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ニート 引きこもり状態にある無業者へのアクティブラーニング支援の有効性に関する考察 1 新目真紀 2 田澤実 3 相川良子 若者の職業観の醸成を目的として, 学校教育における進路指導やキャリア教育の充実が図られている. しかしながら, 平成 22 の厚生労働省の調査によれば, 高等教育機関卒業 3 年後の離職率は 3 割に昇ることから, 生涯に渡る就業力育成が十分に実施されているとは必ずしもいえない. 働くことに悩みを抱えている若者向けに支援を行っている都内近郊支援機関における課題を調査したところ, 体験型アクティブラーニングの支援が手薄であることが確認された. 本研究では, 東京都内でニート ひきこもり支援を行っている NPO の協力を得て, 体験型の就労支援プログラムを開発し, その有効性を検証した. 検証の結果,e ラーニングと体験ワークショップからなる就労支援プログラムは, ニート ひきこもり状態にある無業者の就業力育成に有効である可能性が示唆された. Using Action Learning: What are the impacts of learning assistance for NEET and Social withdrawals MAKI ARAME 1 MINORU TAZAWA 2 YOSHIKO AIKAWA 3 In order for young men to cultivate employability, institutions of higher education are seeking to enrich the career education. However, the Ministry of Health, Labour and Welfare found that 30 percent of students who go to an institution of higher education retire within three years after employment in 2010. Although lifelong education carried out in Japan, it may not be adequate and efficient education. We investigated the support institution near the Tokyo metropolitan area, and we found that experienced training about employability was scanty. We developed the experienced training about employability using e learning and workshop in cooperation with NPO which is offering social withdrawal support. Active learning which consists of e-learning and a workshop may be effective as a result of investigation. 1. はじめに 日本学術会議による文部科学省への回答 大学教育の分野別質保証の在り方について ( 平成 22 年 7 22 日 ) の文書の第三部 大学と職業との接続の在り方について にあるように, バブル経済の崩壊以降, 卒業時に安定した正規雇用での就職先を得ることができず, 結果として不安定な非正規雇用の形で就労することを余儀なくされる大学卒業生が顕著に増加している. 非正規雇用での就労や無業の時期を経験した者は, その後に正規雇用の職を得ることが困難になるという日本の労働市場特有の構造は, 若者の就職問題を一層過酷なものにしている [1]. こうした状況に対し, 現状では, 若者の 勤労観 職業観の醸成 を目的として, 学校教育における進路指導やキャリア教育の充実を図るアプローチと, 社会人や職業人として求められる能力を同定し, 大学教育等の改善に活用してもらうことを企図したアプローチが採られているが, 未だ十分とは言い難いことが 1 青山学院大学ヒューマン イノベーション研究センター Aoyamagakuin University Human Inovation Research Institute 2 法政大学 HOSEI University 3 ピアサポートネットしぶや Peer Support Net Shibuya 指摘されている. 本研究では, ニート ひきこもり状態にある無業者を対象にした e ラーニングと体験ワークショップからなるアクティブラーニング型の就労支援プログラムを開発することを目的とする. 厚生労働省の定義では, 無業者であって, 就労を希望しない者を ニート と定義している. また 引きこもり の状態にある者は, ニートの 就業希望を有しない者 に含めている. 引きこもり とは, 仕事や学校に行かず, かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに,6 ヶ以上続けて自宅にひきこもっている状態を指す. 本研究では, ニート ひきこもり状態にある無業者を主な対象とする. 2. 調査活動 2008 年に発生したリーマンショック等を背景に, 正規雇用の職に就けない 30 代後半から 40 代前半のいわゆる 働き盛り 世代の無業者が増加しており, その数は内閣府の調査 [2] によると 80 万人 ( 平成 23 年 ) に及ぶという. 図 1 は総務省統計局の資料を基に 35~39 歳を追記したものである.2010 年の明治安田生活福祉研究所クォータリー生活福祉研究通巻 74 号 Vol.19[3] では,2002 年 ~2009 年まで 15~34 歳の若者無業者数に大きな変化はないが,35~39 1

[2] 図 1 無業者 (15~39 歳 ) の推移 歳の無業者が着実に増加している. 一般的に無業期間が長 くなるほど, 年齢が高くなるほど, 経済的自立を可能にす る就労機会は減少するため, ニートの高齢化は大きな社会 問題であると指摘している. 厚生労働省では, 引きこもりを 仕事や学校に行かず, かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに,6 ヶ以上 続けて自宅にひきこもっている状態 と定義している. 一 般的に無業期間が長くなるほど, 年齢が高くなるほど, 経 済的自立を可能にする就労機会は減少するため, ニートの 高齢化は大きな社会問題である. 働くことに悩みを抱えて いる概ね 15 歳 ~39 歳以下の若者向けに支援を行っている 支援機関に地域若者サポートステーションがある. 地域若者サポートステーションは, 厚生労働省から委託を受けた団体, 例えば NPO 法人や株式会社, 社団法人, 財団法人, 学校法人が行っている. 地域のネットワークを活かして支援にあたることが期待されており, 地域や委託団体の特性によって支援内容に違いがあると考えられる. そこで本研究では, 高齢化するニート ひきこもりに向けた支援として都内近郊の地域若者サポートステーションが, どのような支援を行っているかを調査した. 2.1 調査対象本研究では, 支援機関としては, 都内及び都内近郊 ( 神奈川県, 千葉県, 埼玉県 ) の地域若者サポートステーション及びそれに類する支援機関 17 団体を対象とした. 対象機関が実施している支援サービス概要については,Web で調査した. 地域若者サポートステーションは, 総合的な相談支援とネットワークの活用による包括的支援が特徴である. 厚生労働省のサポステ事業は 2006 年度から開始されており, 開始以来, 年を追うごとに設置拠点も拡充されてきている. 都内の地域若者サポートステーションは初年度に開設した施設もあり, 初年度開設の施設であれば既に 8 年が経過している. 支援対象者の高齢化に向けた方策がとられていることが期待される. 表 1 アンケート依頼した支援組織 団体名 開設年 1 あだち若者サポートステーション 2006 2 たちかわ若者サポートステーション 2006 3 みたか地域若者サポートステーション 2007 4 しんじゅく若者サポートステーション 2008 5 せたがや若者サポートステーション 2009 6 いたばし若者サポートステーション 2010 7 ねりま若者サポートステーション 2013 8 ちょうふ若者サポートステーション 2013 9 はちおうじ地域若者サポートステーション 2013 10 多摩若者サポートステーション 2013 11 さがみはら若者サポートステーション 2009 12 よこはま若者サポートステーション 2006 13 湘南 横浜若者サポートステーション 1020 14 かわさき若者サポートステーション 2010 15 神奈川県西部地域若者サポートステーション 2012 16 いちかわ若者サポートステーション 2008 17 地域若者サポートステーションさいたま 2013 一方,2009 年に厚生労働省の 若年無業者 の定義年齢を 35 歳から 40 歳以下に引き上げたことにより支援対象者層は拡大している. 更に, ニート ひきこもり状態にある者は発達障害的な要素を持つこともあり, 相談支援時に福祉 医療機関等複数の機関との連携が必要となる. 前述の 2010 年の明治安田生活福祉研究所, クォータリー生活福祉研究, 通巻 74 号 Vol.19 の報告書では, 地域サポートステーション事業の課題として, 単年度事業として営まれているため, 長期的な視点にたったスタッフの育成が困難であることを挙げている. 都内近郊の地域サポートステーションによっては資源の選択と集中を行い, 主な支援対象者層を絞りこんでいる可能性もある. 域若者ステーションには, 利用開始から 6 ヵ経過時点で, 継続的に支援した者のうち, より就職等に結びつく方向に変化した者の割合 ( 行動変容率 ) を 60% 以上, 就職等の進路決定者の割合を 30% 以上達成 を目標とするという達成目標がある. 目標を達成するために, 成果に結びつきにくい人が適切に支援を受けられていない可能性もある. 2.2 調査項目 Web 調査では,2013 年の NRI パブリックマネジメントレビュー vol.122[4] に掲載されている, ニート ひきこもりの支援サービス ( 図 1) を参照に調査項目を決定した. 地域若者サポートステーションには, 相談 家族支援 といった相談機能と, 職業観や就業力を育成する 各種活動プログラム の実施が期待されている. 本調査では, 実施状況を支援団体の Web に掲載されている内容から確認した. 2

がわかる. また相談や家族支援といった支援に比べて, 就労体験や中間的就労といった体験型の支援まで実施していない団体が大多数であった. ソーシャルメディアの活用については, 約半数の利用が確認された. 利用している団体については, 登録者数も調査した. 登録者数が 2 ケタに満たない団体もあり, ソーシャルメディアの活用については, あまり進んでおらず, 試行段階であることが確認された. 3. 目的 図 2 ニート ひきこもり支援メニュー [4] 平成 22 年の内閣府政策統括官 ( 共生社会政策担当 ) 若者の意識に関する調査報告書では, ひきこもり群の心理的特徴やコミュニケーションの特徴を, ひきこもるきっかけは不登校や職場不適応など多様であっても, 人づきあいが極端に苦手で, 人との接触を恐れる態度は共通していることを指摘している. また地域社会がこのような人々をどのように受け入れていくかを検討する必要があるとともに, その際に, ひきこもる人々が採っているパソコンメールや Web サイトなどのコミュニケーション手段も積極的に利用することを提言している. そこで, 本調査では, 相談 家族支援 各種活動プログラム サービスに加えて, アウトリーチにもつながる可能性として Facebook や Twitter といったソーシャルメディアの活用状況を調査した. 2.3 調査結果 Web 調査の結果をまとめたものが図 3 である. 支援団体によって Web に掲載されているサービスに差があること 事前調査から, 都内近郊の地域若者サポートステーションでは, 相談や家族支援については充実しているが, ソーシャルメディアを活用したアウトリーチや, 職業観や就業力を育成する体験型の学習支援までは, 十分に実施できていない可能性が確認された. 対象とする被験者は, 働きたいと考えているが, 職歴が無いことや, 会社の文化や常識, 従業員との関係への理解が無いことなどから, 不安を感じていると考えられる. ニート ひきこもり状態にある無業者に向けて, どのような就業力育成が有効かを考察することは, 大学と職業との接続の在り方を検討する上でも有効と考えられる. 先行研究では, 地域若者サポートステーションが, 支援対象者層の拡大等により就業力育成までは手がまわらないことも懸念されている. そこで, 本研究ではニート ひきこもり状態にある無業者に向けた就業力育成支援方法を検討する. 4. 先行研究の知見 2008 年の中央教育審議会 学士課程教育の構築に向けた ( 答申 ) にもある通り, 学生の思考や表現を引き出しその知性を鍛える双方向の授業方法として, アクティブラーニングが期待されている. アクティブラーニングとは 学生の自らの思考を促す能動的な学習 のことである. 構成主義や社会構成主義, 状況論などの学習理論に基づく学習方法の 1 つであり, こうした学習の支援として (1) 共同作業, (2) 多視点からのアプローチ,(3) 真正 [authentic] な文脈の 3 つが挙げられる. 図 3 サポステ別活動実施状況 3

真正な文脈とは, 知識や学習成果が用いられる現実味がある文脈のことである [5], 真正な文脈での学習活動では現実に起こりうることを扱うため, 問題が複雑となり, 認知過程において高次な認知活動であるメタ認知の支援が求められる [6]. 尾崎は, こうした高次な認知過程に 自分とは立場や考えの違う他者の意見 が契機になる場合が多いことを指摘している [7]. 5. 研究方法本研究は, ニート ひきこもり状態にある無業者向けに支援を行っている NPO( ピアサポートネットしぶや ) の協力を得て就業力育成支援プログラムを実施し, 実践結果をもとに考察を行う. 就業力育成支援プログラムは 2013 年 11 から 2014 年 3 まで実施し, 期間中 8 名が受講した. ピアサポートネットしぶやは, これまで電話や, 来所型の支援が中心であったが, 新たに就業力育成を目的とした e ラーニング環境を用意し,Web 上で高知することで, アウトリーチが進むことが期待される. 無業者に対するアクティブラーニング型就業力育成支援プログラムの有効性は, 受講者の就業力が育成状況で評価する. 5.1 受講者概要期間中に e ラーニングと体験ワークショップからなる就業力育成支援プログラムを受講した 8 名は, 全員男性で平均年齢は 31 歳であった. 大卒中退者が 4 名, 高校 短大卒業生が 4 名であった.2 名は, これまで一度も就労経験がなく,6 名はアルバイト等の経験があった.8 名のうち 7 名は,1 年以上に渡るひきこもり状態であった. 何とかしたいという気持ちはあるが, 自信がなく, 就職活動に至っていない状態と考えられた. 5.2 e ラーニング概要本検証では,NPO と協働して 6 本の e ラーニング教材を開発し,NPO の Web ページに公開した.e ラーニングを用いた支援効果は, 利用者の e ラーニング使用状況と, アンケート結果で分析する. 以下は教材名と, 期待される学習効果である ( 表 2). 1. キャリアについて考えてみよう ( 自己理解の促進, 仕事理の促進 ) 2. 会社とは ( 会社理解の促進 ) 3. 労働契約と労務管理 ( 会社理解の促進 ) 4. 商品やサービスができるまで ( 職種理解の促進 ) 5. 情報を伝える仕事に挑戦 ( 職種理解の促進 ) 6. 仕事のアイディアを伝えよう ( 職種理解の促進 ) 本調査で対象とする被験者は, 働きたいと考えているが, 職歴が無いことや, 会社の文化や常識, 従業員との関係への理解が無いことなどから, 不安を感じていると考えられ 表 2 研修と習得するコンピテンシー 基礎知識 社会人基礎力 コース 自己理解 仕事理解 会社理解 職種理解 前に踏み出す力 考え抜く力 チームで働く力 1 〇 〇 2 〇 〇 3 〇 4 〇 〇 〇 5 〇 6 〇 体験ワークショップ 〇 〇 〇 た.e ラーニング教材では, 就業力の基礎となる, 自己理解, 会社理解, 職種理解の促進を目的としている. 具体的には, 仕事には様々な種類があり, 仕事の向き不向きを判断できるようになるとともに, 同じ仕事でも, 会社 組織の仕組みや文化によって違うことを理解し, 就業のために必要な情報収集ができるようになることを目的とした.6 本の教材は, 検証期間中いつでもどこでも必要に応じて利用できるようにした. 5.3 体験ワークショップ概要体験ワークショップでは,e ラーニングで得た職業観や自己理解を実践で振り返り, 職場におけるソーシャルスキルを育成することを目的としている.4 日間 (1 回 2 時間 ) で構成し,12,1,2 の全 3 回開催した. 真正な学習を支援するために, 体験ワークショップは,IT 業界での就業を想定し, デジタル教材の開発業務を体験するプログラムとした. 受講者は, パソコンの操作に習熟していなくても利用できるように配慮した. 体験ワークショップの評価は, 本人評価と外部者による評価で行う. 外部者は, 社会人基礎力を参考の上,4 日間の工程について, 参加者が業務を理解し, 主体的に参加できていたかを評価した. 社会人基礎力とは, 職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力 ( 厚生労働省,2006) と定義され, 前に踏み出す力( 主体性, 働きかけ力, 実行力 ), 考え抜く力( 課題発見力, 計画力, 創造力 ), チームで働く力( 発信力, 傾聴力, 柔軟性, 情況把握力, 規律性, ストレスコントロール力 ) の 3 つの能力,12 の能力要素から構成される概念である. 本研究では, 延 9 名が外部者としてプログラムの評価を行った. 体験ワークショップは, 先行研究の知見を基に (1) 共同作業を組み込み,(2)IT 業界の会社の社員として, 教材を納品するという多視点からのアプローチを取り入れるように設 4

計した. プログラム概要は以下である. 1 日目オリエンテーションで IT 業界の概要と体験ワークショップに参加する意義, 涵養するスキルについて説明する. 2 日目ワークショップで必要となるソフトの使い方を説明する. 3 日目,4 日目前半グループで教材制作に取り組む. 4 日目後半制作した教材を納品する. 自分とは立場や考えの違う他者の意見 が, メタ認知の支援に有効であることから, 研修講師は体験ワークショップのファシリテーターとして参加し, 参加者に向けたゴールの確認をするとともに, 多段階の振り返りを行った. また運営スタッフは, 職場の上司や同僚, お客様としてワークショップに参加し, 講師とは異なる役割で, 参加者に向けたゴールの確認と作業の振り返りを支援している.8 名の参加者には, 以下 6 設問からなるアンケートを実施した. 回答の選択肢は,1: そう思わない 2: どちらかと言えばそう思わない 3: どうちらかと言えばそう思う 4: そう思う. の 4 段階尺度を用いた. 設問 1. 利用したソフトについて理解することができた設問 2. 納品までの工程が多段階であることが理解できた設問 3. 必要な能力が多様であることが理解できた設問 4. チーム作業での役割分担の重要性が理解できた設問 5. 納期に向けてスケジュール調整する必要性が理解できた設問 6. 同じ作業でもチームによって段取りが違うことが理解でいた 7. 次回は研修のアシスタントができる e ラーニングと体験ワークショップからなる就業支援プログラムが, アクティブラーニングとして実施できていれば, 就業力が育成され, 就業に対する自信がつくと考えられる. 6. 検証結果 6.1 Web ページへのアクセス数の推移ピアサポートネットしぶやの Web ページへのアクセス状況を,2013 年 9 ~11 までと,2013 年 11 ~2014 年 2 までを比較して検討した. アクセス状況を分析した結果が表 6 である. 新たに構築した就労支援プログラムへのアクセスがあったかは, together というキーワードで検索があるか否かで調査した. 表 3 の 2014 年 1 以降の結果を見ると, together という検索キーワードが登場し, 本事業に関心を持つユーザーが Web ページにリーチしていることがわかる. 表 3 2013 年 12 から 2014 年 2 までの推移 6.2 e ラーニング教材の利用状況調査期間中にピアサポートネットしぶやを利用したニート ひきこもりの人数と,e ラーニングを利用した人数を比較したものが表 4 である. NPO を利用した対象者のうち,e ラーニングを利用した人数は,1 割程度であり, 途中で学習を中断している者も見られた.e ラーニングを利用した者からは, 役に立つ内容ではあるが, どのように利用したらよいかわからないという意見が聞かれた.e ラーニングを用いた学習支援については, 今後更なる改善が必要と思われる. NPO 利用者数 e ラーニング利用者数 8 9 表 4 利用実績 10 11 12 1 2 3 16 16 16 16 18 18 20 20 2 1 3 2 6 6.3 体験ワークショップの利用状況 3 回実施した体験ワークショップには,1 回目 6 名,2 回目 2 名,3 回目 3 名が参加した.1 回目に修了できなかった者が 2 回目に再度参加し, 全部で 8 名が修了した. 修了した 8 名のアンケート結果をまとめたのが表 5 である. 体験ワークショップの参加者が概ね肯定的に評価されていることがわかる. 設問 6. 次回は研修のアシスタントができると思う への肯定的な回答は, 参加者の自己効力の現れと考えられ, 就業力育成プログラムが有効性を示すと考えられる. 4 日間の体験ワークショップにおける, 参加者の理解度と主体性について,9 名の外部評価者が評価した結果をまとめたものが表 6 である. ワークショップの進行とともに, 理解度, 主体性の評価が高まっていることがわかる. 5

表 5 受講者アンケート 設問 1 2 3 4 5 6 7 平均 3.33 3.67 3.50 3.50 3.50 3.50 2.83 標準偏差 0.52 0.52 0.55 0.55 0.55 0.55 0.75 N=6 表 6 外部評価者アンケート オリエンテーション 業務説明 理解度 主体性 理解度 主体性 平均 3.13 3.00 3.63 3.13 標準偏差 0.60 0.60 0.48 0.60 グループワーク 業務改善 理解度 主体性 理解度 主体性 平均 3.56 3.38 3.89 3.67 標準偏差 0.46 0.70 0.31 0.31 N=9 研修講師及び数名のスタッフから, 作業の進行とともに, 受講者自身の顔つきが変化し, 実際の仕事をしているような真剣なものになっていたことが指摘されている. これは, 主体的な学習を支援できた結果と考えられる. 7. 結果の考察と今後の課題 本研究では, 働くことに悩みを抱えている若者向けに支援を行っている都内近郊の地域若者サポートステーションの支援状況を調査し, 現状では, 相談支援が中心になっており, 就業力を育成する体験型の研修までは十分に実施できていない可能性が確認された. そこで本研究では, 東京都内でニート ひきこもり支援を行っている NPO の協力を得て,e ラーニングと体験ワークショップからなるアクティブラーニングの支援を実施し, 有効性を検証した. 検証の結果, 半年間という短い期間ではあったが,NPO に相談があったニート ひきこもり状態にある 8 名がプログラムを受講し, 修了することができた. プログラムの外部評価を行った 9 名が, プログラム参加者が主体的にプログラムに参加しており, 受講後に態度変容があったことを指摘した. 実践結果の分析から, 参加者には,PC の使い方やソフトウェアの使い方を教えるだけでなく, 先行研究が示すように (1) 真正な環境で (2) 共同作業と (3) 多視点からのアプローチを組み込むことが有効である可能性が確認された. 具体的には, グループで作業にあたるための支援をするだけでなく, 成果物の改善を目標とさせることで, 職場でのソーシャルスキル ( 意思決定, 問題解決能力, 効果的なコミュニケーション, 共感性, ストレスへの対処等 ) が習得しやすくなることが確認できた. 参加者へのインタビューから, プロジェクトの進行状況を把握して, チームメンバと情報交換しながらプロジェクトを進行するスキルについては, これまであまり使ったことのないスキルであった. しかしながら, こうしたスキルが必要であることを指摘し, 意識的に用いるように支援することで, 改善しようとする意識が生まれた. ワークショップの運営スタッフからも, このワークショップで, 受講者に 納期 と 分担 を意識させることで, 作業時にチームメンバと自身のスキルの違いを意識するようになり, 発話が進んだ という報告がなされている. 本研修では, 主に年齢が高いニート ひきこもりを対象に,e ラーニングと体験ワークショップを連動したアクティブラーニングの有効性を検証した. ニート ひきこもり状態にある無業者は対人面での課題を抱えることが多い. 体験ワークショップのように対人場面で学習を始める場合, 失敗を他者の前で見せてしまうのではないかという恐怖を持つものもいると思われる. しかし,e ラーニングの持つ自習学習という性質は, 学習過程に必然的に伴うはずの失敗を自分のみで認識できるという効果もあるであろう. 両者の特徴を活用しながら, より連動させたプログラムが求められる. 期間の制限もあり, 本研修に参加した参加者が 11 名と少数であったため, アクティブラーニングの年代別の有効性までは検証できていない. 今後も継続して, 本研究で開発した就業支援プログラムを実施することで, 年代別の効果を検証していくことも今後の課題と考えられる. 謝辞本研究は厚生労働省の平成 25 年度セーフティネット支援対策事業の一環として行った. 記して謝意を表する. 参考文献 1) 日本学術会議回答大学教育の分野別質保証の在り方について ( 平成 22 年 7 22 日 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-k100-1.pdf 2) 内閣府平成 23 年版子ども 若者白書第 4 節若年無業者, ひきこもり, フリーター等の状況 http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h23honpenhtml/html/honpen/b 1_sho2_4.html 3) 明治安田生活福祉研究所クォータリー生活福祉研究通巻 74 号 Vol.19 http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/pdf/74_03.pdf 4) NRI パブリックマネジメントレビュー September 2013 vol.122 http://www.nri.com/jp/opinion/region/2013/pdf/ck20130902.pdf 5) Oliver, R. and Harrington, J.: Using situated learning as a design strategy for Web-based learning, In B. Abbey (Ed.), Instructional and Cognitive Impacts of Web-Based Educa-tion, Idea Group Publishing, pp. 178-191, 2000. 6) Bloom, B. S., Engelhart, M. D., Hill, W. H., Furst, E. J. and Krathwohl, D. R.: Taxonomy of Educational Objectives, Handbook 1: The Cognitive domain, New York: David McKay, 1956. 7) 尾崎仁美 : 大学生活編の授業における学生たちの学び, 溝上慎一 ( 編 ) 学生の学びを支援する大学教育, 東信堂,2004. 6