鈴 木 邦 男 先 生 ( 右 派 の 異 端 者 )への 質 問 と 返 答 (1) 60 年 代 後 半 の 学 生 運 動 を 語 る 時 に, 左 翼 = 全 共 闘 というのは 間 違 いだと 思 います. 一 部 の 学 生 はそうだったかもしれませんがマルクスに 傾 倒 したかな りの 学 生 が 全 共 闘 に 反 対 し, 彼 等 独 自 の 学 生 運 動 を, 自 治 会 を 中 心 として 展 開 したと 思 います.いかがでしょうか? ( 返 答 ) 確 かに, 学 生 運 動 = 新 左 翼 運 動 全 共 闘 運 動 のイメージは 強 いですが, 質 問 者 の 言 っている マルクスに 傾 倒 したかなりの 学 生 が 全 共 闘 に 反 対 し は, 民 青 のことを 指 していると 思 います. 民 主 青 年 同 盟,つまり 日 本 共 産 党 の 大 衆 組 織 の 一 つですね. 新 左 翼 とは 激 しく 対 立 し, 東 大 をはじ め, 各 校 各 地 で 激 しく 内 ゲバを 繰 り 返 していました.ただ,その 時 代 をリ ードした 存 在 ではなかった. 全 共 闘 が 大 学 や 社 会 に 突 き 付 けた,エリートと しての 学 生 存 在 の 是 非 などを 自 問 する 自 己 否 定 の 論 理 などは 持 ちえなか った. 僕 は 学 生 時 代 は, 右 翼 の 学 生 運 動 をやっていて( 短 期 間 でしたが 右 翼 の 学 生 運 動 の2 大 勢 力 の 一 つ, 全 国 学 協 の 委 員 長 もつとめました), 特 に 僕 のいた 早 稲 田 は 左 翼 の 力 が 強 かったので,いつも 殴 られていましたが,その 中 でも, 敵 ながらあっぱれという 人 材 は 全 共 闘 には 確 かにいました.また 独 自 に 新 聞 を 発 行 したりの 運 動 方 法 や 行 動 様 式 は,ずいぶん 学 ばせてもらいま した.そうは 言 っても, 民 青 は 全 国 的 な 組 織 だったし,あの 宮 崎 学 さんなん かもいたから,ある 種 の 畏 敬 の 念 と 言 ったら 言 い 過 ぎですが, 怖 さを 感 じて いたことは 事 実 です. (2) 鈴 木 さんのお 話 は,これこそが 右 翼! というイメージとかけ 離 れていて, とても 驚 きました. ところで 右 翼 活 動 の 資 金 源 は 何 なのですか? よほど 大 きなバックがある ように 見 えるのですが ( 返 答 ) 右 翼 の 資 金 源 ですか. 僕 が 一 水 会 を 作 ったときは, 既 成 の 右 翼 のような 企 業 回 りは 絶 対 にやめることを 決 めていました. 企 業 を 回 って, 運 動 の 意 義 を 訴 え, 賛 同 してもらって 協 賛 金 を 得 たり, 機 関 誌 を 大 量 に 買 ってもらう. 当 時 の 右 翼 は,それを 活 動 の 資 金 源 にしているところが 多 かったように 思 います. そのほか, 左 翼 の 対 抗 勢 力 として 育 てるために, 活 動 資 金 や 生 活 費 を 出 すと いう 政 財 界 の 組 織 や 人 々もいました.また, 右 翼 を 騙 って, 上 のようなシノ ギをするヤクザ 組 織 もありました.しかし, 今 は, 商 法 改 正 により, 企 業 も 金 を 出 しません.だから 右 翼 も, 自 分 で 仕 事 をして, 空 いた 時 間 に 運 動 をし
ています.なので 昔 に 比 べると, 運 動 も 少 ないです.いま 一 水 会 は, 木 村 代 表 のもと 機 関 誌 レコンキスタの 定 期 購 読 者 を 一 人 一 人 増 やしながら, 地 道 に 活 動 をしています.したがって,みんな 貧 乏 です( 苦 笑 ). (3) なぜ 鈴 木 さん 以 外 の 多 くの 右 翼 は 原 発 推 進 なのでしょうか? ( 返 答 ) 原 発 推 進 が, 経 済 界 や 保 守 派 のコンセンサスだからでしょうね.それに 3.11 の 東 日 本 大 震 災 による 福 島 原 発 の 事 故 以 前 は, 反 原 発 は 左 翼 の 専 売 特 許 でし た.だから, 反 左 翼 を 以 て 任 ずる 右 翼 陣 営 は, 自 動 的 に 原 発 推 進 でもあった のです. 私 のほかにも, 右 からの 反 原 発 を 唱 えて 運 動 を 繰 り 広 げている 統 一 戦 線 義 勇 軍 の 針 谷 議 長 も 頑 張 っています.また, 陛 下 が 足 を 踏 み 入 れられない 土 地 を 生 み 出 してしまったから という 理 由 で 原 発 に 反 対 する 右 翼 の 人 もいます. (4) 右 翼 として 過 激 に 活 動 していらっしゃった 頃,この 人 は 殺 したい, 殺 さねば ならないと 思 ったことはありましたか? その 理 由 は? ( 返 答 )ありません. 考 えが 違 っても, 同 じ 日 本 人 だと 思 っていましたから. (5) 天 皇 皇 后 両 陛 下 のパラオ 訪 問 で, 戦 争 でなくなられた 人 々 というお 言 葉 を 用 いられたことに 心 動 かされました. 国 民 ではなく 人 々 というお 言 葉 であったことに,ナショナリストとしての 鈴 木 さんはどのように 感 じられ たでしょうか.また 30 40 年 前 と 今 とのお 気 持 ちの 変 化 のきっかけは? ( 返 答 ) 確 かに 両 陛 下 は 人 々 という 言 葉 を 使 われたようですね.その 真 意 は,も ちろんわかりません.どのくらいの 意 味 付 与 をされていたのか. 原 文 を 読 ん でみれば, 例 えば 祖 国 を 守 るべく 戦 地 に 赴 き, 帰 らぬ 身 となった 人 々のこ とが 深 く 偲 ばれます. というふうになっていて, 文 脈 でいえば, 国 民 より 人 々 のほうが 自 然 な 日 本 語 であることがわかります.あまり 過 剰 に 反 応 するので はなく, 両 陛 下 の 思 いを 素 直 に 受 け 取 ればいいのだと 思 います. (6) 鈴 木 さんのお 話 の 中 で, 若 い 時 は 理 解 できなかったが, 今 は 分 かる という 発 言 が 何 度 もありました.30 40 年 前 に 比 べ, 現 在 は 経 済 構 造 が 大 変 複 雑 化 しています.そのせいかも 知 れませんが, 今 の 若 者 は,それ 相 応 には 社 会 構
造 をつかみながらも 自 分 の 視 点 を 持 って 明 確 に 考 えるということが 少 ないよ うに 思 います.いかがでしょうか.どのように 克 服 していけばよいでしょう か. ( 返 答 )これまた 難 しい 質 問 ですね. 今 の 若 者 は,それ 相 応 に 社 会 構 造 をつかみな がらも 視 点 を 持 って ないと 書 かれていますが, 若 者 たちの 目 に 映 ずる 社 会 構 造 とはどのようなものなのでしょうか? そして,なぜ 社 会 構 造 をつ かみながらも, 視 点 を 持 って 考 えることが 少 ないのか? 宮 台 真 司 さんはど う 分 析 しているのでしょうか. 克 服 方 法 ですか あるとすればたくさん 本 を 読 み,たくさん 人 の 意 見 を 聞 くことでしょうか. (7) 児 玉 誉 志 夫 はロッキード 事 件 で 知 ったのですが, 右 翼 の 大 物 として 当 時 騒 がれました. 謎 の 人 物 のイメージがあるのですが, 彼 は 本 物 の 右 翼 だったと お 考 えでしょうか? それとも,こわもてだけども 単 なるフィクサーだった のでしょうか. ( 返 答 ) 単 なるフィクサーだったのか というご 質 問 ですが, 憶 測 は 避 けたいと 思 います. 残 念 ながら, 私 は 直 接,その 謦 咳 に 接 したことはありません. 単 に 利 権 を 得 ようとしたのか, 何 かを 戦 略 的 に 実 現 したかったのか, 聞 いてみた かったのですが,チャンスがありませんでした. 鈴 木 邦 男 さんへの 質 問 と 返 答 ( 追 加 分 ) (1) 現 在 の 天 皇 陛 下 や 皇 太 子 は, 過 去 の 戦 争 の 歴 史 を 真 摯 に 学 ぶこと, 世 界 の 平 和 が 重 要 であること, 現 在 の 平 和 憲 法 を 守 ることが 大 切 であること などを, 何 度 も 語 っています.また, 現 在 の 天 皇 陛 下 は 靖 国 神 社 を 参 拝 していません. 然 しながら, 安 倍 首 相 およびその 取 り 巻 きの 保 守 政 治 家 は, 靖 国 神 社 を 参 拝 し, 憲 法 9 条 を 改 定 しようとしています.このような 行 為 は, 現 在 の 皇 族 の 方 々の ご 意 向 に 反 するものと 考 えますが, 真 っ 当 な 保 守 ( 我 が 国 の 伝 統 を 大 切 にする) と 自 認 する 方 々は,どのように 考 えているのでしょうか? ( 返 答 ) 天 皇 陛 下 のこの 間 のご 発 言 については, 敬 服 しています. 私 の 周 りでは, 私 を 茶 化 す 冗 談 として いま 日 本 で 一 番 リベラルなのは 天 皇 陛 下 であり,2 番 目 は 鈴 木 邦 男 だ というジョークが 流 布 していますが, 前 半 に 関 しては 全 く 的 を 射 ていると 思 います. それに 対 し, 安 倍 首 相 やその 周 囲 のお 友 達 の 方 々のやっていることは, 本
当 に 危 なっかしい. 閣 議 決 定 による 解 釈 改 憲 などは,いわば 裏 口 入 学 で, 国 民 投 票 という 正 式 な 入 学 手 続 きを 踏 む 前 に, 憲 法 改 正 を 既 成 事 実 化 し,それ によって 反 対 派 を 諦 めさせる,さらには 喪 失 感 を 抱 かせて 無 力 化 させる. 巧 妙 な 手 口 といえるでしょう.そういう 意 味 では, 安 倍 さんの 2 度 目 はうまい. どんな 人 間 にも 学 習 能 力 はあるのだなぁと,つくづく 感 じます. でも,こんなふうに 安 倍 さんをおちょくって 溜 飲 を 下 げていても, 何 も 始 まりません. 結 局 は, 小 さな 1 票 に 見 えても 投 票 する, 小 さなことに 見 えて も 行 動 する,こういうことを 一 人 一 人 が 積 み 上 げるしかないでしょう. 質 問 に 立 ちかえれば, 私 が まっとうな 保 守 かどうかは 大 きな 疑 問 符 が つくにしても, 安 倍 首 相 らのやってることが 天 皇 陛 下 のご 意 思 に 反 している ことは 明 らかだと 思 います.それは 天 皇 の 政 治 的 発 言 などではなく, 営 々と 積 み 上 げてきた 日 本 の 平 和,その 根 底 にある 平 和 憲 法 への 信 頼 と 尊 重 ゆえの ご 発 言 だと 思 います. 付 け 加 えておきますが, 私 自 身 は 護 憲 論 者 ではありません. 憲 法 を 硬 性 憲 法 ととらえるのではなく, 付 け 加 えるべき 新 しい 理 念 があればそれを 加 え, 古 い 上 着 があれば 脱 ぎ 捨 てることは, 国 民 的 合 意 のもとで, 必 要 だと 思 って います.ただしそれは,9 条 のことを 意 味 しているわけではありません.9 条 を 拙 速 に 放 棄 することは 避 けるべきだというのが, 私 の 立 場 です. (2) 現 在 の 天 皇 陛 下 は, 何 度 も 沖 縄 を 訪 れて 悲 惨 な 沖 縄 戦 の 犠 牲 者 を 慰 霊 していま す. 現 在 の 多 くの 沖 縄 県 民 は, 過 去 の 悲 惨 な 地 上 戦 の 体 験 や, 先 祖 伝 来 の 貴 重 な 土 地 が 米 軍 に 接 収 され 続 けていることを 思 い 起 こして, 辺 野 古 の 新 基 地 建 設 に 反 対 しています. 真 っ 当 な 保 守 であれば, 大 切 な 国 民 である 沖 縄 の 民 意 を 尊 重 すべきである と 考 えますが, 如 何 でしょうか? ( 返 答 )ここでも 私 が まっとうな 保 守 であることを 前 提 としたご 質 問 のようで 恐 縮 です.なぜ, 異 端 の 保 守 である 私 がまっとうに 見 えるのか. 質 問 者 が 左 翼 だからなのか( 笑 ). さて, 沖 縄 の 民 意 が 質 問 者 の 言 うとおり 辺 野 古 の 新 基 地 建 設 に 反 対 で あることは, 県 知 事 選 や 衆 院 選 挙 を 通 じて 明 らかになったと 思 います. 戦 後 一 貫 して 沖 縄 がおかれてきた 立 場 を 考 えれば, 最 も 尊 重 されねばならないの は 沖 縄 の 人 々の 意 思 や 土 地 のはずです. 今, 私 はうっかりと 戦 後 と 書 き ましたが, 沖 縄 にとって, 戦 後 の 意 味 は, 本 土 の 戦 後 とは 明 らかに 違 います. 国 土 の 0.6%の 面 積 に 過 ぎない 沖 縄 が, 日 本 にある 米 軍 基 地 の 75% を 引 き 受 けている 現 状 は, 沖 縄 にとってはまだ 戦 中 が 続 いている.そう 言 っ て, 何 の 誇 張 もありません.
本 当 に 沖 縄 に 海 兵 隊 の 基 地 がなければいけないのか. 周 辺 の 住 民 の 感 情 や, 思 いやり 予 算 がなくなった 時 に, 本 当 に 米 軍 は 沖 縄 に 居 続 けるだろうか.も し 米 軍 の 国 内 存 在 を 認 めるとしても,なぜ 沖 縄 だけなのか.そのほか,もろ もろ 考 えることはあるにしても,その 根 本 に 沖 縄 の 民 意 を 尊 重 することは 論 を 待 たないと 思 います. 同 時 に, 選 挙 で 少 数 派 だったとはいえかなりの 実 数 がいる 人 々の 意 見 を 不 断 に 汲 み 上 げ, 尊 重 しつつ, 問 題 の 解 決 を 図 っていか なければならないと 思 います.