配偶者控除見直しについて~家計の可処分所得への影響~



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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

公 的 年 金 等 控 除 額 とは 年 金 収 入 から 差 し 引 くことのできる 金 額 で 差 引 後 の 金 額 が 雑 となります 公 的 年 金 等 収 入 金 額 - 公 的 年 金 等 控 除 額 = 雑 これまでは この 公 的 年 金 等 控 除 額 は 65 歳 以 上 の

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

(Microsoft Word - \220\305\220\247\211\374\220\263.doc)

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

賃 金 報 酬 給 与 とは ( 労 働 基 準 法 の 賃 金 ) ( 労 働 基 準 法 この 法 律 ) で 賃 金 とは 賃 金 給 料 手 当 賞 与 その 他 名 称 の 如 何 を 問 わず 労 働 の 対 償 として 使 用 者 が 労 働 者 に 支 払 うすべてのものをいう (

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はじめに 日 本 の 税 制 改 革 では 控 除 の 引 き 上 げや 税 率 の 引 き 下 げにより 税 負 担 が 軽 減 されてきた 基 礎 控 除 :33 万 円 (1988 年 ) 38 万 円 (1995 年 ) 所 得 税 の 最 高 税 率 : 8000 万 円 超 の 所 得

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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

●幼児教育振興法案

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

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給 与 所 得 控 除 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え 360 万 円 以 下 の 場 合 360 万 円 を 超 え 660 万 円 以 下 の 場 合

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就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

18 国立高等専門学校機構

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代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

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プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

Q IFRSの特徴について教えてください

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

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1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

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鳥 取 国 民 年 金 事 案 177 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 昭 和 37 年 6 月 から 38 年 3 月 までの 国 民 年 金 保 険 料 については 納 付 していたものと 認 められることから 納 付 記 録 を 訂 正 することが 必 要 である 第 2 申

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設 問 一 覧 全 員 にお 聞 きします 103 万 円 の 壁 130 万 円 の 壁 について 知 っていますか?...(SA) あなたの 年 収 を 教 えてください...(SA) 年 収 が 103 万 円 以 下 103 万 円 超 130 万 円 以 下 と 答 えた 人 あなたは 年

年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

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1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

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共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

施 策 を 実 施 する 方 針 を 明 らかにしている 税 制 については 2014 年 11 月 7 日 に 政 府 税 制 調 査 会 により 働 き 方 の 選 択 に 対 して 中 立 的 な 税 制 の 構 築 をはじめとする 個 人 所 得 課 税 改 革 に 関 する 論 点 整 理

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●「高齢者医療運営円滑化等補助金」については、なぜ、本日の公開による再仕分けの対象事業に選定されたと認識しているか

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ニッセイ 基 礎 研 究 所 基 礎 研 レポート 2016-02-05 配 偶 者 控 除 見 直 しについて ~ 家 計 の 可 処 分 所 得 への 影 響 ~ 経 済 研 究 部 研 究 員 薮 内 哲 (03)3512-1839 yabuuchi@nli-research.co.jp はじめに 現 在 政 府 は 所 得 税 改 革 に 向 けた 総 点 検 に 着 手 しており とりわけ 人 口 減 少 下 における 労 働 力 確 保 や 女 性 活 躍 推 進 の 観 点 から 配 偶 者 控 除 の 見 直 しを 検 討 している 配 偶 者 控 除 は 夫 が 正 社 員 で 妻 がパートタイム 労 働 者 または 専 業 主 婦 である 世 帯 1 において 103 万 円 の 壁 として 既 婚 女 性 の 働 く 時 間 を 調 整 する(= 一 定 時 間 以 上 働 かない) 原 因 になっていると 指 摘 されている 既 婚 女 性 の 30 歳 ~59 歳 の 年 代 別 の 収 入 分 布 を 確 認 すると 年 収 100 万 円 付 近 に 集 中 している 年 収 100 万 円 付 近 の 既 婚 女 性 の 一 部 は 今 以 上 働 きたくないから 働 いていない のではなく それ 以 上 働 くと 損 をするから という 理 由 で 働 く 時 間 を 増 やしていない 日 本 は 少 子 化 を 背 景 にした 人 口 減 少 や 人 手 不 足 に 直 面 しており 少 しでも 多 くの 労 働 力 を 確 保 する 必 要 がある 制 度 が 労 働 参 加 を 妨 げているのであれば 見 直 すべきであろう とりわけ 配 偶 者 控 除 に 注 目 が 集 まっているが 働 く 時 間 を 調 整 ( 就 労 調 整 )する 原 因 となっている ( 図 表 1) 既 婚 女 性 の 給 与 所 年 得 収 者 の の 収 所 入 得 分 布 ( 資 料 ) 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 資 料 平 成 22 年 度 国 民 生 活 基 礎 調 査 より 1 妻 が 正 社 員 で 夫 がパートタイム 労 働 者 または 専 業 主 夫 の 場 合 も 含 む 一 般 的 には 夫 が 正 社 員 で 妻 がパートであるケース の 方 が 多 数 であるため 本 稿 では 夫 がある 一 定 以 上 の 収 入 がある 正 社 員 妻 は 専 業 主 婦 あるいはパートタイム 労 働 者 であ ると 仮 定 し 話 を 進 める 1

壁 は 他 にもある 社 会 保 険 料 支 払 いが 必 要 となる 130 万 円 の 壁 と 企 業 の 配 偶 者 手 当 による 103 万 円 の 壁 である 本 稿 では 最 初 に 配 偶 者 控 除 を 中 心 に 就 労 調 整 の 原 因 となっている 3 つの 壁 について 概 観 し その 後 現 在 政 府 内 で 示 されている 配 偶 者 控 除 の 見 直 し 案 を 元 に 家 計 の 可 処 分 所 得 に 与 える 影 響 につい て 展 望 する 1 就 労 調 整 原 因 となる3つの 壁 配 偶 者 控 除 の 見 直 しに 注 目 が 集 まっているが 就 労 調 整 の 原 因 となっている 壁 は 主 に 3 つある 3 つとは 1 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 による 103 万 円 の 壁 2 社 会 保 険 料 支 払 いが 必 要 となる 130 万 円 の 壁 3 企 業 の 配 偶 者 手 当 による 103 万 円 の 壁 である それぞれについてどのような 壁 なのか 確 認 していこう 1 1 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 による 103 万 円 の 壁 ⅰ) 所 得 税 住 民 税 計 算 について ( 夫 が 会 社 正 社 員 妻 がパートタ イム 労 働 者 または 専 業 主 婦 である 世 帯 を 基 本 に 話 を 進 める ) 配 偶 者 控 除 とは 所 得 税 や 住 民 税 を 算 出 する 際 納 税 者 に 配 偶 者 がい る 場 合 に 受 けられる 優 遇 措 置 のよう なものである 会 社 員 の 夫 には 年 間 の 給 与 収 入 に 対 して 所 得 税 や 住 民 税 が 課 される 住 民 税 と 所 得 税 の 納 税 額 の 求 め 方 は( 図 表 2)のようなイメージとな る 夫 の 年 間 の 給 与 収 入 は 会 社 員 の 必 要 経 費 という 考 えから 給 与 所 得 控 除 が 差 し 引 かれ 給 与 所 得 金 額 が 求 められる 給 与 所 得 金 額 から 配 偶 者 控 除 やその 他 の 所 得 控 除 が 差 し 引 かれた 課 税 所 得 金 額 に 税 率 ( 所 得 税 率 住 民 税 )をかけたものが 算 出 税 額 となる そして 税 額 控 除 等 2 を 加 味 し 最 終 的 な 納 付 税 額 が 決 められ る 配 偶 者 控 除 が 所 得 税 と 住 民 税 に 適 用 されれば 課 税 所 得 金 額 の 金 額 が 少 なくなり 最 終 的 な 納 付 税 額 も 少 なくなる 2 所 得 税 では 税 額 控 除 住 民 税 では 調 整 控 除 がある 2

ⅱ) 税 制 上 の 103 万 円 の 壁 は 既 に 存 在 しない 103 万 円 の 壁 とは 1 妻 の 年 収 ( 給 与 収 入 3 )が 103 万 円 4 を 超 えると 所 得 税 が 生 じることに 加 え 2 夫 の 所 得 税 住 民 税 の 計 算 において 配 偶 者 控 除 の 適 用 が 受 けられなくなるため 夫 自 身 の 年 収 が 少 な くなる このため 妻 は 年 収 が 103 万 円 を 超 えないように 就 労 調 整 を 行 っているというものだ 5 しかし これには 誤 解 がある 妻 の 年 収 が 103 万 円 を 超 えると 損 をする(= 手 取 りが 減 る)と いうことはない 確 かに 妻 年 収 が 103 万 円 を 超 えると 夫 の 可 処 分 所 得 は 減 少 するという 逆 転 現 象 が 生 じるが 世 帯 の 年 収 でみれば それは 生 じない 6 このことを 確 認 するために 具 体 例 として 夫 の 年 収 が 550 万 円 と 一 定 であると 仮 定 し 妻 の 年 収 7 が 変 化 に 応 じて 夫 妻 世 帯 の 可 処 分 所 得 がそれぞれどのように 変 化 するかを 確 認 してみよう ⅲ) 夫 と 妻 のそれぞれの 可 処 分 所 得 の 変 化 ( 図 表 3) 夫 は 妻 年 収 が 103 万 円 を 超 えると 配 偶 者 控 除 の 適 用 が 受 けられなくなるが 妻 年 収 141 万 円 未 満 までは 配 偶 者 特 別 控 除 が 受 けられる 配 偶 者 特 別 控 除 8 は 1988 年 に 妻 年 収 が 103 万 円 を 超 えた 後 も 夫 の 可 処 分 所 得 が 急 激 に 減 少 す ることを 防 ぐために 控 除 が 段 階 的 に 少 なくなるよ うに 導 入 されたものだ( 図 表 3) この 結 果 妻 年 収 103 万 円 超 105 万 円 未 満 であ れば 夫 は 配 偶 者 特 別 控 除 を 配 偶 者 控 除 と 同 額 で ある 38 万 円 分 の 適 用 を 受 ける 夫 の 可 処 分 所 得 ( 図 表 4) の 減 少 は 105 万 円 以 上 ら 141 万 円 未 満 にかけ て 生 じる( 図 表 4) 夫 の 可 処 分 所 得 は 妻 年 収 が 105 万 円 未 満 の 場 合 429 万 円 だが 配 偶 者 特 別 控 除 が 受 けられ なくなる 妻 年 収 141 万 円 以 上 では 422.1 万 円 ま で 減 少 する 夫 の 可 処 分 所 得 の 損 得 だけで 考 え れば 妻 は 105 万 円 未 満 で 働 いていた 方 が 夫 の 可 処 分 所 得 の 減 少 を 招 かずに 済 む 3 年 間 の 収 入 が 給 与 所 得 のみから 得 られる 場 合 を 想 定 している 例 えば 公 的 年 金 受 給 者 の 場 合 収 入 金 額 ごとの 公 的 年 金 等 控 除 額 が 異 なる 4 所 得 税 であれば 妻 の 給 与 収 入 が 年 収 161 万 円 程 度 までの 場 合 給 与 所 得 控 除 65 万 円 と 基 礎 控 除 の 38 万 円 が 適 用 される 5 実 際 厚 生 労 働 省 の 調 べでも 就 労 調 整 を 行 っているパートタイム 労 働 者 の 63.0%が 自 分 の 所 得 税 の 非 課 税 限 度 額 (103 万 円 )を 超 えると 税 金 を 支 払 わなければならないから と 回 答 しており 37.7%が 一 定 額 を 超 えると 配 偶 者 の 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 が 無 くなるから と 回 答 している 6 平 成 26 年 度 の 給 与 所 得 者 の 平 均 給 与 は 男 性 514 万 円 となっている 500 万 円 として 試 算 すると 課 税 所 得 の 変 動 により 税 率 も 変 わってしまうため 影 響 変 化 確 認 本 稿 では 550 万 円 をモデルケースとして 試 算 する 7 本 稿 での 年 収 とは 給 与 収 入 のみであるとする 8 配 偶 者 特 別 控 除 の 適 用 要 件 の 一 つとして 控 除 を 受 ける 人 のその 年 における 合 計 所 得 金 額 が 1000 万 円 以 下 である 必 要 があ る 3

次 に 妻 の 可 処 分 所 得 の 変 化 を 確 認 しよう 9 妻 年 収 103 万 円 超 となると 所 得 税 や 住 民 税 が 発 生 することで 就 労 調 整 を 行 うという 指 摘 もある 税 の 支 払 いが 生 じる 年 収 時 点 から 妻 の 年 収 に 対 する 可 処 分 所 得 の 増 加 率 は 1 から 徐 々に 低 下 するものの 限 定 的 である 上 に 夫 のような 逆 転 現 象 は 生 じない このた め 可 処 分 所 得 の 損 得 の 観 点 からは 働 く 時 間 を 抑 えるよりも 働 けば 働 くだけ 可 処 分 所 得 は 増 加 するので 就 労 調 整 を 行 うのは 合 理 的 では ないことがわかる ( 図 表 5) ⅳ) 世 帯 ( 夫 + 妻 )の 可 処 分 所 得 の 変 化 夫 と 妻 のそれぞれの 可 処 分 所 得 の 変 化 を 確 認 したが 生 計 を 一 つにしている 夫 婦 であれ ( 図 表 6) ば 夫 と 妻 両 方 の 可 処 分 所 得 を 合 計 した 世 帯 の 可 処 分 所 得 の 変 化 が 重 要 である 夫 と 妻 の 可 処 分 所 得 を 合 計 した 世 帯 の 可 処 分 所 得 の 変 化 をみると 103 万 円 に 壁 は 存 在 し ないことが 確 認 できる( 図 表 6) 妻 年 収 105 万 円 以 上 になると 夫 の 可 処 分 所 得 は 減 少 する が 同 時 に 妻 の 可 処 分 所 得 がそれを 上 回 って 増 えるため 可 処 分 所 得 は 減 少 しない 10 これは 配 偶 者 特 別 控 除 が 導 入 され 配 偶 者 控 除 で 受 けられていた 38 万 円 の 控 除 が 段 階 的 に 少 なくなるようになったからだ つまり 1988 年 に 配 偶 者 特 別 控 除 が 導 入 されたことで 税 制 上 の 103 万 円 の 壁 はなくなっているのである 2 2 社 会 保 険 料 支 払 いが 必 要 となる 130 万 円 の 壁 二 つ 目 は 2 社 会 保 険 料 支 払 いが 必 要 となる 130 万 円 の 壁 である 妻 が 夫 に 扶 養 されている 場 合 妻 は 自 身 の 社 会 保 険 料 の 支 払 いは 不 要 である しかし 妻 年 収 130 万 円 を 超 えると 妻 は 夫 の 扶 養 から 外 れ 妻 自 身 で 社 会 保 険 料 ( 健 康 介 護 保 険 料 厚 生 年 金 保 険 料 等 )の 支 払 い 義 務 が 生 じる 9 厳 密 には 住 民 税 は 100 万 円 前 後 である 10 厳 密 には 配 偶 者 特 別 控 除 が 縮 小 される 年 収 (115 万 円 120 万 円 125 万 円 130 万 円 135 万 円 の 時 点 )の 境 目 におい て 逆 転 現 象 は 若 干 生 じている 本 試 算 の 場 合 世 帯 の 可 処 分 所 得 において 約 1000~3000 円 程 度 の 逆 転 現 象 がみられた 4

これにより 妻 年 収 が 130 万 円 を 超 えると 妻 の 可 処 分 所 得 は 大 幅 に 減 少 することから 130 万 円 の 壁 と 言 わ れている 夫 年 収 550 万 円 の 場 合 で 試 算 してみると 130 万 円 の 壁 は 大 きく 世 帯 収 入 の 壁 として 存 在 していることが 確 認 できる( 図 表 7) 妻 の 年 収 に 対 する 世 帯 の ( 図 表 7) 可 処 分 所 得 の 変 化 は 妻 年 収 が 129 万 円 では 可 処 分 所 得 は 549.6 万 円 となるが 130 万 円 で は 532.7 万 円 まで 減 少 し 約 16.9 万 円 の 可 処 分 所 得 の 逆 転 現 象 が 生 じていることになる さら に 妻 年 収 129 万 円 時 の 可 処 分 所 得 を 越 えるに は 年 収 157 万 円 となるまでかなり 働 く 量 を 増 や さねばならない 可 処 分 所 得 の 観 点 からは 103 万 円 の 壁 よりも 社 会 保 険 料 の 130 万 円 の 壁 の 方 が 影 響 は 大 きい 11 3 3 企 業 の 配 偶 者 手 当 =103 万 円 の 壁 103 万 円 の 壁 は 税 制 上 の 問 題 だけではない 企 業 も 従 業 員 に 福 利 厚 生 の 一 環 として 家 族 に 対 して 手 当 を 支 給 する 場 合 がある それら 手 当 は 従 業 員 に 扶 養 している 家 族 がいる 場 合 その 従 業 員 に 毎 月 1 万 円 支 給 するなどといったものである 家 族 に 対 する 手 当 を 支 給 する 民 間 企 業 の 割 合 は 76.5%で このうち 90.3%が 配 偶 者 手 当 を 支 給 して いる そのうち 68.8%が 配 偶 者 の 支 給 基 準 を 妻 年 収 103 万 円 25.8%が 130 万 円 としている 12 企 業 が 配 偶 者 手 当 をする 支 給 要 件 は 企 業 ごとに 様 々であるが 国 の 配 偶 者 控 除 と 連 動 して 103 万 円 前 後 を 基 準 に 支 給 しているケースが 多 い ⅰ) 企 業 から 配 偶 者 手 当 が 毎 月 2 万 円 支 給 される 場 合 企 業 の 配 偶 者 手 当 を 加 味 して 世 帯 の 可 処 分 所 得 がどのように 変 化 するか 確 認 してみよう 妻 年 収 が 103 万 円 未 満 の 場 合 毎 月 に 配 偶 者 手 当 2 万 円 13 を 支 給 している 企 業 に 夫 が 勤 めていると 仮 定 し 夫 年 収 550 万 円 ケースで 試 算 すると( 図 表 8)のようになる 妻 の 年 収 支 給 要 件 103 万 円 を 境 に 所 得 の 逆 転 現 象 が 起 きることが 分 かる 本 試 算 では 103 万 円 以 下 を 支 給 要 件 と 想 定 しているため 妻 年 収 が 102 万 円 で 世 帯 の 可 処 分 所 得 は 554.6 万 円 となるが 103 万 円 では 531.5 万 円 と 約 23 万 円 も 大 幅 に 減 少 する また 130 万 円 の 壁 も 存 在 するため 妻 年 収 103 11 130 万 円 の 壁 により 目 先 の 可 処 分 所 得 は 大 きく 減 少 するものの 夫 の 扶 養 から 外 れることが 必 ずしもデメリットとなる わけではない 例 えば 生 涯 可 処 分 所 得 という 観 点 では 妻 自 身 の 公 的 年 金 支 給 額 は 増 加 するため 妻 の 働 く 期 間 や 受 給 期 間 によっては 生 涯 年 収 が 130 万 円 未 満 時 よりも 多 くなるケースもある さらに 健 康 保 険 についても 万 一 病 気 やケ ガで 仕 事 を 休 んだ 場 合 傷 病 手 当 金 として 標 準 報 酬 日 額 の 3 分 の 2 の 支 給 も 受 けられる つまり 妻 自 身 で 社 会 保 険 に 加 入 することで 目 先 の 可 処 分 所 得 は 大 幅 に 減 少 するが 将 来 を 含 めた 生 涯 の 可 処 分 所 得 は 増 えるケースもある 12 人 事 院 民 間 給 与 の 実 態 ( 平 成 27 年 度 職 種 別 民 間 給 与 実 態 調 査 の 結 果 ) より 抜 粋 13 民 間 企 業 における 配 偶 者 手 当 ( 家 族 手 当 )の 支 給 状 況 ( 平 成 27 年 )は 扶 養 家 族 が 配 偶 者 のみ 場 合 13,885 円 配 偶 者 と 子 1 人 の 場 合 19,893 円 配 偶 者 と 子 2 人 の 場 合 25,418 円 出 所 は 厚 生 労 働 省 第 1 回 女 性 の 活 躍 促 進 に 向 けた 配 偶 者 手 当 の 在 り 方 に 関 する 検 討 会 資 料 の 配 偶 者 手 当 を 取 り 巻 く 現 状 より 5

万 円 未 満 の 時 以 上 の 世 帯 可 処 分 所 得 を 得 るには 妻 年 収 は 164 万 円 程 度 まで 働 く 量 を 増 やす 必 要 がで てくる 妻 年 収 が 164 万 円 を 超 えて 働 けない 場 合 妻 は 可 処 分 所 得 が 最 大 となる 103 万 円 を 超 えて 働 かない 方 が 合 理 的 となる 企 業 の 配 偶 者 手 当 によって 生 じる 103 万 円 の 壁 は 130 万 円 の 壁 と 相 まって 大 き な 壁 となって 女 性 の 働 く 時 間 を 抑 制 する 要 因 となっている ( 図 表 8) 4 まとめ 既 婚 女 性 の 就 労 調 整 を 促 すと 指 摘 されている 3 つの 壁 について 可 処 分 所 得 の 損 得 で 考 えると 1 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 による 103 万 円 の 壁 については 夫 の 可 処 分 所 得 だけで 逆 転 現 象 が 生 じて いるため 心 理 的 な 壁 として 意 識 される 可 能 性 は 残 っているものの 世 帯 の 可 処 分 所 得 で 見 れば 配 偶 者 特 別 控 除 の 導 入 により 既 に 壁 はなくなっている 納 税 者 に 正 しい 認 識 を 徹 底 するだけでも 一 定 の 解 決 が 望 める 可 能 性 があり 就 労 調 整 の 壁 となっているという 指 摘 は 正 しくない 2 社 会 保 険 料 支 払 いが 必 要 となる 130 万 円 の 壁 と 3 企 業 の 配 偶 者 手 当 =103 万 円 の 壁 につ いては 可 処 分 所 得 の 損 得 で 考 えると 逆 転 現 象 が 明 確 に 生 じており 制 度 の 見 直 しを 検 討 する 必 要 がある 可 処 分 所 得 の 観 点 から 女 性 の 就 労 調 整 を 促 す 要 因 となっているのは この 2 つである そうはいっても 配 偶 者 控 除 の 見 直 しも 進 めるべきだろう 企 業 における 配 偶 者 手 当 の 支 給 基 準 は 配 偶 者 控 除 と 連 動 していることから 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 を 見 直 すことで 自 発 的 に 企 業 も 配 偶 者 手 当 の 見 直 しに 動 く 可 能 性 がある あるいは 国 が 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 と 公 務 員 の 扶 養 手 当 14 の 見 直 しをす すめれば 国 から 企 業 へも 配 偶 者 手 当 の 見 直 しを 促 す 働 きかけが 可 能 となる 同 時 に 130 万 円 の 壁 についても 検 討 が 必 要 だが まずは 税 制 上 の 配 偶 者 控 除 を 見 直 すことで 社 会 全 体 の 考 え 方 を 変 化 さ せる 後 押 しともなり 企 業 の 配 偶 者 手 当 の 見 直 しにつながれば その 影 響 は 大 きい 14 国 家 公 務 員 に 支 給 される 各 種 手 当 のうち, 扶 養 手 当 の 配 偶 者 への 支 給 の 要 件 は 年 収 130 万 円 となっている 6

2 配 偶 者 控 除 見 直 しによる 家 計 の 可 処 分 所 得 への 影 響 1 政 府 税 制 調 査 会 で 示 されている 方 向 性 配 偶 者 控 除 の 見 直 しは 女 性 の 就 労 拡 大 を 狙 う 観 点 から 進 めるべきである ただ 単 純 に 配 偶 者 控 除 を 廃 止 すれば 働 く 既 婚 女 性 のいる 子 育 て 世 帯 へも 負 担 増 になってしまう 労 働 不 足 と 同 時 に 少 子 化 も 大 きな 課 題 となっているわが 国 では 配 偶 者 控 除 見 直 しにあたっては 特 に 子 育 て 世 帯 への 配 慮 は 重 要 だろう 政 府 税 制 調 査 会 では 働 き 方 の 選 択 に 対 して 中 立 的 な 税 制 の 構 築 をはじめとする 個 人 所 得 課 税 改 革 に 関 する 論 点 整 理 ( 第 一 次 レポート) において 配 偶 者 控 除 の 見 直 しについては 3 つ 大 きな 方 向 性 が 既 に 提 示 されている ( 図 表 9) 方 向 性 1 15 : 配 偶 者 控 除 の 廃 止 方 向 性 2 16 : 配 偶 者 控 除 に 代 えて 配 偶 者 の 所 得 の 計 算 において 控 除 しきれなかった 基 礎 控 除 を 納 税 者 本 人 に 移 転 するための 仕 組 み(いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 )の 導 入 方 向 性 3 : 配 偶 者 控 除 に 代 えて 諸 控 除 のあり 方 を 全 体 として 改 革 する 中 で 夫 婦 世 帯 に 対 し 配 偶 者 の 収 入 にかかわらず 適 用 される 新 たな 控 除 の 創 設 また 税 制 調 査 会 では 人 口 減 少 という 大 きな 構 造 変 化 を 踏 まえれば 今 後 の 社 会 においては 結 婚 し 夫 婦 共 に 働 きつつ 子 どもを 産 み 育 てるといった 世 帯 に 対 する 配 慮 の 重 要 性 が 高 まる と 指 摘 し 配 偶 者 控 除 の 見 直 しについては 全 ての 方 向 性 で 子 育 て 支 援 の 拡 充 が 検 討 されている 財 源 について は 配 偶 者 控 除 の 見 直 しで 生 じる 増 収 分 を 子 育 て 支 援 の 拡 充 に 活 用 する 見 込 みだ 各 方 向 性 について 詳 細 な 制 度 は 明 示 されていないものの 方 向 性 1 配 偶 者 控 除 の 廃 止 について は 家 計 に 与 える 影 響 をある 程 度 予 測 できる 次 節 からは 配 偶 者 控 除 の 廃 止 時 の 家 計 に 与 える 影 響 につ いて 展 望 しよう 2 配 偶 者 控 除 の 廃 止 で 影 響 が 出 る 世 帯 は? 配 偶 者 控 除 を 廃 止 すれば 配 偶 者 特 別 控 除 についても 同 時 に 廃 止 されることが 予 想 される 廃 止 に より 影 響 が 出 る 世 帯 を 整 理 しておくと 控 除 が 適 用 されている 夫 片 働 き 妻 専 業 主 婦 世 帯 ( 妻 年 収 0 円 ) と 夫 婦 共 働 き 妻 年 収 141 万 円 未 満 (パートタイム 労 働 者 ) の 世 帯 が 主 に 負 担 増 となる 15 方 向 性 1の 派 生 案 として 配 偶 者 控 除 の 適 用 に 所 得 制 限 を 設 ける 案 16 方 向 性 2の 派 生 案 として いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 の 導 入 税 額 控 除 化 案 7

ⅰ) 配 偶 者 控 除 廃 止 による 影 響 妻 の 年 収 別 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 の 廃 止 によって 世 帯 の 負 担 がどの 程 度 変 化 するか 確 認 してみよう ( 図 表 10) 前 章 同 様 に 夫 年 収 550 万 円 の 場 合 配 偶 者 控 除 の 適 用 を 受 けている 妻 年 収 103 万 円 以 下 では 廃 止 により 7.2 万 円 程 度 の 負 担 増 となる 103 万 円 超 141 万 円 未 満 の 世 帯 では 103 万 円 超 105 万 円 未 満 で 7.2 万 円 105 万 円 以 上 110 万 円 未 満 で7 万 円 と 段 階 的 に 減 少 し 135 万 円 以 上 140 万 円 未 満 で 1.2 万 円 140 万 円 以 上 141 万 円 未 満 で 0.6 万 円 の 負 担 増 となる ( 図 表 10) ⅱ) 配 偶 者 控 除 廃 止 による 影 響 夫 の 年 収 別 次 に 妻 年 収 103 万 円 以 下 で 配 偶 者 控 除 を 全 額 適 用 できている 場 合 配 偶 者 控 除 廃 止 による 世 帯 の 負 担 増 加 額 を 夫 の 年 収 別 で 確 認 しよう( 図 表 11) 廃 止 による 影 響 は 夫 年 収 が 高 いほど 負 担 増 加 額 が 大 きくなる 夫 年 収 が 200~400 万 円 層 では 5.2 万 円 であるが 夫 年 収 が 1200 万 円 では ( 図 表 11) 12.2 万 円 となる しかし 年 収 に 対 する 負 担 割 合 でみると 夫 年 収 1000 万 円 層 では 1.0% 程 度 で 夫 年 収 200 万 円 層 では 2.5% 程 度 と 低 所 得 層 ほど 負 担 割 合 が 高 くなる つまり 配 偶 者 控 除 を 廃 止 すると 名 目 の 負 担 増 加 額 は 高 所 得 層 になるほど 大 きいものの 負 担 割 合 は 低 所 得 者 の 方 が 大 きい ⅲ) 配 偶 者 控 除 廃 止 + 子 育 て 支 援 策 を 想 定 した 場 合 の 影 響 夫 の 年 収 別 検 討 されている 子 育 て 支 援 策 について 詳 細 は 明 示 されていないものの 何 らかの 給 付 措 置 がとら れることが 予 想 できる 配 偶 者 控 除 の 廃 止 とあわせて 下 記 (A)~(C)の 3 つの 給 付 措 置 が 導 入 さ れたと 仮 定 し 家 計 への 影 響 を 確 認 しよう 子 育 て 支 援 策 (A) 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 なし 子 育 て 支 援 策 (B) 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 あり 子 育 て 支 援 策 (C) 年 間 5 万 円 給 付 所 得 制 限 あり 8

加 えて 所 得 制 限 を 設 け 年 収 900 万 円 以 上 17 には 子 育 て 支 援 給 付 を 支 給 しないこととする また 子 育 て 支 援 給 付 策 は 子 ども 人 数 についても 加 味 していない (A) 子 育 て 世 帯 に 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 なし まず(A)について 確 認 すると 夫 年 収 200~400 万 円 の 世 帯 では 低 所 得 者 層 は 子 育 て 支 援 給 付 額 (10 万 円 )が 配 偶 者 控 除 の 廃 止 による 負 担 増 ( 約 7.2 万 円 )を 上 回 るため 可 処 分 所 得 は 4.8 万 円 増 加 する( 図 表 12) 一 方 夫 年 収 700 万 円 以 上 になると 配 偶 者 控 ( 図 表 12) 除 の 廃 止 による 負 担 増 が 子 育 て 支 援 給 付 額 を 上 回 るため 可 処 分 所 得 は 減 少 する 中 高 所 得 者 層 は 配 偶 者 控 除 廃 止 による 負 担 の 増 額 が 大 きい 配 偶 者 控 除 廃 止 による 名 目 の 負 担 額 は 低 所 得 層 ほど 小 さくなるため 定 額 の 給 付 措 置 は 低 所 得 層 ほど 恩 恵 は 大 きい また 中 高 所 得 層 でも 負 担 増 による 可 処 分 所 得 の 減 少 割 合 は 0.2% 程 度 と 低 い 水 準 に 留 まる (B) 子 育 て 世 帯 に 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 あり 次 に(A)に 所 得 制 限 を 設 けた(B)について ( 図 表 13) 確 認 しよう( 図 表 13) 所 得 制 限 が 設 けられたことで 1000 万 円 を 超 える 高 所 得 層 では 名 目 の 負 担 額 は ( A)に 比 べ 10 万 円 程 度 増 加 ( 図 表 15) もっとも 負 担 割 合 でみれば(A)に 比 べ 0.2% 程 度 から 1% 程 度 と 上 昇 幅 はわずかに 留 まっている( 図 表 16) 給 付 策 導 入 にあたっては 必 要 財 源 が 問 題 になるこ とから 所 得 制 限 の 導 入 が 妥 当 と 判 断 される 可 能 性 が 高 い (C) 子 育 て 世 帯 に 年 間 5 万 円 給 付 所 得 制 限 あり 次 に 給 付 額 を 年 間 5 万 円 に 減 額 した(C)に ( 図 表 14) ついても 確 認 しよう( 図 表 14) 給 付 水 準 が 5 万 円 の 場 合 配 偶 者 控 除 の 廃 止 による 負 担 増 が 全 年 収 層 で 給 付 額 を 上 回 る 低 所 得 層 においても 負 担 増 となることから 給 17 現 在 の 児 童 手 当 制 度 において 所 得 制 限 が 設 けられていることから 新 たな 子 育 て 給 付 措 置 にも 同 水 準 の 所 得 制 限 が 設 けられる 可 能 性 は 高 いため そもそも 合 計 所 得 が 1,000 万 円 を 超 えている 場 合 ( 給 与 の 年 収 でいうと 約 1230 万 円 を 超 えている 場 合 配 偶 者 特 別 控 除 は 適 用 できない そのため 試 算 は 夫 年 収 の 1200 万 円 までとしている 9

付 水 準 については 検 討 の 余 地 があるものの 夫 年 収 別 にみた 年 収 に 対 する 世 帯 の 負 担 割 合 は 概 ねフ ラット 化 しており 0.24~1.0% 程 度 に 収 まっている( 図 表 16) 現 在 の 税 制 から 家 計 への 影 響 を 最 小 限 に 留 めるという 視 点 からすると 今 回 検 討 した 中 では(C)の 給 付 水 準 は 5 万 円 かつ 所 得 制 限 を 設 ける ケースは 一 つの 目 安 となろう ( 図 表 15) ( 図 表 16) (A) 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 なし (B) 年 間 10 万 円 給 付 所 得 制 限 あり (C) 年 間 5 万 円 給 付 所 得 制 限 あり 単 純 に 配 偶 者 控 除 を 廃 止 すれば 妻 年 収 141 万 円 未 満 である 世 帯 は 負 担 増 となる その 場 合 低 所 得 層 かつ 専 業 主 婦 またはパート 世 帯 については 配 慮 が 必 要 と 思 われるが 廃 止 による 負 担 増 分 以 上 の 子 育 て 支 援 と 給 付 金 を 支 給 することで 子 育 て 世 帯 の 低 所 得 者 層 には 配 慮 した 措 置 をとることができる もっとも 政 府 税 調 が 指 摘 しているように 子 どものいない 低 所 得 者 層 の 世 帯 への 負 担 増 に 対 しては 別 途 配 慮 する 必 要 があるか 検 討 が 必 要 だろう 制 度 改 正 による 家 計 の 可 処 分 所 得 の 影 響 イメージ 減 少 可 処 分 所 得 の 減 少 ( 負 担 増 ) 増 加 可 処 分 所 得 の 増 加 ( 負 担 減 ) 廃 止 のみ A B C 配 偶 者 控 除 と 配 偶 者 控 除 を 廃 止 した 場 合 廃 止 + 所 得 制 限 なし 年 間 10 万 円 給 付 廃 止 + 所 得 制 限 あり 年 間 10 万 円 給 付 廃 止 + 所 得 制 限 あり 年 間 5 万 円 給 付 1 片 働 き 専 業 主 婦 ( 妻 年 収 0 万 円 ) 減 少 減 少 減 少 減 少 2 共 働 き 子 なし( 妻 年 収 141 万 円 未 満 ) 減 少 減 少 減 少 減 少 3 共 働 き 子 なし( 妻 年 収 141 万 円 以 上 ) 影 響 なし 影 響 なし 影 響 なし 影 響 なし 1+ 子 あり 2+ 子 あり 減 少 減 少 低 所 得 層 増 加 高 所 得 層 減 少 低 所 得 層 増 加 高 所 得 層 やや 減 少 (ほぼ 影 響 なし) 低 所 得 層 増 加 高 所 得 層 減 少 低 所 得 層 増 加 高 所 得 層 減 少 やや 減 少 (ほぼ 影 響 なし) 低 所 得 層 増 加 高 所 得 層 減 少 3+ 子 あり 影 響 なし 増 加 増 加 増 加 10

3 おわりに 配 偶 者 控 除 の 見 直 しによる 家 計 に 与 える 影 響 を 概 観 すると 配 偶 者 控 除 は 税 制 上 の 優 遇 措 置 である ことから 廃 止 すれば 専 業 主 婦 世 帯 共 働 き( 会 社 員 パート 年 収 141 万 円 未 満 ) 世 帯 などで 負 担 増 となるものの 同 時 に 子 育 て 世 帯 への 支 援 策 の 拡 充 を 行 えば 子 育 て 世 帯 を 中 心 に 負 担 を 回 避 できる 例 えば 所 得 制 限 付 きで 子 育 て 給 付 金 を 支 給 するといった 施 策 が 導 入 されると 予 測 するが 年 間 5 万 円 程 度 の 給 付 金 を 支 給 することが 可 能 であれば 低 所 得 層 子 育 て 世 帯 の 負 担 増 をほぼ 回 避 できる 給 付 額 をさらに 増 やすことができれば 主 に 低 所 得 層 子 育 て 世 帯 の 負 担 を 軽 減 できる また 廃 止 に よる 高 所 得 層 の 負 担 増 は 年 収 に 対 する 負 担 割 合 でみれば 低 所 得 層 ほど 高 くないことから 給 付 金 支 給 にあたっては 一 定 の 所 得 制 限 を 設 けることも 妥 当 であると 考 えられる これらは 働 き 手 を 増 やす 子 育 て 世 帯 を 支 援 する 低 所 得 者 に 配 慮 する といった 現 状 の 日 本 が 向 かうべき 方 向 性 に 合 致 していると 思 われる ただし 見 直 しにより 世 帯 によって 負 担 増 と 負 担 減 となる 世 帯 が 生 じることから 国 民 には 丁 寧 に 説 明 する 必 要 があろう 特 に 配 偶 者 控 除 の 見 直 しによ って 生 まれる 財 源 は 子 育 て 世 帯 または 低 所 得 者 対 策 に 重 点 的 にまわすべきだ 配 偶 者 控 除 の 見 直 しは 女 性 の 活 躍 を 妨 げる 一 つの 壁 を 解 消 することにすぎない 本 稿 で 紹 介 した 壁 を 解 消 できても 家 事 育 児 介 護 などの 事 情 で 働 く 時 間 を 増 やしたくても 増 やせないという 現 状 もある 男 性 の 家 事 育 児 への 参 画 促 進 や 保 育 環 境 の 整 備 そして 長 時 間 労 働 の 見 直 しなど 多 様 な 働 き 方 ができる 環 境 を 整 えていくことも 必 要 だ そのような 施 策 も 同 時 に 進 めていくことができれば 配 偶 者 控 除 の 見 直 しに 対 する 理 解 も 得 られやすくなるだろう 女 性 の 活 躍 推 進 一 億 総 活 躍 社 会 実 現 に 向 けた 改 革 は 始 まったばかりであり 今 後 も 一 つ 一 つ 丁 寧 な 取 り 組 みが 求 められる ============================================= ( 参 考 ) いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 の 導 入 で 影 響 が 出 る 世 帯 は? ⅰ) 二 重 の 控 除 と 移 転 的 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 に 対 しては 就 労 調 整 の 原 因 と なっている 問 題 とは 別 に 税 の 公 平 性 という 観 点 からも 二 重 の 控 除 という 問 題 点 が 指 摘 されている 二 重 の 控 除 とは ある 夫 婦 世 帯 で 妻 年 収 が 65 万 円 超 141 万 円 未 満 の 場 合 それ 以 外 の 世 帯 と 比 べると 控 除 適 用 額 が 最 大 で 38 万 円 多 く 適 用 されることである( 図 表 17) 具 体 的 には 妻 は 年 収 が 65 万 円 以 下 であれ ば 妻 が 受 ける 控 除 は 給 与 所 得 控 除 のみであ ( 図 表 17) 11

るが 年 収 が 65 万 円 超 141 万 円 未 満 の 場 合 妻 は 給 与 所 得 控 除 の 65 万 円 分 に 加 えて 基 礎 控 除 が 適 用 される 一 方 で 夫 側 にも 103 万 円 までは 配 偶 者 控 除 141 万 円 までは 配 偶 者 特 別 控 除 が 適 用 されて いるから 妻 年 収 が 65 万 円 超 141 万 円 未 満 の 層 だけ 二 重 に 控 除 を 受 けていることになる 一 般 的 な 世 帯 類 型 で 考 えれば 妻 年 収 が 65 万 円 超 141 万 円 未 満 に 当 てはまる 世 帯 は 夫 が 正 社 員 妻 がパート 社 員 である 場 合 が 想 定 される 配 偶 者 控 除 は 夫 正 社 員 で 妻 パート 社 員 ( 妻 年 収 が 65 万 円 超 141 万 円 未 満 )を 妻 年 収 65 万 円 以 下 に 該 当 する 専 業 主 婦 世 帯 や 妻 年 収 141 万 円 以 上 に 該 当 する 夫 婦 共 に 正 社 員 で 共 働 き 世 帯 よりも 手 厚 く 優 遇 しているということなる そこで 夫 婦 2 人 で 受 けられる 控 除 の 合 計 額 が 妻 年 収 の 左 右 されない(つまりは 世 帯 類 型 と 違 いに 左 右 されない) いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 導 入 が 案 として 挙 げられている 夫 婦 の 合 計 控 除 額 について 妻 の 年 収 に 左 右 されないということは 女 性 の 就 労 調 整 の 要 因 ともならないことから 今 回 の 配 偶 者 控 除 見 直 しの 目 的 とも 合 致 する ⅱ)いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 の 導 入 における 影 響 妻 の 年 収 別 いわゆる 移 転 的 基 礎 控 除 が 導 入 された 場 合 の 影 響 ( 図 表 18) について 確 認 しよう( 図 表 18) 二 重 の 控 除 の 恩 恵 を 受 けられなくなることで 妻 年 収 65 万 円 超 141 万 円 未 満 である 世 帯 が 負 担 増 とな る 導 入 前 の 妻 年 収 103 万 円 の 世 帯 は 妻 の 基 礎 控 除 と 夫 の 配 偶 者 控 除 を 全 額 適 用 できていた(= 二 重 の 控 除 の 恩 恵 を 最 も 受 けていた)ので 負 担 増 の 額 が 最 も 大 きい この 時 の 負 担 増 の 額 は 配 偶 者 控 除 の 廃 止 により 妻 年 収 103 万 円 以 下 の 世 帯 が 負 担 増 と なる 額 と 同 額 となる( 夫 年 収 550 万 円 のケースで7.2 万 円 ) 夫 の 年 収 別 の 負 担 増 の 額 の 変 化 については 2 章 2 - ii を 参 照 12