参 考 資 料 デジタル ネット 時 代 における 知 財 制 度 の 在 り 方 について 平 成 20 年 12 月 知 的 財 産 戦 略 本 部 デジタル ネット 時 代 における 知 財 制 度 専 門 調 査 会
デジタル ネット 時 代 に 対 応 した 知 財 制 度 の 構 築 世 界 最 高 水 準 の 情 報 通 信 環 境 をいかし 新 たなネットビジネスの 発 展 や 技 術 開 発 を 促 すとともに クリ エーターの 創 作 インセンティブを 高 める 知 財 制 度 を 構 築 する 情 報 環 境 の 変 革 従 来 型 メディア 社 会 本 屋 出 版 物 レコード 屋 レコード CD 劇 場 映 画 アナログ 波 放 送 番 組 国 内 の 消 費 者 デジタル ネットワーク 時 代 の 特 質 デジタル ネット 社 会 ユーザー 出 版 物 レコード CD 映 画 放 送 番 組 ユーザー コンテンツ デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ イ ン タ ー ネ ッ ト 世 界 の 消 費 者 大 量 の 情 報 蓄 積 流 通 が 可 能 誰 もが 容 易 にコンテンツを 作 成 発 信 することが 可 能 劣 化 しない 複 製 が 可 能 産 業 界 ( 検 討 事 項 ) 1 コンテンツの 流 通 促 進 方 策 ネット 上 のコンテンツ 流 通 促 進 のため ネット 利 用 に 伴 う 権 利 処 理 コストの 低 減 方 策 について 検 討 2 権 利 制 限 の 一 般 規 定 ( 日 本 版 フェアユース 規 定 )の 導 入 技 術 の 進 歩 や 新 たなビジネスモデルの 出 現 に 柔 軟 に 対 応 できる 法 制 度 とするため 日 本 版 フェアユー ス( 権 利 制 限 の 一 般 規 定 )の 導 入 について 検 討 3 ネット 上 に 流 通 する 違 法 コンテンツ 対 策 の 強 化 コンテンツ 産 業 に 深 刻 な 被 害 をもたらすネット 上 に 蔓 延 する 違 法 コンテンツ 対 策 について 検 討 1
Ⅰ. コンテンツの 流 通 促 進 方 策 ネット 上 のコンテンツ ビジネスについては 音 楽 など 一 部 のものについては 流 通 が 進 んでいるものの 特 に 放 送 映 画 等 の 動 画 コンテンツの 流 通 は 十 分 に 進 んでいない 流 通 が 進 まない 原 因 の 一 つとして 挙 げられているコンテン ツの 権 利 処 理 コストを 低 減 するための 新 たな 方 策 を 講 じるべきではないか 各 分 野 のネット 配 信 に 係 る 権 利 処 理 の 状 況 レコード CD レコード 製 作 者 映 画 映 画 製 作 者 PC 配 信 実 演 家 実 演 家 作 曲 家 作 詞 家 等 集 中 管 理 団 体 携 帯 配 信 PC 配 信 レコード 製 作 者 に 権 利 が 集 約 化 されており 権 利 処 理 につい ては 大 きな 問 題 がない 原 作 脚 本 音 楽 等 集 中 管 理 団 体 映 画 製 作 者 に 権 利 がほぼ 集 約 化 されており 権 利 処 理 に ついては 概 ね 問 題 ない IPTV 放 送 番 組 実 演 家 原 作 脚 本 音 楽 等 放 送 の 許 諾 のみ 集 中 管 理 団 体 放 送 事 業 者 改 めて 許 諾 が 必 要 PC 配 信 IPTV 製 作 段 階 においてその 後 の 利 用 を 含 めた 契 約 がほとんど 行 われてきておらず また 放 送 事 業 者 に 権 利 が 集 約 されていないため 契 約 ルールが 成 立 してい ない 分 野 や 団 体 に 属 していない 権 利 者 との 間 で 権 利 処 理 が 滞 っている ユーザー コンテンツ 二 次 創 作 ( 複 製 改 変 ) 公 開 ユーザー ユーザーが 創 作 するコンテンツについては 音 楽 の 集 中 管 理 団 体 があらかじめサイト 運 営 者 と 包 括 的 に 契 約 を 締 結 したり 映 像 コンテンツにおいても 二 次 利 用 可 能 なコンテンツを 積 極 的 に 提 供 したりするな どの 取 組 も 進 められており ユーザー コンテンツに ついて 権 利 者 からの 許 諾 が 得 られやすい 環 境 を 整 備 する 取 組 が 一 層 進 展 することが 期 待 される 2
検 討 結 果 契 約 慣 行 が 浸 透 していない 放 送 番 組 を 中 心 に 契 約 が 円 滑 に 行 われるような 取 組 の 促 進 を 図 るべきである 契 約 による 権 利 処 理 を 一 層 促 進 するための 取 組 を 早 急 に 進 める - 集 中 管 理 が 進 んでいない 分 野 において 権 利 者 団 体 等 が 主 導 して 権 利 の 集 中 管 理 を 進 める - ネット 上 の 利 用 に 関 する 契 約 ルールが 確 立 されていない 分 野 においては 関 係 省 庁 の 支 援 の 下 コンテンツの 特 性 に 応 じた 標 準 的 な 許 諾 条 件 を 契 約 ルールとして 定 める 放 送 事 業 者 に 対 しては 製 作 段 階 においてその 後 の 利 用 を 含 めた 契 約 を 行 うよう 努 力 を 促 す 契 約 促 進 の 取 組 による 権 利 処 理 の 進 捗 状 況 等 を 踏 まえ 多 角 的 観 点 から 適 宜 法 的 対 応 の 検 討 を 進 めるこ とが 必 要 である ヒアリングで 出 さ れた 法 的 対 応 案 コンテンツホルダーの 権 利 情 報 の 整 備 所 在 不 明 者 の 権 利 者 への 対 応 少 数 反 対 者 への 対 応 ネット 上 のコンテンツ 流 通 に 係 る 権 利 の 集 約 化 放 送 番 組 の 現 状 実 演 家 放 送 の 許 諾 のみ 放 送 事 業 者 改 めて 許 諾 が 必 要 PC 配 信 原 作 脚 本 音 楽 等 IPTV 円 滑 な 権 利 処 理 の 取 組 の 促 進 製 作 段 階 におけるその 後 の 利 用 を 含 めた 契 約 分 野 ごとの 集 中 管 理 を 促 進 集 中 管 理 権 利 者 契 約 ルールの 確 立 集 中 管 理 権 利 者 集 中 管 理 権 利 者 3
Ⅱ 権 利 制 限 の 一 般 規 定 ( 日 本 版 フェアユース 規 定 )の 導 入 近 年 のデジタル 技 術 や 情 報 通 信 技 術 の 発 展 を 背 景 に 従 来 想 定 されなかったコンテンツの 利 用 形 態 が 出 現 して いるが 現 行 の 著 作 権 法 は 個 別 具 体 の 事 例 に 沿 って 権 利 制 限 の 規 定 を 定 めているため これら 規 定 に 該 当 しな い 行 為 については たとえ 権 利 者 の 利 益 を 不 当 に 害 しないものであっても 形 式 的 には 違 法 となってしまう このため 技 術 の 進 歩 や 新 たなビジネスモデルの 出 現 に 柔 軟 に 対 応 できる 法 制 度 とすべきではないか 近 年 の 技 術 革 新 のスピードや 変 化 の 速 い 社 会 状 況 を 考 えれば 個 別 の 限 定 列 挙 方 式 のみで は 適 切 に 実 態 を 反 映 することは 難 しく 著 作 権 法 に 定 める 枠 組 みが 社 会 の 著 作 物 の 利 用 実 態 やニーズと 離 れたものとなってしまう ( 例 ) ネット 検 索 エンジンサービスに 伴 う 複 製 等 個 別 の 制 限 規 定 が 想 定 していない 新 規 分 野 への 技 術 開 発 や 事 業 活 動 に 対 して 萎 縮 効 果 を 及 ぼしている テキスト 画 像 複 製 編 集 等 注 ) ネット 検 索 エンジンサービスについては 知 的 財 産 推 進 計 画 2008にて 法 的 措 置 を 講 ずることを 決 定 した ユーザーが 撮 影 して 公 開 した 写 真 動 画 の 背 景 に 著 作 物 が 写 り 込 んでいた 場 合 などは 形 式 的 には 違 法 となる 4
検 討 結 果 権 利 制 限 の 一 般 規 定 ( 日 本 版 フェアユース 規 定 )の 導 入 について 個 別 の 限 定 列 挙 方 式 による 権 利 制 限 規 定 に 加 え 権 利 者 の 利 益 を 不 当 に 害 しないと 認 められる 一 定 の 範 囲 で 公 正 な 利 用 を 包 括 的 に 許 容 し 得 る 権 利 制 限 の 一 般 規 定 ( 日 本 版 フェアユース 規 定 )を 導 入 するこ とが 適 当 である ただし 一 般 規 定 の 導 入 に 当 たっては i) 日 本 人 の 法 意 識 等 に 照 らしリスクを 内 包 した 制 度 はあまり 活 用 されないのではないか ii) 様 々な 要 素 により 社 会 全 体 のシステムが 構 成 されており 経 済 的 効 果 について 過 大 な 期 待 をかける べきではないのではないか iii) 一 般 規 定 の 導 入 によりこれまで 裁 判 例 によって 違 法 であるとされてきた 行 為 が 当 然 にすべて 適 法 になるとの 誤 解 等 に 基 づいて 違 法 行 為 が 増 加 することが 懸 念 され 訴 訟 コストの 増 加 も 含 め 権 利 者 の 負 担 が 増 加 するのではないか iv) 法 体 系 全 体 との 関 係 や 諸 外 国 の 法 制 との 間 でバランスを 欠 くことはないか という 点 を 踏 まえつつ 実 際 の 規 定 振 りを 検 討 する 必 要 がある 個 別 規 定 と 一 般 規 定 の 関 係 利 用 者 側 の 予 見 可 能 性 や 適 正 迅 速 な 裁 判 の 確 立 という 観 点 からすれば 権 利 制 限 の 一 般 規 定 が 定 められた 後 も 適 法 と 取 り 扱 うのが 望 ましい 行 為 については 必 要 に 応 じて 権 利 制 限 の 個 別 規 定 を 追 加 し ていくことが 必 要 である 5
Ⅲ ネット 上 に 流 通 する 違 法 コンテンツへの 対 策 の 強 化 1.コンテンツの 技 術 的 な 制 限 手 段 の 回 避 に 対 する 規 制 の 在 り 方 について 映 像 の 視 聴 プログラムの 実 行 といったアクセスを 技 術 的 にコントロールする 手 段 (アクセス コントロール)を 回 避 す る 機 器 の 頒 布 等 に 関 連 する 経 済 的 損 失 は 違 法 コンテンツのダウンロード 等 と 相 まって 拡 大 しており これを 防 止 す るための 措 置 を 講 じるべきではないか ( 例 ) 回 避 装 置 によるゲームソフトの 被 害 ダウンロード 違 法 ゲームソフト ユーザー 正 規 の プレイヤー プレイ 不 可 能 違 法 アップロード ユーザー 検 討 結 果 正 規 の プレイヤー + 回 避 装 置 販 売 業 者 等 による 引 渡 し 等 プレイ 可 能 不 正 競 争 防 止 法 に 基 づく 規 制 対 象 の 機 器 等 は 限 定 また 損 害 賠 償 及 び 差 止 請 求 のみ 著 作 権 法 では アクセスコントロール 回 避 の 規 制 なし 現 行 制 度 の 実 効 性 の 検 証 を 行 い コンテンツの 経 済 的 価 値 を 損 なうような 行 為 については 国 民 の 適 切 な 情 報 アクセスの 機 会 の 確 保 や 国 際 的 な 動 向 にも 留 意 しつつ 規 制 の 在 り 方 を 見 直 し 違 法 ソフトの 蔓 延 を 防 止 するための 何 らかの 措 置 を 講 ずることが 必 要 である 6
Ⅲ ネット 上 に 流 通 する 違 法 コンテンツへの 対 策 の 強 化 2.インターネット サービス プロバイダの 責 任 の 在 り 方 について ネット 上 の 著 作 権 侵 害 行 為 の 発 生 時 においてインターネット サービス プロバイダが 負 う 損 害 賠 償 責 任 はプロバイ ダ 責 任 制 限 法 により 一 定 の 範 囲 で 免 責 されている しかし 動 画 投 稿 サイトや 携 帯 電 話 の 着 うた 違 法 サイトなどを 通 じたネット 上 での 新 しいタイプの 著 作 権 侵 害 が 増 大 しており プロバイダの 責 任 の 在 り 方 が 問 題 となっている このため 著 作 権 侵 害 の 対 策 及 び 健 全 な 通 信 サービスの 運 営 の 観 点 から プロバイダ 責 任 制 限 法 や 著 作 権 法 を 見 直 し 新 たな 方 策 を 講 じるべきではないか 特 定 電 気 通 信 役 務 提 供 者 の 損 害 賠 償 責 任 の 制 限 及 び 発 信 者 情 報 の 開 示 に 関 する 法 律 現 状 動 画 投 稿 サイト 等 運 営 事 業 者 責 任 の 範 囲? 違 法 ファイル 削 除 削 除 要 請 通 知 アップロード 侵 害 減 少? 著 作 権 者 検 討 結 果 プロバイダと 権 利 者 等 による 自 主 的 な 取 組 を 発 展 させることと 併 せて 制 度 上 の 見 直 しについても 検 討 を 行 い 実 効 性 のある 方 策 を 構 築 することが 必 要 例 えば 1 著 作 権 侵 害 防 止 の 観 点 から 動 画 投 稿 サイト 等 特 定 のプロバイ ダには 合 理 的 な 範 囲 で 標 準 的 なレベルの 技 術 的 な 侵 害 防 止 措 置 の 導 入 を 義 務 付 けること 2 著 作 権 侵 害 防 止 措 置 を 導 入 していること 等 一 定 の 要 件 を 満 たす 事 業 者 は 損 害 賠 償 請 求 や 差 止 請 求 などを 受 けないこととする 明 確 な 免 責 規 定 を 設 けることが 考 えられる 7
Ⅲ ネット 上 に 流 通 する 違 法 コンテンツへの 対 策 の 強 化 3. 著 作 権 法 におけるいわゆる 間 接 侵 害 への 対 応 について 近 年 のデジタル 技 術 やネットワーク 技 術 の 発 展 により コンテンツの 利 用 に 関 する 利 便 性 を 向 上 させるような 様 々なサービスや 機 器 が 登 場 しているが そのようなサービス 等 を 提 供 する 行 為 の 中 には 従 来 では 見 られなかった 侵 害 行 為 の 幇 助 的 な 行 為 も 存 在 する 一 方 現 行 の 著 作 権 法 には このような 行 為 への 差 止 請 求 に 関 する 明 確 な 規 定 はなく 従 来 の 裁 判 例 においても 一 致 した 認 識 がある とは 言 い 難 い このため ユーザーの 著 作 権 侵 害 を 助 長 するような 行 為 を 抑 制 し かつ 新 たなサービス 等 を 提 供 する 者 の 予 見 可 能 性 を 確 保 する ための 制 度 的 な 対 応 が 必 要 ではないか 検 討 結 果 誰 が 侵 害 者 であるかという 著 作 権 上 のいわゆる 間 接 侵 害 の 明 確 化 に 関 する 検 討 を 早 急 に 進 め 行 為 主 体 の 考 え 方 を 始 め 差 止 請 求 の 範 囲 を 明 確 にすること 等 が 必 要 である Ⅲ ネット 上 に 流 通 する 違 法 コンテンツへの 対 策 の 強 化 4. 国 際 的 な 制 度 調 和 等 について デジタル 化 やインターネットの 普 及 により 著 作 物 は 容 易 に 国 境 を 越 えて 流 通 するようになり 国 境 を 越 えた 著 作 権 侵 害 も 急 速 に 増 大 している しかし インターネットにおける 著 作 物 の 流 通 は 権 利 者 発 信 者 プロバイダ サーバーなどの 関 係 者 が 世 界 各 国 にまた がっている 上 各 国 の 法 制 度 は 異 なっており 著 作 権 者 が 権 利 執 行 を 行 うことは 容 易 ではない このため 著 作 権 侵 害 に 関 する 司 法 救 済 等 の 国 際 的 な 制 度 調 和 を 進 めるべきではないか 検 討 結 果 国 際 裁 判 管 轄 の 問 題 については 国 内 法 の 整 備 に 向 けた 検 討 が 進 められているところであり これを 踏 まえ 準 拠 法 も 含 めた 今 後 の 国 際 的 な 制 度 調 和 を 図 っていくことが 必 要 である 一 方 海 外 における 侵 害 対 策 については 現 在 関 係 国 地 域 と 協 議 が 行 われている 模 倣 品 海 賊 版 拡 散 防 止 条 約 (ACTA) ( 仮 称 ) の 早 期 実 現 に 向 けた 取 組 を 進 めるとともに 海 外 の 政 府 や 事 業 者 に 対 し 関 係 省 庁 と 民 間 が 連 携 して 日 本 のコンテンツ の 適 正 な 保 護 に 向 けた 制 度 面 運 用 面 での 改 善 を 行 うよう 引 き 続 き 積 極 的 に 働 き 掛 けることが 必 要 である 8