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学校における実践的なカウンセリング - 高校生と教師の視点から考える望ましい指導 援助 - 高知県立高知丸の内高等学校 教諭島﨑恵理 1 はじめに 近年 さまざまな学校不適応問題が増加し 以前にもまして学校や教師への期待が高まっていると 思われる 一日の大半を学校で過ごす学生にとって 学校生活から得られる楽しさは多いが 逆にた くさんの課題も与えられる 学校は 現実の社会を知る場 友達と出会う場 そして大人の教育的配 慮に守られた時間と空間の中で自分を成長させていく場である それらはすべて人間関係を媒介にし て行われると考えれば 人間関係を学ぶ場であるともいえる ( 鈴木,1998 ) 学校教育という巨大な 準 社会 ( 鍋島,2003 ) の中で 生徒一人ひとりが充実した学校生活を送り成長して社会へと歩み出すた めには 教師の援助はより重要なものになると予想される しかし 社会の変化や家庭環境 精神的 身体的な発達状態などさまざまな要因により多様化した 生徒たちにとって 全ての生徒にマッチする最善な一つの対応はないといえる そのような中で以前 と比べて生徒への対応の難しさは増し 教師は日々苦悩している 教師の自分勝手で一方的な熱意で はなく 生徒のニーズを理解した上での教師が望ましいと思う指導 援助でなければ 生徒の心に届 かないのではないだろうか それは生徒に迎合しおもねることでも 生徒を持ち上げることでもない 時には厳しく叱り指導することが 支持的となる場合もある ( 青木,2001 ) 調査によると ( 河村,1999a ) 高校生の 75% が二次的教育援助が必要な状況であるという結果が得られた 教師が日常観察によって 理解した普通の生徒は 内面に発達課題や学校生活や対人関係にともなういくつかの悩みを抱えてい る可能性が高いという前提で 今後対応していく必要があると思われる 友人関係の形成 集団活動 への参加が苦手な生徒が増加している今 ストレスや葛藤をじっくり聞いてくれるカウンセラーの役 目 友人関係をうまく形成できない生徒にはそのつなぎの役目など 教師の役割 ( 役目 ) は多岐に及ぶ 学校において生徒は様々な人間関係をもつ 中でも生徒と教師間の人間関係は 学習の基盤を成し 生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものであり ( 平岡 豊嶋,1991 ) 学校生活を送るうえで非常に 重要であると考えられる そして このような時代にこそ 社会へと繋げる学校という枠組みや 社 会との仲介者としての教師の存在は不可欠なものであるといえるのではないだろうか しかし学校において 生徒 教師のお互いの援助期待の意識にズレがあり 援助する側 ( 教師 ) が それに気づいていなければ 適切で効果的な援助を行うことは難しい 生徒たちと日々かかわり そ の発達 成長を支えていくために 教師はどのような指導 援助を行うべきだろうか 2 研究の目的本研究では 学校教育におけるカウンセリング的な側面からの取り組みに焦点を当て 生徒と教師の意識のズレに着目しながら高校生の教師への援助期待のニーズを明らかにし 望ましい指導 援助のあり方や学校現場での生徒と教師のよりよい関係を考察 検討していくことを目的とした 3 研究内容 研究 Ⅰ 高校生が教師に期待する援助と教師が行う援助とのズレ (1) 目的 研究 Ⅰ では 高校生の援助期待と 教師の指導 援助 教師が望ましいと思う指導 援助を調査 し 生徒と教師の援助に対する意識のズレの所在を明らかにすることを目的とした 1

(2) 方法 調査対象となった生徒は高知県内県立高等学校 2 校の高校 2 年生 136 名 ( 男子 53 名 女子 83 名 ) 教員は高知県内県立高等学校 5 校の教員 33 名 ( 男子 15 名 女子 18 名 ) であった 2004 年 9 月に 質問紙調査を実施した 調査に関しては 先行研究と筆者の教員としての実践経験を参考にして質問紙を作成し 高校生 が現実に教師から受けてうれしいまたは励みになると感じた指導 援助 と 教師自身が実際に行 い 生徒がうれしいまたは励みになると感じたであろう指導 援助 等について 生徒 教師それ ぞれに自由記述形式で回答を求めた (3) 結果と考察 調査から得られた回答を KJ 法によって分類整理したところ 教師の指導 援助の 6 つのカテゴ リーが見出され それぞれ次のように命名した 1 働きかけ 情緒的サポート ( 関心 信頼 励まし 支持など情緒的な支援 ) 2 受容 共感的サポート ( 傾聴 相談をうけるなど受容的な支援 ) 3 指導 情報的サポート ( 情報供給 示唆 教授 アドバイスなどの支援 ) 4 ほめる 評価的サポート ( 肯定的な評価による行動の承認などの支援 ) 5 叱る 評価的サポート ( 厳しい評価による行動の修正 改善などの支援 ) 6 手段 具体的サポート ( 具体的な手段 物品による助力の提供などの支援 ) と 次に 生徒の援助期待と教師の援助を比較したところ 援助のカテゴリーは合致していても そ の使い方やタイミング 距離感においてズレが生じていることが明らかになった また 高校生の 回答から 高校生は大人に向かって自立をしていく途中の段階で 教師に対して承認や励ましを必 要とし あたたかく見守ってくれることを欲する傾向が見いだされた 具体的なたくさんの働きか けよりも わかってほしい 受けとめてほしい 納得させてから指導してほしいというような 精 神的な甘え や 温かく見守り励ます 待つ 支援とともに 要所での適切な指導も望んでいる高 校生の意識が明らかになった 厳しく叱ることでその時は生徒が短絡的に腹を立てたとしても 社会のルールや厳しさを教える ことも学校の重要な教育的役割である 真剣に叱ってくれた先生の言葉を後になって理解し感謝し たという回答もあった 教育という目的から考えれば 生徒に迎合することがすべてプラスで 教 師 生徒間のズレがすべてマイナスではない しかし 教師がズレの存在を理解し 意識して生徒 への援助や指導に活かすことも必要であろう 研究 Ⅱ 生徒の対人的特性と教師に期待する指導 援助との関連 (1) 目的と方法 研究 Ⅱ では 研究 Ⅰ で明らかになった生徒と教師の援助期待の意識のズレを 教師からの援助の 度合い という視点から調査し 生徒の対人的特性 学校適応性 理想的な教師像との関連と 生 徒の対人的特性によって異なる教師に期待する援助を明らかにすることを目的とした 高知県内の県立高校生 654 名 教員 226 名を対象に 2005 年 1 月に質問紙調査を実施した 1 生徒の対人的特性に関する尺度 生徒が他人と人間関係を結ぶときの付き合い方の特性をここでは 対人的特性 と呼び 自己 開示 信頼感 自己決定度 ( 依存度逆転 ) イイ子度 の 4 つの尺度を作成し 5 件法で回答を 求めた 2 教師の援助期待に関する尺度 生徒の行動や思考が見た目に表れると予想される場面を選択し 20 項目からなる 教師の援助期 待に関する尺度 を作成した 教師から生徒へのかかわりの度合いを段階に応じて尺度化し (1) 教師は全く手を加えず自由に放っておく 見守る援助 (2) 教師からはアプローチをせず生徒か 2

ら求めてくれば相談にのる援助 (3) 教師から声をかけ様子を見る援助 (4) いつでも教師の方 から話を聞く受容援助 (5) いつでも教師から積極的に指導 アドバイスする援助 の 5つに設 定し 選択肢は (1) 教師からは何もアプローチせず放っておく 見守る から (5) 教師から積 極的にかかわり指導 アドバイスをする までの 5 件法で回答を求めた 3 理想的な教師イメージに関する尺度 教師イメージ 理想の教師像に関する先行研究 ( 山口,1994 など ) や世論調査等から教師の指 導 援助 外見 雰囲気などを含めた信頼 尊敬できる理想の教師イメージについての 25 項目 を選び 理想的な教師イメージに関する尺度 を作成し 5 件法で回答を求めた 4 学校への適応に関する尺度 学校生活満足度尺度 ( 河村,1999a ) およびスクール モラール尺度 ( 河村,1999b ) から 学校 における高校生の友人関係や居場所に関する設問 7 項目を選び 生徒の学校への適応に関する 尺度 を作成し 5 件法で回答を求めた (2) 結果と考察 因子分析の結果 1 対人的特性に関する尺度については イイ子度 信頼度 自己開示度 自己決定度 の 4 因子 が 2 援助期待に関する尺度については ほめられ 受容期 待 叱られ 指導期待 の 2 因子が 3 理想教師イメージに 関する尺度については 援助する受容教師 きちんと指導 する教師 親近感のある友達教師 の 3 因子が見出された 生徒の対人的特性尺度の各項目にもとづいて Ward 法に よるクラスター分析を行ったところ イイ子群 仮面群 ほどほど群 放っといて群 のびのび群 の 5 群に分 類され その割合は次のようになった ( 図 1 2) のびのび群 22% 放っといて群 12% イイ子群 21% ほどほど群 37% 仮面群 8% 図 1 生徒の対人的特性による 5 群の割合 1.50 0.6 1.00 0.4 0.2 0.50 0.0 0.00-0.2 学校適応度 -0.50 イイ子度ほめられ 受容期待 -0.4 自己決定度叱られ 指導期待 -1.00 自己開示度 -0.6 援助する受容教師 -1.50 信頼度 -0.8 きちんと指導する教師 -2.00-1.0 親近感のある友達教師 イイ子群 仮面群 ほどほど群 放っといて群 のびのび群 イイ子群 仮面群 ほどほど群 放っといて群 のびのび群 図 2 対人的特性に関する各群の特徴図図 3 教師への援助期待と理想教師イメーシ および学校適応度に関する各群の特徴 また各群と援助期待 学校適応性 理想の教師イメージには関連があり 生徒の対人的特性によって教師への援助期待は異なることが明らかになった ( 図 3) 全体的に教師は生徒よりも積極的援助を望ましいと考えていることが示唆された 生徒は援助を望んではいるが 教師から一方的に押し付けられることを好まず 生徒と近すぎる友達教師は理想教師イメージとして敬遠されるという傾向や 援助期待においてもやさしいだけでなく悪いことを 3

したときはきちんと叱り 生徒の頑張りはしっかり認めてくれるような教師の指導を望んでいることが明らかになった イイ子 群は イイ子度が高く自己開示度もやや高く自己決定度が低いことから 普段はまわりに気を遣い自分を抑えてがまんして自分から積極的に援助を求めることはしないが 教師から尋ねられれば素直に自己開示ができ困ったときは依存することができる生徒群であると考えられる つまり教師から聞かなければ自己開示できない生徒の存在をあらわすともいえる 仮面 群は 行動も発言も問題がなくイイ子にしており 教師からのさまざまな援助や指導を好まないが 自分だけでなくクラスの中での私語や勝手な行動などにきちんとした態度で指導し的確にアドバイスをして欲しいという教師援助期待が見られる ただ周囲の勝手な行動に対するネガティブな表現を心では思っていても押さえ込んで表すことはできない ただ イイ子 群を上回るイイ子度の高さから 表面上には問題が現れず教師の指導の死角になりやすいが 周囲の期待に答えようとするきまじめな特性が本人のストレスにもなることも考えられ 教師が注意深く対応をする必要があると思われる ほどほど 群は すべての得点が生徒の平均に近いことから ほどほどに自己開示ができ依存もできるようなバランスの取れた生徒群であると考えられる 教師から見ると平均的で問題のない手がかからない子であるがゆえに逆にクラスに埋もれてつい見過ごしがちになる恐れもある 放っといて 群はイイ子度が非常に低く自己決定度が高く自己開示度が非常に低いことから 自分の考えを誰かに相談せず自分の思い通りに行動し 周りからの干渉を好まないような生徒群であると考えられる 教師の指導や援助を全く拒否するのではなく 必要なときは自分から言うのでそれまでは 放っておいて そっと見守って というように積極的な指導 援助を好まない傾向が見られる のびのび 群はイイ子度が低く自己決定度 自己開示度が非常に高く信頼度もやや高いことから 自分のペースでのびのびと発言 行動し自分らしく楽しく生活を送っているような生徒群であると考えられる 教師からのさまざまな指導 援助を自然体で素直に受け入れる傾向が見られる 次に 高校生活の中の日常的な 20 場面における 教師への援助期待と生徒の対人的特性との関連を調べるために 20 場面それぞれの 5 段階の選択肢に回答した人数について χ 2 検定を行った結果 16 授業中の私語がうるさく周りに迷惑をかけている時 17 自分で進路を決められず悩んでいる時 18 放課後や休日に街で会った時 20レポートを期限までに提出できなかった時 の 4 場面に人数の偏りが見られた ( 図 4 5) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 イイ子群仮面群ほどほど群ほっといて群のびのび群教師 放っておく 見てみぬふりをする私語はだめだとやさしく教える 言い分を聞いてから注意するなぜいけないかを説明して注意する 静かにしなさい と厳しくしかる 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 イイ子群仮面群ほどほど群ほっといて群のびのび群教師 放っておく 黙って見守る生徒から相談に行ったら話を聞く教師が軽く声をかけるが生徒から相談にくるのを待つ教師から声をかけじっくり話を聞く教師がいつでも積極的にアドバイスする 図 4 16 授業中私語がうるさくてみんなに迷惑をかけているとき 図 5 17 自分で進路を決められずに悩んでいるとき 4

( 叱られ 指導期待 ) ( ほめられ 受容期待 ) これらのことからそれぞれの場面や生徒の特性を正しく認知したうえでの 愛情をもった毅然とした教師の指導 援助が望まれていることがわかった それぞれの生徒の特性に応じてこちらから一歩踏み込んだり引いて待ったり 依存をさせたり自立を促したりという対応を柔軟に使い分けながら生徒に関わっていくことが必要である せっかくの教師の指導 援助もタイミングやかかわりの程度 距離感にズレが見られれば 素直に生徒の胸に響かない そのためにも生徒が理解 納得して自らの成長につなげることができる効果的な指導 援助が大切であると考えられる そして教師自身が日頃から この教師ならいざという時に力になってくれる と思わせるように受容的態度や柔軟性のある対応の中で信頼関係を築いておくこと また教師の思い ( 指導や援助 ) を生徒に伝えるスキルを身につけることが必要であり 生徒自身の自己開示能力を高めるためのアサーション スキル等の訓練も必要であると思われる 研究 Ⅲ ホーム経営における教師の指導 援助に関する事例研究 (1) 目的と方法 研究 Ⅲ では 研究 Ⅰ Ⅱ で明らかになった生徒と教師の心理的距離のとり方のズレと生徒の対人 的特性によって異なる援助期待を ホーム担任の立場から高校生への援助や指導にいかした結果 どのように生徒が変化 成長していくのかを事例を通して考察することを目的とした 高知県内 A 高校 1 年 A 組 35 名 ( 男子 10 名 女子 25 名 ) について 入学以降 観察や関与をしな がら 5 月中旬に研究 Ⅱ で使用した調査を実施し その後 11 月中旬に再度実施した 調査の変化 と観察をもとに ホーム経営を振り返り クラスや生徒の変化 担任の生徒認知 指導 援助等を 考察した クラス全体 (35 名 ) の雰囲気は 明るく元気があり男女の仲がよいが 全体としての落ち 着きにややかける面が見られるという印象であった イイ子群 9 名 ( 女子 6 名 男子 3 名 ) 仮面群 3 名 ( 女子 3 名 ) ほどほど群 8 名 ( 女子 5 名 男子 3 名 ) 放っといて群 3 名 ( 女子 1 名 男子 2 名 ) のびのび群 12 名 ( 女子 10 名 表 1 生徒の対人的特性をもとにした各群の特徴 研究 Ⅱ の結果と生徒観察からみた各群の特徴 実践での関与の仕方 * イイ子度が高く いろいろなことを積極的に頑張る * 個別にゆっくり話をする機会を こちらから意 * 積極的に教師に近づいて来ないが こちらから聞け ば素直にいろいろ話す * 教師から声をかけて欲しい * 学校適応度が低い 識的に作った * みんなの前で厳しくすると落ち込むので 言い 分を聞く等 叱り方に注意をした * いつも穏やかで自立した優等生タイプ 成績も生活 * こちらから聞いても 正直な気持ちを語らない 態度もきちんとしているため つい問題がないと教師ので まずさりげない声がけなどで時間をかけ は過信してしまうが 学校適応が一番低い * イイ子度が高く自分の本心を表に出すことがない * 友達教師を好まず 悪いときは厳しく叱って欲しい て信頼関係を深めていく配慮をした * 生徒のほうから近づいてこられるような具体的 な機会を意識的に作った * リーダーでもなくおとなしくもない大勢の中で周りに * 日頃から気軽な声かけ等を意識的に行った 合わせながらおだやかにすごしているタイプ * イイ子度が高くめだたないが 比較的落ち着いてお等 めだつことをいやがるので注意の仕方や り バランスが取れている * 友達教師を好む * みんなの前で厳しく叱ったり大げさにほめる ほめ方に配慮をした * 人に頼らず自分の意思で行動するため クラスでは* 厳しくてもよいが 一方的な叱り方やネチネチ リーダー的またはムードメーカー的な目立つ存在 * 友達教師を好み 必要なときは自分で言うのでそれ 以外は放っておいて欲しい * 学校適応が高い * 自然体で自分らしく行動する * 学校適応が高い としつこい注意の仕方をさけ 生徒が納得でき るような具体的な指示や注意の仕方を意識し て関与した * 教師に対して自分から近づいてくる人懐こいタイプで * 特別な注意点はなく ふつうに接した 5

男子 2 名 ) (2) 結果と考察 あるが 周りに対する配慮が足らず幼い印象 研究 Ⅱ の結果と生徒観察をもとに 生徒の対人的特性による各群の特徴と実践での関与の仕方をまと めたものが ( 表 1) である また 高校 1 年生の 5 月から 11 月における 5 群間での変化は イイ子群 が増加し のびのび群が減少したこと またのびのび群からイイ子群へ イイ子群からほどほど群への 大きな移動が見られたことがあげられた 群ごとの人数的な変化や個人的な群間の変化を図示し ( 図 6 7) 考えられる変化の要因をまとめると次のようになった のびのび群 12 名 G H I 8 名 JKL A B C D E F イイ子群 9 名 13 名 A B C D E FGHI 100% 80% 60% 40% 20% 放っといて群 3 名 3 名 A B C ほどほど群 8 名 7 名 C D A B E 仮面群 3 名 3 名 A B C 0% 5 月 11 月 のびのび群 35% 23% ほっといて群 9% 9% ほどほど群 21% 20% 仮面群 9% 9% イイ子群 26% 39% 図 7 5 月 ~11 月の 5 群の変化 1 図 6 生徒の群間の変化 のびのび群からイイ子群へ 移動した 6 名については 自由で楽しかった中学時代の生活と比較して 高校生としての校 則やルール 新しい友人や部活動 アルバイト先での人間関係 新しい環境など 周りに気を 使わなければならない場面も増え 子供っぽいのびのび群から大人へ一歩ずつ近づいた印象を 受ける これは周りに気を遣って我慢するイイ子への変化とも捉えられるが 青年期の成長段 階において 社会性を身につけ理性をもって行動する高校生らしい成長過程であるともいえる 2 イイ子群からほどほど群へ 3 4 入学時と比較して活動的になった印象が見られる 共通していえるのはイイ子度と自己開示 度 自己決定度が高くなった点である 周りに気を使って我慢するイイ子度の伸びは少し気に なるが 自己開示ができる自分を受け入れてもらえる居場所をみつけ 自己開示が出来るだけ の自分への自信が生まれてきたとも考えられる ほどほど群からのびのび群へ 当初は周囲の様子を見ながら自分を押さえていたため イイ子度が高かったが 共通して部 活動に熱心に取り組んでいる生徒で 学校適応度もとても高いので 本来の活動的な自分が自 然に出せるようになってきたと考えられる 自由な発言によって クラスの雰囲気が和らぎ明 るくなる場面が増えたが クラス全体や周りに対しての配慮が足りない行動や発言が見受けら れることもあり イイ子群や仮面群の生徒にストレスを与えていることも多い ほどほど群からイイ子群へ 目立って前に出ることはなく いつもグループの中で楽しそうに笑っている穏やかな生徒で ある イイ子度 叱られ 指導期待 ほめられ 受容期待の伸びから 自分から積極的に近寄 ってこないが 実は担任からの多くの援助や指導を望んでいたと考えられる 問題もなく標準 6

的なめだたない生徒であるため 意識をして声かけはしているつもりだったが それでも教師からの援助や介入を少なく感じていたのかもしれない これらの結果から 生徒の対人的な特性は生徒の状態や成長によって変化するということ その変化に合わせて教師への援助期待も変化するということが明らかになった また生徒個人の変化だけでなく 5 群の占める割合によってクラス全体の雰囲気の変化も見られることが明らかになった 研究の過程で 周りに気を遣い自分の思いを我慢する イイ子度特性と 自分の思いや考えを人に話し伝える 自己開示特性は 個人の内面的な性格側面だけでなく 大人へと自立をしていく青年期の成長の側面を表していることに気がついた 言いたいが言えない 状態と 言おうと思えば言えるがこの場では言わない 状態とは異なり 前者は内向的なものであるが 後者は気配りや思いやりを身につけた大人の理性的な行動であるともいえるのではないだろうか また 思ったことを言う ことは 自分にとっては気持ちのよいことでも周りを傷つけたり迷惑をかける等 場の空気が読めない幼さにも通じる場面もあるのではないだろうか ある程度の自己開示度の低さやイイ子度の高さは さまざまな不安を自分で持ちこたえられる強さや耐性 がんばりを生徒自身が育てているとも考えられる また それはある意味では子どもという殻を破って大人へと自立をしていく過程の 高校生らしさ と捉えることもできるのではないか 生徒たちが高校入学から少しずつ変化し成長していることを改めて考えながら 生徒たちに合わせて教師の指導 援助も上の段階へと成長していかなければならないと考えさせられた また 5 月以降 不登校傾向 友人との不調和 家庭環境の変化などさまざまな問題を抱えた生徒に共通して見られる変化は 自己開示度と学校適応度の得点の減少であった 自己開示度や学校適応度が高ければ高いほどよいとは一概には言えない しかし 生徒がさまざまな問題に直面しそれを乗り越えるために苦悩する過程においての自己開示度 学校適応度得点の動きは 教師が援助を行うためのヒントになるのではないかと思われる 4 まとめ 本研究を通して 自立したいという意識とまだ見守っていて欲しいという意識の間で 揺れ動いて いる高校生の姿が浮き彫りになった また そこから子供の頃からありのままの自分を十分に受け入 れ認められた経験が少ない あるいは受け入れられたとしてもまだ満足感を得られていない高校生の 不安定さも感じられた 教師の指導 援助は同じであっても 生徒の発達段階や心理状態 教師との関係によって生徒の受 け止め方は異なり 多様な高校生全てに適応する指導や援助などは存在しないのかもしれない しか し 友人関係が希薄になり 友達同士でお互いを注意しいさめ合うことや 集団で補い助け合うこと などが難しくなった今 ますます教師の指導 援助への期待が高まっていると思われる 本研究を通 して わかって欲しい 認めて欲しい といった高校生の言葉の裏にある教師への期待が 教師た ちへのエールのように感じられた 教師は 生徒のニーズや教師との援助期待のズレを知り生徒を理 解しようと努力すること 支えになれるよう謙虚さを持って教師の援助行動や態度を見直すこと 教 師の思いや指導を適切に生徒に伝えることが重要であり そのための努力を今後も続けていきたいと 考えている 今後の課題としては 1 多様化する教師側の要因と指導 援助のあり方 2 ホーム担任に結果をフ ィードバックすることによる生徒の変化 効果 3 学校の特徴ごとに違う生徒の価値観や学力 意欲 に関連する生徒ニーズなどを 実践において検討していきたい思う - 引用 参考文献 - 天貝由美子 杉原一昭 中 高校生の学校適応感と信頼感の関係 筑波大学心理学研究,19,1-5. 1997 河村茂雄 教師のためのソーシャル スキル子どもとの人間関係を深める技術 誠信書房 2002 山口正二, 甲能至, 原野広太郎 生徒の性格類型と教師イメージ認知との関係 相談学研究,19,84-92. 1987 7

宗像恒次編著 子ども達は成長したがっている! 広英社 1998 8