平 成 20 年 3 月 25 日 消 費 者 が 事 業 者 との 通 話 内 容 を 録 音 され 録 音 を 消 去 してほしいと 求 めたが 事 業 者 に 断 られたトラブル ( 国 民 生 活 センター 消 費 者 苦 情 処 理 専 門 委 員 会 小 委 員 会 ) 独 立 行 政 法 人 国 民 生 活 センター 消 費 者 苦 情 処 理 専 門 委 員 会 は 平 成 19 年 11 月 12 日 付 で 国 民 生 活 センター 理 事 長 から 事 業 者 が 消 費 者 との 通 話 内 容 を 録 音 した 場 合 における 個 人 情 報 保 護 法 の 解 釈 と 紛 争 解 決 に 当 たっての 考 え 方 の 検 討 を 諮 問 された 本 小 委 員 会 は 消 費 者 苦 情 処 理 専 門 委 員 会 委 員 長 の 指 名 によって 平 成 19 年 12 月 26 日 以 降 3 回 にわたって 審 議 を 行 い 苦 情 処 理 にあたっての 考 え 方 として 以 下 のように 助 言 を 取 りまとめたので 報 告 する 独 立 行 政 法 人 国 民 生 活 センター 消 費 者 苦 情 処 理 専 門 委 員 会 小 委 員 会 委 員 長 野 村 豊 弘 委 員 池 本 誠 司 委 員 村 千 鶴 子 1. 諮 問 案 件 事 業 者 が 消 費 者 との 通 話 内 容 を 録 音 した 場 合 における 個 人 情 報 保 護 法 の 解 釈 と 紛 争 解 決 に 当 たっての 考 え 方 の 検 討 2. 消 費 者 苦 情 事 案 (1) 事 案 の 概 要 メーカーのお 客 様 相 談 室 に 保 証 期 間 の 確 認 などのため 電 話 をかけた その 際 冒 頭 で 通 話 内 容 を 録 音 します とのメッセージが 流 れたので 録 音 されることが 分 かった その 後 担 当 者 から 折 り 返 し 電 話 があったが その 時 は 事 前 に 通 話 内 容 を 録 音 します といっ たメッセージは 流 れず 話 が 終 わった 後 に 担 当 者 から 今 の 会 話 内 容 を 録 音 させていただ きました と 告 げられた 直 ちに 録 音 の 消 去 を 求 め 苦 情 を 申 し 入 れたが 消 去 はできませ ん と 断 られた 一 度 受 話 器 を 置 いたが 納 得 できず 再 度 電 話 をかけて 消 去 を 求 めたと ころ 消 去 はいたしますが 運 転 免 許 証 などの 本 人 確 認 書 類 の 提 出 をお 願 いします と 新 たな 条 件 を 提 示 された 事 前 に 録 音 することを 告 げないのは 個 人 情 報 保 護 法 上 問 題 ではないのか また 事 業 者 には 録 音 の 消 去 に 応 じる 義 務 はないのか 1
録 音 の 消 去 のために 新 たな 個 人 情 報 の 提 出 を 求 められることにも 納 得 がいかないし 消 費 者 側 に 録 音 されない という 選 択 肢 がなく 録 音 されたくなければ 問 い 合 わせができ ない 状 況 も 問 題 である (40 歳 代 女 性 給 与 生 活 者 ) (2) 事 案 の 経 緯 個 人 情 報 保 護 法 上 の 解 釈 と 顧 客 対 応 のあり 方 の 検 討 個 人 情 報 保 護 法 ( 以 下 法 という )では 録 音 による 個 人 情 報 の 取 得 に 関 して 明 確 な 定 めがないことから 事 業 者 から 様 々な 反 応 が 予 見 され 以 下 の 事 項 について どの ような 法 解 釈 が 可 能 かについて 国 民 生 活 センター 相 談 調 査 部 内 において 検 討 を 試 みた 法 2 条 1 項 では この 法 律 において 個 人 情 報 とは ( 中 略 ) 特 定 の 個 人 を 識 別 することができるもの と 定 義 している したがって 明 文 上 録 音 内 容 が 個 人 情 報 に 該 当 するとは 規 定 されていないが 解 釈 上 録 音 内 容 が 特 定 の 個 人 を 識 別 できる 形 であ れば 同 法 で 規 定 する 個 人 情 報 に 該 当 すると 思 われる ( 注 1) 録 音 内 容 が 保 有 個 人 データ ( 法 2 条 5 項 )に 該 当 した 場 合 1 利 用 目 的 による 制 限 ( 法 16 条 1 項 ) 2 適 正 な 取 得 ( 法 17 条 )に 違 反 していることが 判 明 したときで 本 人 からの 求 めがあった 場 合 は 違 反 を 是 正 するために 必 要 な 限 度 で 原 則 として 利 用 の 停 止 又 は 消 去 ( 以 下 利 用 停 止 等 という )を 行 わなければならない( 法 27 条 1 項 ) それ 以 外 は 事 業 者 が 自 主 的 に 行 う 利 用 停 止 等 といえる 個 人 情 報 の 利 用 停 止 等 に 当 たっては 本 人 の 情 報 であることを 証 明 するための 書 類 等 を 事 業 者 が 求 めるのは 一 定 の 合 理 性 がある と 思 われるが たった 今 なされた 通 話 内 容 の 録 音 について 消 去 を 求 めた 本 件 では 杓 子 定 規 に 本 人 確 認 書 類 の 提 出 を 求 める 対 応 は 顧 客 対 応 のあり 方 としては 不 適 切 といえる のではないか ( 注 1) 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 についての 経 済 産 業 分 野 を 対 象 とするガイドライン 等 に 関 する Q&A Q11:(1) 電 話 の 通 話 内 容 は 個 人 情 報 に 該 当 しますか (2) 通 話 内 容 を 録 音 している 場 合 録 音 している 旨 を 相 手 方 に 伝 える 必 要 がありますか A11:(1) 特 定 の 個 人 を 識 別 することが 可 能 な 場 合 には 個 人 情 報 に 該 当 します (2) 個 人 情 報 に 該 当 する 場 合 でも 録 音 していることについて 伝 える 必 要 はありません ただし 利 用 目 的 を 通 知 又 は 公 表 する 必 要 があります Q21: 会 話 を 録 音 しました 会 話 の 内 容 に 個 人 の 氏 名 が 含 まれていますが この 場 合 個 人 情 報 データベース 等 に 該 当 しますか A21: 会 話 の 内 容 に 氏 名 が 含 まれていても 当 該 氏 名 により 容 易 に 検 索 可 能 な 状 態 に 整 理 さ れていない 限 り 個 人 情 報 データベース 等 には 該 当 しません 2
(3) 同 種 事 例 ( 事 業 者 に 通 話 内 容 を 録 音 されたケース) 事 例 1 携 帯 電 話 会 社 に 付 加 サービスの 契 約 を 電 話 で 申 し 込 んだ しかし 実 際 は 契 約 したことに なっておらず 申 し 込 んだ 申 し 込 まれていない と 押 し 問 答 となった 事 業 者 側 が 通 話 内 容 をボイスレコーダーに 記 録 してある というので では 聞 かせてほしい と 伝 え たところ 個 人 情 報 なので 無 理 である と 言 われた (40 歳 代 女 性 家 事 従 事 者 ) 事 例 2 銀 行 のコールセンターと 何 度 か 話 をしているうちに 担 当 者 が 前 回 と 言 っていること が 違 います 録 音 で 確 認 すれば 分 かります と 発 言 した その 言 葉 で 初 めて 銀 行 が 今 まで の 電 話 の 内 容 を 録 音 していることを 知 った 本 当 に 前 回 と 異 なることを 言 っているのか 確 かめたいと 思 い 自 分 にも 録 音 を 聞 かせてほしい と 申 し 出 たところ 対 応 しかねます と 言 われた 当 該 銀 行 の 個 人 情 報 保 護 相 談 窓 口 の 開 示 担 当 者 に 尋 ねても 録 音 は 個 人 情 報 保 護 法 第 25 条 1 項 2 号 に 当 たるので 開 示 はしません と 言 う 録 音 を 消 費 者 に 聞 かせることが 業 務 の 著 しい 支 障 に 当 たるのか 事 業 者 が 業 務 に 支 障 があると 言 えば 録 音 を 聞 かせてもら うことはできないのか (20 歳 代 男 性 給 与 生 活 者 ) 3. 小 委 員 会 の 結 論 事 業 者 のお 客 様 相 談 室 が 顧 客 との 通 話 を 事 前 の 同 意 なく 録 音 する 行 為 は 個 人 情 報 保 護 法 の 適 用 という 観 点 からは 必 ずしも 個 人 情 報 の 不 正 な 取 得 ( 法 17 条 )には 当 たらず ま た 利 用 目 的 の 通 知 義 務 等 ( 法 18 条 )に 直 ちに 違 反 するものとはいえない しかし 通 話 を 無 断 で 録 音 することは 個 別 事 情 によっては 個 人 の 人 格 権 侵 害 として 違 法 性 を 帯 びる 可 能 性 があること 顧 客 にとって 不 意 打 ち 的 な 行 為 として 不 信 感 を 持 つ 可 能 性 があることを 踏 まえ 事 業 者 が 顧 客 の 信 頼 を 確 保 する 対 応 のあり 方 としては 書 面 による 直 接 取 得 における 利 用 目 的 の 事 前 明 示 ( 法 18 条 2 項 )に 準 じた 取 り 扱 いが 望 まれる 事 業 者 が 本 人 から 通 話 録 音 データの 開 示 を 求 められた 場 合 それが 保 有 個 人 データに 該 当 するときは 開 示 義 務 を 負 う 開 示 の 方 法 としては 当 該 本 人 との 通 話 録 音 部 分 をダビ ングする 方 法 が 考 えられる 4. 理 由 ( 法 的 考 察 ) (1)はじめに 本 事 例 は 通 話 を 本 人 の 同 意 なく 録 音 する 行 為 が 個 人 情 報 の 取 り 扱 いの 適 正 さという 観 点 からどのような 問 題 が 生 ずるかという 事 案 である 3
もっとも 通 話 の 録 音 は 個 人 情 報 の 取 り 扱 い 一 般 の 問 題 であるとともに 個 人 の 写 真 や 肉 声 などと 同 様 に 人 格 権 に 関 わる 問 題 という 側 面 もある したがって 情 報 の 種 類 を 問 わない 一 般 的 規 律 である 個 人 情 報 保 護 法 に 照 らして 違 法 かどうかという 観 点 だけでなく 通 話 録 音 の 特 性 を 踏 まえた 実 質 的 な 違 法 性 の 検 討 が 必 要 である さらに 当 小 委 員 会 は 現 行 法 に 照 らして 直 ちに 違 法 と 評 価 すべきかどうかという 観 点 だけでなく 事 業 者 が 事 業 活 動 の 中 で 顧 客 の 信 頼 を 確 保 するうえであるべき 対 処 はどうか という 観 点 からの 指 摘 も 重 要 であると 考 えられることから 現 行 法 上 の 違 法 性 の 検 討 とと もに 事 業 者 の 顧 客 対 応 のあり 方 という 観 点 からも 検 討 を 加 える なお お 客 様 相 談 室 における 通 話 の 録 音 やその 取 り 扱 いについては 実 情 がほとんど 知 られていないので 当 小 委 員 会 の 事 務 局 において 各 事 業 分 野 ( 家 電 金 融 自 動 車 情 報 通 信 日 用 品 )の 代 表 的 な 事 業 者 5 社 に 対 しヒヤリング 調 査 を 行 った その 結 果 も 参 考 にしつつ 検 討 する (2) 通 話 の 録 音 データは 個 人 情 報 保 護 法 の 適 用 対 象 か 法 は 事 業 者 に 課 す 義 務 の 内 容 に 応 じて 個 人 情 報 個 人 データ 保 有 個 人 データ という3つの 定 義 を 使 い 分 けている そこで まず 本 件 の 通 話 を 録 音 したデータがこれら に 該 当 するかどうかを 検 討 する なお 法 が 義 務 を 課 す 対 象 事 業 者 は 5000 件 を 超 える 個 人 情 報 を 事 業 に 関 して 取 り 扱 う 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 ( 法 2 条 3 項 政 令 2 条 )であることが 要 件 となる 以 下 では 本 件 事 業 者 が 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 に 当 たることを 前 提 に 検 討 する 1) 個 人 情 報 ( 法 2 条 1 項 )に 当 たるか 個 人 情 報 とは 生 存 する 個 人 に 関 する 情 報 であって 当 該 情 報 に 含 まれる 氏 名 生 年 月 日 その 他 の 記 述 等 により 特 定 の 個 人 を 識 別 することができるもの( 法 2 条 1 項 )とさ れている 記 述 等 とは 文 字 や 記 号 に 限 らず 写 真 音 声 生 体 情 報 (DNA 等 )など 個 人 を 識 別 できるものは 広 く 含 むものとされている したがって 通 話 内 容 を 磁 気 テープやデジタル 機 器 に 録 音 したデータ( 以 下 録 音 デー タ という )の 中 に 氏 名 や 顧 客 番 号 など 特 定 の 個 人 を 識 別 できる 内 容 が 含 まれていれば 個 人 情 報 に 該 当 する 匿 名 の 問 い 合 わせ 電 話 のように 会 話 の 内 容 に 個 人 を 識 別 でき る 情 報 が 何 も 含 まれていなければ 個 人 情 報 とはいえない ただし 録 音 された 会 話 の 内 容 だけでなく 電 話 番 号 や 相 談 受 付 簿 の 記 載 など 他 の 資 料 と 照 合 することにより 特 定 の 個 人 を 識 別 できる 場 合 は 個 人 情 報 に 当 たる 以 下 では 本 件 録 音 データが 特 定 個 人 を 識 別 できる 内 容 を 含 むか 関 連 資 料 を 照 合 す ることにより 識 別 可 能 であることにより 個 人 情 報 に 当 たる 場 合 を 前 提 に 論 じる 個 人 情 報 の 取 り 扱 いについては 利 用 目 的 の 特 定 ( 法 15 条 ) 目 的 外 利 用 の 制 限 ( 法 16 条 ) 不 正 な 取 得 の 禁 止 ( 法 17 条 ) 利 用 目 的 の 通 知 公 表 ( 法 18 条 1 項 )の 義 務 が 課 され 4
る 2) 個 人 データ ( 法 2 条 4 項 )に 当 たるか 個 人 データ とは 個 人 情 報 のうち 個 人 情 報 データベース 等 を 構 成 するもの( 法 2 条 4 項 )をいう 個 人 情 報 データベース 等 とは 個 人 情 報 を 含 む 情 報 の 集 合 物 であって 特 定 の 個 人 情 報 を 容 易 に 検 索 することができるように 体 系 的 に 構 成 したものをいう( 法 2 条 2 項 政 令 1 条 ) したがって 録 音 データが 収 録 されている 媒 体 の 中 から ある 特 定 個 人 の 情 報 を 容 易 に 検 索 することが 可 能 であれば その 媒 体 は 個 人 情 報 データベース 等 に 当 たり これに 記 録 された 特 定 個 人 の 録 音 内 容 は 個 人 データ に 当 たる 例 えば デジタル 方 式 で 録 音 してある 場 合 は その 録 音 機 器 自 体 によって 個 人 の 氏 名 等 の 検 索 が 可 能 である 機 器 が 多 い と 思 われる また 録 音 データの 集 合 体 と 相 談 受 付 簿 その 他 の 資 料 を 照 合 することによっ て 検 索 できる 場 合 でも 個 人 データに 該 当 する ヒヤリング 調 査 によれば 通 話 の 録 音 は いずれも 事 業 者 も 通 話 録 音 用 の 専 用 サーバー 又 はPCハードディスクに 音 声 データとして 保 存 しており 日 付 電 話 番 号 等 により 検 索 可 能 であるという したがって 本 件 録 音 データについては 個 人 を 検 索 可 能 な 個 人 データ に 該 当 すると いう 前 提 で 論 じる 個 人 データ の 取 り 扱 いについては 正 確 性 の 確 保 ( 法 19 条 ) 安 全 管 理 措 置 ( 法 20 条 ) 従 業 者 委 託 先 の 監 督 ( 法 21,22 条 ) 第 三 者 提 供 の 制 限 ( 法 23 条 )の 義 務 が 課 され る 3) 保 有 個 人 データ ( 法 2 条 5 項 )に 当 たるか 保 有 個 人 データ とは 個 人 データのうち 1 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 が 開 示 訂 正 追 加 又 は 削 除 利 用 の 停 止 消 去 及 び 第 三 者 への 提 供 の 停 止 を 行 うことのできる 権 限 を 有 するものであり 26 ヶ 月 を 超 えて 保 有 するものであることをいう( 法 2 条 5 項 ) したがって 個 々の 録 音 データを 取 得 したときから 6 ヶ 月 以 内 に 消 去 するものであれば 保 有 個 人 データ に 該 当 しないが 録 音 した 事 業 者 が 6 ヶ 月 を 超 えて 保 有 する 取 り 扱 い であれば 基 本 的 に 保 有 個 人 データ に 該 当 する なお その 存 否 が 明 らかになることにより 違 法 又 は 不 当 な 行 為 を 助 長 し 又 は 誘 発 す るおそれがあるもの は 保 有 個 人 データ から 除 外 される( 政 令 3 条 2 号 ) 例 えば 悪 質 クレーマー 等 に 関 する 情 報 がこれに 当 たるとされている( 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 についての 経 済 産 業 分 野 を 対 象 とするガイドライン( 経 済 産 業 省 ) 以 下 経 済 産 業 省 ガイドライン という 2-1-5 参 照 ) 保 有 個 人 データに 当 たるときは 開 示 ( 法 25 条 ) 訂 正 ( 法 26 条 ) 利 用 停 止 等 ( 法 27 条 )の 義 務 が 課 される 5
ヒヤリング 調 査 によれば 通 話 録 音 データの 保 有 期 間 は サーバーの 容 量 との 関 係 で 6 ヶ 月 未 満 と 定 めている 例 サーバーの 容 量 が 一 杯 になれば 自 動 的 に 消 去 されるという 例 原 則 として 6 ヶ 月 未 満 と 定 めているが 紛 議 の 可 能 性 があるものは 別 途 長 期 間 保 存 するとい う 例 など 様 々である したがって 個 人 から 事 業 者 に 対 し 保 有 個 人 データの 開 示 消 去 等 を 求 めるに 当 たって は 当 該 事 業 者 における 保 有 期 間 の 取 り 扱 いを 確 認 する 必 要 がある ただし 保 有 期 間 の 定 めの 有 無 を 問 わず 現 に 6 ヶ 月 を 超 えて 保 有 している 場 合 は 保 有 個 人 データに 該 当 す ることとなり 開 示 等 の 対 象 となるので 実 情 の 確 認 が 重 要 である (3) 本 人 の 同 意 通 知 なしに 通 話 を 録 音 することは 個 人 情 報 保 護 法 に 違 反 するか 1) 不 正 な 取 得 ( 法 17 条 )に 当 たるか 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 は 偽 りその 他 不 正 な 手 段 により 個 人 情 報 を 取 得 してはならない( 法 17 条 ) 利 用 目 的 を 偽 って 個 人 情 報 を 聞 き 出 すことや 名 簿 等 を 盗 み 出 すことや 他 人 のコンピ ューターに 不 正 アクセスすることが 不 正 な 手 段 の 典 型 である 具 体 的 に 何 が 不 正 な 手 段 と 評 価 されるかは 個 人 情 報 の 種 類 性 質 事 業 者 の 利 用 目 的 や 必 要 性 等 を 勘 案 して 判 断 するものとされている 本 人 の 同 意 を 得 ないで 通 話 を 録 音 することは 本 人 が 知 らないうちに 個 人 情 報 を 取 得 さ れる 点 で 不 正 な 取 得 と 見 る 余 地 もある しかし 他 方 で 法 は 1 利 用 目 的 を 通 知 公 表 する 義 務 は 定 めているものの( 法 18 条 1 項 ) 同 意 を 得 て 取 得 する 義 務 は 定 めていない こと 2 本 人 からの 直 接 取 得 ( 法 18 条 2 項 ) 以 外 の 間 接 取 得 も 認 める 前 提 であること( 法 18 条 1 項 )に 照 らせば 本 人 の 同 意 を 得 ないで 録 音 することが 一 律 に 不 正 な 取 得 ( 法 17 条 違 反 )に 当 たるものと 解 することは 困 難 であろう もちろん 不 正 な 取 得 とは 本 法 に 違 反 する 方 法 である 場 合 だけでなく 他 の 法 令 全 般 の 中 で 実 質 的 に 違 法 不 正 と 評 価 されるような 場 合 を 含 めて 判 断 しなければならないの で この 点 は 後 に 検 討 する(8 頁 (4)) 2) 録 音 することの 通 知 ( 法 18 条 )は 必 要 か 法 は 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 の 手 続 的 な 義 務 として 1 本 人 から 書 面 により 個 人 情 報 を 直 接 取 得 するときは 事 前 に 利 用 目 的 を 明 示 しなければならないものとし( 法 18 条 2 項 ) 2その 他 の 方 法 で 取 得 する 場 合 ( 書 面 によらない 取 得 間 接 的 な 取 得 など)は 利 用 目 的 を 速 やかに 通 知 又 は 公 表 するものとしている( 法 18 条 1 項 ) 法 18 条 1 項 の 通 知 は 個 人 情 報 を 取 得 した 場 合 速 やかに 行 うこととして おり 事 後 的 な 通 知 でもよい また 通 知 又 は 公 表 は 選 択 的 な 義 務 であるから 容 易 に 知 りうるような 方 法 で 公 表 してあれば 個 別 の 通 知 は 必 須 ではない 通 話 の 録 音 は 個 人 情 報 を 本 人 から 直 接 取 得 する 形 態 であるが 書 面 ではなく 口 頭 の 取 6
得 であるから 手 続 的 な 義 務 としては 事 前 の 明 示 義 務 ( 法 18 条 2 項 )ではなく 事 後 的 に 通 知 又 は 公 表 ( 法 18 条 1 項 )すればよいこととなる このように 本 法 を 形 式 的 に 適 用 すると 事 前 の 同 意 や 告 知 がなく 行 われた 通 話 の 録 音 であっても 基 本 的 に 違 法 ではないということになりそうである ところで 法 が 書 面 による 直 接 取 得 とその 他 の 方 法 の 場 合 とで 利 用 目 的 の 告 知 方 法 を 区 別 した 趣 旨 は 本 人 からの 書 面 による 直 接 取 得 の 場 合 には 本 人 自 らその 提 供 の 可 否 を 判 断 できる 状 況 にあることにもかんがみ 個 人 情 報 を 取 得 した 後 に 利 用 目 的 を 通 知 公 表 することで 足 りることとはせず 原 則 として 取 得 前 に 本 人 に 対 して 利 用 目 的 を 明 確 に 示 すことを 義 務 付 けることが 必 要 であるとしたものであること これに 加 えて 個 人 情 報 の 有 益 な 活 用 を 阻 害 しないため 事 業 者 に 過 剰 な 事 務 負 担 をかけないように 配 慮 したものだ とされている( 書 面 による 直 接 取 得 の 場 合 は 事 前 の 通 知 が 容 易 であるが 間 接 的 な 取 得 の 場 合 や 口 頭 のやり 取 りをメモする 場 合 に 常 に 事 前 通 知 を 要 求 することが 過 剰 な 負 担 となる) そうだとすると 通 話 の 録 音 は 本 人 から 直 接 取 得 する 場 面 であり 本 人 自 らその 提 供 の 可 否 を 判 断 できる 状 況 にあるものであり かつ 通 話 の 冒 頭 に 告 知 することは 何 ら 過 剰 な 事 務 負 担 とはならない しかも 書 面 による 取 得 は インターネット 等 を 通 じた 電 子 データによる 取 得 を 含 むものと 解 されている そうであれば 法 18 条 の 解 釈 としても 通 話 を 録 音 機 器 に 収 録 する 場 合 は 法 18 条 2 項 に 含 むものと 解 する 余 地 があるのではないか もちろん 行 政 規 制 の 対 象 行 為 を 安 易 に 類 推 適 用 することには 慎 重 でなければならないが 現 行 法 が 書 面 による 直 接 取 得 とその 他 の 取 得 とで 告 知 方 法 に 大 きな 落 差 がある 点 を 是 正 す る 解 釈 論 として 考 慮 に 値 すると 思 われる 3) 個 人 情 報 保 護 法 に 違 反 しなければすべて 適 法 として 許 されるか 以 上 のとおり 本 法 を 形 式 的 に 適 用 する 限 り 事 前 の 同 意 や 告 知 がなく 行 われた 通 話 の 録 音 であっても 必 ずしも 違 法 ではないということになりそうである しかし 本 法 は 情 報 の 種 類 を 問 わずすべての 個 人 情 報 に 共 通 に 適 用 される 必 要 最 低 限 のルールを 定 めるものである( 平 成 16 年 4 月 2 日 閣 議 決 定 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 基 本 方 針 参 照 ) そのため 信 用 情 報 や 金 融 情 報 など 他 人 に 知 られたくないと 望 むプライバシ ー 性 が 高 い 個 人 情 報 や 病 歴 医 療 情 報 思 想 信 条 情 報 などセンシティブな 個 人 情 報 の 場 合 は 本 法 の 規 律 だけでは 不 十 分 なことが 少 なくない また 個 人 の 自 己 情 報 コントロ ール 権 の 尊 重 という 観 点 から 見 ると 本 法 のルールでは 不 十 分 だと 感 じる 者 が 多 いと 思 わ れる このように 本 法 は 情 報 の 種 類 を 問 わない 必 要 最 低 限 の 規 制 であることから これを 遵 守 すれば 常 に 十 分 というわけではなく 情 報 の 種 類 や 特 質 に 応 じてより 慎 重 な 取 り 扱 いが 求 められるものと 解 されている 言 い 換 えれば 必 要 最 低 限 のルールである 個 人 情 報 保 護 法 を 遵 守 していたとしても すべての 場 面 で 適 法 と 評 価 されるわけではなく 例 えば 差 別 的 な 情 報 を 本 人 の 同 意 なく 収 7
集 利 用 したような 場 合 には プライバシー 侵 害 として 不 法 行 為 損 害 賠 償 責 任 ( 民 法 709 条 ) を 構 成 することもあり 得 る (4) 同 意 のない 通 話 録 音 の 実 質 的 な 違 法 性 評 価 と 事 業 者 の 対 応 方 法 1) 同 意 のない 録 音 と 人 格 権 侵 害 そこで 通 話 者 の 同 意 なく 録 音 することが 実 質 的 に 違 法 と 評 価 される 場 合 があるか 否 かを 検 討 する 通 話 の 録 音 は 個 人 の 肉 声 をそのまま 記 録 し 利 用 することであり 個 人 の 肖 像 を 写 真 撮 影 する 場 合 と 同 様 に 個 人 の 人 格 権 に 関 わる 問 題 であって ケースによっては 人 格 権 侵 害 行 為 として 違 法 性 を 帯 びることがあると 考 えられる 場 面 はやや 異 なるが 同 意 のない 通 話 録 音 データを 民 事 訴 訟 の 証 拠 として 提 出 すること が 許 されるか( 証 拠 能 力 )については 議 論 があるところである 2) 通 話 録 音 行 為 の 違 法 性 評 価 の 視 点 ア) 通 話 録 音 の 利 用 目 的 本 件 のような 通 話 録 音 は お 客 様 相 談 室 に 寄 せられた 苦 情 相 談 問 い 合 わせを 事 業 者 が 顧 客 の 申 し 出 内 容 を 正 確 に 把 握 するため(メモ 代 わり) 相 談 担 当 者 側 の 顧 客 対 応 の 適 正 さを 事 後 的 に 検 証 するため( 内 部 検 証 用 ) 紛 争 となった 場 合 の 対 応 のため( 信 用 性 の 検 証 ) などの 目 的 で 録 音 するものだと 思 われる ヒヤリング 調 査 においても いずれの 事 業 者 もこうした 利 用 目 的 により 音 声 自 動 録 音 方 式 で 通 話 録 音 を 行 っているということである こうした 利 用 目 的 は 事 業 者 の 顧 客 対 応 の 適 正 さを 確 保 向 上 するため 一 般 的 に 見 て 必 要 性 が 認 められるものと 考 えられる しかし 他 方 で 顧 客 の 立 場 からすれば 自 分 がクレーマー 扱 いされているのではない かという 不 快 感 を 抱 くであろうし 通 話 の 録 音 を 条 件 としなければ 製 品 に 関 する 問 い 合 わせができないという 不 満 を 抱 く 者 が 少 なくないと 思 われる イ) 通 話 録 音 の 内 容 お 客 様 相 談 室 への 通 話 は 顧 客 としては 製 品 等 に 関 する 問 い 合 わせや 苦 情 を 相 手 方 事 業 者 に 伝 えることが 主 眼 であり 特 定 の 電 話 対 応 者 との 間 で 秘 密 であることを 条 件 に 発 言 する 趣 旨 とは 通 常 考 えられない しかし 口 頭 の 申 し 出 を 相 談 担 当 者 がメモする 方 法 に 比 べ 肉 声 を 録 音 することは 情 報 の 内 容 密 度 ( 言 葉 遣 いや 声 色 等 を 含 む)において 格 段 に 濃 厚 であり 顧 客 が 書 面 で 申 し 出 る 場 合 よりも 保 護 対 象 としてより 重 要 である さらに 通 話 内 容 が 単 に 製 品 の 使 用 方 法 を 質 問 するような 場 合 だけでなく 金 融 商 品 に 関 連 して 顧 客 の 生 活 収 入 状 況 を 話 す 場 合 や 保 険 契 約 に 関 連 して 顧 客 の 病 歴 を 話 す 場 合 や 食 品 の 摂 取 に 関 連 して 8
顧 客 の 健 康 状 態 を 話 す 場 合 など プライバシー 性 の 高 い 場 合 には 要 保 護 性 に 大 きな 違 い があると 考 えられる つまり 個 人 の 肉 声 を 録 取 することの 特 質 と 通 話 内 容 とを 考 慮 する 必 要 がある ウ) 通 話 録 音 の 方 法 お 客 様 相 談 室 にかかってきた 通 話 をそのまま 録 音 する 方 法 は 事 業 者 側 で 顧 客 に 対 し 電 話 をかけることを 誘 導 したような 場 面 ではない また 通 話 の 当 事 者 双 方 に 無 断 で 第 三 者 が 録 音 する 場 合 は 通 信 の 秘 密 に 反 することになるが 通 話 の 当 事 者 の 一 方 が 相 手 方 の 会 話 を 紙 にメモする 代 わりに 音 声 自 体 を 記 録 する 行 為 だと 見 れば 不 正 な 方 法 で 取 得 したとはいえない さらに デジタル 録 音 技 術 の 進 展 により 長 時 間 の 録 音 が 容 易 にな った 現 在 では メモの 手 間 を 省 き 正 確 性 を 確 保 するために 事 業 者 が 様 々な 場 面 で 顧 客 との 通 話 を 録 音 することが ますます 増 えると 思 われる しかし 他 方 で 一 般 顧 客 の 意 識 からすれば 通 信 販 売 のように 電 話 で 取 引 の 注 文 をす る 場 面 であれば 契 約 締 結 行 為 として 責 任 ある 発 言 をする 必 要 があると 自 覚 しているであ ろうし 仮 にその 通 話 が 録 音 されたとしても 違 和 感 は 少 ないと 思 われるのに 対 し お 客 様 相 談 室 への 問 い 合 わせは 顧 客 の 立 場 で 相 談 に 乗 ってくれる 窓 口 として 安 心 して 自 由 に 申 し 出 ることができるものと 想 定 している 者 が 少 なくないと 思 われる そのような 顧 客 からすれば お 客 様 相 談 室 への 問 い 合 わせ 電 話 を 無 断 で 録 音 されることは 不 意 打 ち 的 な 行 為 として 大 きな 不 満 を 抱 くことになる 3) 通 話 録 音 行 為 の 実 質 的 な 違 法 性 評 価 ( 小 括 ) 以 上 の 検 討 を 踏 まえれば 事 業 者 の 顧 客 対 応 の 適 正 さを 確 保 向 上 するため お 客 様 相 談 室 にかかってきた 通 話 を 個 別 の 同 意 や 告 知 なしに 録 音 する 行 為 は それ 自 体 が 一 律 に 違 法 だと 評 価 することは 困 難 であると 考 えられる しかし 顧 客 の 立 場 からは 自 分 の 肉 声 が 無 断 で 録 音 される 不 利 益 顧 客 の 立 場 で 相 談 できるはずの 相 談 窓 口 で 不 意 打 ち 的 に 録 音 される 不 満 感 録 音 されることを 我 慢 しなけれ ば 製 品 に 関 する 問 い 合 わせができないという 不 利 益 などの 問 題 があることから 通 話 内 容 や 録 音 することの 告 知 方 法 などの 個 別 事 情 によっては 違 法 性 を 帯 びることもあり 得 るも のと 考 えられる 4) 事 業 者 の 対 応 のあり 方 以 上 のとおり 法 的 な 結 論 としては 事 前 の 同 意 がない 通 話 録 音 は 原 則 として 不 正 な 取 得 ( 法 17 条 )には 当 たらないと 解 されるし 事 前 の 通 知 がない 通 話 録 音 であっても 直 ちに 利 用 目 的 の 通 知 義 務 等 ( 法 18 条 1 項 )に 違 反 しているとは 判 断 できない しかしながら 前 述 のとおり 通 話 を 無 断 で 録 音 することは 個 人 の 人 格 権 侵 害 として 個 別 事 情 によっては 違 法 性 を 帯 びる 可 能 性 があることや 顧 客 が 安 心 して 相 談 できるはず 9
のお 客 様 相 談 室 が 無 断 で 通 話 を 録 音 することに 対 して 顧 客 が 不 満 感 を 抱 くおそれが 強 いこ とに 照 らせば 事 業 者 が 顧 客 の 信 頼 関 係 を 確 保 する 対 応 のあり 方 という 観 点 からすれば 少 なくとも 書 面 による 直 接 取 得 における 利 用 目 的 の 事 前 明 示 ( 法 18 条 2 項 )に 準 じた 取 り 扱 いが 望 まれる ヒヤリング 調 査 によれば 通 話 録 音 を 行 っていることの 告 知 方 法 としては 多 くの 業 者 が WEBサイト 上 に 録 音 する 旨 を 公 表 しているほか 事 業 者 によっては 取 扱 説 明 書 や パンフレット 等 に 録 音 する 旨 を 記 載 している 例 がある さらに 担 当 者 につながる 前 に 自 動 音 声 テープにより 録 音 する 旨 をアナウンスする 例 がある このうち お 客 様 相 談 室 に 電 話 をかけた 際 冒 頭 の 自 動 音 声 により 相 談 対 応 の 適 正 さ を 確 保 するため 通 話 内 容 を 録 音 します 旨 を 告 知 することが 法 18 条 2 項 の 事 前 明 示 の 趣 旨 にも 合 致 する これに 対 し WEBサイトに 個 人 情 報 取 扱 方 針 を 記 載 していても 多 くの 消 費 者 はこれを 読 んでいるとは 思 われないので 事 前 の 明 示 とは 評 価 できないであろ う そうすると 少 なくとも 顧 客 に 交 付 する 取 扱 説 明 書 や 契 約 書 面 やパンフレット 類 に 記 載 するお 客 様 相 談 室 の 電 話 番 号 の 直 近 に 相 談 対 応 の 適 正 さを 確 保 するため 通 話 内 容 を 録 音 します と 表 示 することが 求 められる 5) 本 事 案 への 適 用 本 事 案 は 相 談 者 からお 客 様 相 談 室 に 電 話 をかけた 際 冒 頭 に 通 話 内 容 を 録 音 します というメッセージが 流 れたというものであり この 点 の 対 応 は 適 切 である その 後 相 談 室 の 担 当 者 から 折 り 返 し 電 話 をした 際 この 点 の 説 明 がなかったことが 苦 情 となっているが 初 回 のメッセージによって 通 話 録 音 の 取 り 扱 いが 一 般 的 に 表 示 されて いることに 照 らし 担 当 者 から 電 話 をかけるときにも 毎 回 同 様 なメッセージを 加 えるべき であるとまでは 解 釈 できないと 思 われる (5) 通 話 録 音 データの 開 示 消 去 が 要 求 できるか 1) 通 話 録 音 データの 開 示 義 務 事 業 者 は 本 人 から 保 有 個 人 データの 開 示 を 求 められたときは 開 示 しなければならな い( 法 25 条 1 項 ) この 開 示 義 務 は 保 有 個 人 データに 該 当 する 場 合 であれば 原 則 としてすべてに 適 用 さ れる 規 定 であり 例 外 的 に 開 示 を 拒 否 できる 場 合 としては 1 本 人 又 は 第 三 者 の 生 命 身 体 財 産 その 他 の 権 利 利 益 を 侵 害 するおそれがある 場 合 2 当 該 事 業 者 の 業 務 の 適 正 な 実 施 に 著 しい 支 障 を 及 ぼすおそれがある 場 合 3 他 の 法 令 に 違 反 することとなる 場 合 とされ ている( 法 25 条 1 項 但 書 ) このうち 業 務 の 適 正 な 実 施 に 著 しい 支 障 を 及 ぼす とは 開 示 することにより 営 業 上 の 秘 密 保 持 や 人 事 運 営 問 題 などに 著 しい 不 利 益 が 生 じる 場 合 が 典 型 である また 同 一 人 から 複 雑 な 対 応 を 要 する 開 示 請 求 が 繰 り 返 し 行 われることにより 開 示 対 応 窓 口 が 事 実 上 10
独 占 されて 他 の 問 い 合 わせ 業 務 に 著 しい 支 障 が 生 じるような 場 合 は 該 当 するが( 経 済 産 業 省 ガイドライン) 単 に 開 示 すべき 保 有 個 人 データの 量 が 多 いことのみではこれに 該 当 しな い( 金 融 分 野 における 個 人 情 報 保 護 に 関 するガイドライン( 金 融 庁 ) ) 本 件 録 音 データは お 客 様 相 談 室 に 寄 せられる 通 話 一 般 を 記 録 した 個 人 データであるか ら その 存 否 が 明 らかになることにより 違 法 不 当 な 行 為 を 助 長 誘 発 するおそれがある 情 報 ( 政 令 3 条 2 項 )に 当 たるとはいえない そうであれば 保 有 期 間 の 定 めにおいてま たは 実 際 の 保 有 状 態 において 6 ヶ 月 を 超 えて 保 有 しているものであれば 保 有 個 人 データ に 該 当 することとなり 開 示 請 求 の 対 象 となる 録 音 データの 開 示 については 録 音 機 器 の 中 から 通 話 の 日 付 氏 名 等 により 本 人 の 通 話 部 分 を 検 索 し 本 人 の 通 話 部 分 だけを 取 り 出 して 開 示 することは 業 務 に 著 しい 支 障 が 生 じる 事 態 は 想 定 できないので 開 示 義 務 を 負 うと 解 される 保 有 個 人 データに 該 当 しない 場 合 は 法 律 上 の 開 示 義 務 は 負 わないこととなる しかし 開 示 義 務 の 対 象 を 6 ヶ 月 を 超 える 保 有 データに 限 定 したのは 事 業 者 の 事 務 負 担 を 考 慮 し たものと 考 えられるところ 開 示 請 求 をした 時 点 で 現 にそのデータが 存 在 しており かつ 本 人 の 通 話 部 分 を 検 索 して 取 り 出 し 開 示 することが 容 易 な 場 合 であれば 事 業 者 の 顧 客 対 応 のあり 方 としては できるだけ 開 示 に 応 ずることが 望 ましいであろう ヒヤリング 調 査 によれば 本 人 確 認 書 類 等 を 含 む 開 示 請 求 手 続 を 踏 む 場 合 には 開 示 に 対 応 する 事 業 者 と 原 則 として 断 るという 事 業 者 とに 対 応 が 分 かれている なお 関 連 事 例 1や 事 例 2において 通 話 の 録 音 データが 存 在 しているのに それを 聞 かせて 欲 しいという 顧 客 の 要 求 に 対 し 事 業 者 が 拒 否 する 対 応 は それが 保 有 個 人 データに 該 当 する 場 合 には 基 本 的 に 開 示 義 務 に 違 反 するものと 考 えられる なお 事 業 者 が 本 人 の 開 示 請 求 を 拒 否 するときは 拒 否 の 理 由 を 説 明 するよう 努 めなければならない( 法 28 条 ) とされているので 拒 否 理 由 の 説 明 を 求 めることを 通 じて 開 示 すべきことを 再 度 説 得 す ることが 有 効 である 開 示 の 方 法 は 原 則 として 書 面 の 交 付 によるものとし 本 人 が 同 意 した 方 法 があるとき はその 方 法 とする( 法 25 条 1 項 政 令 6 条 )と 定 められている これは 原 則 としてある がままの 状 態 で 開 示 することが 望 ましいという 趣 旨 であり 文 字 情 報 の 場 合 は それが 記 載 されている 書 面 をコピーして 交 付 することが 原 則 となる 録 音 データの 場 合 文 字 に 反 訳 して 交 付 することは かえって 事 業 者 の 手 間 と 消 費 者 の 費 用 負 担 が 大 きくなることから 磁 気 テープ 又 はデジタル 録 音 をダビングして 交 付 するこ とが 原 則 的 な 取 り 扱 いとなろう 顧 客 が 録 音 を 再 生 して 聞 くことを 求 める 場 合 は より 簡 易 な 開 示 方 法 として 認 められる ヒヤリング 調 査 によれば 録 音 データの 開 示 例 が 未 だないようであるが ダビングして 交 付 することを 予 定 している 事 業 者 がある 11
2) 通 話 録 音 データの 消 去 義 務 事 業 者 は 保 有 個 人 データの 取 り 扱 いが 利 用 目 的 の 制 限 ( 法 16 条 ) 又 は 不 正 な 取 得 ( 法 17 条 )に 違 反 しているという 理 由 で 本 人 から 利 用 停 止 又 は 消 去 を 求 められたときは 違 反 を 是 正 するため これに 応 じなければならない( 法 27 条 ) 第 三 者 提 供 の 制 限 ( 法 23 条 ) に 違 反 している 場 合 は 第 三 者 提 供 の 停 止 義 務 を 負 う つまり 事 業 者 は 本 人 から 保 有 個 人 データの 消 去 請 求 があった 場 合 にすべて 応 じる 義 務 を 負 うのではなく 不 正 な 取 得 等 の 規 定 に 違 反 している 場 合 に 限 られる 本 件 録 音 データは 仮 に 保 有 個 人 データに 該 当 する 場 合 であっても 本 人 の 同 意 なく 通 話 を 録 音 する 行 為 は 基 本 的 に 法 17 条 違 反 とは 評 価 できないことから 消 去 に 応 じる 義 務 はないと 解 される また 法 は 保 有 個 人 データの 保 有 期 間 については 何 ら 定 めておらず 一 定 期 間 経 過 後 に 消 去 する 義 務 も 何 ら 定 めがない もっとも 保 有 個 人 データの 利 用 目 的 との 関 係 でみると 利 用 目 的 を 達 した 後 は もは や 保 有 しておく 必 要 性 はないはずであるし 安 全 管 理 の 面 でも 保 有 を 継 続 することの 危 険 性 のみが 伴 うし 目 的 外 利 用 の 可 能 性 を 疑 われるばかりである また 事 業 者 としては 利 用 目 的 をできる 限 り 特 定 しなければならず( 法 15 条 ) その 利 用 目 的 を 達 した 後 は 速 やか に 消 去 することが 事 業 者 の 対 応 のあり 方 として 望 ましいところである 本 件 録 音 データの 利 用 目 的 は 前 述 のとおり 相 談 業 務 の 適 正 さを 確 保 することなどが 想 定 されるが その 利 用 目 的 を 特 定 し 必 要 な 保 有 期 間 及 び 消 去 時 期 を 明 確 に 定 めておく ことが 望 まれるところである ヒヤリング 調 査 によれば 本 人 確 認 のうえで 消 去 請 求 にも 応 じるという 事 業 者 がある 一 方 で 多 くの 事 業 者 は 消 去 の 申 し 出 を 断 る 方 針 であるという 法 的 な 義 務 としては 消 去 に 応 じる 義 務 はないうえ 事 案 によっては 保 存 しておく 必 要 性 があるケースもあるであろう から 一 律 に 消 去 要 求 に 応 じることが 望 ましいとまでは 言 い 難 い したがって 消 去 要 求 については 案 件 に 応 じて 事 業 者 の 任 意 の 対 応 に 委 ねるほかないと 思 われる 3) 開 示 利 用 停 止 等 の 請 求 における 本 人 確 認 保 有 個 人 データの 開 示 利 用 停 止 等 の 請 求 を 受 けた 事 業 者 は その 個 人 情 報 を 誤 って 第 三 者 に 提 供 することにならないよう 本 人 確 認 資 料 の 提 示 を 求 めることできる( 法 29 条 2 項 ) このことは 個 人 データの 安 全 管 理 ( 法 20 条 )という 観 点 からみても 基 本 的 に 是 認 される 対 応 である ただし 開 示 の 手 続 が 本 人 に 過 重 な 負 担 とならないよう 配 慮 しなけ ればならないとされている( 法 29 条 4 項 ) 本 件 の 場 合 顧 客 が 電 話 で 録 音 データの 開 示 を 求 めたのであれば 電 話 のやり 取 りでは 本 人 の 確 認 ができないため 別 に 本 人 確 認 資 料 の 提 出 を 求 めることは 原 則 として 是 認 で きる これに 対 し 1 回 の 電 話 でのやり 取 りの 途 中 で 消 去 を 求 めたような 場 合 ( 原 則 として 消 去 に 応 じる 義 務 がないことは 前 述 のとおりであるが 消 去 に 応 じる 場 合 の 手 続 として 12
は) 本 人 からの 申 し 出 であることが 明 らかであるから 改 めて 本 人 確 認 資 料 の 提 出 を 求 め る 必 要 はないはずである なお 例 えば インターネット 取 引 において それまでは 会 員 番 号 やID 番 号 の 照 合 に より 処 理 していたのに 開 示 等 の 請 求 に 対 してだけ 突 然 過 剰 な 証 明 資 料 を 要 求 するような ケースを 考 えると 開 示 等 請 求 をことさら 困 難 にするような 過 剰 な 要 求 は 不 当 である( 法 29 条 4 項 ) むしろ 当 該 取 引 の 中 で 簡 便 な 本 人 確 認 方 法 があるのであれば その 方 法 でも 良 いと 考 えるべきである <title> 消 費 者 が 事 業 者 との 通 話 内 容 を 録 音 され 録 音 を 消 去 してほしいと 求 めたが 事 業 者 に 断 られたトラブル</title> 13