Microsoft PowerPoint - (佐藤委員)統合版 東京都税制調査会報告資料

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

第8回税制調査会 総8-2(案とれ)

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第5回基礎問題小委員会 礎5-4

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平成19年度税制改正.xls

平成19年度分から

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

個人市民税 控除・税率等の変遷【市民税課】

第3回税制調査会 総3-2

女性が働きやすい制度等への見直しについて

第2回税制調査会 総2-2

1

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

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スライド 1

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

FX取引に係る確定申告について

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

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第6回税制調査会 総6-3

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

このページを印刷する 2017 年 11 月 23 日森信茂樹 : 中央大学法科大学院教授東京財団上席研究員 副業 兼業の時代 所得税控除見直 し で不公平を正せ 来年度税制改正の作業が 与党税調で始まっている 連日のように改正案の 断片が報道されているが 全体像がいまだよくわからない そこで これ

税法実務コース 所得税 学習スケジュール 回数 学 習 テ ー マ 内 容 第 1 章 テーマ1 所得税の仕組みテーマ2 所得税額の計算テーマ3 非課税所得 所得税の仕組み 税額計算 所得税が課税されないものについて学習します テーマ1 各種所得金額の計算の概要テーマ2 利子所得テーマ3 配当所得

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

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5 事業用の車両等を売却 ( 譲渡 ) した場合の売却益 ( 譲渡益 ) 売却損 ( 譲渡損 ) については 事業所得とはならない 総合課税の譲渡所得 ( 土地 建物以外 ) の扱いになり 所有期間 (5 年超か以下か ) によって長期譲渡所得 短期譲渡所得に区分される 6 使用可能期間が1 年未満

第16回税制調査会 別添資料1(税務手続の電子化に向けた具体的取組(国税))

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資料9

平成19年度市民税のしおり

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ワコープラネット/標準テンプレート

市場と経済A

2017 年度税制改正大綱のポイント ~ 積立 NISA の導入 配偶者控除見直し ~ 大和総研金融調査部研究員是枝俊悟

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

【資料1】

スライド 1

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ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

平成18年度地方税制改正(案)について

税・社会保障等を通じた受益と負担について

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

Microsoft Word - FP2級法改正情報 doc

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上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

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2018年 租税法基礎答練1回

金融庁の税制改正要望について(1)

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2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

Microsoft Word - ke1106.doc

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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中小企業の退職金制度への ご提案について

住民税 所得税の税率国から地方への税源移譲に伴い 平成 19 年度から住民税所得割の税率が 10% に統一され 所得税の税率が 4 段階から 7 段階の累進税率に改正されています 住民税については平成 19 年度分 ( 平成 19 年 6 月納付分 ) 所得税については平成 19 年分 ( 平成 1

Microsoft Word - 個人住民税について(2018~2022)

第2回税制調査会 総2-1

所得控除 雑損控除 医療費控除 社会保険料控除等 旧生命保険料控除 旧個人年金保険料控除 ( 実質損失額 - 総所得金額等の合計額 10%) 又は ( 災害関連支出の金額 -5 万円 ) のうち いずれか多い方の金額医療費の実質負担額 -(10 万円と総所得金額等の 5% のいずれか低い金額 ) 限

(1) 所得階級別人員 区 分 給与所得者 所得者別内訳 雑所得者 他の区分に該当しない所得者 人人人人人人人人人 70 万円 以下 25,319 1,201 20,012 54, ,063 6, , 万円 12,048 2,039 8,935 22,

給与の所得金額の算出速算表 収入金額 給与所得の金額 0 ~ 650, ,000 ~ 1,618,999 収入金額 -650,000 1,619,000 ~ 1,619, ,000 1,620,000 ~ 1,621, ,000 1,622,000 ~ 1,6

金融所得税制の見直し

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投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

はしがき 配偶者控除 と 配偶者特別控除 は 昭和 36 年と昭和 62 年の税制改正で導入された歴史ある制度です ここ数年 配偶者控除の改正について様々な議論が行われてきましたが 平成 29 年度税制改正において 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除と配偶者特別控除の見直し

第13回税制調査会 総務省説明資料(個人住民税)

各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

イ税務署へ確定申告書を提出し 所得税の住宅ローン控除の適用を受けている 退職所得 山林所得がある方 所得税の平均課税の適用を受けている方は 住宅ローン控除申告書を提出することにより控除額が大きくなる場合があります 申告書を提出される方は3 月 15 日 ( 月 ) までに申告してください 申告しなけ


市 県民税 ( 住民税 ) 市民税は 県民税と合わせて住民税と呼ばれ 住民のみなさんがそれぞれの税の負担能力に応じて分担し合うという性格をもつ税金で 個人が負担する個人市民税と 会社などが負担する法人市民税があります 市民税には 均等の額によって納めていただく均等割と 個人の所得に応じて納めていただ

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申告者と配偶者の合計所得金額の入力フォーム 申告者 ( 給与の支払いを受ける人 ) の事業所得 雑所得 配当所得 不動産所得 その他の所得の収入金額と必要経費を入力して合計所得金額を計算します 申告者の合計所得金額が 900 万円を超えると 配偶者控除または配偶者特別控除の控除額が変動します 申告者

1. 改革の方向性 女性の働き方に中立的な制度整備に当たっては 可処分所得の大幅な減少が生じないよう 負担を最小化 負担増減を円滑化するとともに こうした見直しが 負担増の生じる世帯 個人に ベネフィットとして戻ってくる制度改革とすることが不可欠 改革の進め方についての方針を明示し できるものから早

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

Microsoft Word - 個人住民税について

公募株式投資信託の解約請求および償還時

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

第12回税制調査会 総12-1(案とれ)

上場株式等の住民税の課税方式の解説(法改正反映版)

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第28回税制調査会 総28-2(案とれ)

[Case 2-1] 横浜さんは 首尾良く就職できて昨年 4 月から新社会人となり仕事をしている 学生の時よりは自由な時間は減ったが 毎月 まとまった給与がもらえて 学生の時よりはるかに自分の自由になるお金を得ることができた しかし給与明細を見ると 支給額は 215,000 円のはずなのに 実際の手

妙高市 税に関するWEBページ

退職金についての市県民税はどうなるの? 私は平成 28 年 4 月に退職しました 勤続 30 年で退職金は 2,100 万円ですがこの退職 金に対する市県民税はいくらですか 通常の市県民税の課税は前年中の所得に対し翌年課税されるしくみになっていますが 退職金に対する課税については 他の所得と分離して

株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

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1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

第14回税制調査会 総務省説明資料(・地方税務手続の電子化等2・個人住民税2)

(1)制度創設時の考え方

Transcription:

資料 3 東京都税制調査会新しい経済環境に適した所得課税の在り方 佐藤主光 ( もとひろ ) 一橋大学 IPP 経済学研究科 医療政策 経済研究センター 1

2040 年の税制? 2

2040 年の日本? 現状 雇用 一社 ( 一雇用主 ) で働く 所得税 源泉徴収と年末調整 経済取引 B ( 事業者 )to C( 消費者 ) 消費税 課税事業者は納税 雇用 所得税 2040 年 雇用的自営 フリーランス 個人が確定申告 ( マイナポータルと記入済み申告書 ) 経済取引 C( 消費者 )to C( 消費者 ) 消費税 消費者のリバース チャージ 課税 ( 徴税 ) ポイント = 企業 事業者 雇用の流動化 多様化経済のデジタル化 課税 ( 徴税 ) ポイント = 個人 家計 3

出所 : 政府税制調査会 4

5

6

所得課税の見直し 再分配機能の強化 = 所得控除から税額控除へ 給付への所得情報の活用 所得捕捉のパラダイムシフト 働き方に中立 公平な税制 = 所得区分の見直し 事業所得への概算控除の適用など 世代間格差 若年世代の資産形成 = 金融所得課税の見直し 税制の簡素化 業務改革 = 所得課税ベースの統一 住民税の現年所得課税 7

所得情報 8

公共財としての所得情報 所得捕捉のパラダイムシフトが必要 課税のための捕捉に加えて適正な給付のための所得捕捉 課題 = 従前 課税最低限以下の所得については十分に捕捉されていない例 : 簡素な給付措置 = 非課税世帯への一律給付になるきめ細く かつ適正な給付を実施するためにも 低所得者の正しい所得情報が不可欠ユニバーサルクレジットへの支援 = 英国リアル情報システム構築の狙いの一つ 所得情報は課税だけではなく 給付 社会保険料等 他の制度でも活用される 公共財 経済価値としての所得 (= 控除前の所得 ) を共有 所得 = 収入ー必要経費 9

公共財 としての所得情報 所得情報 課税情報非課税世帯の所得を含む 再分配機能の強化 課税だけで再分配は完結しない 低所得者への移転 ( 給付 控除 ) が必須 所得水準の正確 迅速な把握が必要所得の合算等 改革 配偶者控除の見直し 従前 =( 高所得者を対象に ) 課税のための所得情報 パラダイムシフト = 控除 給付のためにも所得情報が必要所得 = 収入ー必要経費 ( 概算 ) 給付 保険料免除等の基準に活用所得の定義の統一 ( 国税 地方税 社会保険料 給付等 ) ( 税額 ) 控除額は国税 地方税 社会保険料で独自に設定 新たな控除 ( 夫婦控除 ) に所得制限? 誰の所得? 夫婦合算所得? 納税者 ( 夫 ) 配偶者 ( 妻 ) ごとに所得制限? 世帯所得が同じでも夫婦控除で異なった扱い ( 上図 ) 参考 : 英国 リアルタイム情報システム所得捕捉の迅速化給付のための所得情報 税のデジタル化 納税環境の整備 所得情報 = 公共財 10

11

12

参考 : ユニバーサルクレジット ベーシックインカム 未就労者の場合 ユニバーサルクレジットの受給には求職活動等 条件 (Conditionality) が課されている条件を満たさなければペナルティーあり現行のミーンズテスト給付を統一 ベーシックインカム = 就労の如何によら ず一定の所得を補償 異なる給付制度の統一 = 簡素化を図っ ている面では同じ 平部康子 イギリスにおける社会保障給付と財源の統合化 海外社会保障研究 Summer2012 No.179 13

所得税改革 14

改革の方向感 所得税の再分配機能の強化 再分配の方向 若い世代を含む低所得層 子育て世帯 これから家族を形成しようとする若い世代への配慮 ( 政府税制調査会 ( 平成 26 年 11 月 7 日 ) 再分配の重点化 優先度の低くなった配慮措置を見直し 真に支援が必要な世帯への配慮に重点化 ( 政府税制調査会 ( 平成 26 年 11 月 7 日 )) 経済成長と再分配の両立 成長の担い手への支援 将来の成長の担い手である若い世代に光を当てることにより経済成長の社会基盤を再構築する ( 基本方針 2015) 働き方の選択に対して中立的な税制の構築 ( 政府税制調査会 ( 平成 26 年 11 月 7 日 )) 高齢者 女性の就労促進など 15

平成 30 年度税制改正 16

所得控除から税額控除へ 再分配分配機能の観点から所得控除を税額控除化 減税額 ( 控除額 ) は所得水準に関わらず一定 所得控除に最低税率を適用 ( カナダ方式 ) 税額控除 = 最低税率 * 所得控除額 所得控除額 = 税額控除額の 裏付け = 控除の対象となる所得金額 個人の属性 ( 家族構成等 ) を反映した控除が可能 留意点 : 控除の体系が複雑にならないよう既存の所得控除等の縮減 再整理が前提 17

参考 : 消失型控除へ? 所得控除の通念 = 所得のうち本人およびその家族の最低限の生活を維持するのに必要な部分は担税力をもたない (= 主観的担税力 ) 所得 = 担税力 経済価値 所得控除の延長上の見直し 基礎控除 平成 29 年度税制改正 配偶者特別控除の拡充 ( 控除 38 万円の上限を 103 万円から 150 万円に引き上げ ) と合わせて 納税者本人に収入制限を設定 給与収入 ( 合計所得金額 ) が 1,120 万円 (900 万円 ) を超える場合 控除額が逓減 消失 18

参考 : 給与所得控除 手厚い給与所得が所得税の 1 財源調達機能と 2 再分配機能を損ねてきた 平成 30 年度税制改正 給与所得控除の二つの性格 必要経費の概算控除 他の所得 とのバランス クロヨン問題?= 給与所得控除の削減を困難に 概算控除としての給与所得控除 概算の基準 控除に上限を課す根拠は? 特定支出控除の実額控除の拡充 控除の対象支出は? 生活上の必要経費全般? 所得税のレント課税化 教育関係支出 人的資本課税としての所得税 19

所得税と働き方改革 20

問題意識 個人所得課税について 現行制度は 特定の働き方等による収入にのみ手厚い 所得計算上の控除 を認める仕組みとなっており 実質的に給与所得者と同じような境遇にある 雇用的自営 等 多様な働き方の拡大を想定していない制度となっている 働き方の多様化を踏まえ 様々な形で働く人をあまねく応援する仕組みを構築することが重要である 雇用的自営 や副業を希望する者は増加しており 今後 さらなる ICT 化の進展等により 働き方が一層多様化すると見込まれることや世代内 世代間の公平性を確保する必要性を踏まえれば 現行の所得分類による税制上の取扱いの差を解消することが 重要になるものと考えられる 政府税制調査会 (2017) 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 21

実効税率 1- 平均実効税率 就労していないときの給付 可処分所得 就労による可処分所得増 予算線 1- 限界実効税率 制度的に決定 実績ベース 0 例 :400 万円 稼得収入 定義 誘因効果 法人税の場合 限界実効税率 所得税 住民税の限界税率 + 社会保険料率 + 控除 給付の削減率 労働時間 投資選択 平均実効税率 ( 所得税 + 社会保険料 - 税額控除等 + 就労で資格を喪失する給付 ) 稼得収入 就労の有無 立地選択 22

正規対非正規 ( フリーランス ) 正規雇用的自営 ( フリーランス ) 経費控除給与所得控除 ( 概算控除 ) 実額控除 社会保険 厚生年金健康保険組合 協会けんぽ 国民年金国民健康保険 実効税率 ( 限界 平均 ) 実効税率 ( 限界 平均 ) の差異 23

試算の前提 家族構成 = 配偶者 子ども一人配偶者の収入は100 万円未満 ( 住民税非課税 ) 子どもは4 歳 ( 児童手当の適用あり ) 雇用的自営経費は実額控除 ( 給与所得控除は適用されない ) 国民年金 国民健康保険に加入 実効税率 限界実効税率 = 所得税率 + 住民税ー控除率 + 社会保険料率ー保険料減免率 + 給付削減率 平均実効税率 =( 所得税 + 住民税 + 社会保険料ー給付 ) 収入 給付 ( 補助 )= 市場価格ー利用者負担 社会保険料 = 労働者負担分 24

平均税率 ( 税 保険料 ) 正規雇用に比べて高い平均実効税率 水平的不公平 労働参加の意欲を阻害 平均税率 70 60 50 40 30 20 10 0 保険料軽減措置 800 1,400 2,000 2,600 3,200 3,800 4,400 5,000 5,600 6,200 6,800 7,400 8,000 8,600 9,200 9,800 10,400 11,000 11,600 12,200 12,800 13,400 14,000 年収 ( 千円 ) 正規雇用的自営雇用的自営 ( 軽減なし ) 家族構成 : 本人 専業主婦 子ども一人 (4 歳 ) 25

限界税率 ( 税 保険料 ) 120 低収入で高い限界税率 労働時間を増やす意欲を阻害 限界税率 100 80 60 40 保険料軽減措置 配偶者控除削減 20 配偶者控除の消滅 意図せず (?) 限界実効税率を高くする 0 800 1,400 2,000 2,600 3,200 3,800 4,400 5,000 5,600 6,200 6,800 7,400 8,000 8,600 9,200 9,800 10,400 11,000 11,600 12,200 12,800 13,400 年収 ( 千円 ) 正規 雇用的自営 26

其の 1: 所得区分の見直し 新しい自営業の登場 フリーランス = 雇用的自営 現行制度ではフリーランス等の所得は事業所得 に分類 給与所得 = 経費の概算控除 ( 給与所得控除 ) 事業所得 = 実費控除 給与所得と事業所得の統合 経費 控除 明細等あり実額控除 ( 特定支出控除の拡充 ) 明細等なし概算控除 ( 給与所得控除の相当 ) 27

参考 : 伝統的自営 対 雇用的自営 ( フリーランス ) 英国ユニバーサルクレジット 自営業者の場合 = みなし所得 ( 最低所得フロア ) に応じた給付 最低所得フロア = 最低賃金 * みなし労働時間 実際の所得が最低所得フロア以下であっても 最低所得フロア *65% 分 給付は削減 二元的所得税 個人事業主の所得を事業所得と労働所得に分離 概査課税 = 資本所得課税 課税と給付の一体化 支払いの頻度と基準 = 月ベース 前月の収入 家族構成に応じる HMRC のリアルタイム情報の活用 (2013-2014 年に導入 ) 収入 経費 伝統的自営 自己申告 みなし課税 = 収入 経費とも概算? 雇用的自営 支払い段階で源泉徴収 マイナンバーで収入の合算 改革案 = 実費控除と概査控除の選択 確定申告青色申告が選択肢 信頼度?? 28

其の 2: 所得の定義の統一 課税対象の所得の統一 = 同じ所得情報 所得定義に基づく個人住民税 ( 所得割 ) の課税 社会保険料の設定も視野に 税額控除等は個人住民税 社会保険料が独自に設定 税額 ( 保険料 )= 税率関数 ( 所得 )- 税額控除等 個人が確定申告することを前提にした税制の簡素化 = 働き方の多様化に伴い 今後 申告手続に不慣れな給与所得者も副業 兼業に係る申告を行うこととなるなど 税務手続を行う者の増加 多様化が見込まれる このため ICT の更なる活用等を通じて 誰しもが簡便 正確に申告等を行うことができる利便性の高い納税環境の実現を目指すことが必要と考えられる ( 政府税制調査会 (2017)) 所得情報は課税だけではなく 給付 社会保険料等 他の制度でも活用される 公共財 経済価値としての所得 (= 控除前の所得 ) を共有きめ細く かつ適正な給付を実施するためにも 低所得者の正しい所得情報が不可欠現行 = 前年所得に拠る保険料減免 給付 所得の最新情報の反映 ( 英国 : リアル情報システム ) 29

出所 : 大和総研 (2010 年 3 月 ) 30

参考 : 用途で異なる所得 課税所得 ( 国税 地方税 ) 人的控除等の違い 総所得金額等 旧ただし書き所得 = 総所得金額等 - 住民税基礎控除額 (33 万円 ) 保険料減免等の基準 総所得金額等 = 前年の総所得金額および山林所得金額 株式 長期 ( 短期 ) 譲渡所得金額などの合計 退職所得は含まず 雑損失の繰越控除は控除しない 前年総所得金額等が以下の金額のとき住民税 ( 均等割 所得割 ) は非課税 均等割 ( 一級地 ) 所得割 非課税限度額 35 万円 *( 本人 + 控除対象配偶者 + 扶養控除 )+21 万円 35 万円 *( 本人 + 控除対象配偶者 + 扶養親族 )+32 万円 課税のための所得 給付等のための所得 住民税の非課税限度額に影響? 人的控除等 ( 基礎控除 配偶者控除 扶養者控除など ) 31

改革 : 新しい所得課税体系 限界税率 ( 合計 ) 累進課税 ( 国税 ) マイナスの課税 = は給付もしくは社会保険料から控除 税額控除額 ( 国税分 ) 税額控除額 ( 地方分 ) 国税の最低税率 地方税率 社会保険料 ( 税 ) 最低税率 ( 合計 ) 所得 ( 給与 年金事業所得等 ) = 収入ー必要経費 32

金融課税 33

金融所得課税の強化 金融所得 ( 配当 利子 譲渡益 ) 課税の強化 ( 税率の引き上げ : 現行 20% 25%)? 課題 1= 勤労 ( 若年 ) 世代の資産形成の支援 課題 2= 貯蓄から投資 を阻害? 利子所得を含む損益通算 = 金融課税の一体化が前提 新しい貯蓄の喚起 = 勤労所得からの少額貯蓄 ( 預金のほか 投資を含む ) への非課税措置 (NISA の拡充 恒久化 ) 例 :IRA( 米国 ) RRSP( カナダ ) 新しい資本 ( 貯蓄 ) と古い資本 ( 貯蓄 ) の区別 出所 : 政府税制調査会 34

35

損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については 翌年以後 3 年間にわたり 確定申告により繰越可 36

金融所得 ( 資産 ) 課税の改革 課税 新しい資本 = 新規貯蓄 ( 資産形成 ) 年間一定額までの貯蓄について非課税枠 EET か TEE は納税者が選択? 古い資本 = 既存の貯蓄 金融所得課税の一体化 = 損益通算の拡大 資産課税の強化所得税率の引き上げ (20% 25%) 金融資産課税? 参考 勤労世代の資産形成を支援制度の整理が前提 リスクシェアによる危険投資の喚起貯蓄から投資へ オランダ ボックスタックス金融資産のみなし収益率 (4%) に対して課税 ( 税率 30%) 37

参考 : オランダのボックスタックス ボックス 1 ボックス 2 ボックス 3 対象 勤労所得及び主たる住宅の所有に伴う所得給与 年金 事業収入 帰属家賃 ( 居住用住宅 ) 大口持分株式 ( 発行済株式数の 5% 以上保有 ) からの資本所得 所得貯蓄と投資から生じる所得銀行口座の預金残高 投資目的不動産 ボックス 2 所得以外の株式保有等を対象 税率構造 税率は累進税率 ( 国民社会保険料率を含む ) 33.65%~52% 25% の比例税率 年間平均純資産額の 4% を課税所得とみなして課税税率は 30% 税率 1.2% の金融資産税 38

政府税制調査会 ( 平成 28 年 11 月 14 日 ) 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 公的年金の給付水準について中長期的な調整が行われていく見込みとなっている中 公的年金の役割を補完する観点からも 老後の生活に備えるための個人の自助努力を支援する必要性が増している こうした自助努力に関連する制度としては 現在の企業年金 個人年金等に関連する諸制度や 勤労者財産形成年金貯蓄やいわゆる NISA などの金融所得に対する非課税制度が存在する これらの制度については 就労形態や勤務先企業によって また 投資対象となる金融商品によって 利用できる制度が細分化されており 税制上受けられる支援の大きさも異なっている 老後の生活に備えるための個人の自助努力を支援する観点からは 個人の働き方やライフコースに影響されない公平な制度を構築していくことが重要である 他方 企業が設けている福利厚生制度も含め既に様々な制度が存在している中 多くの納税者が長期的な観点から資産運用や生活設計を行っていることにも留意しつつ 社会保障制度等の関連する政策との連携を含めた総合的な対応を検討する必要がある 39

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金融所得課税強化の前提 課題 リスク投資を阻害 勤労 ( 若年 ) 世代の資産形成を阻害 対応 損益通算の拡大利子所得を含む ( 銀行口座への付番が前提 ) 繰越期間の延長 ( 現行 :3 年 ) 勤労世代を対象にした非課税貯蓄枠の拡大 TEE と EET( いずれも運用は非課税 ) 金融所得への累進課税? 譲渡益の一時所得的な性格 (IPO など ) 実現のタイミングの裁量性 ( ロックイン効果 ) ( 限界税率の違いによる ) 損失時の課税との非対称性から好ましくない 41

税制と業務改革 42

個人住民税の現年課税へ 現行 = 住民税 ( 所得割 ) は前年所得課税 + 自治体による徴収 地方分権の本旨に即する? 現場では大きな業務負担 業務改革としての所得課税の徴収一元化 例 : カナダの連邦 州所得税 課税ベース = 前年所得から現年所得へ 課税形式 = 賦課課税から申告 ( 源泉徴収 ) 課税へ 徴税技術 =ICT を活用 徴税コスト 納税コストの緩和 被用者課税後所得雇用主源泉徴収課税システム所得税住民税 自治体へは概算払い + 翌年清算も選択肢 43

出所 : 総務省資料 44

市民税業務 出所 : 町田市自治体間ベンチマーキングシンポジウム 45

参考 : 政策から業務へ 参考 : 政策体系 事務事業 = 評価 予算の最小単位 現場が意識するのは 業務 学者が意識するのは 政策 業務の見直しによる事務事業の効率化 例 :ICT 化 民間委託 標準化 課題 = 現場で改革を 自分事 に 業務の見直しによるコスト ( 人員を含む ) の節減 事務事業 ( 例 : 体育施設管理 ) のフルコスト 出所 : 総務省資料

出所 : 町田市自治体間ベンチマーキングシンポジウム 47

出所 : 町田市自治体間ベンチマーキングシンポジウム 48

出所 : 町田市自治体間ベンチマーキングシンポジウム 49

所得課税徴収の一元化 所得課税徴収の一元化 = 住民税 ( 所得割 ) の現年所得化 納税者 ( 源泉徴収者 )= 納税が一か所に 地方自治体 = 徴税に係る業務の軽減 人員の節約 労働時間の短縮に繋がる 現行 : 賦課課税 = 自治体に責任 現年所得 : 申告課税 = 納税者に責任 外国人等住民の流動性に対応 所得が生じる現年に課税することで 取りはぐれが減少 現行 : 翌年に納税者が帰国 転居 転職 (= 源泉徴収事業者の変更 ) 等をしていると適正な課税が困難に 50

参考 : 中央決算システム (Centralized deduction) 源泉徴収から CD へ 社会保障基金 源泉徴収の責任 徴収のタタイミングの転換 国税 地方税 雇用主から提供される被用者の情報 ( 扶養家族の有無など ) をベースに課税額 給付額を算出 支払い時に徴収 給付 税 社会保険料等の支払い 課税庁 ( 国税庁 ) 勤労税額控除等の給付 例 : 英国のリアルタイム情報システム改革案 プラットフォームとしての中央決算システム 雇用主 賃金払い 中央決算システム 可処分所得 被用者 51