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Transcription:

頸動脈ステント留置術における MOMA ウルトラの有用性 Mo.Ma Ultra 兵庫医科大学脳神経外科学講座進藤誠悟先生吉村紳一先生 主任教授 はじめに 頸動脈ステント留置術 (Carotid Artery Stenting:CAS) は 頸動脈内膜剥離術 (Carotid Endarterectomy:CEA) のハイリスク患者におけるランダム化比較試験 (SAPPHIRE study) 1) に基づき 2008 年に本邦で承認された 以後 様々な脳保護デバイス (Embolic Protection Device:EPD) が承認され CASの件数は増加傾向にある 一方で CREST 2) では CASのCEAに対する非劣性が証明されたが EVA-3S 3) やSPACE 4) ICSS 5) では CEAのCASに対する優位性が証明されており CASにおける周術期塞栓症が問題となっている 特に lipid rich plaque プラーク内出血などの不安定プラークを有する症例に関しては 周術期合併症を認めやすいといわれており 6), 7) これらの CASハイリスク症例での周術期塞栓症の予防が重要である よって 術前にプラーク診断を行い その結果に基づき EPDやステントの選択を行う必要がある EPDの中でも CASにおける Proximal Protection Deviceの有効性はさまざまな研究で証明されており 欧米では合併症率減少の一助となっている 8) 今回 2012 年 7 月に本邦で薬事承認を取得し 2013 年 1 月に本邦初のCAS 用近位型バルーンプロテクションとして保険収載されたMOMA ウルトラを使用し 有効であった症例を紹介する 1) Yadav JS, et al: Protected carotid-artery stenting versus endarterectomy in high-risk patients. N Engl J Med. 351: 1493-1501, 2004 2) Brott TG, et al. Stenting versus endarterectomy for treatment of carotid-artery stenosis. N Engl J Med. 363: 11 23, 2010 3) Mas JL, et al: Endarterectomy Versus Angioplasty in Patients with Symptomatic Severe Carotid Stenosis (EVA-3S) trial: results up to 4 years from a randomised, multicentre trial. Lancet Neurol. 7: 885 892, 2008 4) Eckstein HH, et al: Results of the Stent-Protected Angioplasty versus Carotid Endarterectomy (SPACE) study to treat symptomatic stenoses at 2 years: a multinational, prospective, randomised trial. Lancet Neurol. 7: 893 902, 2008 5) Ederle J, et al: Carotid artery stenting compared with endarterectomy in patients with symptomatic carotid stenosis (International Carotid Stenting Study): an interim analysis of a randomised controlled trial. Lancet. 375: 985 997, 2010 6) Sakamoto M, et al: Magnetic resonance plaque imaging to predict the occurrence of the slow-flow phenomenon in carotid artery stenting procedures. Neuroradiology 52: 275-283, 2010 7) Yoshimura S, et al: High-Intensity Signal on Time-of-Flight Magnetic Resonance Angiography Indicates Carotid Plaques at High Risk for Cerebral Embolism During Stenting. Stroke 42: 3132-3137, 2012 8) Robert M. Bersin, et al: A Meta-Analysis of Proximal Occlusion Device Outcomes in Carotid Artery Stenting. Cath Caridovasc Int 2012 1

Case 1 不安定プラークを有する CEA ハイリスク症例 CLINICAL PROFILE:79 歳男性 既往歴高血圧症 二型糖尿病 ( インスリン投与中 ) 脂質異常症 間質性肺炎 ( 在宅酸素療法導入中 ) 心臓弁膜症術後 現病歴突然の右眼の見えにくさを主訴に近医眼科を受診 網膜動脈分枝閉塞症と診断され 精査目的で紹介となった 現症状右眼に一部視野欠損を認めるものの その他神経学的異常所見は認めなかった 術前画像診断 頭部 MRI 拡散強調画像では 明らかな異常は認めない ( 図 1) が MRAで右内頸動脈遠位の描出不良を認めた ( 図 2) 頸部血管 time of flight(tof)-mra では 右内頸動脈の起始部に狭窄を認めた ( 図 3) 脳血管造影検査右内頸動脈にNASCET 85% の狭窄を認めた 頸部血管超音波検査等輝度と低輝度が混在するプラークを認め 収縮期ピーク血流速度 (peak systolic velocity:psv) は 551 cm/sであった 診断結果右内頸動脈狭窄症 網膜動脈分枝閉塞症 頸部血管 MRAプラークイメージ T1WIBB 法で高信号 ( 図 4) TOF-MRAでも高信号 ( 図 5) の不安定プラークと考えられた 病変情報右内頸動脈狭窄症 (NASCET 85%) 不安定プラーク 高位病変 Aortic arch type Type Ⅱ 図 1 術前 DWI 図 2 頭部 MRA 2

Mo.Ma Ultra 図 3 頸部 TOF-MRA 図 4 T1 強調画像 BB 法図 5 TOF-MRA デバイス選択 シース 9Fr スーパーシース 25 cm[ メディキット ] ガイドワイヤーラジフォーカス 0.035 スタンダードタイプ [ テルモ ] ラジフォーカス 0.035 half stiff 300 cm[ テルモ ] Synchro2 0.014 200 cm[ 日本ストライカー ] 造影カテーテル 4Fr BHW 100 cm[ カテックス ] プロテクションデバイス MOMA ウルトラ 9Fr[ 日本メドトロニック ] PTAバルーンカテーテル Stering MR(3.0 mm 40 mm)[ ボストン サイエンティフィック ジャパン ] Stering MR(4.5 mm 20 mm)[ ボストン サイエンティフィック ジャパン ] ステント Carotid Wallstent(10 mm 24 mm)[ ボストン サイエンティフィック ジャパン ] 頸動脈ステント留置術 局所麻酔下に右大腿動脈から9Fr ロングシースを挿入し 造影カテーテルを 0.035 スタンダードガイドワイヤーで右外頸動脈遠位に進めた コントロールの撮影を行い ( 図 6) 次にガイドワイヤーを 300 cm half stiffワイヤーに置換し 造影カテーテルと MOMA ウルトラの入れ替えを行った MOMA ウルトラの外頸動脈と総頸動脈のバルーンを拡張し 造影剤の停滞を確認した ( 図 7) その後 Synchro2ガイドワイヤーで lesion crossし PTAバルーンにて前拡張を行った 続いて Carotid Wallstentを狭窄部遠位から総頸動脈にかけて留置し 後拡張を行った 後拡張バルーンを deflateするタイミングで血液吸引を開始したところ 最初の 40 mlにはデブリスを認めたが 以降は認めなかった 外頸動脈 総頸動脈の順にバルーンを deflateし 頸部確認造影 ( 図 8) および頭蓋内造影を行ったところ遠位塞栓は認めず 手技を終了した 術後の頭部 MRI 拡散強調画像では 脳梗塞は認めなかった ( 図 9) 3

Case 1 不安定プラークを有する CEA ハイリスク症例 図 6 コントロール造影図 7 血流遮断確認図 8 術後確認造影図 9 術後 DWI DISCUSSION 本症例は高位病変 かつ間質性肺炎のため全身麻酔が困難であり CEAハイリスクと考え CASを施行することとした 術前の画像診断から 不安定プラークの可能性が高いと判断し 栓子回収能力の高い脳保護デバイスである MOMA ウルトラを選択した 外頸動脈 総頸動脈のバルーンを inflateした後に造影剤の slow injectionを行ったところ 造影剤の停滞を認め 確実な遮断を得られていることが確認できたため MOMA ウルトラのみで治療を行った 吸引した血液にデブリスを認めたため 20 ml 5 本 計 100 mlの血液吸引を行い 遠位塞栓は認めず 手術を終了した COMMENTS CASにおける最大の問題点は周術期塞栓症であり その予防が CAS 成功の最大の鍵であるとされている 従来のフィルターデバイスと MOMA ウルトラのランダム化比較試験 (PROFI study) 9) において MOMA ウルトラはフィルターデバイスと比較して 有意に MRI 上の脳梗塞を減らしたと報告されている また 周術期脳梗塞が発生しやすいソフトプラーク例に対しても MOMA ウルトラはフィルターデバイスと比較して Micro Embolic Signal(MES) を有意に減らしたと報告されており 10) 本症例のような不安定プラーク例においては最適な脳保護デバイスと考えられる 9) Klaudija B. et al. The PROFI Study (Prevention of Cerebral Embolization by Proximal Balloon Occlusion Compared to Filter Protection During Carotid Artery Stenting) Journal of the American College of Cardiology Vol. 59, No. 15, 2012 10) Montorsi P et al. Microembolization during carotid artery stenting in patients with high-risk, lipid rich plaque. Randomized Trial of Proximal versus distal cerebral protection J Am Coll Cardiol. 58: 1656-63, 2011 4

Case 2 分枝からの血流による Distal Emboli が懸念される症例 CLINICAL PROFILE:70 歳男性 Mo.Ma Ultra 既往歴高血圧症 脂質異常症 現病歴突然の右上肢のしびれ感を主訴に近医を受診 頭部 MRIで頭頂葉に散在性の梗塞と左内頸動脈の狭窄を指摘され 紹介となった 現症状右上肢の錯感覚あり その他に明らかな神経学的異常所見なし 術前画像診断 頭部 MRI 拡散強調画像では 左前頭葉に散在性の梗塞を認め ( 図 1) MRAでは 頭蓋内血管に明らかな狭窄や閉塞を認めなかったが ( 図 2) 頸部血管 MRAでは 右内頸動脈の起始部に狭窄を認めた ( 図 3) 脳血管造影検査右内頸動脈にNASCET 75% の狭窄を認めた ( 図 4) 診断結果左内頸動脈狭窄症 ( 症候性 ) アテローム血栓性脳梗塞 頸部血管 MRAプラークイメージ T1WIBB 法で等信号 ( 図 5) TOF-MRAでも信号は高くなく ( 図 6) 比較的安定なプラークと考えられた 頸部血管超音波検査プラークは高輝度を示していた 病変情報左内頸動脈狭窄症 (NASCET:75%) Aortic arch type Type Ⅰ 図 1 術前 DWI 図 2 頭部 MRA 図 3 頸部 TOF-MRA 5

Case 2 分枝からの血流による Distal Emboli が懸念される症例 図 4 術前頸部造影図 5 T1WIBB 法図 6 TOF-MRA デバイス選択 シース 9Fr スーパーシース 25 cm[ メディキット ] ガイドワイヤーラジフォーカス 0.035 スタンダードタイプ [ テルモ ] Amplatz Extra stiff guidewire[cook Japan] CHIKAI 0.014 200 cm[ 朝日インテック ] 造影カテーテル 4Fr シモンズ 125 cm[ テルモ ] プロテクションデバイス MOMA ウルトラ 9Fr[ 日本メドトロニック ] PTAバルーンカテーテル Aviator Plus(3.5 mm 30 mm)[ ジョンソン エンド ジョンソン ] Sterling MR(5.0 mm 20 mm)[ ボストン サイエンティフィック ジャパン ] ステント Carotid Wallstent(10 mm 24 mm)[ ボストン サイエンティフィック ジャパン ] 頸動脈ステント留置術 右大腿動脈に9Frロングシースを留置し 4Fr BHWカテーテルと 0.035 スタンダードガイドワイヤーの組み合わせで右外頸動脈遠位にBHW カテーテルを誘導し スタンダードガイドワイヤ をAmplatz Extra stiff guidewireに置換した後 BHWカテーテルとMOMA ウルトラの入れ替えを行った CHIKAIにてlesion crossを行い MOMA ウルトラによる proximal protection 下にPTA バルーンにて前拡張を施行した 本例では 内頸動脈分岐部付近より上甲状腺動脈 上行咽頭動脈の分岐を認めており ( 図 7) Protectionが十分に行えない可能性があるため 前拡張バルーンのデフレーション ( 図 8) と同時にMOMA ウルトラ本体からシリンジで吸引を行った ( 図 9) 続いてCarotid Wallstentを留置したが 一部狭窄が残存したため 後拡張を実施した この際にもバルーンの deflationと同時に MOMA ウルトラからの血液吸引を行った 一時 脈拍が 40まで低下し 血圧も一過性に60 台まで低下したが 速やかに改善した 所定の血液吸引後 ECAとCCA バルーンを解除し 確認造影を行った ( 図 10) 頭蓋内造影を行って遠位塞栓がないことを確認し 手技を終了した 術後の頭部 MRI 拡散強調画像では 脳梗塞は認めなかった ( 図 11) 6

Mo.Ma Ultra バルーンデフレーション 血液吸引 図 7 外頸動脈起始部図 8 前拡張図 9 バルーン収縮時同時血液吸引 図 10 頸部確認造影図 11 術後 DWI DISCUSSION 本症例では 外頸動脈分岐部付近で上甲状腺動脈と上行咽頭動脈が分岐しており MOMA ウルトラによる proximal protectionが十分に行えない可能性が考えられた そこで 前 後拡張のバルーンデフレーションと同時に MOMA ウルトラ本体より吸引を行いデブリスの回収を行った結果 術後に遠位塞栓を認めず 無事に手技を終了することができた COMMENTS 本症例のように分岐部の近くより分枝が認められる場合 MOMA ウルトラによる proximal protection が十分に行えない可能性もある その際は 造影剤の test injectionを行い 血流の停滞を確認し 造影剤が遠位に流れてしまう場合には 前 後拡張のバルーンデフレーションと同時に MOMA ウルトラ本体よりシリンジでの吸引を行うと良い 大量のソフトプラークを有する症例や 外頸動脈側枝からのフローにより完全なプロテクションが難しいことが予測され 合併症が心配される症例では distal protectionを追加することも有効である可能性がある 但し distal protectionを追加する際には MOMA ウルトラによるプロテクション効果を最大限にするために MOMA ウルトラによる血流遮断を途中で解除するなどの手技は避けるべきである 結語 以上の2 症例で示したように MOMA ウルトラは現在承認 保険適用 販売されている CAS 用プロテクションデバイスのうち脳保護効果が高く 安全性 有効性共に非常に優れていると考えられた 特に大量の不安定プラークを有し CASハイリスクと考えられる症例に対して MOMA ウルトラは脳保護効果を発揮すると考えられるため 従来の一歩上をいく脳保護デバイスと言うことが出来る 挿入に際する手技に習熟すればほぼ全例に使用可能であり CASのさらなる成績向上に寄与すると考えられる 7

Mo.Ma Ultra Mo.Ma Ultra PROXIMAL CEREBRAL PROTEC TION DEVICE Medtronic, Inc. 3576 Unocal Place Santa Rosa, CA 95403 USA Tel: 707.525.0111 Innovating for life. MIV-182