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我 が 国 の 安 全 保 障 政 策 と 台 湾 問 題 ~ 集 団 的 自 衛 権 をめぐる 議 論 の 盲 点? 准 教 授 柿 澤 未 知 1.はじめに 2013 年 9 月 に 外 務 省 から 北 海 道 大 学 公 共 政 策 大 学 院 に 出 向 してきて 早 いもので 既 に1 年 が 経 過 した 外 務 省 においては 一 貫 して 台 湾 中 国 に 関 する 情 勢 分 析 や 政 務 関 連 業 務 に 携 わり 本 学 においても 日 本 外 交 や 東 アジアの 国 際 政 治 に 関 する 講 座 を 担 当 して いる ここでは 実 務 家 教 員 としての 現 下 の 問 題 意 識 を 披 歴 することにより 読 者 が 我 が 国 の 外 交 安 全 保 障 及 び 台 湾 問 題 に 関 して 考 える 一 つの 材 料 を 提 供 することとしたい なお 如 才 なきことながら 本 論 考 はあくまで 研 究 者 としての 個 人 的 見 解 であり いかな る 組 織 団 体 の 見 解 立 場 を 代 表 するものではない 2. 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 閣 議 決 定 今 年 7 月 1 日 安 倍 政 権 は 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るための 切 れ 目 ない 安 全 保 障 法 制 の 整 備 に 関 する 閣 議 決 定 を 行 った 周 知 のとおり この 閣 議 決 定 は 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 のみならず 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これにより 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある 場 合 において これを 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないときに 必 要 最 小 限 度 の 実 力 を 行 使 するこ とは 従 来 の 政 府 見 解 の 基 本 的 な 論 理 に 基 づく 自 衛 のための 措 置 として 憲 法 上 許 容 され ると 考 えるべきであると 判 断 するに 至 った として これまで 憲 法 上 許 されないとされ てきた 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 に 踏 み 出 したものである この 閣 議 決 定 を 受 けて 政 府 は 1 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 したこと 又 は 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これにより 我 が 国 の 存 立 が 脅 かさ れ 国 民 の 生 命 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 があること 2これを 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないこと 3 必 要 最 小 限 度 の 実 力 行 使 にとどまるべきこと を 自 衛 の 措 置 としての 武 力 行 使 の3 要 件 と 定 めた 内 閣 官 房 の 説 明 によれば 何 をもって 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 があると 判 断 するのかは 現 実 に 発 生 した 事 態 の 個 別 具 体 的 な 状 況 に 即 して 主 に 攻 撃 国 の 意 思 能 力 事 態 の 発 生 場 所 その 規 模 態 様 推 移 などの 要 素 を 総 合 的 に 考 えて 我 が 国 に 戦 禍 が 及 ぶ 蓋 然 性 国 民 が

被 ることになる 犠 牲 の 深 刻 性 重 大 性 など に 基 づいて 判 断 するとされている つまり 我 が 国 が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 するか 否 かについては 発 生 した 個 別 の 事 態 の 性 質 に 基 づい てその 都 度 判 断 するということであり 仮 定 のシナリオにおいて 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 する か 否 かを 政 府 に 問 うても 原 則 として 明 確 な 回 答 は 得 られないということである 3. 中 国 の 軍 事 力 増 強 と 中 台 関 係 この 閣 議 決 定 の 土 台 となった 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 報 告 書 (2014 年 5 月 15 日 )は 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 の 変 化 の 一 つとして アジ ア 太 平 洋 地 域 においては 緊 張 が 高 まっており 領 土 等 を 巡 る 不 安 定 要 素 も 存 在 する 中 国 の 影 響 力 の 増 大 は 明 らかであり 公 表 国 防 費 の 名 目 上 の 規 模 は 過 去 10 年 間 で 約 4 倍 過 去 26 年 間 で 約 40 倍 の 規 模 となっており 国 防 費 の 高 い 伸 びを 背 景 に 近 代 的 戦 闘 機 や 新 型 弾 道 ミサイルを 含 む 最 新 兵 器 の 導 入 とその 量 的 拡 大 が 顕 著 である 中 国 の 国 防 費 に 関 しては 引 き 続 き 不 透 明 な 部 分 が 多 いが 2014 年 公 式 発 表 予 算 額 でも 12 兆 円 以 上 で あり 我 が 国 の 3 倍 近 くに 達 している この 趨 勢 が 続 けば 一 層 強 大 な 中 国 軍 が 登 場 する また 領 有 権 に 関 する 独 自 の 主 張 に 基 づく 力 による 一 方 的 な 現 状 変 更 の 試 みも 看 取 されて いる 以 上 のような 状 況 を 踏 まえれば これに 伴 うリスクの 増 大 が 見 られ 地 域 の 平 和 と 安 定 を 確 保 するために 我 が 国 がより 大 きな 役 割 を 果 たすことが 必 要 となっている と 指 摘 している このことからは 今 回 の 閣 議 決 定 或 いはその 土 台 となった 安 保 法 制 懇 の 報 告 書 が 中 国 の 軍 事 的 台 頭 を 強 く 意 識 したものであったことがうかがわれるが その 中 国 の 軍 事 力 増 強 とは 何 を 目 的 とするものであろうか 我 が 国 の 平 成 26 年 度 防 衛 白 書 は 中 国 の 軍 事 力 強 化 においては 台 湾 問 題 への 対 処 具 体 的 には 台 湾 の 独 立 および 外 国 軍 隊 による 台 湾 の 独 立 支 援 を 阻 止 する 能 力 の 向 上 が 最 優 先 の 課 題 として 念 頭 に 置 かれていると 考 えられる と 指 摘 しており 今 年 4 月 に 米 国 国 防 省 が 発 表 した 中 国 軍 事 力 レポートにも 同 様 の 記 述 が 見 られる すなわち 日 米 両 国 は 中 国 の 軍 事 力 拡 張 が 中 長 期 的 に 見 て 台 湾 問 題 を 超 える 意 味 合 いを 有 することを 意 識 しつつも 対 台 湾 武 力 行 使 こそがその 当 面 の 主 目 的 であることに 変 わりはないと 認 識 しているのである 中 国 は 台 湾 側 政 治 指 導 者 の 台 湾 独 立 志 向 に 圧 力 をかけるため 1995~96 年 に かけて 台 湾 周 辺 の 公 海 に 短 距 離 弾 道 ミサイルを 発 射 する 軍 事 演 習 を 複 数 回 実 施 し 2005 年 3 月 に 反 国 家 分 裂 法 を 制 定 するなど 台 湾 独 立 を 抑 止 阻 止 するための 武 力 行 使 の 可 能 性 をちらつかせてきた 国 民 党 が 2008 年 に 台 湾 の 政 権 与 党 の 座 に 返 り 咲 いたこと で 中 台 関 係 は 相 対 的 に 安 定 し 軍 事 的 緊 張 も 緩 和 して 6 年 が 経 つが 日 米 両 国 の 防 衛 当

局 が 見 るところ 中 国 の 軍 事 力 拡 張 が 依 然 として 台 湾 独 立 阻 止 抑 止 を 最 優 先 に 進 め られていることには 変 わりがないのである 台 湾 海 峡 を 挟 んだインターアクションだけを 見 ると 緊 張 緩 和 どころか 関 係 の 緊 密 化 が 進 んでいるように 見 えるが 台 湾 内 部 の 事 情 に 目 を 向 けると 中 国 と 台 湾 の 関 係 が 中 国 側 が 望 むような 統 一 に 向 かっていると 見 るのが 全 くの 早 計 であることが 分 かる 台 湾 の 馬 英 九 政 権 の 支 持 率 は 汚 職 疑 惑 にまみれて 政 権 を 失 った 陳 水 扁 政 権 ( 民 進 党 ) 末 期 の 支 持 率 にも 及 ばないほど 低 迷 しており 2016 年 に 予 定 される 総 統 選 挙 議 会 選 挙 で 国 民 党 が 政 権 の 座 を 維 持 できるかは 微 妙 な 状 況 となっている また 2000 年 頃 には 両 岸 統 一 を 支 持 する 住 民 が 14~18% 存 在 していたのに 対 し 馬 英 九 政 権 の 発 足 (2008 年 ) 以 降 その 割 合 は 4~8%に 低 迷 しており 一 向 に 増 える 兆 しが 見 られない(TVBS 世 論 調 査 センターによる 調 査 結 果 ) より 重 要 な 変 化 は 台 湾 住 民 の 台 湾 人 アイデンティティ の 浸 透 である 台 湾 政 治 大 学 選 挙 研 究 センターの 調 査 によれば 自 らは 中 国 人 である 或 いは 台 湾 人 でもあり 中 国 人 でもある とする 台 湾 住 民 の 割 合 は 2000 年 時 点 では 56.7%と 過 半 数 であったの が 今 年 6 月 の 調 査 では 36.2%まで 減 少 している それに 対 し 自 らは 台 湾 人 である とし 中 国 人 としてのアイデンティティを 否 定 する 人 々の 割 合 は 36.9%( 2000 年 ) 48.4%(2008 年 ) 60.4%(2014 年 6 月 )と 右 肩 上 がりに 急 増 してきている 台 湾 住 民 の 台 湾 人 アイデンティティ の 強 まり 自 体 が 直 ちに 台 湾 独 立 運 動 の 活 発 化 先 鋭 化 につながるものとは 言 えないが この 傾 向 が 続 く 限 り 民 族 的 アイデンティテ ィを 共 有 していない(できない) 相 手 とともに 統 一 国 家 を 作 ろうというインセンティブが 台 湾 社 会 において 低 下 していくのは 不 可 避 であろう 実 際 今 年 3 月 の 学 生 たちによる 台 湾 議 会 占 拠 行 動 (いわゆる ひまわり 学 生 運 動 )は その 発 端 が 両 岸 サービス 貿 易 取 決 め の 国 会 審 議 に 対 する 不 満 反 対 であったことが 示 すとおり 馬 英 九 政 権 下 での 中 台 関 係 緊 密 化 の 政 策 方 針 によって 中 国 の 影 響 力 が 台 湾 の 政 治 経 済 社 会 に 急 速 に 浸 透 して いくことに 対 する 台 湾 住 民 ( 特 に 対 中 ビジネスの 権 益 恩 恵 に 浴 していない 学 生 若 者 ) の 漠 然 とした 不 安 を 底 流 としていたものと 言 えよう 中 台 間 のパワーバランスに 顕 著 な 開 きが 生 まれ かつ 中 台 経 済 交 流 が 台 湾 の 経 済 発 展 にとって 死 活 的 重 要 性 を 有 するようになる 中 武 力 行 使 を 含 む 中 国 側 の 強 烈 な 反 発 を 覚 悟 の 上 で 台 湾 住 民 が 台 湾 独 立 の 強 行 という 道 を 選 ぶ 可 能 性 は 確 実 に 低 下 しているし 米 国 を 含 む 国 際 社 会 もこれを 支 持 しないであろう したがって 台 湾 独 立 を 発 端 として 台 湾 有 事 に 発 展 する 蓋 然 性 が 決 して 高 くないと 見 ること 自 体 は 合 理 的 な 情 勢 認 識 である しかしながら 上 述 のような 台 湾 内 部 の 情 勢 に 着 目 すれば 台 湾 海 峡 の 危 機 が 去 った

かのように 認 識 するのは 明 らかな 過 ちであり 台 湾 有 事 の 潜 在 的 リスクは 依 然 として そこに 存 在 している 尖 閣 諸 島 や 南 シナ 海 を 見 ても 分 かるとおり 主 権 領 土 に 関 する 中 国 政 府 の 姿 勢 は 一 貫 して 断 固 としたものであり 時 にきわめて 強 硬 である 中 国 は 日 本 政 府 の 尖 閣 諸 島 国 有 化 の 決 定 を 奇 貨 として 尖 閣 諸 島 周 辺 の 我 が 国 領 海 領 空 に 船 舶 航 空 機 を 頻 繁 に 入 れてくるようになり 我 が 国 による 尖 閣 諸 島 の 実 効 支 配 という 現 状 を 変 更 しよう としている 仮 に 2016 年 に 台 湾 で 民 進 党 が 再 び 政 権 を 奪 取 する 場 合 台 湾 当 局 の 拙 速 な 言 動 を 口 実 として 中 国 側 が 何 らかの 強 硬 なアクションを 起 こし 中 台 関 係 の 現 状 を 自 らに 有 利 なもの 新 しい 現 状 に 変 質 させようと 企 図 する 可 能 性 は 十 分 ありうる 1990 年 代 以 前 とは 異 なり 今 日 の 中 国 は 台 湾 に 痛 い 目 にあわせる だけの 手 段 と 能 力 を 十 分 に 身 につけているのであり 能 力 の 有 無 多 寡 はその 意 図 にも 自 ずと 影 響 を 与 えるものである 4. 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 と 台 湾 問 題 自 分 は 台 湾 政 治 社 会 が 台 湾 独 立 を 強 行 する 方 向 に 進 み それが 台 湾 有 事 に 発 展 することを 予 見 するものではないし 中 台 間 の 平 和 的 話 し 合 いを 通 じて 問 題 が 解 決 される ことを 強 く 希 望 している しかしながら 中 国 の 軍 事 力 増 強 という 脅 威 の 存 在 と 集 団 的 自 衛 権 を 巡 る 国 内 外 の 議 論 がこれだけ 高 まっている 中 我 が 国 の 安 全 保 障 論 議 において 台 湾 有 事 がほとんど 議 論 の 対 象 となっていないことには 強 い 違 和 感 を 覚 える 1990 年 代 後 半 の 日 米 ガイドライン 改 定 周 辺 事 態 法 制 定 そして 今 回 の 集 団 的 自 衛 権 の 限 定 的 行 使 容 認 に 至 る 歴 史 的 経 緯 を 通 じて 我 が 国 の 安 全 保 障 政 策 における 台 湾 問 題 の 位 置 づけが 如 何 に 変 化 してきたかについて 深 い 考 察 議 論 が 見 られないのである 我 が 国 の 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 閣 議 決 定 について 台 湾 当 局 は 特 段 のコメントを 発 表 していないが 台 湾 内 部 の 反 応 は いつものように 青 ( 与 党 系 ) と 緑 ( 野 党 系 ) と で 分 裂 している 野 党 民 進 党 系 の 研 究 者 やかつての 党 幹 部 は 我 が 国 政 府 が 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 閣 議 決 定 に 踏 み 切 ったことを 歓 迎 しており 新 台 湾 国 策 智 庫 の 李 明 峻 研 究 員 は 台 日 関 係 は 日 米 同 盟 の 延 長 線 上 にあり 日 米 同 盟 はアジアの 安 全 保 障 を 守 る 公 共 財 で ある 安 倍 政 権 による 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 決 定 は アジア 全 体 の 平 和 に 対 する 日 本 の 貢 献 であり 台 湾 海 峡 の 安 全 保 障 にもプラスに 働 くであろう と 述 べている これに 対 し 中 台 融 和 を 重 視 する 与 党 国 民 党 系 の 研 究 者 や 台 湾 当 局 の 元 幹 部 は 台 湾 は 国 家 として 日 本 に 承 認 されていないことから 日 本 の 集 団 的 自 衛 権 の 適 用 対 象 にはならず 台 湾 有 事 の 際 日 本 が 武 力 行 使 に 出 るといった 安 易 な 考 え 方 を 持 つべきではない とした 上 で さ

らに 日 本 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 で 軍 拡 競 争 をもたらすパンドラの 箱 を 開 けた と の 否 定 的 コメントを 発 表 した( 楊 永 明 元 国 家 安 全 会 議 副 秘 書 長 の 発 言 )と 報 じられてい る それぞれの 政 治 的 立 場 はさておき 少 なくとも 報 道 ベースで 確 認 される 限 り これら 台 湾 関 係 者 のコメントから 我 が 国 の 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 と 台 湾 問 題 との 関 係 性 につ いて それ 以 上 に 踏 み 込 んだ 分 析 は 看 取 されない 我 が 国 の 主 要 紙 を 見 る 限 り 我 が 国 の 集 団 的 自 衛 権 と 台 湾 問 題 との 関 連 性 について 触 れ た 記 事 論 説 は 見 当 たらず 識 者 研 究 者 による 言 及 も 乏 しい 国 会 ( 衆 外 務 委 員 会 ) では 今 年 4 月 16 日 に 村 上 政 俊 議 員 ( 維 新 )が 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 が 想 定 される 地 理 的 範 囲 について 問 い 5 月 16 日 には 渡 辺 周 議 員 ( 民 主 )が 1997 年 の 日 米 ガイドライン 見 直 しに 言 及 しつつ 台 湾 有 事 に 際 して 我 が 国 が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 することも 想 定 され るのかと 政 府 に 質 した 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 前 であったこともあり 政 府 は 集 団 的 自 衛 権 を 含 めて 政 府 の 方 針 がまだ 確 定 していないので 具 体 的 な 対 応 についてもまだ 確 定 的 な ことは 言 えない ( 石 井 外 務 省 国 際 法 局 長 答 弁 :2014.5.16) 今 段 階 で( 集 団 的 自 衛 権 行 使 の) 地 理 的 範 囲 等 々を 含 めて 確 たるものをいうのは 不 適 切 であり 今 後 の 議 論 を 踏 ま えて 政 府 としてのしっかりとした 方 針 が 固 まった 後 にお 答 えするべき ( 岸 田 外 相 答 弁 : 2014.4.16)との 答 弁 でいずれも 回 答 を 避 けている ただし 上 記 の 渡 辺 周 議 員 の 質 問 に 対 し 外 務 省 の 石 井 国 際 法 局 長 は さらにつっこん だ 説 明 を 行 っており これが 集 団 的 自 衛 権 と 台 湾 問 題 との 関 係 性 に 関 して 現 時 点 まで に 日 本 政 府 が 行 った 最 も 包 括 的 な 説 明 と 言 える 以 下 は 石 井 局 長 の 答 弁 内 容 である 1 集 団 的 自 衛 権 とは 国 際 法 上 自 国 と 密 接 な 関 係 にある 外 国 に 対 する 武 力 攻 撃 を 自 国 が 直 接 攻 撃 されていないにもかかわらず 実 力 をもって 阻 止 することが 正 当 化 される 権 利 のこと 2 国 際 法 上 台 湾 が 国 ないし 外 国 に 当 たるのかについて 我 が 国 はサンフランシスコ 平 和 条 約 第 2 条 により 台 湾 に 対 する 全 ての 権 利 権 原 及 び 請 求 権 を 放 棄 しているので 台 湾 の 法 的 地 位 に 対 して 独 自 の 認 定 を 行 う 立 場 にはない 3 我 が 国 は 従 来 から 台 湾 問 題 が 関 係 当 事 者 の 話 し 合 いによって 平 和 的 に 解 決 されること を 強 く 希 望 しているので それと 異 なる 前 提 において 議 論 することは 適 当 ではない つまり サンフランシスコ 平 和 条 約 を 受 け 入 れた 我 が 国 は 台 湾 が 国 であるか 否 かを 判 断 できないので 台 湾 への 第 3 国 による 武 力 行 使 を 我 が 国 が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 するための 要 件 としての 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 外 国 への 武 力 行 使 と 見 なしうるか についてもはっきり 言 えないが とにかく 我 が 国 は 台 湾 と 中 国 に 対 して 平 和 的 に 問 題 を 解

決 してほしいと 言 ってきているのだから 平 和 的 問 題 解 決 に 失 敗 して 台 湾 有 事 に 発 展 する ことを 前 提 とした 議 論 はすべきでない(したくない) ということであろう 交 流 協 会 台 北 事 務 所 代 表 を 務 めた 池 田 維 立 命 館 大 学 客 員 教 授 は 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 閣 議 決 定 により 台 湾 が 日 本 と 密 接 な 関 係 を 有 しており 台 湾 が 武 力 攻 撃 を 受 ける ことが 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ たり 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある と 日 本 政 府 が 判 断 する 場 合 自 衛 隊 は 武 力 行 動 を 採 りう るようになる と 述 べたとされる(2014.7.2 付 自 由 時 報 電 子 報 ) しかしながら 台 湾 を 国 家 と 扱 うことは 我 が 国 が 台 湾 は 中 華 人 民 共 和 国 の 領 土 の 不 可 分 の 一 部 であ る という 中 国 政 府 の 立 場 を 十 分 理 解 し 尊 重 する 旨 コミットし かつ ポツダム 宣 言 第 8 項 に 基 づく 立 場 を 堅 持 する と 宣 言 した 日 中 共 同 声 明 (1972 年 )との 整 合 性 にお いて 困 難 が 伴 う したがって 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 と 上 述 の 外 務 省 国 際 法 局 長 の 答 弁 を 忠 実 に 踏 まえるならば 我 が 国 が 台 湾 を 外 国 として 扱 い 台 湾 有 事 に 際 して 台 湾 を 助 けるために 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 するということは 現 実 的 には 考 えにくい しかしながら 台 湾 有 事 に 米 国 が 軍 事 介 入 する 場 合 は 状 況 が 大 きく 異 なってくる 米 国 には 台 湾 関 係 法 という 国 内 法 がある 同 法 は 平 和 的 手 段 以 外 によって 台 湾 の 将 来 を 決 定 しようとする 試 みは ボイコット 封 鎖 を 含 むいかなるものであれ 西 太 平 洋 地 域 の 平 和 と 安 全 に 対 する 脅 威 であり 合 衆 国 の 重 大 関 心 事 と 考 える ( 第 2 条 2-4)とした 上 で 台 湾 人 民 の 安 全 または 社 会 経 済 の 制 度 に 危 害 を 与 えるいかなる 武 力 行 使 または 他 の 強 制 的 な 方 式 にも 対 抗 しうる 合 衆 国 の 能 力 を 維 持 する ( 第 2 条 2-6) 大 統 領 は 台 湾 人 民 の 安 全 や 社 会 経 済 制 度 に 対 するいかなる 脅 威 ならびにこれによって 米 国 の 利 益 に 対 して 引 き 起 こされるいかなる 危 険 についても 直 ちに 議 会 に 通 告 するよう 指 示 される 大 統 領 と 議 会 は 憲 法 の 定 める 手 続 きに 従 い この 種 のいかなる 危 険 にも 対 抗 するため とるべき 適 切 な 行 動 を 決 定 しなければならない ( 第 3 条 3)と 定 めている この 法 律 は 中 国 の 対 台 湾 武 力 行 使 に 対 する 米 国 の 軍 事 介 入 を 確 約 するものではなく 米 国 が 軍 事 介 入 するか 否 かは 有 事 に 至 った 経 緯 や 米 中 パワーバランスを 含 め その 時 々の 状 況 に 応 じて 米 国 の 政 治 指 導 者 が 判 断 することになろう しかしながら その 可 能 性 が1% 未 満 であろ うと 台 湾 有 事 に 軍 事 介 入 する 可 能 性 が 米 国 の 法 律 に 明 記 されていることの 重 みは 米 国 の 同 盟 国 であり かつ 中 国 台 湾 の 近 隣 に 位 置 する 我 が 国 として 常 に 念 頭 に 置 いて おく 必 要 がある 米 国 が 台 湾 有 事 に 軍 事 的 に 介 入 する 場 合 沖 縄 米 軍 基 地 等 が 攻 撃 対 象 となることも 排 除 されない 沖 縄 の 米 軍 基 地 が 他 国 の 軍 事 攻 撃 に 遭 えば それは 日 本 本 土 に 対 する 攻 撃 とな り すなわち 日 本 有 事 となるが そうではなく 日 本 の 領 域 ( 領 空 領 海 ) 外 で 米 軍 艦 船

航 空 機 が 攻 撃 に 遭 う 場 合 我 が 国 は 一 義 的 には 1997 年 の 日 米 新 ガイドラインと 1999 年 制 定 のいわゆる 周 辺 事 態 法 に 基 づいて 対 処 することになっている 周 辺 事 態 法 は そ の ま ま 放 置 す れ ば 我 が 国 に 対 する 直 接 の 武 力 攻 撃 に 至 るおそれのある 事 態 等 我 が 国 周 辺 の 地 域 における 我 が 国 の 平 和 及 び 安 全 に 重 要 な 影 響 を 与 える 事 態 (いわゆる 周 辺 事 態 )に 際 し 我 が 国 領 域 並 びに 現 に 戦 闘 行 為 が 行 われておらず かつ そこで 実 施 される 活 動 の 期 間 を 通 じて 戦 闘 行 為 が 行 われることがないと 認 められる 我 が 国 周 辺 の 公 海 及 びその 上 空 の 範 囲 (いわゆる 後 方 地 域 )において 武 力 による 威 嚇 又 は 武 力 の 行 使 に 当 たらないような 対 応 を 採 ることを 定 めた 法 律 である 日 本 有 事 には 至 らない 周 辺 事 態 の 発 生 時 に 我 が 国 は 日 米 新 ガイドラインと 周 辺 事 態 法 に 基 づいて 負 傷 し た( 米 国 ) 戦 闘 員 の 救 助 捜 索 非 戦 闘 員 の 退 避 船 舶 検 査 の 実 施 を 行 ったり 我 が 国 施 設 や 後 方 支 援 ( 補 給 輸 送 整 備 等 )を 米 軍 に 提 供 することが 想 定 されている なお 周 辺 事 態 とは 地 理 的 概 念 ではなく あくまで 事 態 の 性 質 に 照 らして 周 辺 事 態 に 当 たるか 否 かを 日 本 政 府 が 個 別 に 判 断 することになっており 集 団 的 自 衛 権 行 使 の 要 件 とほぼ 同 じロジックである 当 時 ありうべき 周 辺 事 態 として 日 本 政 府 関 係 者 の 念 頭 にあったのは 朝 鮮 半 島 有 事 であったが 1995~96 年 の 台 湾 海 峡 ミサイル 危 機 に 加 え 中 国 が いわゆる 周 辺 事 態 に 台 湾 有 事 が 含 まれることは 決 して 認 められない との 牽 制 を 強 めたこともあり 周 辺 事 態 法 審 議 の 過 程 では 台 湾 有 事 との 絡 みにも 注 目 が 集 まったが 日 本 政 府 は 今 に 至 るまで 台 湾 有 事 が 周 辺 事 態 に 当 たるとも 当 たらないとも 明 言 していない 今 年 5 月 の 安 保 法 制 懇 の 報 告 書 には 我 が 国 が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 するのに 相 応 しいと 同 懇 談 会 が 考 えるいくつかの 具 体 例 が 示 されている その 中 には 被 攻 撃 国 を 支 援 する 米 国 その 他 の 国 々の 艦 船 等 が 攻 撃 されているときには これを 排 除 するよう 我 が 国 が 協 力 する 必 要 がある この 点 に 関 連 して 現 行 の( 略 ) 周 辺 事 態 安 全 確 保 法 では 自 衛 隊 によ る 後 方 地 域 支 援 又 は 後 方 地 域 捜 索 救 助 活 動 は 後 方 地 域 すなわち 我 が 国 領 域 並 びに 現 に 戦 闘 行 為 が 行 われておらず かつ そこで 実 施 される 活 動 の 期 間 を 通 じて 戦 闘 行 為 が 行 われることがないと 認 められる 我 が 国 周 辺 の 公 海 及 びその 上 空 の 範 囲 でしか 実 施 でき ( 中 略 ) ないなど 米 国 に 対 する 支 援 も 限 定 的 であり また そもそも 米 国 以 外 の 国 に 対 する 支 援 は 規 定 されておらず 不 可 能 である との 指 摘 がある 台 湾 有 事 とこれへの 米 国 の 軍 事 介 入 を 想 定 した 場 合 それが 中 国 による 日 本 本 土 ( 含 在 日 米 軍 基 地 )への 直 接 攻 撃 に 発 展 しない 限 り これまで 我 が 国 が 米 軍 に 対 して 行 う 支 援 はあくまで 後 方 支 援 の みであった しかしながら 集 団 的 自 衛 権 の 限 定 的 行 使 が 容 認 されることにより それが 自 国 領 域 への 攻 撃 ではなく 公 海 上 での 米 軍 機 艦 船 への 軍 事 攻 撃 であったとしても 我 が 国 の 政 府 が 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 か

ら 覆 される 明 白 な 危 険 がある と 判 断 すれば 米 軍 に 攻 撃 を 加 えた 相 手 ( 中 国 )に 対 して 自 衛 隊 が 攻 撃 を 加 えることが 可 能 となったのである このことが 我 が 国 と 中 国 との 安 全 保 障 関 係 において 持 つ 意 味 は 重 い この 点 こそ 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 の 閣 議 決 定 を 受 け て かつての 周 辺 事 態 法 と 1997 年 日 米 ガイドラインに 基 づく 台 湾 有 事 のシナ リオより 大 きく 一 歩 踏 み 込 んだ 対 応 が 我 が 国 において 真 剣 に 検 討 されるべき 段 階 に 入 っ たと 考 える 所 以 である 今 回 の 閣 議 決 定 において 集 団 的 自 衛 権 行 使 の 要 件 には 厳 しい 限 定 がかけられており 我 が 国 が いかなる 状 況 において いかなる 態 様 で 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 するのかについては 今 後 の 日 米 協 議 や 国 内 法 整 備 のプロセスを 見 極 める 必 要 がある しかしながら 中 台 軍 事 衝 突 + 米 軍 介 入 というシナリオの 可 能 性 が 僅 かでも 存 在 する 限 り そして 日 中 両 国 が 戦 火 を 交 えるという 事 態 がいかに 深 刻 なことであるか 考 えれば 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 し うるようになった 我 が 国 が 台 湾 有 事 に 如 何 に 対 処 するのかという 議 論 を 表 面 的 な 中 台 融 和 イメージに 隠 れた 盲 点 としてはならない 万 が 一 台 湾 有 事 が 発 生 した 場 合 に 如 何 に 対 処 すべきかという 問 いが 我 が 国 の 安 全 保 障 政 策 におけるきわめて 重 要 な Hidden Agenda であることを 踏 まえ 安 全 保 障 と 台 湾 政 策 に 関 する 議 論 がさらに 深 められていくことを 期 待 したい ( 了 )