低 湿 度 が 人 間 に 与 える 影 響 の 調 査 研 究 Studies on the Influence of Low Humidity in Humans 株 式 会 社 テクノ 菱 和 技 術 開 発 研 究 所 Techno Ryowa Ltd. R&D center 唐 木 千 岳 Chitake KARAKI 九 州 大 学 大 学 院 芸 術 工 学 研 究 院 Faculty of Design, Kyushu University 栃 原 裕 橋 口 暢 子 平 川 恵 徳 永 英 治 鮮 于 裕 珍 Yutaka TOCHIHARA Nobuko HASHIGUCHI Megumi HIRAKAWA Eiji TOKUNAGA Yujin SUNWOO キーワード: 低 湿 度 (Low Humidity) 病 院 (Hospital) 生 理 反 応 (Physiological Responses) 心 理 反 応 (Psychological Responses) 高 齢 者 (Old Age) 1.はじめに 冬 季 になると オフィスやホテル 病 院 や 高 齢 者 施 設 など 暖 房 設 備 が 整 った 施 設 では 施 設 全 体 が 過 度 の 低 湿 度 環 境 になる 事 が 指 摘 されている 高 齢 者 施 設 の 調 査 では 生 活 の 場 所 である 施 設 におい ても 相 対 湿 度 が % 前 後 と 低 いことが 明 らかになっている 冬 季 の 低 湿 度 環 境 では 気 道 粘 膜 が 乾 燥 し 荒 れて 細 菌 に 感 染 し 易 くなるとともに インフルエン ザウイルスの 生 存 率 が 高 まるなどの 理 由 から 風 邪 や 呼 吸 器 疾 患 に 罹 患 し 易 いとされている 特 に 抵 抗 力 の 低 下 した 高 齢 者 は 若 年 者 より 低 湿 度 の 影 響 を 受 け 易 いと 考 えられる 高 齢 者 は 環 境 条 件 の 影 響 を 受 け 身 体 に 異 常 をきたし 易 く 居 住 環 境 の 温 湿 度 条 件 が 重 要 であると 言 われている さらに 家 に 居 ることの 多 い 高 齢 者 にとって 居 住 環 境 は 日 常 生 活 や 健 康 面 に 大 きな 比 重 を 占 めていることから 高 齢 者 を 対 象 とする 低 湿 度 の 研 究 が 必 要 であると 考 えられる そこで 我 々はこのような 低 湿 度 環 境 が 人 間 にどのような 影 響 を 与 えるのかについて 特 に 高 齢 者 への 影 響 も 含 めた 調 査 研 究 を 行 ってきた 本 稿 では 1)から 5)の 研 究 結 果 について 報 告 する 1) 加 湿 器 導 入 による 病 室 内 温 熱 環 境 と 患 者 及 びスタッフの 主 観 的 評 価 の 変 化 2) 長 時 間 座 位 時 に 低 湿 度 が 人 間 の 生 理 反 応 に 与 える 影 響 3) 低 湿 度 環 境 が 人 間 の 生 理 心 理 両 面 に 及 ぼす 影 響 ( 高 齢 者 と 若 年 者 との 比 較 ) 4) 同 上 の 検 証 実 験 において 生 理 反 応 からみた 低 湿 度 環 境 の 許 容 値 に 関 する 研 究 5) 冬 季 における 湿 度 気 流 の 違 いが 後 の 生 理 心 理 反 応 に 及 ぼす 影 響
2. 加 湿 器 導 入 による 病 室 内 温 熱 環 境 と 患 者 及 びスタッフの 主 観 的 評 価 の 変 化 本 研 究 では 健 康 に 最 も 配 慮 されているはずである 病 院 での 特 に 高 齢 者 を 対 象 とした 長 期 滞 在 型 病 院 において 冬 季 温 湿 度 環 境 の 実 態 を 測 定 し 実 験 的 に 加 湿 器 を 設 置 した 際 の 効 果 を 検 討 した さらに 長 期 間 病 院 に 滞 在 し その 環 境 に 曝 されている 患 者 および 勤 務 しているスタッフの 主 観 評 価 から 湿 度 が 与 える 影 響 と 加 湿 器 設 置 の 効 果 を 検 討 した 2-1. 調 査 概 要 1) 対 象 施 設 調 査 は 福 岡 県 南 部 に 立 地 する 長 期 滞 在 型 の 病 院 で 行 った 病 院 は 地 下 1 階 地 上 5 階 建 の RC 造, 延 床 面 積 6428.7 m2 病 床 数 は 15 床 である 測 定 の 対 象 は, 西 向 病 棟 の 2 階 3 階 東 向 病 棟 の 4 階 とした 病 室 は 1~4 人 部 屋 で 構 成 され 各 病 室 の 面 積 は 2 人 部 屋 が 16~18 m2 3 人 部 屋 が 21~24 m2 4 人 部 屋 が 32~34 m2である 空 調 方 式 は 4 段 階 風 量 調 節 可 能 なビル 用 マルチシステム であり 温 度 調 節 はナースステーション( 以 下 NS)にて 一 括 管 理 されている 2) 対 象 者 表 1 調 査 対 象 者 病 院 に 入 院 している 患 者 36 名 と 対 象 病 グループ 対 象 加 湿 器 人 数 ( 名 ) 年 齢 ( 平 均 ±S.D.) 院 に 勤 務 しているスタッフ( 看 護 婦 介 護 A 有 14( 男 性 3 女 性 11) 69.4±14. 福 祉 士 等 )45 名 を 対 象 とした 加 湿 器 を 設 患 者 置 した 病 室 の 患 者 は 14 名 (グループ A) B 無 22( 男 性 7, 女 性 15) 72.±13.5 加 湿 器 を 設 置 しない 病 室 の 患 者 は 22 名 (グ C 有 15( 男 性 2 女 性 13) 4.1±1. ループ B)であり NS に 加 湿 器 を 設 置 した スタッフ 階 のスタッフは 15 名 (グループ C) 設 置 D 無 ( 男 性 5 女 性 25) 37.9±12.2 しない 階 のスタッフは 名 (グループ D) であった 2-2. 調 査 方 法 1) 調 査 期 間 測 定 期 間 は 平 成 12 年 11 月 日 から 平 成 13 年 2 月 22 日 までの 約 3 ヶ 月 間 で 測 定 開 始 から 8 週 間 後 の 平 成 13 年 1 月 25 日 から 4 週 間 加 湿 器 の 運 転 を 行 った 分 析 に 用 いたデータは 温 湿 度 データ 及 び 主 観 評 価 ともに 加 湿 器 設 置 前 後 各 4 週 間 分 を 使 用 した 2) 温 湿 度 測 定 小 型 メモリー 型 温 湿 度 計 を 設 置 し 分 周 期 で 測 定 を 行 った 設 置 場 所 は 各 階 の 病 室 廊 下 トイレ 食 堂 NS と 浴 室 (2 階 4 階 ) 外 気 (3 階 )の 全 59 ヶ 所 とした 病 室 内 での 測 定 位 置 は 患 者 の 枕 元 でベッドよりも 1 cmほど 高 く 車 椅 子 使 用 時 に 身 体 の 中 心 部 近 くになる 床 上 6 cmに 設 定 した 廊 下 トイレ 食 堂 NS 外 気 温 の 設 置 位 置 は 床 上 11 cmで 測 定 した 3) 加 湿 装 置 設 置 の 対 象 となった 部 屋 は 各 階 病 室 二 部 屋 ずつ(グループ A の 病 室 )と 気 管 切 開 患 者 の 病 室 NS(グループ C)の 計 8 箇 所 とした 加 湿 器 は 蒸 気 ファン 式 加 湿 器 (SHARP 製 HV-77F)で 加 湿 量 約 77(ml/min) 適 用 床 面 積 が 35 m2のものを 一 部 屋 に 一 台 づつ 設 置 した 4) 主 観 評 価 温 湿 度 の 測 定 と 並 行 し 毎 週 一 回 患 者 とスタッフに 経 時 的 なアンケート 調 査 と 加 湿 器 設 置 前 後 に 一 回 ずつ 別 のアンケート 調 査 を 行 った 経 時 アンケートの 内 容 は 患 者 は 今 現 在 の 状 態 に 関 して スタッフは 今 を 含 め 過 去 2 3 日 の 状 態 に 関 して 体 調 温 冷 感 乾 湿 感 快 適 感 肌 の 渇 きやかゆみ 喉 の 渇 きに 関 する 質 問 を 行 った
2-3. 計 測 結 果 1) 温 湿 度 測 定 1 加 湿 器 設 置 前 後 の 温 湿 度 ( 図 1) 病 室 の 平 均 気 温 は グループAの 病 室 の 加 湿 器 設 置 前 が 21. 後 が.9 グループ B の 病 室 の 設 置 前 が 21.1 後 が.9 で 有 意 な 差 はなかった 平 均 湿 度 は グループ A の 病 室 の 加 湿 器 設 置 前 が 33% 後 が 44% グループ B の 病 室 の 設 置 前 が 33% 後 が 37%で 設 置 前 に 両 グループに 差 は 無 かったが 設 置 後 は グループ A の 方 が 有 意 に 高 くなった 2 一 日 の 温 湿 度 変 化 ( 図 2) 気 温 は 設 置 前 後 に 大 きな 差 は 見 られな かった 湿 度 は 加 湿 器 設 置 前 と 比 較 すると 設 置 後 が 各 場 所 すべての 時 間 帯 で 上 昇 した NS の 加 湿 器 設 置 前 が 全 体 的 に 最 も 低 く 1 日 中 ほぼ % 以 下 であった また 設 置 後 もオープンスペースのため 4% 以 上 には 上 昇 しなかった 特 に 加 湿 器 を 設 置 した 病 室 では どの 時 間 帯 においても 1% 以 上 上 昇 し ほぼ 4% 以 上 を 保 つ ことができた 相 対 湿 度 (%) 室 温 ( ) 24 23 22 21 19 8 7 6 5 4 17 設 置 前 グループA グループB 患 者 設 置 後 54 29 相 対 湿 度 (%) 6 5 4 1 5 設 置 前 *** ***:p<.1 図 1 加 湿 器 設 置 前 後 の 温 湿 度 病 室 ( 加 湿 器 あり) 外 気 6 病 室 ( ) 5 N-sta.( 加 湿 器 あり) N-sta.( ) 4 : 3: 6: 9: 12: 15: 18: 21: : 8 7 図 2 湿 度 の 日 内 変 動 設 置 日 後 グループA グループB スタッフ 設 置 後 : 3: 6: 9: 12: 15: 18: 31 64 21: : ビル 衛 生 管 理 法 下 限 値 :4% 2) 主 観 評 価 調 査 結 果 1 温 冷 感 ( 図 3) グループ A B ともに どちらでも ない の 割 合 が 設 置 後 1% 以 上 増 加 し 暑 さや 寒 さを 訴 える 割 合 が 減 少 した グループ C では どちらでもない の 割 合 が 2% 増 加 し ほぼ 変 化 が 無 かっ たが グループ D では 8% 増 加 し 暑 さを 訴 える 割 合 が 減 少 した グループ D では 乾 燥 感 の 訴 えが 前 後 とも 8% 以 上 を 超 え 設 置 前 後 でほぼ 変 化 が 無 か った 2 乾 湿 感 ( 図 4) グループ A で 設 置 後 に 湿 りを 感 じる 割 合 が 1% 近 く 出 現 したが 有 意 な 差 はなかった グループ B では 乾 燥 を 訴 える 割 合 が 少 なく 4%の 増 加 であった グループ C で 乾 燥 感 を 意 な 差 がみら れた(p<.5) グループ D では 前 後 の 変 化 はほとんどみられなかった 4 6 8 1% 4 6 8 1% 11 加 湿 器 あり 2 加 湿 器 あり 6 59 51 29 36 63 62 28 66 設 置 日 後 77 18 15 64 22 38 6 36 58 5 2 6 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 81% 4 6 8 1% 非 常 に 寒 い 涼 しい どちらでもない 暖 かい 非 常 に 暑 い 寒 い やや 涼 しい やや 暖 かい 暑 い 図 3 温 冷 感 評 価 患 者 スタッフ 5 5 76 23 1 4 6 8 1% 4 6 8 1% 加 湿 器 あり 加 湿 器 あり 2 36 64 59 59 41 62 38 84 14 ** 設 置 日 後 25 66 9 63 36 37 63 85 15 1 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 8 1% **:p<.1 ( vs 設 置 日 後 ) 乾 燥 している どちらでもない 湿 っている 非 常 に 乾 燥 している やや 乾 燥 している やや 湿 っている 非 常 に 湿 っている 図 4 乾 湿 感 評 価
3 快 適 感 ( 図 5) グループ A では 快 適 の 割 合 が 約 1% 増 加 したが グループ B ではほぼ 変 化 しなかった グル ープ C では 快 適 を 訴 える 割 合 が 約 % 増 加 し 統 計 的 に 有 意 な 差 がみられた(p<.5) グルー プ D では 前 後 の 変 化 はほとんどみ られなかった 4 肌 の 渇 きやかゆみ( 図 5) グループ A では 設 置 前 にかゆみ を 訴 える 割 合 が 45%あり 設 置 後 は 32%に 減 少 したが 有 意 な 差 は 見 られず グループ B では 訴 えの 変 化 はなかった スタッフでは 設 置 前 約 5%の 割 合 で 訴 えがあっ たが 後 には 1% 減 少 した グル ープ D では 前 後 で 変 化 は 無 く 8% 以 上 の 割 合 で 訴 えがあった 患 者 スタッフ 72 28 32 68 4 6 8 1% 4 6 8 1% 加 湿 器 あり 加 湿 器 あり 79 21 68 37 63 37 15 85 * 設 置 日 後 88 69 31 81 18 18 82 12 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 81% * : p<.5 ( vs 設 置 日 後 ) 快 適 やや 不 快 不 快 非 常 に 不 快 図 5 快 適 感 評 価 患 者 スタッフ 45 55 26 74 4 6 8 1% 4 6 8 1% 加 湿 器 あり 加 湿 器 あり 55 45 39 61 47 53 15 85 設 置 日 後 68 32 42 58 57 43 17 83 4 6 8 1% 4 6 8 1% 4 6 81% 4 6 81% 感 じない やや 感 じる 感 じる 非 常 に 感 じる 図 6 乾 燥 感 や 掻 痒 感 評 価 2-4.まとめ 加 湿 器 導 入 による 湿 度 への 影 響 は 加 湿 器 と 比 較 すると 平 均 相 対 湿 度 が 4% 以 内 に 達 し ない 病 室 もあったが 全 体 としては 上 昇 し 加 湿 は 有 効 であったといえる しかしナースステーシ ョンでは 4% 以 上 に 上 昇 せず 日 毎 変 化 や 日 内 変 動 からも 見 ても 有 効 であったとはいえない こ のことからも 病 室 ナースステーションの 広 さは 今 回 使 用 した 加 湿 器 の 適 用 床 面 積 内 であったが 病 室 やナースステーションといった 場 所 は 常 に 開 塀 されており 今 回 用 いた 加 湿 器 による 加 湿 には 限 界 があることがわかった 有 効 な 加 湿 を 行 うためには 施 設 全 体 を 加 湿 するといった 加 湿 システ ムを 導 入 し 病 院 施 設 や 高 齢 者 施 設 の 温 湿 度 環 境 を 調 整 することが 重 要 である 主 観 評 価 では 加 湿 器 ありのスタッフの 快 適 感 と 乾 湿 感 にのみ 有 意 な 差 が 認 められた しかし 患 者 では 加 湿 器 ありで 快 適 感 や 乾 湿 感 で 不 快 感 や 乾 燥 感 の 訴 えが 減 少 したものの すべての 項 目 において 有 意 差 は 認 められなかった 患 者 は の 段 階 で 乾 燥 感 や 不 快 感 を 訴 える 割 合 がス タッフに 比 べ 少 なく 快 適 感 では 7 割 から 8 割 の 人 が 快 適 と 回 答 しており 現 状 に 満 足 して いる 人 が 多 かった このように スタッフでは 加 湿 器 設 置 により 有 意 に 訴 えが 改 善 したが 患 者 で は 大 きな 影 響 が 無 かった これは 高 齢 者 の 多 い 患 者 群 では 加 齢 に 伴 い 温 熱 に 対 する 感 覚 が 低 下 することと 同 様 に 乾 燥 に 関 してもより 的 確 に 評 価 が 行 われなかったことが 要 因 の 一 つと 考 えられ る また スタッフへの 加 湿 器 導 入 に 関 する 調 査 結 果 から 6% 以 上 が 加 湿 器 の 設 置 を 行 った 方 が 良 いと 回 答 しているが 9% 近 くのスタッフはメンテナンスが 面 倒 であると 回 答 し その 理 由 として 水 の 補 給 や 作 動 の 確 認 運 転 音 などをあげている このことから メンテナンスフリーの 加 湿 器 に より 加 湿 することが 望 ましいと 考 えられる 以 上 の 結 果 から 病 院 や 高 齢 者 施 設 における 加 湿 の 重 要 性 や その 方 法 について 改 善 の 必 要 性 が 確 認 できた 現 状 のマルチエアコンシステムでは 別 途 に 加 湿 器 を 設 置 しなければならず 補 給 水 等 の 維 持 管 理 も 煩 雑 である 今 後 は 加 湿 器 や 熱 交 換 器 等 を 内 蔵 した 高 性 能 小 型 空 調 機 を 検 討 し 病 院 関 連 施 設 への 対 応 を 図 って 行 きたい
3. 長 時 間 座 位 時 に 低 湿 度 が 人 間 の 生 理 反 応 に 与 える 影 響 近 年 コンピュータの 発 達 によるデスクワークや 海 外 旅 行 列 車 旅 行 等 私 達 の 日 常 生 活 において 長 時 間 座 ったままの 姿 勢 で 過 ごすことが 増 加 している 長 時 間 座 位 は いわゆるエコノミークラス 症 候 群 の 原 因 になる 血 栓 を 発 生 する 要 因 の1つと 考 えられ 航 空 機 での 旅 行 にとどまらず 列 車 旅 行 やオフィスでのデスクワークでも 起 こる 可 能 性 があると 注 目 されるようになっている そこで 本 研 究 は 長 時 間 座 位 において 湿 度 の 違 いが 生 理 機 能 に 及 ぼす 影 響 を 検 証 することを 目 的 として 以 下 の 検 証 を 行 った 3-1. 検 証 概 要 1) 測 定 条 件 被 験 者 は ~25 歳 ( 平 均 22.7 歳 )の 健 康 な 男 子 大 学 生 9 名 とした 実 験 は 平 成 14 年 8 月 ~9 月 九 州 大 学 の 環 境 適 応 実 験 施 設 実 験 室 No.1 で 行 った 温 湿 度 は 空 調 設 備 としてエアコンだ けを 装 備 した 日 本 のオフィスを 想 定 し 中 等 湿 度 環 境 として 気 温 24 相 対 湿 度 6% 低 湿 度 環 境 として 気 温 24 相 対 湿 度 %の 二 条 件 とした 2) 測 定 項 目 1 心 拍 数 血 圧 体 重 心 拍 数 と 血 圧 は 実 験 開 始 から 実 験 終 了 まで 1 分 ごとに 記 録 した 体 重 は 実 験 前 と 実 験 後 にそれぞれ 2 回 ずつ 測 定 した 値 を 平 均 して 記 録 した 2 下 肢 周 径 下 肢 周 径 の 計 測 は メジャーを 用 いた 測 定 部 位 は 左 足 の 下 肢 の 上 部 と 下 部 2ヶ 所 とし 腓 頭 骨 から 外 果 までを 三 等 分 した 上 部 を 下 肢 周 径 上 部 下 部 を 下 肢 周 径 下 部 とした 3 静 脈 容 量 静 脈 流 出 量 測 定 は 動 脈 止 血 用 のカフに 約 18mmHg の 圧 を 加 え 安 定 した 後 静 脈 止 血 用 のカフに 約 6mmHg の 圧 を 加 えた 約 2 分 後 静 脈 止 血 用 カフを 脱 気 して 数 秒 おいて 測 定 を 終 了 した 4 血 液 生 化 学 検 査 採 血 は 椅 座 位 の 状 態 で 実 験 室 入 室 前 に 足 部 静 脈 から 行 い 実 験 後 は 椅 座 位 の 状 態 のまま 実 験 室 内 で 行 った 分 析 は 外 部 機 関 へ 依 頼 した < 血 液 データ> 総 蛋 白 アルブミン A/G 比 赤 血 球 数 ヘモグロビン 量 ヘマトクリット 血 小 板 数 フィブリノーゲン 血 中 FDP 3) 実 験 手 順 被 験 者 は 入 室 後 椅 子 に 深 く 腰 掛 け 膝 の 角 度 が 約 9 になるようにした ストレインゲー ジを 下 腿 に 巻 き 心 拍 数 測 定 用 のセンサーを 取 り 付 け 血 圧 測 定 用 カフを 右 上 腕 部 に 巻 いた そ の 後 静 脈 容 量 静 脈 流 出 量 下 肢 周 径 を 測 定 した 実 験 前 の 血 圧 心 拍 数 記 録 後 実 験 を 開 始 し 実 験 中 は 下 肢 を 動 かさないように 注 意 をした 安 静 椅 座 位 の 後 下 肢 周 径 測 定 血 液 採 取 静 脈 容 量 静 脈 流 出 量 を 測 定 し 退 室 した 実 験 室 を 退 室 後 体 重 測 定 を 行 い 実 験 を 終 了 した 3-3. 測 定 結 果 1) 心 拍 数 血 圧 体 重 心 拍 数 や 血 圧 に 与 える 影 響 は 無 かった 実 験 前 後 の 体 重 の 変 化 は 両 条 件 とも 実 験 前 に 比 べ 実 験 後 に 有 意 に 減 少 した 2) 下 肢 周 径 ( 図 7) 実 験 前 後 の 下 肢 周 径 上 部 および 下 部 の 周 径 変 化 は 2 条 件 とも 実 験 前 に 比 べ 実 験 後 に 有 意 な 上 昇 を 示 した(p<.1)
3) 静 脈 容 量 ( 図 8) 38. ** 実 験 前 後 の 静 脈 容 量 は 相 対 湿 度 % 条 件 下 37.5 ** p<.1 で 実 験 後 に 有 意 に 減 少 した 減 少 量 に 有 意 37. 36.5 差 はみられなかったものの 相 対 湿 度 % 条 実 験 前 36. 実 験 後 件 下 において 減 少 傾 向 が 大 きかった 35.5 4) 静 脈 流 出 量 35. 34.5 実 験 前 後 の 静 脈 流 出 量 は 相 対 湿 度 % 条 34. 件 下 で 実 験 前 に 比 べ 実 験 後 に 有 意 に 減 少 した 相 対 湿 度 6% 相 対 湿 度 % 減 少 量 に 有 意 差 はみられなかったものの 図 7 実 験 前 後 の 下 肢 周 径 下 部 の 変 化 相 対 湿 度 % 条 件 下 において 減 少 傾 向 が 強 n=8 ( 平 均 値 + 標 準 偏 差 ) いことが 認 められた * 2. 5)アルブミン( 図 9) 1.8 実 験 前 後 のアルブミンの 変 化 結 果 は 2 条 1.6 * p<.5 1.4 件 とも 実 験 後 が 実 験 前 より 有 意 に 増 加 した 1.2 実 験 前 増 加 量 に 有 意 差 はみられなかったものの 相 1. 実 験 後.8 対 湿 度 % 条 件 下 で 増 加 傾 向 が 強 いことが.6.4 認 められ.2 6)ヘマトクリット 相 対 湿 度 6% 相 対 湿 度 % 実 験 前 後 のヘマトクリットの 変 化 結 果 は 図 8 実 験 前 後 の 静 脈 容 量 の 変 化 低 湿 度 環 境 下 において 実 験 前 に 比 べ 実 験 後 に 増 加 傾 向 を 示 した * 5.4 ** 3-4. 考 察 5.3 ** p<.1 5.2 * p<.5 長 時 間 座 位 後 には 不 感 蒸 泄 により 水 分 蒸 発 5.1 5. が 生 じ 体 重 が 減 少 したと 考 えられるが 今 回 4.9 実 験 前 実 験 後 は 体 重 の 測 定 を 着 衣 時 に 行 ったため 水 分 が 着 4.8 衣 に 移 り 湿 度 条 件 間 で 大 きな 差 異 が 認 められ 4.7 4.6 なかったと 思 われる 4.5 下 肢 周 径 の 増 加 は 長 時 間 座 位 による 下 肢 血 4.4 相 対 湿 度 6% 相 対 湿 度 % 流 の 停 滞 と 筋 ポンプ 作 用 の 減 少 による 足 のむく 図 9 実 験 前 後 のアルブミンの 変 化 みの 影 響 であると 考 えられる 静 脈 容 量 静 脈 流 出 量 が 減 少 したのは 下 肢 に 血 液 が 貯 留 していた 可 能 性 が 考 えられる 血 管 内 の 脱 水 が 進 み 血 液 粘 度 が 上 昇 した 低 湿 度 環 境 下 では 静 脈 血 流 の 変 化 量 が 減 少 したものと 思 われる アルブミンを 血 管 内 脱 水 の 指 標 として 用 いた 長 時 間 座 位 によって 下 肢 への 血 液 貯 留 が 生 じ その 結 果 血 管 外 への 水 分 移 動 により 血 管 内 脱 水 が 生 じたと 思 われる ヘマトクリットは 血 液 粘 度 の 指 標 に 用 いた 両 条 件 ともヘマトクリットが 有 意 に 増 加 したこと から 長 時 間 座 位 によって 血 液 粘 度 が 上 昇 したと 考 えられる 特 に 低 湿 度 環 境 下 において 増 加 傾 向 が 強 かったことから 血 液 粘 度 の 上 昇 の 傾 向 が 強 められたと 思 われる また 赤 血 球 数 ヘモグ ロビン 量 フィブリノーゲンが 増 加 したことからも 血 液 粘 度 が 上 昇 したことが 考 えられる 下 肢 周 径 (cm) アルブミン(g/dl) 静 脈 容 量 (ml/1ml) ** n=8 ( 平 均 値 + 標 準 偏 差 ) n=9 ( 平 均 値 + 標 準 偏 差 ) 3-5.まとめ 長 時 間 座 位 による 生 理 変 動 は 先 行 研 究 と 同 様 に 血 液 粘 性 の 増 加 が 認 められた また 本 実 験 に おいては 静 脈 容 量 静 脈 流 出 量 アルブミン ヘマトクリットの 結 果 から 低 湿 度 環 境 下 では 局 所 的 な 血 管 内 脱 水 や 血 液 粘 度 の 上 昇 が 促 進 され 易 いことが 認 められた 本 実 験 により 低 湿 度 環 境 下 において 長 時 間 座 位 は 血 栓 の 発 生 を 高 める 可 能 性 が 高 くなることが 示 唆 された
4. 暖 房 時 の 低 湿 度 が 人 間 の 生 理 心 理 反 応 に 与 える 影 響 - 高 齢 者 と 若 年 者 の 比 較 - 冬 季 の 低 湿 度 環 境 では 気 道 粘 膜 が 乾 燥 し 荒 れて 細 菌 に 感 染 し 易 くなるとともに インフルエ ンザウイルスの 生 存 率 が 高 まるなどの 理 由 から 風 邪 や 呼 吸 器 疾 患 に 罹 患 し 易 いとされている 特 に 抵 抗 力 の 低 下 した 高 齢 者 は 若 年 者 より 低 湿 度 の 影 響 を 受 け 易 いと 考 えられる 高 齢 者 は 環 境 条 件 の 影 響 を 受 け 身 体 に 異 常 をきたし 易 く 居 住 環 境 の 温 湿 度 条 件 が 重 要 であると 言 われている さ らに 家 に 居 ることの 多 い 高 齢 者 にとって 居 住 環 境 は 日 常 生 活 や 健 康 面 に 大 きな 比 重 を 占 めてい ることから 高 齢 者 を 対 象 とする 低 湿 度 の 研 究 が 必 要 であると 考 えられる そこで 冬 季 暖 房 時 に 生 じる 低 湿 度 環 境 が 高 齢 者 の 生 理 心 理 反 応 に 及 ぼす 影 響 を 上 部 気 道 粘 膜 の 活 動 性 や 眼 球 粘 膜 について 若 年 者 との 比 較 検 証 を 行 った 4-1. 検 証 概 要 1) 測 定 条 件 被 験 者 は 健 康 な 男 子 高 齢 者 と 男 子 学 生 の 中 で 鼻 の 疾 患 が 無 く 喫 煙 をしないそれぞれ 8 名 を 選 別 とした 実 験 は 冬 季 の 暖 房 時 期 として 平 成 16 年 2 月 ~3 月 に 九 州 大 学 の 環 境 適 応 実 験 施 設 で 行 った 実 験 室 の 温 湿 度 条 件 として 前 室 は 気 温 25 相 対 湿 度 5%で 一 定 とし 主 室 は 気 温 25 相 対 湿 度 1% % 5%の 3 条 件 で 実 験 を 行 った 被 検 者 は 安 静 座 位 とした 2) 測 定 方 法 1 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 Saccharin Clearance Time (SCT) 鼻 腔 内 の 粘 液 線 毛 機 能 を 評 価 するため 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 を 測 定 した サッカリン 片 を 鼻 腔 内 に 投 入 後 被 験 者 が 甘 味 を 感 じるまでの 時 間 を 測 定 した 2まばたき 回 数 パソコンの 液 晶 画 面 中 央 部 に 白 い 円 をランダムな 時 間 間 隔 で2 分 間 呈 示 し その 間 の 被 験 者 のまばたき 回 数 を 試 験 者 がカウントした 3その 他 生 理 項 目 心 拍 変 動 (HRV) 血 圧 平 均 皮 膚 温 体 重 測 定 4 主 観 申 告 ( 温 熱 感 乾 燥 感 快 適 感 ) 主 観 申 告 は 前 室 で 1 回 入 室 直 後 1 回 後 は 分 間 隔 で 1 回 ずつ 計 8 回 質 問 表 の 該 当 項 目 を 選 択 させることにより 頭 部 胴 体 部 下 肢 部 全 身 の 温 熱 感 と 鼻 喉 眼 顔 手 の 乾 燥 感 および 快 適 感 の 評 定 を 行 った 4-2. 測 定 結 果 1) 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 :Saccharin Clearance Time (SCT) 図 1に 各 湿 度 条 件 下 におけるSCTの 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 各 群 別 に 示 す 高 齢 群 にのみ 湿 度 条 件 の 主 効 果 が 認 められ 1% 条 件 と5% 条 件 との 間 に 差 が 認 められた 若 年 群 では 湿 度 の 影 響 は 認 め られなかったが 高 齢 者 群 においては 1% 条 件 下 で9 分 および18 分 で 前 室 と 比 較 して 増 加 が 認 められた このことから 1%の 低 湿 度 環 境 において 鼻 腔 内 の 腺 毛 の 機 能 性 に 年 齢 差 が 認 められ 高 齢 者 で 機 能 性 が 低 下 することが 示 された 2)まばたき 回 数 図 11に 各 湿 度 条 件 下 におけるまばたき 回 数 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 各 群 別 に 示 す 若 年 群 では 湿 度 条 件 および 時 間 に 主 効 果 が 認 められた 高 齢 群 では 時 間 の 主 効 果 および 湿 度 と 時 間 の 交 互 作 用 が 認 められた 両 群 ともに%および1%の 条 件 でまばたき 回 数 が 増 加 し 1% 条 件 において は 高 齢 群 の 増 加 が 大 きい 傾 向 にはあったが 有 意 な 年 齢 差 は 認 められなかった
SCT( 分 ) 4 35 25 15 1 5 前 室 9 18 時 間 ( 分 ) 4 35 25 15 1% 1 % 5 5% SCT( 分 ) 前 室 9 18 時 間 ( 分 ) RH p<.5 1% % 5% 図 1 各 湿 度 環 境 下 での SCT 値 ( 左 : 若 年 者 右 : 高 齢 者 ) まばたき 回 数 ( 回 ) 7 6 5 4 1 前 室 9 18 時 間 ( 分 ) RH p<.5 Time p<.5 7 Time p<.5 RH Time p<.5 6 まばたき 回 数 ( 回 ) 5 4 1% % 5% 1 前 室 9 18 時 間 ( 分 ) 1% % 5% 図 11 各 湿 度 環 境 下 でのまばたき 回 数 ( 左 : 若 年 者 右 : 高 齢 者 ) 1% 入 室 直 後 VS 入 室 直 後 乾 燥 感 - 喉 乾 燥 感 - 喉 湿 っている 乾 燥 している 2 1.5 1.5 -.5-1 -1.5-2 6 9 1 15 18 時 間 ( 分 ) 1% % 5% 湿 っている 乾 燥 している 2 1.5 1.5 -.5-1 -1.5-2 %18 分 後 VS18 分 後 6 9 1 15 18 時 間 ( 分 ) 1% % 5% 図 12 喉 の 乾 燥 感 ( 左 : 若 年 者 右 : 高 齢 者 ) 3) 乾 燥 感 各 湿 度 条 件 による 喉 の 乾 燥 感 の 申 告 結 果 を 図 12 に 示 す 喉 眼 の 乾 燥 感 においては 若 年 群 と 高 齢 群 の 間 に 有 意 な 差 が 認 められ 喉 の 乾 燥 感 の 場 合 は 1%の 湿 度 条 件 で 入 室 直 後 に %の 湿 度 条 件 では 18 分 後 に 高 齢 群 より 若 年 群 の 方 が 乾 燥 感 を 感 じるようになることが 示 された 4-3.まとめ SCT 測 定 において 1%の 湿 度 条 件 で 高 齢 者 の SCT 値 が 有 意 に 増 加 し 若 年 者 より 高 い 値 を 示 し たことから 加 齢 とともに 鼻 腔 内 の 線 毛 の 機 能 が 低 下 したと 考 えられる このような 線 毛 の 機 能 の 低 下 は 細 菌 予 防 作 用 の 低 下 につながるため 特 に 抵 抗 力 の 低 下 した 高 齢 者 にとっては 湿 度 の 変 化 に 最 も 注 意 する 必 要 があると 考 えられる
まばたき 回 数 は % 及 び 1%の 湿 度 条 件 で 高 齢 者 と 若 年 者 ともに 有 意 に 増 加 した しかし 高 齢 者 と 若 年 者 の 間 に 有 意 な 差 は 認 められず 眼 球 粘 膜 の 加 齢 に 伴 う 変 化 は 少 ないものではないかと 考 えられる SCT およびまばたき 回 数 の 結 果 から 1% 以 下 の 湿 度 環 境 が 上 部 気 道 粘 膜 に % 以 下 の 湿 度 環 境 が 眼 球 粘 膜 の 活 動 性 に 何 らかの 影 響 を 与 えている 可 能 性 が 考 えられる 心 拍 変 動 測 定 結 果 では 若 年 群 と 高 齢 群 どちらでも 各 湿 度 条 件 間 に 有 意 な 差 は 認 められなかった これは 本 実 験 のような 中 立 温 度 で 安 静 状 態 においては 低 湿 度 が 心 拍 変 動 に 影 響 を 及 ぼさなかったた めだと 考 えられる 温 冷 感 快 適 感 の 結 果 から 高 齢 者 よりも 若 年 者 の 方 が 湿 度 の 変 化 に 対 して 敏 感 に 反 応 をした このことから 高 齢 者 は 環 境 の 変 化 に 対 し 感 受 性 が 鈍 いと 考 えられ 高 齢 者 施 設 において 温 湿 度 を 適 切 に 管 理 することがより 重 要 であると 考 えられる 5. 生 理 反 応 からみた 低 湿 度 環 境 の 許 容 値 に 関 する 研 究 前 報 では 若 年 者 を 被 験 者 として 低 湿 度 が 鼻 腔 粘 膜 や 眼 球 粘 膜 に 与 える 影 響 を 調 査 し それぞ れに 対 して 1%RH % RH 以 下 の 低 湿 度 による 影 響 が 認 められた しかし その 間 である % RH や 4%RH の 影 響 は 明 らかにされておらず 低 湿 度 環 境 の 許 容 値 を 詳 細 に 検 討 することはできな かった そこで 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 やまばたき 回 数 といった 生 理 反 応 を 中 心 に 冬 季 暖 房 時 に 生 じ 易 い 室 内 低 湿 度 環 境 の 許 容 値 を 明 らかとすることを 目 的 として 以 下 の 検 証 を 行 った 5-1. 検 証 概 要 1) 検 証 条 件 被 験 者 は 健 康 な 男 子 学 生 の 中 で 鼻 の 疾 患 が 無 く 喫 煙 をしないそれぞれ 16 名 を 選 別 とした 実 験 は 冬 季 の 暖 房 時 期 として 平 成 5 年 2 月 ~3 月 に 九 州 大 学 の 環 境 適 応 実 験 施 設 で 行 った 実 験 室 の 温 湿 度 条 件 として 前 室 は 気 温 25 相 対 湿 度 5%で 一 定 とし 主 室 は 気 温 25 相 対 湿 度 1% % 5%の 3 条 件 で 実 験 を 行 った 被 検 者 は 安 静 座 位 と した 2) 測 定 方 法 測 定 項 目 測 定 方 法 は 前 回 に 準 じ 生 理 反 応 として 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 (SCT) まばたき 回 数 血 圧 経 皮 水 分 蒸 散 量 を 測 定 し 心 理 反 応 としては 温 冷 感 乾 燥 感 快 適 感 について 申 告 を 受 けた 5-2. 検 証 結 果 1) 鼻 腔 粘 膜 輸 送 速 度 Saccharin Clearance Time (SCT) 図 12 に 前 室 と 主 室 の SCT 値 を 各 湿 度 条 件 毎 に 示 した 1%および %の 湿 度 条 まばたき 回 数 ( 回 ) SCT( 分 ) 35 25 15 1 5 7 6 5 4 1 * * pre-room test-room 1% % % 4% 5% RH(%) 図 13 各 湿 度 条 件 下 での SCT * * * pre-room test-room 1% % % 4% 5% RH(%) 図 14 各 湿 度 環 境 下 でのまばたき 回 数
件 で SCT は 有 意 に 増 加 し(p<.5) その 変 化 量 はそれぞれ 3.35 分 6.1 分 であった 2)まばたき 回 数 各 湿 度 による 前 室 と 主 室 でのまばた 14 12 1 8 1% % 6 % き 回 数 を 図 13 に 示 す 4% 及 び 5% 4 4% の 湿 度 条 件 ではほとんど 変 化 しなかっ 2 5% たが 1% % %の 条 件 では 前 室 に 比 べ 主 室 で 有 意 (p<.5)に 増 加 -2 した Ctrl 分 6 分 9 分 1 分 3) 経 皮 水 分 蒸 散 変 化 量 (TEWL) 図 15 経 皮 水 分 蒸 散 変 化 量 (TEWL) 各 湿 度 条 件 による 顔 面 頰 部 の 経 皮 乾 燥 感 - 眼 水 分 蒸 散 変 化 量 を 図 15 に 示 した 各 2 湿 度 条 件 間 に 有 意 (p<.1)な 主 効 1.5 果 が 認 められ 4% 及 び 5%の 湿 度 1.5 条 件 に 比 べ 1% % %の 条 件 1% で 水 分 蒸 散 変 化 量 が 多 かった 手 背 -.5 % 部 においても 各 湿 度 条 件 間 に 有 意 -1 % (p<.1)な 差 が 認 められ 4% 及 び -1.5 4% -2 5%の 湿 度 条 件 に 比 べ 1% %の 5% 6 9 1 条 件 で 水 分 蒸 散 量 が 多 かった 時 間 ( 分 ) 4) 乾 燥 感 図 16 眼 の 乾 燥 感 鼻 の 乾 燥 感 では 主 室 に 入 室 後 時 間 経 過 とともに 乾 燥 感 を 感 じるようになる 推 移 がみられたが 各 湿 度 条 件 間 に 有 意 な 差 は 認 めら れなかった 一 方 眼 の 乾 燥 感 ( 図 14)では 各 湿 度 条 件 の 有 意 な 主 効 果 (p<.5)が 認 められ 5%より %の 湿 度 環 境 下 で 乾 燥 感 が 有 意 に 強 くなった その 他 の 部 位 の 喉 顔 手 の 乾 燥 感 と 各 湿 度 条 件 の 間 には 有 意 な 差 は 認 められなかった 水 分 蒸 散 変 化 量 (μg/cm 2 ) 湿 っている 乾 燥 している 主 効 果 : RH (p<.5) Time (p<.1) RH Time (p<.1) 主 効 果 :RH (p<.5) Time (p<.1) 5-3.まとめ 気 道 の 粘 液 線 毛 浄 化 機 能 は 生 体 防 御 機 構 の 一 つとして 気 道 内 分 泌 物 はもとより 吸 気 中 の 異 物 の 排 除 といった 重 要 な 働 きを 担 っている この 機 能 が 障 害 されると 各 種 呼 吸 器 疾 患 の 発 生 頻 度 が 増 加 する 鼻 腔 内 の 線 毛 は 湿 度 が 低 くなると 線 毛 の 浄 化 機 能 が 低 下 すると 言 われている 本 実 験 で 用 いたサッカリン 法 は 線 毛 の 浄 化 機 能 を 判 断 するために 多 く 使 われている 方 法 であり SCT が 長 いほ ど 機 能 性 が 低 下 していると 考 えられる 本 実 験 では 1%や %の 湿 度 環 境 で SCT 値 が 有 意 に 増 加 したことから % 以 下 の 低 い 湿 度 環 境 が 鼻 腔 内 の 線 毛 の 動 きを 低 下 させる 影 響 を 及 ぼすと 考 え られた 眼 球 粘 膜 への 湿 度 の 影 響 については まばたき 回 数 を 用 い 評 価 した まばたきは 眼 球 に 水 分 を 供 給 する 作 用 を 持 つため まばたき 回 数 の 増 加 は 眼 球 粘 膜 の 乾 燥 状 態 を 反 映 すると 考 えられる 本 実 験 の 結 果 においては 1% % %の 湿 度 条 件 でまばたき 回 数 が 有 意 に 増 加 した 本 実 験 では 1% % %の 湿 度 条 件 で 経 皮 水 分 蒸 散 量 が 多 く 増 加 したことから % 以 下 の 湿 度 環 境 が 皮 膚 を 乾 燥 させることが 認 められた 皮 膚 の 水 分 量 の 減 少 は 皮 膚 の 外 観 を 変 化 させる だけでなく 乾 皮 症 などかゆみを 伴 った 皮 膚 疾 患 も 生 じる 可 能 性 もあると 考 えられる 本 実 験 の 結 果 から % 以 下 の 湿 度 環 境 が 上 部 気 道 粘 膜 の 活 動 性 に % 以 下 の 湿 度 環 境 が 眼 球 粘 膜 や 皮 膚 に 何 らかの 影 響 を 与 えている 可 能 性 が 考 えられた 温 冷 感 快 適 感 は 全 体 的 に 前 室 から 主 室 に 移 動 した 直 後 下 がって 後 からは 徐 々に 上 がることが
分 かった 環 境 が 変 わった 直 後 はその 変 化 に 対 して 敏 感 に 反 応 をしたが その 後 は 次 第 に 馴 化 した と 考 えられる 乾 燥 感 の 結 果 鼻 喉 顔 手 より 目 が 乾 燥 感 を 感 じ 易 いと 考 えられる 温 度 の 変 化 に 比 べて 湿 度 の 変 化 に 対 するヒトの 感 覚 は 鈍 感 であり 湿 度 の 変 化 を 実 感 しにくい 冬 季 の 室 内 の 暖 房 時 には 温 湿 度 計 の 設 置 など 温 度 だけでなく 湿 度 を 客 観 的 にチェックするといっ た 配 慮 が 必 要 であると 考 えられる 本 実 験 の 結 果 から 鼻 腔 粘 膜 の 乾 燥 を 防 ぐためには 相 対 湿 度 %より 高 い 湿 度 を 眼 の 粘 膜 や 皮 膚 の 乾 燥 を 防 ぐためには %より 高 い 湿 度 を 保 つことが 必 要 で あることが 示 唆 された しかしながら 前 章 で 示 したように 高 齢 者 と 若 年 者 の 反 応 には 多 少 の 差 異 があり 高 齢 者 に 適 用 できるかの 問 題 は 残 る 6. 冬 季 における 湿 度 気 流 の 違 いが 後 の 生 理 心 理 反 応 に 及 ぼす 影 響 我 々は 低 湿 度 環 境 が 人 間 にどのような 影 響 を 与 えるのか 特 に 高 齢 者 への 影 響 に 対 する 調 査 研 究 を 行 ってきた その 中 で 温 熱 環 境 の 構 成 要 因 である 湿 度 と 気 流 が 後 の 生 体 へどのような 影 響 を 及 ぼすかについて 特 に 皮 膚 性 状 を 中 心 とした 生 理 反 応 や 不 快 感 乾 燥 感 を 中 心 とした 心 理 反 応 の 双 方 から 検 討 し 高 齢 者 施 設 に 対 する 適 切 な 住 宅 温 熱 環 境 の 具 体 的 指 針 を 提 示 すること を 目 的 とする 本 章 では その 基 礎 的 資 料 を 得 るために 若 年 者 を 対 象 とし 後 に 過 ごす 居 室 における 湿 度 や 気 流 の 違 いがヒトの 生 理 心 理 反 応 にどのような 影 響 を 及 ぼすかについて 検 討 した 6-1. 検 証 概 要 表 2 実 験 環 境 条 件 1) 検 証 条 件 被 験 者 は 健 康 な 男 子 高 齢 者 と 男 子 学 生 の 中 条 件 F 6F N 6N C で 鼻 の 疾 患 が 無 く 喫 煙 をしないそれぞれ8 有 有 有 有 無 名 を 選 別 とした 実 験 は 冬 季 の 暖 房 時 期 とし RH % 6% % 6% % て 平 成 17 年 11 月 ~18 年 1 月 に 九 州 大 学 の 環 境 適 気 流 有 有 無 無 有 応 実 験 施 設 (No7)で 行 った 実 験 室 の 温 湿 度 条 件 として 気 温 は25 で 一 定 とし 前 室 は 気 温 25 とし 湿 度 % 6%の2 条 件 気 流 は.2 m/s ( 無 ).5~.7 m/s( 有 り)の2 条 件 とした また は 実 施 しない 条 件 で 低 湿 度 (%) 気 流 ありの 条 件 暴 露 もコントロールとして 実 施 した よって 1 人 の 被 験 者 に 対 し 以 下 に 示 す5 条 件 の 実 験 を 実 施 した 以 下 実 験 の 表 記 は F 6F N,6N Cとした 2) 測 定 方 法 測 定 項 目 は 生 理 反 応 として 皮 膚 温 直 腸 温 血 圧 脈 拍 皮 膚 水 分 量 経 皮 水 分 蒸 散 量 (TEWL) 皮 脂 量 体 重 を 測 定 した 皮 膚 温 直 腸 温 は 中 を 除 く 安 静 時 および 暴 露 中 は 連 続 測 定 し 水 分 量 蒸 散 量 血 圧 脈 拍 は 安 静 時 と 暴 露 開 始 ( 直 後 )から 分 毎 に 皮 脂 量 は4 分 毎 に 評 価 した 体 重 は 実 験 前 後 に 測 定 し 差 を 求 めた なお 皮 膚 水 分 量 経 皮 水 分 蒸 散 量 および 皮 脂 量 の 測 定 部 位 は 頬 部 と 手 背 の2 箇 所 とした 主 観 申 告 として 温 冷 感 湿 度 感 不 快 感 気 流 感 自 覚 症 状 ( 顔 目 の 乾 燥 )について 安 静 時 と 暴 露 開 始 ( 直 後 )から 分 毎 に 行 った 実 験 は 午 前 午 後 それぞれ1 回 ずつ 行 い 同 一 被 験 者 は 同 じ 時 間 帯 で 実 施 した 3) 測 定 スケジュール 被 験 者 には 前 室 に1 分 以 上 滞 在 してもらい その 後 実 験 室 内 に 設 置 されている 浴 室 にて 入 浴 をしてもらった 後 8 分 間 各 条 件 の 温 熱 環 境 の 部 屋 に 滞 在 してもらい 測 定 を 行 った は 一 定 の 手 順 で 実 施 してもらった なお 浴 槽 の 湯 温 は4~41 とし 実 験 を 通 しての 浴 室 温 度 の 平 均 (SD)は 26.5(1.17) であった 暴 露 中 の 基 本 体 位 は 椅 座 位 とした
6-2. 検 証 結 果 1) 皮 膚 温 直 腸 温 図 17 に 平 均 皮 膚 温 の 経 時 変 化 の 平 均 値 (n=8)を 示 す 有 無 の 比 較 (F vs C) においては 直 腸 温 平 均 皮 膚 温 ともに 時 間 と 条 件 の 交 互 作 用 が 有 意 であり (p<.1) F が C に 比 べ 後 の 温 度 低 下 が 大 きかった 気 流 湿 度 の 影 響 に ついて 平 均 皮 膚 温 において 湿 度 と 気 流 お よび 時 間 の 交 互 作 用 が 有 意 であり (p<.1) 気 流 有 りまたは 湿 度 %の 条 件 が 皮 膚 温 の 低 下 が 大 きく 湿 度 6%の 気 流 無 し 条 件 の 皮 膚 温 低 下 が 最 も 小 さい 推 移 であった 図 18 に 平 均 皮 膚 温 の 変 化 量 ( 最 大 値 と 最 小 値 の 差 )を 条 件 毎 に 示 す 有 無 の 比 較 においては F が C よりもその 差 が 大 きく 平 均 皮 膚 温 では 条 件 間 に 有 意 差 が 認 められた 気 流 湿 度 の 影 響 についてみ ると 直 腸 温 は 湿 度 %が 6%に 比 べ 温 度 差 が 大 きかったが 統 計 的 には 有 意 でなか った 平 均 皮 膚 温 の 温 度 差 は 湿 度 %の 気 流 有 り 無 し 条 件 および 湿 度 6%でも 気 流 有 りの 場 合 は 大 きく 湿 度 6%の 気 流 無 しが 最 も 小 さかった 統 計 的 には 湿 度 と 気 流 の 交 互 作 用 が 有 意 で(p<.5) 下 位 検 定 の 結 果 6N と 6F 間 に 有 意 差 があっ た(p<.1) 2) 皮 膚 性 状 1 皮 膚 水 分 量 図 19 に 皮 膚 水 分 量 ( 頬 部 手 背 )の 経 時 的 変 化 の 平 均 値 (n=8)を 示 す 有 無 の 比 較 においては 頬 部 手 背 ともに 条 件 と 時 間 の 交 互 作 用 が 有 意 で( 頬 部 p<.5 手 背 p<.1) 頬 部 の 水 分 量 は F では 直 後 から 暴 露 時 間 中 C に 比 べ 低 値 を 推 移 し 手 背 は F が 分 以 降 C に 比 べ 低 値 を 推 移 した 両 群 とも に 各 湿 度 条 件 との 有 意 な 差 は 認 められなか った 気 流 湿 度 の 影 響 についてみると 頬 部 の 水 分 量 は F が 他 の 条 件 よりも 低 36. 前 室 35.5 35. 6 F N 34.5 6 N 34. 33.5 F 33. 32.5 C 32. 31.5 31. -1 5 1 4 5 6 7 8min n=8, (F vs C) time cond p<.1, (C 以 外 ) RH VA time p<.1 1.4 1.2 図 17 平 均 皮 膚 温 の 経 時 変 化 1..8.6.4.2. C F N 6F 6N n=8, RH VA p<.5 p<.1 ** p<.1 *** p<.1 図 18 平 均 皮 膚 温 の 変 化 量 ( 最 大 値 と 最 小 値 の 差 ) g/m 2 h 5 頬 部 45 4 35 C F N 25 6F 6N 15 rest min min 4min 6min 8min 65 手 背 部 55 45 35 25 15 5 rest min min 4min 6min 8min 頬 部 n=8, (F vs C) time cond p<.5, (C 以 外 )time RH p<.1 手 背 n=8, (F vs C) time cond p<.1, (C 以 外 )time p<.1,rh p<.1 図 19 皮 膚 水 分 量 の 経 時 的 変 化 値 を 推 移 していたが 条 件 間 の 有 意 な 差 は 認 められなかった 手 背 においては 暴 露 開 始 直 後 (min)に 上 昇 し 分 以 降 は 安 静 時 よりも 低 値 を 推 移 したが 時 間 経 過 と 湿 度 の 交 互 作 用 が 有 意 で(p<.5) 湿 度 % 条 件 が 6% 条 件 に 比 べ 低 値 を 推 移 していた ** ***
2 経 皮 水 分 蒸 散 量 図 に 経 皮 水 分 蒸 散 量 ( 頬 部 手 背 )の 経 時 的 変 化 の 平 均 値 (n=8)を 示 す 有 無 の 比 較 においては 頬 部 手 背 と もに 条 件 と 時 間 の 交 互 作 用 が 有 意 で( 頬 部 p<.5 手 背 p<.1) F は 直 後 (min)に 大 きく 上 昇 し その 後 低 下 する 推 移 であったが 暴 露 時 間 中 を 通 して C よりは 高 値 を 推 移 した 気 流 湿 度 の 影 響 についてみると 頬 部 は 湿 度 と 時 間 の 交 互 作 用 が 有 意 で(p<.1) 湿 度 % 条 件 が 6% 条 件 よりも 高 値 を 推 移 し ていた また 手 背 は すべての 条 件 で 直 後 は 大 きく 上 昇 し その 後 は 低 下 したが 湿 度 %の 方 が 高 値 である 傾 向 が 示 された (p<.1) 3) 主 観 申 告 図 21~23 に 主 観 申 告 の 経 時 変 化 の 平 均 値 (n=8)を 示 す 有 無 の 比 較 においては 全 身 温 冷 感 は F の 方 が C に 比 べ 暖 かい 側 を 推 移 してい た 湿 度 感 は F C ともに 暴 露 開 始 以 降 やや 乾 燥 している に 近 い 値 を 推 移 してお り 条 件 間 の 差 は 顕 著 でなかった 気 流 感 は F で 直 後 から 浴 後 分 までは C より も 気 流 感 の 自 覚 が 強 かった 自 覚 症 状 の 顔 の 乾 燥 は F が C に 比 べ 乾 燥 の 自 覚 が 顕 著 に 強 い 推 移 であった 目 の 乾 燥 は F で 入 浴 直 後 から 分 までは 自 覚 が 強 まったが そ の 後 は 弱 まる 推 移 であり 後 6 分 では C が F よりも 目 の 乾 燥 の 自 覚 が 強 かった 気 流 湿 度 の 影 響 についてみると 温 冷 感 は 気 流 の 主 効 果 が 有 意 で 気 流 有 り 条 件 が 無 し 条 件 よりも 涼 しい 側 の 申 告 で (p<.1) 湿 度 感 は 湿 度 の 主 効 果 が 有 意 で(p<.5) 湿 度 % 条 件 が 6% 条 件 よりも 乾 いている 側 の 申 告 であった 気 流 感 は 時 間 と 気 流 の 交 互 作 用 が 有 意 で 気 流 有 り 条 件 が 無 し 条 件 よ りも 気 流 の 自 覚 が 強 い 側 の 推 移 であった 顔 の 乾 燥 は 湿 度 の 違 いによる 影 響 が 見 られ % 条 件 が 6% 条 件 よりも 乾 燥 の 自 覚 が 強 く (p<.5) 目 の 乾 燥 は 気 流 の 影 響 が 有 意 で 気 流 ありの 条 件 が 無 しの 条 件 よりも 乾 燥 の 自 覚 が 強 い 側 の 推 移 であった(p<.5) A.U. 36 34 32 28 頬 部 N 26 24 22 rest min min 4min 6min 8min A.U. 38 36 手 背 部 34 32 28 26 24 22 rest min min 4min 6min 8min F C 6F 6N 頬 部 n=8, (F vs C) time cond p<.5, (C 以 外 )time p<.1 手 背 n=8, (F vs C) time cond p<.1, (C 以 外 )time RH p<.5 2.5 暖 かい 2. 1.5 1..5 どちらでも. ない -.5.4.2 どちらでも. ない -.2 -.4 -.6 -.8 やや 乾 いて いる -1. 図 経 皮 水 分 蒸 散 量 の 経 時 的 変 化 C F N 6F 6N -1. -1.5 涼 しい -2. rest min min 4min 6min 8min n=8, (F vs C) time cond p<.5, (C 以 外 )time p<.1, VA p<.1 図 21 全 身 温 冷 感 の 経 時 的 変 化 C F N 6F 6N rest min min 4min 6min 8min n=8, (F vs C) time p<.5, (C 以 外 )RH p<.5 図 22 湿 度 感 の 経 時 的 変 化 2.5 感 じる 2. 1.5 やや 感 じる 1..5 感 じない. rest min min 4min 6min 8min n=8, (F vs C) time p<.1, (C 以 外 )time VA p<.1,time RH p<.1 図 23 気 流 感 の 経 時 的 変 化 C F N 6F 6N
6-4.まとめ 1) の 影 響 1 により 後 の 人 間 の 皮 膚 の 水 分 量 が 低 下 し 皮 膚 蒸 散 量 が 上 昇 することから 皮 膚 の 乾 燥 が 助 長 され 易 いことがわかった 2 後 は 顔 の 乾 燥 に 対 する 自 覚 症 状 が 強 かった 3 気 流 速 度 が 速 く 低 湿 度 の 環 境 においては 体 温 調 節 反 応 に 及 ぼす 影 響 および 皮 膚 の 乾 燥 に 対 する 影 響 は 後 では 特 に 大 きくなることが 示 唆 された 2) 後 の 湿 度 気 流 の 影 響 1 低 湿 度 環 境 であること また 湿 度 が 高 くても 気 流 がある 場 合 には 後 の 皮 膚 温 を 低 下 させ やすく 体 温 調 節 機 能 への 負 担 が 増 すことが 示 された 一 般 的 によく 言 われる 湯 冷 め の 現 象 を 避 けるためには 気 流 ができるだけ 小 さく 低 湿 度 ではない 環 境 下 で 後 を 過 ごすこと が 重 要 であることが 示 唆 された 2 後 の 皮 膚 性 状 については 水 分 量 経 皮 水 分 蒸 散 量 皮 脂 量 ともに 気 流 の 違 いによる 影 響 は 顕 著 ではなく むしろ 湿 度 の 違 いによる 影 響 が 顕 著 に 関 与 するという 結 果 となった 3 主 観 反 応 については 気 流 感 に 加 え 全 身 温 冷 感 温 熱 的 不 快 感 は 気 流 速 度 の 影 響 が 有 意 であ り 気 流 速 度 が 速 いほど 涼 しい やや 不 快 の 申 告 であった 湿 度 の 違 いによる 影 響 は 湿 度 感 に 加 え 顔 の 乾 燥 の 自 覚 に 対 し 有 意 であった また 同 じ 乾 燥 でも 目 の 乾 燥 感 には 湿 度 ではなく 気 流 の 影 響 が 顕 著 であった 7.おわりに 冬 季 暖 房 時 における 低 湿 度 が 人 間 の 生 理 心 理 反 応 に 与 える 影 響 について 実 際 の 病 院 での 現 状 調 査 人 工 気 象 室 における 検 証 実 験 を 通 じて 調 査 研 究 を 行 なった 1) 高 齢 者 病 院 の 調 査 結 果 から 病 院 や 高 齢 者 施 設 における 加 湿 の 重 要 性 や その 方 法 について 改 善 の 必 要 性 が 確 認 できた 現 状 のエアコンでは 別 途 に 加 湿 器 を 設 置 しなければならず 補 給 水 等 の 維 持 管 理 も 煩 雑 であるので 加 湿 器 や 熱 交 換 器 等 を 内 蔵 した 空 調 機 の 設 置 が 望 まれる 2) 低 湿 度 環 境 下 において 長 時 間 のデスクワーク 等 により 体 を 動 かさない 場 合 下 肢 での 局 所 的 な 血 管 内 脱 水 や 血 液 粘 度 の 上 昇 が 促 進 され 血 栓 の 発 生 を 高 める 可 能 性 が 高 くなることが 示 唆 され 体 を 動 かし 水 分 補 給 を 十 分 摂 取 することが 大 切 であることが 示 された 3) 低 湿 度 において SCT およびまばたき 回 数 の 結 果 から 1% 以 下 の 湿 度 環 境 が 上 部 気 道 粘 膜 に % 以 下 の 湿 度 環 境 が 眼 球 粘 膜 の 活 動 性 に 何 らかの 影 響 を 与 えていると 考 えられる 高 齢 者 と 若 年 者 との 比 較 結 果 において 高 齢 者 は 若 年 者 に 比 べ 鼻 腔 内 の 線 毛 の 機 能 が 低 下 していること 環 境 の 変 化 に 対 し 感 受 性 が 鈍 いことが 示 され 高 齢 者 施 設 では 温 湿 度 を 適 切 に 管 理 することがより 重 要 であると 考 えられる 4) 湿 度 の 許 容 値 試 験 結 果 から 鼻 腔 粘 膜 の 乾 燥 を 防 ぐためには 相 対 湿 度 %より 高 い 湿 度 を 眼 の 粘 膜 や 皮 膚 の 乾 燥 を 防 ぐためには %より 高 い 湿 度 を 保 つことが 必 要 であることが 示 唆 された また 主 観 申 告 では 全 体 的 に 環 境 が 変 わった 直 後 にその 変 化 に 対 して 敏 感 に 反 応 をしたが その 後 は 次 第 に 馴 化 したことから 温 度 の 変 化 に 比 べて 湿 度 の 変 化 に 対 するヒトの 感 覚 は 鈍 感 であり 湿 度 の 変 化 を 実 感 しにくい そのためにも 冬 季 の 室 内 の 暖 房 時 には 温 湿 度 計 の 設 置 など 温 度 だけでなく 湿 度 を 客 観 的 にチェックするといった 配 慮 が 必 要 であると 考 えられる 5) 低 湿 度 環 境 であること また 湿 度 が 高 くても 気 流 がある 場 合 には 後 の 皮 膚 温 を 低 下 させや すく 体 温 調 節 機 能 の 負 担 が 増 し 皮 膚 の 乾 燥 に 対 する 影 響 が 大 きくなることが 示 された この ため 気 流 ができるだけ 小 さく 低 湿 度 ではない 環 境 下 で 後 を 過 ごすことが 心 身 共 に 快 適 にするために 重 要 であることが 示 唆 された