治療法は未確立である 5. 予後 孤発性症例では進行が速く 1~2 年で死亡する 遺伝性 CJD や一部の孤発性 CJD は進行が遅く数年に 及ぶものもある 要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 475 人 2. 発病の機構不明 ( 異常なプリオン蛋白が

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要件の判定に必要な事項 1. 患者数 100 人未満 2. 発病の機構未解明 ( 遺伝子異常による疾患であるが病態については未解明 ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根本的な治療法はない 種々の対症療法 ピリドキシンの補充療法が有効な症例がある ) 4. 長期の療養必要 ( 発症後 生涯にわたっ

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

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Transcription:

23 プリオン病 概要 1. 概要プリオン病は 正常プリオン蛋白が何らかの理由で伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し 主に中枢神経内に蓄積することにより急速に神経細胞変性をおこす稀な致死性疾患である プリオン病の代表的なタイプである孤発性クロイツフェルト ヤコブ病 (CJD) は 1 年間に 100 万人に 1 人程度の割合で発症することが知られている ヒトのプリオン病は病因により 原因不明の特発性 ( 孤発性 CJD; sporadic CJD (scjd)) プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性 ( 家族性 CJD; Gerstman-Sträussler-Scheinker 病 (GSS); 致死性家族性不眠症 (fatal familial insomnia: FFI)) 他からのプリオン感染による獲得性(environmentally acquired; クールー 医原性 変異型 (variant: vcjd)) の 3 種類に分類される プリオン病は 人獣共通感染症であり ヒト以外では 牛の牛海綿状脳症 (BSE) などが知られている 2. 原因プリオン蛋白 (PrP) は正常の人でも脳に発現しているが その機能に関しては諸説があり まだ解っていない 正常 PrP は PrP C と称されており蛋白分解酵素で消化される 一方 プリオン病の脳内に見られる異常な PrP は PrP Sc と呼ばれ 蛋白分解酵素で消化されにくい PrP Sc は PrP C に比べアミノ酸配列は同一であるが立体構造が異なっており βシート構造がより豊富なため不溶性となり 凝集しやすいというアミロイドの性質を有している 獲得性プリオン病では PrP C に外来の PrP Sc が接触して PrP C が PrP Sc に変換する連鎖反応を介して 脳内に蓄積して発病すると考えられているが 変換の機序に関しては複数の説があり 機序の解明と感染性の不活化のための様々な研究が行われている 遺伝性 CJD では PrP 遺伝子の変異がアミノ酸配列に変異を起こし PrP の高次構造が変化しやすいため PrP Sc が産生されやすいと考えられている 3. 症状 CJD の臨床病期は一般に 3 期に分けられる (1) 第 1 期 : 倦怠感 ふらつき めまい 日常生活の活動性の低下 視覚異常 抑鬱傾向 もの忘れ 失調症状等の非特異的症状 (2) 第 2 期 : 認知症が急速に顕著となり 言葉が出にくくなり 意思の疎通ができなくなって ミオクローヌスが出現する 歩行は徐々に困難となり やがて寝たきりとなる 神経学的所見では腱反射の亢進 病的反射の出現 小脳失調 ふらつき歩行 筋固縮 ジストニア 抵抗症 (gegenhalten) 驚愕反応 (startle response) 等が認められる (3) 第 3 期 : 無動無言状態からさらに除皮質硬直や屈曲拘縮に進展する ミオクローヌスは消失 感染症で1~2 年程度で死亡する 4. 治療法

治療法は未確立である 5. 予後 孤発性症例では進行が速く 1~2 年で死亡する 遺伝性 CJD や一部の孤発性 CJD は進行が遅く数年に 及ぶものもある 要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 475 人 2. 発病の機構不明 ( 異常なプリオン蛋白が原因と考えられる ) 3. 効果的な治療方法未確立 4. 長期の療養必要 ( 症状は進行性で1~2 年から数年で死亡する ) 5. 診断基準あり ( 現行の特定疾患治療研究事業の診断基準 ) 6. 重症度分類 Barthel Indexを用いて 85 点以下を対象とする 情報提供元 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 研究代表者金沢大学医薬保健研究域医学系脳老化 神経病態学 ( 神経内科学 ) 教授山田正仁 付属資料 診断基準 重症度基準

< 診断基準 > 確実例 ほぼ確実例を対象とする プリオン病の分類プリオン病はその発症機序から 1. 原因不明の孤発性 2. プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性 3. 異常プリオン蛋白の伝播による獲得性 の3つに大きく分類される 1. 孤発性プリオン病 CJDの診断基準 1. 確実例 (definite): 脳組織においてCJDに特徴的な病理所見を証明するか またはウェスタンブロット法か免疫組織学的検査にて異常プリオン蛋白が検出されたもの 2. ほぼ確実例 (probable): 病理所見 異常プリオン蛋白の証明は得られていないが 進行性認知症を示し さらに脳波上の周期性同期性放電を認める さらに ミオクローヌス 錐体路または錐体外路徴候 小脳症状 ( ふらつき歩行を含む ) または視覚異常 無動無言状態のうち2 項目以上を呈するもの あるいは 3. 疑い例 に該当する例で 髄液 14-3-3 蛋白陽性で全臨床経過が2 年未満であるもの 3. 疑い例 (possible): ほぼ確実例と同様の臨床症状を呈するが 脳波上の周期性同期性放電を認めないもの 2. 遺伝性プリオン病 (a) プリオン蛋白遺伝子変異 V180I による家族性 CJD 画像所見や臨床症状から V180I を疑った場合の診断に最も重要なのはプリオン蛋白遺伝子の検索である (b) プリオン蛋白遺伝子変異 P102LによるGSS(GSS102) GSSの診断基準 1. 確実例 (definite): 進行性認知症 小脳症状 痙性対麻痺などを呈する プリオン蛋白遺伝子の変異が認められ 脳組織においてGSSに特徴的な病理所見を証明するか またはウェスタンブロット法か免疫組織学的検査にて異常プリオン蛋白が検出されたもの 2. ほぼ確実例 (probable): 臨床症状とプリオン蛋白遺伝子の変異は確実例と同じであるが 病理所見 異常プリオン蛋白の証明が得られていないもの 3. 疑い例 (possible): 家族歴があり 進行性認知症を呈し 小脳症状か痙性対麻痺を伴うが プリオン蛋白遺伝子の変異や病理所見 異常プリオン蛋白の証明が得られていないもの (c) プリオン蛋白遺伝子変異 E200K による家族性 CJD 孤発性との鑑別にはプリオン蛋白遺伝子の検索が必要である (d) 致死性家族性不眠症 (FFI) FFIの診断基準 1. 確実例 (definite): 臨床的に進行性不眠 認知症 交感神経興奮状態 ミオクローヌス 小脳失調 錐体路徴候 無動無言状態などFFIとして矛盾しない症状を呈し プリオン蛋白遺伝子のコドン178

の変異を有しコドン129がMet/Metである さらに脳組織においてFFIに特徴的な病理所見を証明するか またはウェスタンブロット法か免疫組織学的検査にて異常プリオン蛋白が検出されたもの 2. ほぼ確実例 (probable): 臨床的にFFIとして矛盾しない症状を呈し プリオン蛋白遺伝子のコドン 178の変異を有しコドン129がMet/Metであるが 病理所見 異常プリオン蛋白の証明が得られていないもの 3. 疑い例 (possible): 臨床的にFFIとして矛盾しない症状を呈しているが プリオン蛋白遺伝子変異や病理所見 異常プリオン蛋白の証明が得られていないもの (e) その他の遺伝性プリオン病わが国に多い病型としてはM232R 変異による家族性 CJDがあげられる M232RはV180Iと類似しており 我が国でのみ報告されていて家族内発症が確認された報告はなく 診断にはプリオン病遺伝子検索が必須である 平均発症年齢が66.6 歳 平均罹病期間は1.3 年であり 古典型孤発性 CJDと同様の臨床経過 検査所見を呈する例が大半である その他 多数の家族性 CJDを来す遺伝子変異が知られているが希である また GSSにもP102Lの他に痙性対麻痺を呈するP105L 変異などが知られている 3. 獲得性プリオン病 (a) ヒト由来乾燥硬膜移植によるCJD 診断基準医原性 CJDの診断基準は孤発性 CJDのものに準じる (b) 変異型クロイツフェルト ヤコブ病 (variant Creutzfeldt-Jakob disease : vcjd) 変異型クロイツフェルト ヤコブ病の診断基準 Ⅰ A. 進行性精神 神経障害 B. 経過が6か月以上 C. 一般検査上 他の疾患が除外できる D. 医原性の可能性がない E. 家族性プリオン病を否定できる Ⅱ A. 発症初期の精神症状 (a) B. 遷延性の痛みを伴う感覚障害 (b) C. 失調 D. ミオクローヌスか 舞踏運動か ジストニア E. 認知症 Ⅲ

A. 脳波で PSD 陰性 (c) ( または脳波が未施行 ) B. MRIで両側対称性の視床枕の高信号 (d) Ⅳ A. 蓋扁桃生検で異常プリオン陽性 (e) 確実例 : Ⅰ A と神経病理で確認したもの (f) ほぼ確実例 : Ⅰ+Ⅱの4/5 項目 +ⅢA+ⅢB またはⅠ+ⅣA 疑い例 : Ⅰ+Ⅱの4/5 項目 +ⅢA a: 抑鬱 不安 無関心 自閉 錯乱 b: はっきりとした痛みや異常感覚 c: 約半数で全般性三相性周期性複合波 d: 大脳灰白質や深部灰白質と比較した場合 e: 口蓋扁桃生検をルーチンに施行したり 孤発性 CJDに典型的な脳波所見を認める例に施行することは推奨されないが 臨床症状は矛盾しないが視床枕に高信号を認めないvCJD 疑い例には有用である f: 大脳と小脳の全体にわたって海綿状変化と広範なプリオン蛋白陽性の花弁状クールー斑

< 重症度分類 > 機能的評価 :Barthel Index 85 点以下を対象とする 質問内容 点数 自立 自助具などの装着可 標準的時間内に食べ終える 10 1 食事 部分介助 ( たとえば おかずを切って細かくしてもらう ) 5 全介助 0 車椅子 自立 ブレーキ フットレストの操作も含む ( 非行自立も含む ) 15 2 からベッ軽度の部分介助または監視を要する 10 ドへの座ることは可能であるがほぼ全介助 5 移動 全介助または不可能 0 3 整容 自立 ( 洗面 整髪 歯磨き ひげ剃り ) 5 部分介助または不可能 0 自立 ( 衣服の操作 後始末を含む ポータブル便器などを使用している場合はそ 10 トイレ動の洗浄も含む ) 4 作部分介助 体を支える 衣服 後始末に介助を要する 5 全介助または不可能 0 5 入浴 自立 5 部分介助または不可能 0 45m 以上の歩行 補装具 ( 車椅子 歩行器は除く ) の使用の有無は問わず 15 6 歩行 45m 以上の介助歩行 歩行器の使用を含む 10 歩行不能の場合 車椅子にて 45m 以上の操作可能 5 上記以外 0 7 自立 手すりなどの使用の有無は問わない 10 階段昇介助または監視を要する 5 降不能 0 自立 靴 ファスナー 装具の着脱を含む 10 8 着替え 部分介助 標準的な時間内 半分以上は自分で行える 5 上記以外 0 排便コ 失禁なし 浣腸 坐薬の取り扱いも可能 10 9 ントロー ときに失禁あり 浣腸 坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む 5 ル 上記以外 0 排尿コ 失禁なし 収尿器の取り扱いも可能 10 10 ントロー ときに失禁あり 収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む 5 ル 上記以外 0 なお 症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが 高額な医療を継続することが 必要な者については 医療費助成の対象とする