浦上川線の整備効果と北伸計画の必要性に対する考察 長崎振興局建設部都市計画課 真鳥喜博 池田寛章 1. 浦上川線の概要 1.1 地域高規格道路としての浦上川線地域高規格道路は 高速道路等のネットワークと一体となり 通勤圏の拡大など都市間の連携を強化させる機能を有した道路である 他にも物資や人の交流の活発化 空港 港湾等と都市の拠点を連結させるなどの機能を持った道路も地域高規格道路とされており 現在長崎県内で整備中の地域高規格道路は島原道路や西彼杵道路がある ( 図 1.1-1 参照 ) 浦上川線は地域高規格道路長崎南北幹線道路の一部として 西彼杵道路 島原道路浦上川線 長崎市 佐世保市 長崎南北幹線道路図 1.1-1 地域高規格道路と浦上川線の位置 長崎市松山町から元船町までの総延長 3,250m が整備された ( 図 1.1-1 参照 ) 1.2 浦上川線のあらまし浦上川線は 長崎市中心部の南北の幹線軸である一般国道 202 号 206 号の慢性的な交通渋滞の緩和と 地域間の交流促進 連携強化を目的とし計画された都市計画道路である 昭和 50 年の都市計画決定以来 最終的に平成 22 年 11 月に全線開通となった 至時津町 長与町 梁川橋 浦上駅 都市計画道路浦上川線 浦上川 写真 1.2-1 遠景より浦上川線を望む 至長崎市中心地 稲佐橋
浜口町 都市計画道路浦上川線 L=3,250m 松山町 下の川橋 国道 206 号 国道 202 号 竹岩橋東 茂里町 長崎駅 夢彩都前 竹岩橋東 浦上駅 県庁予定地 梁川橋東 ブリックホール 幸町 ( 交差点名 ) 梁川公園前 松山町 - 茂里町工区幸町工区尾上町工区元船町工区 図 1.2-1 浦上川線の位置図 2. 長崎市中心部の地形的特徴長崎市中心部は山と海に囲まれた平地の乏しい地形であり 十分な道路が確保されていなかった 南北に通る幹線道路は主に一般国道 206 号 (202 号 ) の一本しかない状況であったことから その交通混雑が問題となり 浦上川線は交通混雑解消のため整備が行われた 浦上川線の整備も地形的制約を受けているが その解決方法としてダブルデッキ構造を採用するなどの工夫を行い供用にたどり着くことができた ( 写真 2-1 参照 ) 3. 浦上川線の整備効果 3.1 並行路線の交通量の減少 渋滞の緩和浦上川線の全線開通により 浦上川線の交通量は 2.3 万台 / 日となった これに伴い並行する一般国道 206 号 市道稲佐町若草町線の交通量がそれぞれ約 19% 約 17% 減少すると 国道 206 号 並行市道 写真 2-1 ダブルデッキ構造の様子自動車交通量 ( 百台 / 日 ) 256 百台開通前 207 百台開通後 開通前 662 百台 548 百台開通後 17% 減少 19% 減少 0 100 200 300 400 500 600 700 図 3.1-1 自動車交通量の変化 いう効果が確認できた ( 図 3.1-1 参照 ) その結果 一般国道 206 号では朝の通 勤時間帯の渋滞 が緩和されるようになり アンケートを通して県民からは一般国道 206 号が走りやすくなった等の声が寄せられ 開通前の国道 206 号 開通後の国道 206 号 ている 写真 3.1-1 浦上川線開通前後の一般国道 206 号の混雑の様子の変化
3.2 所要時間の短縮交通量が減少したことから ピーク時の所要時間短縮の効果があった 一般国道 206 号においては松山町交差点から大波止交差点まで 15 分要していたところ浦上川線を利用することで所要時間が9 分に短縮され 6 分もの短縮になった ( 図 3.2-1 参照 ) 浦上川を挟んで並行する市道稲佐町若草町線も時間短縮の効果が確認された 浦上川線の平均所要時間起点 ( 付近 ) 終点 ( 付近 ) 約 6 分短縮! 9 分 浦上川線経由 15 分 国道経由 17.3 分 市道経由 3.3 利便性の向上 浦上川線を利用する各事業者へもアンケ ート調査を実施した 主な回答を表 3.3-1 に示す 長崎市中央消防署の回答から 救急搬送 の向上により県民の安全 安心向上に寄与 しているものと考えられる また路線バス 事業者の回答から バスの通勤性能が向上 したことや 物流業者の生産性の向上など それぞれの事業者の営業にもメリットがあ ったことが確認できた さらにタクシー事業者の回答から 観光 への波及効果も確認でき 観光名所が数多 く存在する長崎県にとって 大きなメリッ トと考えられる 一般ドライバーに対するアンケートを実 施した結果 浦上川線の整備による日常生 活の変化として 目的地への到達時間が短 縮されたという回答が多くあり 県民にも 浦上川線の整備効果を実感していただけた と考えられる 図 3.2-1 平均所要時間の変化 事業者の声 長崎市中央消防署 救急搬送の時間短縮で患者負担の軽減につながっている また国道 206 号の混雑のため 路面電車の軌道上を走行する際 振動が患者の負担になっていたがその頻度が減ることで患者負担が軽減につながる 路線バス事業者 朝の混雑時において長崎市中心部へ向かう路全バスの定時性が向上した 物流事業者 配送時間が短縮され効率がよくなり あわせて配達時間の正確性が向上した タクシー事業者 所要時間が短縮されたことから観光地を観光できる時間が増えた 表 3.3-1 事業者の声 4. 浦上川線の供用後における課題 4.1 浦上川線の開通に伴う道路混雑アンケートによれば浦上川線の開通に伴い 道路混雑等が発生していると感じる交 写真 3.3-1 浦上川線の車両通行の様子
長崎南北幹線道路 西彼杵道路 差点として下の川橋交差点が 39% と突出した回答を得ている 下の川橋交差点は浦上川線の起点側 長崎西洋館付近において一般国道 206 号に接続する箇所である 開通後にて 当該交差点に接続する浦上川線の交通量が約 1.6 倍に増加したことが混雑の要因と考えられる 長崎市中心部の通過時間短縮を担う浦上川線であるが 混雑が発生している状態では その機能を発揮しているとは言いがたく整備効果が限定的である印象を拭えない したがって下の川橋交差点を含む道路混雑を解消し 地域高規格道路として移動時間の短縮と定時性の向上を図ることが今後の課題といえる 渋滞悪化の指摘が多い交差点下の川橋交差点 39% 梁川橋東交差点 21% 竹岩橋東交差点 20% 松山町交差点 19% 茂里町交差点 18% 突出している 図 4.1-1 渋滞悪化の指摘が多い交差点 長崎西洋館 浦上川線渋滞の発生 5. 北伸計画の必要性に対する考察 5.1 北伸計画の概要浦上川線北伸区間は 長崎南北幹線道路の一部であり 整備済みの浦上川線と西彼杵道路を接続する道路として計画されている ( 図 5.1-1 参照 ) 浦上川線に続き 交通混雑の問題を抱える一般国道 206 号のバイパス機能を有するものである 国道 206 号 写真 4.2-1 下の川橋交差点の渋滞の様子 5.2 ネットワークの接続長崎南北幹線と西彼杵道路のネットワークが完成すれば 西彼杵半島経由で長崎 - 佐世保間が1 時間強で結ばれる 現在 長崎南北幹線道路のうち浦上川線の整備が終わり 隣接する時津工区も事業に着手しているが 北伸区間 時津工区 ( 整備中 ) 北伸区間 ( 計画のみ ) 浦上川線 ( 整備済 ) 図 5.1-1 浦上川線北伸の計画
はまだ着手に至っていない 北伸区間が整備されなければ 浦上川線と時津工 区がネットワークとしてミッシングリンクとなり地域高規格道路として本来の 機能を発現できないことから 早急な着手 が必要と考えられる 地域の主要渋滞箇所交差点のうち並行区間で選定された箇所の抜粋一般道路 ( 全 135 箇所 ) 5.3 浦上川線北伸区間と並行する区間における渋滞の緩和国土交通省は 地域の主要渋滞個所 で 長崎県内の一般道路において 135 箇所の主要渋滞箇所を公表している 全 135 箇所のうち 浦上川線北伸道路と並行する国道の区間に 18 箇所が挙げられており 長崎県内の約 13% を占めていることになる この区間は 長崎市中心部と長与町 時津町を結節する幹線道路であり 特に西彼杵半島へのアクセス面からは もっとも主要な道路といえる 浦上川線北伸区間が整備されれば 長崎市内から西海市方面へ向かう交通が転換され 通過交通を一般国道 206 号から低減させることができ 交通混雑を緩和できると期待できる 5.4 並行路線における事故の発生件数長崎県警公表の 長崎県の交通事故多発交差点 ( 平成 25 年 ) によれば 1 年間で交通事故発生件数の多い上位 30 交差点のうち 並走区間だけで9 箇所が位置しており 事故発生件数は合計で 64 件にものぼる ( 表 5.4-1 参照 ) 北伸区間は地域高規格道路であり 交差点の数は一般国道 206 号と比較して大幅に減少する計画である 一般国道 206 号の交通を安全に浦上川線北伸道路へ誘導し 一般国道 206 号の交通量を減少させることは交通事故抑制の一助になると期待できる 1~45 ( 省略 ) 60 竹岩橋西口 46 道の尾 61~89 ( 省略 ) 47 道の尾橋 90 井手園 48 岩屋口 91 ( 省略 ) 49 若葉町交番前 92 横道 50 住吉 93 若竹入口 51 住吉北 94~135 ( 省略 ) 52 岩屋橋 53 大橋 54 長崎振興局前 55 松山町 56 下の川橋 57 浜口町 58 北郵便局前 59 竹岩橋東口 全 135 箇所のうち 北伸道路並行区間だけで 18 箇所 ( 約 13%) 表 5.3-1 並行区間における選定渋滞箇所 平成 25 年中の交通事故多発交差点 ( 着色が並行区間の交差点 ) 国道交差点名市 町名 発生件数 1 34 号 小船越トンネル交差点 諫早市小船越町 11 2 206 号 北郵便局前交差点 長崎市川口町 10 3 57 号 運動公園西口交差点 諫早市小船越町 8 4 34 号 貝津町交差点 諫早市貝津町 8 5 202 号 長崎駅南口交差点 長崎市大黒町 8 6 34 号 化屋交差点 諫早市多良見町化屋 8 7 34 号 朝日ヶ峰交差点 長崎市宿町 7 8 206 号 茂里町交差点 長崎市茂里町 7 9 499 号 江川町交差点 長崎市江川町 7 10 206 号 岩屋橋交差点 長崎市大橋町 7 11 206 号 打坂交差点 長崎市滑石二丁目 7 12 34 号 久山バス停先交差点 諫早市久山町 7 13 206 号 若葉交番前交差点 長崎市若葉町 7 14 206 号 横道交差点 長崎市滑石一丁目 7 15 204 号 俵町浜野病院前交差点 佐世保市俵町 7 16 206 号 継石バス停先交差点 西彼杵郡時津町元村郷 7 17 206 号 赤迫電停前交差点 長崎市赤迫一丁目 7 18 57 号 栗面交差点 諫早市栗面町 6 19 206 号 COCO WALK 前交差点 長崎市茂里町 6 20 206 号 道ノ尾駅入口交差点 長崎市葉山一丁目 6 21 34 号 市布駅入口交差点 諫早市多良見町市布 6 22 57 号 小船越交差点 諫早市小船越町 6 23 206 号 赤迫交差点 長崎市赤迫一丁目 6 24 34 号 桜馬場交差点 大村市桜馬場二丁目 6 25 202 号 田子の浦交差点 佐世保市早岐二丁目 5 26 35 号 体育文化館入口交差点 佐世保市島瀬町 5 27 34 号 馬町交差点 長崎市馬町 5 28 206 号 左底交差点 西彼杵郡時津町左底郷 5 29 444 号 植松カトリック教会前交差点大村市植松三丁目 5 30 202 号 大黒町交差点 長崎市大黒町 5 表 5.4-1 平成 25 年度中の交通事故多発交差点
5.5 地域間の連携による効果 地域高規格道路のネットワークの完成により県内の移動時間の短縮と定時性 の向上が図られ 県南地区と県北地区の連携強化が期待される 移動時間の短縮と定時性の向上は救急医療においても効果を発揮すると期待 できる 緊急車両の交通は一般国道 206 号に頼る状況であったが そちらで事 故等発生した場合 代替ルートとして浦上川線北伸区間等が活用できる また 大災害発生時 現状のように主要な避難経路が一般国道 206 号のみの 場合 そこが被災すれば交通マヒに陥る危険性がある リダンダンシーの概念 の下 浦上川線北伸区間の整備を行い 複数 の避難経路を確保することは防災の面でも重 要なものであると考える さらに平成 26 年 7 月 文化庁が 長崎の 教会群とキリスト教関連遺産 を世界文化遺 産の推薦候補として選定したが 西彼杵半島 には 出津教会堂と関連遺跡 大野教会堂 が位置している 九州新幹線西九州ルートの 整備により長崎への来訪者の増加が期待され るが 上記教会等へのアクセスに浦上川線北 伸区間を含めた地域高規格道路を利用し よ り短い移動時間で時間通りに観光できること は 来訪者への満足に繋がると期待される 5.6 北伸区間整備の課題 浦上川線北伸区間は市街地を通過することから 周辺環境への影響を最小限 にすることが課題である また他の地域高規格道路と同じく 橋梁やトンネル などの大規模構造物が必要となることや 市街地内を通過するために支障物件 が多くなることが想定され 事業費の増加が事業着工の足かせにならないよう 最適なルート検討を行うことも重要な課題である 移動時間の短縮 道路の整備 地域間の連携による効果 定時性の向上 新たな 救急医療での搬送性能の向上 観光がしやすくなる 災害時に避難路が複数確保できる 図 5.5-1 地域間の連携による効果 5.7 まとめ浦上川線の整備により様々な効果が確認されたが 計画路線の一部のみの完成ということで その効果が全て発揮されているとは言い難い状況である 浦上川線に続き 浦上川線北伸道路の整備を行うことで 浦上川線のみでは発現でなかったさらなる効果を発現させることができると考える 以上から 浦上川線北伸道路の整備について その優先度は非常に高いと考えられる 一日も早い整備に向け一層尽力していきたい