自 動 音 量 調 節 が 可 能 なオーディオプレイヤの 提 案 井 上 寛 生 1 黒 川 真 毅 1 速 水 治 夫 1 マルチメディア, 分 散, 協 調 とモバイル (DICOMO2014)シンポジウム 平 成 26 年 7 月 CD やダウンロード 販 売 によって 手 に 入 れた 音 楽 は 曲 ごとに 音 量 にばらつきがあり, 音 楽 鑑 賞 時 に 再 生 する 曲 を 変 える 度 に 聴 取 者 が 音 量 を 変 更 する 必 要 がある.また, 曲 によってはその 途 中 で 音 量 を 調 節 しなければならないことも ある.そこで, 曲 の 音 量 を 目 標 として 定 めた 音 量 へ 自 動 的 に 設 定 することで,これらの 問 題 を 解 決 することを 試 みた. 本 研 究 では 音 量 を 自 動 で 調 節 して 再 生 することのできるオーディオプレイヤを 開 発 し, 動 作 実 験 とアンケート 調 査 か ら 音 量 の 自 動 設 定 による 効 果 を 検 証 する. 動 作 実 験 によるアプリケーションの 検 証 とアンケート 調 査 の 結 果 から,ダ イナミックレンジや 曲 調 への 考 慮 が 必 要 であることや,アプリケーションを 使 用 する 上 でよりユーザインターフェイ スや 操 作 性 について 改 善 する 必 要 があるが, 音 量 の 自 動 調 節 には 実 用 性 があるという 結 果 が 得 られた. 1. は じめに 近 年,デスクトップ ノート タブレットなどのコンピ ュータや,スマートフォン デジタルオーディオプレイヤ が 普 及 し, 音 楽 の 再 生 機 能 を 持 った 端 末 が 増 加 したことで 誰 もが 自 宅 や 出 先 など 様 々な 環 境 で 音 楽 を 聴 く 機 会 が 増 え ている. 発 売 される 曲 は 流 行 や 技 術 の 進 歩 ととともに 年 々 変 化 しており, 以 前 はアナログ 機 器 によって 曲 が 作 られていた が, 現 在 ではデジタル 機 器 による 制 作 がほとんどとなって いる.アナログ 機 器 が 主 流 となっていた 頃 は,ミキシング 2 やマスタリング 3 などの 編 集 作 業 はやり 直 しが 困 難 であ り,レコーディングの 品 質 が 重 視 されていたがデジタル 機 器 の 普 及 によって 編 集 作 業 が 容 易 になり,ミキシングやマ スタリングも 重 視 されるようになる.こうした 背 景 に 伴 い, マスタリングによって 小 さい 音 がより 聞 こえるように 音 圧 レベルを 上 げる 傾 向 になり, 過 去 から 現 在 にかけて 発 売 さ れた 曲 には 音 量 にばらつきが 出 るようになった. 本 研 究 では, 音 楽 鑑 賞 時 における 音 量 調 節 の 手 間 に 対 し て, 再 生 する 曲 が 変 わるときに 自 動 で 音 量 を 調 節 するアプ リケーションを 開 発 し, 音 楽 鑑 賞 をする 者 への 負 担 軽 減 に 役 立 つかどうかを 検 証 する. 2. 問 題 点 と 解 決 策 2.1 問 題 点 ジャンルや 発 売 された 年 代 によって 曲 の 音 圧 レベルは 様 々であり, 再 生 する 際 にいくつかの 問 題 がある. まず,いくつかの 曲 を 連 続 で 再 生 する 際, 再 生 する 曲 を 変 える 度 に 聴 取 者 が 音 量 を 調 節 するのは 手 間 となる. 例 と して,ほかの 作 業 をしながら 曲 を 再 生 するような 場 面 があ るとする. 作 業 時 間 を 1 時 間,1 曲 の 長 さを 3 分 と 仮 定 し たとき,すべての 曲 の 音 量 を 調 節 したとすると 20 回 もの 音 量 調 節 をすることになる. また, 曲 の 音 量 を 調 節 する 際, 適 切 な 音 量 の 調 節 量 は 聴 いてみなければわからない.ダイナミックレンジの 大 きい 曲 では 先 頭 部 分 の 音 量 が 小 さく, 途 中 で 大 きくなるような 場 合 がある.このような 曲 では, 曲 が 変 わるときに 先 頭 部 分 に 対 し 適 切 な 音 量 に 調 節 するが, 音 圧 レベルの 高 い 部 分 が 再 生 された 際 には 音 量 が 大 きすぎるため, 再 び 音 量 を 調 節 しなければならないだけでなく, 耳 を 痛 めてしまう 可 能 性 もある. これらの 再 生 時 に 曲 を 再 生 するときや, 曲 中 に 音 量 を 調 節 しなければならないことや, 適 切 な 音 量 を 探 さなければ ならないことが 問 題 となる. 2.2 解 決 策 音 量 調 節 の 手 間 は, 曲 を 再 生 する 際 に 曲 の 平 均 音 量 を 解 析 し, 解 析 した 結 果 から 自 動 で 音 量 を 調 節 することで 解 決 する.また, 適 切 な 音 量 への 調 節 は,オーディオプレイヤ に 通 常 のマスタボリュームスライダに 加 え,ターゲットボ リュームスライダを 設 ける.ターゲットボリュームスライ ダを 操 作 することで,あらかじめ 目 標 音 量 を 設 定 し,すべ ての 曲 の 音 量 を 目 標 音 量 と 同 じになるように 調 節 する. 3. 実 装 する 機 能 3.1 音 量 の 自 動 調 節 音 量 を 自 動 で 調 節 するためには,あらかじめ 目 標 となる 音 量 を 設 定 しておく 必 要 がある. 各 曲 が 読 み 込 まれた 際 に 波 形 を 解 析 し, 各 標 本 点 から RMS により 平 均 音 量 を 算 出 する. 目 標 となる 音 量 と 算 出 された 平 均 音 量 を 比 較 した 後, その 差 分 を 再 生 時 の 音 量 に 適 用 することで 自 動 調 節 を 試 み る. 例 として, 目 標 音 量 を-18dB として 定 める. 解 析 結 果 か ら 得 られた 平 均 音 量 は, 曲 A を-13.93dB, 曲 B を-14.80dB とする. 目 標 音 量 に 対 し 曲 A の 平 均 音 量 は 4.07dB 大 きい ことになり, 曲 B は 3.20dB 大 きいこととなる. 再 生 時 に 曲 A の 音 量 を 4.07dB 下 げ, 曲 B の 音 量 を 3.20dB 下 げるこ とで 出 力 される 二 つの 曲 の 平 均 音 量 は-18dB になる. 3.2 プレイリストによる 曲 の 管 理 再 生 したいファイルをその 都 度 開 くのは 手 間 とな って 1 神 奈 川 工 科 大 学 2 二 つ 以 上 のオーディオトラックを 調 節 し, 一 つのオーディオトラック に 混 ぜ 合 わせること 3 音 圧 レベルや 質 感 を 調 節 し,CD などのメディアとして 完 成 させるこ と
しまうため,プレイリスト 機 能 を 実 装 することで 連 続 的 な 再 生 を 可 能 にする.オーディオデータを 読 み 込 ませる 度 に プレイリストに 曲 が 追 加 され, 既 にリストに 追 加 されてい る 曲 は 後 から 削 除 できるようにする.また, 追 加 された 曲 の 並 べ 替 えもできるようにする. 3.3 柔 軟 なウィンドウ 操 作 作 業 中 に 使 用 できるオーディオプレイヤとし て 柔 軟 な ウィンドウ 操 作 をできることが 望 ましい. 画 面 の 最 小 化 だ けではなく,ウィンドウを 移 動 させたとき 画 面 端 で 吸 着 で きるようにするなど, 柔 軟 なウィンドウ 操 作 をできるよう にする. 3.4 好 みに 合 わせたスキンの 適 用 Windows NT 6.0 以 降, 画 面 の 配 色 などテーマを 変 更 でき るようになり, 個 性 を 生 かした 自 由 な 設 定 ができるように なっている.また,Windows Vista Windows 7 と Windows 8 Windows 8.1 ではデザイン 思 想 が 異 なり,これまで 主 流 となっていたリッチデザインからフラットデザインへと 変 更 された. 現 在, 普 及 しているオペレーティングシステム は 一 つに 統 一 されておらず,これらのデザインの 変 更 に 対 応 するために,ユーザがプレイヤのデザインを 変 更 できる ようにスキン 機 能 を 実 装 する. 4. 開 発 4.1 プラットフォーム 2013 年 12 月 では, 世 界 におけるオペレーティ ングシス テム 市 場 の 占 有 率 は Windows が 90.73%と,そのほとんど を 占 めている [1].2014 年 4 月 でサ ポー トの 終 了 す る Windows XP を 除 いても 占 有 率 は 59.51%と 半 数 を 超 えてい る [2]. 本 研 究 では, 開 発 した 自 動 音 量 調 節 の 仕 組 み をより 多 くのユーザへ 利 用 してもらうため,Windows NT 6.0 以 降 のオペレーティングシステムを 対 象 としたデスクトップア プリケーションとして 開 発 する. 4.2 開 発 環 境 開 発 は Windows 7 Ultimate 64bit で 行 い, 開 発 環 境 には 視 覚 的 なコントロールの 配 置 や 高 度 なヒンティングが 行 える Microsoft Visual Studio 2012 を 使 用 する. 開 発 言 語 には C# を 用 い.NET Framework 4.5 で 動 作 するアプリケーションを 開 発 する. 4.3 設 計 本 研 究 では 図 4.1 図 4.1 に 示 す 設 計 により,アプリケー ションの 開 発 をする. Main Form Agent 図 4.1 設 計 エージェント(Agent)はある 目 的 を 持 った 機 能 をま とめ たものとして 定 義 している.オーディオプレイヤでは 再 生 ボタンを 押 すことで 曲 を 再 生,シークバーの 操 作 により 再 生 位 置 を 変 更 するため, 動 作 上 では Main Form Agent と Audio Control Agent は 互 いにやりとりをしているように 思 える.しかし, 本 アプリケーションでは 保 守 性 再 帰 性 再 利 用 性 を 向 上 させるために, 各 エージェントは 互 いの 状 態 を 保 持 するためのメンバは 一 切 持 たせず,エージェント 同 士 が 互 いにやりとりをすることがないように 独 立 したも のとなっている.Main Controller が 各 エージェントのプロ パティにアクセスすることによって 管 理 操 作 をする. 以 下 に 各 エージェントの 役 割 を 列 挙 する. 1) Main Controller すべてのエージェントのインスタンスを 持 ち, 各 エ ージェントの 管 理 や 操 作 をする. 起 動 時 の 状 態 や 設 定 内 容 の 保 存 復 元 も Main Controller が 行 う. 2) Main Form Agent 再 生 ボタンやシークバーなどのユーザからの 操 作 の 受 け 付 けや,レベルメータといったユーザに 対 して 情 報 の 表 示 をするメインウィンドウを 提 供 する. 3) Playlist Form Agent いくつかのオーディオデータを 管 理 するためのイン ターフェイスと,オーディオデータの 追 加 や 削 除 を するプレイリストウィンドウを 提 供 する. 4) Option Form Agent ユーザに 対 しアプリケーションの 動 作 に 対 する 設 定 項 目 を 表 示 し, 設 定 内 容 を 保 持 するオプションウィ ンドウを 提 供 する. 5) Audio Control Agent オーディオデバイスに 対 する 操 作 や 平 均 音 量 の 解 析, 出 力 などの 音 に 関 する 機 能 を 提 供 する. 4.4 コントロールの 自 作 Main Controller Playlist Form Agent Option Form Agent Audio Control Agent ユーザインターフェイスにスキン 機 能 を 実 装 する にあ たり.NET Framework 4.5 で 使 用 されるコントロールではボ タンやトラックバーに 画 像 を 貼 り 付 けることができないた め, 画 像 を 貼 り 付 けることができるコントロールを 自 作 す る 必 要 がある. 自 作 したコントロールには Image 型 のプロ
パティを 実 装 し,プロパティに 対 して 画 像 を 設 定 すること で 見 た 目 を 変 更 できるコントロールを 実 装 する. 4.5 ImageButton コントロールの 実 装 ユーザインターフェイスにスキン 機 能 を 実 装 する にあ たり.NET Framework 4.5 で 扱 われるボタンコントロールで は, 画 像 を 貼 り 付 けた 際 にシステムのビジュアルスタイル が 適 用 されてしまい 変 更 することのできない 余 白 ができて しまう.そこで, 既 存 のボタンコントロールを 継 承 し, OnPaint イベントをオーバーライドすることで 独 自 の 描 画 を 行 えるようにする.ボタンに 使 用 する 画 像 は 一 つのファ イルの 中 にマウスアウト マウスオーバ マウスダウンの 3 つの 状 態 を 描 き,マウスの 座 標 や 左 クリックの 状 態 によ ってトリミングし, 通 常 のボタンと 同 じ 動 作 をする ImageButton コントロールを 実 装 す る. ま た, ImageToggleButton コントロールはトグルの ON と OFF そ れぞれの 状 態 に 対 してマウスアウト マウスオーバ マウ スダウンの 6 つの 状 態 を 描 くことで ON と OFF を 切 り 替 え られるトグルボタンとする.それぞれ 継 承 メンバとして 存 在 する Image プロパティを new キーワードで 意 図 的 に 隠 し, 通 常 のボタンコントロールと 同 様 の 操 作 で 画 像 を 設 定 できるようにする. 例 として ImageButton コントロールと ImageToggleButton コントロールの 画 像 の 例 を 図 4.2 に 示 す. ImageButton コン ImageToggleButton コン トロール トロール 図 4. 2 ImageButton コントロールと ImageToggleButton コ ントロールで 使 用 する 画 像 4.6 ImageSeekBar コントロールの 実 装 スキン 機 能 を 搭 載 したシークバーを 扱 う た めに, ImageSeekBar コントロールを 実 装 する.ImageSeekB ar コン トロールは 背 景 部 分 と 現 在 の 値 を 表 示 するバー 部 分 を 縦 に つなげた 画 像 と,つかむためのハンドル 部 分 の 二 つの 画 像 を 扱 う.float 型 の Value プロパティを 実 装 することでシー クバーの 値 を 0 から 1 の 少 数 で 設 定 取 得 できるようにし, Direction プロパティによりシークバーを 縦 方 向 と 横 方 向 に 変 更 できるようにする.また,マウスの 座 標 と 左 クリック の 状 態 によってシークバーを 操 作 できるようにし,set アク セサによりプロパティに 値 を 設 定 した 際, 瞬 時 に 見 た 目 が 反 映 されるようになっている.ImageSeekBar コン トロール の 例 として 背 景 とバーを 図 4.3 に,ハンドルを 図 4.4 に 示 す. 図 4. 3 ImageSeekBar コントロールの 背 景 とバー 画 像 図 4. 4 ImageSeekBar コントロールのハンドル 画 像 4.7 TransparentLabel コントロールの 実 装.NET Framework 4.5 で 扱 われる Label コントロールは 背 景 に 透 過 色 を 設 定 することができない.そこで,コントロ ールのスーパークラスとなる Control クラスを 継 承 し, WndProc メソッドと OnPaint イベントをオーバーライドす ることでコントロールに 直 接 文 字 を 描 画 し, 背 景 の 透 過 処 理 には TransparentLabel コントロールの 直 下 にある 背 景 を 自 身 の 背 景 画 像 として 反 映 させることで 擬 似 的 な 透 過 を 行 えるようにする.また, 文 字 の 大 きさによってコントロー ルの 大 きさを 自 動 で 適 用 する AutoScale プロパテ ィと, 文 字 揃 えを 変 更 できる TextAlign プロパティを 設 ける. 4.8 LevelMeter コントロールの 実 装 出 力 した 音 の 大 きさをメ ー タ で 表 示 す る た め の LevelMeter コントロールを 実 装 する.LevelMeter コントロ ールは 画 像 を 表 示 するための PictureBox コントロ ールを 継 承 し, 新 たに 設 けた Value プロパティに 0 から 1 の float 型 の 値 を 設 定 することで 表 示 できるように 設 計 する.また, メータは 値 を 直 接 表 示 できるリニアと 音 の 大 きさをわかり やすい 値 で 表 示 できるデシベルの 2 種 類 に 対 応 している. 4.9 Main Form Agent の 実 装 メインウィンドウに 自 作 したコントロールを 配 置 し, 各 コントロールが 操 作 されたときに 呼 び 出 されるイベントを 実 装 することで Main Controller から Main Form Agent の 操 作 を 検 知 できるようになっている.メインウィンドウのユ ーザインターフェイスと 各 部 名 称 を 図 4.5 に 示 す.
1 5 6 2 3 4 16 タイトルバー 終 了 ボタン 11 12 14 15 17 1. タイトルバー 2. オプションボタン 3. 最 小 化 ボタン 4. 終 了 ボタン 5. マスタボリュームスライダ 6. ターゲットボリュームスライダ 7. 再 生 ボタン 8. 停 止 ボタン 9. 前 へ 戻 るボタン 10. 次 へ 進 むボタン 11. リピートボタン 12. 音 量 自 動 設 定 ボタン 13. プレイリストボタン 14. ミュートボタン 15. シークバー 16. レベルメータ 17. ウェーブスコープ 13 10 8 7 9 リストビュー 図 4. 6 プレイリストウィンドウの 各 部 名 称 4.11 Option Form Agent の 実 装 オプションウィンドウには.NET Framework 4.5 で 用 意 さ れているコントロールを 使 用 し,アプリケーションの 動 作 の 設 定 をできるようにする.Option Form Agent は 各 設 定 項 目 のプロパティと, 設 定 が 完 了 したときのイベントを 実 装 することで Main Controller から 設 定 が 確 定 したときの 検 出 と 設 定 内 容 の 取 得 を 行 えるようにする.オプションウィン ドウのユーザインターフェイスを 図 4.7 に 示 す. 図 4. 5 メインウィンドウの 各 部 名 称 4.10 Playlist Form Agent の 実 装 プレイリストウィンドウには 自 作 したコント ロー ルと オーディオファイルを 管 理 するためのリストとして.NET Framework 4.5 で 用 意 されている DataGridView を 配 置 する. 通 常,DataGridView は 項 目 の 並 べ 替 えができないが,マウ スの 座 標 と DataGridView で 用 意 されているイベン トを 組 み 合 わせることで 並 べ 替 えができるようになっている.ま た,プレイリストの 項 目 が 選 択 されたときやウィンドウが 閉 じられたときのイベントを 実 装 し,メインウィンドウと 同 様 に Main Controller から 扱 えるように 設 計 する.プレイ リストウィンドウのユーザインターフェイスと 各 部 名 称 を 図 4.6 に 示 す. 図 4. 7 オプションウィンドウのインターフェイス 4.12 Audio Control Agent の 実 装 Audio Control Agent は 平 均 音 量 の 解 析 や, 再 生 停 止 と いった 音 を 出 力 するための 機 能 を 実 装 する. 本 研 究 で 開 発 するアプリケーションでは,オーディオファイルを 容 易 に 扱 うために Microsoft Public License でライセンスされてい る NAudio ライブラリを 使 用 する.また,Windows Vista と Windows 7 でミキサーコントロールを 扱 うために Code Project Open License でライセンスされている Vista Core Audio API Master Volume Control ライブラリをプログラムに 組 み 込 む. 4.13 Main Controller の 実 装 Main Controller はユーザインターフェイスを 持 たず, 各
エージェントとのやりとりやスキンファイル 設 定 ファイ ルの 読 み 書 きを 行 う. Main Controller が 曲 をプレイリストに 追 加 し, 再 生 する までの 流 れを 以 下 に 示 す. 1) Playlist Form Agent がオーディオファイルを 受 け 付 け,プレイリストにファイルを 追 加 する. 2) Main Form Agent が, 再 生 ボタンが 押 されたことを 検 知 し Main Controller へ 通 知 する. 3) Main Controller が Playlist Form Agent へ 選 択 されてい るファイルの 問 い 合 わせをする. Main Controller が Main Form Agent へ 設 定 されている ターゲットボリュームの 問 い 合 わせをする. 4) Main Controller が Audio Control Agent へ 選 択 されてい るファイルの 初 期 化 を 依 頼 する. Main Controller が Audio Control Agent へターゲットボ リュームの 設 定 を 依 頼 する. 5) Main Controller が Audio Control Agent へファイルの 再 生 を 依 頼 する. 4.14 ウィンドウ 吸 着 機 能 の 実 装 ウィンドウ 吸 着 機 能 の 実 装 にあたり, 標 準 の Form クラ スを 継 承 した 自 作 フォームにウィンドウがディスプレイの 画 面 端 に 近 づくと 吸 い 付 く 処 理 を 施 し,Main Form Agent と Playlist Form Agent に 継 承 させることでメインウィ ンドウ とプレイリストウィンドウが 画 面 端 で 吸 着 するようにして いる.また,ウィンドウの 吸 着 は 画 面 端 だけでなく,ウィ ンドウ 同 士 でも 吸 着 するようにもなっているため, 画 面 上 でのウィンドウの 配 置 が 容 易 になっている. 4.15 スキン 機 能 の 実 装 アプリケーションの 外 観 をスキンファイルに よっ て 変 更 できる 仕 組 みを 実 装 する.スキンファイルは XML で 記 述 し,コントロールの 位 置 や 画 像 へのファイルパス, 色 が 指 定 されており,スキンファイルが 読 み 込 まれた 際 に XM L の 構 造 を 解 析 しアプリケーションへ 適 用 する. 各 コントロ ールは set アクセサにより 外 観 が 即 時 反 映 されるため,ス キンファイルが 読 み 込 まれると 瞬 時 に 外 観 が 変 わるように なっている. 5. 実 験 5.1 使 用 機 材 本 実 験 で 使 用 した 機 材,ソフトウェアを 表 5.1 に 示 す. 表 5. 1 実 験 で 使 用 した 機 材 およびソフトウェア 機 能 メーカ 名 前 オペレーティ ン Windows 7 Ultimate Microsoft グシステム 64 bit オーディオイ ン Focusrite Scarlett 18i20 ターフェイス ヘッドフォン AKG Q701 スピーカ KRK V4 Series 2 オーディオケ ー ブル CANARE SPC01 開 発 環 境 Microsoft Visual Studio 2012 実 行 環 境 Microsoft.NET Framework 4.5 DAW ソフト Steinberg Cubase 6.5 音 声 波 形 編 集 ソ フト Coderium SoundEngine Free 5.2 使 用 楽 曲 使 用 する 楽 曲 は 平 均 音 量 に 対 しての 効 果 を 確 認 す るた め, 音 圧 の 高 いものから 低 いものまで 様 々な 曲 を 用 意 する. 楽 曲 は 著 者 が 制 作 したものを 使 用 するが, 様 々なジャンル の 曲 を 用 意 するため,P02A P02B に 神 奈 川 工 科 大 学 情 報 学 部 情 報 ネットワーク コミュニケーション 学 科 四 年 生 の 守 屋 将 斗 が 作 曲 した 曲 を, 許 可 を 得 て 使 用 している.P01B は P01A を-12dB した 音 源 であり,P02B は P02A をマスタ リングしていない 音 源 となっている.ファイルはすべてサ ンプリングレートが 44.1kHz,ビットデプスが 16bit の WAV フォーマットである. 本 研 究 の 実 験 で 使 用 する 楽 曲 を 表 5.2 に 示 す. 表 5. 2 実 験 で 使 用 した 楽 曲 のテンポとジャンル ファイル 名 テンポ ジャンル P01A 87 アンビエント P01B 87 アンビエント P02A 170 ドラムステップ P02B 170 ドラムステップ A 180 ロック B 204 フュージョン C 165 ポップ D 180 ロック E 70 オーケストラ F 122~142 オーケストラ 5.3 実 験 方 法 開 発 したアプリケーションを 使 用 し, 平 均 音 量 の 違 う 2 曲 を 録 音 しながら 再 生 する. 録 音 した 2 曲 の 平 均 音 量 の 差 が, 自 動 調 節 前 の 平 均 音 量 の 差 より 小 さくなっているかを 確 認 する. アンケートを 実 施 し, 自 動 調 節 前 の 音 量 差 と 自 動 調 節 後 の 音 量 差 が 小 さくなっているかを 確 認 してもらい, 聴 覚 上 でも 有 効 であるか 調 査 する. 比 較 は P01B,P02A と P02B, A~F の 9 通 りで 行 う. P01B では 同 じ 曲 だが 単 純 に 片 方 の 音 量 を 下 げた 場 合, 自 動 調 節 により 正 しく 音 量 が 戻 っているかを 確 認 し, P02A と P02B では 同 じ 曲 だがマスタリングによってダイナ
ミックレンジが 異 なる 曲 を 比 較 する. A~F では 異 なる 曲 同 士 をする. 5.4 実 験 の 準 備 オーディオインターフェイスの TRS 1 出 力 端 子 と T R S 入 力 端 子 をオーディオケーブルで 繋 ぎ,オーディオインター フェイスのソフトウェアミキサで TRS 出 力 端 子 か ら T RS 入 力 端 子 へ 経 路 を 設 定 し, 再 生 した 音 をそのまま 録 音 でき るようにする. オーディオインターフェイスの 再 生 サンプリングレー トと 録 音 サンプリングレートは 再 生 する 曲 に 合 わせ 44.1kHz とし,ビットデプスは 16bit とする. アプリケーションのターゲットボリュームは 最 大 値 か ら 4 割 の 位 置 に 設 定 する.オプションウィンドウにてター ゲットボリュームの 下 限 を-60dB に 設 定 してあるため,4 割 の 位 置 は-24dB となる.また, 確 認 のため 開 発 環 境 のコン ソールへターゲットボリュームの 値 を 出 力 したところ,タ ーゲットボリュームスライダの Value プロパティが 0.4,タ ーゲットボリュームが-24dB になっていることを 確 認 した. 5.5 平 均 音 量 の 計 算 と 比 較 各 曲 の 平 均 音 量 は 波 形 編 集 ソフト SoundEngine Free を 使 用 し, 波 形 編 集 ソフト 内 の 平 均 音 量 の 項 目 を 各 曲 の 平 均 音 量 として 扱 う. 自 動 調 節 前 と 自 動 調 節 後 の 正 しい 平 均 音 量 得 るには, 比 較 する 二 つのデータの 先 頭 と 後 尾 の 無 音 部 分 を 揃 え, 発 音 タイミングとデータの 長 さを 合 わせる 必 要 がある. 無 音 部 分 が 長 いとそのデータの 平 均 音 量 は 小 さくなり, 互 いの 無 音 部 分 が 異 なると 同 条 件 で ができなくなるため, DAW ソフトを 使 用 してサンプル 単 位 で 波 形 の 位 置 を 合 わ せた 後,データの 先 頭 と 後 尾 が 同 じになるように 揃 える. 波 形 の 位 置 を 揃 えたデータをサンプリングレート 44.1kHz, ビットデプス 16bit の WAV フォーマットで 出 力 し, 調 節 前 の 曲 のファイルサイズと 出 力 したファイルのサイズが 等 し く,データの 長 さが 同 じであることを 確 認 し, 調 節 前 の 曲 と 出 力 したファイルから 平 均 音 量 を 得 る. 5.6 アンケート 調 査 アンケートでは 音 量 の 自 動 調 節 の 効 果 を 聴 覚 上 でも 体 感 できるかを 調 査 する. 開 発 したアプリケーションを 実 験 協 力 者 に 使 用 してもらい,すべての 機 能 を 使 いアプリケー ションの 操 作 性 や 機 能 の 評 価 もしてもらう.アンケートの 内 容 を 以 下 に 列 挙 する. 音 楽 を 鑑 賞 する 際 の 環 境 について 音 量 の 自 動 調 節 の 効 果 があったか 1) アプリケーションのメインウィンドウの 機 能 の 理 解 について 2) アプリケーションのプレイリストウィンドウの 操 作 性 について 3) アプリケーションのオプションウィンドウの 機 能 の 理 解 について また,アンケートの 最 後 に 開 発 したアプリケーションに 対 する 意 見 を 記 述 してもらう 項 目 を 設 けた. 6. 結 果 6.1 実 験 の 結 果 各 楽 曲 の 平 均 音 量 と 実 験 によって 得 られた 結 果 を 表 6.1 に 示 す. 表 6. 1 各 曲 の 平 均 音 量 と 実 験 結 果 平 均 音 量 ファイル 名 調 節 量 調 節 前 調 節 後 P01A -10.82dB -24.00dB -13.18dB P01B -22.82dB -24.00dB -1.18dB P02A -7.78dB -24.00dB -16.22dB P02B -18.40dB -24.00dB -5.60dB A -10.40dB -24.00dB -13.60dB B -14.62dB -23.99dB -9.37dB C -16.61dB -24.00dB -7.39dB D -17.32dB -24.00dB -6.68dB E -18.16dB -23.99dB -5.83dB F -24.95dB -23.99dB 0.96dB 6.2 音 楽 を 鑑 賞 する 際 の 環 境 についてのアンケート 結 果 1 の(イ)から(エ)において 実 験 協 力 者 の 環 境 につい て 調 査 した 結 果 を 表 6.2 に 示 す. 表 6. 2 音 楽 を 鑑 賞 する 際 の 環 境 についての 結 果 はい の 割 合 普 段 音 楽 鑑 賞 をするか 91.3% 作 曲 レコーディング エンジニア (PA 等 )に 携 わったことがあるか 52.6% 曲 ごとの 音 量 にばらつきを 感 じた ことがあるか 95.7% 1 の(オ)において, 実 験 協 力 者 が 利 用 している 鑑 賞 手 段 についての 調 査 結 果 を 表 6.3 に 示 す. 表 6. 3 鑑 賞 手 段 についての 結 果 鑑 賞 手 段 回 答 数 itunes 12 ニコニコ 動 画 11 Windows Media Player 10 YouTube 9 AIMP3 1 1 プラグ 内 部 で Tip, Ring, Sleeve の 3 極 に 分 かれたアナログ 信 号 を 扱 う ためのバランス 伝 送 型 オーディオケーブルのこと
foobar2000 1 LISMO 1 尺 八 チューンズ 1 無 回 答 1 1 の(カ)において, 実 験 協 力 者 が 使 用 しているオペ レーティングシステムについての 調 査 結 果 を 表 6.4 に 示 す. 表 6. 4 オペレーティングシステムについての 結 果 オペレーティングシステム 回 答 数 Windows 7 Ultimate 64bit 3 Windows 7 Enterprise 64bit 2 Windows 7 Professional 64bit 6 Windows 7 Home Premium 64bit 3 Windows 7 Home Premium 32bit 1 Windows 8 64bit 1 無 回 答 7 1 の(キ)において, 実 験 協 力 者 が 使 用 しているオー ディオインターフェイスについての 調 査 結 果 を 表 6.5 に 示 す. 表 6. 5 オーディオインターフェイスについての 結 果 メーカ 製 品 名 回 答 数 BEHRINGER U-CONTROL UCA222 1 Creative Sound Blaster X-Fi Xtreme Audio 1 Creative X-Fi Go!Pro 1 Focusrite Scarlett 2i4 1 LINE6 TONE PORT KB37 1 Native Instruments KOMPLETE AUDIO 6 1 Realtek High Definition Audio 3 Roland EDIROL UA-4FX 1 Roland QUAD-CAPTURE 1 SONY UAB-80 1 Steinberg CI1 1 TASCAM US-144MKII 1 無 回 答 9 1 の(ク)において, 実 験 協 力 者 が 使 用 しているヘッ ドフォンおよびスピーカについての 調 査 結 果 を 表 6.6 に 示 す. 表 6. 6 ヘッドフォンおよびスピーカについての 結 果 メーカ 製 品 名 出 力 形 式 回 答 数 FOSTEX RS-N2 スピーカ 1 AKG K271MK2 ヘッドフォン 1 audiotechnica ATH-SJ11 ヘッドフォン 1 audiotechnica ATH-WS55X ヘッドフォン 1 Logicool X-140 スピーカ 1 Panasonic RP-HT260 ヘッドフォン 1 Razer Orca ヘッドフォン 1 Sennheiser HD598 ヘッドフォン 1 SONY MDR- CD900ST ヘッドフォン 3 SONY MDR-ZX700 ヘッドフォン 1 SONY SRS-A201 スピーカ 1 SONY XBA-1 ヘッドフォン 1 SteelSeries 5Hv2 ヘッドフォン 2 無 回 答 8 6.3 音 量 の 自 動 調 節 の 効 果 についてのアンケート 結 果 2 の(ア)から(ツ)において,アンケート 調 査 の 結 果 と 実 験 での 結 果 をまとめたものを 表 6.7 に 示 す. 表 6. 7 音 量 の 自 動 調 節 における 効 果 についての 結 果 音 量 が 大 きいと 感 じた 割 効 果 を 感 じ 合 た 人 の 割 合 前 者 後 者 同 じ P01B 100.0% 0.0% 0.0% 100.0% P02A と P02B 95.7% 4.3% 0.0% 87.0% P02A 0.0% 100.0% 0.0% 82.6% A 13.0% 78.3% 8.7% 87.0% B 81.8% 9.1% 9.1% 100.0% C 91.3% 4.3% 4.3% 82.6% D 91.3% 4.3% 4.3% 82.6% E 52.2% 34.8% 13.0 56.5% % F 95.7% 4.3% 0.0% 87.0% 6.4 操 作 性 についてのアンケート 結 果 3.1 の(ア)から(タ)において, 各 機 能 の 役 割 を 理 解 で きていたか 調 査 結 果 を 表 6.8 に 示 す.
表 6. 8 メインウィンドウについての 結 果 はい の 割 合 終 了 ボタン 100.0% 最 小 化 ボタン 100.0% オプションボタン 95.7% 再 生 ボタン 100.0% 停 止 ボタン 100.0% 前 へ 戻 るボタン 100.0% 次 へ 進 むボタン 100.0% リピートボタン 95.7% 音 量 自 動 設 定 ボタン 95.7% プレイリストボタン 100.0% ミュートボタン 100.0% マスタボリュームスライダ 100.0% ターゲットボリュームスライダ 95.7% シークバー 100.0% レベルメータ 91.3% ウェーブスコープ 95.7% 3.2 の(ア)から(ウ)において,プレイリストの 操 作 性 について, 各 操 作 を 行 えたか 調 査 した 結 果 を 表 6.9 に 示 す. 表 6. 9 プレイリストウィンドウについての 結 果 はい の 割 合 オーディファイルの 追 加 95.7% オーディファイルの 削 除 73.9% オーディファイルの 並 べ 替 え 100.0% 3.3 の(ア)から(カ)において,オプションウィンドウ の 各 設 定 項 目 の 理 解 について,オプションを 変 更 しその 役 割 について 理 解 できたか 調 査 した 結 果 を 表 6.10 に 示 す. 表 6. 10 オプションウィンドウについての 結 果 はい の 割 合 再 生 デバイス 項 目 100.0% レイテンシ 項 目 78.3% レベルメータ 項 目 82.6% レベルメータの 下 限 (db) 項 目 78.3% ターゲットボリュームの 下 限 (db) 項 目 87.0% スキンファイル 項 目 95.7% 3.4 の(ア)から(エ)において,アプリケーション 全 般 についての 調 査 結 果 を 表 6.11 に 示 す. 表 6. 11 アプリケーション 全 般 についての 結 果 はい の 割 合 じられたか ウィンドウの 吸 着 機 能 は 適 切 に 動 作 し 90.9% ていたか スキン 機 能 によってプレイヤに オリ ジ 95.5% ナリティは 出 るか 普 段 使 用 するオーディオプレイ ヤと し 45.5% て 使 用 できるか 7. 考 察 7.1 音 量 の 自 動 調 節 による 効 果 の 考 察 実 験 で 得 られた 平 均 音 量 の 値 について 考 察 を 述 べる. 考 察 を 述 べるに 当 たり, 自 動 調 節 の 適 用 前 と 適 用 後 の 平 均 音 量 をグラフにしたものを 図 7. 1 に 示 す. 0.00-6.00-12.00-18.00-24.00-30.00 調 整 前 の 平 均 音 量 調 整 後 の 平 均 音 量 図 7. 1 音 量 の 自 動 調 節 前 と 調 節 後 の 平 均 音 量 P01B は P01A を-12dB した 音 源 であり, 調 節 前 の 音 量 は P01A が-10.82dB,P01B が-22.82dB となっていることがわ かる.この 二 つの 音 源 に 対 し 音 量 の 自 動 調 節 をした 結 果, 調 節 後 はどちらも-24.00dB となり,その 差 は 0dB と 同 じ 音 量 になり, 目 標 音 量 に 調 節 できていることがわかる. 次 に P02A と P02B をする.P02B は P02A のマス タリング 前 の 音 源 であり, 音 圧 レベルが 低 くなっているた め 平 均 音 量 も P02A より 小 さい.この 二 つの 音 源 に 対 し 音 量 の 自 動 調 節 をした 結 果,どちらも 平 均 音 量 は-24.00dB と その 差 が 無 くなり 目 標 音 量 に 調 節 できている. その 他 各 曲 と では, 平 均 音 量 のもっ とも 大 きいものは P02A の-7.78dB,もっとも 小 さいものは F の-24.95dB となっている.それに 対 し, 自 動 調 節 後 はどれ も-24dB 付 近 となり, 平 均 音 量 の 最 大 値 と 最 小 値 の 差 は 自 動 調 節 前 が 17.17dB, 自 動 調 節 後 は 0.01dB と 大 幅 に 小 さく なっていることがわかる. 以 上 の 結 果 より, 音 量 の 自 動 調 節 によってそれぞれの 音 量 が 揃 ったといえる. 7.2 ターゲットボリュームと 自 動 調 節 後 の 平 均 音 量 につ 音 量 の 自 動 調 節 により 音 質 の 変 化 が 感 17.4%
いての 考 察 今 回 の 実 験 ではターゲットボリュームを 4 割 の 位 置 に 設 定 し, 目 標 となる 平 均 音 量 が-24dB になるようにしている. しかし, 実 験 結 果 では 自 動 調 節 後 の 平 均 音 量 はそのほとん どが-24dB へと 調 節 されたが,B E F は-23.99dB となっている. 自 動 調 節 した 曲 の 平 均 音 量 を 求 めるに 当 た って 出 力 した 音 を 録 音 した 際,デジタル 信 号 をアナログ 信 号 へと 変 換 し 再 びアナログ 信 号 からデジタル 信 号 へと 変 換 したこと, 録 音 した 際 のノイズが 0.01dB の 差 として 現 れた と 推 測 する. 7.3 実 験 結 果 とアンケートの 調 査 結 果 と 考 察 実 験 から 得 られた 結 果 とアンケートの 調 査 結 果 から, 調 節 前 の 平 均 音 量 と 自 動 調 節 の 効 果 について 実 験 により 得 ら れた 値 と 聴 覚 上 の 結 果 の 違 いについて 考 察 を 述 べる. 考 察 を 述 べるにあたり,アンケートの に 対 する 結 果 と 実 験 結 果 を 以 下 の 表 7.1 表 7. 1 と 表 7.2 に 示 す. 表 7. 1 実 験 結 果 とアンケートから 得 られた 音 量 音 量 が 大 きいと 感 じた 割 合 実 験 結 果 前 者 後 者 同 じ 前 者 後 者 P01 100.0% 0.0% 0.0% -10.82dB -22.82dB P02A と P02 95.7% 4.3% 0.0% -7.78dB -18.40dB P02 0.0% 100.0% 0.0% -10.82dB -7.78dB 13.0% 78.3% 8.7% -10.82dB -10.40dB 81.8% 9.1% 9.1% -10.82dB -14.62dB 91.3% 4.3% 4.3% -10.82dB -16.61dB 91.3% 4.3% 4.3% -10.82dB -17.32dB 52.2% 34.8% 13.0% -10.82dB -18.16dB 95.7% 4.3% 0.0% -10.82dB -24.95dB 表 7. 2 自 動 調 節 の 効 果 を 感 じた 人 の 割 合 自 動 調 節 の 効 果 を 感 じた 人 の 割 合 P01B 100.0% P02A と P02B 87.0% P02A 82.6% A 87.0% B 100.0% C 82.6% D 82.6% E 56.5% F 87.0% 聴 覚 上 の 曲 の 平 均 的 な 音 量 は, 実 験 により 得 られた 平 均 音 量 と 比 較 すると 概 ね 合 っていることがわかる.しかし, A では, 実 験 結 果 は-10.82dB と-10.40dB となっており,さほど 平 均 音 量 に 差 はないにもかかわらず, アンケートの 調 査 結 果 では 同 じ と 回 答 した 者 は 少 なく, A の 方 が 大 きいと 回 答 した 者 が 多 い 結 果 となっている. E においても 実 験 結 果 では-10.82d B と- 18.16dB となっており, 大 きな 差 があるにもかかわ らずア ンケートの 調 査 結 果 では 回 答 にばらつきが 出 ている.この 結 果 について 曲 を 聴 き 比 べてみると,A と E はどち らも 出 だしの 音 が 大 きいピアノから 始 まり,E はパート 数 や 音 数 も 少 なく 音 量 の 大 きい 部 分 と 小 さい 部 分 の 差 があ るダイナミックレンジの 大 きい 曲 であった. 本 研 究 で 開 発 したアプリケーションは 再 生 時 に 曲 の 音 量 を 決 定 し,ダイ ナミックレンジを 変 化 させずに 音 量 調 節 をする 仕 組 みであ るため,ダイナミックレンジの 小 さい 曲 では 大 音 量 部 分 と 小 音 量 部 分 の 差 は 小 さいが,ダイナミックレンジの 大 きい 曲 では 大 音 量 部 分 と 小 音 量 部 分 の 差 が 大 きくなる.ダイナ ミックレンジの 大 きい 曲 は 小 さい 曲 より 最 大 音 量 が 大 きく なるためこのような 結 果 になったと 推 測 できる. また, 音 量 の 自 動 調 節 による 効 果 についてアンケートの 調 査 結 果 では,ほとんどの 曲 において 効 果 の 体 感 ができた と 回 答 した 者 が 80%を 超 える 結 果 が 得 られた. E では 自 動 調 節 による 効 果 を 体 感 できた 者 が 56.5%しかいないことについて,E はダイナミックレン ジが 大 きいため 実 験 協 力 者 によっては 大 音 量 部 分 と 小 音 量 部 分 の 異 なる 箇 所 を 聴 き 比 べたため 結 果 が 分 かれたと 推 測 できる. 7.4 メインウィンドウにおける 機 能 の 理 解 と 操 作 性 につ いての 考 察 アンケート 調 査 によりメインウィンドウにお ける 機 能 の 理 解 は,すべてにおいて 90% 以 上 が 理 解 できたという 結 果 が 出 ている.これは 関 連 性 のある 機 能 を 同 じ 箇 所 に 配 置 し, 動 作 に 対 する 結 果 をアイコンとしてボタンに 表 示 する ことで, 使 用 者 が 各 機 能 の 動 作 に 対 してアプリケーション が 起 こす 反 応 に 対 し 理 解 しやすくなったからと 思 われる. アンケートの 4 におけるアプリケーションに 対 する 意 見 では 標 準 スキンでトグルボタンの ON と OFF の 状 態 が わかりづらいという 意 見 が 多 かった. 標 準 スキンではトグ ルボタンが ON のときはボタンの 背 景 画 像 の 上 部 が 暗 く 下 部 が 明 るくなっており,OFF のときは 上 部 が 明 るく 下 部 が
暗 くなっている.ボタンの 状 態 が 背 景 画 像 の 明 暗 だけであ ることや,アイコン 部 分 は 状 態 にかかわらず 常 に 白 色 であ ることが 状 態 の 違 いを 把 握 しづらい 原 因 であると 推 測 する. これに 対 しアイコン 部 分 を OFF のときは 灰 色 にし, 有 効 に なっていないことを 表 すことで 解 決 できると 思 われる. 7.5 プレイリストウィンドウにおける 操 作 性 についての 考 察 アンケート 調 査 によりプレイリストウィンド ウに おけ る 操 作 の 理 解 はオーディオファイルの 追 加 が 95% 以 上,オ ーディオファイルの 並 べ 替 えが 100%であり,オー ディオ ファイルの 削 除 は 73.9%という 結 果 が 得 られた. オーディオファイルの 追 加 は,オーディオファイルをプ レイリストウィンドウにドラッグ&ドロップすることで 追 加 でき, 並 べ 替 えは 対 象 となる 曲 をドラッグすることで 行 う.しかし,オーディオファイルの 削 除 はキーボードの Delete キーで 行 うため,マウスによる 操 作 とキーボードに よる 操 作 が 混 在 したことが,オーディオファイルの 削 除 の み 少 ない 73.9%になった 原 因 と 思 われる. 7.6 オプションウィンドウにおける 設 定 項 目 の 理 解 につ いての 考 察 アプリケーションのオプションウィンドウに おけ る 設 定 項 目 の 理 解 について 考 察 する. 考 察 を 述 べるにあたり, 事 前 アンケートとオプションウィンドウの 各 設 定 項 目 の 理 解 についての 調 査 結 果 を 表 7.3 に 示 す. 表 7. 3 オプションウィンドウにおける 設 定 項 目 の 理 解 に ついての 結 果 作 曲 等 の 経 験 全 体 有 り 無 し 再 生 デバイス 項 100.0% 100.0% 100.0% 目 の 役 割 レイテンシ 項 目 78.3% 91.7% 63.6% の 役 割 レベルメータ 項 82.6% 91.7% 72.7% 目 の 役 割 レベルメータの 下 限 (db) 項 目 の 78.3% 91.7% 63.6% 役 割 ターゲットボリ ュ ー ム の 下 限 87.0% 100.0% 72.7% (db) 項 目 の 役 割 スキンファイル 項 目 の 役 割 95.7% 100.0% 90.9% オプションウィンドウにおける 設 定 項 目 の 理 解 は,アン ケート 調 査 により 78% 以 上 が 理 解 できたという 結 果 が 得 ら れた. 作 曲 レコーディング エンジニア(PA 等 )に 携 わ ったことがある 者 は 91% 以 上 が 理 解 していたのに 対 し, 携 わったことのない 者 の 理 解 は 少 なかった.レイテンシやレ ベルメータの 下 限 に 対 する 理 解 は 特 に 少 ない 結 果 となって いる. レイテンシは 再 生 する 際 の 安 定 性 にかかわる 項 目 であ り, 設 定 した 値 が 大 きいほど 再 生 ボタンを 押 してから 発 音 されるまでの 時 間 が 遅 くなるが 安 定 した 再 生 ができる. 値 が 極 端 に 小 さい 場 合, 音 が 途 切 れるなどの 安 定 した 再 生 が できなくなる.レベルメータの 下 限 は 表 示 するメータで 無 音 とする 値 を 設 定 する 項 目 であり, 標 準 では-60dB となっ ている. 出 力 した 音 が-60dB を 下 回 るとメータは 最 低 値 と なり, 値 が 表 示 されなくなる.これらは 作 曲 レコーディ ング エンジニアに 携 わったことのある 者 は 目 にする 機 会 が 多 いため, 経 験 による 有 無 が 設 定 項 目 の 理 解 に 影 響 した と 推 測 できる. 7.7 アプリケーション 全 般 における 調 査 結 果 についての 考 察 アンケート 調 査 による 結 果 から 音 量 の 自 動 調 節 に より 音 質 に 変 化 が 感 じられたと 回 答 した 者 は 全 体 の 17.4%であ り,80% 以 上 が 音 質 に 変 化 を 感 じられなかったとい う 結 果 が 得 られた. 実 験 ではもっとも 調 節 量 の 大 きかった 曲 は P02A の-16.22dB であり,これは 情 報 量 に 直 すとおよそ 3bit の 損 失 に 相 当 する. 変 化 を 感 じられたと 回 答 した 者 のうち ほとんどが 作 曲 レコーディング エンジニアに 携 わった ことのある 者 であり,16bit のデータに 対 し 3bit 分 の 音 質 の 変 化 を 感 じたのだと 思 われる. 普 段 使 用 するオーディオプレイヤとして 使 用 でき るか という に 対 し, はい と 答 えた 者 は 45.5%しかおらず, アンケートの 4 の 回 答 にて 対 応 しているファイルフォ ーマットが 少 ないことや, 標 準 スキンでのトグルボタンの 状 態 が 確 認 しづらいことが, 普 段 使 用 する 上 での 問 題 とな っていたと 推 測 する. 8. お わりに 本 研 究 では, 音 楽 鑑 賞 時 における 音 量 調 節 の 手 間 に 対 し, 自 動 で 音 量 を 調 節 するアプリケーションを 開 発 することで 音 楽 鑑 賞 における 負 担 軽 減 を 試 みた. 実 験 によりアプリケーションが 様 々な 曲 に 対 して 正 し く 音 量 の 調 節 ができていることを 確 認 し,アンケート 調 査 の 結 果 からも 音 量 の 自 動 調 節 は 聴 覚 上 において 効 果 的 であ ることがわかった.しかし,ダイナミックレンジの 大 小 や 曲 調 によっては 音 量 を 揃 えるのが 難 しいことや,インター フェイスや 操 作 性 が 普 段 使 用 するオーディオプレイヤとし て 重 要 な 要 素 であることもアンケート 調 査 の 結 果 から 得 る ことができた. したがって, 音 量 調 節 の 手 間 と 最 適 な 音 量 への 調 節 はア プリケーションによる 自 動 設 定 で 軽 減 することができ, 実 用 性 はあるがダイナミックレンジや 曲 調 への 考 慮 が 必 要 で あるということ,アプリケーションを 使 用 する 上 でユーザ
インターフェイスや 操 作 性 は 重 要 な 要 素 であることの 二 つ の 問 題 点 について 解 決 が 必 要 であるといえる. 以 上 の 二 つ の 問 題 点 の 解 決 を 今 後 の 課 題 とし, 音 楽 鑑 賞 時 における 負 担 軽 減 のための 方 法 を 更 に 追 求 していく. 9. 謝 辞 本 研 究 において,ご 指 導 を 頂 いた 神 奈 川 工 科 大 学 情 報 学 部 情 報 メディア 学 科 黒 川 真 毅 准 教 授 と 神 奈 川 工 科 大 学 情 報 学 部 情 報 メディア 学 科 速 水 治 夫 教 授 に 深 く 感 謝 を 申 し 上 げ る.また, 実 験 に 必 要 なデータを 提 供 して 頂 いた 神 奈 川 工 科 大 学 情 報 学 部 情 報 ネットワーク コミュニケーション 学 科 四 年 守 屋 将 斗 と, 実 験 の 際 に 協 力 を 引 き 受 けて 下 さった 皆 様 に 深 く 感 謝 する. 参 考 文 献 1) Microsoft. ( 日 付 不 明 ). Windows XP Office 2003 サポート 終 了 の 重 要 なお 知 らせ. 参 照 先 : Microsoft: https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/lifecycle/xp_eos.aspx 2) NetMarketShare. (2013 年 12 月 ). Desktop Operating System Market Share. 参 照 先 : NetMarketShare: http://www.netmarketshare.com/operating-system-market-share.aspx