目 次 境 界 層 境 界 層 とは? その 定 義 境 界 層 のなかで 起 きている 現 象 典 型 的 な 境 界 層 境 界 層 過 程 が 求 める 時 間 変 化 率 とは? 境 界 層 のモデリング 1 2 境 界 層 とは? 境 界 層 とは? 境 界 層 の 中 で 起 きていること 明 確 な 定 義 はないが 地 表 面 に 近 い 大 気 The layer of air directly above the Earth s surface in which the effects of the surface (friction, heating and cooling) are felt directly on time scales less than a day, and in which significant fluxes of momentum, heat or matter are carried by turbulent motions on a scale of the order of the depth of the boundary layer or less. (by Garrat) つまり 地 表 面 の 摩 擦 熱 水 蒸 気 が 影 響 する 層 境 界 層 上 端 の 雲 も 重 要 3 4 境 界 層 と 自 由 大 気 通 常 地 上 から 高 度 3kmくらいまで が 境 界 層 となる それより 上 は 自 由 大 気 と 呼 ばれる 境 界 層 の 高 さをhとすると 地 上 か ら0.1hまでは 接 地 境 界 層 それより 上 はエクマン 層 と 呼 ばれる 境 界 層 で 起 きていること 地 表 面 と 大 気 との 間 での 交 換 地 面 の 摩 擦 によって 風 速 が 弱 まる 大 気 から 地 面 に 運 動 量 が 輸 送 される と 解 釈 顕 熱 が 地 面 から 大 気 に 供 給 ( 顕 熱 フラックス) 水 蒸 気 が 地 面 から 大 気 に 供 給 ( 潜 熱 フラックス) 地 面 では 水 の 状 態 のものが 大 気 に 蒸 発 して 供 給 さ れる これらが 境 界 層 内 に 輸 送 される 運 動 量 熱 水 蒸 気 の( 鉛 直 ) 輸 送 (フラックス) による 時 間 変 化 率 を 求 めるのが 境 界 層 過 程 5 6 1
境 界 層 モデルの 概 念 境 界 層 パラメタリゼーション: 乱 流 輸 送 による 時 間 変 化 フラックス 輸 送 による 時 間 変 化 率 地 表 面 フラックス 風 鉛 直 シア 低 温 高 温 不 安 定 度 熱 水 蒸 気 運 動 量 フラックス= 物 理 量 の 輸 送 地 表 面 フラックスを 評 価 粗 度 長 さ 接 地 境 界 層 の 安 定 度 最 下 層 と 地 表 面 の 物 理 量 の 差 に 依 存 風 の 鉛 直 シア 不 安 定 度 などによりをフラックスを 算 出 フラックスに 応 じて 物 理 量 を 鉛 直 方 向 に 輸 送 X, Y 方 向 からの 寄 与 も 同 様 に 計 算 できて それを 足 し 合 わせたものが 時 間 変 化 率 となる 8 観 測 例 典 型 的 な 境 界 層 の 日 変 化 地 面 が 加 熱 され 顕 熱 潜 熱 フラックスが 供 給 さ れるとともに 鉛 直 一 様 な 層 が 高 くなっていく 鉛 直 一 様 の 層 = 混 合 層 近 藤 人 間 環 境 の 気 象 学 より Stull より 9 10 典 型 的 な 境 界 層 混 合 層 の 上 端 にはよ く 層 積 雲 が 生 成 層 積 雲 上 面 では 放 射 冷 却 によって 強 い 逆 転 層 = 温 位 で 見 ると 大 きなジャンプができる なにが 輸 送 をするのか? 乱 流 = 大 気 は 常 に 乱 れている 風 速 温 位 の 平 均 からの 変 動 の 観 測 例 鉛 直 風 ( 平 均 )は 水 平 風 ( 平 均 ) よりはるかに 小 さいが 変 動 量 は 同 じオーダー From Lock et.al (2000) 竹 内 近 藤 より 11 12 2
Reynolds 分 解 Reynolds 平 均 平 均 値 とその 周 囲 の 乱 れに 分 解 乱 れによる 輸 送 例 : 断 熱 の 場 合 の 温 位 の 方 程 式 時 間 的 空 間 的 平 均 操 作 :Reynolds 平 均 乱 れのReynolds 平 均 は0: のフラックス は Explicit Flux = advection Subgrid flux to be parameterized 13 14 境 界 層 近 似 の 解 釈 通 常 加 えてたいていの 大 気 モデルでは したがって 鉛 直 輸 送 が 最 も 寄 与 水 平 成 分 は 無 視 ( 注 ) 上 の 議 論 はExplicit flux = 移 流 には 成 立 し ない: (a) 不 安 定 成 層 のとき w > 0 で parcel が 断 熱 的 に 持 ち 上 がると 周 りより 暖 かくな る: つまりΘ > 0 w < 0 で parcel が 断 熱 的 に 下 がると 周 りより 冷 たくなる: つ まりΘ <0 いずれの 場 合 も w Θ > 0 (b) 安 定 成 層 のとき (a)と 逆 の 議 論 で w Θ < 0 15 16 の 実 際 (1) の 実 際 (2) w, Θ, w Θ の 頻 度 分 布 w, Θ の 平 均 値 が0でも w Θ の 平 均 は0ではな い Stull より Stull より 17 18 3
の 実 際 (3) 境 界 層 の 発 達 とフラックス 温 位 (モデル) 温 位 ( 観 測 ) フラックス(モデル) エントレ インメント 竹 内 近 藤 より 19 20 境 界 層 でよく 使 う 保 存 物 理 量 液 水 温 位 総 水 量 これらの 量 は 凝 結 を 含 めても 保 存 凝 結 を 含 む 過 程 では の 代 わりに を 考 える 参 考 Deardorff (1976) 境 界 層 のモデリング 21 22 クロージャー 問 題 用 語 N 次 のモーメント: N 個 の 揺 らぎ 量 の 積 の 平 均 フラックスは2 次 のモーメント 場 の 平 均 量 は1 次 のモーメントと 定 義 する 乱 流 の 基 礎 方 程 式 Navier-Stokes 方 程 式 気 圧 傾 度 力 重 力 コリオリ 力 分 子 粘 性 ( 平 均 + 乱 流 による 揺 らぎ) に 分 解 して 代 入 し 平 均 操 作 をとると.. 23 4
1 次 のモーメント 量 の 方 程 式 2 次 のモーメント 量 の 方 程 式 1 次 のモーメント= 平 均 量 の 方 程 式 2 次 のモーメント 量 以 下 Einstein の 縮 約 規 則 を 利 用 この 項 が 乱 流 による 平 均 場 への 寄 与 変 動 量 に 対 する 方 程 式 ( 以 降 コリオリ 項 分 子 粘 性 項 は 省 略 ) 2 次 のモーメントの 方 程 式 には 3 次 のモーメントが 現 れてしま う より 高 次 の 相 関 量 が 必 要 になる =closure 問 題 フラックスのモデリング もっとも 古 典 的 で 簡 単 なもの:down gradient 2 次 のモーメントを1 次 モーメントで 表 現 =1 次 クロージャーモデル つまり 多 いところから 少 ないところへ 移 動 時 間 変 化 率 の 方 程 式 に 代 入 すると これは 拡 散 方 程 式 時 間 がたつにつれ 場 はほぼ 一 定 になる 地 表 付 近 では 風 は 等 圧 線 に 沿 わず 低 圧 部 側 に 横 切 る 地 衡 風 : 気 圧 傾 度 力 とコリオリ 力 が 釣 り 合 う ある 程 度 の 高 度 以 上 では 等 圧 線 に 沿 って 風 は 吹 く 地 表 付 近 では 等 圧 線 を 横 切 って 低 圧 部 に 向 かって 吹 きこむ この down gradient のモデリングで 理 解 が 可 能 拡 散 係 数 を 求 めることが 仕 事 通 常 運 動 量 スカラー( 熱 水 蒸 気 )の2 種 類 の 拡 散 係 数 を 計 算 27 28 エクマンスパイラル(1) エクマンスパイラル(2) 複 素 数 表 示 を 使 って まとめると 仮 定 定 常 状 態 ( 時 間 微 分 は0) 非 線 形 項 (= 移 流 項 )はコリオリ 項 に 比 べて 小 さい 境 界 層 近 似 地 衡 風 の 関 係 が 常 に 成 立 フラックスはdown gradient, Kは 一 定 地 衡 風 の 方 向 をx 軸 に 取 る(vg=0)と この 解 は 29 30 5
低 圧 部 高 圧 部 エクマンスパイラル(3) 地 衡 風 Garrat より 作 成 これは 非 常 に 簡 単 化 してあるので このよう なスパイラルを 描 いているとは 限 らない しかし 低 圧 部 に 向 かって 吹 きこむことは 定 性 的 に 理 解 できる 非 勾 配 項 (1) Down gradient 項 だけでは 一 様 層 は 実 現 でき ない Down gradient では 輸 送 に 勾 配 が 必 要 注 :いくら 拡 散 係 数 が 大 きくても 勾 配 がなければフラッ クスは0. 拡 散 係 数 の 大 小 はスキームの 組 み 立 てに は 重 要 だが 場 への 時 間 変 化 には 本 質 的 ではない 混 合 層 では 地 表 面 からフラックスが 入 ってくる これを 上 空 に 輸 送 しないと 地 表 面 に 熱 水 蒸 気 がたまってしまう これを 輸 送 するためには 勾 配 を 残 すことが 必 要 31 32 非 勾 配 項 (2) Down gradient に 加 え non-gradient termを 加 える ほぼ 一 様 な 混 合 層 では non-gradient termが 大 きく 寄 与 Non-gradient Flux による 効 果 1 次 元 モデルによるnon-gradient fluxの 効 果 の 比 較 V 赤 w NG 緑 w/o NG Stress(y) 赤 all w NG 緑 all w/o NG 青 Gra w NG 紫 Ngra w NG NGありの 方 がより 一 様 な 層 を 実 現 Stress はNGあり/なしで 大 きく 変 わらない しかし 同 じStress を 実 現 するために ある 程 度 の 勾 配 が 残 っている 必 要 がある より 一 様 な 層 が 観 測 などとより 一 致 している 33 34 さまざまな 境 界 層 ( 乱 流 )モデル KPタイプ 1 次 クロージャーで 拡 散 係 数 非 勾 配 項 を 直 接 パ ラメタライズしようとする UK Met Office の 境 界 層 スキーム(Lock et. al 2000) TKEタイプ 乱 流 エネルギー(TKE)と 拡 散 係 数 の 間 の 関 係 KPタイプ UKMO の 境 界 層 スキーム 各 鉛 直 カラムの 安 定 不 安 定 は 地 表 面 の 浮 力 フラックスで 決 定 する 乱 流 エネルギーをその 輸 送 方 程 式 から 予 報 / 診 断 する 35 From Lock et.al (2000) 36 6
UKMOの 境 界 層 スキーム 安 定 層 の 安 定 度 関 数 への 依 存 性 前 者 がlocal, 後 者 が non-local と 呼 ばれる K surf, K top はそれぞれ surface driven, cloud top driven term と 呼 ばれる Non-local は 不 安 定 層 で 寄 与 Local scheme fm, fh: 安 定 度 関 数 安 定 層 でのフラックスの 振 る 舞 いを 支 配 複 数 のオプションあり GABLS2 SCM 夜 間 の 温 位 fm 安 定 度 関 数 のリチャードソン 数 依 存 性 リチャードソン 数 強 安 定 で 大 きなfmであるほど 下 向 きフラックスが 大 きくなって 安 定 境 界 層 が 高 くなる 37 38 Non-local scheme Local scheme では 局 所 的 な 安 定 度 だけ で 拡 散 係 数 を 決 めていたが 渦 は 局 所 的 な ものだけでなく もっと 大 きなものがある Non-local scheme では 混 合 層 の 高 さ w*, u* といったその 点 に 局 所 的 ではない 量 を 用 いてparameterizeする K top も 同 様 混 合 層 の 高 さの 代 わりに 雲 の 厚 さ 地 上 からの 高 さの 代 わりに 雲 底 から の 高 さを 用 いる w m の 代 わりに 雲 頂 での 放 射 フラックスの 発 散 浮 力 を 考 慮 した 複 雑 な 速 度 スケールを 用 いる 混 合 層 の 上 端 では エントレインメント 率 を パラメタライズ(これもnon-local)し これを 使 ってフラックスを 決 めている 基 本 となる 関 係 式 : TKEタイプ l: 混 合 長 ( 乱 流 のスケール 別 途 診 断 ) 定 数 (1 次 クロージャー) or 変 数 (MYモデル) KPタイプに 比 べてシンプルであるが 以 下 に TKEを 求 めるかがキーポイント 39 40 乱 流 エネルギーの 方 程 式 風 速 シアによる 生 成 浮 力 による 生 成 ( 浮 力 フラックス) 拡 散 項 散 逸 浮 力 フラックス 乱 流 エネルギーの 主 要 な 生 成 源 凝 結 水 フラックスが 大 きく 寄 与 凝 結 する 際 に 潜 熱 を 出 して 浮 力 を 生 む 圧 力 輸 送 項 は 拡 散 項 とパラメトライズ 未 飽 和 の 場 合 飽 和 している 場 合 部 分 的 に 凝 結 していることを 考 慮 して を 決 める= 部 分 凝 結 スキーム(Sommeria and Deardorff (1977)) 42 7
TKEタイプの 例 Deardorff Deardorff (1980) クロージャー 関 係 は1 次 Down gradient TKEを 予 報 もともとはLES( 超 高 解 像 度 モデル)のために 開 発 されたもの 2007 年 5 月 までのMSMで 利 用 cが 定 数 であることが 難 点 MSMでは cをチューニングパラメータとして 混 合 層 の 中 では0.2, 外 では0.1という 設 定 も 使 っていた Mellor-Yamada モデル TKEタイプの 一 例 Mellor-Yamada model 2 次 のクロージャーモデル(3 次 モーメントを2 次 以 下 のモーメントを 使 って 表 現 ) 近 似 の 度 合 いによってレベル4 レベル1 レベル4: フルモデル すべての2 次 モーメントを 予 報 レベル3: TKE, を 予 報 その 他 は 診 断 レベル2.5: TKEのみを 予 報 その 他 は 診 断 レベル2: すべて 診 断 (GSMで 利 用 ) 43 44 Mellor-Yamada モデル 2 次 のクロージャーモデルであるが 境 界 層 近 似 の もとで 解 いたフラックス(2 次 のモーメント)は down gradient に 帰 着 する 鉛 直 拡 散 による 時 間 変 化 率 の 計 算 フラックスを 求 めることができれば レベル2では 生 成 項 と 散 逸 項 が 釣 り 合 うと 仮 定 S M, S H はフラックスリチャードソン 数 の 関 数 と してあらわされる フラックスリチャードソン 数 はリチャードソン 数 同 様 局 所 的 な 安 定 度 の 指 数 定 式 はlocalスキームであるが 変 化 するS M, S H によって 特 にレベル2.5 以 上 ではノンローカ ルと 同 様 の 効 果 から 時 間 変 化 率 を 求 めることができる しかし 単 純 にフラックスを 鉛 直 差 分 したもの を 時 間 変 化 率 とすると 計 算 不 安 定 となること が 多 い 45 46 鉛 直 拡 散 による 時 間 変 化 率 の 評 価 簡 単 のため 他 の 過 程 からの 時 間 変 化 率 は 無 視 して 鉛 直 フラックスの 寄 与 だけ 考 える それは 次 の 拡 散 方 程 式 を 解 くのと 同 じ 拡 散 方 程 式 の 時 間 離 散 化 Explicit Explicit: 右 辺 をtimestep n の 値 で 評 価 しかし 拡 散 方 程 式 を 解 くには 工 夫 が 必 要 しかし この 時 間 変 化 率 を 使 って 積 分 すると 計 算 不 安 定 に 陥 ることも 47 48 8
拡 散 方 程 式 の 時 間 離 散 化 Implicit Implicit: 右 辺 をtimestep n+1の 値 で 評 価 δχについて 整 理 すると Implicit 解 法 を 使 う 際 の 注 意 境 界 層 過 程 で 評 価 するものはフラックスであ り フラックスがわかればexplicitに 解 く 場 合 は フラックスだけで 時 間 変 化 率 が 求 まる しかし implicit に 解 く 場 合 は フラックスだけ でなく 未 知 変 数 の 係 数 となる 拡 散 係 数 ( 交 換 係 数 )も 必 要 であることに 注 意 これはδχについての 三 重 対 角 方 程 式 これを 解 けば 時 間 変 化 率 δχが 求 まる 49 50 Large Eddy Simulation 水 平 解 像 度 数 kmでは 鉛 直 フラックス( 鉛 直 流 )は 陽 には 表 現 されない MYは 大 小 含 めたすべての 鉛 直 輸 送 を 表 現 しようとしてい る 水 平 解 像 度 1km 程 度 以 下 なら それなりに 鉛 直 輸 送 を 解 像 するようになる LESでは 乱 流 ( 渦 )を 陽 に 解 像 する 大 きいものとパラメトライズ する 小 さなものに 分 ける Deardorff スキームはLESの 小 さな 渦 を 表 現 しようとしたもの 超 高 解 像 度 が 必 要 であり 現 業 モデルで 使 うことはまだまだ であるが 現 象 の 解 明 パラメタリゼーションの 糸 口 をつかむ 鉛 直 1 次 元 モデルのリファレンスとしても 使 われる 51 9