生体統御 造血病態学 内分泌 栄養 代謝病態系 糖尿病の病因, 病態生理, 分類, 症候と診断 (1) 病態制御内科学 ( 第 3 内科 )! 谷澤幸生 糖尿病とは インスリンの作用不足による慢性高血糖を主徴とする 急性 慢性の合併症が問題となる 血糖値 = 血液中のブドウ糖濃度 血糖降下 インスリン 血糖上昇 60-100 mg/dl! ( 空腹時 )! グルカゴン! エピネフリン! グルココルチコイド! 成長ホルモン 9 6 12 健康人の血糖とインスリン分泌 (μu/ml) 75" 朝食昼食夕食血中イインスリン 50" ンスリ 25" ン 値 0" (mg/dl)" 150" 血糖 インスリン追加分泌インスリン基礎分泌 血 100" 糖値 50" 0" 7" 8" 9" 10" 11" 12" 1" 2" 3" 4" 5" 6" 7" 8" 9" a.m." p.m." β-cell Glucolysis GLUT2! ブドウ糖によるインスリン分泌 Glucose Pyr Pyr KATP channel! K +! SUR1! Kir6.2! Glucose GK G6P ATP : ADP Mitochondria" Ca 2+! Voltage-sensitive! Ca 2+ channel! Insulin! secretion! グルコキナーゼはβ 細胞のグルコースセンサーである インスリン分泌 グルコース利用率 %! %! 10 10 5 5 TCA cycle 1 2 1 2 Glucose (mm)! Glucose (mm)! isolated perfused pancreas! intact isolated islets! F Matschinsky et al. J Cnin Invest 92:2092, 1993! 1!
インクレチン効果 インクレチン 栄養素 インスリン K細胞 GIP! 血糖 インスリン GIP受容体 膵β細胞 ブドウ糖 GLP-1! GLP-1受容体 L細胞 Dipeptidyl peptidase- DPP4 小腸 Nauck MA. et al. J Clin Endocrinol Metab 63:492 498, 198 プログルカゴンとプログルカゴン由来ペプチド GLP-1 GLP-1! DPP- 阻害薬 Drucker DJ (2005) Nat Clin Pract Endocrinol Metabol 1: 22 31 Model of insulin secretion 多岐にわたるGLP-1 (glucagon-like peptide 1 の作用! Incretin! (GLP-1, GIP) glucokinase 惹起経路 増幅経路 Seino, S. et al. Physiol. Rev. 85: 1303-1342 2005; doi:10.1152/physrev.00001.2005 Copyright 2005 American Physiological Society Drucker DJ (2005) Nat Clin Pract Endocrinol Metabol 1: 22 31! 2!
インスリンのシグナル伝達 インスリンの作用 代謝作用 Greet Van den Berghe J. Clin. Invest. 114:1187-1195 (2004) 糖取り込み促進 糖新生の抑制 グリコーゲン合成 脂質合成 蛋白合成 2型糖尿病の成因と病態 インスリンによる糖取り込み促進 インスリン 抵抗性 環境因子 過食 肥満 運動不足 加齢 ストレス その他 Insulin 遺伝因子 膵β細胞機能低下 インスリン合成 分泌能低下 膵β細胞量の変化 インスリン受容体異常 インスリン受容体数不足 標的細胞内の インスリン情報伝達異常 インスリン作用の修飾因子 インスリン 分泌不全 インスリン作用不足 糖毒性 高血糖 食後過血糖 空腹時高血糖 日本における糖尿病人口の推移 約2,210万人 万人 2,000 日本人 アジア人は欧米人に比べて 小太りで糖尿病を発症する 糖尿病の可能性が否定できない人 糖尿病が強く疑われる人 約1,620万人 約1,370万人 1,000 約680万人 予 備 約1,320万人 軍 1,500 約880万人 疑 い が 500 約690万人 約740万人 1997 2002 約890万人 強 い 0 2007 年 糖尿病の可能性が否定できない人 HbA1c の値が6.0 以上6.5 未満の人 糖尿病が強く疑われる人 HbA1c の値が6.5 以上 または 質問票で 現在糖尿病の治療を受けている と答えた人 HbA1cはNGSP値で表記した 平成19年国民健康 栄養調査 平成14年度 平成9年度糖尿病実態調査報告 3!
肥満者および低体重者の割合 (%) 35 30 25 20 15 10 5 0 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 昭和 平成 男 ( 肥満 ) 女 ( 肥満 ) 男 ( 低体重 ) (mg/dl)! 35 30 25 血糖 20 15 10 5 25 20 相 15 対量 10 5 2 型糖尿病の自然歴 前糖尿病 (IFG, 耐糖能異常 ) インクレチン効果 膵 β 細胞機能 15! 1 5! 5! 1 15! 2 25! 3 糖尿病の 始まり この期間中に 糖尿病と診断 食後血糖 空腹時血糖 インスリン抵抗性 インスリンレベル ( 年 ) 平成 19 年 国民健康 栄養調査 ( 厚生労働省 ) IFG (impaired fasting glucose); 空腹時血糖異常! Kendall DM, et al: Am J Med 122, S37-S50, 2009! 糖尿病の症状 (1) 典型的な糖尿病症状 ( 一般症状 ) a. 多尿 b. 口渇 多飲 c. 全身倦怠感 d. 体重減少 (2) 糖尿病性慢性合併症に関連の深い症状 網膜症 腎症 神経障害 (microangiopathy) (3) 糖尿病患者に併発しやすい疾患の症状 虚血性心疾患 脳血管障害 下肢の閉塞性動脈硬化症 ( 動脈硬化性疾患 macroangiopathy) 感染症 種々の皮膚病変 ( 化膿症 真菌症水疱症 潰瘍 壊疽など ) 外陰部掻痒症 歯槽膿漏 空腹時血糖値 ( 静脈血漿値 ) 空腹時血糖値の区分 mg/dl 126 110 100 糖尿病域 境界域 正常高値 正常域 糖尿病域 境界域 正常域 空腹時血糖値 100 109mg/dl は! 正常域ではあるが正常高値とする 糖尿病 糖代謝異常に関する診断基準検討委員会報告! 日本糖尿病学会 2008 空腹時血糖値および 75g 糖負荷試験 (OGTT)2 時間値の判定基準 ( 静脈血漿値,mg/dl) ブドウ糖負荷試験実施上の注意 糖質を 150 g 以上含む食事を 3 日以上摂取した後 10 から 14 時間の絶食の後空腹のまま採血し 糖負荷試験を開始する 通常 前夜 9 時以降の水以外の摂取を禁じ 翌朝 9 時頃に開始する 検査終了までは水以外の摂取を禁じ なるべく安静にして喫煙 運動は避ける 本試験は胃の造影検査や内視鏡検査後には行わない 糖尿病の診断 高血糖が慢性に持続することの証明 (1) 臨床診断 a. 空腹時血糖値 126mg/dl, または 75 gogtt2 時間値 200mg/dl, または随時血糖値 200mg/dl, HbA1c 6.1%(JDS 値 )(6.5%( 国際標準値 )) のいずれか ( 静脈血漿値 ) が 別の日に行った検査で 2 回以上確認できれば糖尿病と診断してよい これらの基準値を超えても 1 回の検査だけの場合はと呼ぶ b. を示し かつ次のいずれかの条件がみたされた場合 糖尿病の典型症状 ( 口渇 多飲 多尿 体重減少 ) の存在 確実な糖尿病網膜症の存在 c. 過去において上記 a. ないし b. がみたされたことがあり それが病歴などで確認できれば 糖尿病と診断するか その疑いをもって対応する
新しい診断基準による糖尿病臨床診断のフローチャート 血糖値 空腹時 126mg/dl OGTT2時間 200mg/dl 随時 200mg/dlのいずれか HbA1c(NGSP) 6.5 % [HbA1c(JDS) 6.1%] 血糖値とHbA1c ともに HbA1cと血糖値の 同時測定を推奨 血糖値のみ 有り 血糖値のみ 無し 再検査 糖 尿 病 HbA1cのみ いずれも でない JDS値に0.4%を加えた値で表 記する 再検査 血糖検査は必須 血糖値のみ HbA1cのみ 糖尿病の診断基準は 細小血管障害 特に 網膜症の発症閾値を元に決定されている いずれも でない 糖 尿 病 糖 尿 病 HbA1c 国際標準値 は なるべく 1ヶ月以内に 血糖値とHbA1c ともに FPG, 2hPG, HbA1cで10等分 した各群における糖尿病の頻度 HbA1cのみ反復陽性 では糖尿病と診断 できない 糖尿病の典型的症状 確実な糖尿病網膜症のいずれか 1回の検査で糖尿病と 診断できるものを 大幅に増やし 早期 診断 早期介入を促進 血糖値とHbA1c ともに HbA1cのみ 糖尿病疑い 糖尿病疑い Report of the Expert Committee! on the Diagnosis and Classification! of Diabetes Mellitus.! Diabetes Care 20: 1183-1197, 1997! 3 6ヶ月以内に血糖値 HbA1cを再検査 (糖尿病53(6):450-467,2010より一部改変) インスリン遺伝子とインスリン Lys! Arg! 糖尿病に関連する検査 promoter! pre! B!C! C! A! Arg! Arg! (A)n! mrna! Insulinogenic index インスリン分泌能 インスリン抵抗性の評価 血漿 血清 インスリン(IRI)値 血糖値 経口糖負荷試験 インスリン値も測定する 膵内分泌 機能検査でもある Insulinogenic index ΔIR0-30(μU/ml) PG0-30(mg/dl) C-ペプチド値 空腹時 グルカゴン負荷後 経静脈糖負荷試験 HOMA-R IRI(μU/ml)x空腹時血糖(mg/dl)/405 1.6以下 正常 2.5以上 インスリン抵抗性あり クランプ試験 (euglycemic hyperinsulinemic clamp) 算出式 INDEX 負荷30分後のインスリン値 負荷前インスリン値 (μu/ml) 負荷30分後の血糖値 負荷前血糖値 (mg/dl)! during OGTT, 0min~30min 正常値 0.4以下であれば 初期分泌が障害されている 利点 変化量で見るので 絶対値に左右されにくい 欠点 グルコース負荷試験が必要 インスリン抵抗性の影響が加味されにくい 5!
空腹時血糖とインスリン分泌 75 g糖負荷試験におけるインスリン分泌反応 **P < 0.01; ***P < 0.001 **! ***! ***! IRI / PG! 1.5! Sato Y et al. Diabet Med. 19:566-571, 2002.を一部改変 1. 0.5! NGF1! NGF2! FPG! (mg/dl)! 9 n! 199! 追跡開始時の糖忍容力の程度と IRI/ BG 30分 で区分した追跡8年間の累積糖尿病発症率 DM1! IFG! DM2! DM3! 90 <! 110! 12 14 < 11 < 12 < 14 < 16 16 223! 87! 2 1 7! 空腹時およびグルカゴン負荷6分後CPR Insulinogenic index <0.5! Insulinogenic index 0.5! (%)! 空腹時CPR(ng/mL)! 健常者 IGT! 6 * 5 累 積 4 糖 尿 病 3 発 症 2 率 1 p<0.05! CPR-6 min(ng/ml)! 8! 6 5 12! n=700, r=-0.22 y=2.151-0.021x! p<0.0001! n=700, r=-0.271! y=4.436-0.050x! p<0.0001! 8! 4 3 2 2! * 1 p<0.05! 1! 2! 3! 5! 7! 8! 1! 2! 追跡期間 年 3! 5! 1 2 3 4 5 6 糖尿病罹病期間 年! 7! 8! 1 2 3 4 5 6 糖尿病罹病期間 年! 追跡期間 年 Kosaka K, et al.: Diabet Med. 1996;13:S120-S126.! Funakoshi S. et al.: Diabetes Res Clin Pract. 2008;82(3):353-8.! HOMA-β (Homeostasis model assessment-beta) Cペプチドによる1型糖尿病と2型糖尿病の判定 めやす 1型糖尿病 2型糖尿病 24 時間尿 CPR 20μg/ 日 30 μg/日 HOMA-β(%) 空腹時インスリン値(mU/mL) X 360 空腹時血糖値(mg/dL) 63 空腹時の定常状態でのインスリン分泌の指標! 経口糖負荷後2時間までのインスリン分泌総 和と良く相関する 正常値 空腹時血清CPR 0.5 ng/ml 0.5 ng/ml グルカゴン 静注 6分値 1.0 ng/ml 1.0 ng/ml 欧米人 100% 日本人 40~80% 利点 日常診療にて測定可能な空腹時インスリン値及び空腹時血糖値で評価できる 疫学研究やコホート研究で有用である 欠点 モデルが 正常耐糖能者および2型糖尿病患者の薬物未治療例にて解析されてい るため薬物治療下での評価に関しては不明確 一断面での個人のβ細胞機能を評価するのには適していない Matthews DR, Hosker JP, Rudenski AS, et al. Diabetologia. 1985;28(7):412-9.!
血糖コントロールの指標 糖化ヘモグロビン(HbA1c) 糖化ヘモグロビン (HbA1c)!!最近2 3ヶ月間の血糖の平均値のめやす!!正常値 4.3-5.8 %!! 糖化アルブミン!!最近1ヶ月以内の血糖の平均値のめやす!!正常値 12-16 %! フルクトサミン!!糖化血清タンパクの総量!!測定意義は糖化アルブミンと同じ!! 1,5-アンヒドログルシトール (1,5-AG)!!尿糖量を反映!!最近2週間以内の血糖の平均値のめやす!!正常値 14 μg/ml以上 HbA1c は 元来は健常者のヘモグロビン中の微量成分としてクロマトグラ フィーのピークの一つとして命名されたものであったが IFCC は物質名とし て ヘモグロビンのβ 鎖N-末端のバリンにグルコ スが非酵素的に安定的に 結合してβ-N(1-deoxy) fructosyl Hb となったものと再定義した 国際的には2種類のHbA1c値が用いられている 血糖コントロールの指標と評価 糖尿病治療ガイド2010より 6.09%! NGSP値 JDS コントロールの評価とその範囲 指標 可 優 良 HbA1c(JDS値)(% 5.8未満 5.8 6.5未満 6.5 7.0未満 HbA1c(国際標準値)(%) 6.2未満 6.2 6.9未満 6.9 7.4未満 FPG mg/dl 不十分 不良 日本 値 NGSP 米国 値 不可 6.50%! 7.0 8.0未満 8.0以上 7.4 8.4未満 NGSP値 8.4以上 80 110未満 110 130未満 130 160未満 160以上 2h-PPG mg/dl 80 140未満 140 180未満 180 220未満 220以上 IFCC 国際臨床化学会 値 4.64%=46.4mmol/mol! 血糖コントロールの指標と評価 HbA1cの国際標準化 糖尿病治療ガイド2012-13より HbA1c(JDS) 0.4 コントロールの評価とその範囲 指標 HbA1c(NGSP):国際標準値 可 優 良 HbA1c(NGSP)(% 6.2未満 6.2 6.9未満 6.9 7.4未満 HbA1c(JDS)(%) 5.8未満 5.8 6.5未満 6.5 7.0未満 FPG mg/dl 不十分 不良 不可 7.4 8.4未満 8.4以上 7.0 8.0未満 8.0以上 80 110未満 110 130未満 130 160未満 160以上 2h-PPG mg/dl 80 140未満 140 180未満 180 220未満 220以上 2012年4月から日常臨床で用いられるようになった 7!