第 1 章 序 論 1 経 緯 及 び 背 景 平 成 16 年 (2004 年 )6 月 武 力 攻 撃 事 態 等 における 国 民 の 保 護 のための 措 置 に 関 する 法 律 ( 以 下 国 民 保 護 法 という )が 制 定 され 同 法 に 基 づき 平 成 17 年 度 (2005 年 度 ) 末 までに 国 の 行 政 機 関 及 び 全 国 の 都 道 府 県 において 国 民 保 護 計 画 が 策 定 された これを 受 けて 全 国 のほとんどの 市 町 村 において 消 防 庁 が 示 した 市 町 村 国 民 保 護 モデル 計 画 を 参 考 に 都 道 府 県 国 民 保 護 計 画 に 基 づく 国 民 保 護 計 画 が 策 定 されている 国 は この 計 画 策 定 に 当 たり 国 民 の 保 護 に 関 する 基 本 指 針 ( 平 成 1 7 年 (2005 年 )3 月 閣 議 決 定 ) や 市 町 村 国 民 保 護 モデル 計 画 ( 平 成 18 年 (2006 年 ) 1 月 消 防 庁 作 成 ) を 示 し 想 定 される 武 力 攻 撃 事 態 の 一 つとして 核 兵 器 による 攻 撃 を 挙 げているが 核 兵 器 攻 撃 がもたらす 具 体 的 な 被 害 想 定 やこれに 基 づく 対 応 策 は 示 されていない このままでは 核 兵 器 のもたらす 惨 害 について 大 きな 誤 解 を 定 着 させてしまうお それがあると 考 えた 広 島 市 は 誤 解 を 払 拭 するため 国 の 責 任 において 具 体 的 な 被 害 想 定 を 行 い その 結 果 及 び 対 応 策 を 示 すよう 求 めてきたが 国 からの 回 答 が 得 られなかった このため 人 類 史 上 最 初 の 原 子 爆 弾 投 下 による 惨 害 を 受 けた 都 市 の 使 命 として 広 島 市 国 民 保 護 計 画 の 策 定 に 当 たり 広 島 市 国 民 保 護 協 議 会 に 核 兵 器 攻 撃 被 害 想 定 専 門 部 会 を 設 け 独 自 に 被 害 想 定 を 行 うことにした このたび その 報 告 をとりまとめた 2 本 書 の 構 成 本 報 告 では (1) まず 被 害 想 定 とこれに 基 づく 対 処 措 置 の 評 価 に 先 立 って 第 2 章 で 核 兵 器 の 脅 威 に 依 然 さらされている 世 界 の 現 状 を 第 3 章 で 核 兵 器 攻 撃 がもたらす 影 響 に ついて それぞれ 概 観 する (2) その 上 で 第 4 章 において 今 回 選 択 した4つの 仮 想 的 なケースについて 被 害 想 定 の 結 果 を 紹 介 するとともに 対 処 上 の 留 意 点 を 掲 げる (3) そして 第 4 章 で 示 した 結 果 に 基 づき 国 の 基 本 指 針 その 他 に 示 されている 対 処 措 置 の 評 価 等 を 第 5 章 で 総 合 的 に 行 う (4) 第 6 章 では 対 処 措 置 の 有 効 性 等 に 対 する 当 専 門 部 会 としての 結 論 を 示 す 1
第 2 章 核 兵 器 を 巡 る 現 状 と 脅 威 核 兵 器 攻 撃 による 被 害 想 定 を 行 う 前 提 として 核 兵 器 を 巡 る 世 界 の 現 状 について 要 約 しておく 1 長 期 核 保 有 の 動 向 公 然 たる 核 保 有 国 ( 米 国 ロシア イギリス フランス 中 国 の5か 国 ) は 核 兵 器 は 自 国 の 安 全 保 障 のために 不 可 欠 であるとして 核 兵 器 保 有 を 長 期 にわたって 継 続 する 意 思 を 表 明 している このような 長 期 保 有 の 構 えの 中 で 現 在 地 球 上 には 約 26000 発 の 核 弾 頭 が 存 在 していると 考 えられる このことは 核 不 拡 散 条 約 (NPT) 1 非 加 盟 の 核 保 有 国 (インド パキスタン イスラエ ルの3か 国 ) や 核 保 有 主 張 国 ( 朝 鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 ( 北 朝 鮮 )) に 対 して 同 様 な 長 期 保 有 や 継 続 保 有 の 思 考 を 促 している 可 能 性 がある さらには 非 国 家 主 体 (テロ 組 織 などの 国 家 以 外 の 集 団 )が 核 兵 器 保 有 を 目 指 す 一 誘 因 ともなっているであろ う 地 球 上 の 核 弾 頭 全 データ 図 説 : 世 界 の 核 兵 器 保 有 国 2007 年 1 月 出 典 :NPO 法 人 ピースデポ イアブック 核 軍 縮 平 和 2007 1 米 国 ロシア イギリス フランス 中 国 の5か 国 を 核 兵 器 国 と 定 め 核 兵 器 国 以 外 への 核 兵 器 の 拡 散 防 止 各 締 結 国 による 誠 実 に 核 軍 縮 交 渉 を 行 う 義 務 国 際 原 子 力 機 関 の 保 障 措 置 を 受 諾 する 義 務 等 を 規 定 正 式 名 称 は 核 兵 器 の 不 拡 散 に 関 する 条 約 昭 和 45 年 (1970 年 )に 発 効 日 本 は 昭 和 51 年 (1976 年 ) 批 准 締 結 国 は 現 在 190か 国 ( 平 成 19 年 (2007 年 )5 月 現 在 ) 非 締 結 国 はインド パキスタン イスラエル 北 朝 鮮 は 平 成 15 年 (2003 年 ) 1 月 に 脱 退 を 表 明 2
2 核 兵 器 使 用 の 可 能 性 の 増 大 公 然 たる 核 保 有 国 は 核 兵 器 の 使 用 を 前 提 とした 政 策 をとっている 抑 止 が 働 く ためには 抑 止 力 が 使 用 可 能 であり 実 際 に 使 用 されるものであり 使 用 された 場 合 に は 効 果 的 である という 保 証 がなければならない というのが 核 抑 止 に 関 する 初 歩 的 な 理 論 であることから 考 えると 核 保 有 国 が 使 用 を 前 提 として 体 制 を 整 えていることは 当 然 のことと 考 えられる なかでも 米 国 とロシアは 警 報 即 発 射 という 冷 戦 時 代 に 敶 かれた 高 度 な 警 戒 体 制 を 今 日 も 維 持 していると 考 えられており 米 国 は1,600~1,700 発 ロシアは1,000~ 1,200 発 の 核 弾 頭 を 一 触 即 発 の 発 射 体 制 に 置 いていると 推 定 される このような 状 況 に 加 えて 平 成 13 年 (2001 年 )の9.11 事 件 以 来 核 兵 器 を 使 用 す る しきい が 低 くなったと 懸 念 されている 米 国 では 抑 止 目 的 ではなくて 戦 場 で 実 際 に 使 うことを 目 的 とした 核 兵 器 の 開 発 が 計 画 され 通 常 兵 器 と 核 兵 器 を 一 体 化 して 運 用 するグローバル ストライク 戦 略 2 が 採 択 された また 同 国 が 核 兵 器 を 先 制 攻 撃 手 段 として 用 いる 可 能 性 が 暴 露 された さらに 対 テロ 戦 争 の 中 で 米 国 は 非 核 保 有 国 で あっても 大 量 破 壊 兵 器 の 使 用 への 報 復 には 核 兵 器 攻 撃 を 辞 さないとの 姿 勢 を 示 し ている フランスも 同 様 である 3 事 故 あるいは 誤 謬 による 核 兵 器 攻 撃 核 兵 器 の 政 策 的 な 使 用 の 可 能 性 が 増 加 していることとは 別 に 事 故 や 誤 謬 の 結 果 と して 核 兵 器 攻 撃 が 起 こり 得 る 核 兵 器 が 存 続 し 使 用 可 能 状 態 に 保 たれている 限 り こ のような 人 為 的 な 悲 劇 の 可 能 性 は 否 定 できない 警 報 即 発 射 体 制 がとられていることによって 誤 った 警 報 を 核 ミサイル 攻 撃 と 誤 認 して 核 のボタンが 押 されてしまう 危 険 がある また グローバル ストライク 戦 略 が 核 兵 器 攻 撃 の 誤 判 断 を 生 む 可 能 性 を 高 めている 3 2 グローバル ストライク 戦 略 は 米 国 政 府 の 核 態 勢 の 見 直 し(Nuclear Posture Review) ( 平 成 14 年 (2002 年 )1 月 発 表 )に 端 を 発 し 地 球 規 模 の 長 距 離 精 密 攻 撃 の 能 力 を 核 非 核 一 体 の 概 念 として 設 定 し その 実 行 体 制 を 築 くものである 一 つの 表 れとして 潜 水 艦 発 射 トライ デント ミサイルの 核 弾 頭 の 一 部 を 通 常 弾 頭 に 置 き 換 える 計 画 が 提 案 された このような 考 え 方 は 核 兵 器 と 通 常 兵 器 の 間 の 区 分 をあいまいにし 核 兵 器 の 使 用 の しきい を 低 くする 結 果 を 招 くと 指 摘 されてきた 3 潜 水 艦 発 射 弾 道 ミサイルの 一 部 を 核 弾 頭 から 通 常 弾 頭 に 置 き 換 えて 瞬 時 の 長 距 離 精 密 攻 撃 を 行 う 計 画 が 実 行 されると 攻 撃 を 受 ける 側 は 通 常 兵 器 攻 撃 を 核 兵 器 攻 撃 と 理 解 し 反 撃 の 行 動 に 出 る 危 険 が 増 大 する 現 在 米 国 とロシアや 中 国 では 事 前 通 告 制 度 ができているが グローバル ストライクが 実 行 されるとき 事 前 通 告 の 時 間 的 余 裕 がなかったり 通 告 が 適 正 に 伝 達 されないような 事 故 が 否 定 できない さらに 相 手 が 新 しい 核 保 有 国 とりわけ 北 朝 鮮 の 場 合 などは そのような 前 提 が 存 在 しないだけ より 危 険 が 大 きいことが 指 摘 されている 3
4 非 国 家 主 体 の 核 保 有 問 題 非 国 家 主 体 が 核 兵 器 を 取 得 する 可 能 性 については その 危 険 が 強 く 指 摘 されてい るが 現 時 点 における 予 防 努 力 は 非 国 家 主 体 が 核 兵 器 を 取 得 するに 至 る 初 期 ルー ト( 盗 む 購 入 する 自 力 で 製 造 する)を 断 つことに 集 中 している 米 国 外 交 問 題 評 議 会 の 最 新 の 報 告 書 予 防 努 力 の 具 体 例 (ルートを 遮 断 するための 対 策 ) 盗 む 盗 まれないための 管 理 体 制 の 強 化 と 盗 んでも 使 用 できない 工 夫 を 核 兵 器 に 施 す 購 入 する 様 々な 外 交 努 力 の 他 に 使 用 された 核 兵 器 から 核 兵 器 の 起 源 が 特 定 できるような 手 段 が 研 究 されている 自 力 で 製 造 核 兵 器 製 造 に 不 可 欠 であるプルトニウムか 高 濃 縮 ウランの 入 する 手 経 路 を 断 つ 5 日 本 への 核 兵 器 攻 撃 のシナリオ このように 核 兵 器 が 人 類 に 与 えている 脅 威 は 極 めて 大 きい それは 人 類 全 体 が 巻 き 込 まれる 可 能 性 のある 脅 威 である ひとたびいずれかの 国 に 核 兵 器 が 使 用 されれ ば その 国 と 近 隣 に 直 接 的 な 大 被 害 が 発 生 するのみならず その 威 力 の 故 に 様 々な 予 測 のつかない 連 鎖 を 引 き 起 こすと 考 えられるからである 別 の 国 への 新 しい 核 兵 器 攻 撃 を 招 く 可 能 性 を 含 め 世 界 は 軍 事 的 政 治 的 経 済 的 社 会 的 文 化 的 な 甚 大 な 混 乱 と 不 安 定 に 陥 ることが 考 えられる 核 兵 器 攻 撃 という 選 択 が 単 純 に2 国 間 の 関 係 が 原 因 となって 発 生 することは 考 え にくく 日 本 のみを 取 り 出 して 核 兵 器 攻 撃 を 受 ける 可 能 性 を 議 論 するという 問 題 設 定 は 必 ずしも 適 切 ではない ここでは そのような 前 提 を 踏 まえた 上 で 日 本 が 直 接 の 核 兵 器 攻 撃 の 標 的 となるシナリオを 大 局 的 に 整 理 しておく (1) 国 家 主 体 による 攻 撃 日 本 が 核 兵 器 攻 撃 を 受 ける 可 能 性 があるとすれば それは 世 界 で 最 も 強 力 な 核 保 有 国 であり かつ 攻 撃 的 な 核 兵 器 政 策 をとる 米 国 と 同 盟 関 係 にあることに 関 わってい ることが 多 いであろう (2) 非 国 家 主 体 による 攻 撃 日 本 を 対 象 にした 非 国 家 主 体 による 攻 撃 の 可 能 性 について 可 能 性 はゼロである と 誰 しも 断 言 はできないであろう 理 論 的 な 想 定 としては 米 国 が 主 導 する 対 テロ 戦 争 への 日 本 の 協 力 を 根 拠 とした 攻 撃 日 本 が 主 導 する 政 策 への 敵 意 の 蓄 積 としての 攻 撃 などが 考 えられる 4
第 3 章 核 兵 器 による 被 害 発 生 のメカニズム 1 核 兵 器 とは 核 兵 器 とは 爆 発 エネルギーとして 原 子 核 分 裂 反 応 や 原 子 核 融 合 反 応 によって 放 出 される 核 エネルギーを 用 いる 兵 器 の 総 称 である 原 子 核 分 裂 反 応 を 利 用 する 核 兵 器 は 原 子 爆 弾 ( 原 爆 ) 核 分 裂 反 応 による 高 温 高 圧 で 水 素 の 核 融 合 反 応 を 起 こさ せ 巨 大 な 爆 発 エネルギーを 発 生 させるタイプの 核 兵 器 は 水 素 爆 弾 ( 水 爆 )と 呼 ば れる 広 島 原 爆 の 威 力 は16キロトン 長 崎 原 爆 は21キロトン これまでに 行 われた 核 爆 発 実 験 での 最 大 威 力 は 約 58メガトン( 広 島 原 爆 の 約 3,600 倍 第 二 次 世 界 大 戦 約 19 回 分 )であった 原 爆 の 場 合 全 核 爆 発 エネルギーの 約 15%が 放 射 線 約 50%が 衝 撃 波 と 爆 風 約 35%が 熱 線 として 放 出 される 核 分 裂 の 原 理 模 式 図 核 爆 発 エネルギー ( 原 爆 の 場 合 ) 熱 線 ( 約 35%) 放 射 線 ( 約 15%) 衝 撃 波 と 爆 風 ( 約 50%) 2 放 射 線 による 被 害 核 兵 器 攻 撃 による 放 射 線 被 曝 は 以 下 の4つに 起 因 する 区 分 被 害 1 2 3 4 核 兵 器 の 起 爆 後 1 分 程 度 以 内 に 放 出 され 体 の 外 部 からの 被 曝 ( 外 部 被 曝 ) る 中 性 子 線 やガンマ 線 などの 初 期 放 射 線 中 性 子 線 によって 土 や 建 材 中 に 生 成 され る 放 射 性 核 種 から 放 出 される 残 留 放 射 線 外 部 被 曝 及 び 体 内 への 摂 取 に 伴 降 下 した 核 分 裂 生 成 物 から 放 出 される 残 う 体 の 内 部 からの 被 曝 ( 内 部 被 曝 ) 留 放 射 線 未 分 裂 の 核 物 質 の 降 下 に 由 来 する 残 留 内 部 被 曝 放 射 線 5
放 射 線 がもたらす 障 害 は 遅 くとも 被 曝 後 数 か 月 以 内 に 現 れる 急 性 放 射 線 症 ( 急 性 障 害 )と 長 期 間 の 潜 伏 期 間 を 経 て 現 れる 後 障 害 ( 晩 発 障 害 )に 分 けられる 急 性 放 射 線 症 は 遺 伝 子 の 損 傷 がもたらす 細 胞 死 により 起 こり 線 量 が 大 きくなれ ばなるほど 症 状 は 重 くなる また 放 射 線 に 傷 つけられた 遺 伝 子 による 細 胞 の 突 然 変 異 は それぞれの 臓 器 に 対 応 した 潜 伏 期 を 経 て 多 くの 被 曝 者 の 様 々な 健 康 障 害 がんなどの 後 障 害 の 誘 因 となる 区 分 具 体 例 急 性 放 射 線 症 ( 急 性 障 害 ) 吐 き 気 食 欲 不 振 全 身 のけだるさ 発 熱 下 痢 吐 血 血 尿 など 後 障 害 ( 晩 発 障 害 ) ケロイド 白 内 障 悪 性 腫 瘍 (がん)など 広 島 の 原 爆 被 害 被 爆 した 兵 士 の 脱 毛 皮 下 出 血 斑 1945.8 月 末 木 村 権 一 撮 影 両 腕 のケロイド 背 面 から 熱 線 を 受 けた 背 部 の 射 熱 傷 カバンを 掛 けていた 跡 が 残 っている ( 米 国 返 還 写 真 ) 3 爆 風 による 被 害 < 衝 撃 波 > 核 反 応 によって 形 成 された 高 温 の 火 球 は 音 速 を 超 える 速 さで 膨 張 するため その 先 端 で 衝 撃 波 が 発 生 する 核 爆 発 の 直 後 は 形 成 される 火 球 とともに 成 長 し やがて 火 球 の 表 面 を 離 脱 して 同 心 球 状 に 伝 播 して 行 く 衝 撃 波 は 圧 力 波 で それが 到 達 した 場 所 にあるあらゆるものを 押 しつぶすように 作 用 する < 爆 風 > 衝 撃 波 に 続 いて 火 球 の 急 速 な 膨 張 に 伴 って 押 し 出 される 空 気 の 流 れが 爆 風 とな って 吹 き 荒 れ 周 囲 の 建 物 を 破 壊 し 人 間 を 殺 傷 する 爆 風 は 空 気 の 運 動 によって 生 じる 圧 力 によって その 進 路 に 存 在 するものを 吹 き 払 う 6
爆 風 が 人 体 に 及 ぼす 影 響 には 肺 の 損 傷 や 鼓 膜 の 破 裂 内 臓 や 眼 球 の 脱 出 など の 直 接 的 影 響 と 爆 風 により 体 が 吹 き 飛 ばされて 地 面 や 建 物 等 に 衝 突 したり 建 物 の 崩 壊 に 巻 き 込 まれたり あるいは 爆 風 により 飛 散 した 物 体 が 人 体 に 衝 突 したりすること によって 生 じる 間 接 的 影 響 がある 広 島 の 原 爆 被 害 下 村 時 計 店 強 い 爆 風 を 受 けて 倒 れ 込 み 1 階 部 分 は 押 しつぶされ 平 建 てに 見 える 1945.10 月 林 重 男 撮 影 広 島 瓦 斯 本 社 爆 心 方 向 の 壁 天 井 は 爆 風 で 崩 壊 し 全 焼 した 1945.8.20 尾 木 正 己 撮 影 4 熱 線 による 被 害 高 温 の 火 球 は 極 めて 強 力 な 閃 光 と 熱 線 を 放 出 する このうち 熱 線 は 爆 心 近 く に 急 激 な 温 度 上 昇 を 引 き 起 こして 人 間 に 第 Ⅰ 度 から 第 Ⅳ 度 の 熱 傷 を 生 じさせ あらゆ る 可 燃 物 を 燃 焼 させ 火 災 を 発 生 させる 場 合 によっては 多 数 の 火 災 が 一 つに 合 流 し た 火 事 嵐 が 発 生 する 区 分 症 状 第 Ⅰ 度 皮 膚 が 赤 くなる 紅 斑 第 Ⅱ 度 水 疱 形 成 第 Ⅲ 度 潰 瘍 や 壊 死 第 Ⅳ 度 炭 化 広 島 の 原 爆 被 害 熱 傷 の 女 性 1945.8.7 尾 糠 政 美 撮 影 7
5 電 磁 パルスその 他 による 被 害 < 電 磁 パルス 等 の 影 響 > ガンマ 線 と 大 気 との 相 互 作 用 に 伴 い 発 生 する 電 磁 パルスは 広 範 囲 の 電 子 機 器 を 使 用 不 能 に 陥 れ 結 果 として 通 信 管 制 業 務 に 重 大 な 支 障 を 生 じる 可 能 性 がある また 核 兵 器 攻 撃 後 の 地 域 社 会 は 電 磁 パルスによる 電 子 的 情 報 手 段 の 麻 痺 の 影 響 も 重 なり 流 言 飛 語 が 最 も 発 生 しやすい 条 件 を 備 えている < 精 神 的 社 会 的 影 響 > 加 えて 核 兵 器 攻 撃 は 人 間 に 精 神 的 異 常 や 自 殺 心 的 外 傷 後 ストレス 障 害 といっ た 精 神 的 影 響 をもたらす また 核 兵 器 攻 撃 によって 社 会 的 な 経 済 基 盤 や 生 産 基 盤 が 根 こそぎ 破 壊 されるだけでなく 行 政 機 能 が 拠 って 立 つ 様 々な 情 報 もほとんど 完 全 に 失 われるため 地 域 社 会 の 再 建 は 想 像 を 絶 する 困 難 に 直 面 する さらに 被 爆 者 は 放 射 線 爆 風 熱 線 による 身 体 的 影 響 を 受 けるだけでなく 遺 伝 的 影 響 の 不 安 に 苛 まれ 社 会 的 差 別 や 偏 見 にさらされるなど 生 活 や 就 業 の 上 でも 様 々な 困 難 に 直 面 する 核 兵 器 攻 撃 は 何 十 年 もの 間 被 爆 者 たちに 身 体 的 精 神 的 社 会 的 困 難 をもたら すことになる 第 4 章 核 兵 器 攻 撃 による 被 害 想 定 1 被 害 想 定 の 前 提 条 件 ここでは 62 年 前 の 状 況 に 準 拠 しつつ 核 兵 器 保 有 国 が 保 有 する 核 兵 器 の 状 況 等 を 勘 案 し 当 時 と 同 じ 爆 心 地 で 夏 (8 月 )の 平 日 の 昼 間 ( 晴 れ)という 条 件 の 下 4つの 仮 想 的 なケースについて 被 害 想 定 を 行 った < 想 定 した4つの 核 兵 器 攻 撃 > 形 態 威 力 爆 発 高 度 種 類 選 択 理 由 空 中 16キロトン 600m 原 子 爆 弾 62 年 前 との 比 較 のため 選 択 爆 発 1メガトン 2,400m 水 素 爆 弾 最 大 クラスの 核 兵 器 として 選 択 地 表 16キロトン 1m 原 子 爆 弾 空 中 爆 発 との 比 較 のため 選 択 爆 発 1キロトン 1m 原 子 爆 弾 最 小 クラスの 核 兵 器 として 選 択 この 被 害 についての 試 算 値 は 控 えめに 見 積 もったとしても これぐらいの 被 害 は 出 るだろうというものである 条 件 によりその 被 害 は 小 さくなる 場 合 もあるが さらに 数 倍 以 上 の 被 害 となるかもしれないことは 覚 悟 せざるを 得 ない 8