Ⅱ. 中 小 製 造 業 の 自 立 化 とネットワーク 1. 中 小 製 造 業 の 自 立 化 とは 我 々は 今 回 の 北 九 州 市 中 小 製 造 業 の 自 立 化 に 向 けた 調 査 研 究 会 において 中 小 製 造 業 が 自 立 化 するためのひとつの 手 段 として ネットワーク 化 が 有 効 であると 考 えている そこでまず ネットワーク 化 について 議 論 する 前 に 中 小 製 造 業 の 自 立 化 についてみておこう これまで 中 小 製 造 業 は 大 企 業 など 親 企 業 の 下 請 として 位 置 づけられることが 多 く 親 企 業 か らの 発 注 によって 仕 事 量 や 受 注 価 格 などが 決 められていた また 多 くの 下 請 企 業 は 特 定 親 企 業 を 中 心 とした 取 引 をしてきたが これを 親 企 業 側 からみると 下 請 企 業 を 自 社 のグループ 内 に 囲 い 込 む 系 列 化 を 図 ってきたのである 業 界 内 では 親 企 業 どうしの 熾 烈 な 競 争 が 行 なわれているが 製 品 差 別 化 を 図 るためには 部 品 レ ベルから 差 別 化 を 図 る 必 要 がある 系 列 化 により 親 企 業 側 は 下 請 企 業 に 差 別 化 した 部 品 作 りを 要 請 したのである また 下 請 企 業 側 も 差 別 化 した 部 品 作 りをするかわりに 親 企 業 との 長 期 取 引 が 半 ば 暗 黙 裡 に 保 証 されていた その 結 果 そうした 保 証 がなければリスクの 大 きい 専 用 機 の 導 入 も 進 んで 行 ったのである 長 期 取 引 を 前 提 とした 系 列 化 は コスト 面 でも 有 効 に 機 能 した 成 熟 化 社 会 において 供 給 が 需 要 を 上 回 るようになると 製 品 の 価 格 競 争 が 活 発 化 するが 製 品 価 格 を 下 げるため 勢 いその 矛 先 は 下 請 企 業 に 向 けられた 下 請 企 業 側 はこうした 親 企 業 側 からの 圧 力 に 対 し 血 の 滲 み 出 る 思 いで 合 理 化 省 力 化 などコストダウンに 励 み 親 企 業 の 要 求 に 応 えたのである このことが 結 果 として 下 請 企 業 側 の 技 術 力 を 高 めたことは 否 めない それはさておき こうした 血 の 滲 むよう な 努 力 をしてもなお 下 請 企 業 が 親 企 業 の 下 請 として 行 動 してきたのは 暗 黙 裡 に 長 期 取 引 が 保 証 されていたからにほかならない 本 当 に 困 ったときは 親 企 業 が 面 倒 を 見 てくれるという 期 待 があったのである しかし 円 高 やグローバル 化 により 事 態 は 一 変 する すなわち 海 外 から 安 価 な 部 品 や 製 品 が 入 ってくると 製 品 を 作 る 親 企 業 の 中 にも 海 外 の 部 品 を 採 用 するところが 現 れる さらに 競 争 がグローバル 化 するようになると もはや 国 内 だけで 生 産 していたのでは 海 外 メーカーとの 競 争 に 太 刀 打 ちできないことから 親 企 業 自 らも 海 外 で 生 産 するようになる 海 外 で 生 産 するように なると 部 品 の 現 地 調 達 率 も 高 まることから これまでの 下 請 企 業 との 系 列 取 引 は 見 直 されること になり ここに 日 本 の 特 徴 的 な 取 引 行 動 であった 長 期 取 引 が 崩 壊 した 長 期 取 引 が 崩 壊 したことで 下 請 企 業 側 にも 変 化 が 生 じる これまでは 親 企 業 の 発 注 で 成 り 立 っていたが 下 請 企 業 にも 自 立 が 求 められるようになったのである ここで 自 立 化 の 方 向 につい て 見 てみよう 下 請 企 業 の 自 立 化 ( 脱 下 請 )には 大 きく2つの 方 向 があると 考 える ひとつは 自 社 製 品 を 持 つことで 完 全 な 脱 下 請 である 今 ひとつは 独 自 技 術 をベースに 提 案 型 の 受 注 企 業 - 2 -
になることである 後 者 の 場 合 は 発 注 元 があるという 点 では 下 請 と 同 じであるが 一 方 的 に 親 企 業 から 仕 事 を 与 えられるのではなく 社 会 的 に 対 等 な 立 場 で 受 注 単 価 や 納 期 を 巡 って 交 渉 でき る 点 で 異 なる この 自 立 化 にネットワークが 有 効 に 機 能 する 自 社 製 品 を 持 つ 場 合 のことを 考 えてみよう 大 企 業 のようにヒト モノ 金 情 報 といった 経 営 資 源 が 豊 富 にあれば 1 社 単 独 で 自 社 製 品 を 持 つことも 可 能 である また 規 模 が 小 さくてもニッチ 市 場 をうまく 見 つけ 出 し 自 社 製 品 を 供 給 している 中 小 製 造 業 もある しかし 多 くの 場 合 中 小 製 造 業 がネットワークを 組 むことで お 互 いの 不 足 部 分 を 補 完 することができる 連 結 の 経 済 が 発 揮 されるのである また 大 企 業 より も 小 回 りが 効 く 分 スピードの 経 済 が 期 待 でき 優 位 に 立 つ 可 能 性 もある 次 に 提 案 型 の 受 注 企 業 の 場 合 を 考 えてみよう この 場 合 も1 社 単 独 でそうした 企 業 になるこ とはもちろんであるが 共 同 受 注 方 式 を 採 用 して 提 案 型 になることが 考 えられる 近 年 部 品 の ユニット 化 が 進 んでいるが ユニット 化 はいくつもの 部 品 の 組 み 合 わせであるため 共 同 受 注 グ ループでユニット 部 品 を 受 注 し これをメンバー 企 業 の 協 力 によってひとつの 部 品 に 仕 上 げるの である 2.ネットワークの 定 義 広 辞 苑 によると ネットワークとは 網 状 組 織 のことを 言 うが 本 報 告 書 では 複 数 の 中 小 企 業 が 自 らの 主 体 としての 行 動 ( 基 本 的 には 企 業 であるから 営 利 活 動 のための 行 為 )とは 別 に あるいは 主 体 の 行 動 を 促 進 するため 協 同 して 何 かを 行 うための 組 織 をネットワークと 言 う こととする ところで 中 小 企 業 は 大 企 業 と 比 べ 規 模 が 小 さいことから ヒト モノ 金 情 報 の 経 営 資 源 において 限 りがあり これを 補 うため 古 くから 協 同 化 等 の 組 織 化 政 策 が 講 じられてきた 組 織 化 は 複 数 の 企 業 がある 目 的 を 遂 行 するための 取 り 組 みであるから 一 種 のネットワークであり 組 織 化 政 策 はそれを 促 進 するための 政 策 と 位 置 づけできる 協 同 化 の 具 体 的 な 形 態 が 協 同 組 合 であるが そこでは 一 人 は 万 人 のために 万 人 は 一 人 のために という 相 互 扶 助 の 理 念 により 中 小 企 業 の 組 織 化 を 図 り 規 模 の 小 さなことに 起 因 する 不 利 の 是 正 を 行 おうとした この 協 同 組 合 の 相 互 扶 助 に 関 しては 相 反 した 議 論 がある 1 すなわち 相 互 扶 助 を 運 営 理 念 とす ると 自 由 競 争 を 原 理 とする 資 本 主 義 社 会 の 中 ではいかにも 牧 歌 的 で 組 合 員 の 自 助 努 力 を 妨 げ るのではないか というのが 一 方 の 主 張 である これに 対 し 協 同 組 合 は 自 助 を 否 定 するのでは なく むしろ 自 助 を 促 進 するための 組 織 であるとするのがもう 一 方 の 主 張 である いずれにせよ 協 同 組 合 では 組 合 員 のための 組 合 員 の 必 要 とする 事 業 を 行 う この 点 が 資 本 組 1 百 瀬 恵 夫 篠 原 勲 編 著 事 業 創 造 論 東 洋 経 済 新 報 社 2003 年 241 頁 - 3 -
織 として 不 特 定 多 数 を 対 象 に 事 業 を 行 う 会 社 とは 異 なる 協 同 組 合 の 事 業 は それ 自 体 の 利 益 を 目 的 に 行 われるのではなく 組 合 員 の 経 済 を 直 接 助 成 することを 目 的 に 行 われる 2 こうした 協 同 組 合 の 考 え 方 からすると 親 企 業 と 下 請 企 業 で 形 成 される 垂 直 的 企 業 間 関 係 をベ ースにした 企 業 グループは 今 回 定 義 したネットワークの 範 疇 には 入 らないことになる 3.これまでの 異 業 種 交 流 グループと 現 在 の 中 小 企 業 ネットワーク (1) 官 主 導 の 依 存 型 から 民 主 導 による 自 立 型 へ 中 小 企 業 によるネットワークの 歴 史 は 古 い 特 に 同 業 種 のネットワークであれば 工 場 が 多 数 立 地 するような 場 所 では 古 くから 自 然 発 生 的 に 発 生 していたものと 考 えられる 一 方 異 業 種 によるネットワークでは 記 録 されているものでは 1970 年 に 大 阪 府 で 誕 生 した 新 製 品 開 発 研 究 会 および 省 力 化 技 術 研 究 会 が 最 も 古 いとされる 3 これは 大 阪 科 学 技 術 センターにおい て 中 堅 中 小 企 業 がこれからの 厳 しい 環 境 変 化 に 対 応 して 成 長 発 展 していくためには 異 種 技 術 の 導 入 組 み 合 わせが 不 可 欠 であり そのためには 異 業 種 企 業 が 一 堂 に 会 し 相 互 に 環 境 の 変 化 を 予 測 し 経 営 ノウハウや 技 術 交 流 を 行 う 場 をつくり いわば 経 営 資 源 の 補 完 が 行 える 仕 組 みをセンターにつくる 必 要 がある との 問 題 意 識 から 両 研 究 会 を 立 ち 上 げたのである このあと 全 国 で 異 業 種 交 流 が 増 えていくが グループ 自 体 は 自 然 発 生 的 なものではなく 都 道 府 県 公 設 試 験 研 究 機 関 などの 行 政 機 関 や 商 工 会 議 所 中 小 企 業 団 体 中 央 会 などの 商 工 団 体 が 音 頭 を 取 ってメンバーを 集 め 結 成 した 場 合 がほとんどであった 4 国 の 中 小 企 業 施 策 において も 71 年 頃 から 異 業 種 交 流 の 必 要 性 が 強 調 され 始 め その 後 中 小 企 業 の 抱 える 各 種 問 題 を 情 報 交 換 できる 機 会 を 提 供 しようと 技 術 市 場 交 流 プラザ の 設 立 を 促 した 81 年 をもって 異 業 種 交 流 元 年 としている このあと 都 道 府 県 単 位 でプラザが 設 置 され 技 術 交 流 や 技 術 移 転 のた めに 異 業 種 交 流 が 行 われたが 88 年 4 月 の 融 合 化 法 5の 制 定 により 中 小 企 業 の 新 分 野 開 拓 とい う 一 歩 進 んだ 目 的 のための 手 段 として 異 業 種 交 流 が 位 置 づけられた 融 合 化 法 は 96 年 4 月 まで の 時 限 立 法 であったが これにより 昭 和 の 終 わりから 平 成 の 初 期 にかけて 全 国 で 異 業 種 交 流 グループが 結 成 された 実 際 融 合 化 法 に 基 づいて 設 立 されたグループ 数 は 中 小 企 業 事 業 団 に 登 録 されているもので 88 年 に 1,527 であったものが 95 年 3 月 には 2,928 とほぼ 倍 増 している 6 2 同 上 書 241 頁 3 小 畑 巖 異 業 種 交 流 と 中 小 企 業 商 工 金 融 1987 年 11 月 4 中 小 企 業 総 合 研 究 機 構 企 業 革 新 のための 企 業 間 ネットワークに 関 する 研 究 1995 年 度 95 頁 5 正 式 名 称 は 異 分 野 中 小 企 業 者 の 知 識 の 融 合 による 新 分 野 の 開 拓 の 促 進 に 関 する 臨 時 措 置 法 6 異 業 種 交 流 グループ 自 体 は 組 合 や 共 同 出 資 会 社 の 形 態 をとっているものも 一 部 にあるが 大 半 は 法 律 によら ない 任 意 団 体 のため 中 小 企 業 事 業 団 に 登 録 されていないものも 多 く 実 際 にはかなり 多 くの 異 業 種 交 流 グル ープが 結 成 され 活 動 している( 中 小 企 業 庁 中 小 企 業 白 書 1998 年 版 351 頁 ) - 4 -
異 業 種 交 流 グループ 数 参 加 企 業 数 の 推 移 資 料 : 中 小 企 業 庁 中 小 企 業 白 書 1998 年 版 267 頁 融 合 化 法 が 制 定 された 背 景 として 円 高 の 定 着 技 術 革 新 の 急 速 な 進 展 国 民 ニーズの 多 様 化 高 度 化 等 の 新 たな 経 済 的 環 境 に 即 応 して 一 般 的 に 事 業 分 野 が 狭 く 経 営 資 源 の 蓄 積 の 乏 しい 中 小 企 業 が 構 造 転 換 を 円 滑 に 進 めていけるよう 事 業 分 野 を 異 にする 中 小 企 業 が 協 同 してそれぞ れの 技 術 や 経 営 に 関 する 知 識 を 融 合 させることにより 新 たな 製 品 やサービスを 開 発 する 融 合 化 を 促 進 していくことがある 7 具 体 には 融 合 化 法 を 核 として 異 分 野 中 小 企 業 者 の 交 流 ( 異 分 野 中 小 企 業 者 の 出 会 い 情 報 交 換 等 ) 開 発 ( 組 合 による 技 術 サービスの 開 発 ) 事 業 化 ( 開 発 の 成 果 の 利 用 需 要 開 拓 )の 各 段 階 に 対 応 した 支 援 策 が 講 じられたのである 異 業 種 交 流 グループそのものは 任 意 団 体 なども 含 まれるが 融 合 化 法 にもとづくもので 融 合 化 組 合 が 行 う 開 発 案 件 に 対 しては 国 と 県 からの 全 額 補 助 が 受 けられた このため 都 道 府 県 や 中 小 企 業 団 体 中 央 会 がこぞって 異 業 種 交 流 グループの 組 織 化 を 図 ったのである すなわち 県 や 中 央 会 の 呼 びかけで 異 業 種 交 流 プラザ のような 任 意 団 体 が 組 織 され 定 期 的 に 講 演 会 や 施 設 見 学 会 が 実 施 された そうして 集 まった 企 業 の 中 から 技 術 士 などが 中 心 となり 何 らかの 開 発 に 向 けた 異 業 種 交 流 グループが 組 織 されたのである 福 岡 県 では 88 年 の( 協 )F.Ⅰ.T を 皮 切 りに 96 年 にかけて 合 計 18 のグループが 結 成 された しかし この 18 のグループのうち 現 在 も 活 発 に 活 動 をしているものは 皆 無 である この 失 敗 を 振 り 返 ると 当 時 の 多 くの 異 業 種 交 流 が 官 のお 膳 立 てで 始 められたということと 全 額 補 助 金 による 丸 抱 えだったという 意 味 で 依 7 中 小 企 業 庁 中 小 企 業 白 書 1988 年 版 - 5 -
存 型 だったことがある 8 なお 当 時 の 異 業 種 交 流 グループからの 成 果 として 人 脈 の 拡 大 (61%) 情 報 の 収 集 (41%) が 上 位 2 項 目 としてあがっている この 2 つの 項 目 については 加 入 目 的 での 順 番 は 逆 転 してい るものの 同 じく 上 位 2 項 目 に 上 がっており この2 点 に 関 する 満 足 度 は 高 い しかし 加 入 目 的 の3 番 目 にあがっていた 新 規 事 業 分 野 に 進 出 (30%)に 対 する 実 際 の 成 果 が7%だったこと や 自 社 既 存 技 術 の 向 上 新 製 品 の 開 発 でも 加 入 目 的 を 大 きく 下 回 っており 上 位 2 項 目 以 外 の 達 成 度 は 低 い 9 これまでの 異 業 種 交 流 グループが 官 主 導 による 依 存 型 であったことと 比 べると 今 回 我 々 が 注 目 している 中 小 企 業 ネットワークは 地 域 に 対 する 危 機 意 識 や 問 題 意 識 を 持 った 企 業 が 中 心 となり 自 立 的 に 立 ち 上 げたところが 多 い メンバー 企 業 が 問 題 意 識 を 共 有 して 会 を 運 営 するのと 官 が 加 入 企 業 を 募 集 して 会 の 運 営 に 当 たらせるのとでは 結 果 に 違 いが 出 るのは 当 然 である 今 回 の 中 小 企 業 ネットワークは 民 主 導 の 自 立 型 といえ 地 域 に 対 する 危 機 意 識 を 強 く 持 ったリー ダーが 中 心 となってグループをまとめ ネットワークを 運 営 しているところに 特 徴 がある ただ し ネットワークの 立 ち 上 がりを 見 ると いきなりグループが 立 ち 上 がったのではなく 多 くは ネットワークを 生 み 出 す 基 盤 のなかから 生 まれている 基 盤 としては たとえばアドック 神 戸 の 中 小 企 業 家 同 友 会 や 京 都 試 作 ネットの 京 都 機 械 金 属 中 小 企 業 青 年 連 絡 会 ( 機 青 連 ) 東 大 阪 金 属 加 工 グループ HIT の 民 主 商 工 会 ガマダスの 熊 本 県 工 業 連 合 会 等 々がある これら 基 盤 の 上 に 問 題 意 識 を 共 有 した 中 小 企 業 がネットワークを 組 み 活 動 しているのである (2)インターネットの 普 及 とその 活 用 また これまでの 異 業 種 交 流 グループとの 違 いでいえば インターネットをフルに 活 用 してい ることがある わが 国 におけるインターネットの 急 速 な 普 及 は 最 近 になってからである 料 金 の 低 額 化 とともに 急 速 に 普 及 し 現 在 では 300 人 以 上 の 企 業 の 98.4%が 利 用 している インター ネットでの 受 発 注 や 図 面 のやりとりが 瞬 時 にできるようになったほか ホームページを 作 成 す ることで 不 特 定 のユーザーとも 取 引 する 途 が 開 けたのである 後 でも 触 れるように 京 都 試 作 ネット ではインターネットと 携 帯 電 話 をフル 活 用 することで ネット 経 由 の 仕 事 が 全 体 の 4 割 を 占 めるまでになっている 8 ただし 官 主 導 で 始 めた 場 合 でも メンバー 企 業 に 強 力 なリーダーが 出 現 すれば 展 開 が 変 わる 東 大 阪 市 では 今 も 異 業 種 交 流 グループのメンバー 集 めを 市 が 行 っており 2 年 間 に 限 って 補 助 金 も 出 している しかし た とえばロダン 21 では 立 ち 上 げ 期 こそ 官 が 主 導 したが メンバーのなかに 地 域 に 対 する 強 烈 な 危 機 意 識 を 持 った 人 がリーダーとなったことで その 後 の 運 営 は 民 主 導 となっている 9 前 掲 中 小 企 業 白 書 98 年 版 355~356 ページ なお 異 業 種 交 流 グループの 問 題 点 として 活 動 がマンネリ 化 (41%)がトップに 上 がっており 次 いで 各 社 の 業 況 に 格 差 がある (32%) 活 動 の 成 果 が 出 るまでに 時 間 がかかる (30%) 各 社 の 考 え 方 がバラバラ (18%) 活 動 方 針 が 不 明 確 (16%)などとなっている - 6 -
わが 国 世 帯 企 業 事 業 所 でのインターネット 普 及 率 の 推 移 出 典 : 総 務 省 情 報 通 信 白 書 2003 年 版 (3) 規 模 の 経 済 から 連 結 の 経 済 スピードの 経 済 へ これまで 中 小 企 業 は 規 模 の 小 さいことから 生 じる 不 利 不 足 の 是 正 のため 共 同 事 業 を 実 施 してきた たとえば 資 材 を 大 量 に 共 同 購 入 することで 規 模 の 経 済 を 発 揮 しようとし そのため のグループ 化 を 図 ってきた 異 業 種 交 流 グループの 時 には 先 に 触 れたように 加 入 目 的 のなかに 新 規 事 業 分 野 に 進 出 や 新 製 品 の 開 発 があがっていた 自 社 の 持 つ 技 術 と 他 社 の 技 術 を 組 み 合 わせるといった 融 合 化 は まさに 連 結 の 経 済 を 追 及 する 目 的 があったといえる しかし 当 時 の 異 業 種 交 流 グループ で 実 際 に 成 果 があがったものは 人 脈 の 拡 大 と 情 報 の 収 集 が 中 心 で 連 結 の 経 済 の 経 済 性 の 享 受 といった 点 では 不 十 分 だった 今 回 の 中 小 企 業 ネットワークは この 連 結 の 経 済 の 点 でも 大 きく 改 善 している その 大 きな 要 因 として 民 主 導 の 自 立 的 なネットワークであることがある 官 のお 膳 立 てによって 結 成 された ものでなく それぞれ 参 加 メンバーの 問 題 意 識 としてスタートしたことが お 互 いの 役 割 分 担 を 明 確 化 し また 単 なる 親 睦 会 的 組 織 でなく 意 思 と 目 的 を 持 った 組 織 として 機 能 していること がある さらに インターネットや 携 帯 電 話 などの IT をフルに 活 用 することで スピードの 経 済 を 発 揮 していることも 特 徴 となっている (4) 地 域 に 根 ざしたネットワーク インターネットでの 情 報 のやりとりや 取 引 は 地 域 を 越 え 国 境 も 越 える 今 回 の 我 々の 調 査 対 象 には 含 まれなかったが 現 在 活 動 中 の 中 小 企 業 ネットワークのなかにはインターネットの 特 徴 - 7 -
を 活 かし 全 国 から 会 員 を 集 めている NC ネットワーク 10 のようなグループもある しかし 今 回 我 々が 取 り 上 げたグループのほとんどは メンバーは 当 該 地 域 に 立 地 している そこでは 地 域 固 有 の 技 術 を 活 用 し 地 域 で 仕 事 を 確 保 したいという 想 いが 中 小 企 業 ネットワークを 立 ち 上 げた 大 きな 理 由 になっている もちろん 地 域 内 のグループ 企 業 で 仕 事 をするが 受 注 に 関 して はインターネットなどを 活 用 し 広 く 地 域 外 からも 受 注 している 4.ネットワークの 類 型 今 回 調 査 した 先 進 地 のネットワークは 大 きくは2つに 分 かれる 1つは 共 同 受 注 や 共 同 開 発 をするための 中 小 企 業 ネットワークで もうひとつは そうした 中 小 企 業 ネットワークを 生 み 出 す 基 盤 としてのネットワークである 中 小 企 業 ネットワークのなかには なんらかの 基 盤 の 中 から 生 まれたものと 基 盤 なしに 生 ま れたものがある 基 盤 がある 場 合 は そのなかで 行 なわれている 研 究 会 や 講 習 会 のようなものを 通 じて 共 通 の 問 題 意 識 や 価 値 観 が 醸 成 され 中 小 企 業 ネットワークが 形 成 される 中 小 企 業 ネットワークを 生 み 出 す 基 盤 には 自 治 体 大 学 地 域 活 性 化 のために 作 られた 株 式 会 社 や 第 3セクター 産 学 官 連 携 組 織 などの 様 々な 機 関 の 複 合 組 織 11 工 業 会 や 中 小 企 業 家 同 友 会 のような 各 種 団 体 組 織 がある ネットワークの 類 型 と 事 例 のポジショニング 中 小 企 業 ネットワーク 基 盤 あり a 基 盤 なし b ネットワーク 自 治 体 c 中 小 企 業 ネットワー クを 生 み 出 す 基 盤 大 学 d 第 3セクター 産 学 官 連 携 組 織 など 複 合 組 織 e 工 業 会 など 各 種 団 体 組 織 f 今 回 の 類 型 による 各 事 例 のポジショニング a アドック 神 戸 12 東 大 阪 金 属 加 工 グループ HIT 京 都 試 作 ネット ギアテック ロダン 21 異 業 種 交 流 会 テンメイツ ガマダス HoPE b なにわ 夢 工 房 10 NCnetwork(http://www.nc-net.or.jp)の 登 録 事 業 所 数 は 2004 年 1 月 4 日 現 在 で 12,305 事 業 所 11 近 年 の 複 合 組 織 は クラスターの 形 成 を 企 図 していることが 多 い また 中 小 企 業 ネットワークを 生 み 出 す 基 盤 のなかで 有 機 的 連 携 が 深 まり イノベーションなどが 活 発 化 すると クラスターとなる 12 アドック 神 戸 や HoPE については その 中 からさらに 共 同 開 発 グループや 共 同 開 発 に 向 けた 研 究 会 が 立 ち 上 がっており 中 小 企 業 ネットワークを 生 み 出 す 基 盤 の 範 疇 に 入 れることも 可 能 である しかしここでは それ ぞれの 中 小 企 業 家 同 友 会 を 基 盤 として 捉 え アドック 神 戸 や HoPE は 中 小 企 業 ネットワークとした - 8 -
c 東 大 阪 市 ( 佐 伯 市 13 ) d 岩 手 大 学 と INS 14 シリコンバレー e ノーステック 財 団 サイバーシルクロード 八 王 子 ( 社 ) 首 都 圏 産 業 活 性 化 協 会 (TAMA) 佐 伯 メカトロセンター f 15 熊 本 県 工 業 連 合 会 兵 庫 県 中 小 企 業 家 同 友 会 北 海 道 中 小 企 業 家 同 友 会 民 主 商 工 会 京 都 機 械 金 属 中 小 企 業 青 年 連 絡 会 なお 中 小 企 業 ネットワークは 基 盤 の 有 無 以 外 にもいくつかの 基 準 によって 類 型 化 できる ひとつは 目 的 によるもので 1 共 同 受 注 グループにように 外 部 からの 製 作 依 頼 に 応 えるため あ るいは 外 部 が 抱 える 問 題 解 決 のために 組 織 化 したものと 2 共 同 開 発 グループのように お 互 い が 得 意 とする 技 術 などの 経 営 資 源 を 持 ち 寄 り 市 場 に 製 品 を 販 売 することを 目 的 として 組 織 化 し たものがある 実 際 には 当 初 1でスタートしたものが2にも 乗 り 出 すなど 両 方 を 行 っている グループがある 二 つ 目 は 構 成 員 が 同 業 種 か 異 業 種 かといった 業 種 による 類 型 化 である 異 業 種 の 場 合 はさら に 1 業 種 1 社 の 完 全 な 異 業 種 である 場 合 と 全 体 では 異 業 種 であるが 複 数 の 同 一 業 種 が 構 成 員 になっている 場 合 がある 三 つ 目 は 組 織 化 されたグループが 株 式 会 社 などの 法 人 格 を 有 するか 任 意 団 体 であるかとい った 基 準 でも 類 型 化 することができる 次 章 では 上 の 類 型 に 基 づき 全 国 のネットワークグループの 現 状 と 課 題 について 見 る 13 佐 伯 市 については 佐 伯 メカトロセンターのところで 紹 介 している 14 INS の 場 合 は 事 例 で 見 るように 岩 手 大 学 の 教 員 以 外 に 岩 手 県 庁 の 職 員 が 設 立 に 大 きな 役 割 を 果 たしており c とdが 合 わさったものとも 見 ることができる 15 fについては 各 事 例 中 に 紹 介 している - 9 -