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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

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洪水リスクの共有

リスク評価に用いる外力

リスク評価に用いる外力 十勝川過去実験 リスク評価に用いる外力として 十勝川帯広基準地点における過去実験 GEV 分布の 1/150 確率降雨のとりうる範囲のうち 1 中央値付近のピーク流量最大ケース 295% 信頼区間内のピーク流量最大ケース 395% 信頼区間内の流域平均 72 時間雨量最大ケースを抽出した なお 流出計算結果については C11 関数化モデルの結果を用いることを基本とした 降雨の確率規模に基づいたリスク評価を行う場合 流出計算結果 C11 関数化モデル ケース 1 確率雨量の中央値から設定 確率雨量の中央値 256±10mm に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 No ケース ピーク流量 流域平均雨量 1 HPB_m067_1978 6300 262 2 HPB_m082_1961 4200 257 3 HPB_m089_1977 3466 253 4 HPB_m004_1957 3411 263 5 HPB_m066_1964 3082 252 6 HPB_m089_1990 2985 257 7 HPB_m067_1965 2842 246 8 HPB_m050_2003 2660 254 9 HPB_m063_1975 2532 250 ケース 2 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 ケース 3 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースから雨量最大ケースを選定 中央値 256mm ケース 1 中央値付近ピーク流量最大ケース ケース 2 信頼区間ピーク流量最大ケース ケース 3 信頼区間雨量最大ケース 95% 信頼区間 188mm~360mm 70

リスク評価に用いる外力 十勝川将来実験 リスク評価に用いる外力として 十勝川帯広基準地点における将来実験 GEV 分布の 1/150 確率降雨のとりうる範囲のうち 1 中央値付近のピーク流量最大ケース 2 95% 信頼区間内のピーク流量最大ケース 395% 信頼区間内の流域平均 72 時間雨量最大ケースを抽出した なお 流出計算結果については C11 関数化モデルの結果を用いることを基本とした また 将来の十勝川流域で発生しうる最悪の事態を想定するため 将来実験 5400 ケースの中から流域平均 72 時間雨量が最大となるケースを抽出した この時の流出計算結果については H28.8 再現定数モデルの結果を用いた 降雨の確率規模に基づいたリスク評価を行う場合 流出計算結果 C11 関数化モデル ケース1 確率雨量の中央値から設定 確率雨量の中央値 353±10mmに該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 No ケース ピーク流量 流域平均雨量 1 HFB_HA_m113_2051 8807 350 2 HFB_MI_m108_2065 7985 350 3 HFB_GF_m101_2099 7767 354 4 HFB_MI_m103_2056 7764 353 5 HFB_GF_m108_2052 6256 362 6 HFB_MI_m111_2108 5961 355 7 HFB_GF_m110_2082 5853 344 8 HFB_MI_m107_2060 5198 351 ケース 2 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 ケース 3 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースから雨量最大ケースを選定 ケース 2 信頼区間ピーク流量最大ケース H28.8 定数で計算した場合 ケース 4 起こりうる雨量最大ケース ケース 1 中央値付近ピーク流量最大ケース ケース 3 信頼区間雨量最大ケース 起こりうる最大のリスク評価を行う場合 流出計算結果 H28.8 再現定数モデル ケース 4 全ケースの中から雨量最大となるケースを選定 中央値 353mm 95% 信頼区間 252mm~517mm 71

リスク評価に用いる外力 常呂川過去実験 リスク評価に用いる外力として 常呂川北見基準地点における過去実験 GEV 分布の 1/100 確率降雨のとりうる範囲のうち 1 中央値付近のピーク流量最大ケース 295% 信頼区間内のピーク流量最大ケース 395% 信頼区間内の流域平均 24 時間雨量最大ケースを抽出した 降雨の確率規模に基づいたリスク評価を行う場合 ケース 1 確率雨量の中央値から設定 確率雨量の中央値 172±10mm に該当するケースを抽出し ピーク流量最大ケースを選定 No ケース ピーク流量 流域平均雨量 1 HPB_m010_1976 2459 173 2 HPB_m009_2000 2361 177 3 HPB_m085_2005 2287 165 4 HPB_m004_2000 2187 174 5 HPB_m022_1951 2128 165 6 HPB_m029_1968 2119 173 7 HPB_m022_1974 2116 177 8 HPB_m006_1986 2030 169 9 HPB_m083_1973 1943 168 10 HPB_m028_1992 1924 173 ケース 2 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 ケース 3 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースから雨量最大ケースを選定 中央値 172mm ケース 1 中央値付近ピーク流量最大ケース ケース 2 信頼区間ピーク流量最大ケース ケース 3 信頼区間雨量最大ケース 95% 信頼区間 133mm~229mm 72

リスク評価に用いる外力 常呂川将来実験 リスク評価に用いる外力として 常呂川北見基準地点における将来実験 GEV 分布の 1/100 確率降雨のとりうる範囲のうち 1 中央値付近のピーク流量最大ケース 295% 信頼区間内のピーク流量最大ケース 395% 信頼区間内の流域平均 24 時間雨量最大ケースを抽出した また 将来の常呂川流域で発生しうる最悪の事態を想定するため 将来実験 5400 ケースの中から流域平均 24 時間雨量が最大となるケースを抽出した 降雨の確率規模に基づいたリスク評価を行う場合 ケース 1 確率雨量の中央値から設定 確率雨量の中央値 245±10mm に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 No ケース ピーク流量 流域平均雨量 1 HFB_MI_m112_2066 3771 255 2 HFB_MR_m102_2074 3720 255 3 HFB_HA_m109_2052 3575 247 4 HFB_GF_m110_2082 3455 243 5 HFB_HA_m101_2061 3363 241 6 HFB_HA_m111_2072 3337 241 7 HFB_GF_m103_2081 3221 242 8 HFB_GF_m114_2061 3115 239 9 HFB_MP_m107_2093 3090 247 10 HFB_MP_m109_2072 2999 240 ケース 2 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースからピーク流量最大ケースを選定 ケース 3 確率雨量の 95% 信頼区間の範囲に該当するケースから雨量最大ケースを選定 ケース 1 中央値付近ピーク流量最大ケース ケース 4 起こりうる雨量最大ケース ケース 2 信頼区間ピーク流量最大ケース ケース 3 信頼区間雨量最大ケース 起こりうる最大のリスク評価を行う場合 ケース 4 全ケースの中から雨量最大となるケースを選定 中央値 245mm 95% 信頼区間 179mm~352mm 73

リスク評価に用いる外力設定方法 リスク評価に用いる外力として選定したケースをまとめると 以下のとおりである いずれのケースも 将来実験の流域平均雨量及びピーク流量は 過去実験よりも大きくなっている 十勝川帯広基準地点 流域平均雨量 (mm / 72hr) ピーク流量 (m 3 /s) 常呂川北見基準地点 流域平均雨量 (mm / 24hr) ピーク流量 (m 3 /s) 過去実験ケース 1 262 6,300 173 2,459 ケース 2 262 6,300 211 2,869 ケース 3 341 4,829 221 2,823 将来実験ケース 1 350 8,807 255 3,771 ケース 2 399 9,485 305 6,097 ケース 3 497 6,332 346 4,191 ケース 4 640 11,272 469 7,900 十勝川ケース 4 のピーク流量は H28.8 出水再現定数を用いて算定 ケース 1:1/150( 常呂川は 1/100) 降雨分布の中央値付近ピーク流量中央値ケースケース 2:1/150( 常呂川は 1/100) 降雨分布の 95% 信頼区間内ピーク流量最大ケースケース 3:1/150( 常呂川は 1/100) 降雨分布の 95% 信頼区間内流域平均雨量最大ケースケース 4: 将来実験 5400 ケース内の流域平均雨量最大ケース 74

対象とするリスク評価項目及び 使用する氾濫計算モデルの概要

本委員会で対象とするリスク評価項目 本委員会では 気候変動後の浸水域の増加 人的被害の増加 農地被害の増加に着目し 気候変動前後 ( 過去実験 将来実験 ) でのリスク評価を行う リスク評価の対象とする被害項目 指標及び評価手法 評価対象とするリスク 浸水域の増加 人的被害の増加 農地被害の増加 被害項目 指標 評価手法 対象氾濫 ブロック 浸水面積 戸数 人口 要配慮者施設 想定死者数 1 (LIFESim 手法 ) 最大孤立者数 想定死者数 2 ( オランダ手法 ) 農地被害面積 流域資産データ ( 国勢調査 経済センサス ) をもとに 氾濫計算結果から算出 国土数値情報 ( 医療機関データ等 ) から 氾濫計算結果を用いて氾濫域内の施設数を算出 現在 日本で一般的に用いられている 米陸軍工兵隊がハリケーン カトリーナ災害後の施設整備等の評価に用いたモデルを用い 氾濫計算結果の浸水深から算出 氾濫による孤立者数を時系列で算出し その最大値を抽出 孤立者数は 避難が困難となる浸水深 ( 災害時要援護者 : 30cm それ以外 :50cm) に避難率を掛け合わせて算出 オランダの手法に倣い 浸水深や流速を基にした死亡率から 想定死者数を算定する 浸水深や流速については 氾濫計算により算出する 国土数値情報土地利用データより農地を抽出し 氾濫計算結果から農地の浸水面積を算出 直轄区間水系全体 直轄区間水系全体 直轄区間水系全体 直轄区間水系全体 市街地を含む 1 ブロック ( 帯広市 北見市 ) 直轄区間水系全体 計算メッシュサイズ 十勝川 100m 常呂川 125m 十勝川 100m 常呂川 125m 十勝川 100m 常呂川 125m 十勝川 100m 常呂川 125m 十勝川 25m 常呂川 25m 十勝川 100m 常呂川 125m 76

リスク評価に用いる氾濫計算モデルの概要 氾濫計算モデルは 平面二次元不定流計算を組み込んだ 以下のモデルを用いる (1) 氾濫流追跡モデル透過率 空隙率を考慮した平面二次元不定流計算 (2) 決壊 越水モデル越流公式 ( 河道 氾濫原 : 栗城等の式 氾濫原 河道 : 本間の式 ) 施設状態は現況を想定 77

リスク評価結果

A. 直轄区間水系全体氾濫計算モデル ( 十勝川 ) 想定死者数 2: オランダ手法 以外のリスク評価項目は 直轄区間水系全体の氾濫計算モデルを用いて算定する 主な計算条件は 現況河道 現況洪水調節施設状態とし 氾濫ブロック各 1 地点の破堤地点を決めて氾濫計算を実施する 佐幌ダム 十勝ダム 帯 広基準点 主な氾濫計算条件 項目 計算メッシュサイズ 地盤標高 100m メッシュメッシュ地盤高は最新の LP データより作成 河道状態 平成 28 年河道 洪水調節施設現況施設 ( 十勝ダム 札内川ダム 佐幌ダム ) 破堤地点 札内川ダム 内容 予め氾濫ブロック内で被害最大と想定される 1 地点を設定し 氾濫ブロック毎に氾濫計算を実施 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 破堤条件 破堤地点上流の氾濫による流量低減 破堤開始水位 (HWL を基本とする ) を河道水位が超過した時 水位が堤防高や地盤高を上回る場合には氾濫による河道流量を低減 79

A. 最大浸水区域図 十勝川 1 中央値付近ピーク流量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 2,500m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.14 倍に増加している 降雨の時空間分布が異なるため 将来実験では音更川沿いで氾濫が生じていない 過去実験 浸水面積 16,700ha 将来実験 浸水面積 19,100ha 面積増加率 1.14 倍 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 帯広地点 帯広地点 音更市街地 80

A. 最大浸水区域図 十勝川 2 信頼区間内ピーク流量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 3,200m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.28 倍に増加している 降雨の時空間分布が異なるため 将来実験では札内川沿いで氾濫が生じていない 過去実験 浸水面積 16,700ha 将来実験 浸水面積 21,300ha 面積増加率 1.28 倍 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 帯広地点 帯広地点 札内川 81

A. 最大浸水区域図 十勝川 3 信頼区間内雨量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 1,500m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 2.00 倍に増加している 特に 十勝川本川下流部の氾濫域が増加している 過去実験 浸水面積 9,000ha 将来実験 浸水面積 18,000ha 面積増加率 2.00 倍 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 帯広地点 帯広地点 82

A. 最大浸水区域図 十勝川 4 起こりうる雨量最大ケース 起こり得る雨量最大ケースでは浸水面積が 28,200ha となり すべてのケースで浸水面積が最も大きい 特に十勝川本川中下流部では 川沿いの多くの区間で浸水深が 5m を超過する 将来実験 浸水面積 28,200ha 凡例 JR( 根室本線 ) 国道 39 号線国道 241 号線国道 242 号線国道 263 号線 帯広地点 83

A. リスク評価結果 十勝川 浸水面積 農地被害面積 浸水面積の変化は 将来実験の平均値 ( 約 19,500ha) が過去実験の平均値 ( 約 14,100ha) の約 1.4 倍となった 農地被害面積の変化は 将来実験の平均値 ( 約 15,900ha) が過去実験の平均値 ( 約 11,500ha) の約 1.4 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.4 倍 浸水面積の変化 約 1.4 倍 農地被害面積の変化 84

A. リスク評価結果 十勝川 浸水家屋数 要配慮者施設数 浸水家屋数の変化は 将来実験の平均値 ( 約 29,500 戸 ) が過去実験の平均値 ( 約 25,600 戸 ) の約 1.2 倍となった 要配慮者施設数の変化は 将来実験の平均値 ( 約 65 箇所 ) が過去実験の平均値 ( 約 40 箇所 ) の約 1.6 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケースは 降雨の時空間分布の違いによって 過去実験で生じる音更市街地の浸水が将来実験では生じないため 浸水戸数が過去実験よりも将来実験の方が少ない 音更川のリスクを評価するためには 音更川を対象としてリスク評価のケースを選定する必要がある 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.2 倍 浸水家屋数の変化 約 1.6 倍 要配慮者施設数の変化 85

A. リスク評価結果 十勝川 浸水人口 想定死者数 最大孤立者数 浸水人口の変化は 将来実験の平均値 ( 約 60,800 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 53,400 人 ) の約 1.1 倍となった 想定死者数の変化は 避難率 40% の場合 将来実験の平均値 ( 約 160 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 370 人 ) の約 2.3 倍であり 他のリスクと比較して将来の増加率が大きい 最大孤立者数の変化は 避難率 40% の場合 将来実験の平均値 ( 約 23,700 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 31,800 人 ) の約 1.3 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケースは 降雨の時空間分布の違いによって 過去実験で生じる音更市街地の浸水が将来実験では生じないため 浸水人口は過去実験よりも将来実験の方が小さくなっているが 浸水深の増加により 想定死者数と最大孤立者数は過去実験よりも将来実験の方が大きくなっている 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.1 倍 浸水人口の変化 避難率 40% の場合の倍率 約 2.3 倍 想定死者数の変化 避難率 40% の場合の倍率 約 1.3 倍 最大孤立者数の変化 86

A. 直轄区間水系全体氾濫計算モデル ( 常呂川 ) 想定死者数 2: オランダ手法 以外のリスク評価項目は 直轄区間水系全体の氾濫計算モデルを用いて算定する 主な計算条件は 現況河道 現況洪水調節施設状態とし 氾濫ブロック各 1 地点の破堤地点を決めて氾濫計算を実施する 北見基準点 主な氾濫計算条件 項目 計算メッシュサイズ 地盤標高 125m メッシュメッシュ地盤高は最新の LP データより作成 河道状態 平成 28 年河道 洪水調節施設現況施設 ( 鹿ノ子ダム ) 破堤地点 鹿ノ子ダム 内容 予め氾濫ブロック内で被害最大と想定される 1 地点を設定し 氾濫ブロック毎に氾濫計算を実施 凡例 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 破堤条件 破堤地点上流の氾濫による流量低減 破堤開始水位 (HWL を基本とする ) を河道水位が超過した時 水位が堤防高や地盤高を上回る場合には氾濫による河道流量を低減 87

A. 最大浸水区域図 常呂川 1 中央値付近ピーク流量最大ケース 常呂川 常呂川 北見地点のピーク流量が約 1,300m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.13 倍に増加している 降雨の時空間分布が異なるため 将来実験では無加川沿いの一部で氾濫が生じていない 過去実験 浸水面積 6,700ha 将来実験 浸水面積 7,600ha 面積増加率 1.13 倍 凡例 凡例 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 北見地点 北見地点 88

A. 最大浸水区域図 常呂川 2 信頼区間内ピーク流量最大ケース 常呂川 常呂川 北見地点のピーク流量が約 3,200m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.32 倍に増加している 特に 常呂川本川で氾濫域が増加している 過去実験 浸水面積 6,600ha 将来実験 浸水面積 8,700ha 面積増加率 1.32 倍 凡例 凡例 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 北見地点 北見地点 89

A. 最大浸水区域図 常呂川 3 信頼区間内雨量最大ケース 常呂川 常呂川 北見地点のピーク流量が約 1,400m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.33 倍に増加している 常呂川本川 支川無加川ともに氾濫域が増加している 過去実験 浸水面積 6,700ha 将来実験 浸水面積 8,900ha 面積増加率 1.33 倍 凡例 凡例 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 北見地点 北見地点 90

A. 最大浸水区域図 常呂川 4 起こりうる雨量最大ケース 常呂川 起こり得る雨量最大ケースでは浸水面積が 10,800ha となり すべてのケースで浸水面積が最も大きい 特に常呂川本川下流部では 川沿いの多くの区間で浸水深 5m を超過する 将来実験 浸水面積 10,800ha 凡例 JR( 石北本線 ) 国道 39 号線国道 242 号線国道 333 号線 北見地点 91

A. リスク評価結果 常呂川 浸水面積 農地被害面積 浸水面積の変化は 将来実験の平均値 ( 約 8,400ha) が過去実験の平均値 ( 約 6,700ha) の約 1.3 倍となった 農地被害面積の変化は 将来実験の平均値 ( 約 6,300ha) が過去実験の平均値 ( 約 5,200ha) の約 1.2 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.3 倍 浸水面積の変化 約 1.2 倍 農地被害面積の変化 92

A. リスク評価結果 常呂川 浸水家屋数 要配慮者施設数 浸水家屋数の変化は 将来実験の平均値 ( 約 14,500 戸 ) が過去実験の平均値 ( 約 10,400 戸 ) の約 1.4 倍となった 要配慮者施設数の変化は 将来実験の平均値 ( 約 21 箇所 ) が過去実験の平均値 ( 約 13 箇所 ) の約 1.6 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.4 倍 浸水家屋数の変化 約 1.6 倍 要配慮者施設数の変化 93

A. リスク評価結果 常呂川 浸水人口 想定死者数 最大孤立者数 浸水人口の変化は 将来実験の平均値 ( 約 31,000 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 22,900 人 ) の約 1.4 倍となった 想定死者数の変化は 避難率 40% の場合 将来実験の平均値 ( 約 200 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 30 人 ) の約 6.7 倍であり 他のリスクと比較して将来の増加率が大きい 最大孤立者数の変化は 避難率 40% の場合 将来実験の平均値 ( 約 11,500 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 6,000 人 ) の約 1.9 倍となった 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース 約 1.4 倍 浸水人口の変化 避難率 40% の場合の倍率 約 6.7 倍 想定死者数の変化 避難率 40% の場合の倍率 約 1.9 倍 最大孤立者数の変化 94

B. 想定死者数の算定手法 1~LIFESim 手法 ~ 水害の被害指標分析の手引き (H25 試行版 ) に示されている手法を基に死亡率を推定する この手法は LIFESim モデルをベースに米陸軍工兵隊がハリケーン カトリーナ災害後の施設整備等の評価に用いたモデルである 0.5m 浸水深による危険度の分類 内閣府, 大規模水害時の排水施設の状況 死者数 孤立者数の想定手法 ; 死者数の想定手法, 2008.3, pp3, http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/daikibosuigai/9/pdf/shiryou_1.pdf から内容 図を引用 95

B. 想定死者数の算定手法 2~ オランダの手法 ~ オランダで使用されている Jonkman のモデル (2007 年 ) を参考に 想定死者数を算出する オランダのモデルの計算手順 領域区分の設定 流速及び水深 水位上昇率によって 氾濫域内を 3 つの領域に区分する 領域 1 h v 7m2/s かつ v 2m/s h: 浸水深さ (m) v: 流速 (m/s) 領域 2 w 0.5m/hr w: 上昇率 (m/hr) 領域 3 死亡率の推定 (F D ) 領域 1~ 領域 3 の各領域における死亡率関数 を基に 氾濫域内各地点の死亡率を推定 F D : 洪水死亡率 h: 浸水深 (m) 領域 1 F D (h)=1 領域 2 F D h = Φ ln h μ σ なお μ = 1.46, σ = 0.28 指数関数 避難率の推定 (F E ) イベントツリー解析により 氾濫域内の避難率を推定する 領域 1 及び領域 2 に該当しない領域 領域 1 領域 2 決壊地点 領域 3 F D h = Φ ln h μ σ なお μ = 7.6, σ = 2.75 指数関数 洪水に見舞われる人の割合 (F EXP ) F EXP = 浸水区域内人口 / N PAR N PAR : 氾濫ブロック内人口 領域 3 死者数 N = N PAR F EXP 1 F E F D 出典 : S.N.Jonkman, Loss of life estimation in flood risk assessment: Theory and applications, 2007.1, https://repository.tudelft.nl/islandora/object/uuid%3abc4fb945-55ef-4079-a606-ac4fa8009426 96

B. 市街地ブロック詳細氾濫計算モデル ( 十勝川 ) 想定死者数 2: オランダ手法 のリスク評価は 市街地ブロックのみを対象とした詳細な氾濫計算モデルを用いて算定する 主な計算条件は 現況河道 現況洪水調節施設状態とし 市街地氾濫ブロック 1 地点の破堤地点を決めて氾濫計算を実施する 十勝川 帯広基準点 音更川 十勝川 氾濫計算対象地域 ( 十勝川右岸 ) 帯広市街地 主な氾濫計算条件 札内川 項目 内容 計算メッシュサイズ 地盤標高 25m メッシュメッシュ地盤高は最新の LP データより作成 河道状態 平成 28 年河道 洪水調節施設現況施設 ( 十勝ダム 札内川ダム 佐幌ダム ) 破堤地点 破堤条件 破堤地点上流の氾濫による流量低減 予め氾濫ブロック内で被害最大と想定される 1 地点を設定し 氾濫ブロック毎に氾濫計算を実施 破堤開始水位 (HWL を基本とする ) を河道水位が超過した時 水位が堤防高や地盤高を上回る場合には氾濫による河道流量を低減 97

B. 最大浸水区域図 帯広市街地付近 1 中央値付近ピーク流量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 2,500m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.58 倍に増加している 降雨量の増加に伴い 将来実験では札内川からの溢水氾濫が生じている 過去実験 浸水面積 600ha 将来実験 浸水面積 950ha 面積増加率 1.58 倍 札内川左岸からの溢水氾濫 98

B. 最大浸水区域図 帯広市街地付近 2 信頼区間内ピーク流量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 3,200m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.32 倍に増加している 過去実験 浸水面積 600ha 将来実験 浸水面積 790ha 面積増加率 1.32 倍 99

B. 最大浸水区域図 帯広市街地付近 3 信頼区間内雨量最大ケース 帯広地点のピーク流量が約 1,500m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 2.74 倍に増加している 過去実験ではブロックの上流側ではピーク水位が破堤開始水位まで達しないため 他ケースと比較し浸水面積が小さくなっている 過去実験 浸水面積 230ha 将来実験 浸水面積 630ha 面積増加率 2.74 倍 100

B. 最大浸水区域図 帯広市街地付近 4 起こりうる雨量最大ケース 起こり得る雨量最大ケースでは浸水面積が 1,080ha となり すべてのケースで浸水面積が最も大きい 札内川合流点付近では 浸水深が 5m 以上となる区域も発生する 将来実験 浸水面積 1,080ha 札内川左岸からの溢水氾濫 101

B. リスク評価結果 帯広市街地付近 想定死者数 オランダ手法で想定死者数を算出した場合 将来実験の平均値 ( 約 462 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 78 人 ) の約 5.9 倍であった LIFESim 手法で想定死者数を算出した場合 将来実験の平均値 ( 約 75 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 6 人 ) の約 12.5 倍であった 現在日本で死者数算定に用いられている LIFESim 手法を用いると 大規模な出水における死者数を過小評価する可能性がある 避難率 0% と仮定して試算 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース オランダ手法約 5.9 倍 LIFESim 手法約 12.5 倍 102

B. 市街地ブロック詳細氾濫計算モデル ( 常呂川 ) 想定死者数 2: オランダ手法 のリスク評価は 市街地ブロックのみを対象とした詳細な氾濫計算モデルを用いて算定する 主な計算条件は 現況河道 現況洪水調節施設状態とし 市街地氾濫ブロック 1 地点の破堤地点を決めて氾濫計算を実施する 常呂川 氾濫計算対象地域 ( 常呂川左岸 ) 北見市街地 北見基準点 主な氾濫計算条件 項目 内容 計算メッシュサイズ 地盤標高 25mメッシュ メッシュ地盤高は最新のLPデータより作成 河道状態 平成 28 年河道 洪水調節施設 現況施設 ( 鹿ノ子ダム ) 破堤地点 予め氾濫ブロック内で被害最大と想定される1 地点を設定し 氾濫ブロック毎に氾濫計算を実施 破堤条件 破堤地点上流の氾濫による流量低減 破堤開始水位 (HWL を基本とする ) を河道水位が超過した時 水位が堤防高や地盤高を上回る場合には氾濫による河道流量を低減 103

B. 最大浸水区域図 北見市街地付近 1 中央値付近ピーク流量最大ケース 北見地点のピーク流量が約 1,300m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.59 倍に増加している 過去実験ではブロックの上流側ではピーク水位が破堤開始水位まで達しないため 将来実験よりも浸水面積が小さくなっている 過去実験 浸水面積 270ha 将来実験 浸水面積 430ha 面積増加率 1.59 倍 104

B. 最大浸水区域図 北見市街地付近 2 信頼区間内ピーク流量最大ケース 北見地点のピーク流量が約 3,200m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 4.41 倍に増加している 過去実験ではブロックの中 下流部が浸水しないため 将来実験よりも浸水面積が小さくなっている 過去実験 浸水面積 170ha 将来実験 浸水面積 750ha 面積増加率 4.41 倍 105

B. 最大浸水区域図 北見市街地付近 3 信頼区間内雨量最大ケース 北見地点のピーク流量が約 1,400m 3 /s 増加する将来実験では 浸水面積は 1.93 倍に増加している 過去実験ではブロックの下流部が浸水しないため 将来実験よりも浸水面積が小さくなっている 過去実験 浸水面積 280ha 将来実験 浸水面積 540ha 面積増加率 1.93 倍 106

B. 最大浸水区域図 北見市街地付近 4 起こりうる雨量最大ケース 起こり得る雨量最大ケースでは浸水面積が 970ha となり すべてのケースで浸水面積が最も大きい 市街地部で 3m ブロック下流端では 5m を超える浸水深が発生する 将来実験 浸水面積 970ha 107

B. リスク評価結果 北見市街地付近 想定死者数 オランダ手法で想定死者数を算出した場合 将来実験の平均値 ( 約 130 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 12 人 ) の約 10.8 倍であった LIFESim 手法で想定死者数を算出した場合 将来実験の平均値 ( 約 47 人 ) が過去実験の平均値 ( 約 4 人 ) の約 11.8 倍であった 現在日本で死者数算定に用いられている LIFESim 手法を用いると 大規模な出水における死者数を過小評価する可能性がある 避難率 0% と仮定して試算 1: 中央値付近ピーク流量最大ケース 2: 信頼区間内ピーク流量最大ケース 3: 信頼区間内雨量最大ケース 1~3 平均値 4: 起こりうる雨量最大ケース オランダ手法約 10.8 倍 LIFESim 手法約 11.8 倍 108

まとめ 2 リスク評価 リスク評価の結果 十勝川流域では 浸水面積が 4 割 浸水家屋数が 2 割増加する 常呂川流域では 浸水面積が 3 割 浸水家屋数が 4 割増加する 浸水深の影響により 人的被害が著しく増加する 各項目の被害数量の変化 リスク評価項目 十勝川流域 常呂川流域 過去実験将来実験変化過去実験将来実験変化 浸水面積 (ha) 14,100 19,500 1.4 倍 6,700 8,400 1.3 倍 農地被害面積 (ha) 11,500 15,900 1.4 倍 5,200 6,300 1.2 倍 浸水家屋数 ( 戸 ) 25,600 29,500 1.2 倍 10,400 14,500 1.4 倍 浸水要配慮者施設数 ( 箇所 ) 40 65 1.6 倍 13 21 1.6 倍 浸水人口 ( 人 ) 53,400 60,800 1.1 倍 22,900 31,000 1.4 倍 想定死者数 ( 人 ) 160 370 2.3 倍 30 200 6.7 倍 最大孤立者数 ( 人 ) 23,700 31,800 1.3 倍 6,000 11,500 1.9 倍 ケース1~3の平均値 避難率 40% 109

まとめ 2 リスク評価 オランダ手法による想定死者数の算出 流速や氾濫水の水位上昇速度を考慮したオランダの手法を用いると 想定死者数は 1 オーダー大きくなる オランダの手法と 現在日本で死者数算定に用いられている LIFESim 手法では 算出される想 定死者数に大きな違いがある 算出手法 各手法による想定死者の変化 帯広市街地 北見市街地 過去実験将来実験変化過去実験将来実験変化 オランダ手法 78 462 5.9 倍 12 130 10.8 倍 LIFESim 6 75 12.5 倍 4 47 11.8 倍 ケース 1~3 の平均値 避難率 0% 将来起こりうる雨量最大ケースによるリスク評価 十勝川流域では 浸水面積が 2 倍となり 浸水家屋数が 6 割増加する 常呂川流域では 浸水面積が 6 割 浸水家屋数が 9 割増加する ケース 1~3 の平均値とケース 4 を比較 今後の課題 今後 被害数量の精度を高めていくためには 氾濫計算のケース選定方法の見直しや 計算ケース数を増やす必要がある 110

参考資料

洪水リスクの共有 リスクの考え方 分析方法

リスクの定義 第 2 回委員会参考資料より一部加筆 ISO の定義では リスク は過去には好ましくない結果の可能性に限って言及されていたが 近年は好ましい方向 / 好ましくない方向の双方を意味するものとされている リスクの定義 (ISO) 国際標準化規格 ISO Guide73:2002 ISO Guide73:2009 リスクの定義 事象の発生確率と事象の結果の組合せ リスク は 一般に好ましくない結果を得る可能性がある場合に限って使われる 目的に対して不確かさが与える影響 影響 : 期待されていることから好ましい方向 / 好ましくない方向へ乖離すること不確かさ : 事象 その結果又はその起こりやすさに関する 情報 理解又は知識が たとえ部分的にでも欠落している状態リスクは ある事象の結果とその発生の起こりやすさとの組合せとして表現されることが多い 出典 : 日本規格協会 HP (http://data.jsa.or.jp/stdz/mngment/risk03.asp) 日本リスク管理学会 HP(http://ac.risk.or.jp/sub-7/687-2.html) より作成 フランク ナイトの不確実性 (1921) 個別的には不確実であっても 大数法則的に数量表現できるもの をリスクと定義し 他方 数量化できない不確実性 を本当の不確実性としてリスクと区別する 現在及び将来予測降雨の分布幅 様々な洪水流出パターン 流量 様々な氾濫被害形態及び被害の波及 堤防の決壊確率 出展 : Knight, F. M.,1921, Risk, Uncertainty and Profit 和田重司 2015 フランク ナイトの不確実性の経済学 COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES, 2009, WHITE PAPER Adapting to climate change: Towards a European framework for action 欧州では 将来の予測の不確実性にかかわらず純粋な社会的および / または経済的便益を生み出す後悔しない (no regret) 適応策を優先するべきである と位置づけ 気候変動によるリスクの評価と適応策を具体的に展開している 113

リスクの共有の必要性 既往のリスク認知研究において リスクの定量的な分析と共有の必要性が指摘されている 死亡率など 確率情報を加味した定量的なリスク情報が必要である 定量的なリスク情報の共有により 他分野とのリスク比較やリスクの程度に応じた適応策の選択 判断が可能となる リスク論的方法の真骨頂は 現時点では顕在化していない将来の災害をコントロールしたり これまで把握できていない災害因子を同定してその影響の大きさを明らかにしたりすることにある 送り手には程度として ( 定量的に ) リスクを伝える努力が 受け手には程度としてリスクを理解する努力が必要である しかし 受け手である一般の人々にとってリスク情報の定量的解釈のために過大な時間や労力をかけることは現実的に難しい 死亡者数をあげるだけでは その情報に接した読者や視聴者が自分の行為を選択するためのリスク情報としては不十分であり 母集団の大きさを勘案した確率情報が必要である リスク比較セットの例 ガン 250 自殺 24 交通事故 9 火事 1.7 自然災害 0.1 落雷 0.002 (10 万人当たりの年間死亡者概数 ) 出典 : 中谷内一也, 2006, リスクのモノサシ安全 安心生活はありうるか 例えば 10 万人あたりの年間死亡率など定量的なリスク情報の共有により 他分野のリスクとの比較や リスクとベネフィットの両方を考慮したうえでリスクの程度に応じた適応策の選択 判断が可能となる リスク情報の例 地域毎の死亡率 地域毎の浸水範囲と頻度 地域毎の経済被害 ベネフィットの例 平坦で利用効率が高い 開発コストが低い 土壌が肥沃 都市機能が集約し利便性が高い 適応策の例 堤防かさ上げ 洪水調節施設の改良 開発などの治水対策 霞堤や二線堤などによる氾濫流の制御 氾濫形態や頻度に応じた土地利用選択 宅地のかさ上げや住宅の床下高の確保 避難路の整備 避難情報の充実 洪水保険への加入 114