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栄 養 豊 富 で 食 卓 に 彩 りを 添 える ホウレンソウ ホウレンソウの 原 産 地 はイランと 言 われています 7 世 紀 には 中 国 へ 11 世 紀 にはヨーロッパへ 伝 わったとの 記 録 が 残 っています これらヨーロッパの 品 種 は 約 100 年 前 に 日 本 へ 伝 わり 洋 種 ( 西 洋 種 )と 呼 ばれました これより 古 く 約 400 年 前 に 中 国 から 日 本 へ 伝 わっていたもの が 和 種 ( 東 洋 種 )です 03
和 種 ( 東 洋 種 ) 根 元 が 紅 色 で 葉 肉 が 薄 く 味 が 淡 泊 でお 浸 しなど 和 食 向 きです 和 種 は 一 般 に 切 れ 葉 で 薄 く 葉 柄 ( 葉 の 軸 部 分 )が 長 く 角 種 子 が 多 く 抽 だい( 花 芽 ができて 茎 が 急 速 に 伸 びる 現 象 )は 早 いです 洋 種 ( 西 洋 種 ) 葉 肉 に 厚 みがあり 濃 厚 な 味 でバターソテーなど 炒 め 物 向 きです 洋 種 は 丸 葉 で 葉 柄 が 短 く 丸 種 子 が 多 く 抽 だいの 遅 いものが 多 く 含 まれます 現 在 栽 培 されているホウレンソウの 品 種 は 和 種 洋 種 の 2 つ にすっきり 分 類 できるものではありません 中 間 種 ( 東 洋 種 と 西 洋 種 の 交 配 種 ) 過 去 数 十 年 の 間 洋 種 と 和 種 の 良 いところを 取 り 入 れるための 交 配 育 種 が 進 められた 結 果 現 在 の 主 要 品 種 は 両 者 の 特 性 を 併 せ 持 っ た F1 品 種 ( 雑 種 中 間 型 )で 育 てやすく 味 もよく 現 在 市 場 を ほぼ 独 占 しています その 他 アクが 少 なく 生 食 に 向 くサラダホウレンソウや 後 述 しま すが 葉 が 厚 く 縮 れたチヂミホウレンソウなどもあります 04
ホウレンソウの 旬 現 在 の 主 要 品 種 は F1 品 種 市 場 で 人 気 がある ホウレンソウの とう 立 ち 05
ホウレンソウ 栽 培 に 最 適 な 土 壌 とは ホウレンソウの 生 育 は 土 壌 の ph が 強 く 影 響 します 中 性 域 が 最 も 生 育 が 盛 んになります 従 って ホウレンソウを 栽 培 するときは 例 え 家 庭 菜 園 であって も 石 灰 をまいて 土 壌 酸 度 を 中 性 近 くに 調 整 することが 大 切 です 酸 度 の 調 整 には 良 質 な 完 熟 堆 肥 の 施 用 は 効 果 が 大 きいようです ホウレンソウの 種 まきは 一 般 には9 月 上 旬 から 10 月 下 旬 です phとホウレンソウの 生 育 06 写 真 提 供 : 片 岡 園 氏 ( 写 真 提 供 : 唐 沢 敏 彦 氏 )
1. 寒 締 めハウスの 収 穫 2. 寒 締 めの 様 子 3. 寒 締 めホウレンソウ 4. 寒 締 め 葉 の 表 面 ( 写 真 提 供 : 青 木 和 彦 氏 ) 寒 締 め 栽 培 これは 1990 年 頃 から 東 北 を 中 心 に 始 められ たホウレンソウの 栽 培 法 です 寒 締 め 栽 培 は 寒 冷 地 で 秋 にビニールハウス 内 にホウレンソウを 播 種 します 収 穫 適 期 の 頃 ハ ウスの 外 はすっかり 寒 くなっています こうなっ たら ハウスを 開 放 して 外 の 冷 たい 空 気 に 2 週 間 以 上 さらす 寒 締 め を 行 います 寒 さにさらされたホウレンソウは 厚 めの 葉 の 表 面 にぎゅっと 縮 んだような 皺 が 入 ります この 葉 から チヂミホウレンソウ と 呼 ばれて います 見 た 目 も 一 般 的 なホウレンソウは 葉 が 立 っているのに 対 して チヂミホウレンソウは 寒 さにさらされて 生 育 するため 根 に 張 り 付 くよう な 姿 となります 寒 さにさらされると 植 物 には 大 きな 変 化 が 現 れます 葉 は 色 が 濃 くなって 肉 厚 になり 表 面 の 皺 が 増 え さらに 地 面 にぴったり 張 り 付 いたロ ゼット 状 になります 内 容 成 分 では 温 度 が 下 がるにつれて 糖 やビタ ミン C は 寒 締 め 前 の 1.5 ~ 2 倍 になります ホウレンソウは 有 害 物 質 と 言 われる 硝 酸 やシュ ウ 酸 を 多 く 含 むと 問 題 視 されることがあります しかし 寒 締 めによってシュウ 酸 含 量 は 増 えな い 上 に 硝 酸 はむしろ 減 ると 言 われ 美 味 しいホ ウレンソウが 収 穫 できます 寒 締 めによる 糖 度 の 上 昇 20 まほろば 朝 霧 15 10 5 0 0 4 8 07
窒 素 過 剰 施 肥 による 硝 酸 態 窒 素 の 増 加 とビタミンC 含 量 の 低 下 施 肥 窒 素 量 を 多 くすると ホウレンソウの 収 量 は 増 加 します しかし 窒 素 施 肥 量 が 25kg/10a 以 上 では 収 量 が 低 下 するととも に 総 ビタミンCも 低 下 するケースが 多 いです ビタミンC 濃 度 をより 上 げるには 日 照 条 件 を 良 くするのが 第 一 で 適 正 な 窒 素 施 肥 を 行 うことが 基 本 です 資 料 : 北 海 道 立 道 南 農 業 試 験 場 また 前 述 した 寒 締 め 栽 培 によって ホウレンソウの 糖 度 や ビタミンC 含 量 が 上 昇 するとともに 食 味 が 向 上 します ( 右 図 ) 一 般 のホウレンソウに 比 べて 糖 度 が 上 昇 し 厳 寒 期 には 糖 度 が 14 以 上 にもなることがあり その 甘 味 は 果 実 に 匹 敵 すると 言 われて います 08 写 真 提 供 : 片 岡 園 氏
寒 締 めによる 糖 度 の 経 時 的 上 昇 12 寒 締 め 市 場 の 動 向 流 通 関 係 者 の 声 10 8 6 4 2 0 無 処 理 13 日 前 7 日 前 開 始 日 6 日 後 15 日 後 寒 締 めによるビタミンCの 上 昇 26 日 後 寒 締 め 12 2 め 1 100 80 60 40 20 0 寒 締 め 無 処 理 開 始 日 6 日 後 15 日 後 26 日 後 09
ホウレンソウの 代 表 的 な 収 穫 体 系 とは えぐ 味 の 基 になる 硝 酸 態 窒 素 は 収 穫 方 法 によっても 変 化 します 朝 どりより 夕 どりの 方 がホウレンソウの 硝 酸 態 窒 素 が 少 なく 糖 度 も 高 くなります ホウレンソウの 収 穫 時 刻 と 硝 酸 濃 度 1200 7 月 播 種 1000 8 月 播 種 9 月 播 種 800 600 400 200 0 朝 取 り(4 時 ) 昼 取 り(10 時 ) 夕 取 り(16 時 ) 夕 どりによるホウレンソウの 栄 養 分 の 上 昇 0.5 0.4 ビタミン C 全 糖 0.3 0.2 0.1 0.0 朝 どり 夕 どり これらの 結 果 から 下 図 のような 収 穫 体 系 が 提 案 されています これにより 従 来 の 朝 どりより 栄 養 分 の 糖 やビタミンCが 高 く 一 方 硝 酸 濃 度 の 低 いホウレンソウが 出 荷 できるようになりました 夕 どりによるホウレンソウの 収 穫 体 系 栽 培 収 穫 予 冷 選 別 出 荷 時 夕 時 硝 酸 イオン 濃 度 の 低 い 品 種 を 選 択 極 端 な 遮 光 条 件 は 夕 どりの 効 果 を 低 下 さ せるため 収 穫 日 の 遮 光 はさけることが 望 ましい 夕 刻 は 品 温 が 高 い ため できるだけ 早 く 品 温 を 下 げる しおれが 発 生 する 場 合 は 水 浸 漬 処 理 等 を 行 う 10 写 真 提 供 : 片 岡 園 氏
上 3 点 ( 写 真 提 供 : 唐 沢 敏 彦 氏 ) ある 産 地 では 環 境 にやさしく 美 味 しいホウレンソウの 生 産 をす るために 次 のような 対 策 を 施 しています 品 種 施 肥 について 実 証 を 行 い 硝 酸 態 窒 素 の 少 ない 品 種 を 選 定 します 窒 素 成 分 が 蓄 積 しないよう 肥 料 の 効 きの 悪 いときには 速 効 性 有 機 ぼ かし 肥 料 を 利 用 しています 完 熟 堆 肥 を 利 用 しています 雑 草 防 除 病 害 虫 防 除 について 雑 草 防 除 とともに 土 壌 病 害 や 最 近 大 きな 問 題 となっているケナガ コナダニの 抑 制 のため 夏 太 陽 熱 利 用 の 土 壌 消 毒 を 行 っています こうした 対 応 を 行 っていることから 農 薬 は 用 いていません 11
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主 要 野 菜 14 品 目 に 含 まれるミネラルは 下 表 の とおりです ここで 取 り 上 げた8 種 類 のミネラル のうち ホウレンソウに 一 番 多 く 含 まれているの は 何 と5 種 類 です トップ3に 入 らなかったのは ナトリウムだけ でした 有 名 な 某 漫 画 でも ホウレンソウの 缶 詰 は 元 気 の 源 として 描 かれています ミネラルに 限 らず ビタミンA(カロテン) ビタミン B1 ビタミン B2 も 多 く 含 むので ホウ レンソウの 栄 養 分 は 驚 異 的 とさえ 言 えます 緑 黄 色 野 菜 の 中 でも 抜 群 の 栄 養 価 を 誇 り 骨 を 形 成 するカルシウムやマンガン 等 のほか 豊 富 な 栄 養 素 がバランス 良 く 含 まれています 緑 黄 色 野 菜 の 王 様 と 言 われるゆえんです ホウレンソウ 47 0.11 キャベツ 43 きゅうり 0.11 里 いも 640 19 55 0.5 0.3 大 根 19 玉 ねぎ トマト ナ ス 人 参 ね ぎ 0.3 白 菜 43 ピーマン ブロッコリー 20 360 26 1.0 レタス 時 代 によって 変 わるホウレンソウの 栄 養 成 分 ホウレンソウの 主 要 栄 養 成 分 の 戦 後 からの 変 化 を 日 本 食 品 標 準 成 分 表 に 求 めると 右 表 の 様 な 結 果 が 得 られます 多 くの 野 菜 で 非 常 に 変 動 していていますが ホ ウレンソウも 例 外 ではないようです その 理 由 は 品 種 の 変 化 産 地 の 変 遷 ( 気 候 や 土 壌 栽 培 条 件 等 ) ハウス 栽 培 の 普 及 による 周 年 出 荷 のほか 市 場 の 鮮 度 重 視 の 考 え 方 が 一 般 化 したことや 消 費 者 のよりクセがなく 美 味 しく 食 べやすいものを 求 める 嗜 好 の 変 化 など 様 々な 要 因 が 考 えられます 初 版 1950 年 改 訂 1954 年 三 訂 1963 年 四 訂 1980 年 五 訂 ( 増 補 ) 2007 年 ビタミン C 鉄 カルシウム 水 分 (%) 13
14 貧 血 改 善 ホウレンソウには 鉄 分 が 大 変 多 く 含 まれています 血 液 中 の ヘモグロビンを 作 り 出 すため 貧 血 の 予 防 改 善 に 欠 かせません また 造 血 作 用 のある 葉 酸 も 多 く 含 まれています 葉 酸 はビタ ミン B12 とともに 髄 で 赤 血 球 を 作 り 出 す 働 きがあります 貧 血 気 味 の 方 には 最 適 な 野 菜 で す ガン 予 防 ホウレンソウは 免 疫 作 用 を 高 めるβ - カロテンを 豊 富 に 含 み ます β - カロテンは 体 内 でビ タミンAに 変 わります ビタミンAには 粘 膜 を 正 常 に 保 つ 働 きがあり 感 染 症 を 予 防 し 免 疫 力 を 高 めるとともに 活 性 酵 素 による 細 胞 の 酸 化 を 防 ぎ ガン 抑 制 作 用 があると 言 わ れています 動 脈 硬 化 予 防 ホウレンソウはビタミンC Eと 強 力 な 抗 酸 化 ビタミンを 含 みます コラーゲンの 合 成 には 不 可 欠 な 栄 養 素 で 美 肌 効 果 は もちろん 細 胞 や 皮 膚 血 管 の 老 化 を 防 ぎます また 抗 酸 化 脂 質 の 生 成 を 抑 制 し 動 脈 硬 化 などの 予 防 が 期 待 されています
100 80 60 40 20 0 0 分 ( 生 ) 1 分 後 2 分 後 3 分 後 5 分 後 15
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じょうやなべ 常 夜 鍋 で 風 邪 予 防 たっぷりのホウレンソウと 豚 肉 でつくる 常 夜 鍋 毎 晩 食 べても 飽 きない ことが 名 前 の 由 来 です これは 非 常 に 栄 養 バランスの 取 れた 食 べ 方 で 豚 肉 がタンパク 質 やビタミン B 群 を ホウレン ソウがその 他 のビタミン ミネラル 食 物 繊 維 を 補 っています 体 もポカポカ 温 まり 風 邪 予 防 に ぴったりです 材 料 はしゃぶしゃぶ 用 の 豚 肉 とホウレンソウな どのシンプルな 鍋 ですが 毎 夜 食 べても 飽 きない ほど 美 味 しいという 意 味 のネーミング 通 り 意 外 な 美 味 しさの 超 簡 単 鍋 です 美 味 しいホウレンソウの 見 分 け 方 根 で 分 かる 3 つのポイント 葉 で 分 かるポイント 17
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