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吊橋の超長大化の可能性に関する基礎的研究 麓興一郎 1 秦健作 3 楠原栄樹 1 正会員独立行政法人土木研究所構造物研究 G 橋梁構造 ( 305-8516 茨城県つくば市南原 1-6) fumoto@pwri.go.jp 正会員財団法人海洋架橋調査会企画部調査役 ( 11-0004 東京都文京区後楽 --3) hata@jbec.or.jp 3 正会員本州四国連絡高速道路株式会社超長大橋センター耐風構造 G ( 651-0088 神戸市中央区小野柄通 4-1-) shigeki-kusuhara@jb-honshi.co.jp 中央径間長が 3,000m を超す超長大橋を実現するには, 経済性 耐風安定性に優れた上部構造が必要であり, その課題克服のためハイブリッド吊橋を考案した. ハイブリッド吊橋とは, ケーブルとしては吊橋を基本として主塔近傍に斜張形式を採用したもので, 桁については中央径間中央部に空力性の優れた二箱桁を配置し, 主塔近傍には桁幅が狭く軽い一箱桁を配置した橋である. 本論文ではハイブリッド吊橋の超長大橋への適用可能性を検討するため, 構造解析と風洞実験及びフラッタ解析を実施した. その結果, 塔形式を A 型とし, ケーブルを中央径間中央部で桁の外側を吊る形式とした場合, 耐風安定性に最も影響を与えるねじれの固有振動数を従来の吊橋より 50% 程度高くでき, さらに二箱桁断面の形状を工夫することで耐風安定性を向上できることがわかった. Key Words :super-long-suspension bridge, hybrid suspension bridge, mono- and di-combined deck girder, aerodynamic stability, wind tunnel test, flutter analysis 1. はじめに我国においては本州四国連絡橋明石海峡大橋以降, 海峡横断プロジェクト等に代表された超長大橋の需要は少なくなってきたが, 本四架橋で培った長大橋関連技術の継承が今後の課題となっている. 一方, 海外に目を転じてみれば中国における西候門大橋, 潤陽長江公路大橋などの長大橋プロジェクト 1) やイタリアにおけるメッシナ橋の如き超長大橋プロジェクトが盛んに押し進められており, 国際的には超長大橋の需要は依然としてあるといえる. 超長大橋を実現するためには, 経済的に優れた構造を設計に取り入れるともに, 耐風安定性の確保を図ることが最も重要な課題の一つである. そこでこれらを克服するためにハイブリッド吊橋を考案した. 本論文中で取扱 ) うハイブリッド吊橋とは, 1) ケーブルシステムにおいては吊橋を基本として塔近傍に斜張橋形式を採用したもので, ) 桁については中央支間中央部に空力特性の優れた二箱桁を配置し, 塔近傍については桁幅が狭く軽量な一箱桁を配置した吊橋である. 特徴としては, 支間長を構造動力学的に軽減し, かつねじれ剛性を向上させている. 本論文は, 考案したハイブリッド吊橋の超長大橋への 適用の可能性を構造解析と風洞実験及びフラッタ解析によって明らかにすることを目的としている.. 既往長大吊橋における耐風性の課題現在も世界最長支間を誇る明石海峡大橋は, その計画設計段階における検討では, 支間長がそれまでの最大支間であった南備讃瀬戸大橋の 1,100m から一気に約 倍弱となることから, 耐風性の確保が極めて重要な課題と位置づけられた. 事実, 補剛桁の最低次ねじれ固有振動数に着目すると, その値は 0.15Hz 程度となり, 南備讃瀬戸大橋の 0.35Hz に比べて大幅に低下することが明らかとなった.( 図 -1) 3) 耐風安定性の観点から見た場合, 明石海峡大橋ではトラス形式の補剛桁を用いた場合, 南備讃瀬戸大橋で問題となったねじれフラッタの発現風速が, 一気に 30m/s 以下となる可能性があることを示している. また, ねじれフラッタがこのような低い風速域において発生する可能性があることは, 高風速域では曲げ振動とねじれ振動が連成した, いわゆる連成フラッタが発生する可能性があることが予想された. そのため明石海峡大橋では耐風安定性を大幅に向上させるために, それまでの実績や研究成果をもとに様々な耐風対策を施している. 0

具体的には, 床版幅 b に対して耐風安定性が最も良くなる主構幅 W を決めている ( 図 -). この根拠になった検討は久保ら 4) によって実施された. 久保らは, 図 -3 に示す南備讃瀬戸大橋における耐風安定性の検討に際し, 床版幅に対して耐風安定性を向上させる最適となる主構幅が存在することを見出した. 即ち b/w 0.87 のときに耐風安定性は最も向上している. ちなみに, 図 -3 に示す南備讃瀬戸大橋の空力不安定振動は, ねじれの 1 自由度型のフラッタであり, 図 -4 はねじれに鉛直たわみや横たわみが連成しているいわゆる連成フラッタである. 明石海峡大橋でも主構トラス幅に対する検討から, 図 -4 に示す結果が得られている. この図から床版幅 30m に対して主構幅 35.5m 即ち b/w 0.85 案が耐風性に最も優れていることが確認された 5). また, 床版には中央グレーチングのほかに, 路側端の非常駐車帯に幅の広いグレーチングが配置されたほか, 鉛直スタビライザーが中央防護柵直下に置かれることになった. しかしながらこれだけでは十分な耐風安定性は確保できず, さらに上弦材の寸法, 床版と上横構とのクリアランス, 上路管理路の配置や形状, 公共添加物の配置位置などが風洞実験を繰り返して見直され, これら耐風対策を施した後に, 明石海峡大橋のフラッタ限界風速は照査風速 78m/s を数 m/s 上回り, 耐風安定性が確保できた 3). したがって, 中央径間長で明石海峡大橋を大幅に超えるためには, これまでと同様の対策を講じるだけでは耐風安定性 ( フラッタの照査風速は明石海峡大橋と同程度の 80m/s) を確保することは難しく, ケーブル形式を含めた新しい発想に基づく設計が必要となる. 3. ハイブリッド吊橋の構造特性 図 -1 吊橋の支間長の増加が固有振動数に及ぼす影響 本章では提案したハイブリッド吊橋について, 耐風安定性を確保することを目的に, 斜張橋区間を選定するとともに, 主ケーブルの吊構造形式の相違や主塔形式が構造特性に及ぼす効果について, 耐風安定性に影響を及ぼすねじれの固有振動数及び曲げとねじれの固有振動数比の値から検討を加えた. モデル (A) モデル (B) 図 - 床版と弦材及び横構の関係 図 -3 主構トラス幅がフラッタ特性に及ぼす影響 ( 南備讃瀬戸大橋 ) 図 -4 主構トラス幅がフラッタ特性に及ぼす効果 ( 明石海峡大橋 ) 1

(1) ハイブリッド吊橋の構造諸元表 -1 にハイブリット吊橋の構造諸元を示す. この吊橋は, 橋長 5,000m, 中央径間長,800m,4 車線幅員, 主ケ 6) ーブルのサグ比 1/10 の超長大吊橋を基本型として, ハイブリッド吊橋 ) としたものである. 吊橋区間には, 耐風性に優れた二箱桁を, 斜張橋区間には構造力学的に優れた一箱桁を配置した. これら箱桁の断面が変化する区間を写真 -1 に示す. () 解析モデル固有値解析及びフラッタ解析に用いた解析モデルは立体骨組みモデルである. 図 -5 に示す様に, 主桁 横桁 主塔を梁 柱要素で, 主ケーブル 斜張ケーブル ハンガーを棒要素でモデル化した 7). 主桁の梁 柱要素は補剛桁断面のせん断中心位置に配置し, 桁に作用する静的及び動的空気力は横桁の中央に節点を設けて作用させた. 主塔 ケーブル ハンガー及び補剛桁の初期応力は, 節点座標の上げ越し計算後に自重と釣り合わせた. 表 -1 構造諸元 (3) 斜張橋区間の選定中央径間長が長くなるにつれて, 風荷重による横たわみ変形と, 風に流された結果生じた桁の迎角とが大きくなると共に, フラッタ特性に影響を与えるねじれ固有振動数は著しく低下する 8). そこで, 横たわみ変形を拘束し, ねじれ固有振動数を高くするために, 斜張橋形式の区間を主塔から径間中央へ向かって配置する. 斜張橋区間を長く設定した場合, ねじれ振動モードに対する見かけの吊橋径間長を短くする効果があるが, その反面, 軸力が大きくなるため, 主塔を高くすることで軸力をケーブルに負担させるか, 桁の断面積を増やす等の対策が必要となり, 斜張橋としての長所を活かせなくなる恐れがある. ここでは, 塔高 ( サグ比 1/10 として設定 ) を変えずに, 斜張橋区間を主塔から中央径間側 l/4 支間および 1/8 支間とする 案について, 耐風安定性の観点から比較検討を行った 9). これらは, 径間長さとしては 800m 級径間の多々羅大橋クラスの斜張橋と, その 倍の 1,600m の径間長を有する斜張橋を想定したものである. 表 - に固有振動数の比較結果を示す. この表から, 斜張橋区間を長くすると鉛直対称 1 次の固有振動数を変化させることなく, ねじれ対称 1 次の固有振動数を高めることができることがわかる. 本論文では斜張橋区間 1/4 案を採用する. この 1/4 案は 1/8 案に比べて, 連成フラッタ性能に影響を及ぼすねじれ振動数と振動数比が 10% 以上高く, 優れた耐風性能を有している. 写真 -1 一箱桁と二箱桁の断面変化区間 図 -5 解析モデル ( 外吊形式の例 ) 図 -6 明石海峡大橋とハイブリッド吊橋

(4) ケーブル吊構造形式超長大橋では, フラッタに代表される動的不安定問題のほかに静的不安定問題がある. 暴風時の中央径間部の横たわみ変形量は桁の横座屈問題であるが, これまでのところケーブル効果により桁幅程度の変形量は許容されてきた. また, 箱桁形式の補剛桁では揚力や空力モーメントの作用によるねじれ変形がダイバージェンスを起こさせる可能性がある. そこで, 有風時のねじれ変形を抑制するために, 主ケーブルの吊構造形式が耐風安定性に及ぼす影響を検討する. A 型の主塔とした場合に, 主ケーブルの吊り構造形式は図 -7 に示す二箱桁の開口部内側で並行に吊る内吊形式と, 中央径間吊橋区間のみを二箱桁の外側で吊る外吊形式の 通りが考えられる. これらについて固有値振動数を比較した. 図 -8~ 図 -10 に内吊形式及び外吊形式の水平, 鉛直, 及びねじれの各振動モードの最低次振動モードをそれぞれ示す. 図 -8 と図 -9 より, 水平及び鉛直の対称 1 次振動モードでは, 内吊, 外吊の両形式に大きな差異は認められない. 一方, 図 -10 に示すねじれ対称 1 次振動モードでは, 内吊形式の場合に水平方向成分とねじれ成分が連成しており, フラッタ発現風速が高くなる可能性がある. 次に表 -3 はケーブル吊構造形式の相違が振動特性に及ぼす影響を数値として示したものである. 特にフラッタ特性に影響が大きい鉛直とねじれの最低次固有振動数と等価極慣性モーメントに着目すれば, ねじれ対称 1 次の振動数および等価極慣性モーメントは外吊形式の方が大きく, 内吊形式に対して振動数で 1.8% 増となっていることがわかる. (a) 内吊形式 (b) 外吊形式図 -7 ケーブル形式の比較図 -8 水平対称 1 次振動モード 表 - 斜張橋区間 図 -9 鉛直対称 1 次振動モード 表 -3 ケーブル形式の比較 図 -10 ねじれ対称 1 次振動モード 3

(5) 主塔の形式吊橋の主塔形式として一般的な H 型形式は, ケーブルが離れて配置されることにより, 横変形に対する拘束力やねじれ対称 1 次の固有振動数に対して有利である. 一方,A 型形式は水平材の数量を減らすことができるため, 経済性の面からは優れた構造形式である. ここでは図 -11 に示す両者を比較する. 各々の主塔を配置した全体系について固有値解析を実施し, その振動特性から両者の優劣を比較することとした. 結果を表 -4 に示す. 全体系の鉛直対称 1 次の振動数については両形式で差は認められないが, ねじれ対称 1 次の振動数では A 型主塔の方が 10% 高いことが見て取れる. このねじれ固有振動数の変化と等価質量慣性モーメントの増加により,A 型主塔を配置した斜張吊橋は H 型主塔の斜張吊橋よりもフラッタ発現風速は 10m/s 向上することになる. 表 -4 主塔形式の構造比較 4. 補剛桁の耐風安定性の比較超長大吊橋で最も重要な問題はフラッタに対する耐風安定性であり, なかでも補剛桁の幾何学的形状に依存する割合は大きい 10),11). 本章では, ハイブリット吊橋に採用しようとする補剛桁の耐風安定性について, 二次元風洞試験を実施し, 耐風安定性に優れた二箱桁形式の補剛桁を決定した. (1) 桁断面について吊橋区間には, 経済性および耐風安定性に優れた桁構造として提案されている桁中央に開口部を有する二箱桁 4),7) 断面を配置した. 耐風対策としては, フェアリングやフラップ, デフレクター等が考えられるが, ここでは経済性を考慮して, 構造主部材として活かせるフェアリングと簡易な剥離制御用の対策 ( 耐風対策物と呼ぶ ) を桁下面に配置した. ただし, 二箱断面では一箱断面に比べて有風時の変形が負迎角範囲で大きな値となることが予想されることから, フェアリング形状, 桁下面耐風対策物の大きさに着目し, 二次元バネ支持試験により耐風安定性を確認した. 風洞試験では, 事前に実施した横たわみ変形解析の結果から予測される変形を考慮し 0 から -6 まで 1 ピッチで応答を観測した. (a)h 型 図 -11 比較検討した主塔形式 (b)a 型 () フェアリング形状図 -1 にフェアリング形状を三角形, 台形 1), 非対称台形とした場合の代表的なバネ支持試験結果を比較して示す. 基本断面としての三角フェアリング付断面は迎角 -3 の結果であり, 直接に他の断面と比較できないが, 実橋換算風速 =50m/s 付近で発散振動が発生しており, 耐風安定性は良くない結果となっている. 一方, フラッタ照査風速付近では中央径間中央部で迎角が -6 程度となることが予想される. この迎角における台形および非対称台形フェアリング付断面を比較すれば, 非対称台形フェアリング付断面の方が耐風性に優れているといえよう. 以上の結果から, 中央径間に配置する補剛桁の断面としては, 非対称逆台形フェアリング付断面を採用することとした. 図 -1 フェアリング形状の検討結果 (3) 桁下面耐風対策物の大きさの検討図 -13 に桁下面に取り付けた耐風対策物の高さを変化させた場合の風速 - 応答振幅の関係を示す. ここで, 耐風対策物は, 下面上流部分で流れを剥離させることにより上流端からの剥離を制御することで耐風性の改善を図ったものである. 経済性を考慮して簡易な道路路側端防護柵を対策材として利用することとした. 4

図 -15 非定常空気力の座標軸 図 -13 桁下耐風対策物の検討結果図 -14 採用した二箱桁断面耐風対策物の高さを, 通常の防護柵の高さ H (=1,00mm) を基準として,.0H,1.5H,1.H と変化させた. 対策物高さによる応答振幅の違いは, フラッタが発生する高風速領域で.0H のケースが他の高さのものより僅かに大きいことが分かる. また, 図 -1 と比較しても高風速時には 1.5H,1.H の対策物の方が振動の振幅は小さいことが分かる. 経済性を考慮すれば,1.H の耐風対策物が耐風安定性のうえからも最適な選択となる. 選択した結果を図 -14 に補剛桁の断面形状 ( 対策断面と呼ぶ ) として示す. なお, ここでの非定常空気力係数は図 -15 の座標軸の定義に従って式 (1),(),(3) により整理している. B L = πρ + B 3 B M = πρ + B B D D = πρd + 3 [ L ] [ ] HRω h + LHIωh' + B L Rϖ θ + Lθ Iωθ ' [ ] L ω s + L ωs' SR SI θ (1) 4 [ M ] [ ] HRω h + MHIωh' + B M Rϖ θ + MθIωθ' 3 [ ] M ω s + M ωs' SR SI θ () [ ] [ ] HRω h + DHIωh' + B D Rϖ θ + Dθ Iωθ' [ ] B D ω s + D ωs' SR SI θ (3) ここで L: 非定常揚力 (N) M: 非定常空力モーメント (N-m) D: 非定常抗力 (N) ρ: 空気密度 (kg/m 3 ) B: 桁幅 (m) h: 鉛直変位 (m) θ: ねじれ変位 (deg.) S: 水平変位 (m) ω: 応答円振動数 (1/sec) d: 投影面積 (m /m) 非定常揚力係数 L,M,D の添字, H は鉛直加振, θ は回転加振, S は水平加振を示し, R は実部, I は虚部をそれぞれ示す. 5. フラッタ解析耐風安定性をより詳細に比較するため, 補剛桁の二次元模型の風洞実験によって得られた抗力, 揚力, 空力モーメントの各三分力係数及び非定常空気力係数を用いてフラッタ解析を実施した. (1) 非定常空気力の測定図 -1 及び図 -13 の結果からも明らかなように, 迎角により耐風性が大きく変化することが予測される. 一方, 実際の橋梁では風荷重の作用により横たわみ変形が生じ負の迎角が予想される. そこで, 非定常空気力の測定では, 解析に用いる迎角を考慮し, 試験迎角を 0 から-8 まで順次変化させることとした. 図 -16 は実験時の模型のねじれ加振振幅 1 度における非定常空気力の各成分を, 迎角と無次元振動数に対して比較したものである. 各図で横軸の無次元振動数 ( 無次元風速の逆数 ) に対し, 縦軸の非定常空気力の各成分は迎角により大きく変化している. 二次元実験による応答が, 迎角により大きく異なる様に, 非定常空気力も迎角により大きく変化していることがわかる. この非定常空気力の中で空力安定性に最も影響を与える回転加振時の空力モーメントの速度比例成分の値 M θi は, 迎角の増加とともに絶対値が大きくなっていることから, 横たわみ変形とともに負迎角が増大した場合に, 大きな力を発生することが予想できる. すなわち, 桁の変位と非定常空気力との位相差が加振側にある場合にはフラッタ現象が発生する可能性のあることを示唆している. 5

図 -16 非定常空気力係数 () フラッタ方程式 13) フラッタ方程式の直接解法については, 風間の方法によった. 立体骨組モデルに対するフラッタ方程式は以下のように表すことができる. [ M ] u& + [ C ] u& + [ K ] u = [ F ] u&& + [ F ] u& [ F ] & [ ]u (4) A V + ここで, [ M ] : 質量マトリックス [ C ] : 減衰マトリックス [ K ] : 剛性マトリックス [ F A ] : 自励空気力ベクトル ( 加速度比例項 ) [ F V ] : 自励空気力ベクトル ( 速度比例項 ) [ F D ] : 自励空気力ベクトル ( 変位比例項 ) である. 今, 運動が調和振動的であると仮定でき, 左辺側の速度比例成分の係数 ( 構造減衰 ) の振動に及ぼす影響は小さいと仮定すると { } i ω u = Φ e t (5) より u = & u &/ω (6) u & = iu & / ω (7) が得られ, 式 (4) を複素固有値問題に持ち込むことができる. これから次式 (8) に示す換算振動数 K を仮定すると, D 表 -5 フラッタ解析条件 K = ( ωφb / U ) (8) j 次モードに対する応答の空力減衰率は δ ω ji j = (9) ωjr + ωji で求められる. 検討対象のハイブリッド吊橋では桁の中央径間のねじれ対称 1 次モードと他のモードが連成する複雑なフラッタ発現モードが考えられるので, ここでは, 三次元フラッタ方程式の直接解法を用いて, 式 (9) に示す空力減衰率を算出した. 解析条件を表 -5 に示す. 6

(3) フラッタ解析結果非対称な台形フェアリングを採用した対策断面の三次元フラッタ解析結果を図 -17 に示す. 対策断面のフラッタ解析の結果,3つの解が存在し, これをモード A,B 及び C とした. モード A は桁のねじれ対称 1 次振動モードと桁の鉛直たわみ対称 1 次振動モードが連成した代表的な振動モードである ( 図 -18). モード B は桁のねじれ対称 1 次振動モードに桁の水平対称 3 次振動モードが連成した振動モードであり, 高風速域でねじれ対称 1 次の振動モード成分が小さくなることが特徴である ( 図 -19, 図 -0). 一方, モード C は桁のねじれ対称 1 次モードと桁の鉛直たわみ対称 1 次モードが連成しているが, ケーブルの水平逆相対称 次の振動モードが卓越していることが特徴である ( 図 -1). 図 -17 三次元フラッタ解析減衰率比較 図 - には対策断面の桁のねじれ対称 1 次の各振動数の比較を示す. これらのモードの振動数は風速の変化につれモード間の相互影響が発生することが予測されるが, 図 -17 より減衰率が負となることはなく, 三次元全橋模型試験ではフラッタの発生はないものと判断した. これらの試験と解析結果から図 -14 の断面を中央径間中央に配置し, 外吊形式とすることで十分な耐風性が確保できると判断し, 三次元全橋模型試験を実施した. 6. 全橋模型による耐風安定性の検討 (1) 全橋模型の概要超長大橋の全橋模型の縮尺は, 土木研究所大型風洞実験施設の風洞の規模 ( 幅 41m 高さ 4m) に納まるように, 図 -6 の超長大橋の 1/15 スケールとした. 模型化に際しては各箱桁のせん断中心に剛性棒 ( 以下, 箱桁剛性棒 ) を配置し, この二本の箱桁剛性棒を横梁 ( 以下, 横梁剛性棒 ) で連結する梯子構造としている ). 桁部材については全ての剛性を相似させることが困難なため, 耐風安定性に与える影響が最も大きいと考えられる純ねじり剛度を優先して相似させている. なお, 桁にとりつける耐風安定化部材は非対称台形フェアリング断面および桁下に耐風安定化部材 ( 中央径間の中央部 : 模型で約 11.4mm) を設置した ( 図 -3 参照 ). 図 -18 ねじれ対称 1 次 A のモード図 ( 風洞風速 7m/s) 図 -19 ねじれ対称 1 次 B のモード図 ( 風洞風速 m/s) 図 - 三次元フラッタ解析振動数比較 図 -0 ねじれ対称 1 次 B のモード図 ( 風洞風速 7m/s) 図 -1 ねじれ対称 1 次 C のモード図 ( 風洞風速 7m/s) 図 -3 対策断面桁断面図 7

表 -6 固有振動数の比較 写真 - 全橋模型 表 -7 解析値と計測値の比較 ケーブルについては, ケーブル全体にかかる風荷重が実橋と相似となるような抗力部材を離散的に取り付け, 重錘や寸法を調整することで質量や抗力を相似させた. ただし, 空力的な干渉が問題となる中央径間中央付近では, 質量と共にケーブルの実際の形状を相似させた ),14). ここで, 風洞実験で用いる全橋模型の解析モデルの妥当性を検証するために固有振動数を算出し, 実橋梁の構造寸法を忠実に 1/15 に縮尺した理想模型の解析モデルのものと表 -6 で比較する. 各最低次の振動数については -3%~+4% の誤差範囲であった. 全橋模型の振動特性は実橋梁を適切に表現できているといえよう. 写真 -3 高風速域の全橋模型の横たわみ変形状況 () 全橋模型の構造特性対風応答試験に先立ち, 静的な変形 ( 鉛直, 水平, ねじれ ) を確認する重錘による静的特性試験 15) と, その固有振動数 ( 鉛直, 水平, ねじれ ) を確認する動的特性試験を実施した. そのうち表 -7 に動的特性試験における解析値と計測値の比較結果を示す. 水平振動モードでは 6% 程度の差が生じているが, 耐風性能で問題となるねじれ振動モードの差は % 以内に収まっている. (3) 耐風応答試験試験条件は気流傾斜角 0 の一様流とした. 風速を段階的に変化させ, 風速毎に鉛直たわみ, 水平たわみ, ねじれの所定のモードについて強制加振後の減衰振動状態及び制止後のゼロ発散振動状態を計測した. 計測は全橋模型に設置したターゲットの座標をビデオトラッカー及びポジションセンサーで追従する方法で実施し, ターゲッ 図 -4 変形量の比較図ト座標の時系列波形を解析した. 写真 - は全橋模型の状況を, 写真 -3 は高風速域で横たわみ変形している全橋模型の状況を示す. 全橋模型の解析モデルを用いて有限変位理論に基づいて有風時の変形解析を実施した. 図 -4 は全橋模型による風洞試験実験で観測された横たわみ変形時のねじれ角を解析結果と共に示したものである. 図から実験値と解析値はよく一致していることがわかる. 風洞試験結果は風速を横軸, 振幅を縦軸, 対数減衰率を等高線で表示した風速 振幅 対数減衰率の関係 (V-A-δ 図 ) で評価する. 振動の減衰または発散状態は, 対数減衰率の符号が正ならば減衰を負ならば発散を示す. 8

図 -5 に全橋模型の風洞試験結果を示す. 三次元フラッタ解析ではフラッタの発生は認められなかったにもかかわらず, 風洞試験に於いては風洞風速 4.5 m/s~6.0 m/s の領域において減衰率 δ は負となりフラッタが生じた 15). しかしながら, この風速領域におけるフラッタとしては, 従来から認められている連成タイプのフラッタに比べて空気力が極めて小さいことが特徴的である. したがって, 僅かな断面形状の変更や構造系の変化によって, この風速領域でのフラッタは容易に制御できると考えられる. そこで, 過去の実績をもとにフラップ, センターバリアやスプリッター板などといった各種対策部材を取り付けることとし, フラッタの発生を防ぐ耐風対策を見出すための試験を実施した 16). この結果図 -6 に示すスプリッター板を中央径間中央から吊橋区間の 50% 長に設置した場合に耐風性に大きな効果が認められた. 図 -7 に試験結果を示す. 高風速域の微小振幅の応答が僅かに観測されたものの, スプリッター板を設置することで, 照査風速 80m/s を十分に上回る風速領域まで, フラッタの発生を防止することに成功した. (4) 風洞試験結果とフラッタ解析結果の比較対策断面については, 二次元風洞試験で求めた非定常空気力を用いて三次元フラッタ解析を実施した結果ではフラッタの発生がないと予測されたにもかかわらず, 全橋模型風洞試験ではフラッタの発生が観測された. ここでは両者の相違が何に起因するかを明らかにする. 図 -9 で対策断面の計測値と解析値とを比較すると両者の値は大きく異なっていることがわかる. そこで図 -1 で耐風性はよくないがフェアリングを三角形として下面に何もつけない基本断面 ( 空気力の計測で採用した断面より単純な断面で計測誤差が少ない ) で全橋模型試験を行いフラッタ解析と比較した. 図 -9 に示すが解析値と実験値はよく一致している. 解析手法に特に問題が無いとすれば, 減衰力がほぼゼロ近傍の値である場合の非定常空気力の精度そのものが大きく影響しているものと考えられる. そこで改めて非定常空気力試験の測定精度を検証してみた. 具体的には, 測定結果から非定常空気力を推定するプログラムの中で, 手法をクロススペクトル法から波形近似法に改めた. この解析方法は FFT 法の持つ周波数分解能に依存する解析誤差の問題を解決するため, より高いサンプリング周波数で計測した波形を最小 乗法で近似し振幅と位相差を高い精度で求めるものである. こうして得られた非定常空気力係数を用いてフラッタ解析を行った結果を図 -30 と図 -31 に示す. 結果からも明らかなように, フラッタ解析のモード A はこれまでの結果に比べ 図 -5 対策断面の風洞試験結果 図 -6 スプリッター板の配置図 図 -8 対策断面の解析値 ( 従来手法 ) と風洞試験結果 図 -7 スプリッター板付き模型の風洞試験結果 図 -9 基本断面の解析値 ( 従来手法 ) と風洞試験結果 9

図 -30 対策断面の解析値と風洞試験結果比較 る方が良い. 外吊とすることでねじれの固有振動数及び曲げとねじれの振動数は内吊形式と比べて 1.8% 増加する. 3) 明石海峡大橋で実績のある二次元風洞試験により求めた三分力と非定常空気力を用いたフラッタ解析には限界があり, 今回のような空気力が極めて小さい断面では, 非定常空気力の測定精度をより向上させるための特別な工夫が必要となる. 4) 中央径間吊橋部の補剛桁にスプリッター板付きの二箱桁を配置し, 主ケーブルを外吊形式にしたハイブリッド吊橋では連成フラッタの発生が 80m/s 以上となり, 超長大橋吊橋として十分な耐風安定性を有することが確認できた. 図 -31 スプリッター板付き断面の解析値と風洞試験結果比較風洞試験結果とよく一致しているといえよう. これは風洞風速 5m/s 付近から発生したフラッタの加振空気力が極めて小さい値のために, 非定常空気力係数の計測精度の差が解析値の誤差を生む大きな原因であったと考えられる. 以上に述べたように, 対策断面を用いた三次元全橋模型実験で観測されたフラッタが, これまで認識されていたフラッタとは異なり, 空気力の負減衰が極めて小さく, 従来の例としては南北備讃瀬戸大橋等で対象とした, 所謂ねじれ1 自由度のフラッタに類似した挙動を示した 4). このように対象とする断面に作用する空気力が大きくない場合には, より精度を高めた非定常空気力の計測が必要であり, 二次元非定常空気力を用いたフラッタ解析による予測はより難しいものになると言えよう. 7. まとめ本研究では, 中央径間長が世界最大の吊橋である明石海峡大橋を大幅に超える規模の超長大橋に対して, 新しい構造形式であるハイブリッド吊橋の実現の可能性を, 構造解析やフラッタ解析あるいは二次元風洞試験や三次元全橋模型風洞実験によって明らかにした. 得られた結論をまとめると以下になる. 1) ハイブリッド吊橋における斜張橋形式区間の配置は吊橋径間長の縮小効果を高めるため, 中央径間長の 50% 程度とすることが望ましい. ) 耐風安定性の観点から主ケーブルは外吊形式とす なお本論文中の全橋模型による風洞実験結果の一部データは独立行政法人土木研究所, 本州四国連絡高速道路株式会社, 財団法人海洋架橋 橋梁調査会, 財団法人土木研究センター, 及び民間 9 社 ( 石川島播磨重工業株式会社, 川崎重工業株式会社, 川田工業株式会社, 清水建設株式会社, 住友重機械工業株式会社,JFE エンジニアリング株式会社, 日立造船株式会社, 三井造船株式会社, 三菱重工業株式会社 ) による共同研究 経済性を考慮した超長大橋の耐風設計法に関する研究 で得られたものを使用した. 参考文献 1) 井上学, 越後滋, 斉藤豪, 宗華文, 藤井義法, 森園康之 : 最近の中国における長大橋梁, 橋梁と基礎,Vol.39, No.9,pp.34-41,005.9. ) 麓興一郎, 村越潤, 秦健作, 須澤雅人, 白井秀治, 斉藤義昭, 下土居秀樹 : 新形式長大橋 ( 斜張吊橋 ) の耐風性に着目した研究, 第 18 回風工学シンポジウム論文集, 日本風工学会, pp.485-491,004.1. 3) Miyata, T.:Comprehensive Discussion on Aero-Elastic-Coupled Flutter Control for Very Long Span Suspension Bridge, Long-Span Bridges and Aerodynamics, pp.181~00,1997. 4) Kubo,Y., Kato, K., Shigehiro, M., Miyata, T. and Ito, M.:Aerodynamic Characteristics of Truss-stiffened Suspension Bridges by the Arrangement of Structural Members, 九州工業大学研究報告 ( 工学 ), 第 39 号,pp.13-1,1979. 5) 本州四国連絡橋公団第 1 建設局 : 明石海峡大橋補剛桁 ( 計画設計 ) 風洞試験報告書,1988.3. 6) 国土庁計画 調整局編 : 1 世紀の国土のグランドデザイン, 1998.3. 7) 村越潤, 麓興一郎, 吉岡勉, 丹羽量久, 田中克弘, 徳橋亮治 : 超長大吊橋の対風応答解析の精度向上に関する一考察, 構造工学論文集, 土木学会,Vol.50A,pp.937-94,004.3. 30

8) 経済性を考慮した超長大橋の耐風設計法に関する共同研究報告書 ( その1), 土木研究所共同研究報告書第 64 号, 001.3. 9) 麓興一郎, 村越潤, 吉岡勉, 秦健作, 尾立圭巳, 須澤雅人, 斉藤義昭, 白井秀治 : 新たな形式の超長大橋について, 第 59 回年次学術講演会講演概要集, 土木学会,I-639, 004. 10) 岡内功, 伊藤学, 宮田利雄 : 耐風構造, 丸善,1976.5. 11) 日本鋼構造協会編 : 構造物の耐風工学, 東京電機大学出版局,1997.11. 1) 久保喜延, 本多健二, 田崎賢治 : 剥離流干渉効果による PC 斜張橋開断面桁の耐風性能改善法, 第 1 回風工学シンポジウム論文集,pp.399-404, 日本風工学会,199.1. 13) 風間浩二 : 吊形式橋梁の長大化に伴う耐風問題に関する研究, 横浜国立大学大学院博士論文,1995.3. 14) 本州四国連絡橋耐風設計基準 同解説 (001), 本州四国連絡橋公団,001.8. 15) 麓興一郎, 村越潤, 楠原栄樹, 秦健作, 出野麻由子, 岸明信 : 一箱 / 二箱併用斜張吊橋 ( モノデュオ形式 ) 大型全橋模型風洞試験, 第 60 回年次学術講演会講演概要集, 土木学会,I-308, 005. 16) 麓興一郎, 村越潤, 楠原栄樹, 秦健作, 風間浩二, 尾立圭巳 : 一箱 / 二箱併用斜張吊橋の桁形状と耐風応答特性, 第 60 回年次学術講演会講演概要集, 土木学会,I-309,005. (006.4.3 受付 ) FUNDAMENTAL RESEARCH OF THE POSSIBILITY OF SUPER LONG SPAN SUSPENSION BRIDGE Koichiro FUMOTO, Kensaku HATA and Shigeki KUSUHARA In order to realize super long span suspension bridges with longer main span than the Akashi-Kaikyo Bridge, a bridge should economically be designed with excellently aerodynamic stability. To achieve our economic goals, a hybrid suspension bridge that combines suspension and cable-stayed systems has been focused. To improve aerodynamic properties, di-box-girders are applied in the center part of the main span of this hybrid suspension bridge. And narrow mono-box girders are applied near the towers to restrict the mass of the bridge. A hybrid suspension bridge with mono- and di-combined deck girders is proposed to improve aerodynamic stability and economy. The aerodynamic stability of the proposed bridge was investigated by conducting wind tunnel test. The test result shows the high possibility for the improvement of the aerodynamic stability. 31