物 理 学 序 論 2 ( 電 磁 気 学 入 門 ) 第 6 講 151106 静 電 場 のまとめ 1
電 磁 気 で 使 う 基 本 用 語 電 荷 : 電 気 力 の 源. 正 負 の 区 別 があり, 同 符 号 間 では 反 発 力, 異 符 号 間 では 引 力 が 働 く. 電 場 : 空 間 に 広 がる 力 のベクトル 場 で E(r) と 表 し, 地 点 r に 電 荷 q を 置 くと F = qe(r) の 力 が 働 く. 電 界 とも 言 う. 電 気 力 線 : 接 線 がその 場 の 電 場 の 方 向 を 向 く 線. 電 場 ベクトルをつなげた 線 といってもよい 電 気 力 線 数 : N = Q/e 0 : 電 場 の 強 さは 電 気 力 線 数 密 度 となる. 電 束 密 度 : D =e 0 E : 電 気 力 線 を 流 線 のように 見 なすときの 流 束 密 度. 電 束 変 位 とも 言 う ( 状 況 によっては e 0 を 省 いて 定 義 することもある) 電 束 : S D n ds : 面 S を 通 過 する 電 束 量 電 位 : ある 点 から 基 準 点 まで 電 場 が 単 位 電 荷 を 動 かすのに 必 要 な 仕 事 量 静 電 場 エネルギー: 静 電 場 が 持 つエネルギー 密 度 は u= e 0 E 2 /2 導 体 : 電 気 を 自 由 に 通 す 物 体. 導 体 内 では 電 場 はゼロで, 電 位 は 一 定, 電 場 は 表 面 に 垂 直 である 誘 電 体 : 電 気 を 通 さない 絶 縁 体. 電 場 を 掛 けると 両 端 に 正 負 の 電 荷 が 現 れる( 分 極 する). 比 誘 電 率 k : 真 空 中 で E 0 であった 電 場 が, 誘 電 体 中 では E = E 0 /k となる. 誘 電 率 : e = e 0 k コンデンサー: 英 語 ではキャパシター. 基 本 的 には 二 組 の 導 体 に 正 負 の 電 荷 を 蓄 えたもの ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- フラックス( 流 束 ): ある 面 S を 通 って 流 れる 単 位 時 間 あたりの 流 体 体 積 F = v S=vScos q ( 注 : 面 に 垂 直 な 速 度 成 分 のみ 寄 与 する). 流 束 密 度 : 単 位 面 積 あたりの 流 束 (これもフラックスという) 発 散 : E =r/e 0 のとき, 左 辺 をベクトル E の 発 散, 右 辺 を 湧 き 出 しという 微 小 体 積 からの 流 出 量 が 体 積 中 の 湧 き 出 し 量 に 等 しいという 意 味 回 転 : B =m 0 i のとき, 左 辺 を ベクトルB の 回 転 という 2 方 向 微 分 : s f(r) = (s x x +s y y +s y z ) f(r): s 方 向 の 微 分 : ( 注 : 発 散 は E のE 方 向 微 分 である)
クーロンの 法 則 電 場 2つの 点 電 荷 に 働 く 力 N 個 の 電 荷 が 位 置 r 点 にある 電 重 荷 ね q 合 に わせの 及 ぼす 原 力 理 電 位 静 電 エネルギー N 個 の 点 電 荷 系 連 続 分 布 の 電 荷 電 場 電 場 の 持 つエネルギー 密 度 ポアソンの 方 程 式 コンピューターによる 数 値 解 法 が 可 能 3
クーロンの 法 則 : 電 場 の 計 算 例 (1) 長 い 線 電 荷 直 接 電 場 を 計 算 した 例 円 盤 電 荷 ポテンシャルから 電 場 を 計 算 した 例 円 盤 電 荷 の 中 心 軸 上 の 電 位 と 電 場 4
クーロンの 法 則 : 電 位 と 電 場 の 計 算 例 (2) 電 気 双 極 子 : 赤 線 : 電 気 力 線 黒 線 : 等 電 位 線 一 様 な 電 場 の 中 に 置 かれた 双 極 子 には 力 のモーメントが 働 く 双 極 子 そのものには 力 が 働 かない 非 一 様 な 電 場 の 中 では 双 極 子 全 体 を 動 かす 力 が 働 く 右 図 はトルクと 全 体 を 動 かす 力 の 両 方 が 働 く 例 5
静 電 場 のマクスウェルの 方 程 式 ガウスの 法 則 の 意 味 : 電 場 の 法 線 成 分 を 閉 曲 面 について 積 分 した 全 電 束 ( e 0 ) は, 閉 曲 面 内 の 全 電 荷 ( e 0 ) に 等 しい. ガウスの 法 則 はクーロンの 法 則 と 数 学 的 に 同 等. クーロンの 法 則 が 電 荷 間 の 関 係 式 であるのにたいし, ガウスの 法 則 は 電 場 を 記 述 する 式 となっている. 静 電 場 のマクスウェルの 第 2 方 程 式 (= 電 場 は 渦 無 しという 名 無 しの 法 則 )の 意 味 は, 静 電 力 が 保 存 力 であるということ. 保 存 力 とはポテンシャルから 導 ける 力 のこと 数 学 的 には 積 分 可 能 条 件 ということもある. 保 存 力 とは 仕 事 が 道 筋 によらない 力 = 仕 事 の 閉 回 路 線 積 分 がゼロとなるような 力 保 存 力 とは 至 る 所 で 回 転 がゼロになる 力 でもある 電 場 は 渦 無 し( 回 転 がゼロ)は, ポテンシャルの 存 在 (E= - f ) を 保 証 する. ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 微 分 型 数 式 の 解 釈 は 積 分 型 と 同 じ.ただし 微 小 体 積 面 積 に 適 用 する. 6
電 場 E が, E = - W と 書 ける 条 件 : ( 数 学 での 教 え 方 ) 微 小 仕 事 量 : が 関 数 W(x,yz) の 全 微 分 であること 言 い 換 えれば 積 分 して W(x,y,z) という 仕 事 関 数 が 定 義 できることの 必 要 十 分 条 件 が E = 0 ここでは 必 要 条 件 のみを 記 す 仕 事 関 数 W が 定 義 できれば Wの 全 微 分 は と 書 ける このとき W の 微 分 が 連 続 微 分 可 能 であれば を 満 たさなければならない この 条 件 を E = - W (E x = - W/ x, E y = - W/ y, ) を 使 って 書 き 直 せば E = 0 となる これを 積 分 可 能 条 件 という 7
ベクトルの 経 路 方 向 成 分 を 経 路 に 沿 って 足 し 上 げた 量 ベクトルの 法 線 成 分 を 2 次 曲 面 について 足 し 上 げた 量 キーポイント: 電 磁 気 学 の 線 積 分 では 接 線 成 分 E l dl= E dl 面 積 分 では 法 線 成 分 E n ds = E ds が 被 積 分 変 数 となる. 積 分 型 と 微 分 型 を 橋 渡 しする 数 学 の 定 理 面 積 分 体 積 分 線 積 分 面 積 分 8
ベクトル 演 算 式 の 理 解 ガウスの 法 則 の 流 体 解 釈 : ( 類 似 現 象 で 数 式 の 理 解 を 助 ける) クーロンの 法 則 を 書 き 直 すと 泉 = 湧 き 出 し 口 池 e 0 E n を 曲 面 から 流 出 する 単 位 面 積 あたりの 流 量 (フラックス) とみなせば, Q は 単 位 時 間 あたりの 湧 き 出 し 量 と 解 釈 できる. ガウスの 法 則 は 次 の 記 述 と 同 等 : 閉 曲 面 から 流 出 する 全 流 束 は, 閉 曲 面 内 の 湧 き 出 し 量 に 等 しい そうすれば, 球 面 を 任 意 の 閉 曲 面 に 変 えてもガウスの 法 則 が 成 り 立 つことは 容 易 に 理 解 できる. (ただし, 正 しいフラックスを 得 るためには 面 の 法 線 成 分 E n にする 必 要 がある) ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- フラックスとはある 面 積 を 通 過 する 単 位 時 間 あたりの 流 量 ( 流 れの 方 向 に 垂 直 な 面 を 通 る 流 量 がフラックス) 9
ベクトル 演 算 式 の 理 解 ガウスの 法 則 の 流 体 解 釈 : ( 類 似 現 象 で 数 式 の 理 解 を 助 ける) 電 場 の 流 体 解 釈 の 言 い 換 え ( 歴 史 的 に 流 体 解 釈 をして 名 前 を 付 けた 経 緯 がある): 電 束 : e 0 E n ds = D n ds 流 束 (フラックス), (または,Q/e 0 = 電 気 力 線 の 数 E = 電 気 力 線 密 度 ) 電 束 密 度 : e 0 E = D 流 束 密 度, 電 荷 : Q 単 位 時 間 の 湧 き 出 し 量 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 注 : 教 科 書 では E そのものにもフラックスという 言 葉 を 使 っている 10
ガウスの 法 則 : 積 分 型 の 応 用 対 称 性 の 良 い 電 荷 分 布 に 最 適 応 用 価 値 あり 1) 無 限 に 広 い 面 電 荷 の 作 る 電 場 2) 無 限 に 長 い 線 ( 円 筒 / 円 柱 ) 電 荷 分 布 の 作 る 電 場 3) 点 球 面 ( 球 ) 分 布 電 荷 の 作 る 電 場 ガウスの 法 則 を 面 電 荷 に 適 用 すると: まず 対 称 性 [(x,y) 方 向 に 一 様 ]から 電 場 はz 成 分 のみ 持 つ y x z 円 筒 切 り 口 の 面 積 を S 1 =S 2 =S,, S 3 ( 側 面 ) とする 円 筒 ガウス 面 の 側 面 では E 3n = 0 右 端 面 で E 1n = +E 左 端 面 で E 2n = - E E n ds = E 1n S 1 + E 2n (-S 2 )+ E 3n S 3 (S 2 は 外 向 きなので 負 ) = S(E+E+0) = Q/e 0 = ss/e 0 E 1 = - E 2 = s/2e 0 11
導 体 導 体 とは 自 由 に 電 気 を 通 す 物 体 ( 金 属 など) 導 体 の 中 には 静 電 場 は 存 在 しない 注 1 導 体 内 では 表 面 電 荷 のみ 存 在 し 得 る 導 体 の 各 点 で 電 位 が 等 しい 導 体 の 表 面 上 の 電 場 は 面 に 直 交 する 電 場 の 強 さは 表 面 付 近 で E = s/e 0 ( 無 限 大 の 平 板 導 体 なら 空 間 全 体 に 適 用 ) 不 規 則 な 形 状 の 導 体 上 では, 電 荷 密 度 は 外 に 凸 で 曲 率 半 径 の 小 さいところほど 大 きい(ie. 尖 端 に 集 中 ) 導 体 の 表 面 電 荷 に 働 く 張 力 : f = s 2 /2e 0 注 1: 電 場 は 電 荷 が 作 る. 導 体 は 電 荷 を 動 かすのみ 電 場 中 の2つの 等 電 位 面 で 囲 まれた 体 積 と 同 じ 形 の 導 体 は, 外 部 電 場 を 変 えない 12
コンデンサーの 容 量 : Q=CV 単 位 はファラッド 誘 電 体 を 挟 めば 容 量 は e 倍 となる. 平 行 板 コンデンサー 球 殻 型 コンデンサー 円 筒 型 コンデンサー コンデンサーの 持 つエネルギー 13
物 質 ( 誘 電 体 ) 中 におけるガウスの 法 則 積 分 型 微 分 型 キーポイント: 電 束 密 度 D は 真 電 荷 のみから 計 算 できる E = 0 はそのまま 成 り 立 つ 誘 電 体 が 電 場 の 中 にあると, 分 極 電 荷 により 物 質 の 中 での 電 場 E が, 元 の 電 場 E 0 より 弱 くなる. E E 0 /k, D e 0 ke e E, 定 義 k : 比 誘 電 率, e e 0 k : 誘 電 率, D : 電 束 密 度 形 式 的 には 真 空 の 方 程 式 から e 0 e (m 0 m) の 置 き 換 えで 得 られる. しかし この 変 形 に 物 質 の 性 質 の 全 てが 込 められている 物 性 の 理 解 には e と m の 使 い 方 をマスターする 必 要 がある 注 : 導 体 中 では, E=0, q =q となるから, 形 式 的 には 誘 電 体 の k とすれば 導 体 の 式 が 得 られる. 14
ベクトル 演 算 式 ( 発 散 と 回 転 )の 絵 画 的 理 解 ガウスの 法 則 から 点 電 荷 を 連 続 的 に 並 べると 並 べた 方 向 の 成 分 は 無 くなる( 点 電 荷 線 電 荷,3 次 元 2 次 元 ). 点 電 荷 を2 次 元 的 に 並 べると ( 点 電 荷 面 電 荷.3 次 元 1 次 元 ) 平 面 電 荷 分 布 軸 ( 円 柱 ) 対 称 電 荷 分 布 球 対 称 電 荷 分 布 発 散 はガウス 積 分 の 局 所 表 現 である.すなわち は 次 の 情 報 を 含 む. 発 散 型 のベクトル 場 の 振 る 舞 い 発 散 型 ベクトルには,はじめと 終 わりがある. 湧 き 出 しからの 流 体 が, 流 線 に 沿 った 流 管 を 通 るときの 速 度 ベクトルの 変 化 平 面 湧 き 出 し : 1 次 元 空 間 での 発 散, 平 行 (v = 一 定 ) 軸 ( 円 柱 ) 状 : 2 次 元 空 間 での 発 散, 円 状 に 広 がる (v 1/r). 点 源 ( 球 対 称 性 ) : 3 次 元 空 間 での 発 散, 球 状 に 広 がる (v 1/r 2 ) 湧 き 出 しが 外 にある 場 合 発 散 がゼロ v =0 15
発 散 : v=s 0 のときの 発 散 源 ( 湧 き 出 し)の 見 つけ 方 ) 源 は 面 電 荷 1 次 元 空 間 の 発 散 源 は 負 の 線 電 荷 源 は 正 の 点 電 荷 2 次 元 空 間 の 発 散 3 次 元 空 間 の 発 散 源 はここにある v = n v =n v は v のv 方 向 微 分 発 散 があるところで 向 きが 変 わる 相 対 運 動 していれば,ベクトルの 大 きさが 変 わるだけ 源 のある 所 以 外 では, 発 散 はゼロ 近 傍 での 振 る 舞 いを 規 制 自 分 の 前 後 のベクトルの 振 る 舞 いを 規 制 する 16
回 転 演 算 を 絵 で 理 解 する. ベクトルの 外 積 A=BxC で B をナブラで 置 き 換 えると,A 軸 を 中 心 に 回 転 するベクトル 場 となる ナブラは 演 算 子 なので 必 ず C の 前 に 置 くこと 例 z Z 方 向 に 一 様 化 すると 17
回 転 があるときのベクトル 場 の 振 る 舞 い 回 転 無 し 発 散? 回 転 が0でない (rot v > 0) 時 のベクトル 場 の 振 る 舞 い (a)(b)(c) のベクトル 配 位 は 全 て 回 転 能 力 あり 結 局 平 行 するベクトルが 自 分 より 大 きい( 小 さい)ときは 回 転 能 力 がある 3D: 実 質 は2D 回 転 ベクトル 場 18
E 型 ベクトルと B 型 ベクトル E 型 物 理 量 を 表 すベクトルは 源 との 関 係 でE 型 ベクトルと B 型 ベクトルに 分 ける ことができる E 型 ( 発 散 型 ) 始 めと 終 わりがある B 型 ( 回 転 型 ) 始 めも 終 わりもない B 型 自 然 現 象 では,E 型 ベクトルを 生 む 原 因 と B 型 ベクトルを 生 む 原 因 は 全 く 別 の 理 由 であることが 多 い. 19
( 赤 緯 ) ベクトル 解 析 で 発 散 (Eモード)と 回 転 (Bモード)を 区 別 する 応 用 例 宇 宙 背 景 放 射 からのマイクロ 波 * 偏 極 **ベクトル 場 のBモードには 重 力 波 の 影 響 が 現 れる. ビッグバン 以 前 の 時 空 のミクロな 量 子 ゆらぎが,インフレーション***で 拡 大 され 宇 宙 サイズの 重 力 波 となる. 重 力 波 で 散 乱 されたフォトン ( 電 磁 波 の 量 子 )が,Bモード 偏 極 パターンを 形 成 する. この 図 ではBモード 偏 極 が 確 かに 観 測 されているが 宇 宙 の 塵 による 影 響 である 可 能 性 も 排 除 できない. * 電 子 レンジや 無 線 LANで 使 われる 電 磁 波 ** 電 磁 波 は 横 波 で 電 場 は 横 方 向 を 向 いて いる.その 偏 り 具 合. *** 宇 宙 の 指 数 関 数 的 膨 張 一 瞬 の 間 に (~10-36 s), アメーバが 銀 河 サイズ (x10 43 ) になる 急 激 膨 張 注 : 光 のスペクトル 解 析 は 化 学 でも 生 物 でも 重 要 な 研 究 手 法 の 一 つである. ( 赤 経 ) 20