56 新 潟 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 年 報 第 25 巻 2010 GIS( 地 理 情 報 システム)を 用 いた 燕 市 南 地 区 地 下 水 汚 染 解 析 植 田 信 夫, 渡 辺 定 良 Analysis for Groundwater Contamination in Minami Area of Tsubame City Using Geographical Information System (GIS) obuo Ueda and Sadayoshi Watanabe Keywords:GIS, トリクロロエチレン, cis-1,2-ジクロロエチレン, 地 下 水 汚 染 1 は じ め に 金 属 製 品 製 造 業 を 地 場 産 業 とする 新 潟 県 燕 市 においては, 昭 和 59 年 の 県 による 調 査 でトリクロロエチレン()による 地 下 水 汚 染 が 複 数 地 点 で 確 認 された 1). 市 内 には 使 用 事 業 場 が 多 数 立 地 しており, 汚 染 は 複 数 の 汚 染 源 から 進 行 したと 考 えられてい る 2).これ 以 降, 使 用 事 業 場 に 対 する 指 導 や 地 下 水 浄 化 対 策 が 行 われたが,モニタリング 調 査 3-8) により, 及 びその 分 解 生 成 物 である cis-1,2-ジクロロエチレン() 等 による 地 下 水 汚 染 が 継 続 していることが 判 っている.このうち 同 市 南 地 区 につ いては, 燕 市 により 実 施 された 地 下 水 浄 化 対 策 に 伴 う 多 数 井 戸 の モニタリング 調 査 結 果 があり,さらに 平 成 18 年 度 には 市 が 管 理 す る 消 雪 用 井 戸 の 全 数 調 査 が 実 施 され 汚 染 分 布 の 詳 細 な 情 報 が 得 ら れた. 本 報 では,これらの 調 査 結 果 を 基 に,GIS を 用 いて 同 地 区 の 汚 染 分 布 状 況 の 可 視 化 を 行 うとともに, 経 年 的 変 化 について 解 析 したので 報 告 する. 2 解 析 方 法 2.1 解 析 対 象 地 区 の 概 要 対 象 地 区 は, 信 濃 川 の 派 川 である の 右 岸 側 に 位 置 し, 河 川 が 蛇 行 した 内 側 の 東 西 約 1.3km, 南 北 約 0.8km の 半 円 形 の 地 区 である. 市 街 化 が 進 んでおり, 住 居 と 金 属 製 品 製 造 業 などの 工 場 が 混 在 している. 用 途 地 域 としては, 準 工 業 地 域 及 び 工 業 地 域 が 主 体 の 地 域 である. 地 区 内 では 浅 層 で 容 易 に 地 下 水 が 得 られる ので 消 雪 用 や 工 業 用 として 浅 井 戸 が 多 数 使 用 されている.なお, 燕 市 の 上 水 道 普 及 率 は 100%であり,その 水 源 は 解 析 対 象 地 区 よ り 約 2 km 上 流 の の 表 流 水 である 9) 2.2 消 雪 用 井 戸 と 帯 水 層 の 状 況 井 戸 と 帯 水 層 の 状 況 は, 地 下 水 浄 化 対 策 時 に 詳 しく 調 査 4) され ており 次 のことが 判 っている.まず, 消 雪 用 井 戸 については, 南 地 区 内 の 本 の 消 雪 用 井 戸 を 調 査 した 結 果, 井 戸 深 度 は,9.5~ 11.8m,ストレーナー 深 度 は,7.8~10.8m の 範 囲 のものが 多 く, 井 戸 の 底 部 付 近 約 2m がストレーナーとなっている.また,その うち 21 地 点 について 地 盤 高, 地 下 水 位 が 確 認 されたが, 地 盤 高 は 約 TP+9.11~12.27m の 範 囲, 地 下 水 位 は TP+5.68~6.00m の 範 囲 で あった. 地 下 水 位 調 査 では, 各 地 点 で2 回 の 測 定 が 行 われ, 地 下 水 の 収 支 は に 直 接 的 な 影 響 を 受 けていること 及 び 水 位 変 化 が 消 雪 井 戸 使 用 による 影 響 を 受 けていることが 判 明 している. さらに, 深 さ 約 10m のボーリング 調 査 15 本 により, 地 区 における 地 盤 は, 上 位 より(1) 盛 土 層, 上 部 粘 土 層 ( 合 計 層 厚 1.5~3.5m), (2) 砂 層 ( 層 厚 15m 前 後 )(3) 下 部 粘 土 層 ( 層 厚 未 確 認 )と 概 括 し ている. 以 上 より 第 一 帯 水 層 は,(2)の 砂 層 であり, 消 雪 用 井 戸 の 多 くは,この 層 を 対 象 とした 浅 井 戸 であると 考 えられる. 2.3 解 析 対 象 とした 資 料 燕 市 が 南 地 区 内 の 市 管 理 の 消 雪 用 井 戸 について 実 施 した 等 に 係 る 調 査 結 果 及 び 地 下 水 浄 化 対 策 に 係 る 業 務 報 告 書 ( 表 1)を 対 象 とした. 地 下 水 浄 化 対 策 は, 地 区 内 の 箇 所 により 異 なる 事 業 者 に 委 託 されたため, 調 査 結 果 が 複 数 報 告 書 にわたる 年 度 もある. また 各 年 度 で 対 象 井 戸 数 が 異 なっており, 測 定 項 目 も 異 なる. 2.4 位 置 データの 取 得 と 調 査 結 果 の 入 力 調 査 井 戸 の 位 置 データの 取 得 には, 原 図 として 燕 市 南 地 区 消 雪 用 井 戸 位 置 図 10) を 使 用 した. 位 置 データとして 経 緯 度 は, 原 図 と ゼンリン 電 子 地 図 帳 Zi10 を 照 合 し 世 界 測 地 系 で 決 定 した. 位 置 デ ータ 及 び 水 質 測 定 値 の 入 力 には,MS-Excel を 使 用 した. 水 質 測 定 値 を 入 力 する 際, 統 計 処 理 や GIS での 比 例 シンボル 表 示 のために, テキスト 型 ではなく 数 値 型 として 入 力 する 必 要 がある. 定 量 下 限 値 は, 各 物 質 で 異 なり,また, 同 じ 物 質 でも 調 査 年 度, 調 査 担 当 事 業 者 により 異 なる 場 合 がある. 今 回 の 解 析 では, 定 量 下 限 値 未 満 は 一 律 0mg/L として 入 力 することとした.まず, 井 戸 番 号, 経 緯 度, 各 年 度 及 び 各 項 目 の 測 定 値 を 一 覧 表 化 し,その 後 MS-Excel で dbf 形 式 に 変 換 した 後,GIS にインポートした.GIS ソフトとし ては,ArcGIS9 及 び SuperMap Viewer 2008 11) を 用 いた. 3 解 析 結 果 3.1 の 分 解 生 成 物 は 難 分 解 性 物 質 であるが, 地 下 で 微 生 物 によって 緩 やかに 分 解 され,ジクロロエチレン(DCE) 類 が 生 成 される.この 反 応 は,
新 潟 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 年 報 第 25 巻 2010 57 表 1 解 析 対 象 資 料 一 覧 資 料 資 料 種 別 文 献 対 象 年 度 解 析 対 象 測 定 項 目 数 ( 項 目 ) o. 井 戸 数 1 実 態 調 査 結 果 3) 平 成 4 年 度 68 3(,PCE,MC) 2 委 託 事 業 業 務 報 告 書 (H 事 業 者 ) 4) 平 成 6 年 度 28 6(,PCE,MC,1,1-DCE,trans-DCE ) 3 委 託 事 業 業 務 報 告 書 (H 事 業 者 ) 5) 平 成 7 年 度 平 成 8 年 度 4 委 託 事 業 業 務 報 告 書 (H 事 業 者 等 ) 6) 平 成 13 年 度 平 成 15 年 度 5 委 託 事 業 業 務 報 告 書 7) 平 成 6~ 8 (K 事 業 者 ) 平 成 16 年 度 ( 平 成 7は6) 6 実 態 調 査 結 果 8) 平 成 18 年 度 156 6(,PCE,MC,1,1-DCE,,DCM) 備 考 PCE:テトラクロロエチレン,MC:1,1,1-トリクロロエタン,1,1-DCE:1,1-ジクロロエチレン,trans-DCE: トランス-1,2-ジク ロロエチレン,DCM:ジクロロメタン 今 回 使 用 したデータは, 平 成 6,7,8,13,15 年 度 還 元 的 脱 塩 素 化 と 呼 ばれる 12).DCE 類 は, の 他 に 1,1- ジクロロエチレンと trans-1,2-ジクロロエチレンがある. 資 料 o.1から6のうち 資 料 o.1( 平 成 4 年 度 )は,3 物 質 の 測 定 しかなく,DCE 類 のデータが 得 られない.しかし, 昭 和 59 年 度 の 新 潟 県 による 調 査 2) で 本 地 区 の は, 0.1mg/L を 超 えた 地 点 が 複 数 あることから 平 成 4 年 度 におい ても への 分 解 が 進 行 していたと 考 えられる. 平 成 6 年 度 は, 資 料 o.2と o.5を 合 わせて 36 地 点 の 測 定 結 果 がある.この 36 地 点 における 各 物 質 の 平 均 濃 度 (mg/ L)を 求 め,その 割 合 を 図 1に 示 した. 測 定 された6 物 質 の うち が 主 体 で 69.5%, が 28.0%で 他 の4 物 質 はわずかである.DCE 類 のうち 本 地 区 で の 分 解 によって 生 成 するのは, 主 に であり,1,1-DCE 及 び trans-dce は 分 解 による 生 成 が 少 ないと 考 えられる. 平 成 18 年 度 の 156 地 点 の 各 物 質 の 平 均 濃 度 の 割 合 を 図 2 に 示 した. 平 成 18 年 度 は が 主 体 となっており 87.7%, が 11.8%を 占 めている. 平 成 18 年 度 は trans-dce の 測 定 がなく,DCM が 測 定 されている.trans-DCE は, 平 成 15 年 度 の 調 査 結 果 では 43 地 点 の 合 計 で 0.4%であり, 平 成 18 年 においても 微 量 であると 推 定 される. 図 1 及 び 図 2の 比 較 から,12 年 間 で の 分 解 が 進 んで おり, の 還 元 的 脱 塩 素 化 は の 生 成 が 主 体 である ことがわかる. 平 成 6 年 度 以 降 の 汚 染 の 概 要 は と の2 物 質 の みで 把 握 可 能 であるので, 以 下 では,この2 物 質 に 限 定 して 解 析 した. なお,DCE 類 は, 嫌 気 的 条 件 下 でさらに 還 元 的 脱 塩 素 化 し, 塩 化 ビニルモノマー(VC)が 生 成 していることが 考 えられ 13), 事 例 も 報 告 されている 14). 今 回 対 象 とした 各 調 査 では VC は 測 定 されておらず 状 況 は 不 明 である. 3.2 平 成 18 年 度 の 状 況 平 成 18 年 度 は,11 月 13 日 から 12 月 13 日 にかけて 浅 井 trans- DCE 1,1-DCE MC 1.5% PCE 0.6% 28.0% 87.7% 69.5% 図 1 平 成 6 年 度 物 質 濃 度 の 割 合 DCM 0.0% 11.8% PCE 0.3% MC 0.0% 1,1-DCE 図 2 平 成 18 年 度 物 質 濃 度 の 割 合
58 新 潟 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 年 報 第 25 巻 2010 戸 151 地 点, 深 井 戸 5 地 点 の 合 計 156 地 点 が 調 査 された. 深 井 戸 5 地 点 は,100~120m の 深 度 である. 浅 井 戸 では, の 検 出 が 地 点, の 検 出 が 87 地 点 であった.その うち 環 境 基 準 を 超 過 したのは で5 地 点, で 41 地 点 であった. 深 井 戸 5 地 点 では, の 定 量 下 限 値 レベル での 検 出 が1 地 点 であり, の 検 出 はなかった. 平 成 18 年 度 の 156 地 点 の 状 況 を GIS 表 示 したのが 図 3である. 構 成 比 3D 円 グラフ 表 示 により と の 割 合 と2 物 質 の 合 計 濃 度 を 表 示 している. 図 4 平 成 6 年 度 の2 物 質 の 濃 度 分 布 状 況 (36 地 点 ) 図 3 平 成 18 年 度 の2 物 質 の 濃 度 分 布 状 況 (156 地 点 ) 図 3から, 全 体 としては の 汚 染 が 主 体 となってお り, 地 域 的 には 地 区 の 中 央 部 の 汚 染 が 大 きく, 東 西 部 は 小 さ い.5 地 点 (o.4,o.23,o.25,o.152,o.479)の 汚 染 が 大 きいが, 濃 度 が 未 だ 高 い 地 点 も 見 受 けられる(o.4, o.152).なお,これら5 本 の 井 戸 は, 燕 市 により 平 成 18 年 度 冬 季 以 降 使 用 を 停 止 されている.このように GIS は 複 数 項 目, 多 数 地 点 の 地 域 的 な 状 況 の 可 視 化 に 有 効 である. 3.3 経 年 変 化 の 状 況 3.3.1 経 年 変 化 の 要 素 等 による 地 下 水 汚 染 濃 度 の 経 年 変 化 の 要 素 として,1 汚 染 の 浸 透 ( 地 表 から 深 度 方 向 への 移 動 ),2 希 釈 拡 散 ( 地 下 水 の 供 給 移 動, 雨 水 浸 透 ),3 の 分 解,4 系 外 への 放 出 ( 消 雪 井 戸 使 用, 浄 化 対 策 ),5 地 下 水 中 におけ る 汚 染 物 質 の 移 動 15) などが 考 えられる. 3.3.2 平 成 6 年 度 と 平 成 18 年 度 の 比 較 平 成 4 年 度 は の 測 定 値 がないため, 平 成 6 年 度 と 平 成 18 年 度 の 比 較 を 行 った. 測 定 値 が 比 較 できる 36 地 点 に ついて, と の 濃 度 を 構 成 比 3D 円 グラフ 表 示 し た. 平 成 6 年 度 ( 図 4)に 対 し 平 成 18 年 度 ( 図 5)では, 全 体 的 には 明 らかに 濃 度 が 低 下 している. 特 に 減 少 が 顕 著 な のが o.151 である. 平 成 6 年 度 は が 63.7mg/L, が 6.48 mg/ L と 非 常 に 高 濃 度 だったが, が 定 量 下 限 値 未 満 となり, が 0.19 mg/l にまで 低 下 した.なお, o.151 は 平 成 6 年 度 から 平 成 9 年 度 にかけて 稼 動 した 浄 化 対 策 井 戸 ( 距 離 約 30m)に 近 く, 対 策 の 効 果 が 及 んだことも 考 えられる. 一 方, 逆 に 濃 度 が 増 加 した 地 点 が5 地 点 あり, 中 でも o.479 の 増 加 が 目 立 つ. 図 5 平 成 18 年 度 の2 物 質 の 濃 度 分 布 状 況 (36 地 点 ) 注 ) 図 4と 図 5は, 同 濃 度 で 同 じ 大 きさの 3D 円 グラフになるよう に 設 定 している( 図 3とはスケールが 異 なる). 3.3.3 地 区 の 汚 染 濃 度 の 推 移 各 地 点 の と の 濃 度 合 計 の 地 区 平 均 値 を 指 標 と して, 年 度 ごとの 推 移 を 調 べた. 平 成 6 年 度 から 平 成 18 年 度 まで 連 続 して 測 定 値 のある 地 点 について 平 均 値 を 算 出 した. 平 成 6 年 度 を 100%とした 推 移 を 図 6に 示 した. 120 100.0 100 99.9 地 点 計 o.151 除 く34 地 点 計 80 % 60 44.3 34.3 40 40.2 21.3 20 18.6 12.6 6.0 0 6 8 10 12 14 16 18 年 度 図 6 地 区 の 汚 染 濃 度 の 推 移
新 潟 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 年 報 第 25 巻 2010 59 平 成 6 年 度 以 降 順 調 に 減 少 を 示 し 平 成 18 年 度 には 6.0%ま で 減 少 した.また, 地 点 では, 平 成 6 年 度 に 非 常 に 高 濃 度 だった o.151 の 減 少 の 寄 与 が 大 きくなるため,これを 除 いた 34 地 点 の 場 合 でも, 平 成 18 年 度 は 平 成 6 年 度 の 21.3% に 減 少 した.このことから, 地 区 の 汚 染 濃 度 は, 全 体 的 には 明 らかに 減 少 していると 考 えられる. 3.4 の 濃 度 増 加 地 点 は に 分 解 するため, の 供 給 がない 場 合 は 確 実 に 減 少 するはずである. 濃 度 増 加 がある 地 点 は, の 供 給 が 継 続 している 可 能 性 があり, 今 後 とも 注 意 を 要 する. 3.4.1 平 成 15 年 度 と 平 成 18 年 度 の 比 較 平 成 15 年 度 と 平 成 18 年 度 の 調 査 結 果 を 比 較 できる 43 地 点 について, の 濃 度 増 加 量 を 3D 円 グラフ 表 示 した( 図 7). が 増 加 した 地 点 は6 地 点 であるが,うち 4 地 点 は, 0.002~0.003mg/L の 増 加 であり, 増 加 量 は 非 常 に 少 ない. 増 加 が 目 立 つのは o.479 であり, 定 量 下 限 値 未 満 から 0.130mg/L へ 急 増 している. 図 7 平 成 15 年 度 から 平 成 18 年 度 にかけての 増 加 3.4.2 平 成 4 年 度 と 平 成 18 年 度 の 比 較 平 成 4 年 度 は, の 測 定 がされていないが, につ いては 68 地 点 で 測 定 されており, 平 成 18 年 度 との 比 較 が 可 能 なのは 67 地 点 である. の 濃 度 増 加 量 を 3D 円 グラフ 表 示 した( 図 8). 平 成 4 年 度 から 平 成 18 年 度 で が 増 加 し た 地 点 は,7 地 点 である(o.4,o.30,o.38,o.43,o.112, o.152,o.479).このうち 増 加 が 目 立 つのは o.4 の 0.689mg/L 増,o.152 の 1.087 mg/l 増 の2 地 点 である.つ いで,3.4.1 と 同 じく o.479 の 増 加 も 目 立 っている. 3.5 の 汚 染 濃 度 の 推 移 3.3.3 と 同 様 の 手 法 で について 平 成 4 年 度 と 平 成 18 年 度 の 汚 染 濃 度 を 比 較 した.67 地 点 の 平 均 濃 度 は 平 成 4 年 度 の 0.166mg/L に 対 し, 平 成 18 年 度 は 0.033mg/L であり, の 汚 染 濃 度 は,19.9%に 減 少 している.ここで,3.4.2 の 濃 度 増 加 7 地 点 を 除 く 60 地 点 について 見 ると, 平 成 4 年 度 の 0.185mg/L に 対 して 平 成 18 年 度 は 0.004mg/L であり, 2.2%に 減 少 している.したがって, 濃 度 増 加 に 注 意 が 必 要 であり,これらの 増 加 が 抑 えられれば 汚 染 濃 度 の 減 少 が 順 調 に 進 むと 考 えられる. 3.6 汚 染 の 分 布 状 況 の 変 化 地 区 の 地 下 水 は, や 消 雪 井 戸 の 利 用 の 影 響 を 受 け ながら 時 期 により 流 れる 方 向 を 変 え 移 動 していると 考 えら れる 4). 長 い 年 月 を 経 ることにより, 汚 染 が 地 下 水 とともに 移 動 している 可 能 性 が 考 えられた 15). 比 較 できる 地 点 が 67 地 点 と 多 い 平 成 4 年 度 と 平 成 18 年 度 について, 汚 染 の 地 域 的 な 分 布 の 比 較 を 試 みた. 67 地 点 を 母 点 としたボロノイ 図 11) を 作 成 した. 母 点 の 濃 度 をその 領 域 の 代 表 濃 度 として 着 色 した.ただし, 平 成 4 年 度 は, の 測 定 がされていないので, のみの 結 果 を, 平 成 18 年 度 は と の 合 計 濃 度 を 入 力 した. 着 色 は, 相 対 的 に 濃 度 が 高 い 領 域 の 色 が 濃 くなる 等 級 区 分 方 式 を 用 いた.この 図 の 目 的 は 相 対 的 に 濃 度 が 高 い 領 域 を 視 覚 化 することである. 平 成 4 年 度 の 状 況 を 図 9に, 平 成 18 年 度 の 状 況 を 図 10 に 示 した. 両 図 では 最 高 濃 度 が 異 なるこ と 他 の 母 点 から 離 れた 母 点 の 領 域 が 大 きく 表 現 されること に 留 意 して 見 る 必 要 がある. 図 9 平 成 4 年 度 の 濃 度 ボロノイ 図 図 8 平 成 4 年 度 から 平 成 18 年 度 にかけての 増 加 図 10 平 成 18 年 度 の2 物 質 合 計 濃 度 ボロノイ 図
60 新 潟 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 年 報 第 25 巻 2010 その 結 果, 相 対 的 な 高 濃 度 域 は, 平 成 4 年 度 が 東 西 方 向 に 分 布, 平 成 18 年 度 は 中 央 部 で 南 北 方 向 に 分 布 しており 変 化 している.しかし, 個 別 に 見 ると, 平 成 18 年 度 の 中 央 部 の 南, 北 西 端 部 が 高 いのは, 汚 染 の 移 動 によるものではなく, 3 地 点 (o.4,o.152,o.479)で 濃 度 が 増 加 したこと を 反 映 している. 汚 染 の 移 動 であるなら, 濃 度 が 低 下 し ながら 他 領 域 に 出 現 すると 考 えられる.また, 平 成 4 年 度 の 南 西 部 の 高 濃 度 領 域 が 隣 接 領 域 に 移 動 した 状 況 は 認 められ ない.したがって, 相 対 的 な 高 濃 度 領 域 が 特 定 の 方 向 に 移 動 しているような 状 況 は 認 められなかった. 4 ま と め (1) 燕 市 南 地 区 の 地 下 水 汚 染 について,GIS を 用 い, 複 数 項 目, 多 数 地 点 の 測 定 データについて, 汚 染 の 濃 度 分 布, 割 合 及 び 時 系 列 変 化 を 可 視 化 することにより, 特 徴 を 分 かり やすく 表 示 できた.GIS による 可 視 化 により, 今 後 の 汚 染 対 策 や 方 針 決 定 に 際 し, 有 効 な 資 料 になると 考 えられる. (2) 経 年 的 には 原 因 物 質 の から への 分 解 が 進 ん でいる. (3) 平 成 18 年 度 は, 地 区 の 中 央 部 の 汚 染 が 目 立 ち, 特 に5 本 の 井 戸 の 汚 染 が 大 きい. 全 体 として の 汚 染 が 主 となっているが, の 汚 染 が 目 立 つ 井 戸 もある. (4) 2 物 質 合 計 の 平 均 汚 染 濃 度 は, 平 成 6 年 度 から 平 成 18 年 度 にかけて 明 らかに 減 少 した. (5) の 平 均 汚 染 濃 度 は, 平 成 4 年 以 降 減 少 しているが, 例 外 的 に 濃 度 が 増 加 した 地 点 があり 注 意 を 要 する. (6) ボロノイ 図 を 用 いて, 平 成 4 年 度 と 平 成 18 年 度 汚 染 の 分 布 状 況 を 比 較 したところ, 広 域 的 な 移 動 の 状 況 は 認 めら れなかった. 6) 日 立 金 属 ( 株 ), ( 株 )ハイメック: 燕 市 殿 島 地 域 地 内 有 機 塩 素 系 化 合 物 による 地 下 水 汚 染 地 域 の 浄 化 処 理 施 設 の 維 持 管 理 並 びにモニタリング 業 務 報 告 書 (2004). 7) 栗 田 工 業 ( 株 ): 燕 市 南 町 地 区 土 壌 地 下 水 浄 化 対 策 モニタ リングおよび 維 持 管 理 報 告 書 (2005). 8) 燕 市 : 燕 市 地 下 水 水 質 業 務 結 果 一 覧 表 (2006). 9) 燕 市 : 平 成 21 年 度 燕 市 水 道 水 質 検 査 計 画 (2009). 10) 燕 市 : 燕 市 南 地 区 消 雪 用 井 戸 位 置 図 (2006). 11) 渡 邊 康 志 :GIS 自 習 室 -フリー 版 SuperMap Viewer を 使 い 倒 そう-, 古 今 書 院 (2009). 12)ジョン T クックソン Jr. 著, 藤 田 正 憲, 矢 木 修 身 監 訳 :バイオレメディエーションエンジニアリング- 設 計 と 応 用 -,エヌ ティー エス, p146(1997). 13) 陶 山 明 子, 李 泰 鍋, 古 川 謙 介 : 土 壌 環 境 センター 技 術 ニ ュース,7,57(2003). 14) 丸 山 朝 子, 吉 川 サナエ, 黒 沢 康 弘 : 川 崎 市 公 害 研 究 所 年 報,25,43(1999). 15) 藤 縄 克 之 : 地 下 水 汚 染 論 -その 基 礎 と 応 用,( 地 下 水 問 題 研 究 会 編 ), 共 立 出 版,p86(1991). 謝 辞 解 析 対 象 資 料 の 提 供 にご 協 力 いただいた, 燕 市 生 活 環 境 課 及 び 三 条 地 域 振 興 局 健 康 福 祉 環 境 部 環 境 センターの 関 係 各 位 に 感 謝 します. 文 献 1) 新 潟 県 環 境 保 健 部 :トリクロロエチレン 等 に 係 る 地 下 水 汚 染 対 策 について (1986). 2) 川 田 邦 明, 尾 崎 邦 雄, 横 山 ひろみ, 黒 崎 裕 人 : 用 水 と 排 水,29,221 (1987). 3) 燕 市 :トリクロロエチレン 等 調 査 表 ( 公 共 用 地 下 水 ) (1992). 4) 日 立 金 属 ( 株 ): 燕 市 殿 島 1 2 丁 目 地 区 内 有 機 塩 素 系 化 合 物 汚 染 地 域 土 壌 汚 染 調 査 及 び 浄 化 対 策 業 務 報 告 書 (1995). 5) 日 立 金 属 ( 株 ): 平 成 8 年 度 燕 市 南 町 地 域 地 内 有 機 塩 素 系 化 合 物 による 地 下 水 汚 染 地 域 の 浄 化 処 理 施 設 の 維 持 管 理 並 びにモニタリング 業 務 報 告 書 (1997).