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第 12 号 2011.2.9 地 球 温 暖 化 対 策 検 討 部 会 だより 今 回 は 日 本 をはじめ 海 外 の 農 村 のソーシャル キャピタル 水 利 ガバナンス 水 資 源 管 理 の 比 較 制 度 研 究 を 行 っている( 独 ) 国 際 農 林 水 産 業 研 究 センター 研 究 戦 略 調 査 室 調 査 コーディネ ーターの 山 岡 和 純 氏 に 寄 稿 していただきました 地 球 温 暖 化 対 策 検 討 部 会 から 原 稿 の 執 筆 の 依 頼 を 受 けたとき 過 去 の 部 会 だよりを 拝 読 させて いただきながら 私 に 書 ける 内 容 でどのような 話 題 がよいか 少 し 悩 んだ 末 に 農 村 振 興 技 術 者 と してこの 問 題 に 関 わるスタンスを 改 めて 考 えるきっかけになればとの 思 いから 一 文 を 認 めるこ とにいたしました 前 号 までの 記 事 とは 少 し 趣 が 変 わり 読 み 物 のスタイルとなりますが 最 後 までお 付 き 合 いいただければ 幸 いです 地 球 環 境 問 題 とコモンズの 悲 劇 皆 さんは コモンズの 悲 劇 という 言 葉 を 耳 にしたことのある 方 も 割 と 多 いのではないでしょ うか 米 国 テキサス 州 出 身 の 生 態 学 者 ギャレット ハーディンが 1968 年 にサイエンス 誌 に 発 表 した 論 文 "The Tragedy of the Commons"で 紹 介 され 世 の 中 に 広 まった 概 念 であるとされてい ます ご 存 知 のようにその 内 容 は 多 数 の 利 用 者 が 共 有 資 源 を 自 分 勝 手 に 乱 獲 することによって 一 時 的 には 各 人 の 利 益 が 増 大 するけれども 結 局 はその 資 源 を 枯 渇 に 向 かわせてしまい 全 員 が 損 失 を 被 るというものです 共 有 地 の 草 原 を 利 用 する 複 数 の 農 家 がそこで 放 牧 する 羊 の 頭 数 を 競 って 増 やすと 草 が 羊 に 食 べつくされて 結 局 皆 が 羊 を 飼 えなくなるという 例 え 話 が 有 名 ですね 地 球 環 境 問 題 もしばしばコモンズの 悲 劇 に 擬 えて 説 明 されています 地 球 はみんなのものであ るから その 限 りある 資 源 を 好 き 勝 手 に 使 えば 資 源 が 枯 渇 して 人 類 は 立 ち 行 かなくなる という 論 法 です この 説 明 は 一 見 説 得 力 があるようですが よく 考 えてみますと 地 球 はみんなのもの と 言 いながら 実 際 は 土 地 も 建 物 も 鉱 物 資 源 も 電 力 などのエネルギーも 大 勢 の 人 たちの 共 有 資 源 ではなく 個 人 や 企 業 によって 私 的 に 所 有 使 用 収 益 されています 私 たちは 他 人 が 対 価 を 支 払 って 所 有 する あるいは 使 用 権 を 有 する 資 源 を 好 き 勝 手 に 使 うことはできませんし ある 鉱 物 資 源 の 可 採 年 数 が 短 いからといって これはみんなのものだから 好 き 勝 手 に 使 ってはいけな い とは 言 えませんよね 希 少 性 の 高 い 鉱 物 資 源 は 例 えば 金 やプラチナやダイヤモンドのよう に 市 場 メカニズムによって 高 い 価 格 で 取 引 され 経 済 的 な 制 約 条 件 から 好 き 勝 手 には 使 えないの が 一 般 的 です 20 世 紀 における 資 源 問 題 と 環 境 概 念 の 発 展 20 世 紀 後 半 まで 天 然 資 源 は 経 済 活 動 のための 投 入 資 源 としてのみ 認 識 されてきました そのため 長 い 間 天 然 資 源 は 覇 権 を 争 う 国 家 間 の 争 奪 の 対 象 となりましたし 資 源 確 保 の 利 権 獲 得 競 争 が 国 際 的 緊 張 を 高 めてきました 古 くは 古 代 より 各 地 で 土 地 資 源 (= 領 土 )がその 主 た

る 対 象 とされてきましたが やがて 英 国 を 中 心 とした 第 一 次 産 業 革 命 以 降 には 石 炭 鉱 物 資 源 が 20 世 紀 に 入 り 石 油 が 第 2 次 世 界 大 戦 後 はさらに 漁 業 資 源 水 資 源 生 物 遺 伝 資 源 までが 対 象 に 加 わってきました こうした 経 済 活 動 の 使 用 収 益 に 充 てられる 資 源 の 争 奪 枯 渇 の 問 題 は や がて20 世 紀 後 半 には 石 油 資 源 など 地 球 規 模 の 資 源 利 用 の 限 界 広 汎 な 資 源 枯 渇 の 問 題 として 認 識 されることとなり 1972 年 のローマ クラブによるレポート 成 長 の 限 界 が 発 表 される に 至 ったのです こうして 産 業 経 済 活 動 のために 自 由 に 開 発 され 投 入 されるべきものと 考 えられていた 天 然 資 源 は 人 類 の 存 在 の 可 能 性 そのものとも 結 びついた むやみに 劣 化 損 傷 させてはならないものとし て 認 識 されるようになりました この 天 然 資 源 の 劣 化 損 傷 は 乱 開 発 による 枯 渇 だけでなく 大 気 汚 染 や 海 洋 汚 染 のように 経 済 活 動 によって 発 生 する 廃 棄 物 の 蓄 積 によっても 引 き 起 こされる ことが 明 らかとなり これらはやがて 地 球 規 模 の 人 類 や 生 態 系 の 持 続 性 といったマクロ 的 な 環 境 概 念 に 発 展 していきます また 産 業 革 命 以 降 の 労 働 環 境 問 題 から 出 発 して 各 国 で 時 期 的 な 差 こそあれ 20 世 紀 後 半 以 降 特 に 急 速 な 工 業 化 に 伴 う 大 気 や 水 質 の 汚 染 臭 気 騒 音 など 特 に 経 済 活 動 が 集 積 する 都 市 部 の 生 活 環 境 の 悪 化 が 身 近 な 問 題 として 認 識 されるようになり これ らはやがて コミュニティー 規 模 の 生 活 環 境 や 生 物 生 息 環 境 の 保 全 といったミクロ 的 な 環 境 概 念 として 浸 透 していきます 結 局 経 済 活 動 に 投 入 する 天 然 資 源 の 乱 開 発 による 劣 化 損 傷 枯 渇 の 問 題 (マクロ)と 経 済 活 動 の 結 果 発 生 する 廃 棄 物 による 汚 染 という 形 での 天 然 資 源 の 劣 化 損 傷 枯 渇 の 問 題 (ミクロ)が また 別 の 見 方 をすれば 産 業 の 関 心 事 項 と 生 活 の 関 心 事 項 が 一 つの 座 標 軸 に 収 斂 した 形 で 環 境 問 題 が 捉 えられるようになっていったのです 20 世 紀 の 環 境 管 理 概 念 の 発 展

環 境 と 資 本 概 念 の 融 合 一 方 所 得 の 上 昇 や 経 済 成 長 として 捉 えられていた 発 展 の 概 念 は 急 速 な 経 済 成 長 による 資 源 の 大 量 消 費 と 環 境 破 壊 が 経 済 発 展 そのものを 脅 かすことが 明 らかとなり 持 続 的 発 展 が 重 要 な 概 念 と 認 識 されるようになってきました これに 呼 応 して 工 場 や 生 産 手 段 などの 私 的 資 本 や 電 力 上 下 水 道 道 路 通 信 網 などの 社 会 資 本 (インフラストラクチャー) と 並 んで 環 境 をストックとしての 資 本 概 念 で 捉 える 必 要 性 が 認 識 されるようになりました 宇 沢 (1995) やホーケンら(Hawken et al. 1999)は 資 源 枯 渇 と 廃 棄 物 による 汚 染 を 合 わせて 一 つの 座 標 軸 で 環 境 問 題 を 捉 える 概 念 として 自 然 資 本 を 提 起 しました すなわち 伝 統 的 な 資 源 経 済 学 での 資 源 をストックと 捉 える 概 念 とともに 大 気 や 水 質 汚 染 の 問 題 では 大 気 や 水 資 源 による 汚 染 物 質 の 同 化 吸 収 能 力 をストックと 捉 え 汚 染 の 蓄 積 は 同 化 吸 収 能 力 というストックが 劣 化 損 傷 したものとする 考 え 方 です つまり この 場 合 の 自 然 資 本 には 物 的 資 本 の 範 疇 を 超 えて 同 化 吸 収 能 力 や 生 物 多 様 性 などに 代 表 される 非 物 質 的 な 価 値 を 資 本 とみなす 概 念 の 拡 張 が 導 入 されているのです そして 社 会 全 体 のストックを 私 的 資 本 社 会 資 本 と 自 然 資 本 の 総 和 として 捉 え これらの 適 切 な 管 理 を 考 えていこうとする 方 向 が 示 されるようになったのです さらに 持 続 可 能 な 発 展 の 概 念 については 1987 年 の 環 境 と 開 発 に 関 する 世 界 委 員 会 (ブ ルントラント 委 員 会 ) が 発 表 した 報 告 書 我 々の 共 通 の 未 来 で 将 来 世 代 が 自 らの 必 要 性 を 満 たす 能 力 を 損 なうことなく 現 代 世 代 の 必 要 性 を 満 たすような 発 展 と 定 義 され その 精 神 は 1992 年 の 国 連 環 境 開 発 会 議 (リオ 地 球 環 境 サミット)で 採 択 された アジェンダ21 に 引 き 継 がれ 決 定 的 なものとなっていきました これはその 後 経 済 発 展 と 環 境 を 単 に 対 立 軸 でとらえるのではなく 経 済 社 会 環 境 の 相 互 連 関 を 踏 まえた 持 続 可 能 性 の 概 念 に 深 化 して いきました ここでは 時 間 軸 を 通 じて 自 然 資 本 を 維 持 しつつ 経 済 的 にも 社 会 的 にも 持 続 可 能 であることが 目 指 されます しかし 環 境 の 保 全 が 究 極 目 的 なのではなく 福 祉 の 増 進 と いった 究 極 目 的 を 世 代 内 及 び 世 代 間 の 公 平 性 に 配 慮 しつつ 達 成 することが 目 的 となります そし て そのために 自 然 資 本 の 賦 存 量 を 適 切 に 管 理 しながら 様 々な 資 源 を 取 り 出 して 加 工 し 財 やサービスを 持 続 的 に 生 産 することになるのです コモンズとローカル コモンズ ここまで 書 きますと 冒 頭 に 取 り 上 げた 疑 問 に 対 する 答 えが 見 つかったことと 思 います つま り 地 球 環 境 問 題 をコモンズの 悲 劇 に 擬 えて 説 明 するときに みんなのもの とされる 資 源 は いわゆる 伝 統 的 な 資 源 経 済 学 での 経 済 活 動 の 使 用 収 益 に 充 てられる 資 源 だけではなく むしろ 汚 染 物 質 の 同 化 吸 収 能 力 や 生 物 多 様 性 など 物 的 資 本 の 範 疇 を 越 えた 非 物 質 的 な 価 値 をも 資 源 とみ なして これらを 合 わせた 自 然 資 本 という 拡 張 された 概 念 を 指 しているのです そして コモンズの 悲 劇 が 起 こるのは 後 にハーディンが 修 正 したように 自 然 資 本 がオープ ンアクセス( 非 排 除 的 )であるときに 限 ります 誰 でも 自 由 に 利 用 できる 状 態 の 自 然 資 本 が 最 も 危 険 であるといえます 上 述 の 複 数 の 農 家 が 羊 を 放 牧 して 共 有 地 の 草 原 を 利 用 する 例 では 実 際 には 利 用 者 が 地 域 コミュニティーの 構 成 員 に 限 定 され かつ 構 成 員 の 間 で 何 らかの 管 理 ルール が 定 められることが 多 いので コモンズの 悲 劇 は 起 こりません このような 限 定 された 利 用 者 によって 収 益 を 分 配 するために 利 用 される 排 除 性 のある 共 有 資 源 は ローカル コモンズと 呼 ばれています また 定 められた 管 理 ルールが 機 能 せずにコモンズの 悲 劇 が 起 こる 場 合 には 草 原 全 体 が 一 斉 に 荒 廃 し 全 ての 農 民 が 同 時 に 倒 れるのではなく 荒 廃 の 進 行 とともに 競 争 力 が 低 い 農 家 から 順 に 脱 落 し 最 後 まで 生 き 残 った 農 家 が 荒 廃 した 牧 草 地 の 全 てを 独 占 することになりま

す 自 由 競 争 市 場 のもと 過 度 な 廉 売 競 争 によって 市 場 参 入 者 が 次 々と 体 力 を 消 耗 し 独 占 市 場 が 形 成 されていく 過 程 と 同 様 の 現 象 が 起 こるのです 地 球 環 境 問 題 が 深 刻 な 問 題 であり コモンズの 悲 劇 に 擬 えて 説 明 されるゆえんは 対 象 となる 自 然 資 本 がオープンアクセスであるからです 特 に 物 的 資 本 の 範 疇 を 越 えた 同 化 吸 収 能 力 や 生 物 多 様 性 などに 代 表 される 非 物 質 的 な 価 値 は 取 引 市 場 が 存 在 しないため 市 場 を 通 じた 需 給 の 管 理 ができません このような 自 然 資 本 は 国 際 社 会 や 国 家 権 力 が 管 理 し あるいは 利 用 者 が 自 ら 管 理 しながら 利 用 することにより コモンズの 悲 劇 を 防 ぐことができます オープンアクセスな 自 然 資 本 の 管 理 オープンアクセスを 管 理 するシステムのあり 方 としては まず 当 該 自 然 資 本 の 利 用 者 を 限 定 するための 管 理 システムがあります 有 償 又 は 無 償 で 所 有 権 や 利 用 権 が 与 えられた 者 だけに 利 用 を 限 定 する あるいは 利 用 する 事 業 を 免 許 制 認 可 制 にすることがこれに 該 当 します 利 用 者 は これらの 権 利 や 免 許 を 与 えられた 時 の 条 件 を 守 るという 形 で 当 該 自 然 資 本 を 管 理 しながら 利 用 することになります 条 件 を 守 らなければ 権 利 や 免 許 を 剥 奪 されるからです これは 土 地 資 源 水 資 源 鉱 物 資 源 エネルギー 資 源 通 信 事 業 ( 電 波 帯 ) 等 使 用 収 益 に 充 てられる 資 源 の 管 理 に 適 した 方 法 ですが 地 球 環 境 問 題 でも 生 物 多 様 性 の 保 護 を 目 的 とした 希 少 生 物 資 源 の 管 理 土 地 の 乱 開 発 や 大 規 模 な 森 林 伐 採 の 管 理 廃 棄 物 の 海 洋 投 棄 の 規 制 などに 用 いることができます 公 的 な 制 度 によるオープンアクセスなコモンズのローカル コモンズ 化 と 言 えます これに 対 して 不 特 定 多 数 による 当 該 自 然 資 本 の 利 用 の 一 部 を 排 除 することが 困 難 な 場 合 には 利 用 者 を 限 定 するのではなく 誰 でも 利 用 できるが 各 利 用 者 に 利 用 のルールを 遵 守 させるシステ ムが 考 えられます 例 えば 自 動 車 の 排 ガス 規 制 のように 大 気 汚 染 や 水 質 汚 濁 に 関 わる 物 質 の 排 出 量 を 規 制 して 違 反 がないかどうか 取 り 締 まる あるいはキャップ 制 により 温 室 効 果 ガスの 排 出 量 の 上 限 を 定 めたうえで 排 出 権 取 引 市 場 を 創 出 するなどです この 場 合 前 者 の 場 合 の 問 題 点 は 取 り 締 まりが 甘 ければ 規 制 を 破 るフリーライダーが 後 を 絶 たないということです 相 互 監 視 内 部 告 発 などの 環 境 を 整 備 して 取 り 締 まりの 効 率 性 を 上 げる 必 要 があります また 後 者 の 場 合 の 問 題 点 は 無 制 限 な 取 引 を 認 めると 経 済 的 に 優 位 なセクターでの 排 出 量 削 減 の 意 欲 を 削 ぎ モラルハザードを 生 じさせ 技 術 開 発 を 遅 らせる 可 能 性 があることです 環 境 の 新 たな 定 義 ( 試 論 ) 自 然 資 本 に 相 対 する 概 念 が 人 工 資 本 (= 私 的 資 本 + 社 会 資 本 )ですが 自 然 資 本 はいわ ゆる 天 然 資 源 のように 手 つかずの 自 然 ばかりを 対 象 としているのではありません 現 実 的 には 砂 漠 や 未 開 の 密 林 などを 除 けば 土 地 にしても 森 林 にしても 河 川 にしても かなり 多 くの 自 然 資 本 は 何 らかの 人 の 手 が 加 わっています また 上 述 のように 環 境 の 概 念 が 発 展 してきた 結 果 現 代 の 社 会 生 活 において 環 境 と 呼 ばれるもの 範 囲 は 生 活 に 必 需 的 な 財 やサービスを 無 差 別 的 に 供 給 するもの 全 体 を 指 すようになりました それでは 環 境 を 私 たちが 自 らのため あるいは 次 世 代 のために 保 全 すべきものとして 位 置 づけた 場 合 に 環 境 = 自 然 資 本 と 考 えてよいのでしょうか? まず ここでは 環 境 が 自 然 資 本 の 全 てを 含 むべきかを 考 えてみましょう もし 仮 に 財 やサービスの 供 給 を 続 けても 自 然 回 復 力 あるいは 新 たな 埋 蔵 量 の 発 見 などにより 劣 化 損 傷 が 全 く 問 題 とならない 自 然 資 本 があるとすると これは 持 続 可 能 な 発 展 の 視 点 から 保 全 の 方 策 等 を 議 論 する 対 象 とはなりません 例 えば 大 気 中 の 酸 素 のようなもの あるいは 地 球 上 に 降 り 注 ぐ

太 陽 エネルギーなどがこれに 相 当 します あるいは 地 下 資 源 では 埋 蔵 量 が 豊 富 で 可 採 年 数 が 比 較 的 長 期 のもの 例 えば 可 採 年 数 が 192 年 といわれる 石 炭 や 156 年 といわれるアルミニウムなど がこれに 近 いと 言 えます これらは 経 済 活 動 を 制 限 してでも あるいは 逆 に 投 資 をしてでも 積 極 的 に 保 全 しなければならない 環 境 とは 言 えません 逆 に 排 除 性 競 合 性 ( 混 雑 性 )が 低 く 多 くの 人 々が 便 益 を 受 け 私 的 投 資 ではフリーライ ダーが 発 生 し 市 場 の 失 敗 が 問 題 となるため 公 的 投 資 によって 形 成 し 維 持 している 社 会 資 本 の 多 くは 今 後 も 積 極 的 に 保 全 していく 必 要 があります しかし 社 会 資 本 の 中 にも すでに 歴 史 の 役 目 を 終 えた 鉄 道 道 路 やダム あるいは 利 用 度 の 低 い 公 共 施 設 など 社 会 経 済 の 変 化 と ともに 必 要 性 が 薄 れたものがあり これらについては 持 続 可 能 な 発 展 の 視 点 から 保 全 の 方 策 等 を 議 論 する 対 象 とならないので 除 外 して 考 える 方 が 良 いでしょう これらのことから 考 えると 環 境 を 自 然 資 本 人 工 資 本 の 区 分 で 定 義 するよりも 次 の2つの 条 件 を 同 時 に 満 たす 資 本 として 定 義 する 方 がより 妥 当 性 があると 言 えます A) 財 及 びサービスの 供 給 について 人 々の 生 活 に 必 需 的 な 財 及 びサービスを 実 需 者 にオープンア クセスな 形 で 供 給 するか または 相 当 のフリーライドが 生 じうるもの( 財 及 びサービスの 供 給 において 相 当 の 割 合 で 外 部 経 済 を 発 生 する) B) 資 本 回 復 のための 投 資 について 公 共 または 集 団 的 な 管 理 による 投 資 がないと 財 及 びサービ スの 供 給 の 継 続 により 深 刻 な 劣 化 損 傷 が 進 行 するもの( 自 己 中 心 主 義 が 勝 ると 投 資 における 市 場 の 失 敗 あるいはコモンズの 悲 劇 が 発 生 する) 人 工 資 本 のうち 私 的 資 本 は 原 則 的 に 利 潤 の 確 保 を 目 的 として 蓄 積 され 一 般 的 には オープンアクセスな 形 で 利 用 できませんので 例 えば 美 しい 景 観 を 形 成 している 棚 田 や 来 訪 者 に 快 適 な 街 並 み 空 間 を 提 供 している 私 的 建 造 物 などの 少 数 の 例 外 を 除 けば 上 記 の 定 義 に 該 当 しませ ん そうすると 結 局 環 境 は 下 図 に 示 すように 上 記 の 定 義 を 満 たす 多 くの 自 然 資 本 と 一 部 の 社 会 資 本 さらには 例 外 的 な 一 部 の 私 的 資 本 から 構 成 されることになります 公 共 部 門 または 公 的 ルールによって 保 全 修 復 されるべき 環 境 の 新 たな 定 義

モンスーンアジアの 水 田 灌 漑 システム この 新 たな 定 義 によれば 日 本 を 含 むモンスーン アジア 各 地 でみられる 協 働 で 集 団 的 組 織 的 な 水 利 用 水 管 理 を 行 う 水 利 ガバナンスが 成 立 している 湿 潤 気 候 下 の 水 田 灌 漑 システムは 概 ね 環 境 の 一 部 を 構 成 するものであると 考 えることができます なぜならば まず このシステ ムは 農 村 住 民 の 多 数 を 占 める 農 民 の 生 活 と 生 産 活 動 の 両 面 において 不 可 欠 のものです そして オープンアクセスな 大 量 の 外 部 経 済 ( 多 面 的 機 能 )を 発 生 すると 共 に 維 持 回 復 のために 集 団 的 な 管 理 による 投 資 を 必 要 とする 自 然 資 本 の 水 及 び 社 会 資 本 の 水 利 施 設 という 資 本 によ って 構 成 されていて 上 述 の A) 及 び B)の 条 件 を 同 時 に 満 たすと 見 られるからです 宇 沢 は このような 性 格 を 有 する 自 然 資 本 と 社 会 資 本 を 合 わせて 経 済 活 動 との 関 係 の 中 でこれらを 維 持 管 理 していくための 制 度 と 一 体 的 に 社 会 的 共 通 資 本 と 名 付 けました ここには 市 民 の 基 本 的 生 活 権 の 思 想 が 盛 り 込 まれています 彼 によればこの 社 会 的 共 通 資 本 は 生 産 と 生 活 の 両 面 にとって 必 需 財 的 な 性 質 を 持 つ 公 共 性 が 高 い 財 であり 市 民 が 健 康 で 快 適 な 生 活 を 送 る 上 で 必 要 不 可 欠 な 基 盤 を 提 供 する 役 割 を 担 っているものです したがって これを 最 適 に 管 理 するためには 利 潤 追 求 の 原 理 によるのではなく 技 術 的 に 専 門 的 な 観 点 からの 中 立 的 な 判 断 が 求 められます また その 利 用 に 当 たっては 混 雑 現 象 が 生 じることが 一 般 的 です ので 適 切 な 水 準 の 賦 課 金 を 科 しながら その 供 給 については 市 場 に 委 ねずに 公 共 部 門 が 責 任 を 持 つか 公 共 性 に 基 づく 何 らかのルールの 設 定 が 必 要 です( 宇 沢 1995) ローカル コモンズとしての 環 境 の 管 理 欧 米 を 中 心 とする 近 代 的 畑 作 農 業 における 農 業 水 利 と 日 本 をはじめ 湿 潤 気 候 下 のモンスー ン アジア 諸 国 の 農 業 水 利 は 本 質 的 に 異 なる 目 的 意 識 と 技 術 体 系 のもとで 発 展 しました 即 ち 欧 州 では 村 落 単 位 の 共 同 体 的 な 低 位 安 定 型 三 圃 式 農 業 が 根 菜 類 や1 年 生 豆 科 牧 草 をとり 入 れて 酪 農 と 結 合 した 地 力 維 持 型 有 畜 経 営 としての 輪 栽 式 農 法 に 取 って 代 わられ 共 同 体 的 営 農 の 必 要 性 が 薄 れて 個 別 経 営 が 確 立 していきました 第 二 次 世 界 大 戦 後 個 別 経 営 の 基 盤 のもとに 資 本 の 蓄 積 が 進 展 し さらに 専 門 性 の 高 い 農 業 経 営 が 発 展 しました 農 業 水 利 も 個 別 経 営 体 へのサービ ス 事 業 としての 性 格 が 強 いものとなっています 一 方 温 暖 湿 潤 な 気 候 下 で 洪 積 台 地 河 岸 段 丘 谷 地 自 然 堤 防 湿 地 等 が 入 り 組 む 風 土 に 適 合 した 水 田 水 利 開 発 が 進 展 したモンスーン アジア 諸 国 では 農 業 生 産 活 動 における 個 の 確 立 と ともに 水 利 ガバナンスと 呼 ぶべき 協 働 協 治 によって 資 源 や 財 を 管 理 する 仕 組 みが 発 達 し 農 民 間 にソーシャル キャピタルが 蓄 積 され 共 生 社 会 基 盤 が 形 成 されています つまり 度 重 なる 洪 水 や 渇 水 への 集 団 的 対 応 の 経 験 を 通 じた 個 よりも 全 体 の 利 益 を 重 視 して 個 の 調 整 を 図 る 水 利 共 同 体 が 成 立 発 展 したのです ここでは 水 の 需 給 が 逼 迫 していない 常 時 における 経 済 学 的 合 理 性 とともに ローカル コモンズとしての 水 の 需 給 が 逼 迫 する 渇 水 時 における 独 特 の 水 利 秩 序 あ るいは 水 利 慣 行 による 別 途 の 経 済 学 的 合 理 性 が 成 立 しています 近 年 いわゆる 里 山 と 呼 ばれる 一 般 的 に 集 落 の 背 後 に 展 開 し 農 畜 産 と 結 合 して 資 源 循 環 シ ステムを 形 成 する 林 地 の 持 続 的 な 利 用 管 理 を 目 指 した 取 り 組 みが 里 山 イニシアティブとして 注 目 されています この 里 山 もまた 農 畜 産 個 別 経 営 体 の 経 済 活 動 と 共 生 しながら かつては 入 会 林 と 呼 ばれたローカル コモンズとしての 資 源 が 経 営 体 間 の 協 働 協 治 によって 利 用 管 理 される 性 格 を 有 しています 近 代 社 会 において これらのローカル コモンズを 持 続 的 に 利 用 管 理 するシステム すなわち ローカルな 取 決 めや 運 営 組 織 といった 社 会 経 済 的 な 仕 組 みと それを 維 持 する 人 間 の 価 値 観 や 意

志 は 一 見 時 代 遅 れのもののように 見 えます しかし 今 や 地 球 資 源 や 環 境 容 量 の 有 限 性 などが 具 体 的 な 数 値 により 世 界 中 で 情 報 共 有 される 時 代 です 現 代 社 会 にあって 地 球 環 境 はもはや 純 粋 にオープンアクセスな 資 源 として 利 用 することは 許 されないものとなりつつあります したがっ て 現 代 にあってこそ 地 球 環 境 を 人 類 が 利 益 を 分 かち 合 うために 営 む 共 同 事 業 の 場 と 考 えて 地 球 環 境 をローカル コモンズとして 管 理 していく 必 要 性 に 迫 られているのです その 中 で 重 要 なのは 上 述 のような 自 然 資 本 の 利 用 者 を 限 定 するなどの 制 度 的 な 仕 組 みを 作 ることと 共 に 個 の 利 益 を 優 先 しがちな 個 々 人 の 価 値 観 や 意 志 をどのようにコントロールするかではないでしょう か 中 国 雲 南 省 の 哈 尼 (ハニ) 族 の 棚 田 と 農 村 振 興 技 術 者 への 期 待 昨 年 の 11 月 に 機 会 があって 中 国 雲 南 省 の 省 都 昆 明 の 南 方 約 350km 紅 河 上 流 域 の 南 に 位 置 する 哀 牢 (アイラォ) 山 の 南 側 の 急 斜 面 いっぱいに 拓 かれている 棚 田 の 一 角 と 哈 尼 族 の 集 落 を 訪 れました 彼 らは 隋 唐 の 時 代 7 世 紀 ごろにこの 地 に 移 り 住 み もともとは 低 い 地 域 で 暮 らしていたのですが 高 温 多 湿 の 気 候 を 嫌 って 高 い 地 域 に 移 住 し 棚 田 を 拓 いたといわれて います 以 来 1300 年 間 こつこつと 用 水 路 や 棚 田 を 拓 き 続 け 今 では 最 大 3,700 段 にも 及 ぶ 気 の 遠 くなるような 数 の 約 13,000ha の 棚 田 に 全 部 で 4,650 本 もの 用 水 路 が 毎 年 水 を 届 けて います 少 数 民 族 は 最 大 勢 力 の 哈 尼 族 のほか 彝 (イー) 族 ハン 族 ダイ 族 ミャオ 族 ヤ オ 族 ツゥォワン 族 と 全 部 で 7 つの 少 数 民 族 が 大 体 標 高 別 に 住 み 分 けて 平 和 共 存 しています 棚 田 から 蒸 発 した 水 蒸 気 が 霧 や 雲 を 生 み 再 び 地 上 に 慈 雨 をもたらす 哀 牢 山 に 降 った 年 間 1400mm 前 後 の 雨 は 山 の 森 林 で 受 け 止 められ 渓 流 となり 用 水 路 に 導 かれ 人 々が 暮 らす 集 落 の 中 を 流 下 します そこでさまざまな 生 活 用 水 として 利 用 されながら 下 流 に 下 り 無 数 の 水 路 に 分 かれて 棚 田 に 導 かれます 棚 田 は 水 を 貯 えながら 棚 田 そのものが 水 路 となり 上 の 段 から 下 の 段 へ 水 を 落 としていきます 強 い 日 差 しに 照 らされて 棚 田 の 水 は 蒸 発 し それが 雲 を 作 り また 雨 を 降 らせる そうした 水 を 中 心 とするエコロジカル サイク ル システムの 中 に 稲 作 と 哈 尼 族 の 人 々の 暮 らしがあります 人 々はこの 恵 みの 水 をもたらす 雲 は 龍 の 化 身 であると 信 じ 豚 などの 生 贄 を 捧 げて 豊 作 を 祈 願 します 一 年 に 一 回 行 われる 収 穫 祭 では 屋 外 に 200mにも 及 ぶテーブルを 並 べて 食 事 を 持 ち 寄 り 酒 を 酌 み 交 わして 収 穫 の 喜 び を 分 かち 合 う 長 街 宴 という 風 習 が 続 いています 近 代 化 の 中 で 様 々な 困 難 に 直 面 しながらも 哈 尼 族 の 人 たちは この 棚 田 水 のエコロジカル サイクル システム 収 穫 されたおコメ 民 族 衣 装 や 料 理 などを 自 分 たちのアイデンティティー としてとても 大 事 にしています 一 人 の 力 で 維 持 することはできない 水 土 里 の 資 源 とも 言 う べき 文 化 的 資 産 を 子 供 の 頃 からの 深 い 関 わりの 中 で 育 まれた 共 通 の 価 値 観 を 共 有 する 仲 間 地 域 の 人 々が 知 恵 と 力 を 出 し 合 って 今 も 守 り 続 けています 彼 らの 日 常 生 活 の 中 で 守 るべき 彼 ら の 水 土 里 資 源 が 可 視 化 されているからこそ 大 した 経 済 的 な 価 値 を 生 み 出 さないこの 膨 大 な 棚 田 に 彼 らが 深 い 愛 情 の 眼 差 しを 注 ぐことができるのではないかと 感 じました 農 村 振 興 技 術 者 の 皆 さんは 内 外 でこのような 多 くの 事 例 に 直 に 接 し 地 域 の 人 々と 共 に 知 恵

を 絞 って 問 題 解 決 にあたってきた 経 験 を 蓄 積 されてきています これからの 地 球 環 境 問 題 への 取 り 組 みにおいては 個 の 利 益 を 優 先 しがちな 個 々 人 の 価 値 観 や 意 志 をいかに 上 手 にコントロール できるかが 事 の 成 否 を 分 けることになると 考 えられます 今 こそ 自 然 科 学 の 工 学 技 術 と 社 会 科 学 の 管 理 技 術 を 総 合 的 に 駆 使 してきた 皆 さんの 豊 富 な 経 験 と 知 恵 が 必 要 とされているのです 参 考 文 献 1 Hardin, G( 1968): The Tragedy of the Commons, Science, 162, pp.1243-1248. 2 Hawken, P., Lovins, Amory B. and Lovins, L. Hunter( 1999) : Natural Capitalism: The Next Industrial Revolution, Nature, 402(6757), p13. 3 宇 沢 弘 文 (1995): 地 球 温 暖 化 の 経 済 学, 岩 波 書 店,219pp. 4 山 岡 和 純, 堀 川 直 紀, 友 正 達 美, 任 永 懐 ( 2004):モンスーン アジア 水 田 稲 作 の 水 利 用 の 効 率 性 と 外 部 経 済, 農 業 土 木 学 会 誌,72(9), pp.23-28. 5 山 岡 和 純 (2005): 異 常 渇 水 時 における 農 業 用 水 の 節 水 と 水 道 用 水 への 水 融 通 ~ 渇 水 リスクのパラドックス 克 服 によ り 蓄 積 されたソーシャル キャピタルが 果 たす 社 会 貢 献 ~, 農 業 技 術,60(12), pp.557-561. 龍 を 模 して 200m にわたり 曲 線 状 にテーブルを 並 べた 長 街 宴 6 YAMAOKA Kazumi( 2006) : Paddy Field Characteristics in Water Use: Experience in Asia, AGRICULTURE AND WATER: SUSTAINABILITY, MARKETS AND POLICIES, Organization for Economic Co-operation and Development (OECD), ISBN 92-64-02256-2, pp.287-315 山 岡 和 純 略 歴 昭 和 57 年 東 京 大 学 農 学 部 農 業 工 学 科 卒 業 同 年 農 林 水 産 省 入 省 農 業 農 村 振 興 部 門 を 担 当 その 後 日 本 農 業 土 木 総 合 研 究 所 農 村 工 学 研 究 所 で 農 業 農 村 振 興 の 研 究 を 実 施 東 京 大 学 特 任 教 授 昨 年 4 月 から 国 際 農 林 水 産 業 研 究 センター 研 究 戦 略 調 査 室 調 査 コーディネーター 現 在 に 至 る 農 学 博 士 棚 田 学 会 理 事 農 水 省 が 設 置 した 農 業 農 村 整 備 分 野 における 地 球 温 暖 化 対 応 検 討 会 委 員 (H19) 本 部 会 の 情 報 収 集 発 信 WG 北 海 道 農 政 部 農 村 振 興 局 農 村 計 画 課 農 地 計 画 グループ 部 会 へのご 意 見 お 待 ちしています Tel 011-231-4111( 内 線 27-425) E-mail nosei.keikaku1@pref.hokkaido.lg.jp