参 考 資 料 6 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 について
1. はじめに 本 指 針 では 第 3 章 2.(3)2(イ) 就 業 規 則 契 約 等 による 従 業 者 退 職 者 等 への 秘 密 保 持 の 要 請 において 有 効 性 が 認 められやすい 競 業 避 止 義 務 契 約 のポイントについ て 記 載 している これは 平 成 24 年 度 経 済 産 業 省 委 託 調 査 人 材 を 通 じた 技 術 流 出 に 関 する 調 査 研 究 の 有 識 者 による 委 員 会 において 関 連 する50 以 上 の 判 例 をもとに 討 議 を 行 い とりまと められた 報 告 書 をもとにしたものである 同 報 告 書 では 競 業 避 止 義 務 契 約 のみならず 退 職 金 や 年 金 の 支 給 制 限 についても 判 例 をもとに 分 析 検 討 を 行 っている このうち 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 の 判 断 について 記 載 された 章 を 抜 粋 し 参 考 資 料 6として 紹 介 する 報 告 書 全 文 については 下 記 アドレスにて 公 開 しているので 参 照 されたい 平 成 24 年 度 人 材 を 通 じた 技 術 流 出 に 関 する 調 査 研 究 本 編 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/honpen.pdf 1
2. 競 業 避 止 義 務 契 約 が 有 効 であると 判 断 される 基 準 在 職 中 の 競 業 行 為 が 認 められないことはもちろんだが 退 職 後 について 競 業 避 止 義 務 を 課 すことについては 職 業 選 択 の 自 由 を 侵 害 し 得 ること 等 から 制 限 的 に 解 されているこ とは 事 実 である この 点 古 い 判 例 ながら 今 日 においてもしばしば 参 照 されている 判 例 ( 奈 良 地 判 S45.10.23)は 競 業 避 止 義 務 契 約 について 債 権 者 の 利 益 債 務 者 の 不 利 益 及 び 社 会 的 利 害 に 立 って 制 限 期 間 場 所 的 職 種 的 範 囲 代 償 の 有 無 を 検 討 し 合 理 的 範 囲 にお いて 有 効 であるとしている このように 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 について 争 いとなった 判 例 においては 多 面 的 な 観 点 から 競 業 避 止 義 務 契 約 を 締 結 することの 合 理 性 や 契 約 内 容 の 妥 当 性 等 を 判 断 してお り 近 年 の 判 例 における 判 断 のポイントについて 理 解 しておくことは 競 業 避 止 義 務 契 約 の 導 入 見 直 しを 検 討 する 上 で 重 要 である 1 (1) 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 判 断 競 業 避 止 義 務 契 約 が 労 働 契 約 として 適 法 に 成 立 していることが 必 要 判 例 上 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 を 判 断 する 際 にポイントとなるのは 1 守 るべ き 企 業 の 利 益 があるかどうか 1を 踏 まえつつ 競 業 避 止 義 務 契 約 の 内 容 が 目 的 に 照 らして 合 理 的 な 範 囲 に 留 まっているかという 観 点 から 2 従 業 員 の 地 位 3 地 域 的 な 限 定 があるか 4 競 業 避 止 義 務 の 存 続 期 間 や5 禁 止 される 競 業 行 為 の 範 囲 につ いて 必 要 な 制 限 が 掛 けられているか 6 代 償 措 置 が 講 じられているか といった 項 目 である ここでは 退 職 後 の 競 業 避 止 義 務 契 約 について 具 体 的 な 検 討 判 断 を 行 っている 判 例 のうち 競 業 避 止 義 務 契 約 の 具 体 的 な 内 容 について 判 断 を 行 なっている 判 例 について 整 理 を 行 なった 判 例 は 1 守 るべき 企 業 の 利 益 があるかどうか 1を 前 提 として 競 業 避 止 義 務 契 約 の 内 容 が 目 的 に 照 らして 合 理 的 な 範 囲 に 留 まっているかという 観 点 から 2 従 業 員 の 地 位 が 競 業 避 止 義 務 を 課 す 必 要 性 が 認 められる 立 場 にあるものといえるか 3 地 域 的 な 限 定 があるか 4 競 業 避 止 義 務 の 存 続 期 間 や5 禁 止 される 競 業 行 為 の 範 囲 について 必 要 な 制 限 が 掛 けられているか 6 代 償 措 置 が 講 じられているか といった 項 目 について 判 断 を 行 なっており 規 定 自 体 の 評 価 及 び 当 該 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 判 断 を 行 なってい 1 もっとも 判 例 自 体 は 個 別 性 が 強 いため どのような 規 定 ぶりであれば 競 業 避 止 義 務 契 約 が 有 効 となるか については 一 概 に 言 えない 点 には 留 意 を 要 する 2
る 企 業 側 に 守 るべき 利 益 があることを 前 提 として 競 業 避 止 義 務 契 約 が 過 度 に 職 業 選 択 の 自 由 を 制 約 しないための 配 慮 を 行 い 企 業 側 の 守 るべき 利 益 を 保 全 するために 必 要 最 小 限 度 の 制 約 を 従 業 員 に 課 すものであれば 当 該 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 自 体 は 認 め られると 考 えられる 競 業 避 止 義 務 契 約 の 具 体 的 な 内 容 について 判 断 を 行 なっている 判 例 競 業 避 止 義 務 契 約 の 形 態 1 企 業 の 利 益 有 効 性 判 断 のポイント 2 従 業 員 の 地 位 3 地 域 的 限 定 4 期 間 5 禁 止 行 為 の 範 囲 6 代 償 措 置 7 有 効 性 の 判 断 備 考 東 京 高 判 H24.6.13 東 京 地 判 H24.1.13 誓 約 書 ( 在 職 時 ) 2 年 目 的 に 一 応 の 正 当 性 が 認 められ るものの 本 事 案 の 事 情 のもと では 目 的 の 正 当 性 を 過 大 視 する ことはできないとされた 大 阪 地 判 H24.3.15 就 業 規 則 2 年 6 ヶ 月 は 場 所 的 制 限 なし 6 ヶ 月 ~2 年 は 場 所 的 制 限 あり 東 京 地 判 H24.3.13 就 業 規 則 & 誓 約 書 ( 入 社 時 ) - - - 労 働 者 が 元 使 用 者 の 業 務 上 の 秘 密 を 使 用 する 立 場 になく 競 業 禁 止 の 前 提 を 欠 くこと 及 び 代 償 措 置 が 無 いことをもって 効 力 を 否 定 東 京 地 判 H24.1.23 誓 約 書 ( 退 職 時 ) 5 年 大 阪 地 判 H23.3.4 就 業 規 則 1 年 - 大 阪 地 決 H21.10.23 就 業 規 則 1 年 東 京 地 判 H22.10.27 誓 約 書 ( 退 職 時 ) 3 年 - / 3
東 京 高 判 H22.4.27 東 京 地 判 H21.11.9 就 業 規 則 - 就 業 規 則 1 年 限 定 解 釈 により 限 定 的 に 有 効 と した 上 で 問 題 となった 行 為 に ついては 限 定 された 範 囲 を 外 れ ているとして 違 反 を 否 定 ( 控 訴 審 ) 東 京 地 判 H20.11.18 2 誓 約 書 ( 退 職 時 ) 独 立 支 援 制 度 の 存 在 と 厚 遇 措 置 が 代 償 措 置 として 認 められた 東 京 地 判 H19.4.24 誓 約 書 ( 退 職 時 ) 1 年 東 京 高 判 H15.12.25 誓 約 書 ( 締 結 時 期 不 明 ) 6 月 東 京 地 判 H14.8.30 就 業 規 則 & 誓 約 書 ( 在 職 時 ) 2 年 大 阪 地 判 H8.12.25 - - - 規 定 の 適 用 範 囲 を 限 定 的 して 義 務 違 反 を 否 定 した 事 案 東 京 高 判 H12.7.12 誓 約 書 ( 入 社 時 ) 6 月 義 務 違 反 は 認 められたが 義 務 違 反 と 因 果 関 係 のある 損 害 が 認 め られず 請 求 棄 却 東 京 地 判 H11.10.29 誓 約 書 ( 入 社 時 ) 6 月 同 上 東 京 地 判 H.6.9.29 誓 約 書 ( 退 職 時 ) 1 年 / : 肯 定 的 に 判 断 : 否 定 的 に 判 断 : 判 断 が 実 質 的 になされていない 又 は 不 明 確 -: 規 定 は 存 在 するが 判 例 中 に 判 断 なし /: 代 償 措 置 の 定 めはないが その 点 について 特 段 の 言 及 なし 空 欄 :そもそも 規 定 なし 又 は 不 明 : 退 職 金 減 額 又 は 不 支 給 が 争 われる 中 で 競 業 避 止 義 務 の 定 めの 効 力 が 問 題 となって いる 事 案 なお 競 業 避 止 義 務 については 就 業 規 則 に 規 定 を 設 けている 事 例 と 個 別 の 誓 約 書 に おいて 規 定 を 設 けている 例 があるが 就 業 規 則 に 規 定 を 設 け かつ 規 定 した 内 容 と 異 なる 内 容 の 個 別 の 誓 約 書 を 結 ぶことについては 就 業 規 則 に 定 める 基 準 に 達 しない 労 働 2 なお 本 件 の 控 訴 審 判 決 である 東 京 高 判 H21.5.27 では 退 職 する 従 業 員 の 職 業 選 択 の 自 由 営 業 の 自 由 の 点 をも 斟 酌 すると 本 件 競 業 避 止 義 務 契 約 において 利 用 して 事 業 を 営 むことが 禁 止 される 機 密 事 項 には 被 控 訴 人 ( 注 : 元 使 用 者 ) 以 外 の 者 からも 容 易 に 得 られるような 知 識 又 は 情 報 は 含 まれないと 解 するのが 相 当 である ところ 本 件 における 元 使 用 者 の 技 術 等 は このような 機 密 事 項 に 該 当 すると 認 められないため 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 について 判 断 するまでもなく 同 義 務 の 違 反 は 認 められないとの 判 断 がなされている 4
条 件 を 定 める 契 約 の 効 果 を 無 効 とする 労 働 契 約 法 12 条 との 関 係 が 問 題 となる もっとも 実 務 上 は 就 業 規 則 には 従 業 員 は 在 職 中 及 び 退 職 後 6 ヶ 月 間 会 社 と 競 合 する 他 社 に 就 職 及 び 競 合 する 事 業 を 営 むことを 禁 止 する というような 原 則 的 な 規 定 を 設 けておき 加 えて 就 業 規 則 に 例 えば ただし 会 社 が 従 業 員 と 個 別 に 競 業 避 止 義 務 について 契 約 を 締 結 した 場 合 には 当 該 契 約 によるものとする というように 個 別 合 意 をした 場 合 には 個 別 合 意 を 優 先 する 旨 規 定 しておけば 労 働 契 約 法 12 条 の 問 題 は 生 じず 規 則 の 周 知 効 果 を 狙 うという 観 点 からも 記 載 をしておくべきであると 考 えられる 就 業 規 則 の 規 定 例 ( 競 業 避 止 義 務 ) 第 条 従 業 員 は 在 職 中 及 び 退 職 後 6 ヶ 月 間 会 社 と 競 合 する 他 社 に 就 職 及 び 競 合 する 事 業 を 営 むことを 禁 止 する ただし 会 社 が 従 業 員 と 個 別 に 競 業 避 止 義 務 について 契 約 を 締 結 した 場 合 には 当 該 契 約 によるものとする 個 別 合 意 の 例 ( 誓 約 書 の 例 ) 貴 社 を 退 職 するにあたり 退 職 後 1 年 間 貴 社 からの 許 諾 がない 限 り 次 の 行 為 をしないことを 誓 約 いたします 1) 貴 社 で 従 事 した の 開 発 に 係 る 職 務 を 通 じて 得 た 経 験 や 知 見 が 貴 社 にとって 重 要 な 企 業 秘 密 ないしノウハウであることに 鑑 み 当 該 開 発 及 びこれに 類 する 開 発 に 係 る 職 務 を 貴 社 の 競 合 他 社 ( 競 業 する 新 会 社 を 設 立 した 場 合 にはこれを 含 む 以 下 同 じ )において 行 いません 2) 貴 社 で 従 事 した に 係 る 開 発 及 びこれに 類 する 開 発 に 係 る 職 務 を 貴 社 の 競 合 他 社 から 契 約 の 形 態 を 問 わず 受 注 ないし 請 け 負 うことはいたしません (2) 競 業 避 止 義 務 契 約 の 判 断 ポイント 1 企 業 側 の 守 るべき 利 益 企 業 側 の 守 るべき 利 益 は 不 正 競 争 防 止 法 上 の 営 業 秘 密 に 限 定 されない 営 業 秘 密 に 準 じるほどの 価 値 を 有 する 営 業 方 法 や 指 導 方 法 等 に 係 る 独 自 のノウハ ウについては 営 業 秘 密 として 管 理 することが 難 しいものの 競 業 避 止 によって 守 るべき 企 業 側 の 利 益 があると 判 断 されやすい 傾 向 がある 企 業 側 の 守 るべき 利 益 については 不 正 競 争 防 止 法 によって 明 確 に 法 的 保 護 の 対 象 と 5
される 営 業 秘 密 はもちろんだが 個 別 の 判 断 においてこれに 準 じて 取 り 扱 うことが 妥 当 な 情 報 やノウハウについては 競 業 避 止 義 務 契 約 等 を 導 入 してでも 守 るべき 企 業 側 の 利 益 と 判 断 している 判 例 の 中 で 争 われた 事 例 を 見 ると 技 術 的 な 秘 密 や 営 業 上 のノウハウ 等 に 係 る 秘 密 ( 教 授 法 など 顧 客 に 対 するサービスの 手 法 も 含 む) 顧 客 との 人 的 関 係 等 について 企 業 の 利 益 の 有 無 が 判 断 されている 本 報 告 書 で 紹 介 している 判 例 の 中 には 技 術 的 な 秘 密 について 企 業 の 利 益 の 有 無 が 判 断 されているものは 少 ないが めっき 加 工 や 金 属 表 面 処 理 加 工 について めっき 技 術 訓 練 学 校 の 教 科 書 の 記 述 やめっき 事 業 者 各 社 のホームページの 記 載 等 と 比 較 して 法 的 保 護 に 値 する 独 自 のノウハウが 存 することを 主 張 して 一 応 の 疎 明 がなされていると 判 断 された 事 案 がある( 大 阪 地 決 H21.10.23) 3 営 業 秘 密 に 準 じるほどの 価 値 を 有 する 営 業 方 法 や 指 導 方 法 等 に 係 る 独 自 のノウハウに ついては 営 業 秘 密 として 管 理 することが 難 しいものの 競 業 避 止 によって 守 るべき 企 業 側 の 利 益 があると 判 断 されやすい 傾 向 がある( 例 えばヴォイストレーニングを 行 うた めの 指 導 方 法 指 導 内 容 及 び 集 客 方 法 生 徒 管 理 体 制 についてのノウハウ デントリペ ア 及 びインテリアリペアの 各 技 術 の 内 容 及 びこれをフランチャイズ 化 したノウハウ 店 舗 における 販 売 方 法 や 人 事 管 理 の 在 り 方 等 について 企 業 側 の 利 益 があると 判 断 した 判 例 が 見 られる) また 判 例 の 中 には 顧 客 との 人 的 関 係 等 について 判 断 を 行 なったものも 見 られ 多 数 回 にわたる 訪 問 説 明 長 期 間 の 地 道 な 営 業 活 動 を 要 するような 場 合 であって 人 的 関 係 の 構 築 が 当 該 企 業 の 信 用 や 業 務 としてなされたものである 場 合 には 企 業 側 の 利 益 がある と 判 断 されやすい 有 効 性 が 認 められたもの めっき 技 術 訓 練 校 の 教 科 書 の 記 述 やめっき 事 業 者 各 社 のホームページの 記 載 等 からすると 債 権 者 については めっき 加 工 や 金 属 表 面 処 理 加 工 について 法 的 保 護 に 値 する 独 自 のノウハウ が 存 し 競 業 避 止 を 必 要 とする 正 当 な 利 益 が 存 在 することについて 一 応 の 疎 明 がなされてい 3 本 訴 では めっき 加 工 を 業 とする 会 社 が 複 数 存 在 し 同 種 の 製 品 を 加 工 等 していること 具 体 的 な 技 術 内 容 等 に 関 する 基 本 的 な 事 項 については 書 籍 等 で 広 く 流 布 されていること 各 製 品 に 関 する 情 報 をノートに 記 載 しているものの その 内 容 が 被 告 企 業 の 指 揮 命 令 に 基 づくものではな いこと 当 該 ノートの 記 載 事 項 によらなくても 基 本 的 な 教 科 書 の 記 載 に 沿 って 作 業 することが 可 能 であること 当 該 ノートの 保 管 方 法 や 取 扱 いについて 特 段 注 意 等 がなかったこと 簡 単 な 品 物 については 外 注 していたこと 等 から 独 自 のノウハウが 秘 密 保 持 契 約 によって 保 護 されるべき 対 象 とならないと 判 断 している( 大 阪 地 判 23.3.4) しかし 逆 に 書 籍 等 によって 広 く 流 布 されて いない 技 術 ノウハウであって 一 般 的 に 流 布 している 情 報 では 再 現 出 来 ないこと 指 揮 命 令 に 基 づいて 技 術 ノウハウの 要 点 を 書 面 にまとめ これを 秘 密 として 管 理 していること これを 独 自 の 技 術 ノウハウとして 外 注 先 等 に 開 示 していないこと 等 の 要 件 が 満 たされている 場 合 には 企 業 の 利 益 があると 判 断 される 可 能 性 が 高 い 6
ると 認 められる と 判 示 ( 大 阪 地 決 H21.10.23) ヴォイストレーニングを 行 うための 指 導 方 法 指 導 内 容 及 び 集 客 方 法 生 徒 管 理 体 制 につい てのノウハウ は 原 告 の 代 表 者 によって 長 期 間 にわたって 確 立 されたもので 独 自 かつ 有 用 性 が 高 い と 判 断 ( 東 京 地 判 H.22.10.27) デントリペア 及 びインテリアリペアの 各 技 術 の 内 容 及 びこれをフランチャイズ 化 したところ に 原 告 の 独 自 性 があるということができ これらは 不 正 競 争 防 止 法 上 の 営 業 秘 密 には 厳 密 に はあたらないが それに 準 じる 程 度 には 保 護 に 値 するということができ 競 業 禁 止 によ って 守 られる 利 益 は 要 保 護 性 の 高 いものである と 判 断 ( 東 京 地 判 H20.11.18) 店 舗 における 販 売 方 法 や 人 事 管 理 の 在 り 方 や 全 社 的 な 営 業 方 針 経 営 戦 略 等 の 知 識 及 び 経 験 を 有 する 従 業 員 が ( 原 告 を) 退 職 した 後 直 ちに ( 原 告 の) 直 接 の 競 争 相 手 である 家 電 量 販 店 チェーンを 展 開 する 会 社 に 転 職 した 場 合 には その 会 社 は 当 該 従 業 員 の 知 識 及 び 経 験 を 活 用 して 利 益 を 得 られるが その 反 面 ( 原 告 が) 相 対 的 に 不 利 益 を 受 けることは 容 易 に 予 想 されるから これを 未 然 に 防 ぐことを 目 的 として 被 告 のような 地 位 にあった 従 業 員 に 対 して 競 業 避 止 義 務 を 課 することは 不 合 理 でない と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 商 店 会 等 に 対 する 街 路 灯 の 営 業 は 成 約 までに 長 時 間 を 要 し 契 約 を 取 るためには その 間 に 営 業 担 当 の 従 業 員 が 商 店 会 等 の 役 員 等 をたびたび 訪 問 して その 信 頼 を 得 ることが 重 要 であ ること そのため この 種 の 営 業 においては 長 期 間 経 費 をかけて 営 業 してはじめて 利 益 を 得 ることができるから このような 営 業 形 態 を 採 っている( 元 使 用 者 )においては 従 業 員 に 退 職 後 の 競 業 避 止 義 務 を 課 する 必 要 性 が 存 する と 判 断 ( 東 京 高 判 H12.7.12 東 京 地 判 H11.10.29) 秘 密 保 持 義 務 契 約 の 効 力 判 断 中 で 原 告 の 顧 客 の 名 簿 及 び 取 引 内 容 に 関 わる 事 項 並 びに 製 品 の 製 造 過 程 価 格 等 に 関 わる 事 項 は 個 別 レンタル 契 約 を 経 営 基 盤 の 一 つにおいて いる 原 告 にとって 経 営 の 根 幹 に 関 わる 重 要 な 情 報 であると 判 断 し 結 論 としても 契 約 の 効 力 を 肯 定 した 上 で 退 職 後 の 競 業 避 止 義 務 は 秘 密 保 護 の 必 要 性 が 当 該 労 働 者 が 秘 密 を 開 示 す る 場 合 のみならず これを 使 用 する 場 合 にも 存 することから 秘 密 保 持 義 務 を 担 保 するものと して 容 認 できる 場 合 がある と 肯 定 的 に 評 価 した ( 東 京 地 判 H14.8.30) 有 効 性 が 否 定 されたもの ここでいうノウハウとは 不 正 競 争 防 止 法 上 の 営 業 秘 密 に 限 らず 原 告 が 被 告 業 務 を 遂 行 す る 過 程 において 得 た 人 脈 交 渉 術 業 務 上 の 視 点 手 法 等 であるとされているところ これら は 原 告 がその 能 力 と 努 力 によって 獲 得 したものであり 一 般 的 に 労 働 者 が 転 職 する 場 合 に は 多 かれ 少 なかれ 転 職 先 でも 使 用 されるノウハウであって かかる 程 度 のノウハウの 流 出 を 禁 止 しようとすることは 正 当 な 目 的 であるとはいえない 顧 客 情 報 の 流 出 防 止 を 競 合 他 社 への 転 職 自 体 を 禁 止 することで 達 成 しようとすることは 目 的 に 対 して 手 段 が 過 大 であ る とした ( 東 京 地 判 H24.1.13 東 京 高 判 H24.6.13) 秘 密 保 持 義 務 を 定 める 就 業 規 則 や 個 別 の 合 意 で 同 義 務 の 対 象 となる 業 務 上 の 秘 密 の 内 容 が 具 体 7
的 に 定 められていなかった 事 案 において このような 場 合 には 同 義 務 の 対 象 となる 秘 密 事 項 に ついては 少 なくとも 秘 密 管 理 性 と 非 公 知 性 の 要 件 が 求 められるところ 本 件 で 問 題 となった 廃 プラスチックの 仕 入 れ 先 等 に 関 する 情 報 は 秘 密 管 理 性 を 欠 き 秘 密 保 持 義 務 の 対 象 に 当 たらな いので 同 義 務 違 反 は 成 立 しないとの 判 断 をした 上 で 競 業 避 止 義 務 契 約 の 効 力 について 上 記 で 判 断 したところによれば 被 告 ( 労 働 者 )らは 原 告 での 業 務 遂 行 過 程 において 業 務 上 の 秘 密 を 使 用 する 立 場 にあったわけではないため そもそも 競 業 を 禁 ずべき 前 提 条 件 を 欠 くと 判 断 し た ( 東 京 地 判 H24.3.13) 一 般 に 使 用 者 にとって 獲 得 した 顧 客 との 人 的 関 係 を 維 持 することは 競 業 避 止 義 務 契 約 の 設 定 における 正 当 な 目 的 の 一 つといえるが 本 件 においては 被 告 H2 が 原 告 入 社 に 当 たって 入 社 以 前 に 自 己 の 顧 客 となった 者 の 一 部 を 引 き 継 いできたこともあって 原 告 における 3 次 元 CA D 業 務 の 売 り 上 げが 被 告 の 入 社 後 に 飛 躍 的 に 伸 びていること 等 から 同 業 務 の 受 注 には 被 告 と 顧 客 との 個 人 的 信 頼 関 係 が 大 きく 影 響 したものと 推 認 される とする 一 方 顧 客 の 開 拓 が もっぱら 原 告 の 投 下 資 本 によるものと 認 めるに 足 りる 証 拠 は 見 当 たらない として 競 業 避 止 義 務 契 約 設 定 の 目 的 には 一 応 の 正 当 性 が 認 められるものの 本 件 ではこれを 過 大 視 することは 出 来 ないとした ( 東 京 地 判 H24.1.23) もっぱら 特 定 の 企 業 への 転 職 を 禁 止 することを 目 的 とした 競 業 避 止 義 務 契 約 を 締 結 していたケ ースにおいて 守 るべき 企 業 の 利 益 が 営 業 秘 密 であったとしても 他 の 企 業 への 転 職 が 禁 止 さ れていないことからみて 当 該 情 報 は 原 告 会 社 にとってそれほど 要 保 護 性 の 高 いものではない といわざるを 得 ないと 判 断 した ( 東 京 地 判 H21.11.9) 退 職 した 従 業 員 に 対 し 一 定 期 間 競 業 避 止 義 務 を 課 すことは 従 来 の 取 引 先 の 維 持 という 点 で 意 味 がある しかし このような 従 業 員 と 取 引 先 との 信 頼 関 係 は 従 業 員 が 業 務 を 遂 行 する 中 で 形 成 されていくもので 従 業 員 が 個 人 として 獲 得 したものであるから 営 業 秘 密 といえる ような 性 質 のものではない また このような 従 業 員 と 取 引 先 との 個 人 的 信 頼 関 係 が 業 務 の 受 注 に 大 きな 影 響 を 与 える 以 上 使 用 者 としても 各 種 手 当 を 支 給 するなどして 従 業 員 の 退 職 を 防 止 すべきである とした 上 で 本 件 では 十 分 な 代 償 措 置 が 講 じられていないこと 退 職 した 従 業 員 によって 営 業 上 の 秘 密 が 他 の 企 業 に 漏 れたわけではないこと 等 からすれば 競 業 避 止 義 務 規 定 は 本 件 における 退 職 従 業 員 には 適 用 されないと 判 断 した ( 大 阪 地 判 H8.12.25) 2 従 業 員 の 地 位 合 理 的 な 理 由 なく 従 業 員 すべてを 対 象 にした 規 定 はもとより 特 定 の 職 位 にある 者 全 てを 対 象 としているだけの 規 定 は 合 理 性 が 認 められにくい 形 式 的 な 職 位 ではなく 具 体 的 な 業 務 内 容 の 重 要 性 特 に 使 用 者 が 守 るべき 利 益 と の 関 わりが 判 断 されている 8
従 業 員 の 地 位 について 判 断 を 行 なった 判 例 では 形 式 的 に 特 定 の 地 位 にあることをも って 競 業 避 止 義 務 の 有 効 性 が 認 められるというよりも 企 業 が 守 るべき 利 益 を 保 護 する ために 競 業 避 止 義 務 を 課 すことが 必 要 な 従 業 員 であったかどうかが 判 断 されていると 考 えられる 例 えば 形 式 的 には 執 行 役 員 という 比 較 的 高 い 地 位 にある 者 を 対 象 とした 競 業 避 止 義 務 であっても 企 業 が 守 るべき 秘 密 情 報 に 接 していなければ 否 定 的 な 判 断 を 行 っている 判 例 もある 有 効 性 が 認 められたもの 原 告 は 指 導 方 法 及 び 指 導 内 容 等 についてノウハウを 伝 授 されたのであるから 本 件 競 業 避 止 合 意 を 適 用 して 原 告 の 上 記 ノウハウを 守 る 必 要 があることは 明 らかであり 被 告 が 週 1 回 の アルバイト 従 業 員 であったことは 上 記 判 断 競 業 避 止 義 務 契 約 の 合 理 性 有 効 性 が 認 められる こと を 左 右 するものではない と 判 断 ( 東 京 地 判 H22.10.27) 被 告 の 従 業 員 としての 地 位 も インストラクターとして 秘 密 の 内 容 を 十 分 に 知 っており か つ 原 告 が 多 額 の 営 業 費 用 や 多 くの 手 間 を 要 して 上 記 技 術 を 取 得 させたもので 秘 密 を 守 るべ き 高 度 の 義 務 を 負 うものとすることが 衡 平 に 適 うといえる と 判 断 ( 東 京 地 判 H20.11.18) ( 地 区 部 長 母 店 長 店 長 理 事 を 経 験 し 原 告 の 全 社 的 な 営 業 方 針 経 営 戦 略 等 を 知 ること ができた 被 告 につき) ( 被 告 のような) 地 位 にあった 従 業 員 に 対 して 競 業 避 止 義 務 を 課 する ことは 不 合 理 でない と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 有 効 性 が 否 定 されたもの 従 業 員 数 6,000 人 の 日 本 支 店 において 20 人 しかいない 執 行 役 員 で 役 員 会 の 構 成 員 である 高 い 地 位 にあったが 保 険 商 品 の 営 業 事 業 はそもそも 透 明 性 が 高 く 秘 密 性 に 乏 しいし また 役 員 会 においては 被 告 の 経 営 上 に 影 響 がでるような 重 要 事 項 については 例 えば 決 算 情 報 が 3 週 間 部 外 秘 とされるといった 時 限 性 のある 秘 密 情 報 はあるが 原 告 が それ 以 上 の 機 密 性 のある 情 報 に 触 れる 立 場 にあったものとは 認 められない と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.13) 控 訴 審 でも 職 務 の 実 態 は 取 締 役 に 類 する 権 限 や 信 認 を 付 与 されるものではなかったという 判 断 をしてい る ( 東 京 高 判 H24.6.13) 3 地 域 的 限 定 地 域 的 限 定 については 使 用 者 の 事 業 内 容 や 職 業 選 択 の 自 由 に 対 する 制 約 の 程 度 特 に 禁 止 行 為 の 範 囲 との 関 係 を 意 識 した 判 例 が 見 られる 地 理 的 な 制 限 がないことのみをもって 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 が 否 定 されてい る 訳 ではない 9
地 域 的 限 定 について 判 断 を 行 なっている 判 例 は 少 ないが 争 われている 場 合 には 業 務 の 性 質 等 に 照 らして 合 理 的 な 絞 込 みがなされているかどうかという 点 が 問 題 とされてい る 地 域 的 な 限 定 がされていない 場 合 については 他 の 要 素 と 併 せて 否 定 的 な 判 断 がな されている 例 が 散 見 されるが 地 理 的 な 制 限 が 規 定 されていない 場 合 であっても 使 用 者 の 事 業 内 容 ( 特 に 事 業 展 開 地 域 )や 職 業 選 択 の 自 由 に 対 する 制 約 の 程 度 特 に 禁 止 行 為 の 範 囲 との 関 係 等 と 総 合 考 慮 して 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 が 認 められている 場 合 もあり 判 例 は 地 理 的 な 制 限 がないことのみをもって 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 を 否 定 しない 傾 向 があるといえる 有 効 性 が 認 められたもの 地 理 的 な 制 限 がないが ( 原 告 が) 全 国 的 に 家 電 量 販 店 チェーンを 展 開 する 会 社 であること からすると 禁 止 範 囲 が 過 度 に 広 範 であるということもない と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 誓 約 書 による 退 職 後 の 競 業 避 止 義 務 の 負 担 は 在 職 時 に 担 当 したことのある 営 業 地 域 ( 都 道 府 県 ) 並 びにその 隣 接 地 域 ( 都 道 府 県 )に 在 する 同 業 他 社 ( 支 店 営 業 所 を 含 む)という 限 定 さ れた 区 域 におけるものである( 隣 接 都 道 府 県 を 超 えた 大 口 の 顧 客 も 存 在 しうることからすると やむを 得 ない 限 定 の 方 法 であり また 隣 接 地 域 という 限 定 が 付 されているのであるから 無 限 定 とまではいえない) と 判 断 ( 東 京 地 判 H14.8.30) 有 効 性 が 否 定 されたもの 本 件 誓 約 書 における 競 業 避 止 義 務 においては 退 職 後 6 か 月 間 は 場 所 的 制 限 がなく また 2 年 間 は 在 職 中 の 勤 務 地 又 は 何 らかの 形 で 関 係 した 顧 客 その 他 会 社 の 取 引 先 が 所 在 する 都 道 府 県 における 競 業 及 び 役 務 提 供 を 禁 止 しているところ 原 告 在 職 中 に 九 州 及 び 関 東 地 区 の 営 業 マネージメントに 関 与 していた 被 告 Bについては 少 なくとも 退 職 後 2 年 間 にわたり 九 州 地 方 及 び 関 東 地 方 全 域 において 原 告 と 同 種 の 業 務 を 営 み 又 は 同 業 他 社 に 対 する 役 務 提 供 が できないことになり 被 告 Bの 職 業 選 択 の 自 由 の 制 約 の 程 度 は 極 めて 強 い と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.3.15) 地 域 の 限 定 がない ( 東 京 地 判 H24.1.23) 4 競 業 避 止 義 務 期 間 1 年 以 内 の 期 間 については 肯 定 的 に 捉 えられている 例 が 多 い 近 年 は 2 年 の 競 業 避 止 義 務 期 間 について 否 定 的 に 捉 えている 判 例 が 見 られる 10
退 職 後 競 業 避 止 義 務 の 存 続 する 期 間 についても 形 式 的 に 何 年 以 内 であれば 認 めら れるという 訳 ではなく 労 働 者 の 不 利 益 の 程 度 を 考 慮 した 上 で 業 種 の 特 徴 や 企 業 の 守 るべき 利 益 を 保 護 する 手 段 としての 合 理 性 等 が 判 断 されているものと 考 えられる 概 して 1 年 以 内 の 期 間 については 肯 定 的 に 捉 えられている 4 が 特 に 近 時 の 事 案 におい ては 2 年 の 競 業 避 止 義 務 期 間 については 否 定 的 な 判 断 がなされる 例 が 見 られる 5 有 効 性 が 認 められたもの めっき 加 工 業 における 事 案 で 1 年 間 という 期 間 につき 仮 処 分 決 定 に 際 しては 期 間 を 1 年 間 と 限 定 しており 一 応 合 理 的 範 囲 に 限 定 されている と 判 断 ( 大 阪 地 決 H21.10.23) ヴォイストレーニングに 係 る 教 育 支 援 業 における 事 案 で 指 導 方 法 指 導 内 容 及 び 集 客 方 法 生 徒 管 理 体 制 についてのノウハウは 長 期 間 にわたって 確 立 されたもので 独 自 かつ 有 用 性 が 高 いと 判 断 しており そのために 退 職 後 3 年 間 の 競 合 行 為 禁 止 期 間 も 目 的 を 達 成 するための 必 要 かつ 合 理 的 な 制 限 であると 判 断 ( 東 京 地 判 H22.10.27) 家 電 量 販 店 に 係 る 事 案 で 知 識 及 び 経 験 を 有 する 従 業 員 が ( 原 告 を) 退 職 した 後 直 ちに ( 原 告 の) 直 接 の 競 争 相 手 である 家 電 量 販 店 チェーンを 展 開 する 会 社 に 転 職 した 場 合 には そ の 会 社 は 当 該 従 業 員 の 知 識 及 び 経 験 を 活 用 して 利 益 を 得 られるが その 反 面 ( 原 告 が) 相 対 的 に 不 利 益 を 受 けることは 容 易 に 予 想 される という 競 合 禁 止 目 的 に 係 る 判 断 を 前 提 とし て 退 職 後 1 年 という 期 間 は 目 的 に 照 らし 不 相 当 に 長 いものではない と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 街 路 灯 販 売 業 に 係 る 事 案 で 守 るべき 企 業 の 利 益 が 形 成 に 長 期 間 の 地 道 な 営 業 活 動 を 要 する 顧 客 関 係 であることを 前 提 として 競 業 禁 止 期 間 6 ヶ 月 と 比 較 的 短 期 間 である と 判 断 ( 東 京 高 判 H15.12.25 の 原 審 (DB の 収 録 なし)における 判 断 ) 訪 問 型 レンタル 業 に 係 る 事 案 で 退 職 後 2 年 間 という 比 較 的 短 い 期 間 と 判 断 ( 東 京 地 判 H14.8.30) 街 路 灯 販 売 業 に 係 る 事 案 で 競 業 禁 止 の 期 間 は 6 ヶ 月 と 決 して 長 くない と 判 断 ( 東 京 地 判 H11.10.29) コンサル 業 に 係 る 事 案 ( 競 業 避 止 義 務 期 間 は 1 年 )で その 禁 止 期 間 業 務 の 範 囲 等 に 鑑 み 公 序 良 俗 に 反 すると 認 めるほどに 過 度 に 制 約 するものではない と 判 断 ( 東 京 地 判 H6.9.29) 4 近 時 の 判 例 では 禁 止 行 為 の 範 囲 が 抽 象 的 であるとして 競 業 避 止 義 務 期 間 が1 年 である 点 を 考 慮 しても 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 が 否 定 されているものもある( 大 阪 地 判 H24.3.9) が 多 くはない 5 過 去 には 2 年 間 の 競 業 避 止 期 間 でも 有 効 性 が 認 められているものも 多 い( 東 京 地 判 H14.8.30 な ど ) 11
有 効 性 が 否 定 されたもの 保 険 業 における 事 案 で 保 険 商 品 については 近 時 新 しい 商 品 が 次 々と 設 計 され 販 売 されて いるころであり( 公 知 の 事 実 ) 保 険 業 界 において 転 職 禁 止 期 間 を 2 年 間 とすることは 経 験 の 価 値 を 陳 腐 化 するといえるから( 原 告 本 人 ) 期 間 の 長 さとして 相 当 とは 言 い 難 い と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.13 東 京 高 判 H24.6.13) 人 材 派 遣 業 における 事 案 で 本 件 誓 約 書 における 競 業 避 止 義 務 においては 退 職 後 6 か 月 間 は 場 所 的 制 限 がなく また 2 年 間 は 在 職 中 の 勤 務 地 又 は 何 らかの 形 で 関 係 した 顧 客 その 他 会 社 の 取 引 先 が 所 在 する 都 道 府 県 における 競 業 及 び 役 務 提 供 を 禁 止 しているところ 原 告 在 職 中 に 九 州 及 び 関 東 地 区 の 営 業 マネージメントに 関 与 していた 被 告 Bについては 少 なくとも 退 職 後 2 年 間 にわたり 九 州 地 方 及 び 関 東 地 方 全 域 において 原 告 と 同 種 の 業 務 を 営 み 又 は 同 業 他 社 に 対 する 役 務 提 供 ができないことになり 被 告 Bの 職 業 選 択 の 自 由 の 制 約 の 程 度 は 極 めて 強 いものと 言 わざるをえない と 判 断 ( 大 阪 地 判 H24.3.15) 建 築 資 材 製 造 販 売 リース 業 における 事 案 で 同 条 項 は 1 年 間 という 制 限 はあるものの 一 般 的 抽 象 的 に 被 告 の 競 業 競 合 会 社 ( 同 概 念 も 抽 象 的 一 般 的 であると 評 価 できる )への 入 社 を 禁 止 しており 被 告 を 退 職 した 従 業 員 に 対 して 過 大 な 制 約 を 強 いるものであるといわざる を 得 ない と 判 断 ( 大 阪 地 判 H24.3.9) 6 ソフトウェアの 販 売 導 入 支 援 事 業 における 事 案 で 禁 止 期 間 は 5 年 間 と 長 期 と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.23) ビル 管 理 業 に 係 る 事 案 で 原 審 で(1 年 という) 期 間 こそ 比 較 的 短 い という 判 断 を 行 なっ た ( 東 京 地 判 H21.11.9)なお 控 訴 審 は 期 間 の 長 さの 妥 当 性 については 個 別 に 判 断 せず 代 償 措 置 がないことなどを 強 調 して 規 定 自 体 が 職 業 選 択 の 自 由 に 対 する 重 大 な 制 約 となると 判 断 ( 東 京 高 判 H22.4.27) 5 禁 止 行 為 の 範 囲 業 界 事 情 にもよるが 競 業 企 業 への 転 職 を 一 般 的 抽 象 的 に 禁 止 するだけでは 合 理 性 が 認 められないことが 多 い 業 務 内 容 や 職 種 等 について 限 定 をした 規 定 については 肯 定 的 に 捉 えられている 禁 止 される 競 業 行 為 の 範 囲 についても 企 業 側 の 守 るべき 利 益 との 整 合 性 が 判 断 され ている 競 業 行 為 の 定 義 については 競 業 避 止 義 務 契 約 において 定 めがあれば 原 則 とし てそれに 従 うことになるが 契 約 上 一 般 的 抽 象 的 にしか 定 められていない 場 合 には 6 結 論 として 有 効 性 が 否 定 されているが 競 業 避 止 義 務 期 間 が1 年 であること 自 体 は 肯 定 的 に 評 価 されている 12
当 該 企 業 と 競 業 関 係 に 立 つ 企 業 に 就 職 したり 競 合 関 係 に 立 つ 事 業 を 開 業 したりするこ とといった 一 般 的 な 定 義 に 従 って 考 えることとなる 一 般 的 抽 象 的 に 競 業 企 業 への 転 職 を 禁 止 するような 規 定 は 合 理 性 が 認 められないことが 多 い 一 方 で 禁 止 対 象 となる 活 動 内 容 (たとえば 在 職 中 担 当 した 顧 客 への 営 業 活 動 )や 従 事 する 職 種 等 が 限 定 されてい る 場 合 には 有 効 性 判 断 において 肯 定 的 に 捉 えられることが 多 くなる このような 禁 止 対 象 となる 活 動 内 容 や 職 種 を 限 定 する 場 合 においては 必 ずしも 個 別 具 体 的 に 禁 止 され る 業 務 内 容 や 取 り 扱 う 情 報 を 特 定 することまでは 求 められていないものと 考 えられる 例 えば 在 職 中 に 担 当 していた 業 務 や 在 職 中 に 担 当 した 顧 客 に 対 する 競 業 行 為 を 禁 止 する というレベルの 限 定 であっても 肯 定 的 な 判 断 をしている 判 例 もある 有 効 性 が 認 められたもの 競 業 をしたり 在 職 中 に 知 り 得 た 顧 客 との 取 引 を 禁 じるに 留 まり 就 業 の 自 由 を 一 般 的 に 奪 ったりするような 内 容 とはなっていない と 判 断 ( 大 阪 地 決 H21.10.23) 本 件 競 業 避 止 条 項 の 対 象 となる 同 業 者 の 範 囲 は 家 電 量 販 店 チェーンを 展 開 するという( 原 告 の) 業 務 内 容 に 照 らし 自 らこれと 同 種 の 家 電 量 販 店 に 限 定 されると 解 釈 することができる と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 禁 じられる 職 種 は 原 告 と 同 じマット モップ 類 のレンタル 事 業 というものであり 特 殊 技 術 こそ 要 しないが 契 約 獲 得 継 続 のための 労 力 資 本 投 下 が 不 可 欠 であり ( 訴 外 会 社 が) 市 場 を 支 配 しているため 新 規 開 拓 には 相 応 の 費 用 を 要 するという 事 情 がある また 禁 じ られているのは 顧 客 奪 取 行 為 であり それ 以 外 は 禁 じられていない と 判 断 ( 東 京 地 判 H14.8.30) 競 業 ( 営 業 活 動 ) 禁 止 の 対 象 は 原 告 在 職 中 に 原 告 の 営 業 として 訪 問 した 得 意 先 に 限 られてお り 競 業 一 般 を 禁 止 するものではない と 判 断 ( 東 京 高 判 H12.7.12 東 京 地 判 H11.10.29) 教 育 コンサルティングを 担 当 もしくは 勧 誘 した 相 手 に 対 し 原 告 と 競 合 して 教 育 コンサ ルティングないしその 勧 誘 をしない との 誓 約 書 につき その 禁 止 期 間 業 務 の 範 囲 等 に 鑑 み 公 序 良 俗 に 反 すると 認 めるべきほどに 被 告 の 営 業 活 動 を 過 度 に 制 約 するものとはいえない と 判 断 ( 東 京 地 判 H6.9.29) 有 効 性 が 否 定 されたもの 原 告 が 在 職 中 に 得 たノウハウはバンクインシュアランス 業 務 の 営 業 に 関 するものであり バ ンクアシュアランス 業 務 の 営 業 にとどまらず 同 業 務 を 行 う 生 命 保 険 会 社 への 転 職 自 体 を 禁 止 することは それまで 生 命 保 険 会 社 において 勤 務 してきた 原 告 への 転 職 制 限 として 広 範 にす ぎる とした ( 東 京 地 判 H24.1.13 東 京 高 判 H24.6.13) 本 件 誓 約 書 における 競 業 避 止 義 務 においては 退 職 後 6 か 月 間 は 場 所 的 制 限 がなく また 2 年 間 は 在 職 中 の 勤 務 地 又 は 何 らかの 形 で 関 係 した 顧 客 その 他 会 社 の 取 引 先 が 所 在 する 都 道 府 13
県 における 競 業 及 び 役 務 提 供 を 禁 止 しているところ 原 告 在 職 中 に 九 州 及 び 関 東 地 区 の 営 業 マネージメントに 関 与 していた 被 告 Bについては 少 なくとも 退 職 後 2 年 間 にわたり 九 州 地 方 及 び 関 東 地 方 全 域 において 原 告 と 同 種 の 業 務 を 営 み 又 は 同 業 他 社 に 対 する 役 務 提 供 が できないことになり 被 告 Bの 職 業 選 択 の 自 由 の 制 約 の 程 度 は 極 めて 強 い と 判 断 ( 大 阪 地 判 H24.3.15) 一 般 的 抽 象 的 に 被 告 の 競 業 競 合 会 社 ( 同 概 念 も 抽 象 的 一 般 的 であると 評 価 できる)への 入 社 を 禁 止 しており 被 告 を 退 職 した 従 業 員 に 対 して 過 大 な 制 約 を 強 いるものであるといわざる を 得 ない と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.3.9) 被 告 が 長 年 携 わってきた 3 次 元 CAD 等 の 事 業 について 退 職 後 の 被 告 が 自 己 の 顧 客 または 第 三 者 から 業 務 依 頼 がなされたときには 必 ず 原 告 ( 元 使 用 者 )を 紹 介 しなければならず この 場 合 紹 介 に 基 づく 業 務 で 得 た 粗 利 益 の 20%を 紹 介 料 として 原 告 が 被 告 に 支 払 うとの 契 約 注 : 裁 判 所 は 競 業 避 止 義 務 を 課 したものと 解 される と 判 断 について 事 実 上 原 告 の 顧 客 のみならず 新 たに 獲 得 される 顧 客 から 生 じる 利 益 (の 8 割 )まで 原 告 が 獲 得 しようとする 目 的 に 出 たもの と 否 定 的 に 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.23) 対 象 行 為 も 競 合 他 社 への 就 職 を 広 範 に 禁 じており 顧 客 奪 取 行 為 等 に 限 定 するものではない と 判 断 ( 東 京 地 判 H21.11.9) 控 訴 審 では 競 業 する 事 業 を 行 うこと 及 び 競 業 他 社 への 就 職 を 禁 止 することは 職 業 選 択 の 自 由 に 重 大 な 制 約 を 加 えるものとした ( 東 京 高 判 H22.4.27) 6 代 償 措 置 代 償 措 置 と 呼 べるものが 何 も 無 い 場 合 には 有 効 性 を 否 定 されることが 多 い もっとも 必 ずしも 競 業 避 止 義 務 を 課 すことの 対 価 として 明 確 に 定 義 された 代 償 措 置 でなくても 代 償 措 置 (みなし 代 償 措 置 も 含 め)と 呼 べるものが 存 在 することに ついて 肯 定 的 に 判 断 されている 代 償 措 置 については 他 の 要 素 と 比 較 して 判 断 により 直 接 的 な 影 響 を 与 えていると 思 われる 事 案 も 少 なくなく 裁 判 所 が 重 視 していると 思 われる 要 素 である もっとも 裁 判 例 を 見 る 限 り 複 数 の 要 因 を 総 合 的 に 考 慮 する 考 え 方 が 主 流 であり 代 償 措 置 の 有 無 の みをもって 有 効 性 の 判 断 が 行 われている 訳 ではない 代 償 措 置 と 呼 べるものが 存 在 しないとされた 事 案 では そのことを 理 由 の 一 つに 挙 げ て 競 業 避 止 義 務 契 約 の 効 力 が 否 定 されることが 多 いが 代 償 措 置 以 外 の 点 で 効 力 を 肯 定 する 方 向 で 考 慮 される 要 素 が 多 いときには 結 論 として 効 力 が 肯 定 される 場 合 もある なお 裁 判 例 に 現 れた 事 案 に 置 いては 競 業 避 止 義 務 を 課 すことの 対 価 として 明 確 に 定 義 された 代 償 措 置 が 存 在 する 例 は 少 ないが このように 明 確 に 定 義 された 措 置 でなく 14
ても 代 償 措 置 (みなし 代 償 措 置 も 含 め)と 呼 べるものが 存 在 することについて 肯 定 的 に 判 断 されているケースも 少 なくない このような 例 として 判 例 の 中 には 賃 金 が 高 額 であれば 代 償 措 置 があったとみなして いる 例 がある 7 もっとも その 一 方 で 大 手 生 命 保 険 会 社 における 執 行 役 員 の 競 業 避 止 が 問 題 となった 事 案 ( 東 京 地 判 H24.1.13 東 京 高 判 H24.6.13)のように 比 較 的 高 額 な 報 酬 を 受 け 取 っていた 場 合 であっても 競 業 避 止 義 務 が 課 せられた 前 後 で 賃 金 の 差 がない ことなどから 競 業 避 止 義 務 に 対 しての 代 償 措 置 があったとはいえないと 判 断 している 例 もある 代 償 措 置 は 不 十 分 であるものの 有 効 性 が 認 められたもの 独 立 支 援 制 度 としてフランチャイジーとなる 途 があること 被 告 が 営 業 していることを 発 見 した 後 原 告 の 担 当 者 が 被 告 に 対 し フランチャイジーの 待 遇 については 相 談 に 応 じ 通 常 よりもかなり 好 条 件 とする 趣 旨 を 述 べたこと が 認 められ 必 ずしも 代 償 措 置 として 不 十 分 と はいえない として 退 職 後 の 独 立 支 援 制 度 及 び 厚 遇 措 置 を 代 償 措 置 として 認 めた ( 東 京 地 判 H20.11.18) 代 償 措 置 については ( 原 告 が) 役 職 者 誓 約 書 の 提 出 を 求 められるフロアー 長 以 上 の 従 業 員 に 対 し それ 以 外 の 従 業 員 に 対 し それ 以 外 の 従 業 員 に 比 して 高 額 の 基 本 給 諸 手 当 を 支 給 し ているとは 認 められるものの これが 競 業 避 止 義 務 を 課 せられたことによる 不 利 益 を 補 償 する に 足 りるものであるかどうかについては 十 分 な 立 証 があるとはいいがたい しかし 代 償 措 置 に 不 十 分 なところがあるとしても この 点 は 違 反 があった 場 合 の 損 害 額 の 算 定 に 当 たり 考 慮 することができるから このことを 持 って 本 件 競 業 避 止 条 項 の 有 効 性 が 失 われることはない と 判 断 ( 東 京 地 判 H19.4.24) 代 償 措 置 ( 説 明 会 等 業 務 進 捗 の 節 目 毎 の 奨 励 金 の 支 給 )がある ことを 理 由 の 一 つに 挙 げ て 競 業 避 止 義 務 を 負 うことを 認 めた ( 東 京 高 判 H15.12.25) 本 件 誓 約 書 の 定 める 競 業 避 止 義 務 を 被 告 が 負 担 することに 対 する 代 償 措 置 を 講 じていない が 本 件 誓 約 書 の 定 める 競 業 避 止 義 務 の 負 担 による 被 告 の 職 業 選 択 の 自 由 を 制 限 する 程 度 は かなり 小 さいといえ 代 償 措 置 が 講 じられていないことのみで 本 件 誓 約 書 の 定 める 競 業 避 止 義 務 の 合 理 性 が 失 われることにはならない と 判 断 ( 東 京 地 判 H14.8.30) 7 ここで 整 理 の 対 象 としている 判 例 ではないが 例 えば 執 行 役 員 の 地 位 にあって 相 当 の 厚 遇 ( 就 任 後 5 年 間 の 収 入 は 2,330 万 円 ~4,790 万 円 )を 受 けていたことについて 全 てを 労 働 の 対 価 とみなすことは 出 来 ず 競 業 避 止 条 項 に 対 する 代 償 としての 性 格 もあったと 一 応 認 められると 判 断 した 例 ( 東 京 地 決 H22.9.30) 報 酬 は 決 して 安 くない 額 (3 年 間 の 年 収 は 1,490 万 円 1,620 万 円 1,400 万 円 )であること 競 業 禁 止 が 重 要 な 要 素 の1つであることを 明 示 した 雇 用 契 約 書 を 取 り 交 わしていることから 支 給 した 報 酬 の 中 には 退 職 後 の 競 業 禁 止 に 対 する 代 償 も 含 まれて いる 判 断 した 例 ( 東 京 地 決 H18.5.24) 等 がある 15
代 償 措 置 が 不 十 分 であるとして 有 効 性 が 否 定 されたもの 月 給 131 万 円 ( 別 途 賞 与 )が 支 払 われていた 事 案 で 原 告 の 賃 金 は 相 当 高 額 であったものの 本 件 競 業 避 止 条 項 を 定 めた 前 後 において 賃 金 額 の 差 はほとんどないのであるから 原 告 の 賃 金 額 をもって 本 件 競 業 避 止 条 項 の 代 償 措 置 として 十 分 なものが 与 えられていたということは 困 難 である また 前 記 認 定 のとおり 被 告 においては 金 融 法 人 本 部 の 本 部 長 である 原 告 の 部 下 たる 者 の 中 に 相 当 数 のより 高 額 な 給 与 の 者 がいたところ それらの 原 告 の 部 下 について は 特 段 競 業 避 止 義 務 の 定 めはないのであるから( 証 人 X3) やはり 原 告 の 代 償 措 置 が 十 分 であったということは 困 難 である と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.13 東 京 高 判 H24.6.13) 競 業 避 止 義 務 等 を 課 される 対 価 として 受 領 したものと 認 められるに 足 りるのは 月 額 3000 円 の 守 秘 義 務 手 当 のみである として 否 定 的 に 判 断 ( 東 京 地 判 H24.3.15) 代 償 措 置 がなく 有 効 性 が 否 定 されたもの 被 告 らは 原 告 での 業 務 遂 行 過 程 において 業 務 上 の 秘 密 を 使 用 する 立 場 にあったわけではな いから そもそも 競 業 を 禁 ずべき 前 提 条 件 を 欠 くものであるし 原 告 は 被 告 らに 対 し 何 ら の 代 償 措 置 も 講 じていないのであるから 上 記 競 業 避 止 条 項 ないし 特 約 は 民 法 90 条 により 無 効 と 認 めざるを 得 ない と 判 断 ( 東 京 地 判 H24.3.13) 制 約 に 見 合 う 代 替 措 置 ( 退 職 慰 労 金 の 支 払 等 )が 設 けられていたとは 認 められない ことを 否 定 的 に 判 断 ( 東 京 地 判 H24.3.9) 競 業 避 止 義 務 を 設 定 するに 当 たり 退 職 金 等 の 支 払 いはなく( 中 略 ) 何 らかの 代 償 措 置 が 図 られた 事 実 は 見 当 たらない と 判 断 した 他 入 社 時 の 報 酬 ( 月 額 30 万 円 の 給 与 及 び 成 果 に 応 じ た 賞 与 )の 支 払 いを 受 けていた 事 実 及 び 退 職 年 度 の 報 酬 ( 月 額 40 万 円 の 給 与 及 び 賞 与 年 間 284 万 円 )の 支 払 いを 受 けていた 事 実 も 原 告 における 売 上 の 推 移 から 推 認 される 被 告 の 貢 献 度 を 考 慮 すると 代 償 措 置 とみなすことはできないとも 判 断 ( 東 京 地 判 H24.1.23) 確 かに 原 告 らの 年 収 は 比 較 的 高 額 なものであると 認 められる としながらも 年 収 だけ でなく 退 職 金 は 支 給 されるものの その 額 は 競 業 避 止 義 務 を 課 すことに 比 して 十 分 な 額 であ るか 疑 問 がないとはいえない と 判 断 ( 大 阪 地 判 H23.3.4) 仮 処 分 では 年 収 660 万 以 上 と 低 賃 金 と 言 い 難 い 点 を 持 って 一 応 の 疎 明 がなされていると 判 断 された ( 大 阪 地 決 21.10.23) 代 償 措 置 は 何 ら 講 じられていない ( 東 京 地 判 H21.11.9 東 京 高 判 H22.4.27) このような 従 業 員 と 取 引 先 との 個 人 的 信 頼 関 係 が 業 務 の 受 注 に 大 きな 影 響 を 与 える 以 上 使 用 者 としても 各 種 手 当 を 支 給 するなどして 従 業 員 の 退 職 を 防 止 すべきであるが 前 記 で 認 定 したように 被 告 日 本 コンベンションは 従 業 員 が 恒 常 的 に 時 間 外 労 働 に 従 事 していたにも かかわらず 一 定 額 の 勤 務 手 当 を 支 給 しただけで 労 働 時 間 に 応 じた 時 間 外 手 当 を 支 給 してい なかったのであるから 十 分 な 代 償 措 置 を 講 じていたとは 言 えない ( 大 阪 地 判 H8.12.25) 16
(3) 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 に 係 るまとめ 上 記 の 検 討 を 踏 まえると 競 業 避 止 義 務 契 約 締 結 に 際 して 最 初 に 考 慮 すべきポイント 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 が 認 められる 可 能 性 が 高 い 規 定 のポイント 有 効 性 が 認 めら れない 可 能 性 が 高 い 規 定 のポイントは 次 のとおりである また 手 続 き 上 の 観 点 から 労 働 法 との 関 係 におけるポイントについても 整 理 を 行 なった 競 業 避 止 義 務 契 約 締 結 に 際 して 最 初 に 考 慮 すべきポイント: 企 業 側 に 営 業 秘 密 等 の 守 るべき 利 益 が 存 在 する 上 記 守 るべき 利 益 に 関 係 していた 業 務 を 行 っていた 従 業 員 等 特 定 の 者 が 対 象 競 業 避 止 義 務 契 約 の 有 効 性 が 認 められる 可 能 性 が 高 い 規 定 のポイント: 競 業 避 止 義 務 期 間 が 1 年 以 内 となっている 禁 止 行 為 の 範 囲 につき 業 務 内 容 や 職 種 等 によって 限 定 を 行 っている 代 償 措 置 ( 高 額 な 賃 金 など みなし 代 償 措 置 といえるものを 含 む)が 設 定 されてい る 有 効 性 が 認 められない 可 能 性 が 高 い 規 定 のポイント: 業 務 内 容 等 から 競 業 避 止 義 務 が 不 要 である 従 業 員 と 契 約 している 職 業 選 択 の 自 由 を 阻 害 するような 広 汎 な 地 理 的 制 限 をかけている 競 業 避 止 義 務 期 間 が 2 年 超 となっている 禁 止 行 為 の 範 囲 が 一 般 的 抽 象 的 な 文 言 となっている 代 償 措 置 が 設 定 されていない 労 働 法 との 関 係 におけるポイント: 就 業 規 則 に 規 定 する 場 合 については 個 別 契 約 による 場 合 がある 旨 を 規 定 しておく 当 該 就 業 規 則 について 入 社 時 の 就 業 規 則 を 遵 守 します 等 といった 誓 約 書 を 通 じ て 従 業 員 の 包 括 同 意 を 得 るとともに 十 分 な 周 知 を 行 う 17