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また リハビリテーションの種類別では 理学療法はいずれの医療圏でも 60% 以上が実施したが 作業療法 言語療法は実施状況に医療圏による差があった 病型別では 脳梗塞の合計(59.9%) 脳内出血 (51.7%) が3 日以内にリハビリテーションを開始した (6) 発症時の合併症や生活習慣 高血圧を

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3 病型別 初発再発別登録状況病型別の登録状況では 脳梗塞の診断が最も多く 2,524 件 (65.3%) 次いで脳内出血 868 件 (22.5%) くも膜下出血 275 件 (7.1%) であった 初発再発別の登録状況では 初発の診断が 2,476 件 (64.0%) 再発が 854 件 (22

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3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

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( 別紙 ) 法的脳死判定のチェックシート 脳死判定を受けた者 氏名 住所 性別生年月日年月日生 脳死判定を拒まない 承諾した家族 代表者氏名 住所 脳死判定を受けた者との続柄 脳死判定を受けた者及び家族の意思 ア脳死判定を受けた者が生存中に臓器を提供する意思を書面により表示しており 脳死判定に従う

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

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37, 9-14, 2017 : cefcapene piperacillin 3 CT Clostridium difficile CD vancomycin CD 7 Clostridium difficile CD CD associate

呼吸の観察呼吸数 SpO 2 を測定し 頸静脈の怒張 気管の偏位 頸部 胸部の皮下気腫の有無 呼吸音の左右差 胸郭運動 胸壁打診での鼓音の有無を観察します 緊張性気胸を疑えば直ちに胸腔穿刺または胸腔ドレナージが必要になりますので準備します 心タンポナーデを疑えば心エコーで心嚢液貯留を確認し 心嚢穿刺

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四消化器系 ( 口腔及び歯牙 を除く ) 五血液及び造血器系六腎臓 泌尿器系及び生殖器系 ( 二 ) 心筋障害又はその徴候がないこと ( 三 ) 冠動脈疾患又はその徴候がないこと ( 四 ) 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと ( 五 ) 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁

血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月

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状態の観察 状態の観察を通して 要連絡と緊急の 気づき が必要であり 病気が想像できれば緊急度が理解しやすい特に 脳疾患 心疾患 消化管出血は緊急度が高い 状態の観察で気づきにくい重要な疾患もある特に 高齢者の脱水には要注意 他に 慢性心不全のむくみ 突然の血糖異常 認知症に伴う急性疾患 ( 本人が

パネルディスカッション 2 Q 専門領域について選択してください 1. 消化器内科 2. 消化器外科 3. 放射線科 1% 4% 3% 21% 4. その他の医師 5. その他 ( 医師以外 ) 71%

調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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道路交通法に基づく一定の症状を呈する病気等にある者を診断した医師から公安委員会への任意の届出ガイドライン

表 1 入院時検査所見 11,500L 471 L 17.0 gdl.3 L ph 7.49 PaCO 37.8 mmhg PaO 67.4 mmhg HCO 3.6 meql B E 1. meql 141 meql K 3.9 meql Cl 108 meql Ca 8.4 mgdl P 4.5

Transcription:

2014/7/28 救急ランチョンセミナー 意識障害の見方 考え方 初期研修医塩田浩平

Agenda 意識障害とは? 意識障害の評価方法と疾患 症例提示 まとめ

今日の目標 1 意識障害が何なのか少し分かるようになる 2 JCS GCSを空で言えて 判定できるようになる 3 意識障害の鑑別疾患が5 個くらいあがるようになる 4 意識障害の初期対応ができるようになればいいなあ

そもそも意識って何? 意識障害とは? 意識には 覚醒 認知 ( 自分と外界の正確な認識 ) の二つがある 覚醒は脳幹 ( 網様体賦活系 ;ARAS) 認知は大脳皮質が担う そのどちらかが障害されると意識障害をきたす つまり 意識障害は神経系の症候

間違えないで欲しい 意識障害と意識消失 意識障害と意識消失の違いは? 意識消失 = 失神 失神とは 脳血流減少に基づく短時間 ( 長くても数分 ) の意識を失うこと 自然に回復し完治する 意識消失は心血管系の症候

難しいので図で説明 心臓 血流 脳 量的に低下すると 意識消失 (= 失神 ) 質的に低下すると 意識障害 量的低下の原因 : 不整脈 貧血 起立性低血圧などなど 質的低下の原因 : 低酸素 低血糖 アルコール アンモニア 電解質異常などなど

意識の評価方法 :JCS と GCS 意識を評価する方法として JCS(Japan Coma Scale) と GCS(Glasgow coma scale) がある wikipedia によると JCS は 1974 年に日本で考案され ( 当然 ) 別名 3-3-9 度方式とも言われる 意識の尺度を 大きく 3 つに分け それ をさらに細かく 3 つに分け 3 3=9 段階に分けるから

意識の評価方法 :JCS と GCS JCSはくも膜下出血による脳ヘルニアの進行を評価することを目的に作られているため その他の意識障害の評価には邪道 GCSは外傷性脳障害による意識障害を評価することを目的につくられているため その他の意識障害の評価には邪道 でも 評価するにはこれしかないので使うしかない 一番大事なことは JCS は数値が大きいほど重症 GCS は数値が小さいほど重症

JCS を覚えよう JCS(Japan Coma Scale): 大きいほど重症 これは暗記しかない Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態 1. だいたい意識清明だが 今ひとつはっきりしない 2. 見当識障害がある 3. 自分の名前 生年月日が言えない Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態ー刺激をやめると眠り込むー 10. 普通の呼びかけで容易に開眼する 20. 大きな声またはゆさぶりにより開眼 30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけ続けると辛うじて開眼 Ⅲ. 刺激しても覚醒しない状態 100. 痛み刺激に対して 払いのけるような動作をする 200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり 顔をしかめる 300. 痛み刺激に反応しない

GCS を覚えよう GCS(Glasgow Coma Scale): 小さいほど重症 E( 開眼 ) V( 言語反応 ) M( 運動反応 ) E4 自発的に開眼 E3 呼びかけで開眼 E2 痛み刺激で開眼 E1 開眼なし V5 時 場所 人が分かる V4 上記が曖昧 V3 不適当な単語 V2 理解不能な声 V1 声なし ( 挿管中はVT) M6 指示に従う M5 疼痛部に手を持っていく M4 逃避行動 M3 異常屈曲反応 M2 異常伸展反応 M1 反応なし 3 15 点でスコア化 表現方法の例 :GCS7(E2V2M3) 15 点 : 正常 14 13 点 : 軽度 12 9 点 : 中等症 8 点以下 : 重症

意識障害は あいうえおちっぷす A Alcohol Acidosis I Insulin U Uremia E Encephalopathy Endocrine Electrolytes O Overdose Oxygen T Trauma Temperture Tumor I Infection P Psychiatric S Stroke Seizure Shock 急性アルコール中毒 アルコール離脱症候群 アシドーシス 低血糖 糖尿病性ケトアシドーシス 高血糖高浸透圧症候群 尿毒症 肝性脳症 高血圧性脳症 ウェルニッケ脳症甲状腺 副腎疾患 Na K Ca Mg 薬物中毒低酸素血症 CO 2 ナルコーシス 頭蓋内血腫 脳挫傷低体温脳腫瘍 腫瘍随伴症候群 (Ca ) 髄膜炎 脳炎 脳膿瘍 ヒステリー 脳卒中 ( くも膜下出血 脳出血 脳梗塞 ( 広範囲 )) 痙攣 てんかん発作循環不全 ( ショック )

バイタルサインから攻める意識障害 体温 高体温 低体温 感染症 ( 髄膜炎 脳炎 脳膿瘍 ) 甲状腺 副腎 低体温症 副腎 血圧 高血圧頭蓋内病変 (Cushing 徴候 ) 低血圧 ショック 脈拍 頻脈 徐脈 感染症 ショック 甲状腺 頭蓋内病変 (Cushing 徴候 ) 甲状腺 低体温症 不整脈 Adams-Stokes 症候群 ( 不整脈による意識障害のこと ) 呼吸 頻呼吸 Kussmaul 大呼吸 Cheyne- Stokes 呼吸 失調性呼吸 低酸素血症糖尿病性ケトアシドーシス 尿毒症 尿毒症 心不全 中枢神経系の障害 脳幹 ( 呼吸中枢 ) の障害 やっぱり難しい

Case1:62 歳男性 肥満体型 現病歴ある年の 9 月 祭りで 3 日間飲酒が続いている 本日も朝から飲酒をしていた 本日 20 時 家人が外出から帰宅すると いびきをかいて寝ており 時折無呼吸になることもあり 起こしても返答がないため救急搬送された 搬送中 痛み刺激で開眼 返答あり 既往歴糖尿病 高血圧 睡眠時無呼吸症候群 Q1. 意識障害の程度は? Q2. 注目する病歴は? さらなる問診は? Q3. 鑑別疾患は? Q4. 初期対応は?

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴ある年の 9 月 祭りで 3 日間飲酒が続いている 本日も朝から飲酒をしていた 本日 20 時 家人が外出から帰宅すると いびきをかいて寝ており 時折無呼吸になることもあり 起こしても返答がないため救急搬送された 搬送中 痛み刺激で開眼 はっきりとした返答あり JCS(Japan Coma Scale) Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態 1. だいたい意識清明だが 今ひとつはっきりしない 2. 見当識障害がある 3. 自分の名前 生年月日が言えない Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態ー刺激をやめると眠り込むー 10. 普通の呼びかけで容易に開眼する 20. 大きな声またはゆさぶりにより開眼 30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけ続けると辛うじて開眼 Ⅲ. 刺激しても覚醒しない状態 100. 痛み刺激に対して 払いのけるような動作をする 200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり 顔をしかめる 300. 痛み刺激に反応しない

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴ある年の 9 月 祭りで 3 日間飲酒が続いている 本日も朝から飲酒をしていた 本日 20 時 家人が外出から帰宅すると いびきをかいて寝ており 時折無呼吸になることもあり 起こしても返答がないため救急搬送された 搬送中 痛み刺激で開眼 はっきりとした返答あり GCS(Glasgow Coma Scale) E( 開眼 ) V( 言語反応 ) M( 運動反応 ) E4 自発的に開眼 E3 呼びかけで開眼 E2 痛み刺激で開眼 E1 開眼なし V5 時 場所 人が分かる V4 上記が曖昧 V3 不適当な単語 V2 理解不能な声 V1 声なし ( 挿管中は VT) M6 命令に従う M5 疼痛部に手を持ってくる M4 逃避行動 M3 異常屈曲反応 M2 伸展反応 M1 反応なし A1. 意識障害の程度は? JCSⅡ-30 GCS13(E2V5M6)

Q2. 注目する病歴と追加する問診は? 酒は大量? 患者 62 歳男性 肥満体型 現病歴ある年の 9 月 祭りで 3 日間飲酒が続いている 本日も朝から飲酒をしていた 本日 20 時 家人が外出から帰宅すると いびきをかいて寝ており 時折無呼吸になることもあり 起こしても返答がないため救急搬送された 搬送中 痛み刺激で開眼 返答あり 既往歴糖尿病 高血圧 睡眠時無呼吸症候群 偏食は? 身体所見意識障害あり JCSⅡ-30 GCS13(E2V4M6) 内服? インスリン注射? 肝臓疾患の既往は?

患者 Q3. 考えられる疾患は? 62 歳男性 肥満体型 現病歴ある年の 9 月 祭りで 3 日間飲酒が続いている 本日も朝から瓶ビール 5 本ほど飲酒をしていた 偏食はない 本日夜 8 時 家人が外出から帰宅すると いびきをかいて寝ており 時折無呼吸になることもあり 起こしても返答がないため救急搬送された 搬送中 痛み刺激で開眼 返答あり 既往歴糖尿病 ( アマリール メデット ネシーナ ) 高血圧 睡眠時無呼吸症候群肝臓疾患の既往はなし 身体所見意識障害あり JCSⅠ-1 GCS13(E2V4M6) 本命 : 急性アルコール中毒対抗 : 低血糖大穴 : ウェルニッケ脳症

Q4. 初期対応は? まずは 何はともあれデキスターチェック! 184mg/dL ちょっと高いけどまあ OK! つぎは 体温 SpO2 バイタルサイン! Vital sign BT 36.7 SpO 2 96% BP 118/79mmHg PR 91/min 問題なし!

Q4. 初期対応は? そして 流れるような身体 & 神経所見! ウェルニッケ脳症は アルコール代謝にビタミンB1を使いすぎてビタミンB1が枯渇して意識障害 運動失調 眼球運動障害の3 徴をきたす疾患 眼球運動障害なし 四肢麻痺等の運動失調なし 肝性脳症では 羽ばたき振戦 ( 肝性昏睡 Ⅱ 度 ) が有名 羽ばたき振戦なし その他身体所見に異常なし

採血チェック! 診断 : 急性アルコール中毒 RBC 435 万 /μl BUN 7.7mg/dL Hb 14.7g/dL Cre 0.51mg/dL Hct 40.8% Na 137mEq/L WBC 7500/μL K 3.4mEq/L CRP 定量 0.10 以下 Cl 100mEq/L PLT 20.4 万 /μl S-AMY 55IU/L TP 7.3g/dL T-Bil 0.5mg/dL AST 53IU/L アルコール性肝障害あり ALT 67IU/L ALP 359IU/L Γ-GTP 76IU/L BUN 上昇なし ( 尿毒症なし ) 電解質異常なし 念のため 頭部 CT 施行しているが異常はなかった この患者は輸液 ( ソルアセトF)1000mLにて意識回復し 帰宅

Case2:88 歳女性 現病歴季節は 6 月 昨夜から倦怠感を訴えていた 23 時頃入浴 その後入眠 本日午前 3 時頃 家人と話しをしている途中に返事をしなくなったため 朝 6 時に救急搬送された 既往歴糖尿病 ( インスリン注射歴あり ) Q1. 意識障害の程度は? Q2. 注目する病歴は? さらなる問診は? Q3. 鑑別疾患は? Q4. 初期対応は?

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴季節は 6 月 昨夜から倦怠感を訴えていた 23 時頃入浴 その後入眠 本日午前 3 時頃 家人と話しをしている途中に返事をしなくなったため 朝 6 時に救急搬送された 呼びかけに開眼せず うなっており 痛み刺激に対して払いのける動作をする JCS(Japan Coma Scale) Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態 1. だいたい意識清明だが 今ひとつはっきりしない 2. 見当識障害がある 3. 自分の名前 生年月日が言えない Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態ー刺激をやめると眠り込むー 10. 普通の呼びかけで容易に開眼する 20. 大きな声またはゆさぶりにより開眼 30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけ続けると辛うじて開眼 Ⅲ. 刺激しても覚醒しない状態 100. 痛み刺激に対して 払いのけるような動作をする 200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり 顔をしかめる 300. 痛み刺激に反応しない

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴季節は 6 月 昨夜から倦怠感を訴えていた 23 時頃入浴 その後入眠 本日午前 3 時頃 家人と話しをしている途中に返事をしなくなったため 朝 6 時に救急搬送された 呼びかけに開眼せず うなっており 痛み刺激に対して払いのける動作をする GCS(Glasgow Coma Scale) E( 開眼 ) V( 言語反応 ) M( 運動反応 ) E4 自発的に開眼 E3 呼びかけで開眼 E2 痛み刺激で開眼 E1 開眼なし V5 時 場所 人が分かる V4 上記が曖昧 V3 不適当な単語 V2 理解不能な声 V1 声なし ( 挿管中は VT) M6 命令に従う M5 疼痛部に手を持ってくる M4 逃避行動 M3 異常屈曲反応 M2 伸展反応 M1 反応なし A1. 意識障害の程度は? JCSⅢ-100 GCS8(E1V2M5)

Q2. 注目する病歴と追加する問診は? 患者 72 歳女性 現病歴季節は 6 月 昨夜から倦怠感を訴えていた 23 時頃入浴 その後入眠 本日午前 3 時頃 家人と話しをしている途中に返事をしなくなったため 朝 6 時に救急搬送された 既往歴糖尿病 ( インスリン注射歴あり ) 突然? 徐々に? 他に症状は? 身体所見意識障害あり JCSⅢ-100 GCS8(E1V2M5) 夕食はきちんと食べたか? 心 腎 肝疾患の既往は?

Q3. 考えられる疾患は? 患者 72 歳女性 現病歴季節は 6 月 昨夜から倦怠感を訴えており食事があまりできていなかった 23 時頃入浴 その後入眠 本日午前 3 時頃 家人と話しをしている途中に だんだんと返事がなくなっていったため 朝 6 時に救急搬送された 意識がないため聴取できない 既往歴糖尿病 ( インスリン注射歴あり ) 心 腎 肝疾患の既往なし 身体所見意識障害あり JCSⅢ-100 GCS8(E1V2M5) 本命 : 低血糖対抗 : 脱水による循環不全大穴 : 脳梗塞 ( 広範囲 )

37mg/dL Q4. 初期対応は? まずは 何はともあれデキスターチェック! あれっ? 20% ブドウ糖液 40mL を静注 間もなく意識レベル改善 つぎは 体温 SpO2 バイタルサイン! Vital sign BT 36.4 SpO 2 98% BP 134/62mmHg PR 50/min 問題なし!

Q4. 初期対応は? 一応 身体 & 神経所見 見ときましょうか 脳梗塞 ( 広範囲 ) は 四肢麻痺 痺れなどの神経症状も伴うことが多い 四肢麻痺 痺れなし (Barre sign 陰性 ) 脱水ならばバイタルサイン上 血圧下がり 脈が上がる 一応再検査 BP 134/62mmHg PR 50/minなので大丈夫なはず その他身体所見に異常なし

診断 : 低血糖発作 念のための頭部 CT: 出血や腫瘍なし 大脳皮質 脳幹 低血糖を補正して 3 時間後に帰宅した

Case3:63 歳男性 現病歴前日昼より 顔面が白っぽく しんどそうに見える 何を聞いても ふうーん と返答するのみとなった と様子がおかしいことを妻に指摘され 本日 19 時 妻に伴われて救急外来を受診した いつもは短気な方で感情がすぐに出る性格であるという 既往歴 潰瘍性大腸炎 食道胃逆流症 心 腎 肝疾患の既往なし Q1. 意識障害の程度は? Q2. 注目する病歴は? さらなる問診は? Q3. 鑑別疾患は? Q4. 初期対応は?

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴前日昼より 顔面が白っぽく しんどそうに見える 何を聞いても ふうーん と返答するのみとなった と様子がおかしいことを妻に指摘され 本日 19 時 妻に伴われて救急外来を受診した いつもは短気な方で感情がすぐに出る性格であるという 今日の日付や曜日が分からないが自分の名前や生年月日は分かる JCS(Japan Coma Scale) Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態 1. だいたい意識清明だが 今ひとつはっきりしない 2. 見当識障害がある 3. 自分の名前 生年月日が言えない Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態ー刺激をやめると眠り込むー 10. 普通の呼びかけで容易に開眼する 20. 大きな声またはゆさぶりにより開眼 30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけ続けると辛うじて開眼 Ⅲ. 刺激しても覚醒しない状態 100. 痛み刺激に対して 払いのけるような動作をする 200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり 顔をしかめる 300. 痛み刺激に反応しない

Q1. 意識障害の程度は? 現病歴前日昼より 顔面が白っぽく しんどそうに見える 何を聞いても ふうーん と返答するのみとなった と様子がおかしいことを妻に指摘され 本日 19 時 妻に伴われて救急外来を受診した いつもは短気な方で感情がすぐに出る性格であるという 今日の日付や曜日が分からないが自分の名前や生年月日は分かる GCS(Glasgow Coma Scale) E( 開眼 ) V( 言語反応 ) M( 運動反応 ) E4 自発的に開眼 E3 呼びかけで開眼 E2 痛み刺激で開眼 E1 開眼なし V5 時 場所 人が分かる V4 上記が曖昧 V3 不適当な単語 V2 理解不能な声 V1 声なし ( 挿管中は VT) M6 命令に従う M5 疼痛部に手を持ってくる M4 逃避行動 M3 異常屈曲反応 M2 伸展反応 M1 反応なし A1. 意識障害の程度は? JCSⅠ-2 GCS14(E4V4M6)

Q2. 注目する病歴と追加する問診は? 現病歴前日昼より 顔面が白っぽく しんどそうに見える 何を聞いても ふうーん と返答するのみとなった と様子がおかしいことを妻に指摘され 本日 19 時 妻に伴われて救急外来を受診した いつもは短気な方で感情がすぐに出る性格であるという 既往歴 身体所見 潰瘍性大腸炎 食道胃逆流症 心 腎 肝疾患の既往なし 意識障害あり JCSⅠ-2 GCS14(E4V4M6) 特に分からない

Q4. 初期対応は? まずは 何はともあれデキスターチェック! 150mg/dL 夕食後 1 時間なので少し高くても OK! つぎは 体温 SpO2 バイタルサイン! Vital sign BT 37.3 SpO2 98% BP 168/94mmHg PR 56/min 発熱 高血圧??

バイタルサインを読む Vital sign BT 37.3 SpO2 98% BP 168/94mmHg PR 56/min 体温 1 UP で脈拍は 20UP 37 で脈拍 80 くらい 比較的徐脈? Cushing 徴候?? 頭蓋内圧亢進により 血圧 脈拍 本命 : 頭蓋内病変? 対抗 : 髄膜 脳炎大穴 : 内分泌疾患?

診断 : 脳出血 頭部 CT を施行 左前頭葉に血腫あり 大脳皮質

診断 : 脳出血 血液検査 RBC 438 万 /μl BUN 16.4mg/dL Hb 13.7g/dL Cre 0.90mg/dL Hct 39.2% Na 140mEq/L WBC 9700/μL K 3.4mEq/L CRP 定量 1.21mg/dL Cl 106mEq/L PLT 16.3 万 /μl S-AMY 74IU/L TP 7.3g/dL T-Bil 0.9mg/dL AST 22IU/L 軽度炎症反応のみ ALT 21IU/L ALP 125IU/L Γ-GTP 36IU/L BUN 上昇なし ( 尿毒症なし ) 電解質異常なし ニカルジピンにて降圧後 グリセオールで脳浮腫の改善と アジルバにて高血圧の治療を開始 リハビリ後 転院

今日のまとめ 意識障害は神経の障害 ( 特に大脳皮質と脳幹 ) で起こる 失神とは違う JCS GCSで評価する 意識障害をきたす疾患は あいうえおちっぷす で鑑別する 意識障害の経過 既往歴 内服歴は特に重要なのでしっかり聴取することが大切 バイタルサインからも鑑別に近づける