実 践 を よりよく するための 実 践 研 究 日 本 語 教 育 における 実 践 研 究 のあり 方 を 問 う Practical Studies for Creating Better Practices Considering the Nature of Practical Studies in Japanese Language Education 古 屋 憲 章 ( 早 稲 田 大 学 ) 橋 本 拓 郎 ( 香 港 大 学 ) 吉 田 真 宏 ( 香 港 大 學 專 業 進 修 學 院 ) 要 旨 本 パネルでは 日 本 語 教 師 によって 実 際 に 行 われた 実 践 研 究 を 題 材 に 日 本 語 教 育 に おける 実 践 研 究 のあり 方 具 体 的 には どのように 実 践 研 究 を 行 うことで 実 践 がどのよ うに よりよく なるかに 関 し 議 論 する また 実 践 研 究 を 介 した 日 本 語 教 師 コミュニ ティ 構 築 の 可 能 性 に 関 しても 議 論 したい キーワード: 実 践 研 究 ; 批 判 的 な 省 察 ; 言 語 教 育 観 ; 実 践 研 究 の 記 述 ; 日 本 語 教 師 コミュニティ 本 文 1. 本 パネルセッションの 概 略 と 目 的 パネリストの 一 人 である 古 屋 は 2012 年 6 月 24 日 にオンライン 上 で 開 催 された 勉 強 会 (つながろうねっト https://sites.google.com/site/sekaitsunagaru/)において 自 分 の 授 業 実 践 を 考 える 記 述 する- 日 本 語 教 師 がつながるための 実 践 研 究 と 題 し 対 話 型 セッションを 行 った 当 該 のセッションにおいて 古 屋 は よりよい 実 践 を 行 うためには 日 本 語 教 師 による 自 身 の 日 本 語 教 育 実 践 ( 以 下 実 践 )を 対 象 とする 実 践 研 究 が 不 可 欠 であることを 主 張 した 勉 強 会 終 了 後 参 加 者 から 自 身 の 実 践 を 対 象 に 実 践 研 究 を 試 みたい 方 を 募 ったところ 吉 田 橋 本 の 両 氏 が 応 じた そこで 吉 田 橋 本 が 古 屋 の 助 言 のもと 自 身 の 実 践 を 対 象 とする 実 践 研 究 ( 具 体 的 には 実 践 の 省 察 省 察 に 基 づく 計 画 )に 取 り 組 むことになった 本 パネルは 日 本 語 教 師 により 実 際 に 行 われた 実 践 研 究 を 題 材 に 日 本 語 教 育 におけ る 実 践 研 究 のあり 方 に 関 し 議 論 することを 目 的 とする 具 体 的 には どのように 実 践 研 究 を 行 うことで 実 践 がどのように よりよく なるかに 関 し 議 論 する 普 遍 的 な よりよい 実 践 は 存 在 しない どのような 実 践 が よりよい 実 践 である かは 当 該 の 実 践 の 背 景 にある 実 践 者 の 言 語 教 育 観 教 室 や 学 習 者 が 置 かれている 社 会 的 文 脈 により 異 なる 本 パネルには 実 践 研 究 のプロセスを 通 し 自 身 の 言 語 教 育 観 及 び 当 該 の 教 室 や 学 習 者 が 置 かれている 社 会 的 文 脈 を 把 握 した 上 で 自 分 にとって よりよ い 実 践 とは 何 かを 探 求 しようとする 日 本 語 教 師 の 参 加 が 期 待 される 1
2. 本 パネルセッションの 構 成 本 パネルセッションは 以 下 の 三 つのパネル およびパネルセッションを 踏 まえた 会 場 での 議 論 により 構 成 される パネル 1: 日 本 語 教 育 における 実 践 研 究 はどのような 営 みか パネル 2:SNS(Facebook)を 利 用 した 教 室 内 活 動 と 教 室 外 活 動 をつなぐ 試 み パネル 3: 日 本 語 母 語 話 者 とのソーシャル ギャザリングを 通 した 動 機 づけ パネル 1 では 古 屋 が 日 本 語 教 育 における 実 践 研 究 を 定 義 した 上 で その 意 義 を 述 べ る パネル 2 3 では 吉 田 橋 本 から 自 身 が 行 った 実 践 実 践 の 省 察 省 察 に 基 づく 次 の 実 践 の 計 画 に 関 し 報 告 する 更 に 実 践 実 践 の 省 察 省 察 に 基 づく 次 の 実 践 の 計 画 というサイクルを 記 述 した 結 果 自 身 の 実 践 や 言 語 教 育 観 にどのような 変 容 があったか を 報 告 する 三 つの 発 題 を 踏 まえ どのように 実 践 研 究 を 行 うことで 実 践 がどのように よりよく なるかに 関 し 参 加 者 と 共 に 議 論 する また 実 践 研 究 の 記 述 公 表 を 介 し た 日 本 語 教 師 コミュニティ 構 築 の 可 能 性 に 関 しても 議 論 したい 以 下 各 パネルにおける 発 題 に 関 し 概 略 を 述 べる 3.パネル1: 日 本 語 教 育 における 実 践 研 究 はどのような 営 みか 古 屋 憲 章 日 本 語 教 育 における 実 践 研 究 とは 日 本 語 教 師 が 自 身 の 実 践 を 対 象 に 行 う 実 践 実 践 の 省 察 省 察 に 基 づく 次 の 実 践 の 計 画 実 践 実 践 の 省 察 というサイクルを 継 続 す る 営 みである( 金 武 古 屋 2010) 実 践 研 究 のサイクルの 要 となる 実 践 の 省 察 は 主 に 次 の 四 つの 問 いに 基 づき 行 われる(パネル 2 3 では 次 の 1)~4)の 問 いに 基 づ き 各 自 の 実 践 の 省 察 が 語 られる ) 1) 何 を 目 的 に どのような 状 況 でどのような 実 践 をどのように 行 っている(いた)か 2) 行 っている(いた) 実 践 には どのようないい 点 足 りない 点 があるか 3) 行 っている(いた) 実 践 のいい 点 足 りない 点 はどのようなプロセスで 発 生 し 変 容 したか 4) 実 践 をしながら また 実 践 を 省 察 しながら 自 身 の 実 践 に 対 する 考 えは どのよう に 変 容 したか 実 践 研 究 を 行 うとともに 実 践 研 究 を 記 述 公 表 する 意 義 として 次 の 三 つが 挙 げら れる 1) 自 身 の 省 察 を 記 述 する 行 為 を 通 じ 批 判 的 な 省 察 が 可 能 になる 2) 実 践 研 究 を 記 述 公 表 することで 一 つの 実 践 改 善 のストーリーのレパートリーを 提 示 できる 提 示 されたレパートリーは 類 似 の 実 践 を 省 察 するための 道 具 となる 3) 実 践 研 究 を 公 表 することで 類 似 の 実 践 を 行 う 実 践 者 による 開 かれた 議 論 が 可 能 と なる 実 践 者 による 開 かれた 議 論 は 実 践 研 究 を 媒 介 とする 日 本 語 教 師 のコミュニ ティの 構 築 につながる 可 能 性 がある 2
4.パネル2:SNS(Facebook)を 利 用 した 教 室 内 活 動 と 教 室 外 活 動 をつなぐ 試 み 吉 田 真 宏 本 パネルでは 香 港 の 成 人 教 育 機 関 の 日 本 語 初 級 コースで 行 った 活 動 とその 振 り 返 り の 過 程 を 考 察 する 本 コースの 学 習 者 は 平 日 終 業 後 や 休 日 に 日 本 旅 行 ドラマやファッションなど 日 本 文 化 への 興 味 から 日 本 語 を 学 習 している 1 週 間 に 1 回 3 時 間 全 40 週 120 時 間 の 学 習 で みんなの 日 本 語 初 級 Ⅰ の 1 課 から 20 課 までを 学 習 する 私 は 当 該 コースを 運 営 するにあたり 次 の 二 つの 課 題 を 抱 えていた 1)どのようにして 学 習 した 言 語 知 識 を 必 要 な 場 面 で 使 えるようにするか 2) 教 室 外 で 日 本 語 を 使 う 機 会 が 少 ない 学 習 者 にいか にその 機 会 を 提 供 するか そこで 1)2)の 課 題 を 解 決 すべく 授 業 の 終 わりに 教 師 が 決 めたトピックで 会 話 をし 授 業 後 各 自 話 したことを Facebook のグループに 投 稿 する 活 動 を 行 った ペア 会 話 と Facebook への 投 稿 という 活 動 を 一 つのトピックにつき 2 3 週 間 繰 り 返 した 後 授 業 内 で 当 該 のトピックに 関 するスピーチを 行 った 実 際 には Facebook に 投 稿 しない 学 習 者 がいたり クラスメートの 投 稿 に 対 する 質 問 コメントが 少 なかったりした 当 初 想 定 していた Facebook 上 の 学 習 者 間 のやりとりを 授 業 外 での 日 本 語 使 用 増 加 につなげることは 実 現 できなかった 以 下 3. で 述 べられた 1)~4)の 問 いに 基 づき より 詳 細 な 実 践 の 内 容 および 当 該 の 実 践 に 関 する 実 践 者 の 省 察 を 記 述 する 1) 何 を 目 的 に どのような 状 況 でどのような 実 践 をどのように 行 っていたか 実 践 の 目 的 教 室 外 で 日 本 語 を 使 うチャンスがないという 学 習 者 に 日 本 語 を 使 う 機 会 を 提 供 する 学 習 した 言 語 知 識 を 繰 り 返 し 練 習 し 自 分 にとって 必 要 な 場 面 で 使 えるようにする 当 該 の 実 践 が 行 われた 状 況 日 本 旅 行 や 日 本 文 化 に 興 味 を 持 つ 成 人 の 日 本 語 教 育 機 関 のコース 1 週 間 に 1 回 3 時 間 の 学 習 全 40 週 120 時 間 の 学 習 で みんなの 日 本 語 初 級 Ⅰ の L1-L20 を 学 習 する 日 本 旅 行 の 経 験 がある 学 習 者 も 数 名 いるが 日 本 語 を 学 習 し 始 めたばかりで 日 本 人 の 友 達 はいない また ドラマやアニメをインターネットなどで 見 るが 字 幕 で 内 容 を 理 解 して いる 日 本 語 でコミュニケーションしたり 生 素 材 を 理 解 したりすることはまだできない 実 践 の 内 容 L1-L20 で 学 習 する 限 られた 言 語 知 識 を 生 かして 自 分 のことについて 話 す 活 動 をおこ なった 自 分 のことについて 話 すことにしたのは 内 容 はすでに 各 学 習 者 の 頭 に 中 にある ので 改 めて 考 える 必 要 はないと 考 えたからである 3 時 間 の 授 業 の 最 後 15 分 をこの 活 動 に 当 てた 次 に 具 体 的 な 手 順 を 述 べる 1 教 師 の 提 示 したトピックで 話 す 内 容 を 考 え キーワードをマップ 状 に 書 き 出 す 2 学 習 者 2 人 がペア( 話 し 手 聞 き 手 )になり マップを 相 手 に 見 せながら 考 え た 内 容 を 4 分 で 話 す 時 間 が 余 った 場 合 は 聞 き 手 が 質 問 する 4 分 経 ったら 話 し 手 と 聞 き 手 の 役 割 を 交 替 する 3
3 新 しいペアで 今 度 は 同 じ 内 容 を 3 分 で 話 す 以 前 より 正 確 に 流 暢 に 話 すこ とをめざす 4 宿 題 として 自 分 が 話 した 内 容 を Facebook の Closed group の 掲 示 板 に 投 稿 し クラスメートの 投 稿 を 読 んで 質 問 するように 指 示 を 出 した 質 問 に 対 する 答 え は Facebook に 書 くのではなく 次 回 の 授 業 でもう 一 度 同 じトピックで 話 すので マップを 改 訂 しておくように 指 示 した 5 教 師 も 投 稿 を 読 んで 質 問 を 行 い 学 習 者 の 日 本 語 の 間 違 いは Facebook のメッセ ージ 機 能 を 使 って 各 学 習 者 にフィードバックした 6 2~5の 作 業 を 2-3 週 繰 り 返 した 後 で みんなの 前 で 発 表 した 上 記 活 動 を 三 つのトピック( 休 日 の 活 動 (L6~) 最 近 行 った 旅 行 (L12~) 自 己 紹 介 (L16~) )で 行 った 2) 行 っていた 実 践 には どのようないい 点 足 りない 点 があるか 実 践 のよかった 点 学 習 者 自 身 のことを 日 本 語 で 話 す 機 会 を 提 供 できた ペアで 何 度 も 話 すことにより 話 すことが 苦 手 な 学 習 者 もそれなりに 発 表 できた 学 習 者 に 日 本 語 を 書 く 機 会 とフィードバックを 提 供 できた 学 習 者 の 普 段 の 生 活 や 興 味 のあることについて 知 ることができ 授 業 活 動 で 誰 にどの ような 内 容 の 質 問 をすれば 答 えてくれるか 予 想 することができた 実 践 の 足 りなかった 点 会 話 の 後 で 投 稿 しない 学 習 者 がいた クラスメートの 投 稿 に 対 する 質 問 コメントが 少 なかった 学 習 者 間 のやり 取 りを 促 進 し 教 室 外 で 日 本 語 を 使 う 機 会 を 増 やすことはできなかった フィードバックは 間 違 いを 指 摘 するだけで その 後 同 種 の 間 違 いがどの 程 度 減 った か 確 認 することはできなかった 3) 行 っていた 実 践 のいい 点 足 りない 点 はどのようなプロセスで 発 生 し 変 容 したか 授 業 の 中 では おおむね 私 が 期 待 したとおりに 活 動 は 進 んでいたと 思 う 問 題 の 多 く は Facebook を 利 用 して 教 室 外 で 活 動 を 行 っているときに 発 生 したと 考 えられる 4) 実 践 をしながら また 実 践 を 省 察 しながら 自 身 の 実 践 に 対 する 考 えは どのように 変 容 したか 6 月 24 日 に 行 われた 勉 強 会 ( 1. を 参 照 )で 本 実 践 についてグループで 話 し 合 っ た そのときにグループのメンバーから 私 が Facebook の 活 動 を 学 習 者 任 せにしていた ことが 学 習 者 のコメントや 質 問 が 少 なかった 原 因 ではないかという 指 摘 があった 私 は 自 分 にとって 役 に 立 つ 機 会 を 与 えれば 学 習 者 はそれを 利 用 するだろうと 考 えていたが それだけでは 学 習 者 を 参 加 させる 力 にはならなかったようだ グループのメンバーから は コメント 質 問 をする 学 習 者 を 毎 週 決 めたらどうかという 提 案 があった 私 も 毎 回 のコメント 質 問 が 学 習 者 にとって 負 担 なら 担 当 を 決 めた 方 がいいだろうと 思 った 4
授 業 終 了 後 教 室 内 での 活 動 Facebook への 投 稿 等 に 関 し 学 習 者 から 感 想 意 見 を 募 った 主 な 感 想 意 見 を 以 下 に 示 す 教 室 内 での 活 動 に 対 する 感 想 意 見 キーワードのマップに 関 しては 次 のように 役 に 立 ったと 考 える 学 習 者 が 多 かった 話 し 手 がうまく 表 現 できなくても 聞 き 手 が 話 を 理 解 したり 一 緒 に 単 語 や 文 を 考 えた りすることができた マップで 何 度 も 練 習 してから 発 表 したので 間 違 いを 少 なくすることができた しかし 一 方 で 次 のように 否 定 的 な 感 想 を 述 べている 学 習 者 もいた マップの 内 容 を 完 全 に 文 章 にして 覚 えていたので 話 すのには 役 に 立 たなかった また 次 のような 提 案 をした 学 習 者 もいた マップの 代 わりに 自 分 が 描 いた 絵 を 使 ったら 面 白 い 話 す 活 動 への 提 案 では 数 名 の 学 習 者 が 次 のような 意 見 を 述 べていた もっといろいろなトピック( 中 国 正 月 台 風 など 時 事 的 な 話 題 )で 話 したい トピックを 決 めないで 自 由 に 話 したい 話 す 活 動 は 何 度 もペアで 練 習 し 自 信 をつけることと いろいろなトピックを 取 り 上 げて 飽 きないようにすることのバランスを 考 え 学 習 者 のやる 気 が 出 るようなものにしたい Facebook への 投 稿 に 対 する 感 想 意 見 Facebook への 投 稿 に 関 しては 次 のような 意 見 が 多 く 見 られた コンピューター 上 での 日 本 語 入 力 が 難 しかった 質 問 をするための 日 本 語 の 表 現 がわからない 答 えるための 日 本 語 の 表 現 がわからない 教 室 活 動 の 中 では 学 習 者 は 活 発 に 話 し 合 っていた しかし そのときの 質 問 は うまく 聞 き 取 れなかったことを 確 認 するための 質 問 であり 内 容 についてさらにたずねる 質 問 で はなかったのかもしれない Facebook 上 で 投 稿 された 作 文 を 読 んで 内 容 が 理 解 でき れば それ 以 上 新 しい 質 問 をしなかったことも 納 得 できる この 点 は 次 の 実 践 のペア 活 動 でどのような 質 問 を 学 習 者 がしているかよく 観 察 し 教 師 がどのような 支 援 を 行 えば 内 容 に 関 する 質 問 応 答 ができるようになるかを 考 える 必 要 がある 何 をたべました か というような 馬 鹿 げた 質 問 ばかりしたくない という 学 習 者 もいたので より 内 容 の ある 話 を 導 く 質 問 の 仕 方 は 大 切 だと 思 った また 質 問 コメントを 増 やすには 担 当 を 決 めた 方 がよい という 意 見 もあった 日 本 語 入 力 の 負 担 を 減 らすため 紙 に 書 いた 作 文 を 提 出 させ フィードバックするこ とも 考 えられる 5
5.パネル3: 日 本 語 母 語 話 者 とのソーシャル ギャザリングを 通 した 動 機 づけ 橋 本 拓 郎 私 は 香 港 の A 大 学 で 日 本 語 専 攻 の 初 級 コースを 担 当 しながら 本 コースの 学 習 者 の 多 くがそれまでに 教 師 以 外 の 日 本 語 母 語 話 者 といかなる 言 語 でも 話 した 経 験 がないことを 知 った 母 語 話 者 との 接 触 は 言 語 学 習 の 動 機 づけになる というのが 私 自 身 の 言 語 学 習 者 と しての 経 験 知 である 本 パネルでは 動 機 づけを 目 的 に 行 った 日 本 語 母 語 話 者 とのソーシ ャル ギャザリング( 以 下 SG)の 実 践 を 考 察 する A 大 学 には 毎 年 20~30 名 の 日 本 人 留 学 生 ( 以 下 日 本 人 )が 在 籍 している しかし そ の 環 境 は 学 習 者 に 活 かされていない そこで 2010 年 2 月 より 次 の 2 点 を 意 図 し 大 学 内 の 香 港 人 で 組 織 される 日 本 研 究 サークル( 以 下 サークル)と 共 同 で SG を 始 めた 1) 身 近 にいる 日 本 人 と 交 流 することにより 学 習 の 動 機 づけを 高 める 2) 交 流 のしくみ を 形 成 することにより SG を 学 生 による 持 続 可 能 な 活 動 にする 具 体 的 には 日 本 人 の 嗜 好 に 配 慮 し 飲 茶 や 香 港 式 BBQ 等 を 1 年 間 に 約 3 回 開 催 している サークルは 各 SG の 詳 細 を 決 定 するとともに 参 加 者 とのやり 取 りも 担 っている 初 めての SG( 飲 茶 )には 学 習 者 10 数 名 日 本 人 6 7 名 が 参 加 した 事 後 のアンケ ートでは ほぼ 全 ての 学 習 者 が SG 後 の 変 化 として 学 習 動 機 の 向 上 学 習 時 間 の 増 加 を 挙 げていた また 日 本 人 との 交 流 の 継 続 という 回 答 も 複 数 得 られ SG が 交 流 のきっかけ 作 りの 場 ともなっていたことが 伺 えた ただ 日 本 人 参 加 者 の 少 なさという 問 題 点 もあった 原 因 として SG の 内 容 や 開 催 時 期 顔 の 見 えない E メールでの 告 知 が 考 えられる また 年 度 により 異 なるサークルの SG に 取 り 組 む 姿 勢 も SG の 成 功 を 左 右 していた 私 はこれまで 学 生 によるセルフマネ ージメントが 適 切 であると 考 え SG への 介 入 を 自 制 してきた しかし 上 記 のような 問 題 に 接 し 日 本 語 使 用 の 場 を 増 やし 学 習 の 動 機 づけを 高 める という 目 標 を 達 成 する ためには ファシリテーターとして 教 師 のより 積 極 的 な 関 わりが 必 要 であるという 気 づき を 得 た 以 下 3. で 述 べられた 1)~4)の 問 いに 基 づき より 詳 細 な 実 践 の 内 容 および 当 該 の 実 践 に 関 する 実 践 者 の 省 察 を 記 述 する 1) 何 を 目 的 に どのような 状 況 でどのような 実 践 をどのように 行 っているか A 大 学 の 初 級 コースの 学 習 者 は 多 くが 日 本 研 究 を 専 攻 し 3 年 間 日 本 語 を 学 習 する そ の 間 様 々な 日 本 文 化 に 興 味 を 持 ち 続 ける 一 方 で 日 本 語 学 習 においては 非 常 に 現 実 的 な 学 習 者 が 多 く テスト 直 前 や 成 績 に 関 係 があることのみが 日 本 語 学 習 の 場 面 目 的 になっ ていることも 伺 えた どうやって 学 習 者 の 動 機 付 けを 高 めることができるかを 考 えているとき 多 くの 学 習 者 が 教 師 以 外 の 母 語 話 者 といかなる 言 語 でも 話 した 経 験 がないことを 知 った そもそも A 大 学 には 毎 年 20~30 人 もの 日 本 人 留 学 生 がいるのに なぜ 学 習 者 は 母 語 話 者 と 話 した 経 験 がないのか 香 港 の 人 口 の 6%が 外 国 人 で 外 国 語 を 聞 く 機 会 は 非 常 に 多 い ただ 地 元 の 人 はあまり 外 国 人 と 触 れ 合 うことが 多 くないようである 同 じことが A 大 学 でも 起 こっているようで 地 元 出 身 の 学 生 は 留 学 生 と 話 すことがあまり 得 意 ではなく とても 6
限 られている つまり 身 近 に 日 本 人 がいるのに 自 分 から 話 しかけることをためらって いる そこで 私 は 学 習 者 と 日 本 人 の 出 会 いの 場 を 作 れば 教 室 外 で 日 本 語 使 用 環 境 が 生 ま れ 日 本 語 学 習 の 動 機 づけも 高 まり 教 室 の 内 外 で 主 体 的 に 日 本 語 学 習 に 取 り 組 むのでは ないかと 考 えた SG という 交 流 のしくみを 作 ることが 引 っ 込 み 思 案 の 学 習 者 も 教 師 の 支 援 を 受 けるこ となく 自 分 たちだけで 出 会 いを 作 ることができ 教 室 外 での 日 本 語 使 用 環 境 を 生 み 学 習 者 自 身 による 日 本 語 学 習 の 動 機 付 けにつながると 考 えた できるだけ 学 習 者 のセルフマ ネージメントによる 持 続 可 能 な 活 動 になるように 大 学 内 の 香 港 人 で 組 織 される 日 本 研 究 サークル( 以 下 サークル)と 共 同 で SG を 始 めた 日 本 人 も 楽 しめる 活 動 にするため 私 から 飲 茶 や 市 街 ツアー 会 話 タンデムなどのアイディアを 提 案 し サークルが 飲 茶 や 香 港 式 BBQ を 選 び 1 年 間 に 3 回 ほど 開 催 している サークルが SG の 具 体 的 な 内 容 を 決 め 日 本 人 への 招 待 メールやポスターを 作 り それらを 私 が SG の 背 景 説 明 とともに 日 本 人 に 告 知 する その 後 の 参 加 者 とのやり 取 りは 全 てサークルが 行 う 2) 行 っている 実 践 には どのようないい 点 足 りない 点 があるか 実 践 のいい 点 SG がサークルの 年 間 行 事 として 定 着 した 事 後 のアンケートで ほぼ 全 ての 学 習 者 が SG 後 の 変 化 として 学 習 動 機 の 向 上 学 習 時 間 の 増 加 日 本 人 との 交 流 の 継 続 と 回 答 し SG が 動 機 づけ 交 流 のきっかけ 作 りの 場 となったことが 伺 えた 実 践 の 足 りない 点 サークルが 私 に 連 絡 を 自 主 的 にしないので 準 備 段 階 や SG 当 日 でどのような 状 況 が 起 こ っているのか 掴 みにくい サークルの 積 極 性 が 年 度 によって 大 きく 変 わる ある 年 度 では SG の 回 数 が 少 なかった り 日 本 人 を 誘 った 後 で 日 本 人 の 参 加 が 少 ないとキャンセルしようとしたりする 日 本 人 の 参 加 が 学 習 者 に 比 べて 少 ない 3) 行 っている 実 践 のいい 点 足 りない 点 はどのようなプロセスで 発 生 し 変 容 したか 実 践 のいい 点 の 発 生 と 変 容 教 師 がある 程 度 相 談 役 として 関 わることでサークルの 年 間 行 事 として SG が 定 着 した 学 習 者 が 日 本 人 との SG を 楽 しんだことで 動 機 づけ 日 本 人 との 交 流 継 続 という 良 い 結 果 が 得 られた 実 践 の 足 りない 点 の 発 生 と 変 容 セルフマネージメントを 期 待 し 私 からサークルにあまり 連 絡 をとらなかったので 状 況 が 掴 みにくくなり それが 活 動 の 安 定 性 に 影 響 を 与 えている 可 能 性 もある 顔 の 見 えない E メールでの 告 知 や 開 催 時 期 活 動 内 容 の 魅 力 のなさなどが 原 因 と 考 えられ 日 本 人 の 参 加 が 少 ない 7
4) 実 践 をしながら また 実 践 を 省 察 しながら 自 身 の 実 践 に 対 する 考 えは どのように 変 容 したか 学 習 者 が 出 来 る 限 りセルフマネージメントで SG を 運 営 するのがよいだろうと 考 えてい たが それでは 期 待 する 目 標 が 達 成 できないこともわかった 故 に 私 がこれからはより 積 極 的 にファシリテーターとして SG に 関 わるのがよいと 考 えるようになった 今 後 は 日 本 人 の 参 加 を 促 すために 日 本 人 にどんな 活 動 がいいか 尋 ね それを 参 考 に 企 画 する 予 定 である また SG に 参 加 した 日 本 人 に 知 り 合 いの 日 本 人 を 直 接 誘 ってもら うことも 検 討 している 参 考 文 献 金 龍 男 武 一 美 古 屋 憲 章 (2010) 人 と 人 の 間 にことばが 生 まれるとき 教 師 自 身 に よる 実 践 研 究 の 意 義 早 稲 田 日 本 語 教 育 学 7 25-42 8