これを 鱗 屑 といいますが こびりついている 紅 斑 であり よく 見 ると 紅 斑 の 辺 縁 に 膜 様 の 薄 い 鱗 屑 を 付 しているのがわかります( 図 1) 真 菌 感 染 症 の 診 断 にはこの 鱗 屑 を 少 し 取 って 顕 微 鏡 で 観 察 して 菌 糸 を 確 認 し



Similar documents
5 月 27 日 4 子 宮 頸 癌 1 GIO: 子 宮 頸 癌 の 病 態 診 断 治 療 について 理 解 する SBO: 1. 子 宮 頸 癌 の 発 癌 のメカニズムや 発 癌 過 程 について 説 明 できる 2. 子 宮 頸 癌 および 前 癌 病 変 の 分 類 ついて 説 明 でき

認 定 看 護 師 専 門 看 護 師 集 中 ケア 新 生 児 集 中 ケア A 呼 吸 ケアチーム 加 算 150 点 呼 吸 ケアチームの 設 置 救 急 看 護 小 児 救 急 看 護 慢 性 呼 吸 器 疾 患 看 護 急 性 重 症 患 者 看 護 A 247 認 知 症

2) 効 果 の 高 い 治 療 薬 が 限 定 されているので 病 診 間 で 意 思 統 一 した 薬 物 治 療 を 行 いやすい 3) 薬 物 治 療 などの 効 果 が 緩 徐 であるので 長 期 の 通 院 が 必 要 である 4) 手 術 が 必 要 になる 場 合 でも 徐 々に 増

4 ぼうこう又は直腸機能障害

Microsoft Word 菊地

<96DA8E9F81698D8791CC A2E786C73>

診療行為コード

< F2D F97CC8EFB8F BE8DD78F9192CA926D>

光 輪 はさみこども 園 学 校 保 健 安 全 法 ( 第 19 条 )に 準 ずる(H24.4 改 定 ) 病 名 感 染 しやすい 期 間 登 園 のめやす 症 状 ( 発 熱 全 身 症 状 呼 吸 器 症 状 )がある 期 間 インフルエンザ ( 発 症 前 24 時 間 ~ 発 病 後

5 月 19 日 5 新 生 児 の 呼 吸 障 害 GIO: 新 生 児 期 に 生 じる 呼 吸 障 害 の 病 態 の 特 徴 を 説 明 でき 胸 部 XPから 診 断 できる SBO: 1. 新 生 児 呼 吸 障 害 の 病 態 に 基 づく 症 状 の 特 徴 を 説 明 できる 2.

2 ペインクリニック ペインクリニック 科 に 関 しては 先 ずは 様 々な 痛 みの 症 例 を 正 確 に 診 断 できる 能 力 の 養 成 を 最 大 の 目 標 にします その 過 程 で 薬 物 療 法 神 経 ブロック( 超 音 波 透 視 下 を 含 む) Intervention

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

ず 一 見 蕁 麻 疹 様 の 浮 腫 性 紅 斑 が 初 発 疹 で ある 点 です この 蕁 麻 疹 様 の 紅 斑 は 赤 みが 強 く 境 界 が 鮮 明 であることが 特 徴 です こ のような 特 異 疹 の 病 型 で 発 症 するのは 若 い 女 性 に 多 いと 考 えられています

4. 手 術 により 期 待 される 効 果 手 術 は 直 腸 癌 に 対 する 治 療 として 最 も 確 実 な 方 法 とされていますが これに よりすべての 直 腸 癌 が 治 癒 するわけではありません 肉 眼 的 にすべての 癌 が 取 り 除 けた 場 合 でも 目 には 見 えない

想 像 思 行 ず 消 毒 擦 む 薄 血 混 じ 滲 み ぶ 痂 ぶ 取 下 薄 来 経 験 沢 山 お 思 健 常 人 間 元 々 備 能 力 中 具 的 何 起 ょ 簡 単 説 明 ず 人 間 負 部 リ ン パ 球 血 小 板 マ ク ロ フ ァ ジ 悪 食 べ 集 死 溶 食 べ 清 浄

Microsoft PowerPoint _GP向けGL_final

目次

各論_1章〜7章.indd

アフターケア.indd


5 月 25 日 2 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 2 GIO: 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 を 理 解 する SBO: 1. 急 性 慢 性 炎 症 性 疾 患 を 説 明 できる 2. 扁 桃 の 疾 患 を 説 明 できる 3. 病 巣 感 染 症 を 説 明 できる 4

untitled

研修計画

Microsoft Word - 3大疾病保障特約付団体信用生命保険の概要_村上.docx

(Microsoft Word _10\214\216\222\262\215\270\203\212\203\212\201[\203X_\215\305\217I\215e.doc)


頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

web在宅下腿潰瘍.doc

(Microsoft Word - \220V\227v\215j\221S\225\266.DOC)

Microsoft Word - conference

救急科  臨床研修プログラム

2-1膠原病.doc

図 表 1 1,000 万 円 以 上 高 額 レセプト ( 平 成 25 年 度 ) 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷

原 因 菌 とリスク 因 子 内 因 性 真 菌 性 眼 病 変 の 原 因 となる 真 菌 で 最 も 多 いものはカンジダ 属 で 90%を 占 める とされています カンジダ 属 の 他 にはアスペルギルス 属 クリプトコックス 属 などが 続 きます カンジダ 属 のなかでは Candida

ROTA:ロータブレター 件 数 期 間 中 の 実 施 件 数 (K548 算 定 件 数 ) CTO: 慢 性 完 全 閉 塞 件 数 PTA: 経 皮 的 末 梢 動 脈 形 成 術 件 数 期 間 中 の 実 施 件 数 (K616 算

スライド 1

第5回Mindsセミナー

人 間 ドックコース( 脳 検 査 がん 検 査 含 む) 298,000 円 / 税 込 その 他 肥 満 症 やせ 症 高 / 低 血 圧 近 視 乱 視 白 内 障 緑 内 障 網 膜 疾 患 外 部 の 音 を 遮 断 したブースで 音 を 聞 き 取 って 調 難 聴 腹 部 超 音 波

Microsoft PowerPoint - K-net秦提出用改.ppt [互換モード]

感 染 対 策 がマニュアルに 従 って 実 施 されるように 指 導 することや 病 棟 での 意 見 を 聞 き 入 れることが 重 要 です そして ICT 検 討 会 で 改 善 策 な どについて 話 し 合 います 巡 回 は 医 療 施 設 の 規 模 によって 異 なりますが 通 常

ひろっぱ355号2月Web用に.indd

< F2D874491E682528FCD2091E DF C A2E>

EST_  H.8.6.

● 外科初期研修プログラム 

先行研究のサマリー

5

科 目 名 生 理 学 Ⅱ 講 師 名 山 美 喜 子 開 講 期 前 期 後 期 通 身 体 の 正 常 な 機 能 を 国 家 試 験 の 出 題 内 容 と 関 連 付 けて 理 解 する 成 績 評 価 方 法 試 験 :00 点 受 講 態 度 :0 点 ( 減 点 方 式 ) 生 理 学

Microsoft Word - 通知 _2_.doc

観血的治療を勧められたColle’s骨折2症例に対する非観血的治療

平成24年度 福島県患者調査の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健社会統計課 保健統計室:H )


<4D F736F F F696E74202D C928D4E C182C4967B939682C991CC82C982A282A282CC F4390B394C529>

デュアック 配 合 ゲル に 係 る 医 薬 品 リスク 管 理 計 画 書 (RMP)の 概 要 販 売 名 デュアック 配 合 ゲル 有 効 成 分 クリンダマイシンリン 酸 エステ ル 水 和 物 / 過 酸 化 ベンゾイル 製 造 販 売 業 者 株 式 会 社 ポーラファルマ 薬 効 分

製 造 業 者 は 製 造 販 売 業 者 の 管 理 監 督 の 下 適 切 な 品 質 管 理 を 行 い 製 品 を 製 造 します なお 製 造 業 は 製 造 に 特 化 した 許 可 となっており 製 造 業 の 許 可 のみでは 製 品 を 市 場 に 出 荷 することはできま せん

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

大 腸 がん 術 後 内 服 化 学 療 法 連 携 1コース~3コース 大 腸 がん 術 後 内 服 化 学 療 法 連 携 4コース 以 降 拠 点 病 院 への 紹 介 基 準 : 食 事 が 入 らないとき 腫 瘍 マーカー 上 昇 時 発 熱 時 処 方 拠 点 病 院 への 紹 介 基

●電力自由化推進法案

日産婦誌60巻10号研修コーナー

Taro-iryouhoken

Microsoft Word - 腰痛.doc

003-00個人の健康増進・疾病予防の推進のための所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について_3

現 地 調 査 では 火 口 周 辺 の 地 形 や 噴 気 等 の 状 況 に 変 化 は 見 られませんでした また 赤 外 熱 映 像 装 置 5) による 観 測 では 2015 年 3 月 頃 から5 月 29 日 の 噴 火 前 に 温 度 上 昇 が 認 められていた 新 岳 火 口

北海道医療大学歯学部シラバス

<4D F736F F F696E74202D2096F28DDC8E7489EF82C682CC98418C F8AE18E7793B182CC8D B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc


<4D F736F F D208BE38F B959489F1939A B638E96985E>

Microsoft Word - 1表紙.doc

<4D F736F F F696E74202D208D4C94A C BB38EBA814089FC95CF2E B8CDD8AB B83685D>

( 医 療 機 器 の 性 能 及 び 機 能 ) 第 3 条 医 療 機 器 は 製 造 販 売 業 者 等 の 意 図 する 性 能 を 発 揮 できなければならず 医 療 機 器 としての 機 能 を 発 揮 できるよう 設 計 製 造 及 び 包 装 されなければならない 要 求 項 目 を

01

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>


( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

L006 球 後 麻 酔 及 び 顔 面 頭 頸 部 の 伝 達 麻 酔 ( 瞬 目 麻 酔 及 び 眼 輪 筋 内 浸 潤 麻 酔 を 含 む ) 150 点 L007 開 放 点 滴 式 全 身 麻 酔 310 点 L008 マスク 又 は 気 管 内 挿 管 による 閉 鎖 循 環 式 全 身

<4D F736F F D C93FA967B91E5906B8DD082D682CC91CE899E2E646F6378>

vol.54.pmd

独立行政法人国立病院機構

炎 症 の 定 義 を 説 明 できる 到 達 目 標 自 己 評 価 炎 症 の 分 類 組 織 形 態 学 的 変 化 と 経 時 的 変 化 を 説 明 できる 血 漿 タンパク 質 の 種 類 と 機 能 を 説 明 できる 白 血 球 の 種 類 と 機 能 を 説 明 できる 血 漿 タ

監 修 北 辰 会 有 澤 総 合 病 院 内 科 大 八 木 秀 和 1 時 間 目 子 宮 内 膜 症 名 古 屋 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 産 婦 人 科 中 原 辰 夫 NAKAHARA Tatsuo 月 経 困 腎 難 不 を 全 訴 とはどのような えて 来 院 される

アプルウェイ 市販直後調査 発売4ヵ月間の副作用発現状況

Microsoft Word - ”‚Š¿…V…−†[…YNo19-7.doc

044 多発血管炎性肉芽腫症

抗微生物薬安全性評価基準検討委員会 最終報告(確定版)

Microsoft PowerPoint - )大腸癌をお受けになる方に図(南堺_更新用 [互換モード]

Microsoft Word - 2章.doc

総 合 科 学 研 究 科 ( 留 学 生 担 当 ) 文 学 部 文 学 研 究 科 哲 学 思 想 文 化 学 コース 歴 史 学 コース 地 理 学 考 古 学 文 化 財 学 コース 日 本 中 国 文 学 語 学 コース 翀 欧 米 文 学 語 学 言 語 学 コース 比 較 日 本 文

PowerPoint プレゼンテーション

3 薬 局 サービス 等 (1) 健 康 サポート 薬 局 である 旨 の 表 示 健 康 サポート 薬 局 である 旨 を 表 示 している 場 合 健 康 サポート 薬 局 とは かかりつけ 薬 剤 師 薬 局 としての 基 本 的 な 機 能 に 加 えて 積 極 的 な 健 康 サポート 機

提出時の注意点

我孫子市小規模水道条例

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D208F8A92E88EBE8AB38E7B90DD97C3977B94EF82C982C282A282C42E646F63>

<4D F736F F D A874B8AB38ED B28DB897708E F188C4817A5B F F D2E646F63>

2 ギニア シエラレオネ リベリア ウガンダ スーダン ガボン コートジボワー ル コンゴ 民 主 共 和 国 コンゴ 共 和 国 また 有 症 状 者 からの 電 話 相 談 によりエボラ 出 血 熱 への 感 染 が 疑 われる 場 合 二 次 感 染 拡 大 のリスクを 避 けるため 保 健

10w.xdw

Microsoft Word - H27報告書

1

5) 在 宅 医 療 提 供 体 制 の 検 討 退 院 に 関 わる 業 種 ごとに 部 会 を 立 ち 上 げ 在 宅 医 療 に 必 要 なことについて 検 討 していく またそれを 拠 点 整 備 事 業 委 員 会 が 統 括 し さらにそれを 拠 点 整 備 事 業 協 議 会 が 監

Transcription:

2011 年 4 月 14 日 放 送 第 12 回 日 本 褥 瘡 学 会 1 教 育 講 演 1より 褥 瘡 と 鑑 別 すべき 皮 膚 疾 患 群 馬 大 学 大 学 院 皮 膚 病 態 学 准 教 授 永 井 弥 生 はじめに 本 日 は 褥 瘡 と 鑑 別 すべき 皮 膚 疾 患 それに 加 えて 褥 瘡 治 療 に 関 わるみなさんに 知 って おいてほしい 皮 膚 疾 患 についてお 話 します 褥 瘡 治 療 に 関 わる 医 療 者 は 常 に 目 の 前 の 病 変 が 本 当 に 褥 瘡 であるのか 褥 瘡 の 治 療 だけを 続 けてよいのかのアセスメントが 求 め られています 専 門 医 師 がいない 施 設 においては 褥 瘡 以 外 の 皮 膚 病 変 についての 判 断 をしばしば 求 められることでしょう これは 第 12 回 日 本 褥 瘡 学 会 において 講 演 した 内 容 であり 聞 いて 下 さった 方 の 多 く は 看 護 師 をはじめとしたコメディカルのみなさんでした 従 って 皮 膚 科 を 専 門 としない 方 々に 皮 膚 疾 患 を 理 解 していただくことを 目 的 としています 4 つのパートに 分 けてお 話 しました 1) 褥 瘡 好 発 部 位 である 仙 骨 部 や 臀 部 とその 周 囲 すなわちプライベートパーツにみられる 皮 膚 疾 患 2) 足 部 病 変 の 鑑 別 すべき 疾 患 3) 手 術 室 で 生 じる 紛 らわしい 疾 患 と 病 態 最 後 は 4) 褥 瘡 はあるがそれだけではない 見 逃 してはいけない 疾 患 です 1. 仙 骨 部 や 臀 部 とその 周 囲 プライベートパーツ にみられる 皮 膚 疾 患 1 皮 膚 真 菌 感 染 症 仙 骨 部 に 生 じた 発 赤 であっても 実 はこれは 皮 膚 真 菌 感 染 症 かもしれません かさかさとした 皮 膚

これを 鱗 屑 といいますが こびりついている 紅 斑 であり よく 見 ると 紅 斑 の 辺 縁 に 膜 様 の 薄 い 鱗 屑 を 付 しているのがわかります( 図 1) 真 菌 感 染 症 の 診 断 にはこの 鱗 屑 を 少 し 取 って 顕 微 鏡 で 観 察 して 菌 糸 を 確 認 します 褥 瘡 を 生 じやすい 患 者 さんで 多 くみられるのはカンジダ 感 染 症 です これは 高 温 多 湿 の 環 境 で 悪 化 します ドレッシング 材 のような 密 封 するものを 貼 付 するのは 禁 忌 です また 褥 瘡 の 周 囲 にも 真 菌 感 染 症 が 生 じることはよくありますので 病 変 を 見 逃 さないように してください 2 湿 疹 :おむつ 皮 膚 炎 肛 囲 皮 膚 炎 などの 一 時 刺 激 性 皮 膚 炎 湿 疹 は 皮 膚 炎 とほぼ 同 じ 意 味 です 原 因 部 位 経 過 などにより 様 々な 分 類 がなさ れるため 時 に 混 乱 しがちですが これはれっきとした 病 名 です したがって 褥 瘡 の まわりの 湿 疹 をみたらカンジダを 疑 え などという 表 現 は 大 きな 誤 りです おむつ 皮 膚 炎 肛 囲 皮 膚 炎 などの 多 くは 尿 や 便 汚 染 による いわゆる 一 時 刺 激 性 皮 膚 炎 です 湿 疹 治 療 の 中 心 はステロイド 外 用 剤 ですが 多 くはびらんを 伴 う 病 変 ですの で 亜 鉛 華 単 軟 膏 などの 吸 湿 作 用 をもつ 外 用 剤 もよく 使 用 されます 3 乳 房 外 パジェット 病 真 菌 感 染 症 や 湿 疹 と 間 違 われてしまうことがある 外 陰 部 に 生 じる 大 事 な 疾 患 に 乳 房 外 パジェット 病 があります これは 皮 膚 癌 の 一 つです 表 皮 内 癌 であるため 紛 らわし いのですが 外 用 加 療 では 軽 快 しません 診 断 は 皮 膚 生 検 が 必 要 ですので この 疾 患 を 知 らないと 診 断 が 遅 れてしまいます 表 皮 内 癌 の 時 点 で 加 療 すれば 根 治 が 可 能 ですが 治 療 が 遅 れると 進 行 癌 となり ひとたび 進 行 すると 予 後 不 良 です 4 帯 状 疱 疹 単 純 疱 疹 褥 瘡 と 間 違 われる 疾 患 に 帯 状 疱 疹 と 単 純 疱 疹 ( 単 純 ヘルぺス)があります 多 くの 人 が 両 方 を 含 めて ヘ ルペス と 呼 んでいるかもしれません 帯 状 に 水 疱 や 紅 斑 を 生 じますが 初 期 にはわかりにくいことがあり ます 水 疱 は 摩 擦 を 受 けやすい 部 位 に 生 じればすぐに 破 れてびらん 潰 瘍 となるので 褥 瘡 と 間 違 われるこ とがあります( 図 2) この 部 位 に 生 じると 膀 胱 直 腸

障 害 を 合 併 して 尿 閉 をきたすことがあるので 注 意 が 必 要 です また ドレッシング 材 で 密 封 して 悪 化 させてしまうこともあります 単 純 ヘルペスは 様 々な 部 位 に 集 族 した 水 疱 を 生 じます 2. 足 部 病 変 の 鑑 別 すべき 疾 患 1 虚 血 性 足 病 変 を 見 逃 さない: 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症 (arterioscerosis obliterans:aso) 足 の 潰 瘍 をみたときに 重 要 なのは 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症 (ASO 最 近 では peripheral arterial disease (PAD)と 呼 びます)などの 虚 血 性 の 病 変 を 見 逃 さないことです( 図 3) 足 の 色 はどうか 動 脈 の 拍 動 を 触 知 するか などはまず 観 察 しなければな らない 点 です 虚 血 の 評 価 をせずに 不 用 意 な 切 開 ヤデブリドマンを 行 うと 潰 瘍 が 急 速 に 拡 大 してしまうことがあります 最 近 は 様 々な 優 れた 侵 襲 の 少 ない 検 査 が 可 能 で 虚 血 の 評 価 が 容 易 になりました 足 関 節 上 腕 血 圧 比 (ABI) 皮 膚 灌 流 圧 (SPP)が 代 表 的 です SPP は 測 定 値 が 30mmHg 以 下 になると 測 定 部 位 の 創 傷 治 癒 機 転 が 働 かない 可 能 性 が 高 いとされます 1) 2その 他 の 疾 患 外 果 部 の 発 赤 腫 脹 を 生 じる 疾 患 とし て 滑 液 包 炎 があります( 図 4a,b) 圧 迫 部 位 でもあるので 褥 瘡 と 間 違 わ れることがあります 波 動 を 触 れる 際 には 透 明 な 滲 出 液 を 穿 刺 できます 中 央 が 自 壊 し 透 明 あるいは 膿 性 の 滲 出 液 がみられることもあります 圧 迫 や 抗 菌 剤 投 与 にて 加 療 します ドレッシング 材 などで 密 封 すると 感 染 が 悪 化 しやすいので 注 意 が 必 要 です 糖 尿 病 を 有 する 患 者 では 糖 尿 病 性 水 疱 を 生 じることがあります 病 変 をみるときには 常 に 褥 瘡 の 生 じうる 部 位 であるのか 基 礎 疾 患 の 有 無 はどうか 確 認 する 習 慣 をつけて おく 必 要 があります

また このほかにも 皮 膚 潰 瘍 からは 壊 疽 性 膿 皮 症 皮 膚 筋 炎 や 関 節 リウマチ 血 管 炎 などの 診 断 に 至 ることがあります 2) 3. 手 術 室 でみられる 褥 瘡 と 鑑 別 すべき 疾 患 1 術 後 臀 部 皮 膚 障 害 原 因 は 一 つではないかもしれません deep tissue injury や 電 気 メスの 影 響 の 可 能 性 も 挙 げられています 術 後 臀 部 皮 膚 障 害 と 呼 ばれている 病 態 があります 脊 椎 麻 酔 後 に 生 じることが 多 かったため 脊 麻 後 紅 斑 と 呼 ばれていました 術 後 1~2 日 以 内 に 発 生 す る 有 痛 性 紅 斑 周 囲 に 線 状 の 紅 斑 を 伴 う 全 手 術 室 手 術 の 0.1~0.3%にみられ 体 動 可 能 な 患 者 でも 発 症 するといった 特 徴 が 報 告 されています 3) 2 ポビドンヨード 液 による 皮 膚 障 害 もうひとつ ポビドンヨード 液 による 皮 膚 障 害 があります( 図 5) 手 術 が 終 わったら 術 野 ではな い 部 位 たとえば 仰 臥 位 や 砕 石 位 であれば 臀 部 や 大 腿 後 面 に 発 赤 がみられたということはないでし ょうか 10%ポビドンヨード 液 は 溶 液 状 態 のま まだとその 作 用 は 持 続 し 皮 膚 は 連 続 的 にその 影 響 をうけます 大 量 の 消 毒 液 が 使 用 され 消 毒 液 が 術 野 以 外 に 流 れ 込 んだうえに チオ 硫 酸 ナトリウム(ハイポアルコール)による 還 元 が 行 われていない その 部 位 の 乾 燥 が 妨 げられる 環 境 下 におかれると 発 症 します 4) これは 予 防 が 重 要 です 消 毒 液 が 流 れるような 過 剰 な 使 用 を 避 けること 乾 燥 させる かハイポアルコールにて 還 元 させること 消 毒 は 十 分 ふき 取 るなどの 注 意 が 必 要 です 5) 3 その 他 体 位 によっては 褥 瘡 を 生 じえますが deep tissue injury を 生 じることもあります 腎 摘 枕 の 当 たって いた 部 位 に 生 じた 発 赤 ですが CK (クレアチンキナ ーゼ)20,000IU/ml と 上 昇 しており 横 紋 筋 融 解 を 合 併 した 症 例 を 供 覧 します( 図 6)

4. 褥 瘡 だけではない 疾 患 褥 瘡 から 続 発 する 疾 患 壊 死 性 筋 膜 炎 は 軟 部 組 織 の 感 染 が 筋 膜 に 沿 って 急 速 に 波 及 する 重 篤 な 細 菌 感 染 症 です( 図 7) しばしばレ ントゲンやCT 画 像 上 でガス 像 がみられます 強 力 な 抗 生 剤 の 投 与 全 身 管 理 とともに 緊 急 デブリードマ ンを 要 し 見 逃 してはならない 重 篤 な 疾 患 の 1 つです 長 期 間 持 っていた 褥 瘡 から 皮 膚 癌 ( 有 棘 細 胞 癌 )が 発 生 することがあります また 骨 盤 部 内 の 病 変 の 浸 潤 により 潰 瘍 を 生 じることもあります CT や MRI 皮 膚 生 検 による 病 理 組 織 学 的 検 査 などによる 精 査 が 必 要 です 通 常 の 褥 瘡 と 異 なる 点 に 気 付 きうるか 否 かがポイントといえます 終 わりに 褥 瘡 を 診 る 医 療 者 が 鑑 別 すべき 疾 患 知 っておくべき 代 表 的 な 皮 膚 疾 患 についてお 話 しました 多 くの 医 療 者 が 関 わる 褥 瘡 治 療 において 鑑 別 すべき 知 っておくべこのよ うな 皮 膚 疾 患 をわかりやすく 理 解 していただくように 努 めることは 皮 膚 科 医 の 責 任 と 思 います 文 献 1. 寺 師 浩 人 北 野 育 郎 辻 依 子 ほか: 重 症 虚 血 肢 の 診 断 治 療 におけるレーザードップ PV2000 の 有 用 性 ;Skin Perfusion Pressure (SPP, 皮 膚 灌 流 圧 ) 測 定 の 意 義 について. 形 成 外 科 48: 910-919 2005. 2. 永 井 弥 生 : 血 管 炎 による 潰 瘍. 創 傷 治 癒 プラクティス pp80-83 石 川 治 田 村 敦 志 編 著 南 江 堂 東 京 2006. 3. 松 村 由 美 : 褥 瘡 と 紛 らわしい 皮 膚 疾 患 : 褥 瘡 会 誌 12:1-7 2010. 4. 寺 師 浩 人 藤 川 由 美 子 吉 富 佳 代 子 ほか: 術 中 褥 瘡 と 誤 診 していたと 判 断 した 症 例 の 検 討. 褥 瘡 会 誌 3:85-88 2001. 5. 飯 島 茂 子 倉 持 美 也 子 :10%ポビドンヨード 液 による 術 後 の 接 触 皮 膚 炎.その 貼 付 試 験 方 法 についての 考 察. 日 皮 会 誌 109:1029-1041 1999.

図 の 説 明 図 1 仙 骨 部 にみられた 鱗 屑 血 痂 を 付 す 紅 斑 皮 膚 カンジダ 症 である 図 2 褥 瘡 と 診 察 依 頼 のあった 症 例 浅 い 潰 瘍 のわきに 小 さい 血 疱 様 の 皮 疹 が 集 簇 している 下 腹 部 にも 同 様 皮 疹 あり 帯 状 疱 疹 である 図 3 踵 とともに 足 背 にも 潰 瘍 あり 図 4a 外 果 部 の 発 赤 腫 脹 中 央 より 透 明 な 滲 出 液 あり 滑 液 包 炎 である 図 4b 感 染 を 合 併 して 難 治 性 潰 瘍 となった 例 図 5 10%ポビドンヨード 液 による 皮 膚 障 害 図 6 腎 摘 枕 による deep tissue injury 横 紋 筋 融 解 をきたした 図 7 褥 瘡 より 生 じた 壊 死 性 筋 膜 炎 褥 瘡 周 囲 に 急 速 に 拡 大 した 発 赤 発 熱 を 伴 う 捻 髪 音 あり 皮 下 ガス 像 がみられた