430 2016 4 一 般 発 行 編 集 ( 社 団 ) 香 川 県 薬 剤 師 会 760-0006 高 松 市 亀 岡 町 9 番 20 号 087 831 3093 087 831 0508 http://www.kagayaku.jp/ ( 本 号 目 次 ) 最 近 話 題 の 副 作 用 トピックス 他 2 主 な 使 用 上 の 注 意 改 訂 情 報 ( 平 成 28 年 02 月 16 日 指 示 分 ) 1) 重 大 な 副 作 用 欄 の 改 訂 として リタリン コンサータ に 肝 不 全 肝 機 能 障 害 ネキシウム に 横 紋 筋 融 解 症 ハラヴェン に 皮 膚 粘 膜 眼 症 候 群 多 形 紅 斑 バ ラクルード に 肝 機 能 障 害 を 追 記 し 注 意 喚 起 する DI 実 例 集 3 質 問 1. 妊 娠 産 褥 期 に 処 方 される 経 口 抗 凝 固 薬 について 教 えてください 話 題 を 追 って 4 1.アトピー 性 皮 膚 炎 のガイドライン 概 説 2. 早 期 慢 性 膵 炎 の 治 療 薬 行 政 の 窓 10 1. 医 薬 品 医 療 機 器 等 安 全 性 情 報 No.330 2. 厚 生 労 働 省 通 知 (1) 新 たに 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 において 公 知 申 請 に 関 する 事 前 評 価 を 受 けた 医 薬 品 の 適 応 外 使 用 について 1
最 近 話 題 の 副 作 用 トピックス 他 使 用 上 の 注 意 改 訂 情 報 ( 平 成 28 年 02 月 16 日 指 示 分 ) 厚 生 労 働 省 が 製 薬 企 業 に 指 示 した 医 薬 品 を 使 う 上 での 新 たな 注 意 事 項 製 薬 企 業 はこれに 基 づき 添 付 文 書 を 改 訂 する 117 精 神 神 経 用 剤 ( 中 枢 神 経 刺 激 薬 ) (1)メチルフェニデート(リタリン コンサータ ) 重 大 な 副 作 用 の 項 に 肝 不 全 肝 機 能 障 害 : 肝 不 全 ( 急 性 肝 不 全 等 ) 肝 機 能 障 害 があらわれることがあるので 観 察 を 十 分 に 行 い 異 常 が 認 められた 場 合 には 投 与 を 中 止 し 適 切 な 処 置 を 行 うこと を 追 記 する 232 消 化 性 潰 瘍 用 剤 (PPI) (2)エソメプラゾール(ネキシウム ) 重 大 な 副 作 用 の 項 に 横 紋 筋 融 解 症 : 横 紋 筋 融 解 症 があらわれることがあるので 観 察 を 十 分 に 行 い 筋 肉 痛 脱 力 感 CK(CPK) 上 昇 血 中 及 び 尿 中 ミオグロビン 上 昇 等 があらわれた 場 合 には 投 与 を 中 止 し 適 切 な 処 置 を 行 うこと また 横 紋 筋 融 解 症 による 急 性 腎 不 全 の 発 症 に 注 意 すること を 追 記 する 429 その 他 の 腫 瘍 用 薬 ( 手 術 不 能 または 再 発 乳 がん) (3)エリブリンメシル 酸 塩 (ハラヴェン ) 重 大 な 副 作 用 の 項 に 皮 膚 粘 膜 眼 症 候 群 (Stevens-Johnson 症 候 群 ) 多 形 紅 斑 : 皮 膚 粘 膜 眼 症 候 群 多 形 紅 斑 があらわれ ることがあるので 観 察 を 十 分 に 行 い 異 常 が 認 められた 場 合 には 投 与 を 中 止 し 適 切 な 処 置 を 行 う こと を 追 記 する 2
625 抗 ウイルス 剤 (B 型 肝 炎 治 療 剤 ) (4)エンテカビル 水 和 物 (バラクルード ) 重 大 な 副 作 用 の 項 に 肝 機 能 障 害 : 本 剤 での 治 療 中 に AST(GOT) ALT(GPT)が 上 昇 することがある AST(GOT) ALT(GPT)の 上 昇 が 認 められた 場 合 より 頻 回 に 肝 機 能 検 査 を 行 うなど 観 察 を 十 分 に 行 うこと 検 査 値 等 の 経 過 から 肝 機 能 障 害 が 回 復 する 兆 候 が 認 められない 場 合 には 投 与 を 中 止 するなど 適 切 な 処 置 を 行 うこと を 追 記 する 参 考 文 献 1) 添 付 文 書 改 訂 / 厚 労 省 主 な 使 用 上 の 注 意 改 訂 情 報 (2016/02/16 指 示 分 ) 2) 医 薬 品 安 全 性 情 報 Vol.14 No.04(2016/02/25) 3) 医 薬 品 安 全 性 情 報 Vol.14 No.03(2016/02/10) DI 実 例 集 質 問 1. 妊 娠 産 褥 期 に 処 方 される 経 口 抗 凝 固 薬 について 教 えてください 妊 娠 産 褥 期 における 抗 凝 固 療 法 の 対 象 疾 患 は 表 1 に 示 すような 妊 娠 に 関 連 する 疾 患 が 多 い 妊 娠 という 特 別 な 過 凝 固 状 態 ( 表 2)によって 生 じる 疾 患 に 対 する 治 療 が 目 的 となる 3
妊 婦 に 対 して 経 口 の 抗 凝 固 薬 を 選 択 する 際 は ワルファリンやリバーロキサバンが 使 用 できないことに 注 意 する ワルファリンは 妊 娠 初 期 には 催 奇 形 性 があり 中 期 以 降 は 胎 児 の 凝 固 因 子 の 低 下 による 子 宮 内 で 頭 蓋 内 出 血 が 起 こることが 知 られている また リバーロキサバンでは 動 物 実 験 レベルで 催 奇 形 性 などがあることか ら 禁 忌 となっている ダビガトランやアピキサバン エドキサバンの 使 用 については 有 益 性 が 危 険 性 を 上 回 るとき であり 個 々のケースで 主 治 医 の 意 向 に 委 ねられる しかし 実 際 には これらの NOAC は 発 売 され てまだ 日 も 浅 いうえに 表 1 のような 疾 患 の 方 が 多 いわけではないため 投 与 実 績 はほとんどないと 思 われる 経 口 ではないが 実 臨 床 では 妊 娠 中 に 抗 凝 固 療 法 が 必 要 なときは 状 態 によっては 入 院 のうえヘパリナイゼー ションする( 経 静 脈 的 にヘパリンを 持 続 点 滴 する) 方 が 安 全 かつ 確 実 な 方 法 である 外 来 で 治 療 する 場 合 など は ヘパリン 製 剤 の 皮 下 注 射 を 自 宅 で 患 者 自 身 にしてもらい 定 期 的 に APTT を 測 定 しコントロールすると いう 方 法 も 行 われている 産 褥 期 の 女 性 では ワルファリンは 母 乳 移 行 しないため 使 用 できる ダビガトラン リバーロキサバン ア ピキサバン エドキサバンの 添 付 文 書 には 母 乳 移 行 が 動 物 実 験 で 認 められていると 記 載 されているため 産 褥 期 の 女 性 に 対 するこれらの 薬 剤 の 使 用 経 験 がほとんどない 現 状 では ワルファリンを 選 択 する 方 が 無 難 と 思 われる ( 杢 保 ) 参 考 文 献 Rp.+ レシピプラス Vol.15, No.1 各 医 薬 品 添 付 文 書 話 題 を 追 って 1.アトピー 性 皮 膚 炎 のガイドライン 概 説 (はじめに) 2015 年 に 改 訂 された 日 本 皮 膚 科 学 会 アトピー 性 皮 膚 炎 (atopic dermatitis:ad) 診 療 ガイドラインを 中 心 に 紹 介 する.1 瘙 痒,2 特 徴 的 皮 疹 と 分 布,3 慢 性 反 復 性 経 過 の 3 基 本 項 目 を 満 たすものを 症 状 の 軽 重 を 問 わず AD と 診 断 する. 治 療 方 針 は,1 薬 物 療 法,2 皮 膚 の 生 理 学 的 異 常 に 対 する 外 用 療 法 スキンケア,3 悪 化 因 子 の 検 索 と 対 策 の 3 点 が 基 本 になる. 薬 物 療 法 の 中 心 は, 抗 炎 症 外 用 薬 であるステロイド 外 用 薬 とタク ロリムス 軟 膏 である.ステロイド 外 用 薬 は 薬 効 の 強 さにより 5 つに 分 類 されるが, 個 々の 皮 疹 の 重 症 度 に みあったランクの 薬 剤 を 適 切 に 選 択 することが 重 要 である.タクロリムス 軟 膏 はとくに 顔 面 頸 部 の 皮 疹 に 対 して 高 い 適 応 のある 薬 剤 として 位 置 づけられている. 抗 ヒスタミン 薬 は 痒 みの 緩 和 を 目 的 として 補 助 的 に 用 い られる.スキンケアの 基 本 は 皮 膚 の 保 湿 である. 悪 化 因 子 は 年 齢 による 特 徴 もあり, 個 々の 症 例 で 十 分 に 吟 味 する 必 要 がある. アトピー 性 皮 膚 炎 治 療 ガイドラインの 主 なものとして, 日 本 皮 膚 科 学 会 によるものと 日 本 アレルギー 学 会 に よるものの 2 つがある. 両 者 は 大 筋 において 大 きな 差 異 はないが, 前 者 は 皮 膚 科 診 療 を 専 門 とする 医 師 を 対 象 としているのに 対 して, 後 者 は AD の 診 療 にかかわる 臨 床 医 を 広 く 対 象 としている.この 2 つのガイドライ ンは 将 来 的 には 統 合 される 予 定 である. (アトピー 性 皮 膚 炎 の 定 義 ) AD は 増 悪 寛 解 を 繰 り 返 す, 瘙 痒 のある 湿 疹 を 主 病 変 とする 疾 患 であり, 患 者 の 多 くはアトピー 素 因 を 持 つ.アトピー 素 因 とは,1 家 族 歴 既 往 歴 ( 気 管 支 喘 息,アレルギー 性 鼻 炎 結 膜 炎,AD のうちいずれか, 4
あるいは 複 数 の 疾 患 )があること,または,2 IgE 抗 体 を 産 生 しやすい 素 因 をさす. (ADの 病 態 ) AD の 病 態 は,1 皮 膚 バリア,2アレルギー 炎 症,3 瘙 痒 の 3 つの 観 点 から 考 えると 理 解 しやすい. 1. 皮 膚 バリア AD の 患 者 では 皮 膚 バリア 機 能 の 低 下 のため, 非 特 異 的 な 刺 激 に 対 する 皮 膚 の 被 刺 激 性 が 亢 進 し, 炎 症 がお こりやすくなると 想 定 されている. 2.アレルギー 炎 症 皮 膚 バリア 機 能 の 低 下 は, 抗 原 (アレルゲン)の 皮 膚 への 侵 入 しやすさにつながる.ダニや 花 粉 のようなア レルゲンは 蛋 白 抗 原 として 作 用 するだけでなく, 含 まれるプロテアーゼによって Th2 型 の 免 疫 応 答 を 誘 導 す る. 3. 瘙 痒 ヒスタミン H1 受 容 体 拮 抗 薬 ( 抗 ヒスタミン 薬 )が 著 効 する 蕁 麻 疹 と 異 なり,AD の 瘙 痒 に 対 する 抗 ヒスタ ミン 薬 の 効 果 は 症 例 によって 異 なることから,ヒスタミン 以 外 のメディエーターの 存 在 が 想 起 されている. 近 年,Th2 細 胞 が 産 生 するサイトカインのひとつである IL-31 が 瘙 痒 を 誘 導 することが 報 告 された. (ADの 診 断 ) 1. 診 断 基 準 日 本 皮 膚 科 学 会 による AD の 診 断 基 準 に 基 づき,1 瘙 痒,2 特 徴 的 皮 疹 と 分 布,3 慢 性 反 復 性 経 過 の 3 基 本 項 目 を 満 たすものを 症 状 の 軽 重 を 問 わず AD と 診 断 する( 表 1). 皮 疹 の 分 布 は 左 右 対 称 性 で, 屈 側 部 に 好 発 する. 年 齢 による 特 徴 もあり, 乳 児 期 には, 頭, 顔 から 皮 疹 が 出 現 し, 体 幹 や 四 肢 に 拡 大 する. 幼 少 児 期 には, 頸 部, 肘 下, 膝 窩 などの AD に 最 も 特 徴 的 な 部 位 に 皮 疹 が 出 現 する. 思 春 期 成 人 期 には 顔 面 を 含 む 上 半 身 に 皮 疹 が 強 くなる 傾 向 がある. 疑 診 例 では 急 性 あるいは 慢 性 の 湿 疹 とし, 年 齢 や 経 過 を 参 考 にして 診 断 する.なお, 世 界 的 には Hanifin & Rajka の 診 断 基 準 が 頻 用 されている. 表 1 アトピー 性 皮 膚 炎 の 診 断 基 準 ( 日 本 皮 膚 科 学 会 ) 2. 重 症 度 分 類 簡 便 な 重 症 度 分 類 として, 日 本 アレルギー 学 会 によるガイドラインでは 重 症 度 の 目 安 が 提 唱 されている.す なわち, 軽 度 の 皮 疹 のみがみられる 場 合 を 軽 症, 強 い 炎 症 を 伴 う 皮 疹 が 体 表 面 積 の 10% 未 満 にみられる 場 合 を 中 等 症,10% 以 上 30% 未 満 にみられる 場 合 を 中 重 症,30% 以 上 にみられる 場 合 を 最 重 症 と 定 めている.なお, 世 界 的 には Severity Scoring of Atopic Dermatitis(SCORAD)や,Eczema Area and Severity Index(EASI) 5
が 頻 用 されている. 一 方, 治 療 の 主 体 である 外 用 療 法 の 選 択 は 個 々の 皮 疹 の 重 症 度 ( 表 2)により 決 定 される.すなわち, 範 囲 は 狭 くとも 高 度 な 皮 疹 には 十 分 に 強 力 な 外 用 療 法 が 選 択 されるが, 範 囲 は 広 くとも 軽 度 の 皮 疹 には 強 力 な 外 用 療 法 は 必 要 としない. 表 2 皮 膚 の 重 症 度 とステロイド 外 用 薬 の 選 択 3. 診 断 や 重 症 度 の 参 考 になる 検 査 血 清 総 I g E 値 は AD 患 者 の 約 80%で 高 値 を 示 し 診 断 の 参 考 となり, 長 期 的 な 重 症 度 や 病 勢 を 反 映 するが, 短 期 的 な 変 化 は 反 映 しない.AD の 短 期 的 な 重 症 度 や 病 勢 の 参 考 となる 検 査 には, 末 梢 血 好 酸 球 数, 血 清 LDH 値 や TARC 値 などがある. 特 に 血 清 TARC 値 は 短 期 的 な 病 勢 を 鋭 敏 に 反 映 する 指 標 といえる. (ADの 治 療 ) 1. 治 療 の 目 標 治 療 の 最 終 目 標 は, 症 状 がないか,あっても 軽 微 で, 日 常 生 活 に 支 障 がなく, 薬 物 療 法 もあまり 必 要 としな い 状 態 に 到 達 し,その 状 態 を 維 持 することである.また,このレベルに 到 達 しない 場 合 でも, 症 状 が 軽 微 また は 軽 度 で, 日 常 生 活 に 支 障 をきたすような 急 な 悪 化 が 起 こらない 状 態 を 維 持 することを 目 標 とする. 2. 治 療 方 法 AD の 治 療 方 法 はその 病 態 に 基 づいて,1 薬 物 療 法,2 皮 膚 の 生 理 学 的 異 常 に 対 する 外 用 療 法 スキンケア, 3 悪 化 因 子 の 検 索 と 対 策 の 3 点 が 基 本 になる.これらはいずれも 重 要 であり, 個 々の 患 者 ごとに 症 状 の 程 度 や 背 景 などを 考 慮 して 適 切 に 組 み 合 わされる. 3. 薬 物 療 法 現 時 点 において AD の 炎 症 を 十 分 に 鎮 静 するための 薬 剤 で 有 効 性 と 安 全 性 が 科 学 的 に 十 分 に 検 討 されてい るものは,ステロイド 外 用 薬 とタクロリムス 軟 膏 である. ステロイド 外 用 薬 は 薬 効 の 強 さにより,Ⅰ 群 (ストロンゲスト),Ⅱ 群 (ベリーストロング),Ⅲ 群 (ストロ ング),Ⅳ 群 (ミディアム),Ⅴ 群 (ウィーク)の 5 つに 分 けられる.ステロイド 外 用 薬 を 使 用 する 際, 個 々 の 皮 疹 の 重 症 度 にみあったランクの 薬 剤 を 適 切 に 選 択 することが 重 要 である( 表 2).ステロイド 外 用 薬 の 外 用 量 としては 第 2 指 の 先 端 から 第 1 関 節 部 までチューブから 押 し 出 した 量 ( 約 0.5g)が, 成 人 の 手 で 2 枚 分, すなわち 成 人 の 体 表 面 積 のおよそ 2%に 対 する 適 量 である. タクロリムスはカルシニューリンを 抑 制 する 薬 剤 である.タクロリムス 軟 膏 はとくに 顔 面 頸 部 の 皮 疹 に 対 して 高 い 適 応 のある 薬 剤 として 位 置 づけられている.しかし,びらん, 潰 瘍 面 には 使 用 できない. 薬 効 の 強 さ には 上 限 があるなど,ステロイド 軟 膏 にはない 使 用 上 の 制 約 がある.なお, 発 癌 のリスクに 関 しては,タクロ リムス 軟 膏 の 使 用 が 皮 膚 癌 やリンパ 腫 の 発 症 リスクを 高 めることはないというエビデンスが 集 積 されてきている. プロアクティブ(proactive) 療 法 は 急 性 期 の 治 療 によって 寛 解 導 入 した 皮 膚 に, 保 湿 外 用 薬 によるスキン ケアに 加 え,ステロイド 外 用 薬 やタクロリムス 軟 膏 を 定 期 的 に( 週 2 回 など) 塗 布 し, 寛 解 状 態 を 維 持 する 治 6
療 法 である.ただし, 抗 炎 症 外 用 薬 の 連 日 塗 布 からプロアクティブ 療 法 を 行 っている 間 も 保 湿 外 用 薬 などによ る 毎 日 のスキンケアは 継 続 することが 必 要 である. AD の 瘙 痒 に 対 してヒスタミン H1 受 容 体 拮 抗 薬 ( 抗 ヒスタミン 薬 )が 広 く 用 いられているが,その 効 果 は 症 例 による 差 が 大 きい.AD の 治 療 においてはステロイドやタクロリムスなどの 抗 炎 症 外 用 薬 によって 皮 膚 炎 を 鎮 静 化 することが 最 も 重 要 であり, 抗 ヒスタミン 薬 の 内 服 はその 補 助 療 法 として 勧 められる. 抗 ヒスタミン 薬 には 抗 コリン 作 用 や 鎮 静 作 用 が 比 較 的 強 い 第 一 世 代 抗 ヒスタミンと 抗 コリン 作 用 の 少 ない 抗 ヒスタミン 薬 が ある. 治 療 効 果 には 差 がなく, 眠 気, 倦 怠 感 や 自 覚 を 伴 わない 能 力 低 下 (インペアードパフォーマンス)など の 副 作 用 が 少 ないことから, 非 鎮 静 性 の 第 二 世 代 抗 ヒスタミン 薬 の 使 用 が 勧 められる. シクロスポリンは, 日 本 においては 2008 年 に 既 存 治 療 で 十 分 な 効 果 が 得 られない 最 重 症 の 成 人 AD 患 者 に 対 する 使 用 が 承 認 された.3mg/kg/day を 開 始 用 量 とし, 症 状 により 5mg/kg/day を 超 えないよう 適 宜 増 減 し, 8 ~ 12 週 間 で 終 了 する. 使 用 中 は 腎 障 害 や 高 血 圧 感 染 症 などに 注 意 する 症 状 が 軽 快 した 後 は, 速 やかに 一 般 的 な 外 用 治 療 に 切 り 替 えることが 重 要 である. 長 期 投 与 が 必 要 な 場 合 は 2 週 間 の 休 薬 期 間 を 挟 む 間 欠 投 与 とする. 4. 皮 膚 バリア 機 能 の 異 常 に 対 する 外 用 療 法 スキンケア AD では, 角 質 の 水 分 含 有 量 が 低 下 して 皮 膚 が 乾 燥 し, 皮 膚 バリア 機 能 の 低 下 をきたしている. 保 湿 外 用 薬 ( 保 湿 剤 保 護 剤 )の 使 用 は 低 下 した 角 質 水 分 量 を 改 善 し, 皮 膚 バリア 機 能 を 回 復 させることで, 皮 膚 炎 の 再 燃 予 防 とアレルゲンの 侵 入 予 防, 痒 みの 抑 制 につながる. 保 湿 外 用 薬 による 維 持 療 法 中 に 皮 膚 炎 の 再 燃 がみら れた 部 位 には, 炎 症 の 程 度 に 応 じてステロイド 外 用 薬 やタクロリムス 軟 膏 などを 使 用 し, 炎 症 の 早 期 鎮 静 化 お よび 維 持 療 法 へと 回 帰 することをめざす. (ADの 治 療 手 順 ) 最 後 に AD の 治 療 手 順 を 図 1 に 示 す. 確 実 な 診 断 と 重 症 度 の 評 価 の 後, 患 者 の 皮 疹 の 状 態 に 応 じて 適 切 な 治 療 ア ド ヒ ア ラ ン ス へ の 配 慮 図 1 アトピー 性 皮 膚 炎 の 診 断 治 療 アルゴリズム 7
治 療 をうまく 組 み 合 わせて 行 うことが 重 要 である.とくに 初 診 時 には,AD の 病 態 や 治 療 法 をわかりやすく 具 体 的 に 説 明 して 認 識 を 共 有 することが 大 切 である. ( 大 西 ) 参 考 文 献 佐 伯 秀 久 : 医 学 のあゆみ アトピー 性 皮 膚 炎 Update P.43-48(2016) 2. 早 期 慢 性 膵 炎 の 治 療 薬 8
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行 政 の 窓 1. 医 薬 品 医 療 機 器 等 安 全 性 情 報 No.330 平 成 28 年 2 月 9 日 に 厚 生 労 働 省 から 発 行 されましたので 情 報 の 概 要 を 掲 載 します 詳 細 は 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 (PMDA)ホームページを 御 覧 ください http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0043.html No. 医 薬 品 等 情 報 の 概 要 1 子 どもによる 医 薬 品 誤 飲 事 故 の 防 止 対 策 について 近 年 子 どもによる 医 薬 品 誤 飲 事 故 が 多 く 発 生 していることが 報 告 されています 誤 飲 事 故 の 防 止 のために 医 療 関 係 者 の 方 々 へお 願 いしていることを 改 めて 紹 介 します 2 アムロジピンベシル 酸 塩 他 (1 件 ) 平 成 28 年 1 月 12 日 に 改 訂 を 指 導 した 医 薬 品 の 使 用 上 の 注 意 の うち 重 要 な 副 作 用 等 について 改 訂 内 容 等 とともに 改 訂 の 根 拠 となった 症 例 の 概 要 等 に 関 する 情 報 を 紹 介 します 3 アジルサルタン 他 (12 件 ) 使 用 上 の 注 意 の 改 訂 について(その 271) 4 市 販 直 後 調 査 の 対 象 品 目 一 覧 平 成 27 年 12 月 末 日 現 在 市 販 直 後 調 査 の 対 象 品 目 を 紹 介 しま す 2. 厚 生 労 働 省 通 知 最 近 の 厚 生 労 働 省 通 知 の 概 要 を 掲 載 します 通 知 の 全 文 は 香 川 県 庁 薬 務 感 染 症 対 策 課 ホームページ 薬 務 のページ に 掲 載 しています 10
http://www.pref.kagawa.lg.jp/yakumukansen/yakujinotice/iyaku/yakujishido.htm (1) 新 たに 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 において 公 知 申 請 に 関 する 事 前 評 価 を 受 けた 医 薬 品 の 適 応 外 使 用 について 平 成 28 年 2 月 26 日 付 け 薬 生 審 査 発 0226 第 1 号 薬 生 安 発 0226 第 1 号 各 都 道 府 県 保 健 所 設 置 市 特 別 区 衛 生 主 管 部 ( 局 ) 長 宛 厚 生 労 働 省 医 薬 生 活 衛 生 局 審 査 管 理 課 長 安 全 対 策 課 長 通 知 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 において 公 知 申 請 ( 注 1)に 関 する 事 前 評 価 が 行 われた 次 の 医 薬 品 については 公 知 申 請 を 行 うことが 認 められた ついては 医 療 機 関 での 当 該 医 薬 品 の 適 応 外 使 用 にあたっては その 適 正 使 用 を 通 じた 安 全 確 保 等 を 図 るた めに 下 記 事 項 ( 注 2)に 留 意 の 上 で 取 扱 いされたい 当 該 医 薬 品 の 医 療 上 の 必 要 性 の 高 い 未 承 認 薬 適 応 外 薬 検 討 会 議 公 知 申 請 への 該 当 性 に 係 る 報 告 書 (http://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0017.html)の 内 容 を 熟 知 し 個 別 の 患 者 の 状 態 に 合 わせた 用 法 用 量 の 調 整 等 を 行 った 上 で 適 切 かつ 慎 重 に 使 用 する 当 該 医 薬 品 の 使 用 上 の 注 意 等 を 熟 知 し 治 療 内 容 や 発 生 しうる 副 作 用 等 に 関 する 患 者 への 事 前 説 明 と 同 意 の 取 得 に 努 める 重 篤 な 副 作 用 を 知 った 場 合 には 遅 滞 なく 関 係 企 業 又 は 厚 生 労 働 省 に 報 告 する 当 該 適 応 外 使 用 を 行 った 症 例 の 把 握 に 努 める 平 成 28 年 2 月 26 日 開 催 の 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 医 薬 品 第 二 部 会 において 公 知 申 請 を 行 うことが 認 められた 医 薬 品 一 般 名 販 売 名 ( 会 社 名 ) コルヒチン コルヒチン 錠 0.5mg タカタ ( 高 田 ) バルガンシクロビル 塩 酸 塩 バ リ キ サ 錠 450mg ( 田 辺 三 菱 ) カペシタビン ゼローダ 錠 300 ( 中 外 ) 追 加 または 変 更 予 定 の 効 能 効 果 追 加 される 予 定 の 効 能 効 果 家 族 性 地 中 海 熱 追 加 される 予 定 の 効 能 効 果 臓 器 移 植 ( 造 血 幹 細 胞 移 植 を 除 く) におけるサイトメガロウ イルス 感 染 症 の 発 症 抑 制 追 加 される 予 定 の 効 能 効 果 直 腸 癌 における 補 助 化 学 療 法 追 加 または 変 更 予 定 の 用 法 用 量 の 概 略 追 加 される 予 定 の 用 法 用 量 通 常 成 人 には コルヒチンとして 1 日 0.5mg を 1 回 又 は 2 回 に 分 けて 経 口 投 与 する なお 患 者 の 状 態 により 適 宜 増 減 するが 1 日 最 大 投 与 量 は 1.5mg までとする 通 常 小 児 には コルヒチンとして 1 日 0.01 ~ 0.02mg/kg を 1 回 又 は 2 回 に 分 けて 経 口 投 与 する なお 患 者 の 状 態 により 適 宜 増 減 するが 1 日 最 大 投 与 量 は 0.03mg/kg まで とし かつ 成 人 の 1 日 最 大 投 与 量 を 超 えないこととする 追 加 される 予 定 の 用 法 用 量 通 常 成 人 にはバルガンシクロビルとして 1 回 900mg (450mg 錠 2 錠 )を 1 日 1 回 食 後 に 経 口 投 与 する 追 加 される 予 定 の 用 法 用 量 直 腸 癌 における 補 助 化 学 療 法 には B 法 を 使 用 する 直 腸 癌 における 補 助 化 学 療 法 で 放 射 線 照 射 と 併 用 する 場 合 には D 法 を 使 用 する D 法 : 体 表 面 積 にあわせて 次 の 投 与 量 を 朝 食 後 と 夕 食 後 30 分 以 内 に 1 日 2 回 5 日 間 連 日 経 口 投 与 し その 後 2 日 間 休 薬 する これを 繰 り 返 す なお 患 者 の 状 態 により 適 宜 減 量 する 体 表 面 積 1 回 用 量 1.31 m2 未 満 900mg 1.31 m2 以 上 1.64 m2 未 満 1,200mg 1.64 m2 以 上 1,500mg 11
追 加 予 定 の 使 用 上 の 注 意 等 については 記 載 省 略 上 記 効 能 効 果 への 使 用 にあたっては 必 ず 事 前 に 通 知 全 文 検 討 会 議 報 告 書 その 他 必 要 な 情 報 を 入 手 し 熟 知 した 上 で 使 用 されたい 注 1) 通 常 の 承 認 申 請 時 には 臨 床 試 験 等 の 試 験 成 績 に 関 する 資 料 の 添 付 が 必 要 であるが その 申 請 に 係 る 事 項 が 医 学 薬 学 上 公 知 であると 認 められる 場 合 等 には 添 付 資 料 を 省 略 できる( 医 薬 品 医 療 機 器 等 法 施 行 規 則 第 40 条 第 2 項 ) また 平 成 22 年 8 月 25 日 の 中 央 社 会 保 険 医 療 協 議 会 で 適 応 外 薬 について 公 知 申 請 の 事 前 評 価 が 終 了 した 段 階 から 保 険 適 用 し 患 者 負 担 を 軽 減 する 方 針 が 決 定 されている 注 2) 平 成 22 年 8 月 30 日 付 け 薬 食 審 査 発 0830 第 9 号 薬 食 安 発 0830 第 1 号 厚 生 労 働 省 医 薬 食 品 局 審 査 管 理 課 長 及 び 安 全 対 策 課 長 連 名 通 知 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 において 公 知 申 請 に 関 する 事 前 評 価 を 受 けた 医 薬 品 の 適 応 外 使 用 について ( 医 薬 品 情 報 No.364 2010 年 10 月 号 に 掲 載 )で 示 された 取 扱 いと 同 様 の 取 扱 いを 行 う 編 集 委 員 地 一 荻 田 幸 阿 部 武 由 中 島 弘 毅 沖 上 朋 美 安 藤 智 美 小 畑 雅 彦 橋 本 はる 奈 近 藤 勇 人 森 末 健 也 12