Kyushu Medical Center
391U/l γgtp 103U/l ALP 174U/l Na 135mEq/l K 4.2mEq/l Cl 96mEq/l BUN 15mg/dl Cre 0.52mg/dl CRP 0.34mg/dl CMV C7HRP 44/50,000 入院後経過 入院時 CMV抗原強陽性であった 化学療法での免疫 低下に伴う状態悪化を危惧し 抗ウイルス薬投与により 加療を行った 速やかにデータは改善し 陰性化を確認し たのち化学療法を開始した 前回レジメンのGDP療法 ゲムシタビン デカドロン シスプラチン により肺門部 リンパ節病変は著明に縮小し 治療効果認めていた しか し 化学療法後より酸素化の低下を認め ゲムシタビン投 与に伴う薬剤性の間質性肺炎も鑑別の一つとなっていた この経過より 今回GEMの投与は見合わせESHAP療法 エトポシド シスプラチン シタラビン メチルプレドニ ゾロン を選択した 化学療法7日目より38 台の発熱お よび血圧低下 意識レベル低下(JCSⅠ-2)が出現した 長 期のステロイド投与に引き続きレジメンでの大量ステロ イド投与が終了した時期であったため 離脱症状を疑い ステロイド投与を行った また 敗血症の可能性も考慮し て抗菌薬の投与を開始した 結果的に血液培養で原因菌 の検出はなかった 治療は奏功し発熱 循環動態は速やか に改善したが意識レベルの低下は遷延した 11日目に再 度38 台の発熱が出現し 意識レベルも低下(Ⅱ-10)し た 胸部レントゲン 胸部CTでは間質影の増強および左 下葉背側の区域性の浸潤影を認め ウイルス性肺炎や意 識障害による誤嚥性肺炎も疑われる所見であった 頭部 造影MRIでは FLAIR像で小脳半球 後頭葉から頭頂葉脳 表主体に造影効果を伴う高信号を認め 髄膜炎や腫瘍浸 潤を疑う所見であった 臨床的に免疫低下による感染症 を疑い 抗菌薬や抗ウイルス薬 抗真菌薬で加療行ったが 状態改善は認めなかった その後も酸素化および意識レ ベルの低下は進行し 非侵襲的陽圧換気を導入したが こ の時点でご家族は より侵襲的な治療介入は希望されず 15日目に無尿となり18日目に永眠された 病理診断 1 ホジキンリンパ腫 化学療法 同種末梢血肝細胞 移植後 剖検時寛解の状態 2 肺出血 肺水腫 びまん性肺胞障害疑い (肺重量 左 980g, 右1110g) 3 肝線維化 (うっ血性肝障害 類洞閉塞症候群疑い) 4 右副腎線維化 5 急性尿細管壊死疑い 6 心肥大 (心重量 390g) 7 大動脈粥状硬化 軽度 8 腔 水 症 ( 胸 水 左 右 と も に 2 0 0 m l 淡 血 性, 腹 水 800ml漿液性) 縦隔リンパ節 臨床経過 MEPM 細胞の残存は認められなかった 骨髄にも異型細胞は認 められなかった 原疾患に対する治療は奏功していたと 考えられる 意識障害の原因として臨床的にはウイルス 性髄膜炎の可能性が考えられていたが 剖検時activeな 炎症所見は認められなかった しかしながらくも膜下に はやや組織球が目立ち 髄膜炎の既往はあったものと推 察される PAS, グロコット染色にて真菌(-) 免疫染色で はCMV(-), HSV1(-), HSV2(-)であった 肺は両側とも著 明な重量の増加が認められ 含気は乏しい状態であった 組織学的には両側いずれの部位においても高度の肺出 血 肺水腫が認められた 肺胞隔壁は浮腫状で 不明瞭 非 典型的ながら硝子膜の形成もうかがわれることから び まん性肺胞障害の可能性も考えられる 直接死因として はARDSからの呼吸不全が第一に考えられる ARDSに 至った原因は不明であるが 少なくとも剖検時において 特異的な感染所見や腫瘍細胞の浸潤は認められなかっ た 右副腎の陳旧性の線維化巣は腫瘍細胞が消退したも のと考えられ 本症例における意識障害の原因とは考え がたい 肝臓で見られた肝細胞の変性や類洞におよぶ線 維化はうっ血肝 化学療法に伴う類洞閉塞症候群の可能 性が考えられる 右肺下葉 TAZ/PIPC VCM G-CSF steroid ACV PFA L-AMB O2投与 髄液採取 40 39 38 考 察 37 36 day7 day8 day9 Ⅰ day10 day11 Ⅱ day12 day13 day14 day15 day16 day17 day18 解剖所見 剖検時リンパ節の腫大は乏しく 特に目立った縦隔リ ンパ節においても線維性瘢痕が見られるのみであり腫瘍 当症例は 化学療法抵抗性のホジキンリンパ腫に対す る同種末梢血幹細胞移植施行後に再発し 化学療法によ る加療継続中であった 剖検では リンパ節の腫大は乏し く 肉眼的に腫大が目立った縦隔リンパ節においても腫 瘍細胞の残存は認めず リンパ腫の消退後変化と推察さ れる繊維性瘢痕のみであった 骨髄にも異型細胞は認め られず 剖検所見上は寛解の状態であると考えられた 意
391U/l γgtp 103U/l ALP 174U/l Na 135mEq/l K 4.2mEq/l Cl 96mEq/l BUN 15mg/dl Cre 0.52mg/dl CRP 0.34mg/dl CMV C7HRP 44/50,000 入院後経過 入院時 CMV抗原強陽性であった 化学療法での免疫 低下に伴う状態悪化を危惧し 抗ウイルス薬投与により 加療を行った 速やかにデータは改善し 陰性化を確認し たのち化学療法を開始した 前回レジメンのGDP療法 ゲムシタビン デカドロン シスプラチン により肺門部 リンパ節病変は著明に縮小し 治療効果認めていた しか し 化学療法後より酸素化の低下を認め ゲムシタビン投 与に伴う薬剤性の間質性肺炎も鑑別の一つとなっていた この経過より 今回GEMの投与は見合わせESHAP療法 エトポシド シスプラチン シタラビン メチルプレドニ ゾロン を選択した 化学療法7日目より38 台の発熱お よび血圧低下 意識レベル低下(JCSⅠ-2)が出現した 長 期のステロイド投与に引き続きレジメンでの大量ステロ イド投与が終了した時期であったため 離脱症状を疑い ステロイド投与を行った また 敗血症の可能性も考慮し て抗菌薬の投与を開始した 結果的に血液培養で原因菌 の検出はなかった 治療は奏功し発熱 循環動態は速やか に改善したが意識レベルの低下は遷延した 11日目に再 度38 台の発熱が出現し 意識レベルも低下(Ⅱ-10)し た 胸部レントゲン 胸部CTでは間質影の増強および左 下葉背側の区域性の浸潤影を認め ウイルス性肺炎や意 識障害による誤嚥性肺炎も疑われる所見であった 頭部 造影MRIでは FLAIR像で小脳半球 後頭葉から頭頂葉脳 表主体に造影効果を伴う高信号を認め 髄膜炎や腫瘍浸 潤を疑う所見であった 臨床的に免疫低下による感染症 を疑い 抗菌薬や抗ウイルス薬 抗真菌薬で加療行ったが 状態改善は認めなかった その後も酸素化および意識レ ベルの低下は進行し 非侵襲的陽圧換気を導入したが こ の時点でご家族は より侵襲的な治療介入は希望されず 15日目に無尿となり18日目に永眠された 病理診断 1 ホジキンリンパ腫 化学療法 同種末梢血肝細胞 移植後 剖検時寛解の状態 2 肺出血 肺水腫 びまん性肺胞障害疑い (肺重量 左 980g, 右1110g) 3 肝線維化 (うっ血性肝障害 類洞閉塞症候群疑い) 4 右副腎線維化 5 急性尿細管壊死疑い 6 心肥大 (心重量 390g) 7 大動脈粥状硬化 軽度 8 腔 水 症 ( 胸 水 左 右 と も に 2 0 0 m l 淡 血 性, 腹 水 800ml漿液性) 縦隔リンパ節 臨床経過 MEPM 細胞の残存は認められなかった 骨髄にも異型細胞は認 められなかった 原疾患に対する治療は奏功していたと 考えられる 意識障害の原因として臨床的にはウイルス 性髄膜炎の可能性が考えられていたが 剖検時activeな 炎症所見は認められなかった しかしながらくも膜下に はやや組織球が目立ち 髄膜炎の既往はあったものと推 察される PAS, グロコット染色にて真菌(-) 免疫染色で はCMV(-), HSV1(-), HSV2(-)であった 肺は両側とも著 明な重量の増加が認められ 含気は乏しい状態であった 組織学的には両側いずれの部位においても高度の肺出 血 肺水腫が認められた 肺胞隔壁は浮腫状で 不明瞭 非 典型的ながら硝子膜の形成もうかがわれることから び まん性肺胞障害の可能性も考えられる 直接死因として はARDSからの呼吸不全が第一に考えられる ARDSに 至った原因は不明であるが 少なくとも剖検時において 特異的な感染所見や腫瘍細胞の浸潤は認められなかっ た 右副腎の陳旧性の線維化巣は腫瘍細胞が消退したも のと考えられ 本症例における意識障害の原因とは考え がたい 肝臓で見られた肝細胞の変性や類洞におよぶ線 維化はうっ血肝 化学療法に伴う類洞閉塞症候群の可能 性が考えられる 右肺下葉 TAZ/PIPC 識障害については MRI所見ではFLAIR像において脳表 にGd造影による増強効果を伴う高信号を認め 髄膜炎や 腫瘍浸潤を疑う所見であった 一方で 髄液所見では蛋 白 細胞数の上昇や糖の低下は認めず 細菌 真菌による 中枢神経感染症は否定的であり 原疾患の中枢浸潤やウ イルス性の髄膜炎等が疑われた また 髄液中に腫瘍細胞 は検出されなかったが 髄液中IL-10値は18pg/mlと著明 な上昇を認めていた 髄液中IL-10の上昇は非ホジキンリ ンパ腫の中枢神経病変で比較的特徴的な所見とされてい るが 中枢神経浸潤自体が非常にまれであるとされるホ ジキンリンパ腫においては その有用性は不明である 剖 委員会報告 検では 肉眼的に髄膜炎を示唆する所見は乏しく 組織学 的にくも膜下への組織球の浸潤も軽度にとどまってお り 異型細胞の浸潤も認めなかった 呼吸障害について 胸部CTではびまん性の透過性低下および間質影の増強 を認め 臨床経過から薬剤やウイルス性の肺炎を考慮し 対応したが治療抵抗性であった 剖検では 極めて高度の 肺水腫 肺出血が認められ びまん性肺胞障害を疑う所見 であった 以上の所見より 直接死因としては何らかの炎 症等から惹起されたARDSによる呼吸不全が想定される が 剖検所見においてもARDSの原因となるactiveな炎症 や腫瘍浸潤の所見は認められなかった Kyushu Medical Center 倫理審査の効率化への取り組み 臨床試験支援センター 麻生嶋 和子 近 年の臨床研究の多様化と臨床研究をめぐる不正事 案が発生したことなどから 疫学研究に関する倫 理指針 及び 臨床研究に関する倫理指針 が統合され 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 が本年4 月より施行されたことは ご承知のことと思います 当院 の倫理審査委員会への申請は 年々増加しており 2014 年度の臨床研究の新規申請は150課題を超えました こ のように課題数の増加や研究の多様化している状況で データの信頼性を確保 被験者の人権保護など 指針上の 重要な項目について 倫理審査委員会で十分な審議が行 うことができるように 審査の効率化が必要と考え 委員 長の指導のもと 今年度より事前審査を行うことにいた しました 昨年度までは 申請月の事務局の担当者が申請 課題ごとに倫理指針と照らし合わせて申請資料の確認作 業を行い 申請資料を整えたあと 委員長と事務局で審議 が円滑に進むように重点的に審議する点について打ち合 わせしていました 今年度からは申請資料の一次チェッ クが終わったあとに 倫理審査委員会事務局メンバー 副 事務局長 CRC 申請担当事務 で事前審査を行っていま す 事務局では 課題ごとに 被験者保護 研究の透明性 などの研究の倫理面について 指針と照らし合わせなが ら 入念に申請資料を確認しています 最近は 当院の研 究者が作成した介入研究の申請も増加傾向にあり 科学 的な妥当性と正当性 についても さらに十分な審査が必 要であるため 複数の診療科の先生方にもアドバイザー の立場で 事前審査にご協力いただくようになりました 事前審査でのアドバイスや疑義事項などは申請者にフィ ードバックして申請資料を最終版に確定し 倫理審査委 員会に臨んでいます 事前審査以外にも 論文投稿や学会発表を行う院内研 究に関しては 月一回審査から 指名された委員による 迅速審査に審査方法を変更し 審査の効率化を図ってい ます このように今年度からさらに多くの方々に倫理審査委 員会の業務に関わっていただくことで 審査の効率化だ けでなく より細やかな審査ができるようになりました 倫理審査委員会事務局では 微力ではありますが 研究 者の皆さんの支援をさせていただきたいと考えておりま すので 今後ともご協力お願いいたします VCM G-CSF steroid ACV 臨床試験支援センター PFA L-AMB O2投与 40 当院における研究者への 教育 研修システムについて 髄液採取 39 臨床研究支援センター 38 考 察 37 36 day7 day8 day9 Ⅰ day10 day11 Ⅱ day12 day13 day14 day15 day16 day17 day18 解剖所見 剖検時リンパ節の腫大は乏しく 特に目立った縦隔リ ンパ節においても線維性瘢痕が見られるのみであり腫瘍 当症例は 化学療法抵抗性のホジキンリンパ腫に対す る同種末梢血幹細胞移植施行後に再発し 化学療法によ る加療継続中であった 剖検では リンパ節の腫大は乏し く 肉眼的に腫大が目立った縦隔リンパ節においても腫 瘍細胞の残存は認めず リンパ腫の消退後変化と推察さ れる繊維性瘢痕のみであった 骨髄にも異型細胞は認め られず 剖検所見上は寛解の状態であると考えられた 意 荒木 志乃 臨 床研究については 臨床研究に関する倫理指針 及び 疫学研究に関する倫理指針 によりその適正 な実施が図られてきましたが 近年の研究の多様化に伴 い両指針の適用関係が不明確になってきたことや 近年 の研究をめぐる不適正事案が発生したことなどを踏まえ て 両指針を統合する形で 人を対象とする医学系研究に Kyushu Medical Center 関する倫理指針 新指針 が平成27年4月から施行され ました 新指針は 研究の信頼性確保 に重点をおいた内 容となっており 研究者への教育 研修に関する規定が新 たに追加されました 教育 研修の内容には 研究活動に おける不正行為や 研究活動に係る利益相反等も含まれ 当院においても教育 研修システムの構築が求められま した 当院では 国立病院機構本部が導入したCITI Japan教 育研修プログラムを活用して研究者への教育 研修を行 っていくこととしました 研究者の教育 研修受講の有無 については 倫理審査申請書の様式を変更することで確
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