司会挨拶 アダカラムを用いた顆粒球吸着療法は 2009 年 1 月からクローン病に対しても保険適用となりました そこで今回は アダカラム開発に携わった米川先生 透析施設でアダカラムを使用している高須先生 アダカラムのクローン病への応用に携わった福田先生にお話いただきます 東京女子医科大学東医療センタ

Similar documents
どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

Fri. アダカラム治療が解明してきた CMV 感染の機序 講演 1 潰瘍性大腸炎における CMV 再活性化と GMA の役割 サイトメガロウイルス ( C M V ) 感染は潰瘍性大腸炎 ( U C) の増悪因子であり ステロイドがウイルスの再活性化を促進することが知られている

クローン病の内科治療を受ける患者さまへ

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

減量・コース投与期間短縮の基準

講演 1 潰瘍性大腸炎の治療における GMA の可能性 活動期と寛解期の新しい使用法 竹内健先生 日本では潰瘍性大腸炎 (UC) 患者は年々増加しており 中でも高齢の患者が増えているのが実状である UC 治療を取り巻く環境としては 近年 生物学的製剤を中心とした治療法も加わり治療の選択肢は増えたが

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

情報提供の例

「             」  説明および同意書

1)表紙14年v0

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

頭頚部がん1部[ ].indd

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

第15回日本臨床腫瘍学会 記録集


佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

がん登録実務について

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞


密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

クローン病 クローン病の患者さんサポート情報のご案内 ステラーラ を使用される患者さんへ クローン病に関する情報サイト IBD LIFE による クローン病治療について ステラーラ R を使用されているクローン病患者さん向けウェブサイトステラーラ.j

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

栄養療法って必要なの クローン病は腸がやけどを起こして熱が出ているような状態です さらに 良くなった腸の状態を長く維持することもできます そんな時には 腸を休ませて しっかりと栄養を摂ることが必要です 食事の半分を栄養剤にして 腸管の負担を軽くすることで 腸を休ませながら栄養を摂るためには 食事を控

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

患者さんへの説明書

膵臓癌について

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

(別添様式1)


チオプリン製剤の重篤な副作用の予測に有用である NUDT15 Arg139Cys 遺伝子多型を検出する世界初の体外診断用医薬品 (MEBRIGHT NUDT15 キット ) の開発に成功 平成 30 年 4 月 13 日 株式会社医学生物学研究所 国立大学法人東北大学 国立研究開発法人日本医療研究開

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

<4D F736F F D208FC189BB8AED93E089C85F B CF8AB E646F63>

Microsoft Word - todaypdf doc

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

cover

消化器病市民向け

膿疱性乾癬の効能追加 ( 承認事項の 部変更承認 ) に伴う改訂 改訂内容 ( 該当部のみ抜粋 ) 警告 1.~3. 4. 関節リウマチ患者では, 本剤の治療を行う前に, 少なくとも 1 剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること. また, 本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使

目次 C O N T E N T S 1 下痢等の胃腸障害 下痢について 3 下痢の副作用発現状況 3 最高用量別の下痢の副作用発現状況 3 下痢の程度 4 下痢の発現時期 4 下痢の回復時期 5 下痢による投与中止時期 下痢以外の胃腸障害について 6 下痢以外の胃腸障害の副

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

Microsoft Word _前立腺がん統計解析資料.docx

Microsoft Word - LIA RMP_概要ver2.docx


糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

白血病治療の最前線

018_整形外科学系

10050 WS2-3 ワークショップ P-129 一般演題ポスター症例 ( 感染症 ) P-050 一般演題ポスター症例 ( 合併症 )9 11 月 28 日 ( 土 ) 18:40~19:10 6 分ポスター会場 2F 桜 P-251 一般演題ポスター療

P001~017 1-1.indd

■● 糖尿病

自動透析装置(透析補助機能)を利用した操作手順書

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果


関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

ヒアルロン酸ナトリウム架橋体製剤 特定使用成績調査

<4D F736F F D E7396AF8CF68A4A8D758DC08B E690B6>

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

中医協総 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて 再生医療等製品の保険適用に係る取扱いについては 平成 26 年 11 月 5 日の中医協総会において 以下のとおり了承されたところ < 平成 26 年 11 月 5 日中医協総 -2-1( 抜粋 )> 1. 保険適

PT51_p69_77.indd

販売名 製造販売業者 インフリキシマブ BS 点滴静注用 100mg CTH に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 インフリキシマブ BS 点滴静注用 100mg CTH セルトリオン ヘルスケア ジャパン株式会社 ( 選任製造販売業者 ) 提出年月 有効成分 インフリキシマブ ( 遺伝

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

Microsoft PowerPoint - komatsu 2

IORRA32_P6_CS6.indd

レクタブル 2 mg 注腸フォーム 14 回に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 レクタブル 2 mg 注腸フ 有効成分 ブデソニド ォーム14 回 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 29 年 10 月 1.1. 安全性検討事項 重要な特

認定看護師教育基準カリキュラム

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

2015 年 8 月 26 日放送 便移植の適応と有効性 慶應義塾大学消化器内科教授金井隆典腸疾患増加の原因きょうは 便移植の適応とその有効性ということについてお話しさせていただきたいと思います 私の専門であります炎症性腸疾患 クローン病とか潰瘍性大腸炎という病気が今増加しております 若者に多く発症

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

日本内科学会雑誌第98巻第12号

外来在宅化学療法の実際

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

h29c04

14栄養・食事アセスメント(2)

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

肝疾患に関する留意事項 以下は 肝疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあたって ガイド ラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 肝疾患に関する基礎情報 (1) 肝疾患の発生状況肝臓は 身体に必要な様々な物質をつくり 不要になったり 有害であったりす

saisyuu2-1

Microsoft Word - 届出基準

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

Microsoft Word _肺がん統計解析資料.docx

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

ここが知りたい かかりつけ医のための心不全の診かた

Transcription:

第 54 回 ( 社 ) 日本透析医学会学術集会 総会ランチョンセミナー 16 日時 :2009 年 6 月 6 日 / 場所 : パシフィコ横浜 顆粒球吸着療法の開発と 臨床の実際 司会 : 東京女子医科大学東医療センター内科教授佐中孜先生演者 : 札幌北楡病院理事長米川元樹先生高須クリニック院長高須伸治先生兵庫医科大学地域総合医療学主任教授福田能啓先生 共催 : 第 54 回 ( 社 ) 日本透析医学会学術集会 総会株式会社 JIMRO

司会挨拶 アダカラムを用いた顆粒球吸着療法は 2009 年 1 月からクローン病に対しても保険適用となりました そこで今回は アダカラム開発に携わった米川先生 透析施設でアダカラムを使用している高須先生 アダカラムのクローン病への応用に携わった福田先生にお話いただきます 東京女子医科大学東医療センター内科教授佐中孜先生 顆粒球吸着カラム アダカラム開発の歴史 を示した ( 図 1) そこで 1989 年にがん患者の顆粒球を減少さ せて抗腫瘍効果を図る目的で 顆粒球除去を目的としたカラム の開発がスタートした 札幌北楡病院理事長 米川元樹先生 カラムの開発では まず顆粒球を吸着する素材を検討した ポリスチレン ガラス ナイロン 酢酸セルロース テフロンを それぞれビーズ状にして ヘパリン加血と 37 C で 30 分イン キュベーションし 白血球数 顆粒球数 リンパ球数 G/L 比を測 酢酸セルロースを使用したカラムの開発 がん患者では がんが進行するとリンパ球に対する顆粒球の比率 (G/L 比 ) が上昇することが知られていた 実際に悪性腫瘍で死亡した症例の死亡 3カ月以内のデータでは 悪性腫瘍手術前や良性疾患の手術前の患者と比べてG/L 比が圧倒的に高値 定した その結果 酢酸セルロースを用いた場合に最も顆粒球が減少しG/L 比が低下した ( 図 2) そこで 酢酸セルロースのビーズを用いてヘパリン加血を循環させるex vivoの実験を行ったところ 経時的な顆粒球減少効果も認められた 次に酢酸セルロースの長径 2mmの楕円球ビーズを15,000 個充填したカラムを作製し ビーグル犬を用い 100mL/minで45 分間体 図 1: 臨床における G/L 比の検討 図 2: アダカラム吸着素材の検討 2 顆粒球吸着療法の開発と臨床の実際

JSDT LS16 外循環する動物実験を行った この実験で 酢酸セルロースを 使用したカラムでは顆粒球を選択的に吸着する効果があるこ とを確認できた ( 図 3) を中止すると症状が悪化したため こうした症状の改善効果は 顆粒球除去によるものと考えられた さらに肝細胞癌で肝硬変 を合併している症例では 体外循環で顆粒球を除去すると白血 球数が増加し 体外循環治療を中止すると白血球数が減少す 図 3: 単球 リンパ球 顆粒球数の変化 顆粒球除去による炎症抑制効果 体外循環による顆粒球除去で腫瘍増殖を抑制する効果が あるという田淵らの報告 (Tabuchi T, et al. Anticancer Res. 1992:12;795-798) を受け 約 22,000 個のビーズを充填し た臨床用のカラムを作製して臨床研究を開始した 血液流量 50mL/min で 30 分間の体外循環を週 2~3 回 15 回で 1 クール として臨床研究を行ったところ 体外循環開始 10 分頃から顆粒 球数が減少し 14.2% の顆粒球がカラムに吸着されることが確 認された ( 図 4) しかし G/L 比には体外循環による減少が認め られなかった 検討した 7 症例では病状が進行 (PD) または変化 なし (NC) と 一部の症例に腫瘍増殖抑制効果が見られたもの の 腫瘍縮小効果が明らかに認められた例はなかった ( 表 1) ただし 転移性肝癌の症例において 疼痛 倦怠感 血痰の改善 が認められた これらの症例では 体外循環による顆粒球除去 る傾向が認められた ( 図 5) なお 問題となるような副作用は 見られなかった 表 1: 臨床研究成績 図 5: 原発性肝癌患者の白血球数 顆粒球数 リンパ球数の変化 ( 症例 2) 症例疾患名 PS* 自覚症改善成績 1. TY 転移性肝癌 1 4 疼痛 怠感 PD 2. YK 原発性肝癌 1 1 疼痛 怠感 食欲 NC(AFP 低下 ) 3. YO 転移性肝癌 2 1 怠感 PD 4. CO 原発性肝癌 2 1 疼痛 怠感 食欲 PD 5. MA 転移性肺癌 2 1 怠感 咳嗽 血痰 NC 6. HI 転移性肺癌 2 1 怠感 咳嗽 PD 7. FJ 転移性肺癌 1 1 怠感 咳嗽 血痰 NC *PS(Performance Status): 癌患者の一般状態を表す指標 炎症性疾患の治療における アダカラムの有用性 米川元樹 他 : 人工臓器.1992:21;1168-1172 酢酸セルロースを使用したカラムによる体外循環で顆粒球 図 4: 顆粒球の回路循環数 カラム吸着数 回収数 を除去することで 抗腫瘍効果は確認できなかったが 血痰などの腫瘍に伴う炎症を抑制する効果が示唆された そこで ステロイドによる治療が有効な炎症性疾患や急性呼吸促迫症候群 (ARDS) に対する顆粒球吸着療法の効果が期待されることとなった その後 開発されたアダカラムは関節リウマチ (RA) および潰瘍性大腸炎 (UC) に対する治療効果が臨床試験において確認され 2000 年にUCに対して保険収載された また 2009 年 1 月からはクローン病に対しても保険収載されている 今後ますますアダカラムを用いた治療が普及することが望まれる 顆粒球吸着カラム アダカラム開発の歴史 3

透析施設で行う GCAP 療法の実際 GCAP 療法普及に向けてのパラダイムシフト により 中毒性巨大結腸症などで緊急手術となる割合が有意に 減少し 重症 劇症型で手術となる症例も有意に減少していた ( 池内浩基 他. 第 60 回日本大腸肛門病学会総会. 2005 年.) な 高須クリニック院長 高須伸治先生 お GCAP 療法による術後合併症への影響は報告されていな い また 内野らの報告によると 2000 年以前に手術を行った 329 例 (A 群 ) と GCAP 療法開始後 2000~2005 年に手術を 行った 476 例 (B 群 ) では 術前ステロイド投与量が A 群に比べて GCAP 療法は潰瘍性大腸炎の治療に有効 潰瘍性大腸炎 (UC) の患者数は年々増加しており 現在では B 群で有意に減少し (p<0.01) 緊急手術症例も有意に減少した (p<0.01)( 図 1) このように UC に対する GCAP 療法の有用性 は明らかである 約 96,000 人に上る アダカラムを用いた顆粒球吸着 (GCAP) 療法が適用となる中等症以上の活動期 UC 症例は 研究班の 報告によるとこのうち約 49% であるが 実際に GCAP 療法を受けた患者数は年間約 2,700 名で 導入率は 5.7% と非常に少ない 白血球除去 (LCAP) 療法を合わせても 血球成分除去療法の導入率は1 割程度であると考えられる 池内らの報告によると 2000 年以前に手術を行ったUC 325 例 (A 群 ) とGCAP 療法開始後の2000~2004 年に手術を行った387 例 (B 群 ) では 術前のステロイド投与量が A 群 30mg/ 日に比べてB 群で20mg/ 日と少なく 重症 劇症症例の割合もB 群は10% 少なかった (26% 対 16%) GCAP 療法の導入 GCAP 療法を透析施設で行うメリット GCAP 療法はUC 患者の治療において有用であるにもかかわらず 導入率が低くなかなか普及しない背景には 体外循環治療を行える施設が限られていることが挙げられる GCAP 療法を実施している施設数としては 大学病院が 9% 国公立 自治体病院が19% であるのに比べて個人病院等は67% と大半を占める GCAP 療法の実施場所の内訳を見ると 施設数あたりでは透析室は32% であるが 透析室以外で行われている施設 図 1:GCAP 療法と外科手術 図 2:GCAP 療法実施施設 実施場所の内訳 4 顆粒球吸着療法の開発と臨床の実際

JSDT LS16 は68% と多い ( 図 2) そこで 透析施設での GCAP 療法実施件数を増やしていくことで GCAP 療法の導入率を上げることが期待される このため透析医学会でも 2002 年から アダカラムに関するセミナーが開かれている GCAP 療法を実施する施設を持たないかかりつけ医の先生方や 体外循環治療に慣れない病院 診療所では薬物療法に専念していただき GCAP 療法を実施するため透析施設へ患者を紹介していただく こうした連携体制をとることで 寛解導入が容易になり効果的な治療が行えると考えている ( 図 3) が 透析施設ではアダカラム以外はすべて常備しているため 特別な設備を準備する必要がなく いつでも GCAP 療法を行える 当院での治療時には プライミング時には十分にエアを抜くよう注意し 前腕と肘下の 2カ所に穿刺して 静脈圧モニターの監視下で30mL/minの血液流量で約 1 時間の循環を行っている 治療開始直後は静脈圧の下降が見られることがあるため 静脈圧モニターの設定は通常よりも低めにしている 返血時にはカラムの動脈側を上にして 30mL/minの血流 量でゆっくり回収している 技術料とカラムのほか 生理食塩 図 3: 医療連携による GCAP 療法導入へのパラダイムシフト 液や抗凝固剤についても保険請求できるため GCAP 療法は 透析施設でも実施しやすい治療である け医薬物療法 化 医 ( 病 療所 ) 薬物療法 当院では現在 5 症例のUCに対して GCAP 療法を行っている 薬物療法を拒否している症例に対しては GCAP 療法のみで病勢をコントロールしている 女性の左側大腸炎型 中等症の UC 症例に 4 年間で5 度の活動期治療としての GCAP 療法を施行しており その平均寛解維持期間は 8.5カ月である 図 4にこの症例の大腸内視鏡像を示す 透析施設 療法 図 4: 症例呈示 : 薬物治療拒否症例の GCAP 治療のみの 4 年間の経過 体外循環の経験が少ない消化器専門施設とは異なり 透析 施設は体外循環治療の経験が豊富である このため GCAP 療法を安全に施行することができる さらに 透析施設では GCAP 療法を既存の透析コンソールで施行できるため GCAP 専用の体外循環モニター ( アダモニター ) を用意する必要が ないというメリットがある 実際に GCAP 療法を施行する目的 で当院に紹介された患者に対して 全症例とも安全に GCAP 療 法が施行されている GCAP 療法は UC の治療として非常に有用である 透析施設 透析施設における GCAP 療法の実際 当院では 消化器専門の病院から紹介された患者に対して アダモニターではなく血液透析コンソールを使用して GCAP 療法を実施している GCAP 療法の実施には アダカラムのほか 血液透析回路 抗凝固剤 生理食塩液などが必要である を活用して GCAP 療法を行うことで 消化器専門医の治療の幅が広がるだけでなく 患者の予後の向上にもつながる 体外循環のための施設がない 経験が乏しいといった理由で GCAP 療法を敬遠することなく 患者のためによりよい治療を選択するために 透析施設との連携を積極的に行ってほしいと考えている 透析施設で行う GCAP 療法の実際 GCAP 療法普及に向けてのパラダイムシフト 5

顆粒球吸着療法の新たな可能性 クローン病治療の新戦略 与が示唆される虹彩炎や壊疽性膿皮症のほか 膵炎や尿路結 石症 水腎症も見られることがあり 治療期間が長くなると慢性 兵庫医科大学地域総合医療学主任教授 福田能啓先生 の腎障害を生ずる症例も多い CDの発症原因は不明とされるが 食習慣やストレスといった環境因子の影響から免疫異常が起こり 炎症性サイトカイン (TNF-α) の産生が亢進されて病変を生ずるという機序が考え られている 脂肪やタンパク質を含まないアミノ酸で構成され クローン病とはクローン病 (CD) とは 1932 年にクローンらによって初めて報告された疾患である 発症に至る原因は不明であり 若年者に好発する 大腸 小腸 胃など全ての消化管に病変を生じ 深い潰瘍ができて穿孔しやすく 潰瘍が治ると線維化が起こる このため腸管が狭窄しやすく 腸閉塞を起こしやすくなる 潰瘍は縦走し 非連続的 ( 飛び飛び ) に病変を生じやすい ( スキップ病変 ) 病変は非乾酪性肉芽腫性の炎症病変である CDは治療の難しい疾患で わが国では特定疾患に指定されている 特定疾患とは いわゆる難病のうち 1 原因不明 2 治療 た成分栄養剤による栄養療法を行うことで 食事抗原に対するアレルギーの発症を防ぎ寛解維持が可能となる 欧米では CD ないしUC の治療戦略はわが国と大きく異なる 活動期の治療においては免疫抑制剤による薬物療法が主体であり 現在はインフリキシマブ (IFX) を第一選択とする治療が主流となっている ( 図 2) 免疫抑制剤は病勢の安定に効果があるが 感染症のリスクが高まる恐れがあるため 使用には注意が必要である そこで 免疫を抑制せずに調整することができ 副作用の少ないアダカラムによる顆粒球吸着 (GCAP) 療法を治療に取り入れていくことで より安全で効果的な治療が可能になると期待している 方法が確立していない 3 症状は慢性的に経過し後遺症を残す 4 社会復帰が極めて困難もしくは不可能 5 医療費が高額で経 図 1: クローン病の病変 済的負担が大きい6ケアや介護等が必要で 家庭的 精神的負担が大きい7 症例が少なく全国規模での研究が必要 であ る CD 患者数は増加しており 2007 年度末現在で27,000 人ほどに上り 潰瘍性大腸炎 (UC) 患者数と合わせると約 13 万人の 患者がいると言われている 副作用の少ないクローン病治療が必要 CD は若年者に好発し治癒の難しい疾患であるため 一度発 症すると長期にわたって免疫抑制剤などによる薬物治療を続けることになる CDの症状は活動期と慢性期に大別され 活動期には腹痛 下痢 下血 潜血陽性 発熱などが見られ 慢性期になると栄養障害が起こり全身倦怠感 体重減少 貧血などの症状が見られる 病変の位置によって 小腸型 小腸大腸型 大腸型 図 2: 炎症性腸疾患治療の概要 ( 欧米 ) の 3 つに分類され 腸管の病変は痔瘻 瘻孔 膿瘍 癒着 狭窄 閉塞と様々である ( 図 1) 消化管外の合併症では 免疫学的関 6 顆粒球吸着療法の開発と臨床の実際

JSDT LS16 GCAP 療法はクローン病治療に有効 GCAP 療法とは 2000 年 4 月に初めてUC 治療の選択肢として保険収載された 日本発の体外循環療法である UCに対しては重症 劇症 難治性症例が保険適用で CDに対しては 2009 年 1 月に保険適用となった 肘静脈などの静脈から静脈へと循環する全血灌流型の体外循環用カラムであるアダカラムを用いて施行するが血液流量が少ないため シャントは不要である 2003 年に松井らが既存の治療法抵抗性の難治性 CD 患者 7 例を対象に週 1 回のGCAP 療法を5~6 回施行し クローン病活動指数 (CDAI) にて評価し 有効率は 71.4%(5 例 ) であったと報告している (Matsui T, et al. Am J Gastroenterol. 2003: 98; 511-512) 有効例の特徴として 若年で罹病期間が短く 大腸に主病変を有し炎症が高度であることが挙げられている 小腸に主病変がある2 症例は無効であった また 重篤な副作用は確認されなかった そこで 栄養療法が無効の難治性 CD 患者 21 例を対象に (Mucosal Healing) を期待できる症例もあった 保険適用の範囲内で治療を行う場合には 1クール5 回のGCAP 治療を2クール施行する治療方法が望ましく アダカラムの使用は 1 回の活動期につき最大 10 本までとされている 現在では栄養療法および既存の薬物療法が無効または適用できない症例のみが対象であるが 活動期に栄養療法だけでは十分な効果が期待できない場合のみならず 寛解維持中に再燃傾向が見られるような場合にも有効であろうと考えている 特に若い女性で将来妊娠したいと希望される患者の場合には 免疫抑制剤の投与ではなくGCAP 療法で免疫を調節して治療を行うことが望ましいと考えている 患者の QOL を高める治療を CDは治療の難しい疾患であるが 様々な治療方法を組み合わせることで QOLを高めることが可能となる 今後ますますGCAP 療法が普及していくことを期待している GCAP 療法の効果を評価する多施設共同試験を実施した 週 1 回 の GCAP 療法を 5 週連続で施行し 2 週間後に CDAI にて評価を 行った CDAI150 点未満を寛解 50 点以上の改善が認められれ ば有効 50 点以上の悪化が認められた場合には悪化 それ以外 は不変とした CDAI が 50 点以上改善したものの 150 点以下にな らなかった症例に対しては さらに 5 回の GCAP 療法を追加しても よいこととした ( 図 3) 21 例中 15 例は 5 回の GCAP 療法を施行 し 7 週目に評価可能であった この 15 例中 12 例が 7 週で治療 を完了し 3 例は追加治療を施行した 有効率は 52.4%(11 例 ) で寛解が 6 例 改善が 5 例であった 重篤ではない副作用が 10 件 (6 例 ) 発現した なお GCAP 療法により易感染性になることは なかった GCAP 療法により CDAI は有意に改善し (p=0.0005) QOL(IBDQ) も有意な改善が認められた (p=0.0327)( 図 4) GCAP 療法施行時には総白血球数 顆粒球数とも低下するが 24 時間以内にほぼ元と同じレベルまで回復した ( 図 5) この治験で対象とした症例の中には GCAP 療法施行により ステロイドの投与量減量が可能となった症例もあり 粘膜治癒 図 3: 試験デザイン 図 4:GCAP 療法前後での各指標の変化 図 5:GCAP 療法施行における白血球数の推移 顆粒球吸着療法の新たな可能性 クローン病治療の新戦略 7

151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷 2-41-12 富ヶ谷小川ビル TEL 0120-677-170( フリーダイヤル )FAX 03-3469-9352 URL http://www.jimro.co.jp AD200911COCS 2009 年 11 月作成