,299 に極大となるスペクトルを示した. 薬物 (2-23) は, 共にインダゾール骨格を有し,3 から32 にかけて極大を示した. 薬物 (2-26) は quinolinyl carboxylates として報告のある薬物で 7), 分子内にキノリン骨格を有する. これらはいずれも2 から 233 及び293 付近に極大となるスペクトルパターンを示した. を製品から探し出し, 測定した結果, Fig. に示す構造であることが判明した. 文献調査の結果, 本化合物は29 年にA-836339という名称で報告があり, 医薬品開発を目途に研究されていたことが判明した, ). 現在, 違法薬物の構造決定に際しては,LC,GC, 高分解能精密質量測定装置やMRを併用して実施しているが, 薬物 6 のように分子内に, 硫黄原子が存在するとその構造解析は極めて難しくなる. 近年, 違法 ( 脱法 ) ドラッグに含有される薬物の構造は複雑になってきており,23 年に公表された国連薬物犯罪事務所発行の報告書 5) では, 分子内に硫黄を有する薬物だけでなく, 臭素やセレンを含有する薬物も報告されている. これらの薬物の特定は従来の手法では困難であり, 単結晶 X- 線構造解析装置を用いる方法が極めて有効であると考察される. (2) GC/EI-MS 新規検出薬物 (-26) の保持時間とマススペクトルパターンをFig. 7-9 に示した. これらの薬物 (-26) はいずれも GC/EI-MSにより分析可能であった.Fig. 7 に示す薬物のうち, 薬物 5を除くものは,-α 位の開裂に由来する m/z が顕著に確認された. この現象は薬物の識別にも応用することができ, 例えば, 薬物 及び2 は分子量が同じで, 保持時間はいずれも約 3 分であった. しかし, ベースピークが m/z 58 及び72でそれぞれ異なるため両者の識別は可能であった. Fig. 8-9 に示す薬物については, カルボニル基とα 炭素間での開裂によるフラグメントが強く検出される特徴が確認された. この特徴は薬物の同定または新規薬物の構造解析に応用可能である. 以上のLC/PDA 及びGC/EI-MSによる各薬物の分析結果は, 機器に搭載したライブラリーソフトに登録し, 迅速に検索照合できるシステムを構築した. これは今後違法薬物の迅速な同定に活用できる. 2. 単結晶 X- 線構造解析装置によるA-836339 の構造決定薬物 6 の精密質量は,[M+H] + が3.78 であり, 解析の結果, 組成式はC 6 H 26 2 2 S であった. 本薬物に相当するものは, これまでの当センター調査で検出例がなく, 新規薬物であることが判明した. そこで, 各種 MRを測定し, 構造を推定した結果, テトラメチルシクロプロパン骨格, カルボニル基に由来する炭素, メトキシル基, 窒素原子に結合するメチレン骨格が示唆された. しかし, 硫黄原子の分子内での位置を正確に特定し化学構造を確定させることは,MRでは難しいと判断された. そこで, 単結晶 X- 線構造解析装置による構造解析を試みたところ構造が確定できたので, その概要を以下に示す. 本装置は薬物が単結晶の状態であれば, 構造を確実に決定できるものであり, 最も信頼できる構造解析手法のひとつとして評価されている 3). そこで単結晶と思われるもの まとめ. 平成 2 年度に搬入された 製品について, 向精神作用を有する薬物の分析調査を行った結果, いずれの製品からも何らかの薬物が検出された. 検出薬物の総数は35 種であり, そのうち新規検出薬物は26 種, 薬事法指定薬物は9 種であった. 2. 新規検出薬物については標準品入手に努め,LC/PDA とGC/EI-MSを中心としたライブラリーの更なる充実を図った. 3. 硫黄原子を含む新たな薬物が確認され, 従来の構造決定の方法では対応が難しいことが判明した. ドラッグとして使用される薬物の化学構造は複雑となる傾向があり, 単結晶 X- 線構造解析は, 新たな手法として有用であることが判明した. 文献 ) Uemura,., Fukaya, H., Kanai C., et al.: Forensic Toxicol., 32, 5-5, 2. 2) 鈴木仁, 守安貴子, 長嶋真知子, 他 : 東京健安研セ年報,6, 63-72, 2. 3) 長嶋真知子, 鈴木仁, 守安貴子, 他 : 東京健安研セ年報,62, 99-5, 2. ) 吉田正雄, 鈴木仁, 高橋美佐子, 他 : 東京健安研セ年報,62, 7-, 2. 5) 吉田正雄, 鈴木仁, 中嶋順一, 他 : 東京健安研セ年報,63, -2, 22. 6) Uchiyama,., Kawamura, M., Kikura-Hanajiri, R., et al.: Forensic Toxicol., 3 (2), -25, 22. 7) Uchiyama,., Matsuda, S., Kawamura, M., et al.: Forensic Toxicol.,3. 223-2, 23. 8) Brandt, S.D., Sumnall, H.R., Measham, F, et al.: Drug Test Anal.2(8):377-382, 2. 9) Uchiyama,., Kawamura, M., Kikura-Hanajiri, R., et al.: Forensic Sci Int., :2-32, 23. ) Sauer, C., Hoffmann, K., Schimmel, U., et al.: Forensic

5 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 23 Sci Int., 28:e2 5, 23. ) http://www.emcdda.europa.eu/attachements.cfm/ att_38_e_snapshotsummary.pdf (23 年 9 月 3 日現在, なお本 URLは変更または抹消の可能性がある ) 2) https://www.europol.europa.eu/sites/default/files/ publications/emcdda-europol_annual_report_ 2_22_final.pdf (23 年 9 月 3 日現在, なお本 URL は変更または抹消の可能性がある ) 3) oi, L. Principles of X-Ray Crystallography. xford Univ. Press, 2. ) Yao, B.B., Hsieh, G., Daza A.V., et al.: J. Pharmacol. Exp. Ther., 328:-5, 29. 5) The challenge of new psychoactive substances, United ations office on Drugs and Crime, 23. 9.87..35 26.8 : -Ethylmethcathinone (t R =9.87) 8.767.5..35 26.8 2: -Methylbuphedrone (t R =8.767) 2.783.8.6..2 265.3 3: MPHP (t R =2.783).5.5.... 369.8 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35 8.67.8.6..2 268.9 : α-pvt 23. 298.5 (t R =8.67) 5: 5-IAI (t R =2). 2 3.5.22 232.3.8.6. 6: Methiopropamine (t R =3.5)..8 23.2.2..8.6.6....2 39. 27.8.2 369.8 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35 22. 7: Ethylphenidate (t R =22.). 25.333 26.5 8: AH-792 (t R =25.333).5. 2.6 258.3. 2 25 3 35 2 25 3 35 Fig.. Retention times (t R ) and UV spectra of cathinone derivatives (-) and other category drugs (5-8) by LC/PDA LC/PDA conditions: Column; L-column (5 mm.6 mm i.d. 5 µm), Column temp.;, Mobile phase; A [CH 3 C/H 2 /H 3 P (3/7/) added sodium dodecyl sulfate (SDS)2.8 g/ L] B [CH 3 C/H 2 /H 3 P (7:3:) added SDS 2.8 g/l], Gradient program; - min. A/B (75/25), - 3 min. A/B (/9, linear gradient), Flow rate; ml/min., Injection volume; µl, Detection; PDA detector (2 ).

東京健安研セ年報,6, 23 55.2. 5.6 22. 9: AM2232 (t R =5.6). 6.28 223. : JWH-22-- (-pentenyl) analog (t R =6.28)..979 223. : JWH-22-- (5-hydroxypentyl) analog (t R =.979). 26.8 3.2. 33.. 35. 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35.9.7. 6.26 222.5 2: EAM-22 (t R =6.26) 33.6. 5.83 22.8 3: -Methoxy-AM22 (JWH-8-5F) (t R =5.83) 35..8.6..2..8.6 6.76 29. 25.7 3.9 : UR- (t R =6.76)....2 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35.5..35.5 6.37 29. 26.8 5: XLR- (t R =6.37) 32.5.296.2..8.6. 6: A-836339 297. (t R =.296).9.7. 6. 22.7 7: APICA - (5-fluoropentyl) analog (t R =6.) 29.2..2. 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35..2..67 223. 8: ADBICA (t R =.67)..2. 5.832 22.9 9: EI (t R =5.832). 6.5 2. 2: APIACA - (5-fluoropentyl) analog (t R =6.5) 29.8.. 298.8 3.9. 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35 Fig. 5. Retention times (t R ) and UV spectra of cannabinoids (9-2) by LC/PDA LC/PDA conditions: Column; ACQUITY UPLC HSS T3 (5 mm 2. mm i.d.,.8 µm), Column temp.;, Mobile phase; A [5 mm ammonium formate buffer (ph 3.5) in H 2 /CH 3 C (95/5)] B (. % HCH in CH 3 C), Gradient program; - min., A/B(99/), - 6.85 min., A/B(/9, linear gradient), 6.85-8.85 min., A/B(/, linear gradient). Flow rate;.6 ml/min., Injection volume; µl, Detection; PDA detector (2 ).

56 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 23.5..35.553 29. 2: AB-PIACA (t R =.553).23 26.7 22: AB-FUBIACA (t R =.23).95 26. 23: ADB-FUBIACA (t R =.95)..5 32.5.5. 3.3 3.3.. 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35.9.7 5.973 27.6 2: PB-22 (t R =5.973) 5.376 27.6 25: 5F-PB-22 (t R =5.376).9.7 6.295 28.2 26: BB-22 (t R =6.295).. 293.3 293.3. 293.3... 2 25 3 35 2 25 3 35 2 25 3 35 Fig. 6. Retention times (t R ) and UV spectra of cannabinoids (2-26) by LC/PDA LC/PDA conditions were the same as shown in Fig.5. 5'a '''' 2 'a 2''' ' 5' 2 ''' S 2' '' 2''a 2'' 2''a 3''a 3'' 3''a Fig.. Chemical structure of A-836339 elucidated by X-ray crystallographic analysis

東京健安研セ年報,6, 23 57 58 : -Ethylmethcathinone (t R =3.5) 72 2: -Methylbuphedrone (t R =3.23) [M] + : 9 77 3 33 89 2 3 7 6 5 5 76 66 9 3 5 6 7 8 9 2 3 5 6 7 8 9 [M] + : 9 9 57 2 9 3 62 27 3 5 7 8 7 9 2 3 9 3 5 6 7 8 9 5 6 7 8 3: MPHP 26 : α-pvt (t R =7.973) (t R =6.36) [M] + : 259 9 9 69 8 5 3 29 86 55 22 228 59 23 7 2 258 6 8 2 6 8 2 22 2 26 [M] + : 237 55 8 97 2 69 39 66 3 9 29 52 78 28 236 3 5 6 7 8 9 23567892222232 5: 5-IAI (t R =.952) 259 58 6: Methiopropamine (t R =8.678) 5 [M] + : 259 5 22 3 63 77 39 5 89 27 23 6 8 2 6 8 2 22 2 26 [M] + : 55 3 97 2 5 69 77 8 9 23 5 3 5 6 7 8 9 2 3 5 6 7 8 8 7: Ethylphenidate 26 8: AH-792 (t R =6.) (t R =23.687) [M] + : 27 [M] + : 328 56 5 3 3 58 7 8 9 5 59 73 9 23 22822255 269 285 326 2 3 3 72 56 22 28 67 26 6 8 2 6 8 2 22 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 Fig. 7. Retention times (t R ) and electron impact spectra of cathinone derivatives (-) and other category drugs (5-8) by GC/EI-MS 9: AM2232 (t R =2.) [M] + : 352 225 335 352 : JWH-22-- (-pentenyl) analog 69 (t R =28.786) [M] + : 353 353 27 28 5 22 298 2 67 256 55 2 77 9529 35 8 2 22 3 32 6 8 2 6 2 26 28 3 36 336 25 8 283 69 89 227 33 373 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 : JWH-22-- (5-hydroxypentyl) analog (t R =3.62) [M] + : 37 298 23 35 69 37 2: EAM-22 (t R =33) [M] + : 387 37 232 32 387 5 268 97 22 3 252 338 57 76 8 33 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 95 25 6 283 89 3 23 7 69 67 2 6 8 2682222262833233632 3: -Methoxy-AM22 (JWH-8-5F) (t R =3.768) [M] + : 389 372 232 3 85 285 29 22 257 63 89 7 36 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 389 : UR- (t R =23.7) 2 [M] + : 3 2963 3 6 3 238252 69 83 2 67 82 96 268 282 3 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 5: XLR- (t R =23.82) 232 [M] + : 329 3329 27 55 6 3 27 69 83 2 67 8 96 2 286 299 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 6: A-836339 (t R =2.5) 23 227 [M] + : 3 59 3 28 55 87 295 3 83 97 69 252 26728 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 Fig. 8. Retention times (t R ) and electron impact spectra of cannabinoids (9-6)by GC/EI-MS

58 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 6, 23 7: APICA - 232 (5-fluoropentyl) analog (t R =3.) [M] + : 382 382 37 365 26 6 73 93 22 77 28 335 29 59 9 6 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 8: ADBICA (t R =26.23) 2 [M] + : 33 33 27 299 6 2 3 3 57 787 22 285 77 326 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 9: EI (t R =3.63) 356 5 22 256 3 7 8 27 285299 3 89 75 98 327 32 2 26 28 3 6 8 2 6 8 22 2 3 32 36 2 [M] + : 356 2: APIACA - 233 (5-fluoropentyl) analog (t R =28.98) [M] + : 383 5 355 29 383 93 338 69 23 7 77 95 265 3 5 2 6 8 268222226283323363 2 6 8 2 22 2 26 28 32 3 36 38 2: AB-PIACA (t R =2.9) 25 286 9 22: AB-FUBIACA (t R =27.23) 253 32 5 [M] + : 33 [M] + : 368 3 3 3 72 7 785 99 88 35 33 27 57 23 25 355 2 26 3 6 8 2 6 8 2 22 28 3 32 83 5 29 27223 77 37 353 368 63 269 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 9 23: ADB-FUBIACA (t R =26.872) 253 338 [M] + : 382 5 39 27 83 28 225 29 9 355 382 63 7 5 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 2: PB-22 (QUPIC) (t R =28.868) 6 89 358 2 259 98 229 28 63 7 3 3 33 2 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 2 [M] + : 358 25: 5F-PB-22 (t R =29.97) 232 26: BB-22 (t R =32.6) 2 [M] + : 376 6 89 22 259 27 63 7 85 3 39 356 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 376 [M] + : 38 55 6 38 89 39 68 8 259 3 2 327 355 6 6 8 2 6 8 2 22 2 26 28 3 32 3 36 38 Fig. 9. Retention times (t R ) and electron impact spectra of cannabinoids (7-26)by GC/EI-MS

東京健安研セ年報,6, 23 59 Analysis of Illegal Psychoactive Drugs Purchased in Fiscal Year 22 Jun ichi AKAJIMA a, Jin SUZUKI a, Masao YSHIDA a, Machiko AGASHIMA a, Masako SHIMIZU a, Keiko USHIYAMA a, Misako TAKAHASHI a, ozomi UEMURA a, Chieko KAAI a, Tomohiro ABE a,masako ARAGAE a,haruhiko FUKAYA b, Tomoko HAMA a,takako MRIYASU a and Dai AKAE a We analyzed drug products purchased in Tokyo in fiscal year 22. The chemical structure of each compound was identified by a combination of liquid chromatography/photodiode array, gas chromatography/electron ionization-mass spectrometry, nuclear magnetic resonance and X-ray crystallographic analyses. Drugs were detected in the all of the samples. These drugs included 26 newly detected illegal drugs and 9 designated substances (shitei yakubutsu). The newly detected illegal drugs were as follows: cathinone derivatives and other category drugs (-ethylmethcathinone, -methylbuphedrone, MPHP, α -PVT, 5-IAI, methiopropamine, ethylphenidate, AH-792) and cannabinoids (AM2232, JWH-22--(-pentenyl) analog, JWH-22--(5-hydroxypentyl) analog, EAM-22, -methoxy-am22, UR-, XLR-, A-836339, APICA -(5-fluoropentyl) analog, ADBICA, EI, APIACA -(5- fluoropentyl) analog, AB-PIACA, AB-FUBIACA, ADB-FUBIACA, PB-22, 5F-PB-22, BB-22). In particular, A-836339 was the first case where a synthetic cannabinoid compound containing a sulfur atom in the molecule was detected, and the X-ray crystallographic analysis was very useful in identifying the chemical structure. To prevent their abuse, it is important to determine the structures of newly detected illegal drugs rapidly and precisely. The presented analytical results in this report may be useful in reinforcing regulations. Keywords: Illegal drug, designated substance by the Pharmaceutical Affairs Law of Japan, LC/PDA, GC/EI-MS, X-ray crystallographic analysis a b Tokyo Metropolitan Institute of Public Health, 3-2-, Hyakunin-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 69-73, Japan Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences 32-, Horinouchi, Hachioji, Tokyo 92-392, Japan