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膝のゆるみと回旋 図 2 Screw home movement の異常 図 1 Screw home movement の評価 側のアーチも外側のアーチに乗っているの 図 1 が実際に端坐位で SHM を測定して い人たち 図 2 左の は何なのかという で 内側アーチもつぶれてきます それで いるところです 荷重位でもみるが それ と 前述どおり general joint laxity が陽 外反母趾になって アーチが崩れてという については後述 図 2 左は膝の最終伸展 性だった テストを行ってみると靱帯がも 病態で膝 OA が完成されていきます こ 位での脛骨回旋角度が年齢とともに どう ともとゆるくて脛骨が前に大きく出てしま れが今考えているメカニズムです 変化していくのかを調べたグラフです 縦 う人たちで いわば靱帯が効いていな人た 軸が回旋角度で 横軸は年齢です 膝屈曲 ちです 研究でわかったこと 90 から 0 まで伸展していく間に膝は回旋 ということは laxity 弛緩性 の高い人 最初はどの辺から研究されていったので していきます このグラフから年齢が上 は膝 OA になりやすい すか がっていくと逆に内旋してしまう人たちが 石井 なりやすい それは新潟大学のグ 石井 最初は健常者 病態のない人たちの 増えることがわかります ループが縦断的に 20 年くらいかけて調べ 端坐位での膝の伸展を 20 80 歳まで測 それはあまり膝が伸びないということ ています 若い時期の健診のときには膝 定していきました 加齢とともにだんだん 石井 こういう人たちは伸びないですね OA になっていない人たちで どういう人 SHM が生じにくくなっていくだろうとい もともと大腿骨の内側顆と外側顆の曲率半 が 10 年後 20 年後に膝 OA になるかを う仮説をたてました というのも SHM を 径は 内側顆のほうが大きいので 膝が完 調べているのです 肥満であるとか もと つくり出しているのは靱帯の緊張なので 全伸展するためには 脛骨が外旋しなくて もとのアライメントとか いろいろな要素 靱帯の緊張はだいたい 60 歳代から落ちて はなりません つまり SHM が起きないと で調べていますが リスクとしてもっとも きます つまり靱帯が弱くゆるくなってい 膝が伸びないわけです SHM は ACL を 大きかったのは laxity でした SHM がリ く はじめとする膝の靱帯の緊張で誘導されま バースになってしまう原因と脛骨が前方に 靱帯というのは内側側副靱帯 MCL と す 図2右図は SHM が起きる人たちと逆 大きく移動することは相関が高いのです か外側側副靱帯 LCL 回旋してしまう人たちで比較したもので が 脛骨が前方に出てしまうという事実が 石井 前十字靱帯 ACL と後十字靱帯 す 脛骨が膝が伸びて行くときにどのくら 大きな問題になります ACL 損傷を手術 PCL です もちろん LCL MCL も関 い前方に移動するかを 内旋群と外旋群で しないで放置した場合も 最終的にはほと 係してきますが とくに影響が大きいのが 比べてみると 内旋してしまう人たちは脛 んどの人が膝 OA になります ACL と PCL になります 骨が大きく前方に移動してしまうことがわ ということは SHM の異常があったら ACL が切れてしまっている人は かりました つまり靱帯がうまく効いてい アスリートであれば注意が必要 石井 SHM はリバース 逆回旋 になり ない とくに ACL と LCL がゆるんでい 石井 そうでしょうね SHM に異常が起 ます 健常者でも もともと靱帯のゆるい ます そうすると SHM の動きとしては きるということは 膝の伸展制限が起きて 人たちの SHM を測定してみると 20 歳 内旋してしまう 年齢的にみると内旋する くることと 靱帯に過剰な負担がかかって 代でも SHM が出ません 疑問に思って測 人たちが増えてくるのは 60 代からなので いる そもそも靱帯がゆるい それは端坐 定していくと そういう人たちはみな関節 ちょうど靱帯の緊張が低下してくる時期と 位で測定したときにわかります 脛骨が前 弛緩性テスト陽性でした 一致してきます では 若くて外旋しな に出てしまうとなぜ SHM が逆回旋になっ 7

図 5 股関節の機能評価 Active movement 図 6 Screw home movement の評価 すると 安定性というのはコンプレッショ くて 股関節を屈曲させて 股関節の伸展 かをみます 評価のポイントは 膝が伸び ンフォースによってもたらされていますか 筋力で上から大腿骨で脛骨をグッと押しこ ていく際に 大腿骨が最後のところで内旋 ら コンプレッションで安定させないとい んでおいて その力で膝を固定するのが理 するか 脛骨がずっと垂直になっているの けないものを 大腿四頭筋で膝を固定し 想形です か あとはつま先の向きです 図 7 の人の ようとすると何が起きるかというとコン 足腰を鍛えようということでスクワット 場合は 脛骨が外側に傾斜しまいます も プレッションフォースにプラス シェア をやっても かえって膝には悪いということ ともと脛骨を外旋させたいのですが この フォース 剪断力 が入ってしまいます 石井 こういうスクワットをやって膝が痛 状態で脛骨を外旋させてしまうと膝が斜め 力を入れれば入れるほど 関節がズレやす くなってしまったという人は病院でも結構 になってしまいます それがいやなので くなる 実質的に股関節をまったく効かせ 経験します スクワット自体は決して悪く 最初からつま先を外側に向けておけば膝外 ないで 大腿四頭筋だけでこういうスク はないのですが そのやり方が問題です 旋ができます したがって スクワットさ ワットをしようとすると 理論的には お しっかり股関節を効かせていくことが非常 せたとき つま先が外側に向いているかを そらく 70 までしか膝の制御ができないの に大事です 動作の指導でも股関節を使っ みるのがポイントです ではないかと思います 70 を超えて屈曲 てしっかり立ち上がることです 自然にスクワットして と言ったときに しようとするとシェアフォースは大きくな そういう関節疾患との関係で ほかに つま先を外側に向けてしまう人というのは りますから これ以上曲げようとするとお SHM の問題は たとえばこういう人はこ 石井 代償している もしくは脛骨をと そらく崩れてしまうような感じなるでしょ ういう疾患を起こしやすいとか 膝 OA が典 にかく垂直にするために たとえば図 7 う ですから股関節を効かせていくことが 型 の人のような例では 立ち上がって下さ 大事になります 石井 典型ですね 前述どおり ACL 損 い と言うと 下腿を垂直にしたいので 中高齢者の女性の方でもこういうスク 傷などで同様のことが起きてくるので膝 足をいったん置き直すのです そのうえで ワットをやっている人はよくみかける OA になりやすいということがあります 大腿骨が内旋して SHM で膝が伸展してく 石井 いらっしゃいますね よくないです あとは 半月板損傷 半月板を傷めやすい るのです もともとつま先が外側を向いて ね 股関節が使えないスクワットは シェ ということになると思います しまっている人たちがいて 立ち上がりの アフォースのほかに 膝蓋骨を大腿骨に押 モードとしては 歩行もそうですが つま しつける力も増やしてくるので 全部の角 スクワット動作のみるポイント 先が外を向いてしまっていると足首を使え 度の膝のモーメントを伸展筋力を大腿四頭 石井 SHM の評価は 端坐位のみならず なくなってくる 歩行のときにからだを前 筋だけで賄おうとしたら まず 膝蓋骨と 荷重位でもみなければならず 図 6 さ に回転させるには足関節で回転させます 大腿骨の関節面にストレスがかかり 損傷 らに 荷重位でスクワットしてもらったと ところが足関節の回転軸は つま先が向い が生じるおそれが高くなります ですから きには 大腿と下腿の回旋を評価するので た方向に正対するようになっています と 膝の固定を大腿四頭筋だけでやるのではな すが そのときに脛骨が内外反していない いうことは つま先が外を向いていると 10

2 本 誌 の 膝 に 関 する 特 集 で 何 度 も 登 場 していた そび が 大 きいということです 逆 にいえ ば それ 以 下 は 関 節 弛 緩 性 がない とい うことになります 関 節 弛 緩 性 は 症 状 がな いので 正 常 な 動 きの 範 囲 が 大 きいことを 示 していることになります 膝 の 関 節 弛 緩 性 といえば 過 伸 展 の だいている 八 木 先 生 に ここでは 膝 関 節 の 動 き および 膝 関 節 不 安 定 性 について 整 理 して いただいた 膝 関 節 の 基 礎 的 理 解 と 膝 の 2 つ の 関 節 の 不 安 定 性 についての 詳 細 な 解 説 であ る 本 日 は 膝 関 節 の 動 き というテーマで よろしくお 願 いします 膝 関 節 の 動 き は まず 正 常 な 動 き と 異 常 な 動 き に 分 けられます( 表 1) 正 常 な 動 き には 大 腿 脛 骨 関 節 (FT 関 節 ) における 屈 曲 伸 展 膝 蓋 大 腿 関 節 (PF 関 節 )における 膝 蓋 骨 の 動 き それとは 別 に 関 節 弛 緩 性 があります 関 節 弛 緩 性 (laxity)というのは 東 大 式 の 関 節 弛 緩 性 テストがよく 用 いられま す 膝 では 伸 展 10 以 上 を 関 節 弛 緩 性 あり と 表 現 します いわゆる 関 節 の あ 表 1 膝 関 節 の 動 き ことをいう? そうです 本 邦 では 0 以 上 の 伸 展 を 過 伸 展 とか 反 張 膝 呼 ばれることが 多 いようですが 以 前 海 外 の Dr. と 議 論 したとき 過 伸 展 (Hyper extension) という 概 念 はない 正 常 範 囲 (Hyper mobile) だ という 話 になったことがあ りました 0 を 基 準 にすると 過 伸 展 と か 伸 展 不 全 とかになりますが 健 側 を 基 準 とすれば その 人 それぞれで 基 準 値 は 異 なることになります 過 伸 展 と 関 節 のあそび 正 常 な 動 き frontal rotation, coronary rotation, glide, tilt prefemoral fat pad 異 常 な 動 き 123 10 tightness stiffness やぎ しげのり 先 生 extension lag ヒトの 関 節 は 骨 と 骨 を 関 節 包 や 靱 帯 で つながれたものです 蝶 番 のように 単 軸 で 動 くものではありません その 関 節 包 や 靱 帯 の 分 だけ 前 後 左 右 に あそび があり ます それは 正 常 な あそび で 自 動 的 にはその あそび を 動 かすことはできま せん 他 動 的 に 動 かすと あそび がある ことがわかるというものです 他 動 的 に あ そび を 利 用 して 靱 帯 が パツッ と 張 るまで 動 かして 靱 帯 の 緊 張 をテストして いるわけです その 数 mm 動 くという 条 件 があるから つまり あそび があるか らテストが 成 り 立 っています 靱 帯 のスト レステストは パツッ と 制 動 されるま 15

膝関節不安定性に対する理学療法 靱帯付着部 骨 48 72h 4w 6 8w 線維芽細胞 の出現 線維芽細胞の増殖 瘢痕組織は 改変され 腱様組織を形成 炎症期 増殖期 成熟期 図 2 靱帯損傷の修復過程 図 1 靱帯損傷 骨から剥がれることはなく 付着部の近くで断裂する ことが多い 内側 伸展位 外側 図 3 FT 関節における膝屈曲 内側は 脛骨上で大腿骨が滑るような動きをする 外側は 大腿骨が後方へ転 がり roll back 脛骨が前方へ出るような動きをする 屈曲位 内側半月板 外側半月板 図 4 半月板の動き 膝屈曲にともない半月板は後方移動し 深屈曲において外側半月板後節は後方 へ逸脱する り背屈 外転位で固定される必要がありま ササイズに必要な膝関節機能解剖 と題し 曲 120 になると内旋 30 に達していると す もし底屈位で固定されたら 修復は無 て open kinetic chain における 膝関節 いうことです 視されていることになるので 最終的には の動き について述べさせていただきまし これは 大腿骨と脛骨の形状に由来して 関節不安定性を残すことになり 選手に たので 詳細はそちらを参考にしていただ います 脛骨関節面内側は凹状 外側は凸 とっては 後遺症となるかもしれません き ここでは簡単に述べます 状をしています 膝屈曲すると 大腿骨は それは 治った ということではない 膝関節は 屈曲に伴い 大腿骨外側顆は 脛骨内側では滑り 脛骨外側では転がり 炎症が治まった 脛骨外側関節面上を roll back し 120 で 大腿骨が roll back します 図 3 する そういうことです 組織が損傷すれば 接触点は 14mm 後方移動します 屈曲 90 と 脛骨近位外側は前方移動するように内 出血や腫脹が生じます 図 2 そのときの 120 では内旋30 に達します つまり 膝 旋運動が生じます 半月板は 内側半月板 炎症が治まっただけで 損傷部の修復が完 屈曲とは 内側を軸に脛骨近位外側が前方 MM は C 型を呈し 外周縁が冠状靱 了したわけではない 初期には炎症に対処 移動するように屈曲 内旋 内反する複合 帯により脛骨に固定されており 関節包と し 増殖期には靱帯に過度なストレスをか 運動である ということです 内側側副靱帯 深層 とも固定されている けないでエクササイズを実施し 成熟期に 膝を伸展させていくと 膝関節最終伸展 ので可動性は少ない 外側半月板 LM はスポーツ活動を行って靱帯にストレスを 域で急に脛骨がクルンと外旋する運動が は O 型を呈しており 後角は膝窩筋腱 かけることが必要になります 治癒過程を みられることがあります screw home が通るため関節包に付着していなく 外側 無視すると 不安定性が残存し パフォー movement と呼ばれます 回旋しない 側副靱帯ともくっついていないため 前後 マンスに影響する可能性があると思います 人もいれば 内旋している人もいます そ に大きく動きやすい構造をしています 図 では 本題の 膝関節の動き を不安定 もそも内外旋 0 はどこか という基準が 4 正座のような深屈曲位すると 外側半 性の観点からお話しいただけますか 定まっていないので これを説明するのは 月板の後節は 10 15mm 後方移動し 関 難しいです 明らかなことは 膝屈曲にと 節面からこぼれ落ちます 大腿脛骨関節 もない脛骨は内旋方向に動き 屈曲 90 に 骨の形状と半月板の構造がそうなってい 本誌 133 号において 関節可動域エク なると全例が脛骨内旋位になっており 屈 るので 膝が屈曲するときには内側を軸 17

に 内旋しながらというこ とになります この動きを スムーズに行うために さ まざまな筋や靱帯が作用し ているわけです 前方不安定性 膝関節前方不安定性は ACL 損傷によって生じま 図 5 外反ストレステスト 膝屈曲 20 にて MCL 前方線維の緊張を触知しながら外反ストレスを かける 図 6 MCL 前縁の大腿骨付着部での圧痛 を確認する 間区へ 後外側から前内側へ走行していま いるので 足が接地してから筋が収縮して 内側面の鵞足後方に終わっています 薄い す 大腿骨付着部は矢状面にあり 脛骨付 姿勢を立て直すのでは 間に合わない す 膜状の靱帯で MCL の浅層を構成してい 着部は水平面にあります ると 予防のためには 足が地面につい ます 後方線維は MCL の深層を構成し 古賀英之先生 東京医科歯科大学 は てから姿勢を立て直す エクササイズでは 内側関節包靱帯とも呼ばれます 厚くて 膝 ACL 損傷の受傷シーンの分析をされ なく これからは どんな姿勢で足を接地 関節包を取り囲んでおり 内側半月板と密 ています 足が地面に接地した瞬間から するか を考慮したエクササイズが重要に に連結しています 膝外反が生じ 足が接地してから 30 なると思います 膝伸展位では後方線維が緊張し 膝屈曲 40mmsec 後には 脛骨は大きく前方移動 前方不安定性に対する理学療法について していくと前方線維が緊張します さらに しています この瞬間に ACL 損傷したと は 本誌 123 号 最先端 ACL リハの実際 膝を屈曲していくと 前方線維の大腿骨側 理解できます そのとき脛骨は内旋して をご参照下さい 付着部は巻き取られるように緊張が高まっ す ACL は 大腿骨外側 顆の顆間窩側から脛骨前顆 ていきます 後方線維はアコーディオン おり その後 脛骨は外旋していきます 脛骨は完全に前方脱臼し そのあと急激に knee in & toe out 膝外反 外旋 カーテンのように折り畳まれていきます 脛骨は戻ってきて 大腿骨外側関節面と脛 knee in & toe out とは 川野哲英先生 MCL は外反を制動する靱帯ですので 骨後面がぶつかりながら整復されると 報 FTEX institute が提唱したダイナミックア 診断は外反ストレステストにおいて行われ 告しました ライメント 動的な膝の相対的な肢位 を示し ます 図 5 膝屈曲 20 にて行えば MCL ここで先ほどの正常膝の動きから考える た用語で 膝の関節運動を示した用語ではあ 前方線維をテストすることができ 膝伸展 と 膝が屈曲位にあれば 脛骨関節面の後 りません knee in & toe out においては 位にて行えば MCL 後方線維をテストでき 方に荷重線が落ち かつ外反していれば 膝外反していることは確かだと思いますが 脛 ます また 圧痛によって 損傷部位が大 外側後方に荷重が乗っていることになりま 骨が外旋している場合もあるし 内旋している 腿骨付着部側なのか 脛骨付着部側なのか す 着地した瞬間 脛骨外側顆の凸の山の 場合もあることは 過去に加賀谷善教先生 昭 をチェックします 図 6 鵞足炎と混同 後方に荷重が ドン と乗るということで 和大学 が報告しています knee in & toe されることもありますので しっかりと鑑 す その荷重ベクトルは 脛骨外側を前方 out 膝外反 外旋 ではありません 古 別できる触診技術も要求されます に押し出す力となり 正常な あそび の 賀英之先生の研究は 受傷肢位だけでなく 時 受傷機転は ジャンプ着地など膝屈曲位 範囲を超えて ACL を断裂させる 脛骨 間という観念が必要であることをわれわれに示 で外反したり 膝の外側からタックルされ 外側が大きく前方移動するために 内旋と してくれた貴重な研究だと思います て外反強制されるなどが挙げられます 多 くは 膝屈曲位での受傷なので 薄い前方 いう結果になると考えられます これを前 外側回旋不安定性といいます 内側不安定性 線維の大腿骨側付着部の損傷が 80 です 近年は ACL 損傷予防プログラムに注 内側不安定性 外反不安定性 は ここの圧痛を正確に診られることが大切で 目が集まっていますが そのエクササイズ MCL をはじめとする内側支持機構の損傷 す 膝伸展位で膝の外側からタックルを受 として バランスディスクや BOSS など によって生じます MCL は 前後に幅の けて受傷した場合 厚い後方線維が損傷 の不安定なものの上で片脚立位バランスの ある靱帯で 前方線維と後方線維に分けら するので重症となります open 非荷重 エクササイズが行われることがあります れます 前方線維は 大腿骨内側上顆線上 の状態で損傷することはありませんので 足が接地して 30 40mmsec で受傷して 内転筋結節の前方 からはじまり 脛骨 closed 荷重位 で評価するのも大切です 18

3 膝の動きを診る 膝のゆるみと 関節モビライゼーション 小川大輔 目白大学 保健医療学部 理学療法学科 助教 理学療法士 ることにしました ではここからは 内容と結果をまとめた 資料を元に説明させていただきます 牽引で実験 関節可動域制限や疼痛に対する徒手療法に詳 小川 今回は関節牽引を行いました 図 1 しく 最近では膝のゆるみについても研究し 牽引は昔から行われている治療手技の一つ ている小川助教に 膝のゆるみに関する研究 であり 現在では物理療法のなかで首や腰 データとそれを踏まえた関節モビライゼー を引っ張るのが一般的となっています ションの方法について伺った さらに 関節モビライゼーションのなか でも使われており ROM 改善や疼痛の軽 最大ゆるみの肢位 安静肢位を 探る 減が目的となっています 膝のゆるみに関して研究されたとのこと や最終域感 end feels をチェックするの ですが どういった内容 に牽引することもあります 小川 今回私たちは 健常者の膝関節が 牽引をすることで安静肢位をみつける もっともゆるんでいる角度を調べました 小川 そうです 安静肢位とは関節の周囲 一方 たとえば ACL 断裂という症例に 具体的には膝関節を牽引し 角度や強度に の組織がもっともゆるんだ状態のことであ おいて 前方引き出しの量がどの角度で大 よって関節裂隙がどれくらい開いたかを調 り 膝関節で言えば 屈曲 25 40 と言わ きくなるかというような 膝の不安定性に べるというものです れています 図 2 しかし 先ほども言っ 関するものはたくさん研究されています いわゆる最大ゆるみの肢位を探った たように その根拠となるはっきりとした ということは それが安静肢位の根拠なの 小川 そうです そもそもゆるみの肢位と データが実はないのです か とも考えてしまいますが 安静肢位と は 関節の接触面が小さく周囲組織がゆる 牽引する強度についても Kaltenborn いうのは靱帯の制動機能の指標ではありま んでいる状態のことで 最大ゆるみの肢位 による分類でグレードIからⅢまで分かれ せん 本来ゆるみとは 正常な膝が全体と を 安静肢位 とも言います 教科書など ていますが 図 3 では根拠となるデー してどの角度でどれくらいゆるんでいるの では 膝関節の場合 25 40 が安静肢 タはどうなのかというと明確なものが示さ か総合的に捉えていないといけません し 位とされており 理学療法士にとっては一 れていない とくに強度に関しては質的な かし そうした視点をもった研究は行われ 般的な知識となっています もので量的な指標はなく 症例数を重ねた ていません ですから ACL も PCL も 安静肢位で関節の動きが制限されている ベテランでないと正確な判断が難しい場合 関節包も どれも同時に引っ張ることので 場合 関節モビライゼーションが適応にな も多いでしょう きる牽引を行い 離解の程度をみることが りますが しかし実はそうした評価の基準 論文や学会発表などにも 根拠となる ゆるみの判断としてもっともふさわしいと となる安静肢位を示す根拠となるデータに データはない 考えました 図 6 明確なものがないのです 関節に対してア 小川 膝関節のゆるみに関しては 過去に プローチする際 安静肢位がどこなのかわ 論文が 2 つと学会発表が 1 つありますが かっていないと 正確に評価治療を行えな 人工膝関節全置換術 TKA 患者のゆる 牽引時 膝がもっともゆるむのは 屈曲 51 付近 具体的な方法は い場合が出てきてしまうでしょう ですか みに関するものであったり 健常者の膝を 図 7 P.24 に示した 2 つの目的のもと ら今回 それをはっきりさせるために調べ しかも角度を変えてみてみましょうとか 膝関節に既往のない健常成人 18 名 男女 評価手技として関節の遊び joint plays おがわ だいすけ先生 そういった視点の論文はありませんでした 図 4 5 文章は P.32 に続く 22

膝のゆるみと関節モビライゼーション 図 1 3 図2 First Stop GradeⅠ Loosening GradeⅡ Tightening Stack Zone GradeⅢ Stretching TZ Stack taken-up 図 3 3 図4 Traction of a bone results in separation of joint surfaces. 図5 図6 図が多数で本文に記された位置にうまく掲載できなかったことをお断りし お詫びします 23

膝関節に対する牽引と滑りのモビライゼーションの一例 本文 P.35 参照 ① Nordic system における関節モビライゼー 引 関節の最大ゆるみの肢位であるので牽引の ションで使用するバンド もっとも牽引の効果が高い ② ③基本姿勢 バンドは骨盤 殿部 に巻き ⑧バンドを使わない手法での 安静肢位での牽引 両手も固定し 安定した牽引ができるようにする ⑨安静肢位での前方滑り ④基本姿勢 牽引したい関節の近位も このよう ⑩安静肢位での後方滑り に固定する ⑪屈曲制限に対する制限内域での牽引 ⑤これまで行われていた一般的な安静肢位での牽 ⑫屈曲制限に対する制限内域での後方すべり 背 引 屈曲 25 40 が安静肢位とされ その角度 臥位 で牽引していたが 今回のデータによればもっと ⑬屈曲制限に対する制限内域での後方すべり 腹 もゆるんだ角度ではない 臥位 ⑥バンドを使わない手法で行った同様の牽引 ⑭伸展制限に対する制限内域での牽引 ⑦今回のデータを元にした屈曲 51 付近での牽 ⑮伸展制限に対する制限内域での前方すべり 25