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間の初日以後 3 年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間 6 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例事業者 ( 免税事業者を除く ) が簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額特定資産の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り ( 以下 高

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第68回税理士試験 消費税法 模範解答(理論)

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

1 制度の概要 (1) 金融機関の破綻処理に係る施策の実施体制金融庁は 預金保険法 ( 昭和 46 年法律第 34 号 以下 法 という ) 等の規定に基づき 金融機関の破綻処理等のための施策を 預金保険機構及び株式会社整理回収機構 ( 以下 整理回収機構 という ) を通じて実施してきている (2

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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

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第一問 -50 点 - 問 1 (25 点 ) (1) について (15 点 ) 概要 次の規定の適用を受ける場合には 納税義務が課されることとなる 1. 課税事業者の選択 2. 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例 3. 新設法人の納税義務の免除の特例 4. 特定新規設立法人の納税

別紙様式 7( ひな型 ) ( 日本工業規格 A4) 別紙様式 7( ひな型 ) ( 日本工業規格 A4) 申請者がと年月日をもって売買契約を締結した指名金銭債権に伴う別紙記載の不動産の質権又は抵当権の移転の登記につき 租税特別措置法第 83 条の2 第 1 項の規定の適用を受けたいので 租税特別措

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

社会保険診療報酬の所得計算の特例措置の概要 概要 医業又は歯科医業を営む個人及び医療法人が 年間の社会保険診療報酬が 5,000 万円以下であるときは 当該社会保険診療に係る実際経費にかかわらず 当該社会保険診療報酬を 4 段階の階層に区分し 各階層の金額に所定の割合を乗じた金額の合計額を社会保険診

平成20年2月

はしがき 配偶者控除 と 配偶者特別控除 は 昭和 36 年と昭和 62 年の税制改正で導入された歴史ある制度です ここ数年 配偶者控除の改正について様々な議論が行われてきましたが 平成 29 年度税制改正において 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除と配偶者特別控除の見直し

税額控除限度額の計算この制度による税額控除限度額は 次の算式により計算します ( 措法 42 の 112) 税額控除限度額 = 特定機械装置等の取得価額 税額控除割合 ( 当期の法人税額の 20% 相当額を限度 ) 上記算式の税額控除割合は 次に掲げる区分に応じ それぞれ次の割合となります 特定機械

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

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Q1 法人事業税の負担変動の軽減措置とは どのような制度ですか? A. 平成 27 年度税制改正により導入された 外形標準課税の拡大 ( 所得割の税率引き下げ及び付加価値割 資本割の税率引き上げ ) によって生じる税負担の変動の影響を緩和する措置で 付加価値額が一定以下の法人を対象に税負担の増加につ

平成19年度市民税のしおり

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目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

「図解 外形標準課税」(仮称)基本構想

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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二重床下地 という 参考図参照) として施工する方法がある 二重床下地は 支持脚の高さを一定程度容易に調整することができること また コンクリートスラブと床パネルとの間には給排水管等を配置できる空間があることから 施工が比較的容易なものとなっている 2 本院の検査結果 ( 検査の観点 着眼点 対象及

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

わくわく青色申告3-消費税申告及び資料

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

平成19年12月○日

改正 ( 事業年度の中途において中小企業者等に該当しなくなった場合等の適用 ) 42 の 6-1 法人が各事業年度の中途において措置法第 42 条の6 第 1 項に規定する中小企業者等 ( 以下 中小企業者等 という ) に該当しないこととなった場合においても その該当しないこととなった日前に取得又

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

に限る ) は その追徴すべき不足税額 ( 当該減額更正前に賦課した税額から当該減額更正に基因して変更した税額を控除した金額 ( 還付金の額に相当する税額を含む ) に達するまでの部分に相当する税額に限る 以下この項において同じ ) については 次に掲げる期間 ( 令第 4 8 条の9の9 第 4

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

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わらず, 平成 24 年 2 月 28 日, 前記 B 税務署において, 同税務署長に対し, 財務省令で定める電子情報処理組織を使用して行う方法により, 所得金額が104 万 4158 円で, これに対する法人税額が18 万 7500 円である旨の虚偽の法人税確定申告をし, そのまま法定納期限を徒過

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

2 消費税軽減税率の対象となる新聞 軽減税率の対象は全ての新聞ではなく 一定の要件を満たす新聞のみです ( 図 2) 新聞販売所は定期購読契約の新聞のほか 即売 週 1 回以下の発行などさまざまな形態の新聞を扱っています このため 区分けには慎重な対応が必要です 図 2 軽減税率が適用される新聞の譲

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2 財政健全化目標との関係や平成 30 年度の 経済 財政再生計画 の中間評価を踏まえつつ 消費税制度を含む税制の構造改革や社会保障制度改革等の歳入及び歳出の在り方について検討を加え 必要な措置を講ずる (3) 対象品目及び適用税率軽減税率の対象品目は 1 酒類及び外食を除く飲食料品 2 定期購読契

Ⅰ 電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し 電子書籍 音楽 広告の配信などの電気通信回線 ( インターネット等 ) を介して行われる役務の提供を 電気通信利用役務の提供 と位置付け その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するかどうかの判定基準 ( 内外判定基準 ) が 役務の

課税売上割合 消費税の課税売上割合の計算は 次の算式により計算します 課税売上割合が 95% 以上と未満では 仕入税額 控除の計算方法が変わってくるため算定する必要があります 課税売上割合 = 課税売上 ( 税抜 )/( 非課税売上 + 課税売上 )( 税抜 ) 消費税の課税売上割合が 95% 以上

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松戸市市税条例等の一部を改正する条例 ( 松戸市市税条例の一部改正 ) 第 1 条松戸市市税条例 ( 平成 27 年松戸市条例第 12 号 ) の一部を次のように改正する 第 11 条中 及び第 2 号 を 第 2 号及び第 5 号 に それぞれ当該各号 を 第 1 号から第 4 号まで に改め 掲

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

資料2-1(国保条例)

申告書の作成手順 申告書の作成は 次の手順で行います 課税標準額及び消費税額の計算 控除対象仕入税額等の計算 付表 5 の作成 納付 ( 還付 ) 税額の計算 納税地 欄等及び 付記事項 欄等の記載 Ⅰ ( 注 ) 経過措置により旧税率 (3% 又は4%) が適用された取引がある場合は 付表 5では

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2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

(4) 今月下旬に所得税法施行令を改正するとともに 法令解釈通達を発遣し 上記のとおり 保険年金 に係る所得税の取扱いを変更いたします 取扱い変更後 所得税の還付の手続きが可能となります なお 納税者の方々には 次の点にご注意いただく必要があります 所得税が納めすぎとなっていた場合の還付手続きには

2 その他 H26 中間申告義務のない事業者が 届出 012 書を提出した場合には 自主的に中間申告 納付することができる旨を 検討したか ( 平成 26 年 4 月 1 日以 後開始課税期間より適用 ) 本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H26 課税期間の基準期間

(消費税)確定申告書作成(簡易課税)編

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本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H27 課税期間の基準期間における課税売上高を確 の判定 014 認したか H27 事業年度を変更している場合等 前々事業年 015 度が1 年未満の場合の基準期間を確認したか ( 法人の場合 ) H27 基準期間が1 年でない場合

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

法関係法人税法関係 zeimu QA テーマ分類別索引 法人税

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

平成23年度税制改正の主要項目

2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正で

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

(2) 滞納残高 イ 税目別の滞納残高 平成 18 年度平成 19 年度平成 2 年度平成 21 年度平成 22 年度平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度平成 26 年度平成 27 年度 申告所得税 2,119 2,72 1,994 1,921 1,871 1,871 1,784 1,7

【表紙】

第一法基通改正7

定にかかわらず 当該都市計画税額とする 5 住宅用地のうち当該住宅用地の当該年度の負担水準が 0.8 以上のものに係る平成 21 年度から平成 23 年度までの各年度分の都市計画税の額は 第 2 項の規定にかかわらず 当該住宅用地に係る当該年度分の都市計画税額が 当該住宅用地の当該年度分の都市計画税

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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扶養手当制度の概要 1 支給要件 扶養親族 ( 他に生計の途がなく主として職員の扶養を受けているもの ) を有する職員に対して支給 年額 130 万円以上の恒常的な所得があると見込まれる者は対象外 2 支給月額 配偶者 : 13,000 円子など : 1 人につき 6,500 円 ( 配偶者のない場

2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

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3. 同意要件との関係宿泊税について 不同意要件に該当する事由があるかどうか検討する (1) 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし かつ 住民の負担が著しく過重となること 1 課税標準宿泊行為に関連して課税される既存の税目としては 消費税及び地方消費税がある 宿泊税は宿泊者の担税力に着目して宿泊数

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

(消費税)確定申告書作成(一般課税)編

公益法人の寄附金税制について

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

以下本人の給与収入速報 平成 29 年度税制改正解説所得課税 ~ 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し 2 配偶者の給与収入が 万円超 15 万円以下の場合の改正案の控除額及び改正前後の影響について 配偶者特別控除 配偶者の給与収入 万円超 15 万円 15 万円以上 11 万円 11 万円以上 1

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

「公的年金からの特別徴収《Q&A

Transcription:

会計検査院法第 30 条の 2 の規定に基づく報告書 ( 要旨 ) 消費税の課税期間に係る基準期間がない法人の納税義務の 免除について 平成 23 年 10 月 会計検査院

検査の背景 (1) 事業者免税点制度消費一般に幅広く負担を求めるという消費税の課税の趣旨等の観点からは 消費税の納税義務を免除される事業者 ( 以下 免税事業者 という ) は極力設けないことが望ましいとされている 一方 小規模事業者の事務処理能力等を勘案し 課税期間に係る基準期間 ( 個人事業者では課税期間の前々年 法人では課税期間の前々事業年度 ) における課税売上高が1000 万円以下の事業者は 原則として消費税の納税義務が免除されることとなっている ( 以下 この消費税の納税義務が免除される仕組みを 事業者免税点制度 という ) その結果 事業者として新たに事業を開始した場合 個人事業者の新規開業年及びその翌年並びに法人の設立事業年度及びその翌事業年度については それぞれ課税期間に係る基準期間が存在しないことから 原則として免税事業者となり 納税義務が免除されることとなっている (2) 個人事業者の法人成り個人事業者は 事業の拡大等を理由として 当該事業を新たに設立した法人 ( 以下 新設法人 という ) に引き継ぐ場合がある ( 以下 このように個人事業者が行っていた事業を新設法人へ引き継ぐことを 法人成り という ) そして 個人事業者として課税事業者であった場合でも 個人事業者が新設法人に事業を引き継いだときには 法人としての課税期間に係る基準期間が存在しないことから 設立事業年度とその翌事業年度は 原則として免税事業者となる (3) 新設法人における納税義務の免除の特例新設法人の中には設立事業年度から相当の売上高を有する法人もあることなどから 6 年の税制改正において 新設法人のうち その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額 ( 以下 資本金 という ) が1000 万円以上の法人は 課税期間に係る基準期間が存在しない設立 2 年以内の納税義務が免除されないこととされた (4) 会社法施行に伴う最低資本金制度の撤廃会社に関する法律として 会社法 ( 平成 17 年法律第 86 号 ) が制定されて18 年 5 月から施行された これにより 従来設けられていた株式会社の設立には1000 万円以上の - 1 -

資本金が必要であるとする最低資本金制度が撤廃された そして 上記の最低資本金制度が撤廃された以降においても 新設法人の設立 2 年以内の納税義務について資本金を基準として判定することは 特段見直されていない 検査の状況 (1) 資本金 1000 万円未満の新設法人における売上高等の状況 18 年中に設立された資本金 1000 万円未満の新設法人で検査の対象とした法人 1,283 法人のうち 第 1 期事業年度の売上高が1000 万円を超え 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けて 第 3 期課税期間において納付消費税額を申告している343 法人を抽出して これらの法人の第 1 期事業年度から第 3 期事業年度までの売上高及び消費税の課税の状況についてみると 表 1のとおりである 表 1 売上高 1000 万円超の新設法人に係る売上高の推移等 事業年度等第 1 期事業年度第 2 期事業年度第 3 期事業年度区分 ( 第 1 期課税期間 ) ( 第 2 期課税期間 ) ( 第 3 期課税期間 ) 売 百万円 百万円 百万円 上 売上高計 22,230 35,902 36,187 高の状 百万円 百万円 百万円 況 1 社平均売上高 64 104 105 千円 消 課税標準額計 32,332,422 費税 千円 の 納付消費税額計 652,681 課 免 税 免 税 税 1 社平均 千円 の 課税標準額 94,263 状況 1 社平均 千円 納付消費税額 1,902 343 法人は 第 1 期事業年度及び第 2 期事業年度の 1 社平均売上高が それぞれ 64 百万 円及び 1 億 04 百万円となっているのに 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受け て 第 1 期課税期間及び第 2 期課税期間は免税事業者となっていた そして 前記のとおり 最低資本金制度が撤廃されたことから 少額の資本金で法 人を設立しているものも見受けられ 上記 343 法人のうち 257 法人 (74.9%) が資本金 - 2 -

300 万円以下となっていた (2) 法人成りした場合における売上高等の状況 課税事業者となっていた個人事業者 206 人が 18 年中に資本金 1000 万円未満で法人 成りして同一の事業内容等で事業を開始した後 設立 2 年以内の事業者免税点制度の 適用を受けていた場合における個人事業者としての 17 18 両年分の事業収入及び消費 税の課税の状況と 法人成り後の法人としての第 1 期事業年度から第 3 期事業年度まで の売上高及び消費税の課税の状況についてみると 表 2 のとおりである 表 2 法人成り後の法人に係る売上高等の推移 事業年度等 個人事業者 (206 人 ) 法 人 (206 法人 ) 平成 17 年分 18 年分 第 1 期事業年度 第 2 期事業年度 第 3 期事業年度 区 分 ( 第 1 期課税期間 ) ( 第 2 期課税期間 ) ( 第 3 期課税期間 ) 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円 売 事業収入計 13,009 7,322 上 売上高計 13,864 16,318 15,330 高 の 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円 状 1 人平均事業収入 63 35 況 1 社平均売上高 67 79 74 千円 千円 千円 消 課税標準額計 12,500,211 7,660,587 14,866,994 費税 千円 千円 千円 の 納付消費税額計 156,109 109,114 193,319 課 免 税 免 税 税 1 人 (1 社 ) 平均 千円 千円 千円 の 課税標準額 60,680 37,187 72,169 状況 1 人 (1 社 ) 平均 千円 千円 千円 納付消費税額 757 529 938 法人成りが18 年中に行われていることから 1 年間の売上高で比較するために 個人事業者の17 年分の事業収入と法人の第 2 期事業年度の売上高をみると 個人事業者の17 年分の1 人平均事業収入が63 百万円であるのに対して 法人の第 2 期事業年度の1 社平均売上高は79 百万円と同等以上の売上高となっていた このように事実上 同一の事業内容等を継続していて法人成り後も相当の売上高があるのに 個人事業者が法人成りして事業を開始した後 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けて 第 1 期課税期間及び第 2 期課税期間ともに免税事業者となっていた そして 前記 206 法人のうち156 法人 (75.7%) が 資本金 300 万円以下となっていた (3) 資本金が1000 万円以上となる増資を行っていたなどの法人における売上高 - 3 -

等の状況資本金 1000 万円未満の新設法人のうち 資本金が1000 万円以上となる増資を行っていたなどの法人の状況についてみると 第 1 期事業年度開始の日の翌日以降の同事業年度中に資本金を1000 万円以上に増資して第 1 期課税期間は免税事業者となり 第 2 期課税期間から課税事業者となっていたなどの法人が10 法人 第 2 期事業年度開始の日の翌日以降に資本金を1000 万円以上に増資して第 1 期課税期間及び第 2 期課税期間は免税事業者となり 第 3 期課税期間以降から課税事業者となっていたなどの法人が19 法人 計 29 法人見受けられた また 前記のとおり 最低資本金制度が撤廃されたことから 上記 10 法人の中には 1 万円及び5 万円の資本金でそれぞれ法人を設立して 第 1 期事業年度における売上高が47 百万円及び1 億 41 百万円となっている法人も見受けられた 上記のほか 資本金 1000 万円未満の新設法人が その事業年度開始の日の翌日以降の第 1 期事業年度中に資本金が1000 万円以上となる増資を行ったため 第 2 期課税期間から課税事業者となるところ 第 1 期事業年度中に再度 1000 万円未満となる減資を行ったため第 2 期課税期間も免税事業者となっていたなどの法人が4 法人見受けられた (4) 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後に解散等した法人の状況資本金 1000 万円未満の新設法人のうち 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後に解散等した法人の状況についてみると 設立 2 年以内において相当の売上高を有していることから第 3 期課税期間は消費税の申告及び納付が見込まれるのに 第 3 期事業年度以降に解散していたり 無申告となっていたりしているなどの法人や 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後の第 3 期事業年度以降に他の新設同族法人へ売上げを移転するなどしているとみられる法人が計 24 法人見受けられた 以上の (1) から (4) までの検査の対象とした計 1,546 法人のうち 納付消費税額の推計が可能な計 587 法人 ((1)343 法人 (2)206 法人 (3)29 法人及び (4)9 法人 ) の第 1 期事業年度及び第 2 期事業年度の売上高計は それぞれ408 億 33 百万円及び597 億 49 百万円 計 1 005 億 83 百万円であり これら587 法人の第 1 期課税期間及び第 2 期課税期間の納付消費税額の推計額は それぞれ7 億 0687 万余円及び10 億 5026 万余円 計 17 億 5714 万余円となる - 4 -

(5) 国税庁による消費税の査察調査状況会計検査院が明らかにした検査の状況に関連して 国税庁による消費税の査察調査状況についてみたところ 18 年度から22 年度までの間に検察庁に告発した件数は 10 2 件で このうち58 件は 資本金 1000 万円未満の新設法人が設立 2 年以内の事業者免税点制度を悪用し 法人の設立や解散を繰り返すなどして消費税を免れている事例であった (6) 政府における免税事業者の要件の見直しの状況政府は 事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直しに向けた取組を行い 現行制度では 課税売上高が1000 万円を超えた場合に翌々事業年度から課税事業者となるが 同制度を悪用した法人の新設等による課税逃れを抑制する観点から 課税売上高が1000 万円を超えることが事業年度の途中で明らかとなった場合には 翌事業年度から課税事業者とすることとする 消費税法の一部改正を含む 税制改正法案を国会に提出した そして 同法案は国会の審議を経て可決 成立し 現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律 ( 平成 23 年法律第 82 号 ) として 24 年 1 月 1 日から施行することとされた そして 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けて免税事業者となる期間は短縮されることとなった 所 見 消費税に関する国民の関心が高まっている中で 会計検査院は 事業者免税点制度が有効かつ公平に機能しているかに着眼して検査したところ 新設法人の納税義務の判定を基準期間の課税売上高に代えて資本金により行っていることにより 次のような状況となっていた 1 資本金 1000 万円未満の新設法人において設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を 受けている法人の中には 設立当初の第 1 期事業年度から相当の売上高を有する法人 が相当数見受けられた 2 法人成り後も相当の売上高を有しているのに 第 1 期課税期間及び第 2 期課税期間に おいて免税事業者となっている法人が相当数見受けられた 3 1000 万円未満の資本金で法人を設立し 第 2 期事業年度の開始の日の翌日以降に増 - 5 -

資を行い資本金を 1000 万円以上にすることなどにより 第 1 期課税期間及び第 2 期課税 期間において免税事業者となっている法人が見受けられた 4 設立 2 年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後の第 3 期事業年度以降に解散等し ている法人が見受けられた 前記のとおり 現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律 により 事業者免税点制度の適用に関する改正が行われたところであるが この改正によっても 会計検査院の検査によって明らかになった状況が十分に解消されるまでには至っていないと認められる ついては 今後 消費税に関わる幅広い議論が十分なされるよう 財務省において 消費税の課税の趣旨等の例外として設けられている事業者免税点制度の在り方について 引き続き 様々な視点から不断の検討を行っていくことが肝要である 会計検査院としては 今後とも事業者免税点制度を含む消費税全般について 引き続き注視していくこととする - 6 -