次世代の耐震設計法:地震リスク解析

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図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

9.4 道路橋の耐震設計における部分係数設計法に関する研究 表 1 橋梁の被害と復旧に要する一般的な時間の整理 陸上部の鉄筋コンクリート橋脚 単柱 の場合 ここでは 陸上部を想定して整理した結果を示している 現在の新設橋については 設計地震動に対して概ね被災 ランクはC相当に該当するところである 表

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1.2 耐荷力の算定対象となる柱部材の危険断面における耐荷力を算定する場合, 曲げ耐力 ( 課題 1にて学習した方法 ) およびせん断耐力 ( 課題 2の方法 ) を求め, 両者のうち小なる耐荷力がその部材の終局耐荷力となる. 別途設定された設計外力に対して十分な耐荷力を有することはもちろんのこと,

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4 健全度の把握及び日常的な維持管理に関する基本的な方針 健全度の把握の基本的な方針橋梁の長寿命化を図るため 定期点検要領に基づき5 年に1 回の定期点検を実施していきます また 定期点検の結果に基づく診断結果 ( 健全度 ) を長寿命化修繕計画に反映させていきます 日常的な維持管理に関する基本的な

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. 軸力作用時における曲げ耐力基本式の算定 ) ここでは破壊包絡線の作成を前提としているので, コンクリートは引張領域を無視した RC 断面時を考える. 圧縮域コンクリートは応力分布は簡易的に, 降伏時は線形分布, 終局時は等価応力ブロック ( 図 -2) を考えることにする. h N ε f e

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A 進 A 真 A 広明 A 元英 As 既設橋の耐震補強設計手法について ほんますすむ 本間 A1 A 関塚 せきづかまこと A1 A 奥原 おくはらひろあき A1 A 阿部 あ べもとひで A1 1 開発技建 ( 株 )( 新潟県新潟市中央区紫竹山 ) 1995

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8 章橋梁補修工 8.1 橋梁地覆補修工 ( 撤去 復旧 ) 8.2 支承取替工 8.3 沓座拡幅工 8.4 桁連結工 8.5 現場溶接鋼桁補強工 8.6 ひび割れ補修工 ( 充てん工法 ) 8.7 ひび割れ補修工 ( 低圧注入工法 ) 8.8 断面修復工 ( 左官工法 ) 8.9 表面被覆工 (

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2-3. 設計段階の検討事項設計では本建物の条件として, 特に以下に着目した 1 兵庫県南部地震により杭への被災が想定される 2 建物外周地下に液状化対策として地盤改良が行われている 以上の条件で, 免震改修工法の検討を行うにあたり, 比較検証を基本設計で行った. 比較案は, 基礎下免震型 2 案,

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会社の経営努力による費用の縮減内容について 資料 -7 運用指針 第 2 条 3 供用までの期間を短縮したことによる費用の縮減 フネヒキミハル 磐越自動車道 コオリヤマヒカ シ ( 船引三春 IC~ 郡山東 IC) の早期 4 車線化

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検討の背景 10Hz を超える地震動成分の扱いに関する日 - 米の相違 米国 OBE (SSE ) EXCEEDANCE CRITERIA 観測された地震動が設計基準地震動を超えたか否かの判定振動数範囲 : 1Hz - 10Hz (10Hz 以上は評価対象外 ) 地震ハザードのスクリーニング (Ne

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参考資料 -1 補強リングの強度計算 1) 強度計算式 (2 点支持 ) * 参考文献土木学会昭和 56 年構造力学公式集 (p410) Mo = wr1 2 (1/2+cosψ+ψsinψ-πsinψ+sin 2 ψ) No = wr1 (sin 2 ψ-1/2) Ra = πr1w Rb = π

別添資料 地下階の耐震安全性確保の検討方法 大地震動に対する地下階の耐震安全性の検討手法は 以下のとおりとする BQ U > I BQ UN I : 重要度係数で構造体の耐震安全性の分類 Ⅰ 類の場合は.50 Ⅱ 類の場合は.25 Ⅲ 類の場合は.00 とする BQ U : 地下階の保有

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AP 工法 による増設壁補強計算例 (1) 設計フロー RC 耐震改修設計指針に示された 中低層鉄筋コンクリート造建物を対象とした開口付き増設壁に AP 工法 を用いて強度抵抗型補強とする場合の補強壁 ( せん断壁 ) の設計フローを示す 周辺架構から補強壁に期待できる耐力の目安をつけ プロポーショ

並柳橋 ( 鋼製支承損傷 ) 桑鶴大橋 ( 斜張橋の支承逸脱 ) 10 km 新幹線高架橋 ( 防音壁落下 ) 新幹線脱線 新幹線高架橋 ( 損傷 ) 神園跨道橋 ( 傾斜 ) 大切畑大橋 ( ゴム支承破断 ) 高速道路陥没 二俣橋 ( 石橋損傷 ) 秋津川橋 ( 鋼製支承破断 ) 扇の坂橋 ( ゴ

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官庁施設の総合耐震 対津波計画基準 第 1 編総 則 第 1 章目的及び適用範囲 目的この基準は 国家機関の建築物及びその附帯施設の位置 規模及び構造に関する基準 ( 平成 6 年 12 月 15 日建設省告示第 2379 号 )( 以下 位置 規模 構造の基準 という ) 及び 国家機

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21 されていた橋では 橋の機能回復が速やかにできたか は生じていない 写真 1 の 2 橋は 上部構造の幅 どうかという耐震性能の観点からは 損傷は限定的な 員や橋脚の寸法等に違いはあるが 構造形式は概ね同 ものであった 道路橋では 過去の震災経験を踏まえ 7 様であり 振動特性も近似していると推

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土地改良施設に含まれる施設構造物は多種にわたり 構造特性も様々である 地震時の挙動特性 ( 剛性 固有周期など ) の異なる施設に対しては 表 ~6を参考にして 施設の構造特性に適した設計を行わなければならない さらに 埋設管路など地盤変形の影響を受ける施設は 地盤特性を適切に設定する

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地震工学 /Earthquake Engineering 耐震設計 /Seismic Design 構造物設計法 : 耐震設計法都市工学科専門科目 都市工学科災害軽減工学吉川弘道 地震被害 : 近年, 多くの深刻な被災例がある 日本 : 兵庫県南部地震 /M7.3:1995, 新潟県中越沖 /M6.8:2007 海外 :Loma Prieta/ 米国, 四川大地震 / 中国 2008 耐震工学 : 多くの要素技術から構成される : 地震学 / 地盤工学 : 震源断層, 地震の伝搬, 地盤増幅, 液状化 構造物の応答 : 線形 / 非線形応答解析, 動的 / 静的解析 構造力学 : 線形 / 非線形力学, コンクリート工学, 鋼構造学, 橋梁工学, 設計理論 : 許容応力度設計法, 信頼性理論, 性能設計, 確率論的評価 耐震対策 : 耐震補強, 免震 / 制震, 特定構造物を対象とした設計示方書 道路橋示方書, 鉄道標準, コンクリート標準示方書, 鋼構造, 複合構造 建築 : 建築基準法 / 施行令, 構造種別ごとに指針, 住宅性能表示 原子力 : 本体建屋, 屋外土木構造物 耐震工学 : 4 つの Phase で説明したい 4 地震波の発生 / 伝播 / 増幅 / 構造物の応答 / 被害 2 耐震工学 :4 つの Phase Phase1: 地震被害 lessons learned from past earthquakes Phase2: 構造実験と実証実験 experimental studies and verification Phase3: 数学モデル / 解析フ ロク ラム mathematical model/computer programs Phase4: 設計基準 / ガイドライン specification, design guideline 5 耐震設計法 1: 耐震工学 4 つの Phase Phase1: 地震被害 地震被害 / 兵庫県南部地震 (1995) における RC 橋脚の地震被害 6 1

Phase1: 地震被害阪神大震災 (1995 年 M7.3) (c) 地震で崩壊した阪神高速神戸線 ( 提供朝日新聞社 ) 戦後最大被害となった都市直下型地震 17 基のピルツ橋脚の倒壊など 衝撃的な光景は全世界の耳目を集めた RC 単柱の静的載荷実験 : 構造実験棟 /1998 年 10 曲げ破壊 flexural failure 構造物設計法 : 耐震設計法都市工学科専門科目 都市工学科災害軽減工学吉川弘道 せん断破壊 shear failure RC 梁の小型静的載荷実験 ( 試験体の終局状況 ) Phase2: 部材実験 / 実証実験 鉄筋コンクリートの柱部材載荷実験の試験体 2 体 実大モデル 奥側 と縮小モデル 手前側 による比較 ( 試験体の寸法効果 (size effect)) アクチュエーターにより水平方向の荷重を漸増正負交番にて付与し, 通例, 破壊するまで変位 ( または荷重 ) を増加させる. Phase3: 数学モデル / 解析フ ロク ラム 地中構造物 ( 中柱を有する 2 層 RC ラーメン部材 ) とその周辺地盤の横断面 / 一体モデル 部材を平面応力モデル, 周辺地盤を平面ひずみ要素としてモデル化 地震動 ( 時刻歴加速波形 ) を入力し, 全体系の動的弾塑性解析を実施 強震時の変位 / 損傷 / コンクリートのひび割れ RC 柱部材による静的載荷実験 : 東急建設提供 9 地中構造物の 2 次元有限要素解析 : 要素分割と応答結果 (Phase3) 12 2

Phase3: 解析フ ロク ラム (FEM 解析 ) 耐震工学 :4 つの Phase 鉄道高架橋の耐震設計 :3 次元有限要素解析提供 : クレアテック : 13 Phase1: 地震被害 lessons learned from past earthquakes Phase2: 構造実験と実証実験 experimental studies and verification Phase3: 数学モデル / 解析フ ロク ラム mathematical model/computer programs Phase4: 設計基準 / ガイドライン specification, design guideline 16 Phase3: 解析フ ロク ラム (FEM 解析 ) 耐震工学 :4 っの Phase( フロー図 ) 鉄 PCタンクの地震応答解析 : 耐震照査と耐震補強提供 : クレアテック : 14 耐震地震工学 耐震工学への道程 Phase4: 設計基準 / 設計示方書 耐震設計法 2: 耐震設計と設計照査 2.1 耐震設計 設計基準 /design concept, specification, guideline(phase4) 15 3

耐震設計法 耐震設計法は 多くの設計法の一つであるが 地震大国日本では 最も重要な設計法である 多くの荷重 作用の中でも 地震荷重は強大かつバラツキが多い ( 予測が困難 ) このため 欧米 / 日本において 耐震設計の手法 / 手順が研究されきた 現在では 性能設計法が主流となっている 耐震設計法小史 第 1 段階静的解析 : 20 世紀前半 (~1950 年頃まで ) 第 2 段階応答スペクトル法 : 1930 年代から始まる 第 3 段階動的解析 : 概ね 1970 年ころ始まる 現在 :20 世紀 21 世紀許容応力度設計法 限界状態設計法 性能設計法 2.1 耐震設計とは 耐震設計 (seismic design): 簡単にいうと 構造物が地震に対して壊れないように設計すること 工学的には 構造物が設定した設計地震動に対して 所定のを有するように設計すること 耐震設計の実施 : 地震荷重 (seismic load) 構造物の (seismic performance) を算定し 設計照査 (OK か, NG か ) を行う : 地震荷重 < OK 地震荷重 > NG( 不可 ) 震度法 / 修正震度法 震度法 : 地震荷重 =k h W (k h = 震度, W= 重量 ) レベル 1 地震動 :k h =0.2~0.3 レベル 2 地震動 :k h =1.0 または 2.0 設計照査 : 動的荷重と静的荷重 震度法 / 修正震度法 震度法 : 地震荷重 =k h W (k h = 震度, W= 重量 ) 震度 k h =0.2 とは? 震度 k h =1.0 とは? 動的荷重 ( 左 ) と静的荷重 ( 右 ) 4

震度法 / 修正震度法 修正震度法 : 地震荷重 =k h W 基本的にこの式を用いるが 構造物の固有周期と地盤の力学特性により 設計震度 k h を調整する 近代の構造物設計法 許容応力度設計法 : Allowable Stress Design 限界状態設計法 : Limit State Design キャパシティデザイン : Capacity Design 性能設計法 :Performance-Based Design 耐震設計法 2: 耐震設計と設計照査 2.2 性能設計 修正震度法による応答 ( 設計 ) スペクトルの例道路橋示方書レベル 2 地震動 ( タイプ Ⅰ タイプ Ⅱ) 修正震度法による設計スペクトル道路橋示方書 Ⅴ( 耐震設計編 ) レベル 2 地震動 ( タイプ Ⅰ, タイプ Ⅱ) 地盤固有周期タイプ Ⅰ タイプ Ⅱ Ⅰ 種地盤 Ⅲ 種地盤 0.2 秒 2.0 秒 5.0 秒 0.2 秒 2.0 秒 5.0 秒 性能設計法とは : 構造物の建設目的と建設地点の環境によって, 発注者 / 使用者の要求する ( 必要とする ) 性能がある 要求性能 一方 構造物は, その構造形状, 使用材料の仕様, 施工によって 特有の構造性能 ( 達成性能 ) を有する 構造性能 性能 (performance) とは, これまでの耐荷力や変形能にとどまらず, 安全性, 使用性, 美観,( 貯蔵物の ) 遮蔽性など, 構造物本来の特性, 期待される機能を表すもの 5

性能設計法とは : これらの 要求性能 と 構造性能 とを対比し 性能レベルにて設計照査する 構造性能が要求性能を上回ることにより 設計照査が達成される または 発注者の求める要求性能をもとに 目標性能を策定し 建造物が設計 / 施工される 耐震設計法 3: 各種構造物の耐震設計 鉄道構造物等設計標準 同解説道路橋示方書 同解説建築建屋 ( 建築構造物 ) 一般 性能設計法と仕様設計 : 性能設計 (performance-based design) 現在の設計法 鉄道構造物等設計標準 同解説性能照査に対する基本的考え方 仕様設計 (specification-based design) 従来の設計法 性能照査型設計の階層化モデル 鉄道構造物等設計標準 耐震設計 L1 地震動 設計耐用期間内に数回程度発生する確率を有する地震動 Ⅰ Ⅱ Ⅲ L2 地震動 設計耐用期間内に発生する確率は低いが 非常に強い地震動 重要度の高い構造物 その他の構造物 マトリックス SEAOC Vision 2000 6

鉄道構造物等設計標準 耐震設計 設計想定地震動 L1 地震動 設計耐用期限内に数回発生する確率を有する地震動 L2 地震動設計耐用期限内に発生する確率は低いが 非常に強い地震動 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地震後も補修せずに機能保持できる 地震後に補修を必要とするが 早期に機能が回復することができる 地震によって構造物全体が崩壊しない 道路橋示方書 ( 道路協会 ) : Ⅴ: 耐震設計編 1: 設計地震動の区分 レベル 1 地震動 レベル 2 地震動 2: の区分 : 1 2 3: 3: 橋の重要度 : A 種の橋 B 種の橋 コンクリート部材の損傷レベルと適用補修工法鉄道標準解説表 2.2.5 道路橋示方書 /Ⅴ 耐震設計編 : の観点 ( 表 - 解 2.2.1 を簡略化 ) 損傷のレベル 補修工法のイメージ 損傷レベル1 無損傷 無補修 ( 必要により耐久性上の配 慮 ) 橋の 安全性 供用性 短期的修復性 修復性 長期的修復性 損傷レベル 2 場合によっては補修が必要な損傷 必要によりひび割れ注入 断面修復 損傷レベル3 補修が必要な損傷 ひび割れ注入 断面修復 必要により帯鉄筋等の整正 損傷レベル 4 補修が必要な損傷で 場合によっては部材の取替えが必要な損傷 ひび割れ注入 断面修復 帯鉄筋等の整正軸方向鉄筋 鉄骨の座屈が著しい場合は 部材の取替え 1 2 3 落橋に対する安全性を確保する 地震前と同じ橋としての機能を確保する 地震後 橋としての機能を速やかに回復できる 機能回復のための修復を必要としない 機能回復のための修復が応急修復で対応できる 軽微な修復でよい 比較的容易に恒久修復を行うことが可能である - - - 左図 : 単柱式橋脚の損傷部位 ( 鉄道標準 / 解説図 2.2.4) 右付表 : 損傷レベルと安定レベルの制限値 ( 鉄道標準 / 解説表 2.2.1) 構造物 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 道路橋示方書 ( 道路協会 ) : Ⅴ: 耐震設計編 1: 設計地震動 レベル 1 地震動 : 発生する確率が高い地震動 レベル 2 地震動 : 発生する確率は低いが 大きな強度を持つ地震動 タイプ Ⅰ の地震動 タイプ Ⅱ の地震動 部材の損傷レベル 1 3 3 基礎の安定レベル 1 2 3 2: の区分と定義 : 1: 地震によって橋としての健全性を損なわない性能 2: 損傷が限定的で機能が短期間で回復でき 補強を必要としない 3: 地震による損傷が橋として致命的とならない性能 3: 橋の重要度 : A 種の橋 ( 重要度が標準的な橋 ) B 種の橋 ( 重要度が高い橋 ): 7

道路橋示方書における性能マトリックス : 道路橋示方書表 - 解 2.2.2 を再整理 設計地震動 レベル 1 地震動 A 種の橋重要度が標準的な橋 B 種の橋重要度の高い橋 1 地震によって橋としての健全性を損なわない性能 建築構造物の性能設計最近の性能設計型指針 / 基準類 レベル 2 地震動 タイプ Ⅰ 地震動タイプ Ⅱ 地震動 3 地震による損傷が橋として致命的とならない性能 2 地震による損傷が限定的なものにとどまり 橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能 RC 橋脚の許容塑性率 : 曲げ破壊型 タイプ Ⅰ の地震動 : 2:α=3.0 3:α=2.4 タイプ Ⅱ の地震動 : 2:α=1.5 3:α=1.2 塑性化を考慮する部材の組合せ : 道路橋示方書図 - 解 5.3.1 から 3 例抜粋 建築構造物の性能設計 : オフィスビル / 集合住宅などの特徴 建築物 = 人間の居住空間 / 社会活動空間 : 性能項目はより多岐に亘る 建築物 = 私的所有物であり 性能 は明確 多くの実施例がある. : 要求性能 目標性能 保有性能の流れが明確 建築基準法 (1981 年施行 ) 建築基準施行令の大幅改定 (1998 年 ) : 建築基準法 / 施行令 : 国の法律としての拘束力を持つ 住宅の品質確保の促進等に関する法律 ( 品確法 ) : 住宅性能表示基準の新設 損害保険の対象 直接に売買される私的所有物 証券化される 不動産 性能の良し悪しが 物件価格に反映される 性能規定型設計指針類 : 土木構造物 建築物の性能表示の例 : レーダーグラフ表示 : 出典 : 建築研究振興協会編 : 鉄筋コンクリート造建築物の性能評価ガイドライン 1: 複合構造物の性能照査指針 ( 案 )( 土木学会 ) 鋼 / コンクリート複合構造物の設計 施工に関する統一指針案 6 編構成性能項目 ( 階層化 / 細分化 ): 要求性能 目標性能 照査項目 照査指標 2: 原子力発電所屋外重要土木構造物の照査指針耐震重要度分類のうち 最上位の As クラスと A クラスの機器 配管を支持する鉄筋コンクリート構造物を対象 目標性能 : と耐久性能に分類 3: ( 社 )PC 技術協会 : 貯水用円筒形 PC タンク設計施工基準常時の部材安全性 許容応力度法地震時の安全性 地震動レベルと PC タンクの重要度に応じて 性能照査 4: LNG 地下タンク躯体の構造性能照査指針 : 土木学会 : 要求性能として 安全性と使用性を規定目標性能 : 耐荷性能 ( 変形性能 ) と止水性能 耐震安全性の性能表示 : 応答値が限界値に達する時の地震動の大きさの標準地震動に対する倍率 8

建築構造物の性能設計 : 住宅の品質確保の促進等に関する法律 : 品確法 住宅性能表示基準の新設 評価性能 : 構造の安定 火災時の安全 住居環境 ( 温熱 空気 光 etc,) など 9 項目 住宅紛争処理体制の整備 瑕疵担保責任の明確化 耐震補強の考え方と方法 1: 架橋形式の改善免震化 慣性力の分散 2: 部材耐震補強 RC 巻き立て 鋼鈑巻き立て 繊維シート巻き立て 建築構造物の性能設計 : 日本住宅性能表示基準 ( 耐震等級のみ抜粋 ) 項目結果適用範囲 耐震補強の考え方と方法架橋形式の改善 : 免震化 1-1 耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) 1-2 耐震等級 ( 構造躯体の損傷防止 ) 地震に対する構造躯体の倒壊 崩壊等のしにくさ 3 極めて稀に ( 数百年に一度程度 ) 発生する地震による力の 1.5 倍の力に対して倒壊 崩壊等しない程度 2 極めて稀に ( 数百年に一度程度 ) 発生する地震による力の 1.25 倍の力に対して倒壊 崩壊等しない程度 1 極めて稀に ( 数百年に一度程度 ) 発生する地震による力に対して倒壊 崩壊等しない程度 地震に対する構造躯体の損傷 ( 大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷 ) の生じにくさ 3 稀に ( 数十年に一度程度 ) 発生する地震による力の 1.5 倍の力に対して損傷を生じない程度 2 稀に ( 数十年に一度程度 ) 発生する地震による力の 1.25 倍の力に対して損傷を生じない程度 1 稀に ( 数十年に一度程度 ) 発生する地震による力に対して損傷を生じない程度 戸建て又は共同 戸建て又は共同 図 2 免震化による方法 耐震設計法 4: 耐震補強架橋方式の改善部材耐震補強 耐震補強の考え方と方法架橋形式の改善 : 免震化による方法 橋を支える橋梁と橋脚の間にある支承について 免震支承 ダンパー等を併用した機構に取り換えることで 橋全体を長周期化するとともに 減衰性能を高めて 地震時に橋梁に作用する慣性力の低減あるいは遮断を図る方法 ( 図 2) 免震支承は天然ゴムと鋼板の積層構造になっており 高軸力を支えるとともに 水平変位方向の剛性が低く これにより上部構造の長周期化を実現することとなる ダンパーは 粘性体や粘弾性体で構成され 水平変形時に高い減衰力が発揮されるため 地震時にエネルギー吸収の減衰機構として働き 応答の低減や早期の収束が期待できる 現在では 免震支承へ減衰機構を併用させた鉛プラグ入り積層ゴムや 減衰特性がある高減衰ゴムによる支承なども開発されている 9

耐震補強の考え方と方法架橋形式の改善 : 慣性力の分散 耐震補強の考え方と方法 RC 橋脚の耐震補強 : 鉄筋コンクリート巻き立て 既存橋脚の柱の周囲に 新たに軸方向筋及び帯筋を配筋しコンクリートで巻き立てる工法である さらに 既存柱の中間を貫通させた帯筋を設けることもある 構造的には 軸方向鉄筋による曲げ耐力 コンクリート断面の増大によるせん断耐力の向上が図られる また 中間貫通帯筋を設けることにより 柱全体の拘束力が上がり じん性を発揮し 地震時の変形能力が向上する 他の工法と比較して 安価な費用で補強することが可能であり 経済的に優れた工法である 図 3 慣性力を分散する方法 耐震補強の考え方と方法架橋形式の改善 : 慣性力の分散 慣性力を分散する方法 上部構造及び下部構造の支持条件を調整して 地震時に負担する慣性力をバランスよく他の下部構造に分散することにより 危険度の高い支持部の早期破壊から全体崩壊へとつながらないよう橋全体として地震力に対して抵抗する方法 ( 図 3) 各下部構造への地震時慣性力の分散方法としては ゴム系支承による方法 多点固定による方法 地震時のみ固定として機能するダンパーストッパーによる方法がある 耐震補強の考え方と方法 RC 橋脚の耐震補強 : 鋼鈑巻き立て 既存橋脚の柱の周囲に 新たに鋼板を巻き立てる工法であり さらに柱と鋼板の間に充填材を注入して密着させ アンカー筋を通じて鋼板を既存の基礎フーチングへ定着させる構造である 鋼板からフーチングへ定着された軸配筋により曲げ耐力が向上し 鋼板による柱への拘束力からじん性の向上が図られる コンクリート巻立てに比べて 柱脚の断面増加が少ないため 省スペースに適している 耐震補強の考え方と方法部材耐震補強 :RC 橋脚の場合 耐震補強の考え方と方法 RC 橋脚の耐震補強 : 繊維シート巻き立て 既存橋脚の柱の周囲に 新たに炭素繊維やアラミド繊維など多本数の連続繊維を樹脂などでの結合材で集束したもので巻立てる工法である 炭素繊維シートの橋脚躯体の水平方向に貼り付けることにより せん断耐力の向上を図り 基部曲げ破壊へと移行させることができる また 拘束効果によりじん性の向上が図られる 図 5 橋脚の補強方法 ( 鉄筋コンクリートの場合 ) 10

耐震設計法 4: 授業 : 専門科目 都市設計製図 (3 年後期科目 : 月曜日 1-2 時限 ) 設計地震動 : レベル 1 地震動 : 供用期間中に発生する確率が高い地震動 レベル 2 地震動 : 供用期間中に発生する確率は低いが 大きな強度を持つ地震動タイプ Ⅰ: プレート境界型の大規模地震動タイプ Ⅱ: 内陸直下型を想定した地震動 予備の ppt 資料 コンクリート標準示方書 [ 構造性能照査編 ],[ 照査編 ] 1 使用性の照査 : 常時荷重 + 環境条件下の使用限界状態 2 安全性の照査 : 静的最大荷重下の終局限界状態 3 安全性の照査 : 繰り返し荷重下の疲労限界状態 4 耐震性の照査 : 動的荷重下の安全 機能 復旧性に関する限界状態 5 耐久性の照査 : 常時荷重 + 環境条件下の材料劣化に関する限界状態 11