家 庭 科 分 科 会 家 族 家 庭 生 活 における 授 業 実 践 1 愛 知 教 育 大 学 附 属 高 等 学 校 橋 爪 友 美 子 愛 知 教 育 大 学 家 政 教 育 講 座 山 根 真 理 Ⅰ はじめに 家 族 家 庭 生 活 は 本 報 告 の 事 前 調 査 にもみられるように 家 庭 科 で 学 ぶ 内 容 の 中 で 必 ずしも 生 徒 たちが 学 ぶことを 大 きく 期 待 する 内 容 ではない しかし 青 年 たちが 自 らの 人 生 を 展 望 し 生 きるこ と と 社 会 のかかわりを 考 えるうえで 家 族 家 庭 生 活 は ひとつの 有 効 な 学 びの 糸 口 である 青 年 たちが 家 族 家 庭 生 活 を 学 ぶ 意 味 は その 難 しさと 表 裏 一 体 である 現 代 社 会 は 青 年 たちに とって 希 望 あふれる 人 生 の 展 望 を 持 つのは 難 しい 社 会 である 働 くこと に 関 しては 1990 年 代 後 半 以 降 非 正 規 化 が 進 行 し 長 期 的 な 人 生 展 望 が 持 ちにくい 状 況 が 続 いている そのような 労 働 状 況 を 反 映 して 家 族 については 安 定 した 近 代 家 族 を 形 成 する 基 盤 が 失 われてきている( 舩 橋 宮 本 編 著 : 2008 山 田 2005) 子 どもを 育 てる 家 族 の 経 済 格 差 は 拡 大 し 2 国 際 的 にみても 子 どもの 貧 困 率 は 高 いグループに 属 し 税 や 社 会 保 障 によって 再 配 分 しても 子 どもの 貧 困 率 は 是 正 されず かえって 高 まっていることが 指 摘 されている ( 子 どもの 貧 困 白 書 編 集 委 員 会 編 2009) 子 ども 青 年 たちが 生 活 す るなかで 格 差 や 貧 困 に 直 面 する 場 面 も 少 なくないと 考 えられる しかし 他 方 で 家 族 家 庭 の 価 値 は 家 庭 教 育 や 親 学 を 推 奨 する 政 策 動 向 だけでなく 社 会 的 な 風 潮 として 強 まっているように 思 われる ( 本 田 2008) 若 い 人 たちの 意 識 も 例 外 ではない 2012 年 に 内 閣 府 が 実 施 した 男 女 共 同 参 画 に 関 する 世 論 調 査 において 性 別 役 割 分 業 を 肯 定 する 人 の 割 合 が 前 回 調 査 より 増 加 し 20 代 の 年 齢 層 でその 傾 向 が 顕 著 にみられることも その 一 つの 現 れとみることがで きるように 思 う 3 離 婚 再 婚 の 増 加 や 晩 婚 化 などの 家 族 の 現 代 的 変 容 は 1970 年 代 半 ば 以 降 進 行 してい るが その 一 方 で 婚 外 子 差 別 撤 廃 や 夫 婦 別 姓 選 択 制 などのライフスタイル 中 立 に 向 けた 社 会 制 度 変 革 は 1990 年 代 以 降 社 会 的 議 論 の 俎 上 に 上 りはしているが 制 度 改 革 としては 実 現 していない 格 差 拡 大 家 族 の 現 代 的 変 容 家 族 家 庭 の 価 値 称 揚 が 混 在 する 現 代 の 状 況 は 青 年 たちが 確 実 な 現 実 認 識 をもって 人 生 を 展 望 することを 困 難 にしている しかし だからこそ 社 会 と 家 族 の 関 係 を 理 解 し たうえで 人 生 の 多 様 な 選 択 肢 と 人 生 を 支 える 社 会 制 度 や 人 間 関 係 網 の 可 能 性 を 知 るうえで 家 族 家 庭 生 活 の 学 びは 大 きな 意 義 を 持 っている 2 以 降 でまとめられている 授 業 報 告 は 2012 年 度 に 愛 知 教 育 大 学 附 属 高 等 学 校 2 年 生 の 生 徒 に 対 して 家 庭 科 の 中 で 行 われた 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 に 基 づくものである ライフコース 全 体 を 展 望 して 生 活 を 創 造 すること 社 会 とのかかわりで 家 族 家 庭 生 活 を 理 解 することを 目 標 においている 点 で 可 能 性 を 秘 めた 取 り 組 みと 位 置 づけることができるだろう 1
Ⅱ 授 業 実 践 の 目 的 高 等 学 校 新 学 習 指 導 要 領 (2009 年 3 月 告 示 )において 普 通 教 科 家 庭 ( 以 下 家 庭 科 という)の 目 標 について 家 族 家 庭 の 意 義 家 族 家 庭 と 社 会 との 関 わりについて 理 解 させる と 規 定 している これは 家 族 家 庭 についての 理 解 共 に 生 きる 生 活 観 の 育 成 家 庭 生 活 事 象 の 根 底 にある 原 理 原 則 に ついての 科 学 的 理 解 理 解 したことを 実 際 の 生 活 の 場 で 実 践 できるための 技 術 の 習 得 生 活 を 総 合 的 に 認 識 し 何 がよいかを 判 断 する 意 定 能 力 課 題 を 解 決 する 問 題 解 決 能 力 などを 育 成 し 家 庭 生 活 を 創 造 できる ようにすることを 目 指 している 家 族 家 庭 生 活 の 理 解 においては 生 活 するための 知 識 や 技 術 を 断 片 的 にとらえるのでなく 生 まれて から 死 ぬまでの 人 の 一 生 を 時 間 軸 としてとらえることが 重 要 である 人 の 一 生 の 各 ライフステージごとの 課 題 を 達 成 するために 生 活 資 源 や 生 活 活 動 などを 総 合 的 にとらえることによって 生 徒 自 身 が 現 在 や 将 来 の 生 活 に 関 心 を 持 って 学 習 を 進 め 家 庭 生 活 を 営 むための 実 践 的 な 態 度 を 育 てることができると 考 える 指 導 にあたっては 特 に 家 族 家 庭 が 社 会 とのかかわりの 中 で 機 能 していることについても 理 解 させ 家 庭 の 機 能 家 族 構 成 や 家 族 規 模 ライフスタイルなどが 大 きく 変 化 する 中 で 改 めて 家 族 家 庭 の 意 義 について 認 識 させたい また 授 業 を 通 して 自 分 らしく 生 きるとはどのようなことか 自 分 自 身 を 見 つめ 将 来 について 考 え また 現 在 の 家 族 ( 生 育 家 族 )とのコミュニケーションや 家 族 の 役 割 自 分 の 役 割 な どについて 考 え そして パートナーとの 出 会 い 結 婚 について 考 えることにより 自 分 で 創 る 家 族 ( 創 設 家 族 )についても 考 えさせ 将 来 は 男 女 が 協 力 して 創 る 家 庭 生 活 を 送 って 欲 しいと 考 える これらのことをふまえた 上 で 本 報 告 では 家 族 家 庭 の 意 義 家 族 家 庭 と 社 会 との 関 わりについ て 理 解 させる ため 本 校 家 庭 科 家 庭 基 礎 において 自 分 の 意 見 のみを 考 えるのでなく 他 人 の 意 見 も 聞 くことにより 様 々な 考 え 方 を 学 ぶために より 実 践 的 体 験 的 な 学 習 活 動 を 重 視 した 題 材 を 開 発 し た 実 践 事 例 について 紹 介 したい Ⅲ 研 究 方 法 (1) 事 前 アンケート 調 査 の 実 施 本 校 第 2 学 年 で 実 施 している 家 庭 科 の 年 度 初 めの 授 業 で 生 徒 へ 行 ったアンケートにおいて 家 庭 科 で 学 習 するそれぞれの 単 元 について 学 びたい 順 に 順 位 をつけてもらい 家 族 家 庭 生 活 に 関 して どれくら い 興 味 関 心 があるか?どんなことを 知 りたいと 思 っているのか? を 調 査 した (2) 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 実 践 授 業 の 概 要 は 以 下 の 通 りである 実 施 時 期 4 月 ~6 月 実 施 学 年 クラス 第 2 学 年 授 業 時 数 14 時 間 1 組 ~5 組 (3) 事 後 アンケート 調 査 の 実 施 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 に 配 当 している 14 時 間 の 最 後 の 授 業 で 家 族 家 庭 生 活 についての 分 野 中 でも 性 別 役 割 分 業 意 識 や 結 婚 観 家 族 観 について 調 査 した Ⅳ 事 前 アンケートの 結 果 年 度 はじめに 行 ったアンケート 項 目 とその 結 果 を 以 下 に 示 す 2
<アンケート 項 目 1> 家 庭 科 の 授 業 で 扱 う 以 下 のそれぞれの 項 目 について 学 びたい 順 に 順 位 をつけると? 1 家 族 家 庭 生 活 2 保 育 3 福 祉 4 食 生 活 5 衣 生 活 6 住 生 活 7 消 費 生 活 家 庭 経 済 8 生 活 設 計 表 1 事 前 アンケート 結 果 1 ( 人 数 ) 1 位 2 位 3 位 4 位 5 位 6 位 7 位 8 位 1 家 庭 家 庭 生 活 10 21 20 24 34 35 15 17 2 保 育 40 35 31 15 9 23 11 16 3 福 祉 5 7 12 25 33 33 38 20 4 食 生 活 93 43 14 14 7 7 2 0 5 衣 生 活 11 40 39 29 19 18 5 16 6 住 生 活 9 15 28 31 27 19 30 17 7 消 費 生 活 家 庭 経 済 8 7 18 23 17 16 47 36 8 生 活 設 計 3 10 16 14 29 24 26 52 不 明 無 回 答 14 15 15 18 18 18 19 19 計 193 193 193 193 193 193 193 193 100 90 80 70 60 50 40 30 20 1 家 族 家 庭 生 活 2 保 育 3 福 祉 4 食 生 活 5 衣 生 活 6 住 生 活 7 消 費 生 活 家 庭 経 済 8 生 活 設 計 10 0 1 位 2 位 3 位 4 位 5 位 6 位 7 位 8 位 図 1 事 前 アンケート 結 果 1( 人 数 ) 3
<アンケート 項 目 2> 家 庭 科 の 家 族 家 庭 生 活 の 項 目 で 学 んでみたいことは 何 ですか?( 日 常 生 活 の 疑 問 知 りたいことな ど 何 でも 良 い) 表 2 事 前 アンケート 結 果 2 ( ) 内 の 数 字 は 回 答 した 人 数 を 表 す < 回 答 数 :2 年 生 193 名 > 家 族 との 関 わり 方 (10) 自 分 らしい 生 き 方 (9) 家 族 と 法 律 (4) 家 族 の 意 味 (4) 自 分 らしさとは(4) 家 族 家 庭 の 問 題 (3) パートナーと 出 会 う(3) 家 族 について 知 りたい(3) 家 族 の 重 要 性 (2) どうすれば 良 い 生 活 を 送 れるか(2) 正 しい 生 活 の 仕 方 (2) 家 事 の 仕 方 (2) 家 族 家 庭 とは(2) 良 い 家 庭 の 築 き 方 (2) 今 自 分 がすべきことはなにか(2) 自 分 の 適 性 について 考 える(2) 以 下 すべて 回 答 者 1 名 自 分 らしさとは 自 分 の 存 在 意 義 について 自 立 について 考 える 人 生 について 働 くこと よりよい 生 き 方 人 生 哲 学 将 来 設 計 将 来 の 夢 について 生 い 立 ち 学 習 友 人 関 係 対 人 関 係 結 婚 とは ライフステージと 発 達 課 題 それぞれの 年 代 の 特 徴 夫 婦 円 満 の 秘 訣 家 庭 生 活 について 家 族 の 役 割 家 族 構 成 理 想 の 家 族 構 成 生 活 を 振 り 返 る 他 の 家 の 家 族 家 族 との 距 離 感 模 範 的 な 家 族 主 夫 について 昔 の 生 活 の 様 子 心 理 的 なこと 家 での 過 ごし 方 戸 籍 冠 婚 葬 祭 のマナーやルール 四 季 ごとの 伝 統 行 事 や 食 文 化 アンケート 項 目 1の 結 果 からは 家 庭 科 で 学 びたい 単 元 について 1 位 は 圧 倒 的 に 食 生 活 が 多 かっ た 次 に 保 育 そして 衣 生 活 が 続 く 住 生 活 は4 位 にあげた 生 徒 が 最 も 多 く 家 族 家 庭 生 活 については 5 位 6 位 にあげる 生 徒 が 多 い 福 祉 は7 位 にあげる 生 徒 が 多 く 生 活 設 計 は8 位 が 多 い という 結 果 になった このことから 高 校 生 にとって 男 女 とも 食 生 活 への 関 心 が 高 いということがわかる また 食 生 活 に 関 しては 調 理 実 習 を 行 いたい バランスのよい 食 事 の 取 り 方 を 学 びたいといった 意 見 も 多 かった 保 育 は 女 子 の 関 心 の 高 さが 目 立 ったように 思 われた 自 分 が 親 になった 時 の 子 どもの 育 て 方 を 学 びたい 子 どもとの 接 し 方 を 学 びたいといった 意 見 が 多 かった 衣 生 活 については 小 中 学 校 と 行 ってきた 被 服 実 習 などが 生 徒 の 印 象 に 残 っており いろいろなものを 作 りたいといった 意 見 が 多 かった 上 位 の 単 元 につ いてはどれも 何 を 学 ぶのかイメージしやすく 実 技 実 習 に 重 点 をおく 分 野 であることが 共 通 している しかしながら 生 徒 にとって 家 族 家 庭 生 活 においては 何 を 学 ぶのかということが 他 の 上 位 の 項 目 と 比 べてイメージしにくいということから 5 位 6 位 という 結 果 になったのではないかと 思 われる アンケート 項 目 2の 結 果 からは 家 族 家 庭 生 活 において 学 びたいことについて 家 族 との 関 わり 方 について 学 びたいという 意 見 が 多 く 現 在 そして 将 来 の 家 族 とのよりよい 関 係 を 築 きたいといったよう な 気 持 ちをもつ 生 徒 が 多 いことが 分 かる また 自 分 の 進 路 や 職 業 について 考 える 時 期 ということもあり 自 分 らしい 生 き 方 についても 学 びたいと 思 っている 生 徒 が 多 いことが 分 かる 以 上 の 結 果 より 生 徒 にとっては 比 較 的 関 心 の 薄 い 家 族 家 庭 生 活 についての 分 野 をできるだけより 実 践 的 体 験 的 な 学 習 活 動 を 重 視 した 題 材 を 開 発 し 生 徒 自 身 が 現 在 や 将 来 の 生 活 により 関 心 を 持 って 学 習 を 進 め 家 庭 生 活 を 営 むための 実 践 的 な 態 度 を 育 てることができるよう 研 究 をすすめることにした 4
Ⅴ 授 業 構 成 本 研 究 で 行 った 授 業 の 構 成 は 以 下 の 通 りである (1) 自 分 を 見 つめる 1 自 分 の 適 性 について 考 える ライフステージと 発 達 課 題 について 知 る 2 自 分 らしく 生 きる 例 に 児 童 文 学 者 の 灰 谷 健 次 郎 さんやアルピニストの 野 口 健 さんのビデオを 見 て 自 分 らしく 生 きるとはどういうことか 考 える 3 男 女 で 担 う 家 庭 生 活 性 別 役 割 分 業 意 識 を 見 直 し 男 女 が 協 力 して 家 庭 を 築 くことの 意 義 について 理 解 し その 解 決 方 法 を 考 える (2)パートナーと 出 会 う 1さだまさしの 関 白 宣 言 と 関 白 失 脚 平 成 の 関 白 宣 言 といわれる 三 木 道 三 の Lifetime Respect を 視 聴 し 比 較 対 照 してみる 2パートナーにするならどんな 人 がよいか 考 えてみる 3 結 婚 について 近 年 の 状 況 を 知 る (3) 家 族 って 何 だろう 1 自 分 の 家 族 理 想 の 家 族 について 考 える 2 家 族 の 形 態 とその 変 化 を 知 る 家 族 には 核 家 族 拡 大 家 族 があるが 現 代 では 暮 らし 方 の 多 様 化 に 合 わせて 様 々な 形 態 があることを 知 る 3 家 庭 の 機 能 を 考 える 家 庭 の 様 々な 機 能 を 理 解 するとともに 家 庭 の 機 能 が 家 族 それぞれの 協 力 により 果 たされていること を 認 識 する 4 家 族 を 取 り 巻 く 問 題 について 考 える 新 聞 記 事 から 日 本 の 家 庭 家 族 に 関 係 する 問 題 を 知 る ( 孤 独 死 など) 現 代 の 家 族 が 抱 える 問 題 点 とその 解 決 への 手 掛 かりについて 意 見 を 出 しあい 話 し 合 う ( 児 童 高 齢 者 虐 待 ドメスティックバイオレンスなど) (4) 家 族 と 法 律 1 簡 単 な 家 族 法 クイズ を 通 して 家 族 の 法 律 について 知 る 2 明 治 民 法 現 行 民 法 の 比 較 親 子 扶 養 相 続 の 法 律 民 法 改 正 への 動 きについて 知 る (5) 世 界 の 家 族 スウェーデン 韓 国 中 国 の 中 から 一 つ 国 を 選 び 同 じ 国 を 選 んだ 人 でグループを 作 り 討 論 する その 国 に 基 づく 資 料 などから 他 の 国 の 家 族 の 特 徴 を 知 り また 日 本 との 違 いについて 比 較 することにより 日 本 の 家 族 の 特 徴 をあげる グループで 話 し 合 い まとめ 発 表 する Ⅵ 事 後 アンケート 結 果 と 授 業 の 感 想 (1) 事 後 アンケート 結 果 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 を 終 えての 事 後 アンケート 調 査 を 行 い 家 族 家 庭 生 活 についての 分 野 中 でも 性 別 役 割 分 業 意 識 や 結 婚 観 家 族 観 について 生 徒 の 意 識 について 調 べてみた 5
1 性 別 役 割 分 業 意 識 について 図 2は 性 別 役 割 分 業 意 識 についての 回 答 結 果 である 図 2から 反 対 どちらかというと 反 対 という 意 見 が 多 かった 理 由 としては 女 の 人 も 仕 事 をしたい 人 もいる 決 めつけるのは 良 くない 家 族 だったら 皆 で 協 力 して 家 事 育 児 をしていくべきだと 思 う 共 働 きは 大 変 だから 男 女 とも 仕 事 家 事 した い 人 もいる 能 力 をつぶしてしまうのはよくない 性 によって 差 別 的 な 意 識 があるのはよくないと 思 う などがあった 一 方 賛 成 どちらかというと 賛 成 の 意 見 では 男 女 で 得 意 なものの 傾 向 が 決 まって いるから 決 まっていた 方 がお 互 いやりやすい 女 性 の 方 が 家 事 や 育 児 が 得 意 だと 思 うから 自 然 だと 思 うから 向 き 不 向 きがある 自 分 は 家 事 をしたいから というような 意 見 があった 性 別 役 割 分 業 意 識 についてどう 思 うか? 賛 成 1.6% わからな い 8.5% どちらか というと 賛 成 14.8% どちらか というと 反 対 38.1% 反 対 37.0% 図 2 事 後 アンケート 結 果 1: 性 別 役 割 分 業 意 識 (N=189) 4 1 将 来 結 婚 したいかどうか 図 3は 将 来 結 婚 したいと 思 うか に 関 する 事 後 アンケートの 結 果 である ほとんどの 生 徒 が 将 来 結 婚 をしたいと 思 っていることが 分 かる したい と 答 えた 生 徒 は 子 どもが 欲 しい 好 きな 人 と 一 緒 に 暮 らしたい 新 しい 家 族 をつくりたい 孤 独 死 はいやだ 一 人 はさみしい などで 孤 独 死 の 記 事 が 印 象 に 残 ったという 生 徒 もいた 一 方 したくない と 答 えた 生 徒 は めんどうくさそう ややこし そう お 金 を 自 分 に 使 いたい 縛 られたくない など 今 の 晩 婚 化 の 一 因 としてもあげられるものだ った したくな い 13.2% 将 来 結 婚 したいと 思 うか? したい 86.8% 図 3 事 後 アンケート 結 果 2: 将 来 結 婚 したいと 思 うか(N=182) 6
2 事 実 婚 についてどう 思 うか 図 4は 事 実 婚 についてどう 思 うか についての 事 後 アンケート 結 果 である よい と 答 えた 生 徒 がやや 多 かった 個 人 の 自 由 いろんな 関 係 があって 良 いと 思 う お 互 いがそのことを 了 解 してい るのならよい というような 意 見 であった よくない と 答 えた 生 徒 は けじめがつかない 届 けを 出 さないと 不 利 な 立 場 になったり 問 題 やトラブルが 起 こる 子 どもが 困 る 結 婚 を 軽 く 見 てしまう などがあった 事 実 婚 についてどう 思 うか? よくない 42.2% よい 57.8% 図 4 事 後 アンケート 結 果 3: 事 実 婚 についてどう 思 うか? (N=187) 3 夫 婦 別 姓 についてどう 思 うか 図 5は 夫 婦 別 姓 についての 事 後 アンケート 結 果 である よくない と 答 えた 生 徒 がやや 多 かった よ い と 答 えた 生 徒 は 仕 事 上 の 理 由 で 姓 が 変 わると 不 便 なことがでてしまうから 選 択 の 幅 を 広 げられる のはよい 人 それぞれの 考 えがある 変 えるのが 面 倒 よくない と 答 えた 生 徒 は 夫 婦 の 自 覚 や 責 任 を 持 つためにも 同 じがよい 夫 婦 の 証 子 どもはどちらの 姓 にするのか 困 る 名 字 が 違 うと 家 族 という 感 じがしない などがあった 夫 婦 別 姓 についてどう 思 うか? よくない 53.5% よい 46.5% 図 5 事 後 アンケート 結 果 4: 夫 婦 別 姓 についてどう 思 うか? (N=187) (2) 世 界 の 家 族 に 対 する 生 徒 の 感 想 この 授 業 のなかで とりわけ 高 校 と 大 学 の 共 同 研 究 としての 意 味 を 持 つ 世 界 の 家 族 の 授 業 に ついて 生 徒 の 感 想 を 示 す ( 資 料 1) この 世 界 の 家 族 授 業 実 践 事 例 では 日 本 以 外 の 家 族 を 知 ることにより 日 本 の 家 族 への 理 解 を 深 め 視 野 を 広 げることができたと 実 感 する 生 徒 も 多 かった 7
資 料 1 世 界 の 家 族 の 授 業 に 対 する 生 徒 の 感 想 日 本 を 観 点 において 家 族 のことを 学 んできたが 世 界 とそれを 比 較 することによってたくさんの 違 い を 知 ることができた 観 点 を 変 えて 考 えを 出 してみるのはとても 良 い 学 習 になると 思 った 日 本 と 世 界 はこんなにも 違 うんだと 衝 撃 を 受 けた スウェーデンや 他 国 は 自 由 な 面 が 多 くてうらやま しいと 思 った 日 本 という 中 だけでは 今 の 世 界 的 な 基 準 を 知 ることはできないから たくさんの 制 度 などを 知 るこ とができたのでとても 良 い 授 業 だった 日 本 と 比 較 しながら 考 えていくことで 世 界 とどこが 違 うのかが 理 解 しやすかった またそれによっ て 日 本 の 改 善 点 も 見 つけることができ 非 常 に 意 味 のある 授 業 だったと 思 う それぞれ 自 分 たちの 調 べたい 国 について 分 かれて 話 し 合 って 考 えることにより 様 々な 国 について も 学 べ 互 いの 意 見 の 違 いも 聞 けるので 理 解 しやすかった 世 界 の 家 族 と 比 べて 日 本 の 家 族 は 性 別 役 割 分 業 意 識 がまだ 少 し 強 いと 思 う なのでもっと 社 会 が 男 の 人 が 育 児 をできるということを 広 めていくべきだと 思 う (3) 家 族 家 庭 生 活 分 野 の 学 習 を 終 えての 感 想 家 族 家 庭 生 活 分 野 の 学 習 を 終 えた 時 点 で 生 徒 が 書 いた 感 想 の 一 部 を 資 料 2に 示 す 資 料 2 家 族 家 庭 生 活 分 野 の 学 習 を 終 えての 感 想 ( 生 徒 の 意 識 の 変 化 ) あまり 自 分 の 生 き 方 について 考 えたことがなかったので 生 き 方 について 考 えるいい 機 会 になった これをきっかけに 自 分 の 人 生 をいいものにしたい 自 分 と 家 族 について 一 生 かかわっていくことだと 思 うのでこうして 改 めて 授 業 で 考 えることができて よかった 自 分 らしさの 生 き 方 を 学 んで 家 族 についても 学 び 自 分 に 合 っているパートナーを 見 つけて 結 婚 し たいなと 思 いました 夫 婦 という 存 在 に 責 任 を 持 ってお 互 い 協 力 し 合 う そんな 素 敵 な 家 庭 をつくれ れば 幸 せだと 思 います 自 分 の 家 族 って 一 番 近 くにあるものだけど 当 たり 前 すぎていつも 考 えることはほぼないから 身 近 にあるけど 一 番 大 切 なものについて 考 えることができたと 思 います 自 分 の 意 志 や 家 族 って 大 切 にしていかないといけないんだなと 思 いました 結 婚 して 家 庭 をつくるなら 家 事 や 育 児 を 一 生 懸 命 一 緒 にやってくれる 男 性 と 結 婚 したいと 心 から 思 った シングルマザーにとって 苦 しくない 社 会 に 日 本 がなると 良 いなと 思 った 今 までの 自 分 の 意 識 が 変 わっていったような 気 がする 自 分 らしさ を 出 しながら 他 人 と 協 力 をするということが どのようなことか 考 えてみたい 精 神 的 社 会 的 に 自 立 すること またその 間 支 え 続 ける 家 族 のこと 今 まで 軽 く 考 えていたけど 少 し 変 わりました 家 族 がどれだけかけがえのないものなのかは 普 段 一 緒 にいるとあまり 実 感 が 湧 き ませんが 今 回 の 授 業 を 通 して 少 しでもその 考 えが 変 われたので もっと 身 の 回 りのことを 考 えて 生 活 していこうと 思 いました 今 回 の 授 業 内 容 は 本 当 に 自 分 の 生 き 方 や 将 来 のことについて 深 くかんがえさせられた これから 先 自 分 が 思 っている 方 向 とはちがう 方 にいってしまうこともたくさんあると 思 うけど 授 業 で 学 んだ 家 族 のあり 方 と 男 女 の 権 利 の 知 識 を 生 かしていきたいと 思 う 今 回 の 家 族 家 庭 生 活 の 分 野 における 授 業 実 践 では 生 徒 に 考 えさせる 他 の 人 の 意 見 を 聞 くなど の 活 動 に 重 点 をおき グループで 話 し 合 う 時 間 を 設 けた 初 めのアンケート 調 査 で 家 族 との 関 わり 方 8
自 分 らしい 生 き 方 について 関 心 はあるものの 社 会 での 出 来 事 を 自 分 と 関 連 付 けて 考 えられず 実 際 には 今 までに 深 く 考 えたことはなかったという 生 徒 が 多 く 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 の 重 要 性 について 授 業 者 自 身 が 改 めて 感 じる 結 果 となった さらに グループで 意 見 を 出 し 合 い 話 し 合 ったりしてまとめ 発 表 するなどの 体 験 的 な 学 習 活 動 を 通 して 多 角 的 な 物 の 見 方 が 得 られ 自 らの 意 識 が 変 わり 広 い 視 野 で 物 事 を 考 えられるようになった 生 徒 も 見 受 けられた Ⅶ 考 察 とまとめ 生 徒 たちにとっては 自 分 らしい 生 き 方 について 関 心 はあるものの 家 族 家 庭 の 意 義 や 家 族 家 庭 と 社 会 との 関 わり については 問 題 意 識 こそあっても 自 分 の 周 りの 小 さな 社 会 を 見 ているだけで 自 身 のことと 関 連 付 けて 考 えられず 最 初 は 興 味 を 示 さない 生 徒 も 多 かった それは 生 活 をする 基 盤 と しての 家 族 家 庭 のあり 方 については 日 常 的 に 親 や 身 近 な 大 人 たちからすでに 示 されており あらため て 学 習 する 必 要 など 感 じなかったからであろう しかし 一 方 で 多 くの 生 徒 たちは 男 は 仕 事 女 は 家 庭 などの 性 別 役 割 分 業 に 縛 られない 自 分 ら しい 生 き 方 を 望 んでいるという 事 実 もある 生 徒 自 身 が 現 在 や 将 来 の 生 活 を 展 望 する 中 で 性 別 役 割 分 業 を 肯 定 する 生 徒 もいる 現 実 と 単 独 世 帯 の 増 加 など 家 族 が 機 能 しないという 現 実 ライフスタイルが 様 々 に 変 化 する 中 家 族 家 庭 のみならずそれを 取 り 巻 く 家 族 以 外 の 人 々 機 関 あるいはそれを 支 える 制 度 な ど 今 こそ 家 族 家 庭 分 野 の 学 習 に 重 要 な 意 義 があると 考 える 今 後 は 家 族 家 庭 分 野 の 学 習 をいかに 自 分 と 関 連 づけて 考 えさせていけるかという 点 を 課 題 としていきたい 高 等 学 校 普 通 教 科 家 庭 では 家 庭 の 機 能 は 家 族 員 それぞれの 協 力 により 果 たされることを 理 解 さ せる とあり 具 体 的 な 事 例 や 演 習 を 通 して 考 えさせてみたり 話 合 いや 調 査 研 究 を 取 り 入 れたりする など 生 徒 が 主 体 的 に 取 り 組 む 学 習 活 動 の 工 夫 が 求 められている 家 庭 科 の 指 導 は これまで 被 服 製 作 や 調 理 実 習 などの 個 別 技 能 の 習 得 に 重 点 が 置 かれる 傾 向 が 見 られた 学 習 指 導 要 領 の 指 導 計 画 の 作 成 に 当 た っての 配 慮 事 項 では 家 庭 基 礎 家 庭 総 合 及 び 生 活 技 術 の 各 科 目 に 配 当 する 総 授 業 時 数 のうち 原 則 として10 分 の5 以 上 を 実 験 実 習 に 配 当 すること と 示 されており 被 服 製 作 や 調 理 実 習 以 外 の 分 野 においても 実 践 的 体 験 的 な 学 習 活 動 を 通 して 教 科 の 目 標 を 実 現 することをねらいとしている 今 後 も 家 族 家 庭 生 活 の 分 野 の 他 各 分 野 の 内 容 を 関 連 付 けて 生 活 を 総 合 的 にとらえる 指 導 全 般 につ いて より 実 践 的 体 験 的 な 学 習 活 動 を 重 視 した 題 材 を 開 発 していきたい Ⅷ おわりに 最 後 に 授 業 の 実 践 報 告 をふまえて 現 代 社 会 を 生 きる 青 年 たちが 学 ぶ 家 族 家 庭 生 活 の 授 業 を 創 る うえで 論 点 になると 思 われる 点 を 記 しておきたい 第 一 に 今 回 高 大 連 携 授 業 として 大 学 で 開 講 された 単 発 の 授 業 世 界 との 比 較 を 高 等 学 校 の 授 業 に 組 みこむ 取 り 組 みに 関 してである 世 界 の 家 族 との 比 較 は 単 元 の 冒 頭 に 持 ってくると 現 実 を 相 対 化 す る 効 果 が 大 きいが 生 徒 の 現 実 とうまく 繋 がないと 世 界 にはそのような 生 き 方 社 会 の 仕 組 みがある のか で 終 わってしまい よそ 事 で 終 わってしまうことが 危 惧 される 相 対 化 と 自 分 が 生 きる ことを 考 えること の 兼 ね 合 いについて さらに 議 論 を 深 める 必 要 がある 第 二 に パートナー という 枠 組 みで 人 生 を 考 える 教 材 の 扱 いについてである 本 授 業 実 践 の 中 に 含 まれる 流 行 歌 の 比 較 を 通 して パートナー 間 のパワーや 役 割 について 考 える 授 業 は 高 校 生 の 関 心 か らして 大 変 有 効 であったと 考 えられる しかし その 一 方 で パートナー 強 調 によって 少 数 派 の 生 徒 たち( 同 性 愛 シングル 志 向 など)が 授 業 に 入 りにくい 可 能 性 も 視 野 にいれる 必 要 がある パートナー 関 係 を 扱 う 時 も 多 様 なライフスタイルの 可 能 性 という 認 識 を 基 礎 において 授 業 を 構 成 することが 重 要 だと 考 える 第 三 に 家 族 家 庭 の 機 能 とどう 向 き 合 うか という 問 題 である はじめに で 述 べた 人 間 が 9
育 ち 生 きていく 条 件 の 格 差 拡 大 と 家 族 の 現 代 的 変 容 をふまえれば 子 育 て や 情 緒 的 機 能 など 近 代 家 族 を 前 提 とする 機 能 を 家 庭 の 中 で 果 たすことができない 人 生 は もはや 例 外 ではない 生 活 を 支 えるさまざまな 機 能 を 家 族 外 の 人 間 関 係 NPO や 行 政 などの 外 部 機 関 社 会 政 策 など 家 族 家 庭 の 外 部 をも 視 野 に 入 れた 授 業 展 開 も 今 後 さらに 模 索 される 必 要 があろう 愛 知 教 育 大 学 は 附 属 高 校 と 大 学 が 同 じキャンパスにある 本 報 告 は 共 同 研 究 の 萌 芽 となる 取 り 組 みであ ったが 今 後 地 の 利 を 生 かして さらに 活 発 な 共 同 研 究 がなされることを 期 待 したい 注 1. 本 報 告 は 2~7を 橋 爪 が 1および8を 山 根 が 書 き 調 整 する 過 程 を 経 て 作 成 した 報 告 の 中 心 となる 授 業 は 橋 爪 が 附 属 高 等 学 校 において 実 践 したものである なお 授 業 の 最 後 に 位 置 づけられている 世 界 の 家 族 は 愛 知 教 育 大 学 で 2012 年 3 月 に 行 われた 高 大 連 携 スクール で 山 根 が 行 った 授 業 内 容 が 反 映 されており その 意 味 でも 高 等 学 校 と 大 学 の 共 同 研 究 の 第 一 歩 となる 取 り 組 みと 位 置 づけることができ るだろう 2. たとえば 家 族 社 会 学 研 究 Vol.21 NO.1 の 特 集 経 済 の 階 層 化 と 近 代 家 族 の 変 容 子 育 ての 二 極 化 をめ ぐって に 詳 しい ( 日 本 家 族 社 会 学 会 編 2009) 3. 男 女 共 同 参 画 社 会 に 関 する 世 論 調 査 は 日 本 政 府 が 継 続 的 に 行 っている 調 査 である 夫 は 外 で 働 き 妻 は 家 庭 を 守 るべきである という 考 え 方 に 対 して 肯 定 する 人 の 割 合 は 1979 年 調 査 から 2009 年 調 査 まで 一 貫 して 減 少 してきたが 2012 年 調 査 で 初 めて 前 回 調 査 より 増 加 した(2009 年 調 査 肯 定 41.3% 否 定 55.1% 2012 年 調 査 肯 定 51.6% 否 定 45.1%) なかでも 20 代 は 2009 年 調 査 で 肯 定 30.7% 否 定 67.1% 2012 年 調 査 で 肯 定 50.0% 否 定 46.7%と 肯 定 する 人 の 割 合 の 増 加 が 大 きい 年 齢 層 である ( 内 閣 府 ホームページ 参 照 http://www8.cao.go.jp/survey/index.html) 4. 無 回 答 の 票 は 除 いた 値 である 図 3~ 図 5も 同 様 である 文 献 子 どもの 貧 困 白 書 編 集 委 員 会 編 2009 子 どもの 貧 困 白 書 明 石 書 店 日 本 家 族 社 会 学 会 編 2009 家 族 社 会 学 研 究 Vol.21 No.1( 特 集 経 済 の 階 層 化 と 近 代 家 族 の 変 容 子 育 ての 二 極 化 をめぐって ) 本 田 由 紀 2008 家 庭 教 育 の 隘 路 子 育 てに 強 迫 される 母 親 たち 勁 草 書 房 舩 橋 惠 子 宮 本 みち 子 編 著 2008 雇 用 流 動 化 のなかの 家 族 : 企 業 社 会 家 族 生 活 保 障 システム ミネルヴ ァ 書 房 文 部 科 学 省 2009 平 成 21 年 3 月 公 示 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 山 田 昌 弘 2005 迷 走 する 家 族 戦 後 家 族 モデルの 形 成 と 解 体 有 斐 閣 10