技 術 資 料 > 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 変 遷 と 改 善 に 関 する 取 り 組 み 149 技 術 資 料 Technical Data 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 変 遷 と 改 善 に 関 する 取 り 組 み * 伊 藤 英 樹 History and Progress of Atmosphere Heat-Treatment Furnace Hideki Ito Synopsis The oxidization of materials is the most important problem for heat-treatment. It needs a peeling process and decrease production yields. To solve the problems, atmosphere heat-treatment furnaces were developed. This paper will explain atomosphere furnaces, solutions for energy consumption improvements, and finally discuss a future atomosphere heat-treatment furnaces. 1.はじめに 雰 囲 気 熱 処 理 の 歴 史, 適 用 の 範 囲 は 広 い. 当 然 のこと ながら 古 くは 熱 処 理 炉 は 大 気 炉 であり, 熱 処 理 時 に 材 料 が 酸 化,あるいは 脱 炭 することは 自 明 の 理 であった. 現 在 でも 長 尺 の 棒 材 などは, 密 閉 型 の 熱 処 理 炉 での 処 理 が 不 可 能 なため, 必 然 的 に 大 気 状 態 で 熱 処 理 され, 表 層 部 には 厚 い 酸 化 スケール 層 が 形 成 される. 従 って 熱 処 理 後 のピーリング 処 理 ( 皮 むき 処 理 )は 必 須 の 工 程 である. 熱 処 理 後 に 規 定 の 材 料 サイズを 得 るためには,ピーリ ング 処 理 による 減 少 を 見 込 んで, 熱 処 理 前 の 材 料 の 径 な どサイズを 決 めておく 必 要 がある.つまり 熱 処 理 という 行 為 は, 材 料 の 無 駄 を 必 ず 伴 う 行 為 であった. ここに 解 法 を 与 えたのが 雰 囲 気 熱 処 理 であり, 真 空 熱 処 理 である.どちらも 熱 処 理 中 の 処 理 材 の 酸 化 反 応 をな くす,もしくは 抑 制 することにより,この 材 料 の 無 駄 をなくすアプローチであり,ピーリング 処 理 という 手 の 掛 る 工 程 を 省 く 試 みである. 本 論 では, 雰 囲 気 熱 処 理 の 説 明 と 改 善 の 歴 史 について 述 べることとする. 2. 鋼 の 雰 囲 気 熱 処 理 熱 処 理 される 対 象 としては 鋼 が 圧 倒 的 に 大 きなウエー トを 占 める. 鋼 の 熱 処 理 プロセスにおける 最 大 の 特 徴 は 変 態 であり, 変 態 点 を 境 にして 結 晶 構 造 の 変 化 が 見 られ,あるいは 熱 処 理 温 度, 加 熱 - 均 熱 後 の 冷 却 速 度 を 変 化 させることにより 鋼 の 機 械 的 性 質 は 大 きく 変 化 す る. 熱 処 理 の 種 類 も, 焼 入 れ, 焼 戻 し, 焼 準, 焼 鈍 など 多 岐 にわたり, 焼 鈍 処 理 一 つ 取 っても 様 々な 処 理 に 類 別 できる.また 鋼 は 炭 素 の 含 有 によってまさに 鋼 たる 機 械 的 性 質 を 得 ているため, 鉄 の 酸 化 ということ 以 外 に, 炭 素 が 酸 化 されて 材 料 から 流 出 する,いわゆる 脱 炭 という 現 象 も, 雰 囲 気 熱 処 理 上 無 視 できない 重 要 なポイントである. 2. 1 雰 囲 気 熱 処 理 の 試 み1 鋼 を 酸 化 させないために 何 をするかとなると, 当 然 の ことながら O 2,あるいは 分 子 構 成 上 酸 素 を 持 った 水 蒸 気,CO 2 などの 雰 囲 気 を 処 理 材 の 周 りから 除 外 すること である.もっとも 簡 単 なものは, 不 活 性 ガスで 充 満 した 2013 年 10 月 25 日 受 付 * 大 同 特 殊 鋼 機 械 事 業 部 ( Machinery Division, Daido Steel Co., Ltd.)
150 電 気 製 鋼 第 84 巻 2 号 2013 年 容 器 の 中 で 熱 処 理 を 行 うことにより,これらの 雰 囲 気 を 除 外 し, 酸 化 を 低 減 する 方 法 である. しかしながら, 酸 素 分 圧, 水 蒸 気 分 圧 などを 理 論 平 衡 上 酸 化 しないレベルに 低 減 することは 現 実 的 に 不 可 能 で ある. 従 って 材 料 の 酸 化, 脱 炭 は 避 けられない. 一 方 Fig. 1 に 示 すように, 比 較 的 低 温 であれば, 熱 処 理 時 間 はせいぜい 20 h 程 度 であるため 酸 化 反 応 の 進 行 レベルは 少 ないといえ, 歪 取 り, 低 温 焼 鈍 などでは, 不 活 性 ガス 下 での 熱 処 理 が 現 在 でも 行 われている. もっとも 真 の 不 活 性 ガスである Ar などは 非 常 に 高 価 なため,N 2 が 雰 囲 気 ガスとして 用 いられることが 多 い. Fig. 2. Increasing amount of oxidization of various steels (1000 h). 2. 3 雰 囲 気 熱 処 理 の 試 み3 鋼 の 熱 処 理 をする 場 合, 鉄 の 酸 化 よりも 炭 素 が 酸 化 す ること,すなわち 脱 炭 を 防 ぐことが 難 しく,その 対 策 が 肝 要 である.そこで 登 場 したのが, 理 論 的 に 脱 炭 しな い,かつ 浸 炭 もしない 平 衡 状 態 の 雰 囲 気 を 作 り 出 し, 熱 処 理 を 行 うという 試 みである. Carbon Potential Factor(PF 値 )による 雰 囲 気 制 御 Fig. 1. Increasing amout of oxidization of Carbon steel and 5 % Cr-0.5 % Mo steel (600 ( )). 2. 2 雰 囲 気 熱 処 理 の 試 み2 Fig. 2 に 示 すように,ステンレスでも 酸 化 が 無 視 でき ない 温 度 になると,N 2 などの 雰 囲 気 下 での 無 酸 化 処 理 は 難 しくなる.よって 材 料 が 酸 化 しないよう, 周 囲 の 雰 囲 気 に H 2 を 添 加 し 還 元 雰 囲 気 を 保 つ 手 法 が 適 用 されて いる. H 2 をわずか 雰 囲 気 に 添 加 するだけで, 雰 囲 気 中 の O 2 はほぼ 0 となる.これにより 材 料 の 酸 化 を 防 ぐことが できる. 一 方 Fig. 2 に 示 すように,H 2 との 反 応 により H 2 O が 発 生 し,H 2 と H 2 O の 分 圧 により 酸 化, 或 いは 強 脱 炭 雰 囲 気 になるので 注 意 を 要 する. H 2 は 極 めて 還 元 力 が 強 いので, 雰 囲 気 中 の O 2 のみな らず, 処 理 材 の 持 ち 込 む 酸 化 スケールをも 強 力 に 還 元 す る.これにより H 2 O が 発 生 するため 処 理 材 の 管 理 には 細 心 の 注 意 を 要 する. 酸 化 もしくは 脱 炭 温 度 以 下 で 還 元 処 理 を 行 い,その 後 昇 温 する 手 法 も 考 えられるが, 還 元 に 要 する H 2 量 は 膨 大 でコストは 非 現 実 的 なものとなる. 鋼 と CO-CO 2 ガスの 脱 浸 炭 機 構 は 3Fe+2CO Fe 3 C+CO 2 すなわち Boudouard 反 応 2CO (C)+CO 2 (1)による ((C) はγ 中 の 固 溶 C, 遊 離 Cementite:Fe 3 C の C) (1) 式 を 平 衡 定 数 K 1 とガス 分 圧 を 用 いて 表 すと (2) a c は 炭 素 の 活 量 で (3) (2),( 3) 式 より (4) 従 って, 炉 内 の CO 2,CO 濃 度 の 分 析 制 御 をするこ とにより 脱 浸 炭 なしの 雰 囲 気 にすることができる. 弊 社 では 雰 囲 気 の 管 理 指 標 として PF 値 を 用 いた 方 法 を 採 用 している.
技 術 資 料 > 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 変 遷 と 改 善 に 関 する 取 り 組 み 151 これは, 吸 熱 形 ガスと 呼 ばれる 高 CO, 高 H 2 雰 囲 気 ガスを 用 いて 熱 処 理 が 行 われる. 鋼 を 無 脱 炭 処 理 する 方 法 としては 理 想 的 な 処 理 方 法 といえ, 現 在 でも 最 も 代 表 的 な 雰 囲 気 熱 処 理 手 法 である. 当 社 では, 温 度 と 雰 囲 気 を 同 時 に 協 調 自 動 制 御 できる バッチ 炉 を 開 発 し, 業 界 に 広 く 使 用 され 好 評 をいただい ている. 現 在 それは STC R 炉 (ショートタイムサイクル ですぐ 次 の 処 理 に 取 り 掛 かれるバッチ 炉 )として 広 く 認 知 され, 弊 社 の 代 表 機 種 の 一 つとなっている. また,この 手 法 の 利 点 の 一 つは, 意 識 的 に 浸 炭 させた い 場 合 にも 雰 囲 気 を 調 整 して 対 応 が 可 能 なことである. そればかりでなく, 素 材 の 性 状 が 悪 く 素 材 の 時 点 でいく らかの 脱 炭 層 が 存 在 する 場 合 でも,もちろん 脱 炭 レベル にはよるが, 脱 炭 をリカバリーするいわゆる 復 炭 処 理 で さえ 可 能 である. 他 の 雰 囲 気 ではこのような 浸 炭,ある いは 復 炭 処 理 を 行 うことは 不 可 能 である. 脱 浸 炭 を 制 御 する 手 法 としては 理 想 的 と 言 える 一 方, 鋼 中 の 炭 素 の 平 衡 状 態 を 保 持 する 考 え 方 であるため, 他 の 金 属, 例 えばクロム 鋼 などの 合 金 鋼 を 処 理 する 場 合 に は,より 酸 素 と 反 応 しやすいクロムに 対 しては 酸 化 性 雰 囲 気 となる.この 場 合 にはクロムが 選 択 的 に 酸 化 される ため, 熱 処 理 後 の 酸 洗 ではクロム 酸 化 物 の 除 去 を 考 慮 す る 必 要 がある. この 点 においては,H 2 などの 還 元 力 の 強 い 雰 囲 気 で の 処 理 を 選 ぶことが 適 切 であり,クロムの 酸 化 物 発 生 を 抑 制 した 熱 処 理 に 努 めることにより 酸 洗 処 理 の 負 荷 が 軽 減 されるといわれている. は,H 2,CO が 含 まれる. この 排 ガスから, 酸 化 性 雰 囲 気 である H 2 O,CO 2 を 吸 着, 除 去 し 精 製 してから 炉 内 へ 送 ることで, 炉 内 に 還 元 性 のガスを 構 成 することができるという 装 置 である. 吸 着 は 専 用 の 吸 着 材 を 内 包 した 吸 着 塔 で 行 われるが, 一 定 量 の 吸 着 を 行 った 後 には 吸 着 材 を 真 空 ポンプを 用 い て 吸 引 することにより, 吸 着 材 から 吸 着 ガスを 分 離 し 再 生 させる 必 要 がある.よって 連 続 的 にこの 装 置 を 稼 働 さ せるためには 吸 着 塔 は 必 ず 対 にして, 交 互 にバルブで 系 統 の 切 換 えを 行 い, 吸 着 と 再 生 を 繰 り 返 す 必 要 がある. この 方 式 では, 炉 内 雰 囲 気 ガス 用 の 専 用 のガス 発 生 装 置 が 要 らなくなるばかりか, 雰 囲 気 ガスを 生 成 するため の 原 料 ガスさえ 必 要 としないという 点 で 画 期 的 であり, 省 エネへの 貢 献 度 は 非 常 に 高 い. 我 々はこの 装 置 を GG レスバーナ(ガス 発 生 装 置 を 不 要 とするバーナ)と 呼 ん でいる. 3. 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 省 エネルギー 省 エネおよび 環 境 対 策 は, 工 業 炉 に 常 に 付 いて 回 る 永 遠 の 命 題 といえる.どちらの 命 題 も 時 代 の 移 り 変 わりに 伴 い 要 求 は 強 くなっていくばかりである. ここでは, 雰 囲 気 熱 処 理 炉 に 関 する 省 エネの 試 みを 紹 介 する. 3. 1 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 省 エネの 試 み1 Fig. 3 に 示 すのは, 炉 内 蔵 形 バーナ 燃 焼 式 ガス 発 生 装 置 の 系 統 図 である.この 方 式 では,バーナ 燃 焼 熱 はまず は 炉 内 に 放 散 され, 熱 処 理 材 の 昇 温 に 寄 与 する.その 意 味 では 熱 処 理 材 加 熱 用 のバーナという 役 割 の 一 つを 担 っ ている. 一 方, 炉 内 ガス 生 成 の 目 的 のため, 空 気 を 理 論 燃 焼 空 気 量 より 少 なく 設 定 して 燃 焼 させるため, 排 ガス 中 に Fig. 3. Flow sheet of gas generator. 一 方,この 装 置 は 発 熱 型 ガス 発 生 装 置 であるため, 発 生 する H 2,CO 量 は 多 くはない. 従 って 脱 炭 平 衡 レベル の 高 い 熱 処 理 をする 場 合 には GG レスバーナを N 2 の 代 替 雰 囲 気 としての 目 的 にとどめ, 別 途 吸 熱 形 ガス 発 生 装 置 を 準 備 して, 雰 囲 気 ガスとして 併 用 して 使 用 する.N 2 の 代 替 雰 囲 気 としてもランニングコスト 削 減 効 果 は 非 常 に 大 きい.(Table 1)
152 電 気 製 鋼 第 84 巻 2 号 2013 年 Table 1. Energy saving estimation of gas generator. Gas generator 150 m 3 (N)/h N 2 bonb 150 m 3 (N)/h Electric power N 2 gas Consumption Cost Consumption Cost Total cost 13 kva 195 yen/h 0m 3 (N)/h 0 yen/h 1.56 10 6 yen/y 0 kva 0 yen/h 150 m 3 (N)/h 4500 yen/h 36 10 6 yen/y Gain : 34.4 10 6 yen/y 3. 2 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 省 エネの 試 み2 従 来 の 設 備 は, 無 酸 化 雰 囲 気 ガスが 充 満 した 加 熱 室 と 外 部 を 遮 断 するために, 加 熱 室 の 前 後 に 前 室, 後 室 を 設 置 し, 熱 処 理 材 はこの 部 屋 を 経 由 して 外 部 と 炉 内 を 行 き 来 する.(Fig. 4)この 室 内 を 事 前 に 加 熱 室 と 同 じ 無 酸 化 雰 囲 気 ガスを 用 いてパージ, 置 換 することにより 大 気 の 侵 入 を 抑 制 してきた.しかし, 室 内 の O 2 濃 度 を 1 % に 置 換 するために 室 容 積 のおよそ 3 倍,0.1 % に 下 げるた めには 5.3 倍 もの 無 酸 化 雰 囲 気 ガスを 必 要 とした. これに 代 わって 登 場 したのが 真 空 パージ 方 式 である. (Fig. 5) 前 室, 後 室 を 真 空 に 耐 えうる 構 造 としなければ ならないが, 室 内 を 真 空 に 引 くことで 簡 単 に 室 内 の 雰 囲 気 置 換 ができ, 必 要 な 雰 囲 気 ガス 量 も 室 容 積 と 同 じです むため, 雰 囲 気 ガスの 使 用 量 が 大 幅 に 削 減 される.また この 方 式 の 優 れた 所 は, 高 性 能 な 真 空 ポンプを 用 いるこ とにより, 前 室, 後 室 の 置 換 レベルを 追 求 できるため, 外 部 からの 大 気 侵 入 をほぼ 完 全 にシャットアウトした 高 純 度 な 雰 囲 気 を 形 成 できる 点 にある.これは, 後 述 する 極 低 酸 素, 極 低 露 点 窒 素 オンリー 炉 の 実 現 のためには 無 くてはならない 方 式 である. Fig. 4. Outline of continuous heat treatment furnace with front / rear chamber. Fig. 5. Outline of continuous heat treatment furnace with vacuum chamber.
技 術 資 料 > 雰 囲 気 熱 処 理 炉 の 変 遷 と 改 善 に 関 する 取 り 組 み 153 4. 今 後 の 雰 囲 気 熱 処 理 現 在 の 熱 処 理 炉 に 求 められる 要 求 として, 更 なる 高 品 質 処 理 への 対 応 がある 一 方, 環 境 対 策, 省 エネルギー, ランニングコストの 低 減 などがあるが, 今 後 さらにこ れらの 要 求 が 強 くなっていくことは 想 像 に 難 くない. 本 論 では, 今 後 の 雰 囲 気 熱 処 理 への 取 り 組 みについ て 述 べることとする. 4. 1 極 低 酸 素, 極 低 露 点 窒 素 オンリー 熱 処 理 炉 2.1 でも 述 べたように N 2 雰 囲 気 だけでは 脱 炭 を 防 ぐ ことは 困 難 である.それは 理 論 的 な 平 衡 状 態 にするこ とが 極 めて 困 難 であるからである.しかし 一 般 に 許 容 脱 炭 レベルという 指 標 があり,JIS でも 許 容 脱 炭 レベル を 規 定 している. すなわち 完 全 な 無 脱 炭 で 無 くとも 熱 処 理 として 受 け 入 れられる,あるいは 微 量 に 脱 炭 していることが 熱 処 理 条 件 であるというケースもある. 極 低 酸 素, 極 低 露 点 窒 素 オンリー 熱 処 理 炉 とは, 炉 内 O 2 量,H 2 O 量 を 極 低 レベルに 管 理 することにより, N 2 以 外 のガスを 用 いることなく 脱 炭 レベルを 制 御 する 試 みである. 熱 処 理 対 象 が 線 材 コイルだとすると, 線 材 径 と 処 理 材 の 重 量 から 材 料 の 表 面 積 が 分 かる. 処 理 材 表 面 が 一 様 に 脱 炭 するとして, 脱 炭 深 さ 処 理 材 表 面 積 から 許 容 O 2 量, 許 容 H 2 O 量 の 目 安 を 付 け, 脱 炭 が 許 容 できるレベルに 制 御 する 手 法 である.この 方 法 で は 前 述 の 真 空 パージ 室 の 設 置 が 必 須 であり, 加 熱 室 内 への 外 気 侵 入 をシャットアウトしている.また, 投 入 N 2 の 純 度 も 厳 しいレベル( 露 点 < -80 )が 要 求 され る. この 思 想 によって 提 案 される 熱 処 理 炉 は 以 下 の 様 な 優 れた 特 長 を 持 つ. 1 可 燃 性 のガスを 使 用 しないため, 理 論 的 に 炉 内 で 異 常 燃 焼 がおこらない. 2 炉 内 に COガスが 存 在 しないため, 環 境 に 優 れる. 3 吸 熱 形 ガス 発 生 装 置 が 不 要 なため,ガス 発 生 装 置 の イニシャルコストのみならず,ガス 生 成 に 関 わるラ ンニングコストを 要 しない.(Table 2) 4 脱 浸 炭 レベルの 異 なる 材 料 を 処 理 する 時 に, 炉 内 の 必 要 PF を 変 更 するための 時 間,コストがかから ない.つまりチャンスフリーの 熱 処 理 炉 である. Table 2. Gas saving merit of GG less system. N 2 only heat treatment furmace Endothermic gas Consumption Cost 4. 2 高 性 能 雰 囲 気 熱 処 理 炉 前 述 の, 理 論 的 に 脱 浸 炭 の 平 衡 状 態 の 雰 囲 気 を 形 成 する 時 に, 高 CO, 高 H 2 ガスを 持 つ 吸 熱 形 ガスの 他 に, ベースガスとして N 2 を 使 用 する. 雰 囲 気 の 管 理 指 標 で ある PF 値 を 上 昇 させたい 時 は 吸 熱 形 ガスを 炉 内 へ 投 入 し, 逆 に PF 値 を 下 げたい 時 は N 2 を 投 入 している. PF 値 の 上 げ 下 げの 制 御 を 容 易 に 行 うためには, 吸 熱 形 ガスおよび N 2 のそれぞれの 量 のバランスは 重 要 で ある. 一 方 吸 熱 形 ガス 中 に 含 まれる H 2 は, 直 接 は 熱 処 理 の 脱 浸 炭 の 制 御 に 寄 与 していないが,H 2 の 持 つ 高 い 熱 伝 導 率, 高 い 熱 伝 達 率 などは 熱 処 理 材 の 効 率 的 昇 温, 熱 処 理 材 の 均 等 な 温 度 分 布 などに 寄 与 する.H 2 が 100 % の 熱 処 理 炉 は 強 い 還 元 性 のみならず,この 様 な H 2 の 物 理 的 な 特 性 を 利 用 している.しかし 前 述 の 如 く, 水 素 炉 は 熱 処 理 材 の 酸 化 スケールなどの 表 面 性 状 管 理 に 細 心 の 配 慮 を 要 する. そこで, 脱 浸 炭 の 制 御 を 吸 熱 形 ガスを 用 いて 行 うこと を 基 本 としながら, PF の 制 御 性 を 確 保 するための N 2 に 替 えて H 2 を 導 入 することで, 両 者 の 良 い 特 徴 を 両 立 できないかという 試 みを 模 索 している. ランニングコストの 増 加, 設 備 費 用 の 増 加 など 問 題 は あるが, 熱 処 理 時 間 短 縮 により 吸 熱 形 ガスの 使 用 量 を 削 減 できる 可 能 性 もあり, 今 後 のテーマとして 期 待 がかかる. 5. 終 わりに Total cost 0m 3 (N)/h 0 yen/h 0 yen/y Conventional 150 m 3 (N)/h 3300 yen/h 26.4 10 6 yen/y Gain: 26.4 10 6 yen/y 雰 囲 気 熱 処 理 炉 についての 変 遷 と 改 善 への 取 組 みにつ いて 記 述 してきた. 最 後 に,ランニングコスト 削 減, 環 境 への 雰 囲 気 炉 の 提 案 と, 一 方 その 対 極 にあるといえ る,より 高 品 質 な 熱 処 理 を 行 うための 雰 囲 気 炉 という 2 つの 提 案 を 行 った. 雰 囲 気 炉 に 対 する 顧 客 および 環 境 保 護 の 観 点 からの 要 求 は,これからも 変 化 を 続 けると 思 われる.それを 踏 ま えて 常 に 新 しい 取 り 組 みを 継 続 して 行 きたい.