第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 には 解 雇 などの 在 職 者 に 対 する 雇 用 調 整 ではなく 所 定 外 労 働 時 間 の 削 減 とともに 新 規 採 用 をは じめとする 入 職 抑 制 を 選 択 する 傾 向 にあり この 傾 向 は 基 本 的 には 変 わっていないと 考 えられる こ のため バブル 崩 壊 後 に 低 成 長 が 続 いている 日 本 において とりわけ 不 況 期 には 新 卒 者 が 採 用 抑 制 の 影 響 を 受 けやすくなっている 第 3 -(1)- 15 図 により 入 職 率 と 離 職 率 の 長 期 的 な 動 向 をみると 高 度 成 長 期 であった 1960 年 代 半 ばから 1970 年 代 前 半 までは 入 職 率 離 職 率 ともに 高 水 準 であった 1973 年 の 第 一 次 オイル ショックを 契 機 として 経 済 成 長 が 低 下 するとともに 労 働 移 動 は 少 なくなり 入 職 率 離 職 率 は 低 下 し た 後 ほぼ 横 ばいで 推 移 し 1990 年 代 半 ばから 2000 年 代 半 ばにかけては 再 び 緩 やかな 上 昇 傾 向 に なっている ここで 入 職 率 の 動 向 に 注 目 すると 入 職 率 は 景 気 後 退 期 の 低 下 が 顕 著 となっており こ のことからも 景 気 後 退 期 には 企 業 で 入 職 抑 制 中 心 の 雇 用 調 整 が 行 われていることがうかがえる また 入 職 率 における 新 卒 未 就 業 者 の 寄 与 率 をみると 1960 年 代 は 約 30% 前 後 であったが 1983 年 に 26.9%となって 以 降 ほぼ 一 貫 して 低 下 し 2005 年 以 降 は 15% 前 後 で 推 移 している 一 方 転 職 入 職 者 の 寄 与 率 は 1983 年 以 降 上 昇 傾 向 にある このように 企 業 の 採 用 における 新 卒 者 の 位 置 づけの 低 下 とともに 新 卒 者 の 就 職 率 も 低 下 し 新 卒 者 は 長 期 にわたり 就 職 機 会 が 削 減 されて いると 考 えられる こうした 影 響 が 新 卒 者 の 就 職 率 にどのように 現 れるかをみるため 第 3-(1)-16 図 により 雇 用 の 過 不 足 状 況 と 新 卒 者 の 就 職 率 163 との 相 関 についてみると 企 業 の 雇 用 過 剰 感 が 高 いときほど 採 用 される 新 卒 者 が 抑 制 され 就 職 率 が 低 下 するという 関 係 がみられている 高 卒 者 の 就 職 状 況 をみる 第 3 -(1)-15 図 入 職 率 と 離 職 率 の 推 移 163 以 下 文 部 科 学 省 学 校 基 本 調 査 を 基 にした 就 職 率 については 卒 業 者 に 占 める 就 職 者 の 割 合 ではなく 就 職 者 一 時 的 な 仕 事 に 就 いた 者 その 他 の 者 及 び 死 亡 不 詳 の 者 に 占 める 就 職 者 の 割 合 をいう 210 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 第 3 -(1)- 16 図 学 歴 別 就 職 率 と 雇 用 人 員 判 断 第 1 節 と 1991 年 から 2000 年 までの 10 年 間 より 2001 年 から 2011 年 までの 直 近 11 年 間 の 方 が 同 じ 雇 用 人 員 判 断 でも 低 い 就 職 率 となっており 企 業 は 景 気 の 先 行 きに 対 する 懸 念 から 正 社 員 を 絞 り 込 んでいる 状 況 もうかがえる また 大 卒 者 の 就 職 状 況 をみると 前 者 の10 年 間 よりも 後 者 の11 年 間 の 方 が 企 業 の 雇 用 人 員 判 断 に 対 し 就 職 率 が 感 応 的 に 動 いており 新 卒 者 の 就 職 は 経 済 情 勢 の 悪 化 の 影 響 をより 受 けやすくなっていることがわかる 若 年 層 で 特 に 高 まった 非 正 規 雇 用 比 率 企 業 の 入 職 抑 制 の 影 響 は 若 者 の 雇 用 形 態 にも 現 れていると 考 えられる 第 3 -(1)- 17 図 によ り 年 齢 階 級 別 非 正 規 雇 用 比 率 の 時 系 列 推 移 をみると どの 年 齢 層 においても 上 昇 傾 向 がみられる が 若 年 層 ほど 大 きく 上 昇 しており 特 に 15~24 歳 層 において バブル 崩 壊 後 の 1990 年 代 半 ばか ら2000 年 代 のはじめにかけて 相 対 的 に 大 きな 上 昇 がみられる 引 き 続 き 高 い 若 年 離 職 率 若 年 者 の 高 い 失 業 率 の 背 景 には 離 職 率 の 高 さも 指 摘 されてきた 新 規 学 卒 者 の 早 期 離 職 については いわゆる 七 五 三 現 象 と 言 われ 164 問 題 となってきた 第 3 -(1)-18 図 により 学 卒 就 職 者 の 就 職 後 3 年 以 内 の 離 職 率 をみると 高 卒 大 卒 ともに バブル 崩 壊 後 に 上 昇 し 2004 年 3 月 卒 以 降 は 低 下 傾 向 にある しかし 2008 年 3 月 の 中 卒 で 64.7% 高 卒 で 37.6% 大 卒 で 30.0%と いずれも 高 い 水 準 にある なお こうした 動 向 の 背 景 については 後 述 する また 第 3-(1)-19 図 により 若 者 の 失 業 率 の 内 訳 を 求 職 理 由 別 にみると 最 も 割 合 が 高 いのは 自 発 的 離 職 による 失 業 であり その 構 成 比 は 2011 年 で 4 割 を 占 めている また 未 就 職 者 の 増 加 も 164 卒 業 後 3 年 以 内 に 離 職 する 者 の 割 合 が 中 卒 者 が 約 7 割 高 卒 者 が 約 5 割 大 卒 者 が 約 3 割 となっていることからこのように 言 われてきた 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 211
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 第 3 -(1)-17 図 年 齢 階 級 別 非 正 規 雇 用 比 率 の 推 移 あり 165 学 卒 未 就 職 による 失 業 が 全 体 に 占 める 割 合 は1 割 を 超 えている その 他 の 理 由 による 失 業 も 全 体 の2 割 を 超 える 水 準 で 推 移 しているが これには 厳 しい 雇 用 環 境 や 後 にみる 若 年 者 自 身 の 意 識 を 背 景 に 学 卒 後 仕 事 を 持 たずに 無 業 者 となった 後 に 労 働 市 場 に 参 入 してきたり 就 業 と 無 業 を 繰 り 返 し 断 続 的 に 求 職 活 動 をする 者 が 増 加 したりしていることが 考 えられる 企 業 が 慣 行 として 実 施 している 新 卒 一 括 採 用 以 上 のように 若 者 の 雇 用 情 勢 は 厳 しく 完 全 失 業 率 も 他 の 年 齢 層 に 比 べ 高 い 水 準 にあるが 国 際 的 にみると 低 い 水 準 にある 166 この 背 景 としては 新 卒 一 括 採 用 の 慣 行 が 定 着 し 学 校 卒 業 後 失 業 を 経 ることなく 就 職 することが 一 般 的 であったこと また 特 に 中 卒 高 卒 者 に 関 しては 学 校 とハ ローワークの 連 携 による 就 職 斡 旋 のシステムが 機 能 していたことなどが 考 えられる そこで 新 卒 一 括 採 用 の 現 状 と 新 卒 者 への 影 響 についてみることとする 新 卒 一 括 採 用 は 一 般 に 高 校 や 大 学 の 新 卒 者 を 定 期 的 に 一 括 して 採 用 する 慣 行 のことをいうが 企 業 の 新 卒 者 採 用 枠 での 正 社 員 の 募 集 時 期 をみると 春 期 の 一 括 採 用 のみ が7 割 以 上 で 春 期 と 秋 期 と 年 間 を 通 して 随 時 は 合 わせても3 割 弱 と 多 くの 企 業 で 春 期 の 一 括 採 用 が 慣 行 となって いる また 企 業 規 模 別 にみると 300 人 以 上 の 企 業 では 春 期 の 一 括 採 用 のみ が 8 割 前 後 である 一 方 従 業 員 が 少 ない 企 業 ほど 通 年 採 用 の 割 合 が 高 くなっている( 付 3-(1)-5 表 ) 企 業 が 新 卒 一 括 採 用 を 行 う 理 由 をみると 社 員 の 年 齢 構 成 を 維 持 できる 他 社 の 風 習 などに 染 165 第 3-(1)-25 図 参 照 166 第 3-(4)-3 表 参 照 212 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 第 3 -(1)- 18 図 新 規 学 卒 者 の 在 職 期 間 別 離 職 率 の 推 移 第 1 節 第 3 -(1)- 19 図 求 職 理 由 別 若 年 失 業 率 の 推 移 まっていないフレッシュな 人 材 を 確 保 できる 定 期 的 に 一 定 数 の 人 材 を 確 保 できる といった 点 が 多 くあげられており 企 業 は 育 てやすい 基 幹 的 人 材 を 定 期 的 に 確 保 するという 観 点 から 新 卒 一 括 採 用 を 行 っていると 考 えられる また 面 接 や 選 考 を 短 時 間 で 効 率 的 に 行 い 得 る というメリット もあげられている( 付 3-(1)-6 表 ) また 第 3 -(1)- 20 図 により 2013 年 の 新 卒 採 用 予 定 者 を 増 加 させる 予 定 の 企 業 について そ 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 213
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 第 3 -(1)-20 図 2013 年 新 卒 採 用 予 定 者 の 増 加 理 由 の 理 由 をみると 学 歴 によって 多 少 の 違 いはみられるが 学 歴 にかかわらず 長 期 的 に 育 成 するこ とが 必 要 な 基 幹 的 業 務 を 担 う 者 の 確 保 年 齢 等 人 員 構 成 の 適 正 化 の 割 合 が 高 くなっている 企 業 は 長 期 的 な 人 材 育 成 を 視 野 に 入 れつつ 従 業 員 の 年 齢 や 人 数 等 のバランスをとるために 新 卒 者 を 採 用 していることがうかがえる 新 卒 一 括 採 用 の 学 生 にとってのメリット 第 3 -(1)- 21 図 により 企 業 が 新 卒 者 の 採 用 にあたり 重 視 することをみると 新 卒 者 について は コミュニケーション 能 力 や 熱 意 など 今 後 の 成 長 の 源 となる 潜 在 能 力 があるかどうかに 着 目 して いることがうかがえる こうしたことから 新 卒 一 括 採 用 により 一 般 の 労 働 市 場 とは 別 に 新 卒 者 の 労 働 市 場 があることで 実 務 に 直 結 したスキルを 持 たない 新 卒 者 であっても 学 校 卒 業 後 失 業 を 経 ることなく 就 職 することが 可 能 となるというメリットにつながっているものと 考 えられる 学 歴 別 の 新 卒 就 職 率 の 推 移 をみると( 前 掲 第 3 -(1)- 11 図 ) 毎 年 度 の 変 動 はあるものの 高 卒 者 大 卒 者 それぞれの 就 職 希 望 者 のうちおおむね9 割 以 上 が 就 職 している 167 また 学 歴 別 就 職 者 数 をみると( 前 掲 第 3 -(1)- 10 図 ) 大 卒 者 は 毎 年 30 万 人 以 上 高 卒 者 は 近 年 では 毎 年 20 万 人 前 後 が 安 定 的 に 就 職 している 一 般 労 働 市 場 においては 2011 年 の 就 職 率 は 約 3 割 就 職 件 数 は 216.4 万 件 であるが 仮 に 新 卒 一 括 採 用 が 行 われなくなり 新 卒 者 も 一 般 労 働 市 場 の 中 での 競 争 となる と 新 卒 一 括 採 用 の 慣 行 の 下 では 就 職 できた 新 卒 者 が 就 職 できにくくなる 可 能 性 もある 168 新 卒 一 括 採 用 の 学 生 にとってのデメリット( 世 代 効 果 等 ) 一 方 新 卒 一 括 採 用 には 新 卒 者 採 用 枠 の 対 象 者 を 厳 密 に 翌 春 の 卒 業 予 定 者 のみとする 極 端 な 新 卒 一 括 採 用 の 場 合 採 用 枠 の 対 象 になれる 機 会 が 生 涯 に 一 度 しかなく 学 生 が 就 職 活 動 をする 時 期 の 景 気 に 大 きく 影 響 を 受 けるため 世 代 間 で 就 職 機 会 の 格 差 が 生 じ それが 固 定 されれば 就 職 環 境 が 厳 167 就 職 を 途 中 であきらめて 進 学 した 者 が 除 かれることに 留 意 168 学 卒 者 は 一 般 労 働 者 と 比 較 すると 職 業 経 験 に 乏 しく 即 戦 力 としては 採 用 されにくいと 考 えられる 214 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 第 3 -(1)- 21 図 企 業 が 採 用 にあたり 重 視 すること 第 1 節 しかった 世 代 が 職 業 生 涯 全 体 において 不 利 になるというデメリットもある バブル 崩 壊 後 の 長 期 経 済 停 滞 となった1990 年 代 初 めから2000 年 代 初 めの 時 期 に 成 人 した 世 代 は 主 に 1970 年 代 前 半 生 まれ(いわゆる 団 塊 ジュニア (1971~74 年 生 まれ)を 含 む)と 1970 年 代 後 半 生 まれ(いわゆる ポスト 団 塊 ジュニア を 含 む)である 先 にみたとおり( 前 掲 第 3 -(1)- 11~13 図 ) 新 卒 者 の 就 職 環 境 は 高 卒 大 卒 ともに 就 職 氷 河 期 に 含 まれる 2000 年 前 後 の 時 期 が 特 に 厳 しくなっており 高 卒 であれば 1970 年 代 前 半 生 まれが 大 卒 であれば 1970 年 代 後 半 生 まれが 最 も 影 響 を 受 けたと 考 えられる 第 3-(1)-22 図 は 男 性 について 世 代 ごとに 入 職 以 降 年 齢 が 上 がるにつれて 完 全 失 業 率 と 非 正 規 雇 用 比 率 がどのように 変 化 したかを 示 したものである これをみると 1970 年 代 後 半 生 まれの 男 性 は 入 職 初 期 から 生 まれた 年 によっては 20 歳 台 後 半 までの 長 期 間 にわたって 2000 年 前 後 の 厳 しい 経 済 停 滞 のもとにあったために 完 全 失 業 率 は 低 下 しても 非 正 規 雇 用 比 率 はそれほど 低 下 せ ず 非 正 規 雇 用 のまま 滞 留 している 割 合 が 高 いように 見 受 けられる このように 各 世 代 は 図 の 終 点 である 直 近 の 雇 用 情 勢 だけでなく 始 点 である 入 職 初 期 や 20 歳 台 後 半 の 時 期 における 雇 用 情 勢 の 影 響 を 受 けていることがうかがわれる 169 また 先 にみた 若 年 者 の 早 期 離 職 率 の 動 向 ( 前 掲 第 3-(1)-18 図 )について 学 校 卒 業 時 の 就 職 環 境 が 厳 しい 世 代 は 不 本 意 な 就 職 先 に 就 職 した 者 が 多 いために 将 来 の 離 職 が 増 える 可 能 性 が 考 えら れる これは いわゆる 世 代 効 果 と 呼 ばれているが この 影 響 をみるため 大 卒 者 の 離 職 率 に 影 響 を 与 える 要 因 を 分 析 170 してみると 第 3 -(1)- 23 図 のとおり 1 新 卒 時 の 大 卒 求 人 倍 率 が 低 い ほど 離 職 率 が 高 まる( 世 代 効 果 )とともに 2 離 職 時 の 有 効 求 人 倍 率 が 高 いほど 離 職 率 が 高 まると いう 傾 向 がみられた また 1 2ともに 就 職 後 1 年 目 の 離 職 率 への 影 響 が 最 も 大 きく 就 職 後 の 169 平 成 23 年 版 労 働 経 済 の 分 析 p222~p224 参 照 170 厚 生 労 働 省 平 成 14 年 版 労 働 経 済 の 分 析 及 び 内 閣 府 平 成 18 年 版 国 民 生 活 白 書 を 参 考 に 分 析 付 注 10 参 照 なお ここでは 平 成 14 年 版 労 働 経 済 の 分 析 と 同 様 に 世 代 効 果 を 学 校 卒 業 時 の 就 職 環 境 が 将 来 の 時 点 での 雇 用 環 境 に 影 響 するという 意 味 で 用 いるこ ととする 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 215
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 第 3 -(1)-22 図 世 代 別 にみた 就 業 状 態 ( 完 全 失 業 率 及 び 非 正 規 雇 用 比 率 )の 推 移 ( 男 性 ) 第 3 -(1)-23 図 大 卒 者 の 離 職 率 変 化 の 要 因 分 解 216 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 時 間 が 経 過 するほど つまり2 年 目 3 年 目 の 離 職 率 への 影 響 は1 年 目 より 徐 々に 小 さくなっている より 具 体 的 には 1992~96 年 1999 年 及 び 2000 年 で 卒 業 時 の 就 職 環 境 の 厳 しさが 離 職 率 を 高 め ており 2000 年 代 後 半 の 離 職 率 の 低 下 は 卒 業 時 の 就 職 環 境 が 改 善 したことと 離 職 時 の 就 職 環 境 が 良 くないことが 影 響 していることがわかる また 2010 年 3 月 卒 の 1 年 目 離 職 率 は リーマン ショック 後 である 卒 業 時 の 就 職 環 境 の 厳 しさから 再 び 大 きくなっており 今 後 2010 年 3 月 卒 世 代 の2 年 目 3 年 目 の 離 職 率 の 上 昇 及 びその 後 の 世 代 の 離 職 率 の 上 昇 が 懸 念 される 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 の 新 卒 扱 いの 標 準 化 以 上 のように 新 卒 一 括 採 用 は 多 くの 企 業 が 一 定 の 合 理 性 があると 判 断 して 実 施 し 学 生 にとっ てもメリットがあるが 極 端 な 新 卒 一 括 採 用 によるデメリットが 起 きないようにすべきである この ため 2010 年 には 雇 用 対 策 法 に 基 づく 青 少 年 雇 用 機 会 確 保 指 針 を 改 正 し 171 事 業 主 が 取 り 組 むべき 措 置 として 学 校 等 を 卒 業 後 少 なくとも3 年 間 は 新 卒 者 として 応 募 できるようにすることが 盛 り 込 ま れた 172 新 卒 者 採 用 枠 での 既 卒 者 の 応 募 受 付 状 況 をみると 過 去 1 年 間 ( 前 年 8 月 から 当 年 7 月 まで)に 正 社 員 の 募 集 を 行 った 企 業 のうち 既 卒 者 の 応 募 が 可 能 だった 企 業 は2008 年 以 降 低 下 傾 向 にあったが 2011 年 には 反 転 した( 付 3 -(1)- 7 表 ) また 第 3 -(1)- 24 図 により 既 卒 者 の 応 募 が 可 能 な 企 業 のうち 卒 業 後 の 経 過 期 間 の 上 限 をみると 2010 年 は 1 年 以 内 が 約 5 割 1~2 年 以 内 が 約 3 割 2~3 年 以 内 が 約 1 割 3 年 超 が 約 1 割 であったのが 2011 年 は 1 年 以 内 が 大 きく 低 下 し 2~3 年 以 内 が 大 きく 上 昇 するなど 卒 業 後 より 長 期 間 経 過 した 者 も 応 募 が 可 能 となっている 2011 年 の 時 点 では 既 卒 者 の 応 募 が 可 能 な 企 業 の 割 合 は 企 業 規 模 計 で 約 6 割 に 留 まっており 企 業 規 模 が 第 1 節 第 3 -(1)- 24 図 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 の 募 集 状 況 171 新 成 長 戦 略 実 現 に 向 けた3 段 構 えの 経 済 対 策 (2010 年 9 月 閣 議 決 定 )の 新 卒 者 雇 用 に 関 する 緊 急 対 策 として 盛 り 込 まれた 措 置 172 併 せて 2010 年 9 月 から 2012 年 6 月 までの 間 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 を 新 卒 扱 いで 正 規 雇 用 する 企 業 への 奨 励 金 と 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 を 正 規 雇 用 へ 向 けて 育 成 するため 有 期 で 雇 用 し その 後 正 規 雇 用 へ 移 行 させる 企 業 への 奨 励 金 を 創 設 この 制 度 による 雇 用 開 始 者 は 2010 年 度 (2010 年 9 月 ~2011 年 3 月 末 )は 17,221 人 2011 年 度 (2012 年 2 月 までの 速 報 値 )は 42,764 人 と なっている 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 217
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 大 きくなるほど 低 くなってきている ただし 大 企 業 では 既 卒 者 の 応 募 受 付 の 実 施 を 検 討 中 とする ものも 含 めると 約 9 割 が 実 施 又 は 検 討 中 の 状 況 となり 今 後 より 一 層 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 を 新 卒 者 と 同 様 の 扱 いをしていくことを 求 めていく 必 要 がある また 行 政 学 校 においても 中 小 企 業 と 学 生 のマッチング 等 を 行 うことが 重 要 であるが これについては 後 述 する なお 卒 業 後 3 年 以 内 の 既 卒 者 の 新 卒 扱 いの 促 進 は グローバル 人 材 が 求 められる 中 留 学 したこ とによる 不 利 益 を 受 けないようにするという 観 点 からも 重 要 である こうした 視 点 も 踏 まえると 基 本 的 には 学 卒 者 の 円 滑 な 就 職 に 資 する 新 卒 一 括 採 用 の 枠 組 みを 維 持 しつつ 多 様 な 採 用 の 機 会 を 用 意 していく 方 向 が 望 まれる 雇 用 情 勢 が 厳 しい 時 期 に 増 加 する 未 就 職 者 留 年 者 以 上 教 育 から 就 業 への 移 行 過 程 の 主 な 場 面 である 新 卒 一 括 採 用 を 中 心 に 若 年 者 雇 用 をめぐる 状 況 をみてきたが ここからは 新 卒 就 職 者 ( 前 掲 第 3-(1)-15 図 )のうち 過 半 数 を 占 めている 大 学 に 焦 点 を 絞 ってみていこう 大 卒 者 の 卒 業 後 の 進 路 については どの 時 期 でも 就 職 者 が 最 も 多 いが 1990 年 代 以 降 は 進 学 者 やその 他 の 割 合 も 上 昇 しており 卒 業 者 に 占 める 就 職 者 の 割 合 は 以 前 に 比 べ 低 下 している( 付 3 - (1)-8 表 ) 第 3 -(1)- 25 図 により 大 卒 者 のうち 就 職 も 進 学 もしない 者 ( 以 下 未 就 職 者 という ) 173 の 数 及 び 卒 業 者 に 占 める 割 合 をみると 2003 年 に 14.8 万 人 27.1%といずれも 過 去 最 高 となり 大 卒 者 のおよそ 4 人 に 1 人 が 就 職 も 進 学 もしなかったことになる その 後 2000 年 代 後 半 にかけては 未 就 職 者 の 割 合 は 低 下 したが 2009 年 以 降 再 び 上 昇 し 2011 年 の 未 就 職 者 の 数 及 び 割 合 は 10.7 万 人 19.4%となっている 未 就 職 者 の 増 加 は いわゆる 就 職 氷 河 期 と 呼 ばれ 厳 しい 雇 用 情 勢 となっ た 2000 年 前 後 やリーマンショック 以 降 の 景 気 後 退 の 時 期 と 重 なっており 卒 業 時 の 景 気 や 雇 用 情 勢 に 大 きく 左 右 されると 考 えられる また 就 職 活 動 をしたものの 就 職 先 が 決 まらなかったため 留 年 を 選 択 する いわゆる 就 職 留 年 をす 第 3 -(1)-25 図 大 学 卒 業 者 のうち 就 職 も 進 学 もしない 者 の 数 及 び 割 合 の 推 移 173 就 職 も 進 学 もしない 者 には 臨 床 研 修 医 ( 予 定 者 を 含 む ) 専 修 学 校 外 国 の 学 校 等 入 学 者 死 亡 不 詳 の 者 は 含 まず 一 時 的 な 仕 事 に 就 いた 者 及 びその 他 の 者 をいう なお 死 亡 不 詳 の 者 の 中 にも 大 学 側 が 把 握 できていない 求 職 者 や 進 路 を 迷 いながら 求 職 活 動 を 行 っ ている 学 生 等 も 含 まれることに 留 意 が 必 要 である(( 独 ) 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 高 校 大 学 における 未 就 職 卒 業 者 支 援 に 関 する 調 査 (2010) 参 照 ) 218 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 る 大 学 生 も 一 定 割 合 存 在 する 174 4 年 制 大 学 を 最 低 修 業 年 限 の4 年 で 卒 業 した 者 の 割 合 は 2000 年 前 後 や 2010 年 で 大 きく 低 下 しており 卒 業 年 の 前 年 の 雇 用 情 勢 が 厳 しい 場 合 に 留 年 する 者 が 増 加 する 傾 向 がある 一 方 で 最 低 修 業 年 限 を 1 年 超 過 して 卒 業 した 者 の 割 合 は 逆 に 2000 年 前 後 や 2010 年 で 上 昇 しており 2011 年 3 月 卒 業 者 のうち 5 年 で 卒 業 した 者 は 4.5 万 人 で 2006 年 4 月 の 入 学 者 (59.1 万 人 )の 7.6%である 2011 年 3 月 卒 業 者 のうち 4 年 で 卒 業 した 者 は 46.6 万 人 で 2007 年 4 月 の 入 学 者 (60.2 万 人 )の 77.5%となっており 2010 年 より 割 合 は 上 昇 したものの 多 くの 就 職 留 年 者 がいると 考 えられる( 付 3-(1)-9 表 ) こうした 背 景 には 前 述 の 新 卒 者 採 用 枠 での 既 卒 者 の 扱 いについて 卒 業 後 の 経 過 年 数 によって 応 募 ができなくなる 企 業 があり 新 卒 者 である 方 が 有 利 と 考 えられている 面 もある 第 1 節 大 学 学 科 によって 異 なる 就 職 状 況 第 3-(1)-26 図 により 大 学 の 属 性 ごとに 卒 業 者 に 占 める 未 就 職 者 の 割 合 をみると 卒 業 者 のう ち 未 就 職 者 が 30% 以 上 いる 大 学 は 国 公 立 大 学 より 私 立 大 学 の 方 が 高 い 傾 向 にあり 特 に 設 立 年 次 の 新 しい 私 立 大 学 ほど 高 くなっている 大 学 の 規 模 別 にみると 比 較 的 規 模 の 小 さい 大 学 で 高 く なっている また 大 学 の 所 在 地 別 にみると 多 くの 大 学 が 集 まる 近 畿 や 南 関 東 で 高 くなっている ( 付 3-(1)-10 表 ) また 第 3-(1)-27 図 により 学 科 ごとに 未 就 職 者 の 割 合 をみると 人 文 科 学 社 会 科 学 芸 術 といった 文 系 学 科 で 高 く 一 方 保 健 工 学 といった 理 系 学 科 では 相 対 的 に 低 い 水 準 にある 第 3-(1)-28 図 により 学 科 ごとの 就 職 率 をみると 家 政 教 育 を 除 き 人 文 科 学 社 会 科 学 芸 術 といった 文 系 学 科 で 低 く 保 健 工 学 農 学 といった 理 系 学 科 では 高 い 傾 向 にある このように 学 科 ごとに 就 職 率 が 異 なる 背 景 をみるため 第 3-(1)-29 図 により 学 科 ごとの 産 業 別 就 職 者 の 状 況 をみると 工 学 では 製 造 業 や 建 設 業 情 報 通 信 業 の 割 合 が 高 い 保 健 では 第 3 -(1)- 26 図 大 学 の 諸 属 性 と 卒 業 者 に 占 める 未 就 職 者 の 割 合 (2010 年 3 月 卒 ) 174 ( 株 )マイナビ 2013 年 卒 マイナビ 大 学 生 就 職 意 識 調 査 によると 希 望 する 就 職 先 に 決 まらなければ 就 職 しなくともよい と 考 え る 学 生 の 就 職 しなかった 時 の 進 路 は 40.1%が 進 学 ( 留 学 大 学 院 進 学 ) 27.5%が 就 職 留 年 26.7%がフリーター 5.8%が 起 業 となっている 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 219
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 第 3 -(1)-27 図 就 職 も 進 学 もしない 者 の 割 合 ( 大 学 学 科 別 ) 第 3 -(1)-28 図 学 科 別 就 職 率 (2011 年 3 月 卒 ) 2011 年 3 月 卒 業 者 の 約 9 割 が 医 療, 福 祉 となっている 理 学 では 製 造 業 情 報 通 信 業 に 加 え 教 育, 学 習 支 援 業 の 割 合 が 高 い これら 理 系 学 科 では 大 学 で 修 得 する 学 問 の 専 門 性 を 活 かせる 産 業 に 就 職 している 傾 向 が 強 いと 考 えられる 一 方 文 系 学 科 をみると 社 会 科 学 や 人 文 科 学 では 卸 売 業, 小 売 業 や 製 造 業 サービス 業 といった 雇 用 者 の 多 い 産 業 を 中 心 に 幅 広 い 産 業 分 野 に 就 職 するとと もに 金 融, 保 険 業 の 就 職 割 合 が 産 業 の 雇 用 者 規 模 に 比 して 高 くなっているという 特 徴 がある 文 系 学 科 の 中 でも 教 育 では 半 数 以 上 が 教 育, 学 習 支 援 業 に 家 政 では 医 療, 福 祉 や 卸 売 業, 小 売 業 サービス 業 ( 特 に 宿 泊 業, 飲 食 サービス 業 )の 割 合 が 高 くなっており 他 の 文 系 学 科 と 比 べて 相 対 的 に 大 学 で 修 得 する 学 問 と 関 連 する 産 業 に 就 職 している 様 子 がうかがえる 学 科 ごとの 職 業 別 就 職 者 の 状 況 を 第 3-(1)-30 図 によりみると 工 学 では 技 術 者 保 健 では 保 健 220 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節 第 3 -(1)- 29 図 産 業 別 就 職 者 数 の 割 合 ( 主 な 学 科 別 ) 第 1 節 医 療 従 事 者 といった 専 門 的 技 術 的 職 業 従 事 者 の 割 合 が 群 を 抜 いて 高 い また 理 学 でも 技 術 者 の 割 合 が 高 く 専 門 的 技 術 的 職 業 従 事 者 は 半 数 以 上 を 占 める 一 方 文 系 学 科 をみると 社 会 科 学 や 人 文 科 学 では 事 務 従 事 者 や 販 売 従 事 者 が 7 割 以 上 を 占 め 専 門 的 技 術 的 職 業 従 事 者 の 割 合 は 1 割 程 度 である 文 系 学 科 の 中 でも 教 育 では 約 半 数 が 教 員 家 政 では 3 人 に 1 人 が 保 健 医 療 従 事 者 と 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 221
第 3 章 就 労 促 進 に 向 けた 労 働 市 場 の 需 給 面 及 び 質 面 の 課 題 第 3 -(1)-30 図 職 業 別 就 職 者 数 の 割 合 ( 主 な 学 科 別 ) いったように 専 門 的 技 術 的 職 業 従 事 者 の 割 合 が 高 くなっており 産 業 別 と 同 様 職 業 別 でみても 他 の 文 系 学 科 と 比 べて 相 対 的 に 大 学 で 修 得 する 学 問 との 関 連 が 深 い 様 子 がうかがえる このように 大 学 で 修 得 する 学 問 と 就 職 先 との 関 連 が 深 いほど 就 職 率 は 高 くなる 傾 向 にあると 考 え られる こうした 傾 向 については 企 業 が 社 会 科 学 人 文 科 学 といった 文 系 学 科 の 学 生 に 対 して 理 系 学 科 の 学 生 ほど 専 門 分 野 の 知 識 への 期 待 が 高 くなく 幅 広 い 知 識 能 力 を 求 めているという 違 い 222 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析
も 影 響 している 可 能 性 がある( 付 3-(1)-11 表 ) 未 就 職 者 の 特 徴 とその 背 景 就 職 できなかった 学 生 はどのような 特 徴 を 持 っているのであろうか 大 学 キャリアセンター 担 当 者 の 感 じる 未 就 職 卒 業 者 の 特 徴 をみると 自 分 の 意 見 や 考 えを 上 手 く 表 現 できない 自 信 がない 何 をしたらいいかわからない などが 多 い こうしたことから 就 職 活 動 の 当 初 からつまずきのある 学 生 が 多 いことが 推 察 される( 付 3-(1)-12 表 ) 第 3-(1)-31 図 により 未 就 職 卒 業 者 の 増 加 理 由 について 卒 業 者 に 占 める 未 就 職 者 の 割 合 別 に みると 未 就 職 者 が 30% 以 上 いる 大 学 では それ 以 下 の 大 学 と 比 べると 特 に 学 力 低 下 や 無 気 力 を 原 因 と 考 える 傾 向 にある また こうした 学 生 側 の 課 題 だけでなく 大 学 の 指 導 が 不 十 分 であることも 原 因 ととらえており 対 応 の 必 要 性 を 感 じていることがうかがえる インターネットからの 情 報 中 心 の 就 職 活 動 と 大 学 の 関 与 機 会 の 低 下 リーマンショック 前 後 での 学 生 の 就 職 活 動 の 変 化 について 第 3-(1)-32 図 により 卒 業 者 に 占 める 未 就 職 者 の 割 合 別 にみると 未 就 職 者 が 30% 以 上 いる 大 学 では それ 以 下 の 大 学 と 比 べると 心 理 的 負 担 を 強 く 感 じる 学 生 が 増 えた キャリアセンターで 斡 旋 できる 求 人 が 少 なくなった 学 生 がインターネットの 情 報 に 頼 りすぎるようになった 就 職 活 動 を 途 中 でやめる 学 生 が 増 えた を 大 きな 変 化 としてあげている 一 方 未 就 職 者 割 合 の 低 い 大 学 は 大 学 主 催 の 就 職 支 援 事 業 への 出 席 率 が 高 くなった をあげており 学 生 の 就 職 活 動 に 対 する 支 援 が 学 生 本 人 にまで 届 いている 様 子 が うかがえる 第 3 -(1)- 31 図 大 卒 後 に 無 業 やフリーターとなる 者 が 増 加 していることに 対 する 大 学 の 見 解 平 成 24 年 版 労 働 経 済 の 分 析 223 第 1 節 就 業 率 向 上 に 向 けた 労 働 力 供 給 面 の 課 題 第 1 節