2. 現状の建物における物流に関する問題点 大きな懸念は オリンピックを契機として建設される大規模建築物をはじめ 今後新しく建造される施設において 物資の搬入や搬出を円滑に行うことが可能かどうかという点である 現存する百貨店や複合商業ビル等の大規模建築物では 物流に配慮されて建設されたものは少ないと

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(第14回協議会100630)

05+説明資料

1 目次 2 背景 目的 指針 設備 整備基準 対策 保守 大会終了後 進捗状況の把握およびフォローアップ / 7

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Microsoft Word 交通渋滞(有明アーバン)_181017

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江東区 「自転車条例」の手引


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監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

荷捌き駐車対策 荷捌き駐車施設の附置 平成 6 年に各地方公共団体が定める附置義務駐車場条例のひな型として通知している標準駐車場条例に 荷捌き駐車施設の附置に関する条項を追加 以来 地域の実情に合わせて 必要に応じて荷捌き駐車施設の条項を盛り込むことを推奨 平成 26 年 3 月末現在 附置義務条例

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本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

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Microsoft Word - 表紙

1 ガイドライン策定の目的防犯カメラについては テレビや新聞で報道されているように 犯罪の解決や犯罪の抑止につながることなど その効果は社会的に認められており さまざまな施設に防犯カメラが設置されております しかし その効果が認知される一方で 防犯カメラにより個人のプライバシーなどの人権が侵害される

施策 5: 横持ち搬送の支援 荷さばきスペースに 長くなる横持ち搬送を支援するために 電動カートや電動台車等の貸出を行う 2002 年に実施された社会実験の際の電動台車 一度に大量の荷物を輸送できるため 長い距離までの横持ち搬送も可能となる 中心市街地の外側にあるコインパーキングからでも歩行者天国内

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大阪市再開発地区計画にかかる

スライド 1

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資料 7-1 特殊車両の通行に関する指導取締要領の一部改正について 国土交通省関東地方整備局道路部交通対策課 1 (1) 特殊車両通行許可制度 2

4. エレベータホール ( 設置する場合 ) 5. エレベーター ( 設置する場合 ) 6. 共用廊下 共用階段 ること 共用玄関等からの見通しが確保されていない場合には 見通しを補完する対策が講じられていること 照明設備 1 共用メールコーナーの照明設備は 床面において50ルクス以上の平均水平面照

1. 実現を目指すサービスのイメージ 高齢者や障害者 ベビーカー利用者など 誰もがストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築のため あらゆる人々が自由にかつ自立的に移動できる環境の整備が必要 ICT を活用した歩行者移動支援サービスでは 個人の身体状況やニーズに応じて移動を支援する様々な情報

1.1 テーラードブランクによる性能と歩留りの改善 最適な位置に最適な部材を配置 図 に示すブランク形状の設計において 製品の各 4 面への要求仕様が異なる場合でも 最大公約数的な考えで 1 つの材料からの加工を想定するのが一般的です その結果 ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質

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3. 無期労働契約への転換後の労働条件無期労働契約に転換した後の職務 勤務地 賃金 労働時間等の労働条件は 労働協約 就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り 直前の有期労働契約と同一になるとされており 無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず 無期転換後の労働条件を

P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P


草 津 市 景 観 形 成 ガイドライン 71

これらのご要望などを踏まえ 本技術を開発しました 本技術により渋滞予知の精度は大幅に向上し 渋滞があると予測した時間帯において 所要時間の誤差が30 分以上となる時間帯の割合が 従来の渋滞予報カレンダー 7 の8.2% に対して0.8% 20 分以上となる割合が26% に対して6.7% となり また

防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン

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バリアフリー化に対応した歩道の構造基準『歩道における段差及び勾配等に関する基準』

【道路台帳整備の対象となる指定道路】

ガイドライン策定の目的 和歌山県では 和歌山県安全 安心まちづくり条例 ( 平成 18 年 3 月 24 日条例第 26 号 ) に基づき 家庭及び地域における人と人との絆を大切にし お互いが支え合い 及び助け合うとともに 安全で安心な暮らしに配慮した環境の整備を行うまちづくりを推進しています その

目次 ( )

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)

第 2 章横断面の構成 2-1 総則 道路の横断面の基本的な考え方 必要とされる交通機能や空間機能に応じて, 構成要素の組合せ と 総幅員 総幅員 双方の観点から検討 必要とされる道路の機能の設定 通行機能 交通機能アクセス機能 滞留機能 環境空間 防災空間 空間機能 収容空間 市街地形成 横断面構

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東京都市計画第一種市街地再開発事業前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業位置図 東京停車場線 W W 江戸橋 JCT 日本橋茅場町 都 道 一石橋 5.0 特別区道中日第 号線 江戸橋 15.

1) 庁舎位置の中心性建設候補地の評価 比較添付資料 1 人口重心との位置関係 候補地 1 現庁舎敷地 直線距離 250m 直線距離 1.4Km 候補地 2 都市広場 直線距離 1.3Km 候補地 3 鳥栖スタジアム第 4 駐車場 この地図は国 地理院の電 地形図を使 したものです 1

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

目次 1. 指定引取場所の適正配置原則について 2.A B 両グループの指定引取場所の現状について 3. 指定引取場所の A B 共有化のメリットについて 4. 指定引取場所の A B 共有化に伴う統合のメリットについて 5. 指定引取場所の A B 共有化 統合について留意すべき点 6. 離島にお

東京都駐車場条例(昭和三十三年東京都条例第七十七号)新旧対照表(抄)

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便所 縮尺 福祉型便房のある便所の構造 福祉型便房並びに腰掛便座及び手すりの 設けられた便房の構造並びに床置式の小便器の構造 手すり 縮尺 外形 両端部及びわん曲部の構造並びに傾斜路及び階段の両端部の構造 視覚障害者用 床材 縮尺 視覚障害者用床材及び周囲の床材の仕上げ材料 仕上げ方法 色及び形 状

高層ビルのEV設置計画

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資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

立川市絶対高さを定める高度地区指定に関する検討方針 平成 26 年 5 月 立川市 0


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2020 年東京オリンピック パラリンピック競技大会を見据えた行政の暑さ対策に関する取組 Countermeasure plans by governments against intense heat toward 2020 Tokyo Olympic & Paralympic games 内閣官

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○新潟県高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行細則

1. Tokyo 2020 アクセシビリティ ガイドライン ( 以下 ガイドライン ) とは 国際パラリンピック委員会 ( 以下 IPC) が定める IPC アクセシビリティガイド ( 以下 IPC ガイド ) の技術仕様や大会関係者向けトレーニングに関する項目と 国内関係法令等に基づき アクセシビ

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名前 第 1 日目 建築基準法 2 用途規制 1. 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において 当該敷地の過半が工業地域内であると きは 共同住宅を建築することができる 2. 第一種低層住居専用地域内においては 高等学校を建築することができるが 高等専門学校を建築する ことはできない

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「オリンピック・レガシーに関する意識調査」(第2回)結果概要

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速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

各プール内で作成される仮想マシンの台数は 実際の利用者数の状況を観て調整しているが どのプールも の間で設定している また 各プールで使用するデータストアについては 容量が 6TByte のものを8つ用意し 2 つを事務系仮想マシン用のプール 残り 6 つを研究系仮想マシン用のプール

目次

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また, 区域外の道路部分については, 区域内の道路の整備後に, 交通量等の利用状況をみて, 検討していきます 4 常磐自動車道の側道沿いの一方通行の道路について, 一方通行の制限を解除できないのか また, この道路の交通量についても調査を実施した上で, 区域外の道路の整備をしなければならないのではな

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長野県観光地の概要

負傷等の事故の発生を警戒し 防止する業務 ( 雑踏の整理に係るものに限る ) と規定されており 個々の警備業務が雑踏警備業務に該当するか否かは 個々の警備業務ごとに 当該業務の委託契約書等の内容 業務の実態等から雑踏警備業務の定義に該当するか否かをみて判断されるものです (2) 1 号業務との関係

2) 行政機能ゾーニングについて新庁舎の整備において 各部署の庁内配置については 来庁舎の利便性と職員の業務効率の向上等の観点から以下のように考えます 1 町民の利用頻度が高い部署の考え方 相談 窓口 情報提供 の機能を有する町民の利用頻度が高い部署は 町民の利便性と来庁のしやすさに配慮して 1 階

区域の整備 開発及び保全に関する方針土地利用の方針 地区施設の整備の方針 地区の立地特性を踏まえ 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため 土地利用の方針を以下に定める 1 国際化に対応した業務 商業 宿泊等の多様な機能に加え 氷川神社と連携した江戸文化や赤坂地域の魅力を伝える歴史

〈参考〉

郵便ポスト利用者の安全確保・利便性向上等に関する行政評価・監視 要旨

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目 次 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画計画書 1P 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画計画図 3P 流山インターチェンジ北部物流センター地区地区計画運用基準 4P 地区整備計画の運用について 運用基準の解説 5P 6P (1) 建築物等の用途の制限 6P (2) 建築

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

高根沢町デマンドバス業務委託事業仕様書 1. 委託業務の名称 高根沢町デマンドバス業務委託事業 2. 目的 デマンドバスの運行を行うための受託者を選定する公募型プロポーザルを実施するに あたり 運営 運行業務内容の詳細について この仕様書に定めるものとする 3. 全体的事項 (1) 委託契約期間契約

Transcription:

平成 27 年 3 月 25 日 オリンピック パラリンピックに伴う大規模施設対策等小委員会 中間報告 一般社団法人日本物流団体連合会 1. 五輪大会開催に向けて懸念される物流への影響 ( 背景 ) 2020 年に開催が予定されている東京オリンピック パラリンピック ( 以下五輪大会 ) を見据え 東京都心部全域で再開発の機運が高まっている 多くの競技が開催される湾岸地区を中心に 新競技場の建設や既存の施設の改修 更に五輪大会開催を前にオープンする大型商業施設の建設も検討されている 五輪大会の観客が訪れることにより 東京とその周辺の経済活動も活性化することが予想されている ( 建設需要増大の影響 ) 経済の活性化をもたらすと考えられる五輪大会であるが 物流事業においては懸念材料も含んでいる その最たるものが 大規模建築物の建設ラッシュである 五輪大会の開催に当たっては 実際に競技が行われるスタジアム 競技に参加する世界各国の選手達が宿泊する選手村 観客が宿泊するホテル等 多種多彩な大規模建築物が必要であり 五輪大会に向けてそれら施設の建設が 特定のエリアで限られた期間内に集中して起こることが予想される これにより 大規模建築物の建設に従事する建設業関連の車両の通行が大幅に増加することが予想されており 慢性化している東京都心部の渋滞に一層拍車をかけるとともに 地域社会の環境全体が悪影響を受ける懸念がある ( 交通規制の影響 ) また 五輪大会開催期間中においては 競技の円滑な開催と観客の安全確保を目的として 競技場などに至るルートでの車両の通行が制限されることが予想され 物流事業者の集配業務などに支障が出る可能性も否定できない p. 1

2. 現状の建物における物流に関する問題点 大きな懸念は オリンピックを契機として建設される大規模建築物をはじめ 今後新しく建造される施設において 物資の搬入や搬出を円滑に行うことが可能かどうかという点である 現存する百貨店や複合商業ビル等の大規模建築物では 物流に配慮されて建設されたものは少ないと言わざるを得ない 昭和の高度経済成長期が終わって以降 物流は少量多頻度納品を基本とするジャストインタイムを主流とする方式へと移り変わったが 貨物を受け入れる側であるビルなどの建造物は その急激な変化に追いつくことができていないという側面がある そのため商業ビル等大規模建築物が関連する物流は 現在多くの問題点を抱えていることが 報告されている 建築物の施主の協力と物流事業者の工夫によって円滑な物流を実現した先進的な取り組みは まだ多くはないのが現実である 建物への荷物搬出入作業の際に生じている問題点として 当委員会に報告された主なものを整理すると 以下のとおりである 1 高さ制限により 貨物車両が入構できないこと 都市部の建物に多く見られる事例として 駐車スペースの高さ制限のため貨物車両が建物内部に入構できないことがある 一般的に集配に使用される2t 車が 3.2m 4t 車が 3.5m~3.8mの高さを有するのに対し 駐車スペースの出入り口に設けられている高さ制限は 2.1mとされていたり 2.5mとされているものが多く存在する このため 物流事業者は高さ制限が存在する駐車スペースに入構するため 荷台の昇降を行い建築限界に抵触しない特殊な車両を用意したり 軽車両や1t 車など小型の車両で何度も配送を行ったりと 非効率な作業を余儀なくされている これに伴い 建物に出入りする車両が増えることで 周辺道路の渋滞等環境悪化が誘発される懸念が生じる 2 荷捌き場 駐車スペースの不足により路上荷役作業が発生し それがもと で周辺道路の渋滞 貨物車両の二人乗務等が発生すること 大規模商業施設などに実際に出入りする荷物量に 建物内の荷役スペース等 の供給が追い付いていないケースが存在する p. 2

例えば 一日数十台の貨物車両が出入りする建物であるにも関わらず 駐車スペースが2 台分しか設けられていない建物も存在する また荷捌き場においても 段差や勾配があるために作業が滞るケースがあり スペースが十分に確保されていないケースも多い 荷捌き場の狭さ 駐車スペースの受け入れ台数の少なさは 1 回当たりの荷役作業に要する時間を長くする その結果 その後に行う次の場所への配送に遅れないようにするため 建物内の駐車スペースや荷捌き場に入れなかった貨物車両が やむを得ず建物付近の道路上において荷役作業を行うこととなる 車両を駐車して集配を行うと違反となるため それを回避するために社員をもう一人乗務させるという対応を余儀なくされる場合もあり 物流事業者の人件費負担の増 人手不足の要因に繋がっている また 貨物車両が路上荷役を行うことで 周辺道路は渋滞が発生し 地域の円滑な交通網実現に支障が出てしまう例も多い ひいては 周辺道路の渋滞や環境悪化により 建物の価値に悪影響が及ぶ可能性がある 3 貨物用エレベーターの未設置 不足による長い手待ち時間が発生すること 商業ビル等の大規模建築物においては 当然のことながら高層階への荷物の集配作業を行うことも多い 高層階での作業にはエレベーターが必要不可欠である 建物の利用者と荷物の取扱量がともに多い建物では 旅客用エレベーターと貨物用エレベーターの独立した運用が望ましい しかし現実には 貨物用エレベーターの数が不十分であったり もしくは貨物用エレベーターそのものが存在しないなど 縦の物流動線が整備されていない場合も多い 数少ないエレベーターを使用して荷物の搬出入を行う場合は エレベーターを使う順番を待ち続ける必要があり 手待ち時間が長くなる 旅客と共用するエレベーターでは 最初から旅客で満員になっていて 荷物の搬出入のためにエレベーターを使えないケースもある エレベーター利用まで 30 分以上待ち続けた事例もある 手待ち時間の増加を嫌い 低層階へは 階段を利用して集配を行う事業者もあるが その場合は台車を抱えての階の昇降など 作業における負担が大きくなる 4 館内動線の不備により 円滑な搬出入の阻害 人の移動との交錯が発生す ること 建物の内部における物流動線の整備不足による支障も多く見られる 商業ビル等の大規模建築物においては 建物の利用者もかなりの数に上るが p. 3

人の動線と荷物の動線が分離されておらず 双方の移動が交錯してしまうケースが多く存在する 物流事業者が 建物の利用者の通行量が多い通路を荷物の搬出入に使用すると 人を避けながらの移動が必要となるため 作業に時間がかかり 能率が上がらない 一方 建物の利用者が貨物の動線と交錯すれば 利用者の側から見ても移動の煩雑さを招き 荷物と接触し怪我を負うリスクも高まる 物流事業者のみならず建物の利用者も不利益を被るこのような事態は 建物の所有者 運営者にとって 決して望ましいものではない 3. 建物における物流への配慮による問題点の改善と効果 例えば 最近都心で竣工した高さ約 200mの大型ビルには 毎日約 1100 台の車両が出入りしているといわれているが その構成を見ると 650 台から 700 台は 貨物用車両だと言われている 大型のビルには 多くのレストランや ショッピングのエリア 事務所などが入居しているが その業務を進めるために 物資の搬出入が欠かせないのである このような 建物側にとって不可欠な物流であるからこそ 上記のような課題は 物流事業者にとって問題となっているだけでなく より広範な関係者に悪い影響を与えている 逆に言えば このような問題が生じないように 建物側において 物流に関して適切な配慮が行われれば その効果は次のように多くの関係者に及ぶ 1 物流事業者にとっての意義 円滑な作業の実現による業務効率化が可能となる ( 手待ち時間の短縮 二 人乗務の解消 車両運行回数の削減など ) 2 建物の所有者にとっての意義 荷物の滞留や周辺道路の渋滞が発生しない円滑なビル運営の実現 それによる自らの所有する建物の資産価値向上 3 建物の利用者にとっての意義 的確な物流サービスに支えられて 建物内での便利な活動や業務が可能となる ( 入居者 テナント ) 人の動線と荷物の動線がそれぞれ分離された上で円滑に運営されるため 快適で安全な利用ができる ( 建物を利用する一般消費者 ) p. 4

4 建物が存在する地域社会にとっての意義 円滑な荷役作業により 建物周辺での路上駐車 路上荷役がなくなる 建物周辺における一般車両の通行を妨げない円滑で安全な地域交通が実現され 環境面でも好ましいものとなる 4. 問題点解決に向けた提言 大規模建築物の建設において あらかじめ物流への配慮の措置を講じておけば 上記のように 多くの関係者にメリットを与えることができることとなる しかしながら 大規模建築物は一旦建設されるとその耐用年数は長く 数十年に及ぶ また 建設後に施設の改築を行おうとしても 大きなコストや長い時間がかかり 容易ではない 他方 物流への配慮を設計段階から実施している建物であれば 上記のような問題の多くは 回避することができ また 追加的な大きなコストも回避することができると考えられる そこで日本物流団体連合会は 大規模建築物における物流に関わる問題点解決に向け 以下の提言を行う 〇大規模建築物を建築する際には 設計段階において物流関係者との協議を 経て 物流に配慮したものとなるようにすること 〇そのための手順をルール化すること なお 物流に配慮した作りとなっている建物には それが分かるようなビルの 呼称を与え 建物に関わる物流への配慮の取り組みを広く社会へ知らせること が望ましいと考えられる 5. 更なる活動及び検討の必要性について 中間報告による以上の提言に加え 今後 競技場などを含む大型建築物の目的や性格に基づく具体的な対策検討や 建物における必要な出入口や駐車スペースの数値的な分析 法令 条例による駐車場整備等に関する制度の改善すべき事項 周辺道路の渋滞対策など 更なる検討が必要な案件について 平成 27 年度以降も引き続き検討を重ねていく p. 5