最前線 免疫疾患における創薬標的としてのカリウムチャネル 大矢 進 Susumu OHYA 京都薬科大学薬理学分野教授 異なる経路を辿る 1つは マイトジェンシグナル 1 はじめに を活性化し 細胞増殖が促進されるシグナル伝達経 路 図1A 右 であり もう1つはカスパーゼやエ 神 経 筋 の よ う な 興 奮 性 細 胞 で は カ リ ウ ム ンドヌクレアーゼ活性を上昇させ アポトーシスが K チャネルは静止膜電位の維持や活動電位の再 誘発される経路 図1B 右 である また Kチャ 分極相形成に寄与している 一方 本稿で扱うリン ネル活性化による細胞膜の過分極は CRAC チャネ パ球のような非興奮性細胞では K チャネルは細 ルを介した Ca2流入を促進し 細胞内 Ca2濃度を 胞増殖 分化 死 遊走の制御に重要な役割を果た 1 免疫 上昇させ 細胞増殖を促進する 図1A 左 している リンパ球活性化のトリガーとして カル 細胞では CRAC チャネルの分子実体として Orai 2 2 2 遊離活性化 Ca Ca シウム Ca release acti- 2 Ca CRAC チャネルを介した細胞内への vated 2 STIM 複合体が同定されている 免疫細胞における CRAC チャネルの分子基盤や Ca 流入が必須である K チャネル活性化は 細 それを介した Ca2シグナルの詳細に関しては 総 胞膜を過分極させ 間接的に CRAC チャネルを介 2 3 CRAC チャネル 説を参考にしていただきたい した細胞内への Ca2流入を増大させる リンパ球 は免疫疾患における創薬標的分子として注目されて いるが 多様な細胞種に共通した細胞増殖促進分子 に機能発現する主要な K チャネルとして 電位依 2 3と中コンダクタンス Ca 存性 K チャネル KV1 活性化 K チャネル KCa3 1が知られており それ らの阻害剤は 多発性硬化症 Ⅰ型糖尿病 乾癬 であるため CRAC チャネル作用薬は 広範な臓 器において副作用を引き起こす可能性がある 一方 Kチャネルは 多様なサブファミリーを 関節リウマチ アレルギー性接触皮膚炎 潰瘍性大 3 KCa3 1は リンパ球や肥満 形成し 図2 KV1 腸炎などの自己免疫疾患 炎症性疾患の創薬標的と 細胞などの免疫細胞に特異的に機能発現している して期待されている 3 KCa3 1は 安全性の高い創 したがって KV1 本稿では 免疫疾患の創薬標的分子と し て K チャネルに焦点を当て Kチャネルの機能修飾 発現制御機構に関する最近の知見を紹介するととも に 免疫疾患治療薬としての Kチャネル阻害剤の 創薬研究に関する情報を提供する 2 細胞増殖 アポトー シ ス に お け る K チャネルの役割 Kチャネル活性化は ①細胞増殖促進と②アポ トーシス誘導という 相反する生理機能に関与して いる 図1 Kチャネル活性化による Kの細胞外 への流出は細胞容積を減少させるが 細胞種により 図1 細胞増殖 細胞死 アポトーシス における Kチャネルの役割 Vol.48 No.6 2012 ファルマシア 509
3 Lancet Stichodactyla 510 Vol.48 No.6 2012
helianthus Ruta graveolens 4 C N Vol.48 No.6 2012 511
5 512 Vol.48 No.6 2012
C 6 Vol.48 No.6 2012 513
7 8 Pflügers Arch et al Immunol. Rev et al Trends Immunol et al J. Clin. Invest et al Lancet et al Mol. Pharmacol et al Toxicon et al Mol Pharmacol et al Xenobiotica et al Expert Rev. Clin. Pharmacol et al J. Biol. Chem et al Drug Dev Res et al Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A et al Mol. Cell et al J. Biol. Chem et al Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol et al Am. J. Physiol. Cell Physiol et al Future Med. Chem et al FASEB J et al J. Biol. Chem et al Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A et al Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A et al Am. J. Physiol. Cell Physiol et al J. Biomol. Screen ò et al Pflügers Arch 514 Vol.48 No.6 2012