授 業 中 におけるコーディネートの 在 り 方 について 1 コーディネートはなぜ 必 要 なのか 調 査 研 究 チーム (1) 授 業 において 目 指 すべきもの 全 国 学 力 学 習 状 況 調 査 をはじめ 様 々な 調 査 から 本 県 の 子 どもたちに 必 要 なことは 次 の 3つであると 考 えられる そのうち 2 3については 主 に 道 徳 や 特 活 で 取 り 上 げられ 教 科 の 授 業 の 中 ではあまり 顧 みられなかった しかし 学 校 生 活 の 中 核 をなすものが 各 教 科 領 域 等 の 授 業 であることを 考 えると 各 教 科 の 授 業 の 中 でも 次 の3つすべてを 向 上 させること が 大 切 で ある ➀ 学 力 の 向 上 教 育 基 本 法 第 30 条 第 2 項 に 示 された 学 力 の 三 要 素 すべて 特 に 思 考 力 判 断 力 表 現 力 等 を 重 視 する 2 自 尊 感 情 の 向 上 自 尊 感 情 が 高 いことが 主 体 的 な 学 習 態 度 を 支 えている 3 集 団 の 親 和 性 の 向 上 話 し 合 いや 学 び 合 いが 充 実 するために は 集 団 の 親 和 性 は 不 可 欠 (2)コーディネートの 必 要 性 学 力 の 向 上 のためには 教 師 からの 一 方 的 な 説 明 や 問 題 演 習 のみの 授 業 から 脱 却 し 問 題 解 決 的 な 授 業 を 行 うことが 必 要 である その 中 で 子 どもたちの 考 えを 表 現 させ 共 有 吟 味 させていくことで 全 員 が 納 得 して 知 識 を 身 に 付 けることができると 考 える 教 師 は 一 人 一 人 の 考 えを 把 握 し 共 有 の 段 階 でどのように 子 どもたち の 考 えをつない だり 広 げたりするのか 吟 味 の 段 階 でどのように 比 較 させたり 補 足 させたり するのかを 適 切 に 判 断 して 実 行 しなければな らない また 子 どもの 発 言 をタイミングよ くほめたり 他 の 子 どもから 認 められるよう な 言 葉 をか けたりすることにより 自 尊 感 情 の 向 上 集 団 の 親 和 性 の 向 上 にもつなげていくことができ る これらは 授 業 を 進 めていく 中 で 重 要 なことであると 言 える 2 コーディネートの 在 り 方 (1) 授 業 展 開 の 型 ➀ 一 問 一 答 型 問 題 解 決 的 な 授 業 にならず 単 純 な 問 いだけで 進 められて いく 展 開 で 深 まりのない 授 業 になる 指 名 されなかった 子 は 傍 観 者 になりがちである まず 問 題 解 決 的 な 授 業 過 程 を 構 想 すること 次 に 適 切 な 課 題 ( 問 い)をつくること そ して 一 人 一 人 に 自 分 の 考 え を 持 たせることを 心 がけたい
2 意 図 的 指 名 型 3 教 師 司 令 塔 型 2 意 図 的 指 名 型 一 人 一 人 の 考 えを 把 握 した ら それをどのように 組 み 合 わ せて 発 表 させるかを 考 え 指 名 していく きちんとねらいの 達 成 に 向 けた 授 業 になる 全 てが 意 図 的 指 名 だと 構 想 から 外 れた 子 は 置 いていか れたようになり 意 欲 をなくす おそれがある B 君 はA 君 と 同 じ 答 えになっ たようだけどどう 考 えたのか な 3 教 師 司 令 塔 型 意 図 的 指 名 の 展 開 の 中 で 全 体 に 広 げたいときや 練 り 上 げて 深 めたいときに 行 う B 君 は A 君 の 考 えをどう 思 いましたか Cさんは 二 人 の 考 えをどう 思 いますか 4ペア 対 話 型 5 子 ども 主 体 練 り 上 げ 型 4 ペア 対 話 型 意 図 的 指 名 の 展 開 の 中 で 全 員 に 話 させたい 大 切 な 部 分 で 行 う 隣 同 士 で 互 いに 説 明 したり 相 談 したりする 内 容 に よっては ペアでなく 小 集 団 で 行 ってもよい 今 A 君 はどんなことを 言 った のかお 互 いに 説 明 してみま しょう 今 のA 君 の 意 見 についてど う 思 うかお 互 いに 自 分 の 考 え を 言 ってみましょう 5 子 ども 主 体 練 り 上 げ 型 教 師 の 問 いかけに 子 ども が 自 主 的 に 考 えを 出 し 合 う 教 師 は ねらいに 沿 ったやり とりになるように 調 整 役 にな る 2~4までが 十 分 に 機 能 するようになれば 5の 状 態 が 期 待 できる みんな A 君 の 考 えをどう 思 いますか
(2)コーディネートの 基 本 把 握 では 授 業 中 のあらゆる 場 面 で 子 どもの 姿 を 見 取 ろうとす ることが 大 切 である 教 師 の 話 を 聞 いているときの 姿 だけでなく 他 の 子 どもの 話 を 聞 いているときの 姿 なども 見 逃 してはならない 解 釈 では 見 取 った 子 どもの 姿 がなぜ 生 じているのか その 原 因 を 考 える 必 要 がある 例 えば 授 業 の 進 み 方 が 速 いのか 説 明 が 難 しくて 理 解 できないのか わかりきっていて 退 屈 なのか など 子 どもの 身 になって 想 像 してみることが 必 要 である 子 どもの 姿 を 生 じさせている 原 因 について 見 当 がついたら その 対 応 を 考 える もう 一 度 説 明 するのか 子 どもを 指 名 して 説 明 させるのか 隣 同 士 で 相 談 させるのか などの 選 択 をすることになる 指 導 の 手 立 てを 多 く 持 っていないと 選 択 の 幅 が 狭 くなってしまうことにな る 実 行 では それをどのような 言 葉 で 発 問 または 指 示 するか 誰 を 指 名 するかなど さら に 配 慮 が 必 要 となる (3)コーディネートの8つのポイント 授 業 は 最 終 的 には 分 かる できる を 目 指 すものであるが 最 初 からそれだけを 考 え て 授 業 を 展 開 してもうまくいかないことが 多 い 次 に 示 す8つのポイントを 踏 まえて 授 業 を 進 めることが 大 切 である それらのポイントは 右 下 のような 構 造 でとらえることができる 1 温 かい 目 で 子 どもを 見 て, 受 容 的 共 感 的 な 態 度 で 接 すること 2 ならぬものはならぬ という 厳 しさを 持 ち, 学 習 規 律 を 整 えること 3 子 どもの 姿 をきちんと 見 る, 見 取 ること 4 問 いや 意 欲 を 子 どもから 引 き 出 すこと 5 子 どもの 姿 や 発 言 をほめたり, 価 値 付 け たりすること 6 子 どもの 考 えをつなげたり, 広 げたりす ること 7 特 に 配 慮 したい あの 子 や, 普 段 目 立 たない あの 子 も 生 かすこと 8 ねらいの 達 成 に 向 けて, 分 かる,できる ようにすること (4) 子 どもの 思 考 を 促 す 発 問 例 コーディネートによって 子 どもを 揺 さぶり 思 考 を 促 すことや 広 げたりつなげたりして 共 有 吟 味 をさせ 思 考 を 深 めさせることが 大 切 であるが そのためには 教 師 の 発 問 が 重 要 となる 教 師 は 展 開 に 応 じ 次 のようなねらいを 持 った 発 問 を 心 がけたい 根 拠 を 問 う なぜ,そうなるのですか? 焦 点 化 する 今 までとの 違 いは 何 ですか? 転 換 を 図 る 図 に 描 いて 説 明 できますか? 選 択 させる どの 考 えがいいですか? 再 生 させる 今 の 考 えをもう 一 度 言 えますか? 比 較 させる どちらが と 思 いますか? 補 助 させる ヒントが 言 えますか? 一 般 化 を 図 る どんなときもそう 言 えますか? 共 有 させる 何 が 言 いたいか 分 かりますか? 集 約 させる 全 部 違 う 考 え 方 ですか?
(4) 授 業 展 開 とコーディネートのポイント 授 業 流 れに 沿 って,コーディネートの8つのポイントがどの 場 面 で 特 に 大 切 になるのかを 下 の 図 に 示 した 資 料 中 のページ 番 号 は, 授 業 改 善 ハンドブック 新 授 業 の 窓 授 業 をつくる16 の 視 点 の 対 応 したページを 表 している 授 業 づくりについては この 授 業 改 善 ハンドブック 新 授 業 の 窓 授 業 をつくる16の 視 点 を 参 照 のこと 単 元 をつくる 授 業 をつくる 授 業 を 進 める 授 業 を 振 り 返 る の4つの 側 面 から 授 業 づくりを 考 えており 特 に 授 業 を 進 める の 中 で コーディネートについて ふれている 福 島 県 教 育 センターのWebページからダウンロード できる
3 コーディネートの 実 際 中 学 校 1 年 数 学 科 における 実 践 より コーディネートの 例 を 示 す 正 方 形 をχ 個 作 るときの 碁 石 の 数 を 式 に 表 す という 場 面 であったが ここで 教 師 は 12+8 (χ-1) という 正 答 に 対 して A 男 の 12+8 χ という 誤 答 を 取 り 上 げて 展 開 して いった T 12+8 χ ってどんな 意 味 が あるのかな? 隣 同 士 で 確 認 してみて < 近 くの 生 徒 と 話 し 合 う 間 違 いに 気 付 いた 生 徒 が 増 えていった > T (しきりに 目 を 合 わせている 子 を 見 取 り)B 君 が 何 か 言 いたそうなので 聞 こうか B χじゃなくてχ-1です T B 君 の 言 っていることが 分 かる 人 は? <5, 6 名 挙 手 C 男 D 子 は 分 かっ ている 様 子 > T ではC 君 B 君 のχ-1はどうい うこと? 自 分 の 言 葉 で 説 明 して C 最 初 の12はχ 個 ある 正 方 形 のうち の1つだから 次 からの8ずつのコ の 字 の 数 にはいれない T いい 説 明 だね 最 初 の 正 方 形 には コの 字 の 碁 石 の 数 8 個 は 入 れないか ら コの 字 は 全 部 でいくつあるの? Dさん もう 少 し 説 明 して D だから 本 当 は 正 方 形 は 全 部 でχ 個 あるけど 最 初 の 正 方 形 1 個 分 は いれないから χから1をひく A そうか そういうことか! (A 男 笑 顔 ) T A 君 いい 笑 顔 になったけど ス ッキリした? A (A 男 大 きく 頷 く) T これ 大 事 な 考 え 方 なんだよ 隣 の 人 と 確 認 し 合 いなさい 1 2 3 4 5 1では あえて 誤 答 を 取 り 上 げ その 間 違 いを 学 級 全 体 で 検 討 させることで 式 の 意 味 について 深 く 理 解 させようとしている 隣 同 士 での 確 認 という 形 で 全 員 が 自 分 の 考 えを 話 す 場 を 作 り 誤 答 であるという 認 識 を 共 有 させている 吟 味 に 入 る 前 の 段 階 とし て 大 切 な 指 導 である 2では 見 取 りを 基 に 指 名 している そ の 後 言 っていることが 分 かる 人 は? と 一 度 全 体 に 返 していることも 大 事 な 点 である 指 名 した 子 どもの 発 言 を 受 けて 教 師 はすぐ にまとめてしまいがちだが ポイントになる 発 言 を 全 体 に 返 すことは 思 考 の 深 まりを 促 すことになる 3では ほかの 生 徒 に 自 分 の 言 葉 で 説 明 させたり( 換 言 活 動 ) さらに 詳 しい 説 明 を させたり( 補 助 活 動 )して 学 級 全 体 に 理 解 を 広 げようとしている ここでも 教 師 は 極 力 自 分 で 説 明 していない 生 徒 同 士 の 考 えを つなぐ 役 割 に 徹 することにより 生 徒 の 主 体 的 な 学 習 態 度 をはぐくんでいる また 生 徒 の 意 見 を いい 説 明 だね とほめることに よって 情 意 面 も 高 めている 4では 間 違 えた 考 えを 出 した 生 徒 への フォローをきちんと 行 っている 子 どもを 温 かい 目 で 見 る 教 師 の 姿 勢 が 生 徒 にも 伝 わ ると 思 われる このような 丁 寧 な 対 応 の 積 み 重 ねがあるため 間 違 えた 考 えを 取 り 上 げられた 生 徒 も 素 直 に 検 討 に 入 ることがで きると 考 えられる 5では 一 連 のやりとりの 最 後 に 全 員 に 確 認 の 場 を 設 定 しており( 再 生 活 動 ) この 考 え 方 についての 定 着 を 図 っている この 展 開 を 振 り 返 って 見 ると 発 言 した 生 徒 は 達 成 感 を 味 わうことができ 自 尊 感 情 の 高 まりにつながったものと 思 われる また 他 の 生 徒 も 考 えを 出 し 合 うことによっ て 理 解 が 深 まったという 意 識 の 中 で みんなで 学 習 することのよさを 感 じることがで き それは 集 団 の 親 和 性 を 高 めていくことになると 思 われる このような 授 業 を 繰 り 返 していくと 生 徒 の 教 師 への 信 頼 は 高 まり ますますコーディネートがしやすくなって いくと 考 えられる