研 究 結 果 報 告 書 公 益 財 団 法 人 長 野 県 学 校 科 学 教 育 奨 励 基 金 理 事 長 田 幸 淳 男 様 1 研 究 テーマ 風 力 発 電 平 成 25 年 1 月 10 日 学 校 名 飯 綱 町 立 飯 綱 中 学 校 学 校 長 名 小 林 久 夫 印 2 研 究 グループ 名 飯 綱 中 学 校 科 学 クラブ 3 指 導 者 大 日 方 正 壽 4 研 究 の 動 機 及 び 目 標 (1) 研 究 の 動 機 昨 年 から 原 子 力 発 電 が 大 きな 社 会 問 題 となっている また 化 石 燃 料 の 大 量 消 費 その 後 の 枯 渇 については 過 去 から 話 題 となっている 問 題 である そして この 問 題 を 解 決 するための 新 エネル ギーの 開 発 や 拡 大 が 求 められている そういったことをニュースや 教 科 の 学 習 で 知 った 生 徒 が 風 力 発 電 に 興 味 をもち 風 力 発 電 のしくみを 研 究 し その 製 作 をしようと 考 えた (2) 研 究 の 目 標 風 力 発 電 の 装 置 の 製 作 し 実 際 に 利 用 できる 電 気 ( 夜 間 に 照 明 用 のLEDなどを 光 らせることの できる 程 度 の 電 気 )を 発 電 する 1 風 車 の 羽 の 枚 数 は 何 枚 が 適 しているかを 明 らかにする 2 発 電 機 製 作 の 際 のコイルの 巻 き 数 使 用 するエナメル 線 の 太 さを 明 らかにする 3 風 力 発 電 により 発 生 した 電 流 をためるための 蓄 電 池 の 製 作 を 行 う 5 研 究 内 容 の 概 要 Ⅰ 風 力 発 電 のための 風 車 の 開 発 (1) 実 験 1 風 車 の 羽 の 枚 数 は 何 枚 が 適 しているのかを 明 らかにする 1 実 験 条 件 羽 として 3cm 10 cmのプラスチック 板 を 使 用 する ( 写 真 1) 羽 を 粘 土 をつめたペットボトルのふた( 写 真 2)にとりつける 羽 の 枚 数 は 1 枚 2 枚 3 枚 4 枚 6 枚 の5 種 類 で 計 測 する ( 写 真 3) 扇 風 機 から1mの 場 所 に 装 置 を 設 置 し 扇 風 機 の 弱 の 風 をあてる 30 秒 間 の 回 転 数 を 計 測 する 写 真 1 写 真 2 写 真 3 羽 の 枚 数 を 変 えた 回 転 数 実 験
2 実 験 結 果 1 枚 2 枚 3 枚 4 枚 6 枚 羽 の 枚 数 30 秒 間 の 回 転 数 3 考 察 32 回 54 回 52 回 47 回 34 回 羽 の 枚 数 は 少 ないほど 回 転 数 が 上 昇 するといえる しかし 1 枚 では 回 転 数 が 最 も 少 なくなる ことから 羽 のバランスを 保 てるような 形 状 にすることが 必 要 であるといえる 羽 の 枚 数 が 多 く なることで 羽 自 体 の 質 量 が 増 すこと 羽 が 回 転 するときの 空 気 抵 抗 が 増 すことで 回 転 数 が 上 が らなくなることが 考 えられる (2) 実 験 2 羽 の 太 さや 長 さによる 回 転 数 の 違 いを 調 べる 1 実 験 条 件 羽 の 枚 数 は2 枚 3 枚 で 行 う 羽 の 形 状 は 実 験 1で 用 いた 物 の 他 に 写 真 3のものを 用 いる かぜの 当 て 方 当 てる 時 間 は 実 験 1と 同 様 にして 行 う 2 実 験 結 果 羽 の 種 類 写 真 3 細 長 い 羽 写 真 3 実 験 1の 倍 の 長 さの 羽 3cm 10 cm ( 実 験 1から 引 用 ) 1.5 cm 20 cm 3cm 20 cm 2 枚 3 枚 2 枚 3 枚 2 枚 3 枚 羽 の 枚 数 30 秒 間 の 回 転 数 3 考 察 54 回 52 回 38 回 29 回 44 回 28 回 実 験 結 果 から 3cm 10 cmの 羽 ( 実 験 1で 用 いたもの)が 最 も 回 転 数 が 高 いことが 明 らかにな った しかしながら 細 い 羽 大 きな 羽 で 回 転 数 が 高 くならない 理 由 までは 明 らかにすることが できなかった 今 後 の 研 究 の 課 題 としていきたい (3) 風 車 の 開 発 のまとめ 風 力 発 電 装 置 に 用 いる 風 車 については 上 記 の 実 験 結 果 をもとに 以 下 の 二 つを 盛 り 込 んで 製 作 することにした 1 風 車 の 羽 の 枚 数 は2 枚 とする これは 実 験 結 果 とともに 風 車 の 製 作 のしやすさもあわせもつ からである 2 枚 羽 であると 羽 を 支 える 棒 を 一 本 で 製 作 することができるからである 2 羽 の 太 さや 長 さについては はっきりとした 実 験 結 果 を 得 られなかったが 実 験 2で 最 もよい 結 果 を 得 られた 羽 の 形 状 をもとに 製 作 することにした
Ⅱ 発 電 機 の 開 発 (1) 実 験 1 発 電 機 のコイルに 使 用 するのに 適 したエナメル 線 の 太 さ 長 さを 調 べる 1 実 験 条 件 より 強 い 電 流 を 流 すためには 強 い 磁 石 が 必 要 である ことは 生 徒 が 理 科 の 授 業 で 学 んでいるため 磁 石 とし てネオジム 磁 石 を 使 用 した ( 写 真 4) 製 作 した 発 電 機 は 平 成 22 年 度 東 レ 理 科 教 育 賞 作 品 集 を 参 考 にして 写 真 5のような 装 置 を 製 作 した 写 真 4 写 真 5 エナメル 線 は 0.2mm と 0.4mm の 二 つを 用 意 した フィルムケースへのエナメル 線 の 巻 き 数 は 200 回 巻 き 400 回 巻 き 800 回 巻 きとした 磁 石 を 回 転 させるために 写 真 6のようにインパクトドライバー に 接 続 して 一 定 の 回 転 を 与 えられるようにした それぞれの 発 電 写 真 6 機 に 一 定 の 回 転 を 与 えたときの 電 圧 を 測 定 した 2 実 験 結 果 0.4mm 200 回 巻 0.4mm 400 回 巻 0.2mm 400 回 巻 0.4mm 800 回 巻 エナメル 線 の 太 さと 巻 き 数 電 圧 1 0.2V 0.4V 0.5V 2.2V 1 この 発 電 機 では 交 流 電 流 が 発 生 するため ダイオードを 4 つ 使 用 したダイオードのブリッジ 回 路 を 製 作 し 電 流 が 一 方 向 に 流 れるようにして 測 定 した 3 考 察 上 記 の 実 験 結 果 から 細 いエナメル 線 の 方 が 高 い 電 圧 を 得 られることが 明 らかになった 巻 き 数 が 同 じなら 太 いエナメル 線 の 方 が 発 電 すると 予 想 したが エナメル 線 が 太 くなることにより コイルが 大 きくなってしまうことから 磁 力 の 影 響 を 受 けにくい 部 分 が 出 てきてしまうことが 考 えられる また 同 じ 太 さなら 巻 き 数 が 多 い 方 がより 発 電 することが 明 らかとなった (2) 発 電 機 の 開 発 のまとめ 発 電 機 を 製 作 する 際 の 磁 石 コイルについては 以 下 の 二 つを 盛 り 込 むものとした 1 発 電 機 の 製 作 に 用 いる 磁 石 はネオジム 磁 石 を 用 いることにした 2コイルの 製 作 の 際 に 使 用 するエナメル 線 は 0.2 のものを 使 用 し 巻 き 数 をできるだけ 増 やすこと にした
Ⅲ 蓄 電 池 の 製 作 (1) 製 作 鉛 蓄 電 池 の 製 作 愛 知 総 合 教 育 センターの WEB ページを 参 考 にして 鉛 蓄 電 池 の 製 作 をすることにした このページによると 次 の 道 具 を 用 いるこ とで 簡 単 な 充 電 池 を 製 作 できるとのことであった 鉛 板 2 枚 ( 本 研 究 の 製 作 では 釣 り 用 の 板 鉛 を 使 用 した) 硫 酸 ナトリウム 水 溶 液 ( 一 般 的 な 鉛 蓄 電 池 は 硫 酸 を 用 いるが 硫 酸 ナトリウム 水 溶 液 でも 代 用 がきくとのことである ) 上 記 の 材 料 をもとに 写 真 7のような 蓄 電 池 を 製 作 し 充 電 したと ころ 簡 単 な 充 電 が 確 認 できた 写 真 7 同 WEB ページには 鉛 蓄 電 池 は 鉛 板 の 表 面 に 電 流 をためること また 内 部 抵 抗 を 減 らすため に 鉛 板 どうしの 距 離 を 短 くすることで 性 能 をあげられることが 紹 介 されていたため これらをも とに 鉛 板 の 長 さを 30 cmにし 鉛 板 の 間 にキッチンペーパーを 挟 むことで 蓄 電 性 能 の 高 い 蓄 電 池 を 製 作 することにした そこで 右 の 図 のようなものをフィ ルムケースに 巻 いて 入 れ キッチンペ ーパーに 硫 酸 ナトリウム 水 溶 液 を 浸 し て 蓄 電 池 を 製 作 した (2) 実 験 蓄 電 池 の 性 能 調 べ (1)のようにして 製 作 した 蓄 電 池 に 以 下 のようにして 電 圧 を 加 えて 蓄 電 し モーターに 接 続 し て 放 電 させたときの モーターが 回 転 している 時 間 を 計 測 した 1 実 験 結 果 充 電 時 の 電 圧 3V 1V 充 電 時 間 3 分 4 分 5 分 3 分 4 分 5 分 放 電 時 の 電 圧 1.6V 1.5V 1.58V 0.05V 0.1V 0.1V モーターが 回 転 13 秒 19 秒 72 秒 回 転 しない 回 転 しない 回 転 しない している 時 間 2 考 察 鉛 蓄 電 池 の 性 能 調 べは 確 かな 結 果 が 得 られない 面 があったが 充 電 時 間 が 長 いほど 放 電 の 時 間 も 長 いことがわかる 電 圧 が1Vでは 放 電 時 に 十 分 な 電 圧 が 確 保 できない 充 電 時 の 電 圧 より 放 電 時 の 電 圧 の 方 が 低 くなる (3) 蓄 電 池 の 製 作 のまとめ 鉛 蓄 電 池 に 充 電 の 際 は 十 分 な 電 圧 が 必 要 であることから 本 製 作 では 複 数 個 の 鉛 蓄 電 池 を 製 作 し 充 電 時 には 並 列 で 充 電 し 放 電 時 には 直 列 で 放 電 することで 十 分 な 電 圧 を 確 保 できるよ うにしたいと 考 えた
Ⅳ 風 力 発 電 装 置 の 製 作 (1) 風 車 の 製 作 Ⅰの 結 果 をもとに 写 真 9のようにプラスチッ ク 段 ボールで 風 車 を 製 作 した 羽 は 円 中 型 の 木 に 丸 棒 をさしたものに 固 定 し た これを 風 力 発 電 装 置 の 本 体 ( 発 電 機 )に 接 続 する ことにした (2) 発 電 機 の 製 作 発 電 機 は 写 真 10 のよ うに 発 電 機 の 軸 となるシ ャフトにネオジム 磁 石 を 8 個 取 り 付 け その 周 りにコ イルを 配 置 ( 写 真 13)する ことにした コイルは 写 真 11 のようにアクリル 板 に4つのコイルを 取 り 付 け ダイオードのブリッジ 回 路 ( 写 真 12)により 電 流 の 方 向 が 一 方 向 になるようにし た 写 真 11 のような 装 置 を 4つ 製 作 し コイルの 周 り に 配 置 した 写 真 9 写 真 10 写 真 11 (3) 蓄 電 池 の 製 作 Ⅲの 蓄 電 池 を 10 個 用 意 し 写 真 14 のよ うにパッキングした この 蓄 電 池 を 放 電 時 に は 写 真 15 のようなふたをつけ 充 電 時 には 写 真 16 のようなふたをつけることとした そして この 装 置 を3つ 製 作 した 写 真 12 写 真 13 写 真 14 写 真 15 写 真 16
(4) 風 力 発 電 装 置 の 組 み 立 て (1)( 2)で 作 った 風 車 発 電 機 を 接 続 して 作 った 風 力 発 電 装 置 は 写 真 17 の ようなものである しか し この 発 電 装 置 では 十 分 な 電 圧 を 得 られなか 写 真 17 写 真 18 ったことから ギヤを 取 り 付 け( 写 真 18) 回 転 数 をあげることを 考 えた (5) 風 力 発 電 装 置 の 性 能 実 験 風 力 発 電 装 置 に 扇 風 機 の 風 をあてて 羽 を 回 転 させたところ 発 光 ダイオードが 点 灯 した( 写 真 19) なお このときの 回 転 数 は 1 分 あたり 60 回 転 であった 次 にこれを 写 真 20 のようにして 蓄 電 池 に 接 続 し 蓄 電 をし ながら 羽 を 回 転 させた このとき 電 圧 は 0.1Vであった( 写 真 21) これは 蓄 電 池 への 充 電 により 電 圧 が 下 がったため であると 考 えられる この 状 態 で1 時 間 の 充 電 を 行 った 充 電 後 蓄 電 池 を 直 列 で 接 続 し 電 子 メロディーに 接 続 したとこ ろ 電 子 メロディーが 鳴 った( 写 真 22) しかし 発 光 ダイ 写 真 19 オードを 点 灯 させることはできなかった 写 真 20 写 真 21 写 真 22 6 研 究 のまとめと 今 後 の 問 題 (1) 研 究 のまとめ 当 初 の 目 標 であった 風 力 発 電 により 発 生 した 電 流 を 蓄 電 池 にため 発 光 ダイオードを 点 灯 さ せる という 目 標 は 達 成 できなかった しかし 風 力 発 電 に 適 する 風 車 の 羽 の 枚 数 強 い 電 流 を 発 電 させるための 発 電 機 蓄 電 池 の 性 能 については 明 らかにさせることができた (2) 今 後 の 問 題 1 風 車 の 羽 の 枚 数 は2 枚 が 適 当 であることは 明 らかになったが 羽 の 形 状 や 長 さについては さら に 明 らかにしていくい 必 要 がある 2 発 電 機 では さらに 高 い 電 圧 を 得 られるような 発 電 機 が 必 要 である 今 回 の 発 電 機 はシャフト 部 分 に 磁 石 を 取 り 付 けたが 十 分 な 回 転 スピードを 得 られなかったために 十 分 な 発 電 ができなかっ たと 考 えられる 磁 石 をとりつける 場 所 やコイルの 位 置 についてはさらに 工 夫 していく 必 要 があ る より 高 い 電 圧 を 得 られるようにしていくことは 十 分 な 蓄 電 にもつながると 考 えられる 3 蓄 電 池 については 今 回 は 鉛 蓄 電 池 を 用 いたが 鉛 蓄 電 池 は 高 い 電 圧 において 有 効 に 機 能 する 蓄
電 池 であると 考 えられる 風 力 発 電 のように 電 圧 が 十 分 に 得 られない 場 合 の 蓄 電 方 法 をさらに 考 えていく 必 要 がある 4 今 回 の 研 究 では 風 力 発 電 装 置 の 性 能 実 験 を 行 ったとき すでに 冬 を 迎 え 雪 の 季 節 となってしま ったため 実 際 に 校 地 内 に 設 置 しての 実 用 実 験 をすることができずに 残 念 であった 来 年 度 以 降 に 試 す 場 があれば 実 用 実 験 も 行 っていきたい 7 その 他 今 回 の 研 究 では 発 電 することの 大 変 さを 改 めて 実 感 することができた 生 徒 は 試 行 錯 誤 しな がらもよりよい 風 力 発 電 装 置 になるように 研 究 を 進 めたが それでも 十 分 な 発 電 ができなかった 市 販 のモーターや 小 型 発 電 機 がいかに 効 率 よく 発 電 できるように 研 究 を 重 ねられた 上 に 作 られた ものであることを 生 徒 も 実 感 したようである 今 回 の 研 究 にあたり 学 校 科 学 教 育 奨 励 基 金 様 には 多 額 の 支 援 をいただき 感 謝 申 し 上 げます 本 校 の 科 学 クラブの 生 徒 の 科 学 的 な 探 求 力 育 成 のためにご 支 援 いただき ありがとうございまし た