平成24(2012)年3月25日

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●電力自由化推進法案

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

文化政策情報システムの運用等

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

公表表紙

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

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(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

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2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

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は 共 有 名 義 )で 所 有 権 保 存 登 記 又 は 所 有 権 移 転 登 記 を された も の で あ る こと (3) 居 室 便 所 台 所 及 び 風 呂 を 備 え 居 住 の ために 使 用 す る 部 分 の 延 べ 床 面 積 が 5 0 平 方 メ ー ト ル 以 上

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

〔自 衛 隊〕


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基 地 交 付 金 等 に 関 す る 要 望 書

した 開 示 決 定 等 に 当 たっては, 法 11 条 を 適 用 して, 平 成 23 年 5 月 13 日 まで 開 示 決 定 等 の 期 限 を 延 長 し, 同 年 4 月 11 日 付 け 防 官 文 第 号 により,1 枚 目 を 一 部 開 示 した そして, 同 年

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

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頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

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3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

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16 日本学生支援機構

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

Transcription:

政 策 提 言 平 成 24(2012) 年 3 月 25 日 日 本 李 登 輝 友 の 会 会 長 : 小 田 村 四 郎 副 会 長 : 岡 崎 久 彦 加 瀬 英 明 黄 文 雄 田 久 保 忠 衛 中 西 輝 政 アジア 太 平 洋 地 域 のパワーバランスを 大 きく 変 える 要 因 の 1 つとして 台 湾 の 今 後 の 行 方 が 挙 げられる 中 国 の 急 激 な 軍 備 増 強 により 中 台 間 の 軍 事 バランスが 中 国 に 有 利 に 傾 きつつあることに 加 えて 対 中 融 和 政 策 を 掲 げる 馬 英 九 政 権 の 2 期 目 において は 台 湾 の 対 中 経 済 依 存 度 の 高 まりを 利 用 した 中 国 の 統 一 攻 勢 がさらに 強 まる 可 能 性 が 高 い 今 年 1 月 14 日 台 湾 の 総 統 選 挙 において 台 湾 の 人 々が 親 中 派 の 馬 英 九 総 統 に 政 権 を 委 ねた 最 大 の 理 由 の 1 つとして 中 国 による 併 呑 は 望 まないものの 中 国 の 軍 事 力 が 急 速 に 増 強 された 結 果 台 湾 有 事 の 際 に 米 軍 に 対 して 接 近 阻 止 領 域 拒 否 が 可 能 な 能 力 を 備 えるに 至 ったことから 米 国 の 台 湾 防 衛 に 対 する 不 安 感 が 高 まり それが 国 民 の 馬 政 権 の 対 中 融 和 路 線 を 受 け 入 れる 結 果 に 繋 がったことが 考 えられる しかし 選 挙 の 結 果 に 対 するコメントを 見 る 限 り 日 米 両 国 政 府 は いずれも 台 湾 に 対 中 関 係 の 安 定 だけを 望 んでいるとしか 考 えられず 今 後 日 米 両 国 がより 強 い 台 湾 との 連 帯 の 姿 勢 を 示 さない 限 り 中 国 の 強 い 影 響 力 の 下 に 置 かれた 台 湾 は やがて 中 国 に 呑 みこまれる 可 能 性 が 高 い このような 問 題 意 識 を 出 発 点 として 日 本 李 登 輝 友 の 会 では 昨 年 8 月 7 日 日 米 台 の 安 全 保 障 等 に 関 する 勉 強 会 を 発 足 させ 研 究 を 続 けてきたが 3 月 3 日 の 第 5 回 勉 強 会 において 策 定 された 本 政 策 提 言 はその 後 常 任 役 員 会 の 審 議 を 経 て 決 定 し 理 事 会 諮 問 及 び 総 会 承 認 を 経 て 確 定 された この 政 策 提 言 は 野 田 佳 彦 内 閣 総 理 大 臣 をはじめ 衆 議 院 議 長 と 参 議 院 議 長 関 係 大 臣 に 提 出 されると 共 に 日 本 李 登 輝 友 の 会 のホームページ 上 で 公 開 される なお これまでの 勉 強 会 には 川 村 純 彦 ( 座 長 ) 石 川 公 弘 梅 原 克 彦 金 田 秀 昭 小 林 正 成 佐 藤 守 澤 英 武 濱 口 和 久 藤 井 厳 喜 三 宅 教 雄 宗 像 隆 幸 連 根 藤 柚 原 正 教 ( 事 務 局 長 )の 各 氏 が 参 加 し 勉 強 会 の 成 果 を 取 りまとめた 論 考 については 金 田 秀 昭 梅 原 克 彦 の 両 氏 に 執 筆 いただいた ( 座 長 川 村 純 彦 ) * 別 添 資 料 1 論 考 : 金 田 秀 昭 中 国 の 覇 権 的 な 海 洋 進 出 とわが 国 の 対 応 2 論 考 : 梅 原 克 彦 我 が 国 と 台 湾 の 経 済 協 力 1

政 策 提 言 1: 集 団 的 自 衛 権 に 関 する 現 行 憲 法 解 釈 を 修 正 せよ 台 湾 が 中 国 の 支 配 下 に 置 かれることは 東 シナ 海 南 シナ 海 及 び 西 太 平 洋 即 ち 日 本 周 辺 海 域 が 中 国 の 影 響 下 に 入 ることを 意 味 し 我 が 国 も 深 刻 な 安 全 保 障 上 の 危 機 に 直 面 することとなろう 我 が 国 にとっても 悪 夢 である 今 や 日 本 は 座 して 台 湾 が 中 国 に 併 呑 されるのを 見 守 るか 台 湾 との 連 携 を 推 進 し て 中 国 の 外 洋 進 出 を 牽 制 するかの 岐 路 に 直 面 しており 日 米 両 国 は 同 盟 関 係 をさらに 強 化 すると 共 に 価 値 観 を 共 有 する 台 湾 の 戦 略 的 重 要 性 を 再 認 識 して 新 しい 対 中 戦 略 を 策 定 し 日 米 同 盟 と 台 湾 の 協 力 関 係 を 更 に 深 化 させるべき 時 期 に 来 ている 今 年 1 月 発 表 された 米 国 の 新 国 防 戦 略 では 沖 縄 グアム オーストラリアな どに 即 応 性 の 高 い 兵 力 を 分 散 配 備 することで 中 国 に 対 する 抑 止 力 を 図 る 考 えである しかし この 戦 略 では 中 国 による 南 西 諸 島 に 対 する 侵 略 や 東 シナ 海 の 安 全 に 対 する 脅 威 の 増 大 といった 事 態 に 即 応 すべき 米 軍 兵 力 が 減 少 する 事 態 が 生 ずることは 必 至 であ り 日 米 両 国 は そのような 事 態 にあっても 即 応 能 力 を 低 下 させないという 明 確 なメ ッセージを 発 信 するが 必 要 である そのためには まず 日 本 が 周 辺 地 域 の 安 全 保 障 態 勢 に 主 体 性 を 発 揮 することが 求 め られる いま 将 に 自 国 の 安 全 とアジア 太 平 洋 地 域 の 平 和 と 安 定 にとって 日 米 同 盟 の 強 化 が 最 重 要 課 題 となっており そのためには 実 効 性 のある 防 衛 力 の 整 備 及 び 所 要 の 法 的 整 備 に 加 えて 日 米 の 同 盟 関 係 を 対 等 なものとすることが 不 可 欠 である 集 団 的 自 衛 権 は 保 持 しているが 行 使 できない という 現 行 の 憲 法 解 釈 が 日 米 同 盟 の 緊 密 化 を 阻 害 し その 実 効 性 を 強 化 する 上 で 大 きな 足 かせとなってきたことは 否 定 できない 事 実 である この 問 題 を 早 急 に 解 決 し 国 家 としての 強 い 決 意 を 内 外 に 示 す 上 で 最 も 効 果 的 な 方 策 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に 関 する 政 府 の 現 行 憲 法 解 釈 を 修 正 することである 憲 法 改 正 を 待 たずとも 解 釈 の 修 正 によって 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 可 能 とすること の 方 が 要 する 時 間 とエネルギーの 両 面 から 見 てもより 現 実 的 であり かつ 実 際 の 作 戦 実 施 においても 共 同 対 処 能 力 を 飛 躍 的 に 向 上 させることによって 抑 止 力 を 更 に 向 上 させることが 期 待 できる ここに 集 団 的 自 衛 権 に 関 する 現 行 憲 法 解 釈 の 修 正 を 提 言 する 2

政 策 提 言 2: 台 湾 との 自 由 貿 易 協 定 (FTA)を 早 期 に 締 結 せよ 日 本 と 台 湾 とは その 緊 密 な 貿 易 経 済 関 係 を 考 えれば 二 国 間 の 自 由 貿 易 協 定 (F TA)を 締 結 するに 最 もふさわしい 間 柄 である もとより 日 台 両 国 は 世 界 貿 易 機 関 (WTO)の 正 式 メンバーであることから WTO 上 のルールに 則 った 例 外 的 な 措 置 である 二 国 間 のFTAを 締 結 することには 国 際 法 上 の 問 題 もない 加 えて 台 湾 側 の 官 民 双 方 とも 日 本 とのFTAの 締 結 についての 熱 意 を 持 っていることは 周 知 の とおりである しかしながら 日 台 両 国 間 においては 2002 年 に 民 間 ベースの 共 同 研 究 が 採 択 され て 以 降 ほとんど 進 展 がないのが 現 状 である これは ひとえに 歴 代 の 日 本 の 政 権 そしてそれを 後 押 しすべき 日 本 の 経 済 界 が 日 台 FTAの 締 結 について 北 京 の 顔 色 を 窺 い 北 京 の 反 対 に 気 兼 ねするという 悪 しき 弊 害 が 今 日 に 至 るまで 続 いてい るからに 他 ならない アジア 太 平 洋 地 域 における 各 種 の 地 域 経 済 統 合 の 動 きが 加 速 している 現 在 日 本 と しても 外 交 通 商 政 策 上 の 有 力 なカードとなり 得 る 日 台 FTAについて 東 アジア 地 域 の 安 全 保 障 をはじめとする 政 治 的 な 要 因 を 十 分 考 慮 に 入 れつつ 思 い 切 って 早 期 に 締 結 すべきことをここに 提 言 する 3

日 本 李 登 輝 友 の 会 政 策 提 言 資 料 論 考 : 中 国 の 覇 権 的 な 海 洋 進 出 とわが 国 の 対 応 岡 崎 研 究 所 理 事 金 田 秀 昭 中 国 ( 中 華 人 民 共 和 国 )の 将 来 動 向 は 色 々な 意 味 で 地 域 や 国 際 社 会 の 重 要 な 関 心 事 となっている 取 り 分 け 中 国 の 海 洋 を 巡 る 覇 権 的 行 動 が 及 ぼす 地 域 安 全 保 障 へ の 懸 念 が 増 大 している 1978 年 に 社 会 主 義 市 場 経 済 のメカニズムを 導 入 して 改 革 開 放 路 線 をとって 以 降 中 国 は 政 治 的 経 済 的 に 地 域 大 国 として 成 長 し 続 けている 他 方 軍 事 面 で は 核 兵 器 の 近 代 化 各 種 弾 道 巡 航 ミサイルや 海 空 軍 力 の 急 速 な 近 代 化 増 勢 宇 宙 やサイバーの 強 化 を 進 めており また 近 年 は 東 シナ 海 南 シナ 海 西 太 平 洋 などの 海 域 で 覇 権 的 な 行 動 をとるようになってきた こういった 中 国 の 海 洋 における 覇 権 的 行 動 は 日 本 や 台 湾 を 含 む 北 東 アジア 東 南 アジア 及 び 南 アジア 地 域 の 諸 国 との 摩 擦 を 生 じ 時 としてホットな 状 況 を 生 起 させるなど 地 域 や 国 際 社 会 の 警 戒 心 を 呼 び 起 こしている こういった 中 国 の 動 向 に 対 し 海 洋 国 家 日 本 は 如 何 に 対 応 すべきであろ うか 1. 中 国 の 覇 権 的 な 海 洋 侵 出 1970 年 代 に 南 シナ 海 で 始 まった 中 国 の 海 洋 侵 出 は 80 年 代 から 東 シナ 海 や 日 本 の 領 域 周 辺 更 には 西 太 平 洋 の 日 本 の 排 他 的 経 済 水 域 (EEZ:Economic Exclusive Zone) で その 勢 いを 徐 々に 拡 大 していくようになった 先 ずは 東 シナ 海 での 海 底 資 源 の 開 発 のため 日 中 中 間 線 西 側 海 域 の 資 源 探 査 のため のボーリングから 始 め 90 年 代 には 平 湖 ガス 田 2000 年 以 降 は 中 間 線 近 傍 の 春 暁 ( 日 本 名 : 白 樺 )などのガス 田 を 建 設 するに 至 っている 一 方 尖 閣 諸 島 を 巡 る 係 争 に 関 連 しては 1971 年 以 降 現 在 に 至 るまで 中 国 の 軍 艦 公 船 漁 船 民 間 団 体 などによる わが 国 主 権 への 挑 発 行 為 が 頻 発 している 10 年 には 中 国 漁 船 が 領 海 で 取 り 締 まり 中 の 日 本 の 巡 視 船 に 故 意 に 衝 突 するという 事 態 が 発 生 した 一 方 中 国 海 軍 の 水 上 部 隊 ( 潜 水 艦 を 伴 う 場 合 もある)による 日 本 周 辺 海 域 への 侵 出 は 90 年 代 から 東 シナ 海 西 方 で 編 隊 航 行 などが 確 認 されていたが 2000 年 の 情 報 収 集 艦 による 日 本 周 航 を 皮 切 りに 01 年 以 降 は 日 本 の EEZ 内 となる 小 笠 原 諸 島 周 辺 硫 黄 島 から 南 西 諸 島 に 掛 けての 西 太 平 洋 海 域 更 にはグアム 島 周 辺 海 域 などで 対 潜 作 戦 用 と 見 られる 海 洋 調 査 が 盛 んに 行 われ 04 年 には 漢 級 原 潜 による 不 法 な 潜 航 領 海 侵 入 事 案 が 06 年 には 宋 級 潜 水 艦 による 米 空 母 近 傍 浮 上 事 案 が 沖 縄 周 辺 海 域 で 生 起 した 近 年 は 多 種 多 数 の 水 上 部 隊 による 演 習 訓 練 を 盛 んに 行 うようになった 08 年 に 4

4 隻 の 駆 逐 艦 部 隊 が 日 本 海 から 侵 入 して 日 本 を 周 航 して 以 降 08 年 に 更 に 1 回 ( 4 隻 ) 09 年 に 1 回 (5 隻 ) 10 年 に 3 回 (6 隻 10 隻 2 隻 ) 11 年 に 3 回 (11 隻 6 隻 5 隻 ) 12 年 では 現 在 まで1 回 (4 隻 ) いずれもわが 国 の 南 西 諸 島 や 台 湾 近 海 を 通 航 するなど して 沖 ノ 鳥 島 周 辺 を 含 む 西 太 平 洋 やフィリピン 海 に 侵 出 し 各 種 洋 上 訓 練 を 行 って いることが 確 認 されている また 11 年 には 水 上 艦 2 隻 が 対 馬 海 峡 を 通 って 日 本 海 で 行 動 した このように 中 国 海 軍 は 沿 岸 から 近 海 そして 外 洋 ( 遠 海 )へとその 行 動 範 囲 を 逐 次 拡 大 し 遂 には 西 太 平 洋 などで 定 常 的 に 外 洋 訓 練 を 繰 り 返 し 行 うようになった こ れには 国 内 外 に 向 けた 外 洋 での 行 動 能 力 や 総 合 戦 闘 力 の 誇 示 あるいは EEZ 基 点 を 巡 って 日 中 の 争 点 ( 岩 か 島 か)となっている 沖 ノ 鳥 島 周 辺 での 政 治 的 な 示 威 行 動 など の 意 味 があると 指 摘 できよう より 軍 事 的 には 米 国 や 日 本 の 対 応 を 研 究 し データ の 蓄 積 と 分 析 彼 我 の 強 弱 点 の 把 握 教 訓 を 取 り 込 み 今 後 の 戦 略 戦 術 構 築 に 反 映 させる 意 図 もあると 考 えられる 2. 中 国 の 海 洋 戦 略 80 年 代 に 鄧 小 平 の 信 任 を 受 けた 海 軍 司 令 員 の 劉 華 清 は 台 湾 武 力 統 一 に 加 えて 自 国 防 衛 及 び 天 然 資 源 確 保 のため 日 本 列 島 南 西 諸 島 台 湾 フィリピン ボルネオ を 結 ぶ 第 1 列 島 防 衛 線 を 絶 対 海 上 防 衛 線 とする 近 海 防 御 戦 略 を 策 定 する こ の 防 衛 線 内 には 中 国 の 核 心 的 利 益 である 台 湾 のみならず わが 国 の 尖 閣 諸 島 を 含 む 東 シナ 海 ASEAN 諸 国 が 領 有 権 を 主 張 する 南 シナ 海 をも 包 摂 する 中 国 は 自 国 防 衛 上 の 絶 対 防 衛 圏 として 設 定 した 第 1 列 島 防 衛 線 と 中 国 大 陸 南 岸 線 で 囲 まれる 南 シナ 海 を 聖 域 化 する 一 方 東 シナ 海 の 制 域 化 に 乗 り 出 し 更 に 戦 力 の 拡 充 と 外 洋 行 動 能 力 の 向 上 に 伴 い 中 国 の 前 程 防 衛 圏 ( 海 防 辺 彊 )を 東 方 に 拡 大 して 千 島 列 島 西 部 小 笠 原 諸 島 マリアナ 諸 島 (グアム)からニューギニア 島 に 至 る 概 ね 東 経 150 度 の 第 2 列 島 防 衛 線 の 内 側 海 域 について 戦 略 的 な 緩 衝 帯 化 を 目 指 し 始 めた この 緩 衝 帯 には 我 が 国 の 太 平 洋 島 嶼 や EEZ 重 要 なシーレーン( 軍 事 交 易 )が ほぼすっぽりと 入 る 中 国 海 軍 はこの 緩 衝 帯 を 究 極 的 には 海 自 の 能 力 を 凌 駕 し 西 太 平 洋 での 覇 権 を 争 う 米 海 軍 の 行 動 を 抑 制 し 台 湾 問 題 などが 生 起 した 場 合 は 海 自 や 米 海 軍 来 援 部 隊 の 前 程 阻 止 を 図 る 海 域 と 位 置 付 けている そして 近 海 防 御 戦 略 を 完 整 するため この 海 域 で 活 動 可 能 な 戦 略 原 潜 攻 撃 潜 水 艦 を 中 心 に 大 型 の 水 上 戦 闘 艦 空 中 給 油 可 能 な 基 地 航 空 機 対 艦 弾 道 巡 航 ミサイルなどの 増 勢 を 進 め いわゆる 近 接 阻 止 地 域 拒 否 (A2/AD) 構 想 の 構 築 を 目 指 している 近 年 は 米 空 母 を 主 目 標 とする 対 艦 弾 道 ミサイルや 初 の 航 空 母 艦 の 就 役 も 近 いと 見 られている それに 連 れて 中 国 海 軍 の 戦 略 は 従 来 の 近 海 防 御 の 概 念 を 超 えて 2007 年 胡 錦 濤 主 席 による 遠 海 防 衛 の 提 起 に 至 るようになった 5

3. 中 国 の 軍 事 力 増 強 中 国 の 軍 事 力 近 代 化 においては 取 り 分 け 核 心 的 利 益 である 台 湾 問 題 への 対 処 具 体 的 には 台 湾 の 独 立 および 外 国 軍 隊 による 台 湾 の 支 援 を 阻 止 する 能 力 の 向 上 が 最 優 先 の 課 題 として 念 頭 に 置 かれているが 近 年 は 台 湾 問 題 への 対 処 を 遥 かに 超 えた レベルの 任 務 遂 行 を 可 能 とする 能 力 の 獲 得 に 鋭 意 取 り 組 んでいる 2010 年 には 75 隻 の 近 代 的 な 水 上 艦 戦 略 原 潜 を 含 む 60 隻 の 潜 水 艦 などを 有 し 台 湾 海 軍 どころか 海 上 自 衛 隊 をも 上 回 る 陣 容 を 整 えるに 至 った また 従 来 から 専 門 家 の 間 で 指 摘 のあった 中 国 海 軍 の 弱 点 とされる 後 方 支 援 能 力 の 改 善 拡 充 にも 注 力 して おり 急 ピッチで 増 強 中 の 水 陸 両 用 艦 の 整 備 と 併 せ 台 湾 本 島 のみならず 尖 閣 諸 島 や 南 西 諸 島 など わが 国 の 南 西 方 面 の 離 島 への 攻 略 能 力 も 整 えようとしている 中 国 は 軍 事 力 近 代 化 の 長 期 的 な 計 画 として 国 防 及 び 軍 近 代 化 の 3 段 階 発 展 戦 略 を 示 し 2010 年 までに 基 礎 を 確 立 し 2020 年 までに 機 械 化 を 基 本 的 に 実 現 させ 情 報 化 建 設 において 重 大 な 進 展 を 成 し 遂 げ 21 世 紀 中 葉 には 目 標 を 基 本 的 に 実 現 する との 目 標 を 掲 げている 海 軍 は 人 民 解 放 軍 の 戦 略 軍 種 として 位 置 付 けられ 近 海 での 総 合 作 戦 能 力 戦 略 抑 止 反 撃 能 力 を 向 上 させ 更 に 遠 海 での 国 際 協 力 及 び 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 の 脅 威 対 応 能 力 を 発 展 させることが 求 められている これらから 推 定 すれば 中 国 は 軍 事 力 近 代 化 を 鋭 意 継 続 する 中 でも 海 上 戦 力 の 増 強 に 重 点 を 置 き 戦 略 原 潜 や 攻 撃 型 潜 水 艦 ( 原 潜 及 び 通 常 型 ) 航 空 母 艦 を 基 幹 とする 機 動 部 隊 を 中 心 として 各 種 の 近 代 化 戦 闘 艦 艇 支 援 艦 種 に 至 るまでの 総 合 的 な 戦 力 向 上 を 図 っていくものと 見 積 もられる このまま 行 けば 米 国 防 予 算 の 長 期 削 減 とも 相 俟 って 2020 年 には 米 海 軍 を 上 回 る 大 海 軍 (ラムズフェルド 元 米 国 防 長 官 )を 擁 するのは 確 実 とさえ 見 積 もられているのである これが 実 現 するか 否 かはともかく 中 国 が 今 後 増 強 する 海 軍 力 を 背 景 に 益 々 海 洋 における 覇 権 を 強 く 追 求 していく ことは 間 違 いないであろう 中 でも 空 母 艦 隊 の 完 成 による 戦 力 投 射 能 力 の 増 強 は 地 域 の 軍 事 バランス 上 危 険 な 水 準 に 達 し 中 国 政 治 指 導 者 を 軍 事 力 行 使 に 駆 り 立 てる 危 険 性 を 伴 っている また それ 以 前 に 漢 級 原 潜 の 潜 航 領 海 侵 犯 事 案 でも 見 られたように 軍 部 ( 人 民 解 放 軍 ) の 能 力 誇 示 の 冒 険 的 意 欲 を 軍 務 経 験 のない 胡 総 書 記 や 温 首 相 習 近 平 を 始 めとする 後 継 者 などの 政 治 指 導 者 が 統 制 できない 場 面 が 出 てきているのも 危 険 な 兆 候 である 4. 周 辺 海 域 防 衛 と 日 米 同 盟 わが 国 周 辺 海 域 やシーレーンの 安 全 確 保 が 阻 害 されれば 国 際 経 済 のみならず 地 域 や 沿 岸 国 家 の 安 全 保 障 に 大 きな 悪 影 響 を 与 える 特 に 日 本 にとって 海 洋 の 自 由 な 利 用 は 生 存 と 繁 栄 をもたらす 基 本 的 な 要 素 であり シーレーンの 安 全 確 保 は 致 命 的 に 重 要 である しかし シーレーンは 広 域 にわたるものであり 日 本 一 国 だけ で 安 全 を 確 保 することは 出 来 ない 日 本 は 戦 後 一 貫 して 強 力 な 海 洋 防 衛 コミットメントを 提 供 する 米 国 との 連 携 ( 海 6

洋 防 衛 同 盟 )を 重 視 し 維 持 してきた 国 際 安 全 保 障 環 境 が 大 きく 変 わっていく 中 で 長 期 的 に 見 て 国 際 社 会 での 指 導 者 としての 地 位 の 岐 路 にある 米 国 と 国 家 とし ての 盛 衰 の 岐 路 にある 日 本 にとって 海 洋 防 衛 同 盟 の 維 持 は 緊 要 であり 両 国 共 に その 継 続 を 望 んでいる 日 米 は 共 に 長 所 と 短 所 を 持 つが 両 国 の 関 係 においては グローバル パワーとし ての 米 国 と インフルーエンシャル パワーとしての 日 本 が 2 人 3 脚 の 補 完 関 係 を 持 つことが 重 要 である この 関 係 が 維 持 されることにより 日 米 同 盟 は 米 国 と 日 本 の 双 方 にとって 好 ましいことであるのみならず 自 由 民 主 主 義 を 基 調 とする 国 際 シ ステムの 安 定 的 な 維 持 発 展 という 意 味 において 台 湾 を 含 む 地 域 社 会 や 国 際 社 会 に 対 しても 好 ましい 結 果 をもたらすキーファクターであり 続 けよう より 直 截 に 安 全 保 障 の 面 からは 中 国 による 戦 略 的 な 緩 衝 帯 化 の 意 図 が 明 らか となってきた 我 が 国 の 領 域 や EEZ 台 湾 やシーレーンの 防 衛 を 如 何 にして 保 全 する かが 問 題 となる この 海 域 の 地 図 を 見 れば 日 本 列 島 南 西 諸 島 グアム 島 を 結 んだ 三 角 地 帯 と 中 国 の 戦 略 的 な 緩 衝 帯 が ほぼ 一 致 していることが 分 かる 在 沖 縄 海 兵 隊 のグアムなどへの 移 転 を 契 機 として この 三 角 地 帯 や 東 シナ 海 で 米 軍 や 自 衛 隊 が 共 同 で 航 空 機 や 艦 船 の 運 用 を 活 発 に 行 い 制 海 能 力 を 顕 示 することが 出 来 れば 中 国 の 野 望 を 挫 くことも 可 能 となろう 即 ちこの 三 角 地 帯 は 中 国 の 戦 略 的 な 緩 衝 帯 を 脆 弱 化 するための 戦 略 デルタ 海 域 の 意 味 を 持 つ 尤 もこのためには 日 本 自 身 が 原 子 力 推 進 の 攻 撃 潜 水 艦 や 戦 術 航 空 機 を 搭 載 した 航 空 母 艦 を 運 用 するなど 海 空 兵 力 の 充 実 を 図 ることも 必 要 となると 考 えなければならない 5. 死 活 的 に 重 要 な 台 湾 の 防 衛 日 米 にとって 台 湾 の 戦 略 的 重 要 性 は 論 を 待 たない 上 述 した 戦 略 デルタ 海 域 の 西 端 となる 南 西 諸 島 は 台 湾 本 島 と 接 している 潜 水 艦 を 含 む 中 国 海 軍 部 隊 が 第 1 列 島 防 衛 線 から 西 太 平 洋 方 面 に 侵 出 する 際 には 台 湾 近 海 を 通 過 する 台 湾 が 中 国 の 支 配 下 に なれば これがフリーパスとなる 日 米 台 3 カ 国 は 戦 略 デルタ 海 域 の 重 要 性 に 関 する 認 識 を 改 めて 共 有 し より 踏 み 込 んだ 安 全 保 障 防 衛 協 力 関 係 を 構 築 して A2/AD 構 想 の 構 築 を 目 指 す 中 国 の 企 図 を 阻 止 すべきである この 点 に 関 し 日 米 同 盟 には 一 定 の 進 展 がある 2011 年 6 月 にワシントンで 行 われた 日 米 安 全 保 障 協 議 会 (2+2)での 共 同 発 表 においては 中 国 に 対 し 国 際 的 な 行 動 規 範 の 遵 守 を 促 し 軍 事 力 の 近 代 化 や 活 動 についての 開 放 性 や 透 明 性 を 高 める 措 置 を 強 化 する 方 針 を 示 す 一 方 中 国 の 海 洋 侵 出 を 念 頭 に 航 行 自 由 の 原 則 の 維 持 海 上 交 通 の 安 全 や 海 洋 の 安 全 保 障 更 に 日 米 豪 防 衛 協 力 の 強 化 日 米 印 対 話 の 促 進 日 米 ASEAN 安 全 保 障 協 力 の 強 化 などが 明 記 された 日 米 同 盟 は 民 主 党 が 政 権 を 掌 握 して 以 降 普 天 間 移 設 などで 停 滞 している 部 分 もあるが 深 化 している 部 分 もあるのだ しかし 台 湾 防 衛 問 題 は 不 明 確 にされたままだ 中 台 紛 争 が 現 実 のものとなった 場 合 米 国 は 参 戦 する 日 本 は 周 辺 事 態 法 を 発 動 し 7

て 米 軍 を 支 援 するであろう 戦 場 が 日 本 の 領 域 に 近 接 していることから 政 府 が 武 力 攻 撃 事 態 と 認 定 すれば 個 別 的 自 衛 権 により 防 衛 出 動 を 発 動 して 対 処 することとなろ う しかし 参 戦 中 の 米 軍 や 台 湾 軍 に 対 する 軍 事 的 支 援 が 必 要 となった 場 合 はどうする のか 6. 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 日 本 政 府 は 権 利 は 保 有 しているが 行 使 できない とする 憲 法 解 釈 由 来 の 神 学 論 争 から 脱 して 集 団 的 自 衛 権 の 問 題 に 現 実 的 に 向 き 合 うべきである そして 同 盟 国 であ る 米 国 は 当 然 として 必 要 な 場 合 に 台 湾 への 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 可 能 とする 条 件 を 明 確 化 し 更 に 武 力 行 使 の 一 体 化 といった 派 生 する 問 題 も 是 正 するべきで ある そもそも 国 連 憲 章 に 基 づく 集 団 的 自 衛 権 は 自 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が (その 密 接 な 関 係 ゆえに) 客 観 的 に 見 て 自 国 に 対 する 攻 撃 に 等 しく 現 実 にその 危 険 が 明 白 であ(り その 攻 撃 が 自 国 に 対 するものと 認 められ)る 場 合 に 反 撃 する 権 利 のこと であり 被 攻 撃 国 との 密 接 性 および 自 国 防 衛 との 相 関 性 の 2 つを 要 件 とするというのが 国 際 的 に 一 般 的 となっている 解 釈 である しかし 日 本 政 府 の 立 場 は 憲 法 第 9 条 の 下 において 許 容 されている 自 衛 権 の 行 使 は わが 国 を 防 衛 するため 必 要 最 小 限 度 の 範 囲 にとどまるべきものであると 解 してお り 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 することは その 範 囲 を 超 えるものであって 憲 法 上 許 され ない として 個 別 的 自 衛 権 の 行 使 は 許 されるが 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 は 容 認 してい ない 即 ち 日 本 政 府 は 上 記 二 要 件 に 加 え 憲 法 解 釈 に 由 来 するとする 自 衛 行 為 の 限 界 性 を 要 件 として 加 え 結 果 として 日 本 国 憲 法 の 認 めるところでないとの 立 場 を とってきた しかし 国 際 的 な 解 釈 からすれば 自 衛 行 為 の 限 界 性 は 集 団 的 自 衛 権 行 使 の 要 件 としてではなく 集 団 的 自 衛 権 を 実 際 に 行 使 する 際 個 別 的 自 衛 権 の 行 使 の 際 と 同 様 に 自 衛 のための 反 撃 行 為 の 程 度 が 過 剰 であるか 否 かを 忖 度 するものであ って 集 団 的 自 衛 権 行 使 の 要 件 となるべき 性 質 のものではないことは 明 らかである 一 方 日 米 安 保 条 約 ( 第 5 条 )では 日 本 国 の 施 政 の 下 にある 領 域 における い ずれか 一 方 に 対 する 武 力 攻 撃 が 自 国 の 平 和 及 び 安 全 を 危 うくするものであることを 認 め 自 国 の 憲 法 上 の 規 定 及 び 手 続 に 従 って 共 通 の 危 険 に 対 処 するように 行 動 す る としている 即 ち 米 国 が 日 本 の 施 政 権 下 にある 領 域 における 日 本 への 攻 撃 や 日 本 が 日 本 の 施 政 権 下 にある 領 域 における 米 国 への 攻 撃 に 際 し 自 国 の 平 和 及 び 安 全 を 危 うくするものであることを 認 める ことによって 日 米 による 共 通 の 危 険 に 対 処 するような 共 同 行 動 を 執 ると 規 定 されており 明 らかに 日 本 領 域 における 両 国 の 自 衛 のための 集 団 的 な 共 同 防 衛 行 動 を 容 認 しているのである 更 に この 条 文 解 釈 を 敷 衍 すれば 現 代 戦 の 様 相 からして 日 本 国 の 施 政 の 下 には 無 いが 隣 接 した 近 傍 の 地 域 における 米 国 に 対 する 武 力 攻 撃 に 際 しても その 態 様 から 日 本 国 の 施 政 の 下 にある 領 域 における いずれか 一 方 に 対 する 武 力 攻 撃 とみな 8

すことが 論 理 的 に 可 能 であれば これを 自 国 の 平 和 及 び 安 全 を 危 うくするもので あることを 認 め 攻 撃 を 受 けている 米 国 ( 日 本 )に 対 し 日 本 ( 米 国 )が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 することも 可 能 となり 得 るのである 日 米 同 盟 に 関 して 言 えば 以 上 の 通 りであるが 同 盟 国 で 無 い 台 湾 に 対 して 集 団 的 自 衛 権 が 行 使 される 要 件 を 満 たすか 否 かは 議 論 すらされていない わが 国 政 府 は 台 湾 との 国 交 正 常 化 を 図 る 一 方 安 全 保 障 基 本 法 の 制 定 や 憲 法 改 正 を 視 野 に 入 れつつ 速 やかに 集 団 的 自 衛 権 を 含 む 国 家 の 安 全 保 障 に 関 わる 基 本 問 題 に 関 する 議 論 を 開 始 し 国 内 外 に 宣 明 すべきである 他 方 台 湾 自 身 の 努 力 として 期 待 するのは 国 家 としての 周 辺 海 域 やシーレーンの 防 衛 能 力 向 上 の 取 組 みである 私 見 ではあるが 台 湾 として 先 ずは 米 国 から 導 入 中 の 強 化 された C4ISR 機 能 を 有 する 海 空 を 主 体 とする 近 代 的 装 備 の 実 際 的 運 用 に 全 軍 が 速 やかに 習 熟 して 総 合 的 な(Comprehensive) 制 海 制 空 能 力 という 近 代 戦 遂 行 能 力 を 獲 得 するための 努 力 に 国 家 の 総 意 として 邁 進 することが 望 まれる その 上 で 将 来 に 向 け 戦 略 的 対 潜 戦 遂 行 広 域 情 報 収 集 弾 道 巡 航 ミサイル 防 衛 洋 上 防 空 な どの 能 力 の 保 有 や 維 持 向 上 に 鋭 意 努 力 していく 必 要 があると 考 える 9

論 考 : 我 が 国 と 台 湾 の 経 済 協 力 日 本 李 登 輝 友 の 会 常 務 理 事 梅 原 克 彦 1990 年 代 以 降 国 際 経 済 環 境 の 変 化 により 地 域 統 合 の 動 きが 加 速 してきた 結 果 とし て 自 由 貿 易 協 定 (FTA)/ 経 済 連 携 協 定 (EPA)の 締 結 数 が 年 々 増 加 している 現 在 まで 世 界 貿 易 機 関 (WTO)に 通 報 されている 地 域 貿 易 協 定 の 数 は 500 件 近 くに 上 っている FTAとは 国 際 経 済 ルール 上 GATT( 関 税 及 び 貿 易 に 関 する 一 般 協 定 )/W TO( 世 界 貿 易 機 関 ) 体 制 の 例 外 として 位 置 付 けられるものである すなわち GA TTにおいて 妥 当 な 期 間 内 に 構 成 地 域 の 原 産 の 産 品 の 構 成 地 域 間 における 実 質 上 すべての 貿 易 について 関 税 等 を 廃 止 することを 条 件 として 一 部 のGATT 締 約 国 間 で 特 恵 的 な 自 由 貿 易 協 定 を 締 結 することが 認 められている(GATT 第 24 条 ) また EPAは 関 税 の 撤 廃 など 通 商 上 の 障 壁 を 除 去 するだけでなく 締 約 国 の 間 での 経 済 取 引 を 円 滑 化 するために 様 々な 経 済 領 域 で 連 携 を 強 化 し 協 力 を 促 進 する ことなどをも 含 めた 協 定 である すなわちEPAは FTAでは 通 常 カバーされてい ない 分 野 にまで 協 定 の 範 囲 を 広 めるものである 我 が 国 は 1990 年 代 後 半 までは 基 本 的 にWTOの 下 で すなわち 多 国 間 の 枠 組 み の 下 での 貿 易 投 資 の 自 由 化 円 滑 化 に 取 り 組 んできたが 2000 年 代 に 入 り 暫 時 二 国 間 自 由 貿 易 協 定 を 推 進 する 路 線 に 政 策 的 な 変 更 が 行 われた 2002 年 1 月 には 小 泉 純 一 郎 首 相 ( 当 時 )とシンガポールのゴー チョク トン 首 相 ( 当 時 )との 間 で 日 本 としては 初 のFTA/EPAである 日 本 シンガポールEPA が 調 印 され 同 年 11 月 に 発 効 した これを 皮 切 りに これまで メキシコ マレーシア チリ タ イ インドネシア ブルネイ ASEAN フィリピン スイス ベトナム インド ペルーの12か 国 1 地 域 とEPAを 締 結 済 である また 現 在 数 か 国 と 交 渉 中 であ る このような 全 体 の 流 れの 中 で 我 が 国 と 台 湾 との 間 のFTAについては 10 年 以 上 前 から 関 係 者 により 様 々な 取 り 組 みがなされて 来 てはいるものの 依 然 として 大 き な 進 展 がないまま 今 日 に 至 っている その 経 緯 を 振 り 返 ってみると まず 2001 年 10 月 上 海 におけるAPEC(アジ ア 太 平 洋 協 力 ) 閣 僚 会 議 の 際 我 が 国 の 平 沼 赳 夫 経 済 産 業 大 臣 と 台 湾 の 林 義 夫 経 済 部 長 との 会 談 において 日 台 FTA について 民 間 レベルの 対 話 と 研 究 を 開 始 すること が 合 意 された その 結 果 東 亜 経 済 人 会 議 ( 事 務 局 は 日 本 経 団 連 と 台 湾 工 商 協 進 会 ) が 中 心 となって 実 務 的 な 検 討 が 行 われ 2002 年 末 には 日 台 FTA 民 間 研 究 中 間 報 告 が 採 択 されるに 至 った このように 我 が 国 が FTA 推 進 路 線 に 舵 を 切 った 比 較 的 当 初 段 階 において 日 台 FTA の 締 結 に 向 けても 一 定 の 前 進 が 見 られたのである しかしながら それから 9 年 後 の 2011 年 9 月 に 交 流 協 会 と 亜 東 関 係 協 会 との 間 で 日 10

台 投 資 協 定 が 合 意 されるに 至 るまで 日 台 両 国 の 間 における 貿 易 投 資 関 連 の 協 定 については ほとんど 進 展 がなかったと 言 わざるを 得 ない 日 本 と 台 湾 とは その 緊 密 な 貿 易 経 済 関 係 の 緊 密 さを 考 えれば 二 国 間 のFTA を 締 結 するに 最 もふさわしい 間 柄 であることは 論 を 俟 たない 日 台 両 国 は WTOの 正 式 メンバーとして さらには APEC(アジア 太 平 洋 協 力 )の 正 式 メンバーとし て ともに 世 界 の 自 由 貿 易 体 制 の 重 要 な 構 成 メンバーであるとともに 自 由 貿 易 にと って 最 も 重 要 な 基 盤 であるところの 自 由 で 開 放 的 な 経 済 体 制 民 主 主 義 的 な 政 治 体 制 さらには 言 論 報 道 の 自 由 人 権 の 尊 重 法 治 主 義 といった 自 由 主 義 世 界 におけ る 基 本 的 な 価 値 観 を 共 有 しているからである このことは 日 本 を 含 め 東 アジア 地 域 よりもかなり 以 前 から 自 由 貿 易 協 定 や 地 域 経 済 統 合 について 具 体 的 な 成 果 を 挙 げてき た 北 米 自 由 貿 易 協 定 (NAFTA)や 欧 州 連 合 (EU)の 事 例 をみれば 明 らかであ ろう 前 述 したように 台 湾 も 正 式 メンバーであるWTOのルールに 則 った 例 外 的 な 措 置 であるFTAを 日 本 と 台 湾 が 締 結 すること 自 体 国 際 法 上 の 問 題 も 全 くない さて それでは 我 が 国 と 台 湾 との 間 のFTAが 10 年 近 く 前 の 時 点 で 民 間 ベ ースの 共 同 研 究 という 準 備 段 階 のものだったにせよ 一 定 の 具 体 的 作 業 の 進 展 が 見 られていたにもかかわらず その 後 長 らく 停 滞 したままなのは 何 故 か それは 一 言 で 言 うならば その 後 の 歴 代 の 日 本 の 政 権 が 日 本 と 台 湾 の 間 の 二 国 間 のFTA/EPAの 締 結 について 北 京 の 反 対 に 気 兼 ねするという 政 治 的 理 由 によるものであると 断 言 せざるを 得 ない これは 誠 に 遺 憾 なことである もちろん 小 泉 政 権 以 後 の 政 権 のうち 例 えば 安 倍 政 権 麻 生 政 権 があのような 短 命 政 権 とならなければ 安 倍 麻 生 両 元 首 相 の 外 交 安 全 保 障 についての 基 本 的 ス タンスの 下 で 日 本 政 府 が 腰 を 据 えた 対 台 湾 外 交 を 展 開 することによって 日 台 EPAについてより 具 体 的 な 進 展 があり 得 たという 可 能 性 は 否 定 できない しかしな がら 小 泉 首 相 以 降 歴 代 の 現 職 首 相 が 誰 一 人 として 靖 国 神 社 参 拝 を 行 っていな いことが 如 実 に 示 すように この 10 年 近 くの 期 間 我 が 国 の 対 アジア 外 交 における 中 国 に 対 する 気 兼 ね という 悪 しき 要 素 が より 色 濃 くなったという 実 態 と 無 縁 で はなかろう 外 務 省 OBで 元 交 流 協 会 台 北 事 務 所 代 表 の 池 田 維 氏 が いみじくも この 点 につい て 語 っている 池 田 氏 によれば 2003 年 ないし 2004 年 頃 の 出 来 事 として 経 団 連 の 責 任 者 が 北 京 で 温 家 宝 首 相 に 会 って 台 湾 とFTAを 検 討 していると 言 ったとき 逆 に そういうことをすれば 中 国 に 進 出 している 日 本 企 業 にとってどういう 影 響 があ ると 思 いますか と 質 問 されたことがあり それ 以 来 日 本 はトーンダウンしてしま った ( 当 会 機 関 誌 日 台 共 栄 第 26 号 (2010 年 5 月 発 行 ) 掲 載 のインタビューでの 発 言 )とのことである 最 近 でも 東 日 本 大 震 災 の 一 周 年 追 悼 式 典 に 台 湾 代 表 として 出 席 した 台 北 経 済 文 化 代 表 処 の 羅 坤 燦 副 代 表 を 日 本 政 府 が 指 名 献 花 から 外 すという 非 礼 極 まりない 愚 挙 を 行 っている 11

かくの 如 き 常 に 北 京 の 顔 色 を 窺 いながらの 外 交 姿 勢 を 直 ちに 改 めるべきは 言 うま でもない 加 えて 日 本 が 台 湾 とのFTAを 締 結 することは 今 後 好 むと 好 まざるとに 関 わ らず アジア 太 平 洋 地 域 における 現 在 の 地 域 経 済 統 合 の 動 き とりわけ 二 国 間 のFTA,EPA 多 国 間 のEPAであるTPP( 環 太 平 洋 経 済 連 携 協 定 ) さらに はAPECワイドのFTA/EPAに 向 けての 動 きが 加 速 している 中 日 本 として 外 交 通 商 政 策 上 の 有 力 な カード としても 十 分 意 義 を 持 つものであると 考 えられる 換 言 するならば TPPをはじめとするアジア 太 平 洋 地 域 内 における 経 済 統 合 の 流 れ が 加 速 している 今 こそが 日 台 FTA 締 結 の 絶 好 のチャンスとも 言 えよう 台 湾 側 においても 先 の 総 統 選 挙 の 結 果 馬 英 九 政 権 が 継 続 することとなった 一 昨 年 のECFA( 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 )についての 中 台 間 の 実 質 合 意 を 受 けて 現 在 中 台 間 では 投 資 協 定 の 締 結 交 渉 が 大 詰 めに 差 し 掛 かっている その 中 で 馬 英 九 政 権 としても 日 本 とのFTA 締 結 に 積 極 的 な 姿 勢 を 取 り 続 けていることは 周 知 の 通 りである 台 湾 の 経 済 界 民 間 企 業 の 関 係 者 の 多 くが 日 台 FTAの 締 結 についての 熱 意 を 持 ち 続 けていることに 日 本 としても 誠 意 をもって 対 応 すべきであることは 言 うまでもない 我 々はここに 我 が 国 が いかなる 政 権 の 下 での 外 交 であろうと 経 済 的 側 面 から 見 て 明 らかに 日 本 の 国 益 に 資 するであろう 日 台 間 のFTAの 締 結 について 東 アジ ア 地 域 の 安 全 保 障 をはじめとする 政 治 的 な 要 因 を 十 分 考 慮 に 入 れつつ 思 い 切 った 推 進 をすべきであるとの 提 言 を 行 うものである 12