双極子 (dipole) とファンデルワールス力ファンデルワールス力も結局は静電的相互作用によるものだが 原動力になるのは 双極子という分子の分極状態である ファンデルワールス力は以下の 3 種類に分けて考えることができる 前回使ったスライドです 1
タンパク質はひも状ではなく 決まった形に折り畳む つまり 安定性はひも状 < 折り畳まった形 化合物や物質の安定性は自由エネルギーで決まる 特に 温度一定 圧力一定の条件では Gibbs 自由エネルギー G H-TS によって変化の方向と平衡状態 ( 安定状態 ) が決まる 自然な変化は G = H ー T S < 0 となる方向に進む タンパク質の折り畳みもこの法則に従っているはず 2
タンパク質の変性 タンパク質に 熱 酸や塩基 アルコール 変性剤 ( 塩酸グアニジンや尿素 ) を加えるとタンパク質の高次構造が変化し 本来の機能が失われる 一次構造は残っている H 2 N H 2 N C=O 尿素
タンパク質の高次構造 ( 二次および三次構造 ) は 一次構造によって決められる RNase= リボヌクレアーゼ (RNA 分解酵素 ) アンフィンゼン (Anfinsen) の実験 変性させたRNase( 酵素 ) を, 変性剤を取り除くと 自動的に酵素活性がでる ( 正しい立体構造をとる ) 自然状態の構造はΔGの極小構造である 4
タンパク質が折りたたまれる ( フォールディング ) ときに エントロピー S が減少する (ΔS<0; 不利な方向 ) が それをうわまわるエンタルピー H の減少 (ΔH<0) がある 結果 ギブズエネルギー ΔG が負になる タンパク質 ΔG (kj/mol) ΔH (kj/mol) ΔS (J/k mol) リボヌクレアーゼキモトリプシンリゾチームシトクロム c -46-55 -62-44 -280-270 -220-52 -790-720 -530-27 ΔG=ΔH-TΔS ひも のようにペプチド結合でつながったポリペプチドが ある構造を作ることは規則的になることで ΔSは減少する ただし 疎水性相互作用では ΔSは増加することになる 水素結合や静電的相互作用は 大きなΔHの減少を引き起こす 5
糖質の構造と物理化学的性質 6
糖の分類単糖を構成する炭素の数ー三単糖 四単糖 官能基の種類 - アルデヒド (HC=O) アルドース ケトン (C=O) ケトース
単糖類 一般式 C n H 2n O n ; n=6 ヘキソース n=5 ペントース 鎖状多価アルコールであり アルデヒド ---アルドースケトン ---ケトース 不斉炭素原子 光学異性体 α と β 環状にもなる ; ピラノース フラノース 8
フラノース型とピラノース型
グルコースを例にして 単糖の物理化学的性質 化学構造の表記法 : 直鎖状構造 ハース投影式 椅子型 D,L 型 : C5 の立体異性 C2,C3,C4 の立体異性体は 互いにエピマー d l は旋光性で D L は C5 の立体異性 アノマー ; 6 員環を形成すると C1 も不斉炭素となる これをアノマー炭素という ウロン酸 ; 非還元末端がカルボキシル基 グルクロン酸 ; グルコースのウロン酸 これは異物代謝に重要 10
椅子型が舟型より安定 11
グルコースの構造 -D 糖 L 糖 ハースの投影式 (Howorth) フィッシャー投影式で表された四炭糖から六炭糖の D- アルドースでは アルデヒド基から最も遠くの不斉炭素 ( 一番下の不斉炭素 ) に結合しているヒドロキシ基が D- グリセルアルデヒドと同じ右側にあり 七炭糖以上の D- アルドースについても同様である (L- アルドースでは左側 ) 不斉炭素は縦の結合と横の結合の交差点の位置に置き 通常 炭素鎖が投影式の縦の結合になるようにし 酸化度の高い炭素 ( アルドースの場合はアルデヒド基の炭素 ケトースの場合はケトン基の炭素 ) が立野結合の上側になるようにする 炭素の番号は 炭素鎖の上から順に 1,2,3 とつける 12
絶対配置表示法 キラル中心をもつ化合物について 従来 旋光度測定から d / l 表示法が用いられてきた : 右旋性 ~ d- または (+)-, 左旋性 ~ l- または (-)- D / L 表示法は d-グリセルアルデヒドの立体配置を基準として, この立体配置を崩さずにできる化合物を D- 体とし, その鏡像異性体をL- 体と表記する しかし 覚えにくく また旋光性のd/l 表示とD/L 表示は連動しないため, 不便な点がある R-S 表示を用いると上記の問題が解決される 13
R-S 表示法 R1 R1 R2 R3 R3 R2 R4 R4 優先順位の最も低い置換基を奥側になるように見て, 他の 置換基が原子番号や嵩高い順に時計回りなら右 ( 正 ) rectus:r- 配置, 逆回りで左 ( 逆 )sinister:s- 配置とする 14
最も簡単なアルドースであるグリセルアルデヒドの鏡像異性体. 天然には右旋性の D 体のみ存在. その他の糖の D,L の命名法 : カルボニル基から最も遠くにあるキラル炭素が D- グリセルアルデヒドと同じ R の立体配置を有するとき D 糖と総称される 15
鏡像異性体 = エナンチオマー : 不斉炭素 ( キラル中心 ) を持つ分子 ( 二つ以上の不斉炭素を持つ化合物を考える ) 立体異性体のうち鏡像異性体でないもの = ジアステレオマー ジアステレオマーのうち 一つの不斉炭素だけが異なった立体配置をとり 他のすべての不斉炭素が同じ立体配置である異性体 = エピマー
カルボニル基と [ ヘミ ] アセタール R-OH R-OH OR C O C C OH H + OR OR hemiacetal acetal アセタールは同じ炭素原子に結合する 2 つのエーテル (-OR 基 ) をもつもの 例えばグリコシド結合 ヘミアセタールは不安定 水溶液中で glucose の環は開閉し, 僅かにアルデヒドの還元性を示す 18
ヘミアセタール アセタール形成とアノマー 水に溶解した単糖は主に 環状構造 で存在している アルデヒド基とヒドロキシ基が共存すると水和とよく似た反応が起こり ヒドロキシ基がアルデヒドに付加したヘミアセタールが生成し さらにヒドロキシ基がヘミアセタールに付加するとアセタール構造をとることができる 1 位の炭素が不斉炭素となり 2 種類のジアステレオマーが形成される この 2 種類は互いにアノマーと呼ばれる
カルボニル基 (C=O) は二重結合 =sp 2 混成軌道 = 平面構造ヒドロキシ基 (OH) が C=O の炭素に結合するとき 平面の裏表の 2 通りがある 2 種類のジアステレオマー フィッシャー投影式で 1 位の炭素の右側にOH 基 = α 形 αアノマー 左側にOH 基 = β 形 βアノマー
置換基をもつ 6 員環の配座 (Haworth 投影式 ) < α 型 β 型 D-glucose をいす形配座で書くとき, 全ての置換基がエクアトリアル位にある β-glucose に比べて,C-1 に結合する -OH がアキシアル位にある α-glucose は β 型より立体障害が大きく不安定 21
アノマー より安定 グルコースは水溶液中では下式の平衡状態にある 36% 0.003% 64% 22
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アルドース / ケトース - アルドースの還元能 アルデヒド ケトン [ アルデヒド アルドース ] [ ケトン ケトース ] アルドースはトレンス試薬 ( アンモニア水中のAg + ) RCHO + 2[Ag(NH 3 ) 2 ]OH RCOOH + 2Ag ( 銀鏡 ) + 4NH 3 + H 2 O フェーリング試薬 ( 酒石酸ナトリウム水溶液中のCu 2+ ) ベネディクト試薬 ( クエン酸ナトリウム水溶液中のCu 2+ ) RCHO + 2Cu 2+ + 4OH - RCOOH + Cu 2 O ( 赤色沈殿 ) + 2H2O と反応し 容易に酸化されてアルドン酸になる アルドース= 還元糖注 ) フルクトース ( ケトース ) は反応中にアルドースに変換されて還元能を示すので還元糖に含まれる. 24 ( スライド番号訂正 )
D- 糖の誘導体 例 ) マンニトールキシリトール 例 ) グルクロン酸マンヌロン酸 25
オリゴ糖 多糖類 グリコシド結合 ; 環状単糖の水酸基 ( ヒドロキシル基 ) と他の化合物の水酸基 ( ヒドロキシル基 ) との間で 脱水反応が起きて エーテル結合が生じる 少糖類 ( オリゴ糖 ); グリコシド結合で 単糖が 2 および 3 個結合したもの cf. オリゴペプチド 多糖類 polysaccharide;; 単糖類が 7 分子以上縮合したもの 2 つの OH 基から脱水エーテル結合の生成 26
二糖 ( ショ糖 ) ( 乳糖 ) ( 麦芽糖 )* * 三糖であるマルトトリオースとともに 唾液および膵液中の α- アミラーゼによるデンプンの主要消化産物の一つ 27
多糖 エネルギー貯蔵 ; グリコーゲン, デンプン ( アミロース, アミロペクチン ) 構成糖はグルコース,α-1,4 結合 ( 分岐点では α-1,6 結合 ), らせん状の立体構造 機械的強度の確保 ; セルロース ( 細胞壁 ) 構成糖はグルコース,β-1,4 結合, シート状の立体構造キチン ( 甲殻類の外骨格 ) 構成糖は GlcNAc 潤滑, 保水, 保護 ; 水を多く含み粘性の高いポリアニオンヒアルロン酸構成糖はグルコサミンとグルクロン酸. 硫酸基を持っていない. コンドロイチン硫酸, 構成糖はグルクロン酸またはイズロン酸と硫酸化 GalNAc, 糖タンパク質として ; プロテオグリカン, ムコ多糖セリンまたはスレオニンの水酸基に結合 (O- 結合型糖鎖 ) 28
多糖の分類 29
グリコシド結合が多糖類の高次構造を決める 30
でん粉の主成分はアミロペクチン (α-1,4 と α-1,6) とアミロース (α-1,4 の直鎖が主 ( 分岐もある )) からなる 31
アミロースの二次構造セルロース構造 32
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前頁図 34
多糖 エネルギー貯蔵 ; グリコーゲン, デンプン ( アミロース, アミロペクチン ) 構成糖はグルコース,α-1,4 結合 ( 分岐点では α-1,6 結合 ), らせん状の立体構造 機械的強度の確保 ; セルロース ( 細胞壁 ) 構成糖はグルコース,β-1,4 結合, シート状の立体構造キチン ( 甲殻類の外骨格 ) 構成糖は GlcNAc 潤滑, 保水, 保護 ; 水を多く含み粘性の高いポリアニオンヒアルロン酸構成糖はグルコサミンとグルクロン酸. 硫酸基を持っていない. コンドロイチン硫酸, 構成糖はグルクロン酸またはイズロン酸と硫酸化 GalNAc, 糖タンパク質として ; プロテオグリカン, ムコ多糖セリンまたはスレオニンの水酸基に結合 (O- 結合型糖鎖 ) 35
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糖とタンパク質の代表的な結合様式 N 結合型 O 結合型 38
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プロテオグリカン グリコサミノグリカン ムコ多糖 旧名 40
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