写真 1~12に堀之内エリアでの地表地震断層や建物被害の状況を示す 写真 1と2は堀之内エリア西側の道路 ( 南側の県道と北側の農道 ) に現れた地表地震断層の痕跡である ( 文献 2)) いずれも上盤側となる東を向き 堀之内エリアを望む写真である 写真 3は堀之内南側の県道での液状化の痕跡であり

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3.地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

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国土技術政策総合研究所 研究資料

(3) 土砂災害土砂災害の想定は 急傾斜地崩壊危険箇所 地すべり危険箇所 山腹崩壊危険地区のうち 保全人家 ( 公共施設を含む ) を有し かつ 対策工事の実施されていない箇所などを対象に 各危険箇所などの耐震ランクと震度から危険度ランク (A B C) を判定した ここでいう危険度は 相対的なラン

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別紙 14 Q A Q A

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分野毎の検討における体制・検討フロー(案)

向日市木造住宅耐震診断士派遣事業実施要綱

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草 津 市 景 観 形 成 ガイドライン 71

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地震の概要 検知時刻 : 1 月 3 日 18 時分 10 発生時刻 : 1 月 3 日 18 時 10 分 マグニチュード: 5.1( 暫定値 ; 速報値 5.0から更新 ) 場所および深さ: 熊本県熊本地方 深さ10km( 暫定値 ) 発震機構 : 南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型 ( 速報

特定空家等判定方法マニュアル 別紙資料

質問 11 敷地内に現在浄化槽があれば 位置を配置図で教えてください 浄化槽は設置されておりません 質問 12 増改築は昭和のいつ頃おこなわれましたか? 昭和 52 年に増改築されています 質問 13 基本の建物の内部をゲストハウスとして改装すると考えてよろしいでしょうか? 実施要領 4 提案概要

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表紙

スライド 1

(2) 届出内容の確認方法について 建築計画内容を確認するために 委員会でチェックしやすい届出の 様式を作成しておくと便利です チェックしやすい様式としてチェックシートがあります 建築協定で定めている建築物に関する基準の項目を一覧表にし 建築主や代理者が建築計画の内容を記入できるものにしましょう 数

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2014 年 11 月 22 日長野県北部地震での地表地震断層近傍での建物被害調査 ( 速報 ) 工学院大学建築学部久田嘉章 石川理人 (2014 年 12 月 2 日 ) 1. はじめに 2014 年長野県北部地震 (MJ6.7) で発生した地表地震断層の近傍の北城エリアと 大きな被害が集中した堀之内エリアを中心に 2014 年 11 月 30 日に建物被害調査を実施した 以下にその概要を紹介する ( 図 1) 2 北城エリア 震源 2. 堀之内エリアの被害調査概要図 2に堀之内エリアで確認した地表地震断層の位置と建物被害調査範囲を示す 建物被害は文献 1) と同じ調査シート ( 文末に添付 ) を用い 外観目視により 22 棟を調査した 被害グレードの内訳は D5( 倒壊 ) が 7 棟 D4( 全壊 ) が 2 棟 D3( 半壊 ) が 8 棟 D2( 一部損壊 ) が 1 棟 D1( 軽微 ) が 2 棟 D0( 無被害 ) 1 堀之内エリアが 1 棟であり D4 以上の全壊率は 41% であった 時間的な制約から限定された狭い範囲図 1 建物被害調査エリア (Mapion に加筆 ) での調査であるが この数字や被害状況からこのエリアでは震度 7 相当の非常に激しい揺れがあったと想像される 地表地震断層 建物被害調査範囲 県道 33 号線 堀之内公民館 図 2 堀之内エリアの地表地震断層と建物被害調査範囲 (Mapion に加筆 )

写真 1~12に堀之内エリアでの地表地震断層や建物被害の状況を示す 写真 1と2は堀之内エリア西側の道路 ( 南側の県道と北側の農道 ) に現れた地表地震断層の痕跡である ( 文献 2)) いずれも上盤側となる東を向き 堀之内エリアを望む写真である 写真 3は堀之内南側の県道での液状化の痕跡であり 盛土による造成が行われたと想像される 写真 4は堀之内公民館 ( 在来木造 ) の被害である ( ) 内の D4 は被害グレード 4 を意味する ( 以下の写真も同じ ) 写真 5は公民館前の墓石の様子であり ほぼ全てバラバラな向きに転倒していた 写真 6は堀之内公民館の北側の木造建物であり 南向きの道路に転落していた 写真 1 堀之内西側の県道での地表地震断層 写真 2 堀之内西側の農道での地表地震断層 写真 3 堀之内南側の県道での液状化 写真 4 堀之内公民館の被害 (D4) 写真 5 堀之内公民館前の墓石転倒 写真 6 公民館北側の建物の南向き転落 (D5)

写真 7は写真 6の北隣りの伝統木造であり 1 階部分が北向きに大きく傾斜していた 写真 8は公民館の北西側の新しい建物で 外観上はほぼ無被害であった 写真 9は写真 8の北西側の新しい在来木造建物である 接合部に金物補強がなく 柱がほぞから抜け出ており 南西向きに倒壊していた 写真 10は擁壁の崩落被害であり その上の在来木造建物は北西向きに倒壊していた 写真奥の中央の建物は写真 9の倒壊建物である 写真 11は堀之内西側の伝統木造建物であり 1 階が大きく北向きに傾斜していた 写真 12は写真 11の西側隣りの木造建物であり 建物全体が基礎から東向きに 30 cm 程度移動していた 写真 7 公民館北側伝統木造建物の北向き傾斜 (D4) 写真 8 公民館北西側建物 (D0) 写真 9 堀之内西側建物の倒壊 (D5) 写真 10 堀之内西側擁壁被害と倒壊建物 ( 中央奥の建物写真は写真 9) 写真 11 堀之内西側 伝統木造の傾斜 (D4) 写真 12 堀之内西側建物の東向き移動 (D3)

堀之内エリアでの被害調査結果をまとめると エリアの西側で地表地震断層が確認されたが 変位量は大きくなく エリア内の建物への影響は殆ど無かったと思われる エリア内では液状化などの地盤変状の痕跡がいたるところに見られ 地盤条件は良くないと想像される また調査範囲は限定され 22 棟の建物の被害調査結果ではあるが D5( 倒壊 ) が 7 棟 D4( 全壊 ) が 2 棟であり 全壊率は 41% であった 多くの建物は総じて南北方向に倒壊または傾斜しており この方向に震度 7 相当の非常に激しい揺れがあったと想像される 大破した建物の大半は非常に古い伝統 在来木造であったが 新しい建物でも接合部の補強が不十分な場合には大きな被害が生じていた 3. 北城エリアの被害調査概要図 3に白馬駅東側の北城エリアでの建物被害調査の範囲を示す 図 4は図 3の北側の森上地区の拡大図であり 最大の地表地震断層が現れたエリアである ( 文献 3)) 写真 13は道路に現れた 1 m 近い地表地震断層であり 西側の下盤側からの写真である 写真 14は写真 13の左隅に見える上盤上の倉庫であるが 外観上ほぼ無被害である 写真 15は写真 13の奥に見える上盤上の建物であるが 外観上ほぼ無被害である 写真 16は写真 13の右 ( 南 ) 側に続く地表地震断層である 右手の小屋はほぼ無被害である その他 周辺の建物も外観上ほぼ無被害であった 森上地区 大出地区 図 3 北城 ( 白馬駅東側 ) での建物被害調査エリア (Mapion に加筆 )

建物被害調査範囲 森上地区 地表地震断層 図 4 北城 ( 森北地区 ) での建物被害調査範囲 ( 図 3 参照 Mapion に加筆 ) 写真 13 道路上に現れた地表地震断層 写真 14 写真 13 の左の倉庫 (D0) 写真 15 写真 13 の中央奥 ( 東側 ) の事務所建物 (D0) 写真 16 写真 13 の右 ( 南側 ) の地表地震断層

図 5は大出地区 ( 図 3 参照 ) で確認した地表地震断層と調査範囲を示す 写真 17は畑に現れた地表地震断層 1 で 南向きの写真である 写真 18は写真 17の南側の農道に現れた地表地震断層 2 である 写真 19は写真 18の目の前のアパートであるが 外観上ほぼ無被害であった その他 周辺の建物も同様にほぼ無被害であった 写真 20は写真 18 19 の南側の墓石の様子である 古い墓石を中心に 2~3 割程度転倒していたが ほぼ全て南北方向に倒れていた 写真 21は住宅地に現れた地表地震断層 3 であり 西向きの写真である 写真 22は地表地震断層 3 から北向きの写真であり 右側が上盤である 写真 23は地表地震断層 3 の北側直上に位置する在来木造建物である 下盤側の建物奥の角部が 手前の上盤側に対して落ち込んでいる 応急危険度判定は黄色であった 写真 24は地表地震断層 3 の南側直上に位置する在来木造建物である 上盤側建物が持ち上がり かつ西側 ( 写真右側 ) に移動し束石からずれている 建物被害調査範囲 大出地区 地表地震断層 1 地表地震断層 2 墓石 地表地震断層 4 地表地震断層 2 国道 406 号 地表地震断層 3 建物被害調査範囲 図 5 北城 ( 大出地区 ) での建物被害調査範囲 ( 図 3 参照 Mapion に加筆 ) 写真 17 畑に現れた地表地震断層 1 写真 18 農道に現れた地表地震断層 2

写真 19 写真 18 の前 ( 西側 ) のアパート 写真 20 墓石の南北方向の転倒 写真 21 住宅地の地表地震断層 3( 西向き ) 写真 22 地表地震断層 3( 北向き ) 写真 23 地表地震断層 3 の北側直上の建物 (D3) 写真 24 地表地震断層 3 の南側直上の建物 (D3) 拡大 写真 25 国道 406 号線上の地表地震断層 4 写真 26 地表地震断層 4 の北側の建物 (D1)

写真 25は国道 406 号線上の地表地震断層 4 であり 西向きの写真である 調査時には道路は補修されていたが 左側 ( 北側 ) の歩道には段差の痕跡が残っていた 写真 26は地表地震断層 4 から北向きの写真である 左側の建物は地表地震断層に隣接する下盤側に位置する 写真ほぼ中央の奥に傾斜した小屋が見える ( 拡大参照 ) 4. おわりに約 5 時間程度の時間ではあったが 被害の集中した南側の堀之内エリアと 明瞭な地表地震断層が現れた北城エリア ( 東部 ) を中心に建物被害調査を行った 堀之内エリアは調査した 22 棟のうち D5( 倒壊 ) が 7 棟 D4( 全壊 ) が 2 棟であり 全壊率は 41% となった 極めて限定された範囲ではあるが震度 7 相当の非常に強い揺れが生じたと思われる エリア内のいたるところに液状化など地盤変状の痕跡があり 軟弱地盤による地震動の増幅効果があったと思われるが 多くの建物は南北方向に倒壊 傾斜しており 北側の震源から南側に向かう震源断層の破壊伝播による何らかの指向性効果が作用したと考えられる 但し 南北に走向を持つ断層面の場合 指向性パルス ( キラーパルス ) は東西方向に現れるはずであり なぜ南北方向に強い揺れが現れたのか 今後の詳細な検討が望まれる 大きな被害を受けた殆どの建物は非常に古い在来 伝統木造家屋であったが 新しい木造建物の被害は比較的軽微であった 但し 接合部の補強が不十分な場合 倒壊に至る大被害が生じていた 多くの伝統木造は非常に豪華な造りであり 希少価値があると思われるが このままでは殆どが取り壊しになると思われる 震災のたびに多くの伝統家屋が消滅しており 今後何らかの措置を講じる必要を感じた 一方 北城エリア ( 東部 ) である森上 大出地区では 最大で 1 m 近い明瞭な地表地震断層が現れていた しかしながら 今回調査した範囲では地震動に起因すると思われる大きな被害を受けた建物は見られず 主な建物被害は地表地震断層による地盤変状に起因していた この結果は既往の地表地震断層の近傍の被害調査 ( 文献 1など ) とも調和的である 参考文献 1) 久田嘉章ほか 2011 年福島県浜通り地震の地表地震断層の近傍における建物被害調査 日本地震工学会論文集 Vol.12 No.4 特集号 2011 年東日本大震災 その 1 p.4_104-4_126 2012 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaee/12/4/12_4_104/_article 2) 産業技術総合研究所 第二報地表地震断層緊急調査報告 (1) 2014 年 11 月 26 日 https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/naganokenhokubu2014/index.html 3) 廣内大助ほか 2014 年 11 月 22 日長野県神城断層地震における地表変位について ( 速報 ) 2014 年 11 月 24 日 http://www.ajg.or.jp/disaster/files/201411_nagano02.pdf 4) 岡田成幸, 高井伸雄 : 地歴被害調査のための建物分類と破壊パターン, 日本建築学会栂造系論文集, No.524, pp65-72,1999

参考 : 使用した建物被害建物被害調査調査シート ( 文献 1 被害被害チャートはチャートは文献 4 による ) 2014 年長野県北部地震 調査地区名 調査日 A. 建物番号 調査員 住宅地図 頁写真枚数 枚 写真番号 ( )-( )~( ) B. 表札氏 C. 応急危険度判定 1. 無 2. 有 ( 赤 黄 緑 ) D. 建築年 1. 非常に古い 2. 古い 3. 新しい 4. 不明 5. 推定 ( 年頃 ) 6. 聴取 ( 年 ) ( 築 30 年以上 ) ( 築 30~10 年 ) ( 築 10 年以下 ) E. 現状 1. 現状保存 2. 解体中 3. 解体撤去済み 4. 修繕中 5. 不明 6. 聴取 ( 修繕済 無被害 不明 ) F. 建物用途 1. 戸建専用住宅 2. 長屋住宅 3. 共同住宅 4. 併用住宅 5. 店舗 6. オフィス 7. その他 G. 構造種別 1. 木造 ( 伝統 準伝統 在来 壁式 ( )) 2. S 造 ( 重量 軽量 )3. RC 造 4. その他 (CB 造 その他 ) H. 建物階数 1. 平屋 2. 2 階 ( ピロティ無, ピロティ有 ) 3.( ) 階 ( ピロティ無, ピロティ有 ) I. 主被害階 ( ) 階 ( 主な被害内容 ) J. 基礎形式 1. 独立基礎 ( 玉石等 ) 2. 布基礎 3. 高基礎 ( 一階が RC の車庫等の場合 ) 4. 杭 ( 種類と本数 K. 基礎被害 1. 無被害 2. 部分的亀裂 3. 著しい ( 破壊あり ) 4. 基礎のずれ 5. 基礎傾斜 ) 5. 不明 6. 不明 L. 地盤変状 1. 無 2. 有 ( 場所と形態 傾斜角度 方向 変動量 ) 例建物直下 / 敷地南端, 亀裂沈下, 液状化 ( 噴砂 ), 土砂など M. 屋根形式 1. 土葺瓦 2. 土無瓦 3. 金属 4. スレート 5. その他 ( ) 6. 不明 N. 屋根被害 1. ほとんど無被害 2. 著しいずれ ( 部分的 ) 3. 全面的にずれ, 破損 4. 判定不能 メモ欄 O. 余震による被害拡大 1. 無 2. 有 ( 余震前の応急危険度判定 : 赤 黄 緑 ) P. 増築 1. 無 2. 有 3. コメント ( ) Q. 宅地危険度判定 1. 無 2. 有 ( 赤 黄 緑 ) R. 耐震等級 1. 等級 1 2. 等級 2 3. 等級 3 4. 等級なし 5. 不明 S. ブロック塀被害 1. 有 2. 無 T. 家族 在宅人数 1. 家族 ( ) 名うち在宅 ( ) 名 2. 不明 U. 人的被害状況 1. 死亡 ( ), 重傷 ( ), 軽症 ( ) 2. 無し 3. 不明 V. 破壊パターン : 木造, 軽量 S 造の場合下図の該当パターンに 重量 S 造,RC 造の場合記号を記入 ( 別紙参照 ): Damage Grade Damage index 無被害 D0 0.0 無被害 Nd0 無被害 Nd0 D1 0.1 壁面の亀裂及び外装材の若干の剥落 壁面の亀裂及び外装材の若干の剥落 一部損壊 0.2 屋根瓦 壁面のモルタル等の大幅な剥落 Md1 Md1 屋根瓦 壁面のモルタル等の大幅な剥落 D2 0.3 Md2 Md2 D3 0.4 0.5 2 階破壊型 1 階破壊型全体破壊型屋根破壊型屋根破壊型 2 階の柱 梁 壁の一 1 階の柱 梁 壁の一 1 2 階の柱 梁 壁屋根瓦が大部分屋根瓦が大部分柱 梁 壁の一部が構造的部が構造的に破壊され部が構造的に破壊されの一部が構造的に破壊崩落する ( 特に崩落する ( 特にに破壊されているが 内部ているが 内部空間をているが 内部空間をされているが 内部空間内部に ) 内部に ) 空間を欠損するような被害欠損するような被害は欠損するような被害はを欠損するような被害はは生じていない 生じていない 生じていない 生じていない Ud3 Gd3 Ed3 Rd3 Rd3 Sd3 D4 0.6 0.7 2 階の柱 梁の破壊による 内部空間が欠損する 1 階の柱 梁の破壊による 内部空間が欠損する 1 2 階の柱 梁の破壊による 内部空間が欠損する 柱 梁の破壊による 内部空間が欠損する 0.8 Ud4 2 階の破壊される もしくは2 階が崩落する Gd4 Ed4 Sd4 1 階の屋根もしくは軒に 2 階部分の破壊がか構造被害 : 居住空間が著しく相当する部分が接地してなり及んでいる 損なわれる 状態は1 階の屋いる もしくは接地しそ根が接地している もしくはうである しそうである D5 0.9 Sd5 Ud5- Ud5+ Gd5- Gd5+ D6 1.0 Cd6- Cd6+ 2 階の屋根が接地しているか接完全に瓦礫化している 地しそうである 木造 2 階建て建物の破壊パターン木造 2 階建て建物の破壊パターン木造 1 階建て建物の破壊パターン

W. 断層による被害 ( 詳細 ) 建物の傾斜角度 方向 ( 例 : 北側に 5 傾斜 ) 基礎と建物のずれ幅 地盤の変動量 ( 例 : 北側で 20cm 沈下 ) 周辺状況のスケッチ 住民の方へのヒアリング コメント メモなど