みでは 栄養低下を招くおそれのある患者を見逃してし 好に進まない事例は多く見受けられる 当院では 入院 まうケースも見受けられる そのため管理栄養士が病棟 後の栄養管理について管理栄養士が術後の食事摂取量 を訪問した際に 問診が不十分と思われる症例や侵襲 を推測し 経腸 静脈栄養量を中心に栄養管理計

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特集 高齢者の術後早期回復はどこまで可能か -現実と課題 - 高齢者の術後早期回復のための管理栄養士の関わり* 栄養リスク 栄養設定 keywords 高齢者の特性 利光久美子 1 Kumiko TOSHIMITSU 児島 洋 2 Yoh KOJIMA 愛媛大学医学部附属病院 栄養部 1 愛媛大学大学院 消化管 腫瘍外科学 2 Ehime University Hospital, Division of Nutrition1 Ehime University Graduate School of Medicine, Depatment of Gastrointestinal Sugery and Sugical Oncology2 栄養障害が 術後の合併症を増加させ予後を悪化させることは広く知られている1 2 中等度以上の栄養障害患者に対しては 術前から積極的に栄養療法を行うことにより 術後の合併症や在院期間が短縮し予後も改善される3 高齢者は基礎代謝や身体機能が低下し 複数の基礎疾患が併存していることが多く 術前に栄養障害をきたしている場合が多い 一方 認知症などの精神疾患の併存や独 居の場合は 体重や食事摂取量の変化を正確に知ることは困難で 栄養障害を見逃す おそれがある 栄養療法の基本は経口あるいは経腸栄養であるが 消化器がんの術後は 通過障害 や食物の逆流によりスムーズな食事摂取の開始が行えないことも多い さらに嚥下機 能が低下している高齢者においては誤嚥リスクも高く また いったん術後の栄養障害 に陥り筋肉及び筋力が低下すると 回復は非常に困難である これらのことをふまえ 高齢者の術後早期回復のための管理栄養士の関わりについて述べる 1.はじめに 高齢者は基礎代謝が低下し 身体機能が低下してい 2.高齢者周術期入院患者の 栄養スクリーニングの視点 ることが多く さらに複数の基礎疾患を併存しているこ 高齢者の周術期栄養管理においては より詳細に栄養 とが多い そのため高齢者における術前の栄養状態は, スクリーニングを行うことにより低栄養状態の患者を一 術後合併症や治癒 回復力などに大きく影響を及ぼし 早く見つけ改善することが重要である 栄養スクリーニ 必要に応じて早期の栄養介入が必要である ングの利点は 簡便かつ客観的な指標を用いて術後合 入院前のオリエンテーションの際や入院直後に医師や 併症の発生率や在院日数の減少に繋げることができる4 看護師が 現病歴や既往歴 本人や家族等から情報収集 ことにあり 当院においても年齢 Body mass index し 今後の問題点を予測し治療に繋げていくように 管理 以下 BMIと略 や体重減少 体重変化を指標 理想 栄養士においても過去の生活環境や栄養状態から現状 体重 通常体重 体重変化率により確認する 食事 況までの経過について確認 評価し 早期から問題点を見 栄養 摂取状況の変化を指標とする subjective 極め改善に繋げていかなければならない 高齢者の場合 global assessment 以下 SGAと略 5 6 をスクリーニ は今までの生活過程に加え身体的特性が高く影響し 栄 ングに用い 多職種連携のもと実施している しかし 高 養に関わるリスクも高い 高齢者の術後早期回復のために 齢者の場合 先に述べたように入院前の食事摂取量や 当院の現状を踏まえ管理栄養士の関わりについて述べる 体重の変化がはっきりしないことも多く 主観的評価の *Contribution of dietitian to early recovery of the elderly after surgery 15 1291

みでは 栄養低下を招くおそれのある患者を見逃してし 好に進まない事例は多く見受けられる 当院では 入院 まうケースも見受けられる そのため管理栄養士が病棟 後の栄養管理について管理栄養士が術後の食事摂取量 を訪問した際に 問診が不十分と思われる症例や侵襲 を推測し 経腸 静脈栄養量を中心に栄養管理計画書 の大きな手術が予定されている症例は SGAに Alb 図1 を作製している これは 電子カルテ上 体重の変 Hb CRPの血液検査を併用し判断する 栄養障害が予 化も併せて記録でき 退院後も継続的に管理することが 測される場合は主治医と相談し 必要であれば体組成 可能となっている 分析装置により筋肉量を測定して高リスク患者の抽出に 努めている 高齢者のみに特化したスクリーニング法は ないが 認知症などの精神疾患が併存している場合や 独居の場合は 体重や食事摂取量の変化を正確に知る 4.高齢者の周術期栄養療法への 管理栄養士の関わり ことは困難である 従って 栄養障害を見逃すおそれが 高齢者においても術後早期から経口摂取を開始する あり 通常の栄養スクリーニングだけでなくより詳細な問 ことが重要である 特に Enhanced recovery after 診や観察が必要である surgery 以下 ERAS と略 プロトコールが発表され て以降は大腸がんのみならず 他の疾患においても術後 3.高齢者の術前栄養評価と栄養計画 低栄養は 創傷遅延 術後合併症の増加 免疫能低 早期に経口摂取を再開するようになってきている 一方 肝胆膵手術など侵襲の大きな手術の際には術前に免疫 栄養療法 Immunonutrition も行っているが 食品扱 下 感染症の発症 増加 在院日数 死亡率の増加 筋 いのため管理栄養士が指導することも多い そこで 肉量 内臓貯蔵蛋白の減少や褥瘡の発生 悪化 日常 ERAS と Immunonutritionに対する管理栄養士の 生活動作 A DL や QOL低下 を招く とくに高齢者 関わりについて示す においてはその発生頻度は高く 術前栄養評 価を行うことは重要である それらを踏まえ 日常の食生活 生活歴 栄養摂取状況の確認 を行い 患者の状況把握を行っておくと同時に Buzbyらや小野寺らの PNI 7 の予後栄養指数 prognostic nutritional index PNI 8 を 指標として今後のリスクを想定しておく必要 がある 高齢者の嗜好には 長い間に定まった食習 慣がある 手術前の精神的ストレスにより よ り食欲が低下をきたしやすいことから 食事 の形態や嗜好をなるべく本人の希望に合わせ るように工夫が必要である 消化器の手術の 前には絶食の場合もあるが 絶食期間中でも GFO や消化態栄養剤等の内服が可能かど うか医師や看護師と相談し わずかでも経口 摂取が行える様にする 高齢の消化器がん術後患者では 一旦術後 合併症などで周術期に経口摂食が障害される と 入院中のみならず退院後も食事摂取が良 16 1292 図1 栄養管理計画書 客観的評価表の一例 高齢者の術後早期回復はどこまで可能か - 現実と課題 -

①ERAS Nutrition and Metabolism ESPEN の ERAS ERAS とは手術後の回復力を強化する目的で 手術 groupに端を発し 2004年に大腸切除を対象にプロト 後の回復に有効な種々のプログラムをまとめた包括的な コールが発表された 元来の ERASプロトコールにおい 周術期管理法である ERAS は2001年に欧州臨床栄 ては術前の絶食は殆どなく 術後も絶食期間をなるべく 養代謝学会 the European Society for Clinical 少なくするのがよいとされている9 高齢者の場合は絶飲食により脱水になりやすく 術前 表1 術前経口補水の適応基準 経口補水療法を了承した患者で 慎重投与例は原則適応せず 主治医 麻酔科医が許可した患者のみとする 慎重投与症例 1. 高度肥満 :BMI35以上 特にマスク換気困難が予測される症例 2. 摂食嚥下障害がある場合 3. 上部消化管閉塞 イレウス症状 4. 上部消化管 胃 食道など 手術の既往 5. 座位保持ができない症例 6. 搬入時に前投薬を必要とする症例 7. 飲み方を理解できない症例 認知症など 8. 肝不全 腎不全症例 9. 20歳未満 未成年 10. 妊婦 11. 透析症例 禁忌症例 1. 患者が拒否 または点滴を希望した場合 2. 主治医 麻酔科医が適当ではないと判断した場合 3. 嚥下困難 狭窄症状等で経口摂取不可能な患者 4. 嚥下の危険性がある症例 食道疾患 誤嚥 半かい神経麻痺 脳圧亢進症状 80歳以上 5. 挿管困難が予測される症例 6. パフォーマンス ステータス 3以上 7. 麻酔科 ASA アメリカ麻酔学会 PS3以上 に下剤を投与される場合もあり 水分の補給は重要であ る 輸液による水分の補給は高齢者にとってストレスに なることが多く 夜間では転倒や事故抜去等のリスクも ある 当院では 表1の適応症例において輸液の代わり に OS -1 を使用して術前に経口補水療法を行っている OS -1 投与については 手術開始2時間前までに 午前 中の手術の場合は OS-1 を500mL 午後からの手術に ついては OS -1 を1000mLを医師の指示のもと 患者 に服用をすすめる 管理栄養士は それらの指示のもと 資料 図2 を用いて服用方法を説明する 実際の服用 状態について管理栄養士は継続的に確認を行うが 看 護師が最終服用量を医師に報告し 手術時間が予定よ り遅くなる場合は 補液の追加指示を受ける その他 高齢者の開腹手術の場合は 術後の腸管麻 痺や食欲不振を訴えることが多く 一律に術当日や術翌 日に食事を開始することは困難である 当院では胃や大 腸の手術の場合は術翌日に飲水を開始し 術後2日目よ り食事を開始している 通常大腸がん手術後で合併症 のない症例は一日毎に3分粥 5分粥 並食 と食事をアップするが 80歳以上の場 合 Performance Status PS が低下している 症例 術前に並食の摂取ができていない症例 では栄養士が病棟を訪問し 食事摂取量や 患者の嗜好を考慮し数日毎のアップや3分 5分 全粥 軟飯軟菜など患者の嗜好に 合わせた食事形態とする 胃や食道の手術を 行った患者は退院後に体重減少をきたすこと が多く 食事のつかえや下痢 腹満などを訴え ることが多い さらに高齢者においては退院 後の食生活の不安を訴えることがあるため入 院時に面談を行い 手術後 退院時 退院後 の受診に合わせ 家族と一緒に栄養指導を 行っている 図2 経口補水説明書 患者用 17 1293

②Immunonutrition また歯の欠損や義歯の不具合による摂食不良ケースも少 Immunonutritionは免疫能を高める作用をもった栄 なくない 咀嚼力低下の患者には食事形態の調整を行う 養素を投与して宿主の免疫系を賦活化しようとする栄養 ことが主流であるが キザミ食といった形態は見た目か 療法で 主に周術期や ICU患者の感染性合併症発生率 ら受け入れられにくい そのような場合 個々の患者の意 の低下と入院日数の短縮など早期回復を目的に使用され 向を尊重し 管理栄養士は通常の食事から可能なものを 10 ている 免疫系を賦活化する栄養素としてアルギニン 調整する しかし キザミ食は実際量より見た目に多く グルタミン n-3系脂肪酸 核酸が主に用いられている ソフト食は水分を加え口当たりよく固めることにより 通 血清アルブミン値が3.5g/dL未満の中等度 高度の栄 常の食事形態に比べ使用する料理 食材 量が少なくな 養障害を有する食道 胃 膵臓 胆道系などの消化器外 りやすい 科手術予定患者などでは低栄養による合併症のリスク が高く 術前栄養状態の改善と 免疫力活性化のために 11 2 嚥下機能低下 術前の投与が望まれている 待機手術では術前5 7日 嚥下機能の低下は お茶や食事摂取時のむせなど 患 に1,200 1,500mL または患者の総投与カロリーの少 者や家族の話から予測することができる 医師や言語聴 12 なくとも50 60%を投与すべきといった報告 がされて 覚士による嚥下機能検査により低下を判断し 状態に応 いる わが国では immune enhancing diet IED が じてゼリー状の調整若しくは粘度調整などを行い 患者 食品扱いなので その提供と飲用方法については管理 に即した提供が必要である 咀嚼低下時の食形態と同 栄養士が説明を行っていかなければならない しかし 様に嚥下食の形態は提供栄養価が低くなりやすく 摂取 術前患者の状態によっては求められる IEDの服用は難 量や何らかの栄養素が不足する場合は経腸栄養 静脈 しく 説明と同時に管理栄養士は摂取量の把握や服用 栄養の併用管理も想定する 困難な場合の栄養素確保などについて提案 変更を行わ なければならない IEDは免疫栄養以外にエネルギー源 他の栄養素の確実な確保としても重要な手段でもある 3 口腔衛生の低下 歯肉炎 や味覚低下 ビタミンB 群 亜鉛欠乏 他疾患の影響 当院では IEDは周術期に入院中に投与されていること 味が薄くなった 味がまったくしない 何も食べていな が多く摂取量の推定は容易であるが 高齢者の中には いのにいつも苦い味がする など味覚に対する違和感を 食が細い IEDの味覚を好まないなどの患者も見受けら 訴える高齢者は少なくない 味覚を感知する口腔内の粘 れる 術前に IEDを外来で処方される場合 管理栄養 膜にある味蕾は年齢とともに減少し 義歯による刺激や 士は 免疫栄養の必要性について患者に十分説明し 理 異物感や嫌悪感などの心理的な原因によって味覚障害 解してもらえように努めることが重要である が起こる その他 薬の副作用や亜鉛の欠乏 口腔カン ジダ症やドライマウスなどの口腔疾患 嗅覚障害による 5.高齢患者の特性からみた 管理栄養士の関わり 高齢者によく見られる訴えと症状は 栄養管理に影響 風味障害等に注意する それらの原因と影響を受ける問 題点について 管理栄養士は栄養面から精査し 栄養素 欠乏による味覚異常の発生因子を確認して個々の患者 に適切な栄養管理に繋げる役割がある しうる問題である 管理栄養士は その特性に対して 個々の患者に即した対応を行うと共に 全ての栄養ルー トを視野においた栄養管理メニューの提案とその評価 を行う役割を担う 4 摂取量低下 咀嚼 嚥下機能等の低下の誘因に加え 運動量の低下 や精神的ダメージによる食事摂取量の低下を招く 継続 的な摂取量低下は 栄養素の潜在的欠乏に繋がりさらに 1 咀嚼力低下 咀嚼力の低下により 経口摂取の低下をきたし易い 18 1294 食欲低下に繋がるケースも多い また 薬物療法の処方 内容や多薬 消化にも影響する 高齢者の術後早期回復はどこまで可能か - 現実と課題 -

5 消化器症状 高齢者は 消化 吸収力の低下をきたしやく空腹感が 生じにくい そのため食事を抜くなどの自己判断から食 6.高齢者の周術期栄養管理における リスクと回避 欲低下も招きやすい また 摂取量に対して吸収率が弱 高齢患者の場合 手術への精神的不安や術前の絶食 いため 消化 吸収を考慮した食材及び調理法を選択す 等に伴う栄養の低下 ならびに手術施行に伴う身体的な べきである 経腸栄養に当たっては 経腸栄養剤 製品 侵襲 術後のストレスにより 周術期に経口摂食が障害さ の滴下速度にも注意する れるケースが多い また 消化器がん術後患者では ス ムーズな食事摂取の開始が行えないばかりでなく 逆流 6 便秘 による誤嚥のリスクも高く 注意すべきである 可能な限 運動量の低下や薬の影響から便秘を生じることがあ り腸管を使った栄養管理を行う必要はあるが 高齢者の るが 高齢者の場合は 摂取量の少なさまたは食事の偏 場合は 手術の影響だけでなく消化 吸収力が低下して りから便秘を発生しているケースも多い 便秘の原因を いることが多い 術前より既に栄養不足又は消化 吸収 確認し 腸疾患や腸閉塞がなく生活習慣の原因改善が 力低下が予測される場合は 経腸栄養剤 製品 を基本 困難な場合は 薬物との併用による便秘管理を行うこと 栄養として用い 食事との併用により アミノ酸やビタミ が多い ンやミネラルといった微量栄養素の確保を行うように努 める その判断と対応が 創傷治癒や早期回復に繋がる 7 家庭環境と経済的問題 独居や家庭内の諸事情により 精神的に不安定な状 複数の栄養ルートによる栄養管理を行うことにより 栄 養過剰に繋がっていることもある 過剰栄養の場合は 況が生じることは多い また 経済的な問題が隠れてい 高血糖 脂質異常 肝障害 下痢 嘔吐 逆流による誤 ることも少なくなく 管理栄養士は入院までの経過を栄 嚥性肺炎などを起こす原因となりやすい 管理栄養士は 養管理面と共に合わせて観察し 退院後の栄養管理法 周術期の栄養管理に必要な栄養素の設定及び充足につ の選択に繋げていかなければならない いて 過剰と不足が混在している栄養管理状況をいち早 く改善しなければならない 周術期における高齢者のリ 8 基礎疾患 高齢者の多くは 生活習慣病等, 基礎疾患を抱えてい スクと求められる治療効果を早期に実現させるためにも 適切な栄養管理が必要とされる ることが多い 疾病治療による制約によって 自己判断 による食事摂取や薬の服用により 栄養状態に影響を及 ぼしているケースも見受けられる 高齢者の早期術後回 復を行うためには 原因疾患のみならず併存する基礎疾 患をコントロールするための栄養療法も考えないといけ ない 7.高齢者の術後早期回復を目指した 栄養管理と注意点 高齢者の場合は特に 摂取量と BMIが解離している ケースがある 管理栄養士は入院前の栄養状態をさか のぼり 栄養低下期間や疾病罹患前の栄養素欠乏及び 9 個人差 過剰期間の状態を評価し 栄養管理を行う必要がある 高齢者の身体能力はもちろんのこと 今までの生活歴 や環境は大きく異なる 栄養剤 製剤 の利用においても 受け入れは様々である 高齢者の場合 特に今までの生 ①栄養管理計画 A. エネルギー必要量 活習慣を考慮する必要があり 一般的な対応を優先させ エネルギー必要量は 加齢とともに基礎代謝量ならび ず個々の患者の病態や状況に応じた栄養管理を行う必 に身体代謝量の双方が低下する 一般的にはハリス ベ 要がある ネディクト Harris-Benedict の計算式により 性別 年 齢別 体重別 身長別によって計算されることは多いが 19 1295

実際の医療現場では まずは現体重に25 30kcal/ 特に注意する点が 食事摂取開始に伴う他の栄養ルート kg/日を乗じたものを初期設定量とする その際に注意 からの栄養量の調整である 1日 2日の経口摂取量を評 すべき事項として 特に高齢者の場合は 消化 吸収能力 価したのみでは継続的に続く摂取に繋がらないことが多 に個人差が多くみられるため 管理栄養士は日常の食事 いことも視野に入れなければならない 特に高齢者の場 内容より推定摂取量を算出し 必要な計算値との乖離を 合 食事 UPが進むにつれてその傾向が強い 管理栄養 評価し 適切な栄養管理に繋げていかなければならない 士の立場から栄養管理を行う際には 最低食事摂取量 を維持可能量とし 食事摂取量の確保が困難な場合は B. たんぱく質の必要量 経腸栄養 輸液との併用にて栄養量を調整する 腎疾患や肝硬変等によりたんぱく制限が必要な高齢 者を除き 基本的に吸収のよいタンパク質 1 1.2g/kg ③退院時栄養食事指導の実施 IBW/日 を必要とする 窒素とタンパク質 アミノ酸 の 当院では入院時の栄養管理に加え退院時指導を実施 関係は 窒素1gがアミノ酸6.25gに相当するため投与ア している 高齢者の場合は特に 帰宅してからの食事に ミノ酸 g は 6.25 投与窒素量 g となる 投与窒素 ついて不安を感じる訴えが強い 量 g は 必要熱量 kcal /150 200で ここから各種 13 高齢者にとって食事の質と量の確保は 身体的影響な 病態における成人の1日の窒素量 N 必要量を決める らびに老化現象の遅延 そして病的老化を予防する意味 腎臓は加齢による影響を受けやすい臓器であり たん 合いをもっている 先に述べた高齢者の特性を十分に理 ぱく質摂取量が過剰にならないように N PC/N比の確 解し かつ食事摂取への制約にならないような注意が必 認を行い BUNの変化をモニタリングする BUNの上昇 要である 術後回復期は 食生活を戻すならしの期間と がみられた場合は 脱水状態と N PC/N比の再確認を して重要である 食事量が少ない場合は分割食を推奨し 行う必要がある 体重が著しく低下している場合や摂取量の増加が見込 C.その他栄養素の必要量 脂質投与量は通常 総エネルギー比20 25 を目標とするが 病態に応じて調整する 必要がある 飽和脂肪酸については 総エネ ルギー投与量の10 が望ましく 酵素作用 代 謝調節作用など必要なビタミン ミネラルの適 量の摂取14 と脱水症を考慮した適量の水分が 必要である 高齢者では電解質失調に陥りやすく 管理 栄養士は水分量のみならず食事摂取量の低 下に伴う代謝水の不足も予測しなければなら ない 必要水分量は35mL/kg/日を基準と考 える ②静脈栄養および経腸栄養からの 経口摂取への移行 術後回復するにつれて経口摂取の開始が行 われるが 合わせて栄養ルート別栄養量も調 整していかなければならない 管理栄養士が 20 1296 図3 当院在院中の食事療養 転院情報提供表 高齢者の術後早期回復はどこまで可能か - 現実と課題 -

めない場合は oral nutritional supplement ONS と して経腸栄養剤 製品 の併用が望まれる 健康時の体 9.まとめ おわりに 重若しくは理想体重を目標とし 基礎疾患の管理に加え 高齢者の術後早期回復のためには 高齢者の特性に 栄養素の欠乏が生じないように個々の食生活に合わせ 合わせて栄養スクリーニング 栄養アセスメント 栄養ケ て指導する また指導に際し 上記に示した高齢者の特 アプランを立てると共に入院前食生活の経過や薬物療 性と栄養リスクを重視した対応を行う 他施設に移動す 法について考慮し 栄養素摂取の変化を視野に入れた栄 る場合は 患者の栄養情報の一つとして食事内容と経腸 養管理を実施する必要がある 栄養剤 製品 の併用等について情報提供 図3 を行う 本論文内容に関連する著者の利益相反はありません 8 他職種連携 術後早期回復のために他職種連携は必須である 当 院においては 管理栄養士 看護師 薬剤師が毎週各病 棟単位でカンファレンスを行っている 個々の患者の治 療方針や服薬状況ならびに栄養管理について検討し 必要に応じて医師も参加している 管理栄養士にとって も様々な情報を共有することができ 治療方針に即した 食事 経腸栄養 静脈栄養と最適な栄養管理に繋げるこ とができる 参考文献 1 Malone DL, Genuit T, Tracy JK, et al. Surgicl site infections: reanalysis of risk factors. J Surg Res 103: 89-95, 2002. 2 Bozetti F, Gianotti L, Braga M, et al. Postoperative complications in gastrointestinal cancer patients: the joint role of the nutritional status and the nutritional support. Clin Nutr 26: 698-709, 2007. 3 Heyland DK, Montalvo M, Macdonald S, et al. Total parenteral nutrition in the surgical patient: a metaanalysis. Can J Surg 44: 1022-111, 2001. 4 東口高志 NSTの確立 活動の継続と展開 NST 稼動の現状と今後の展開 臨床栄養105 568-572 2004. 5 福島秀樹 森脇久隆 Subjective global assessment SGA の実際とその意義 医学のあゆみ218 496-500 2006 6 伊藤彰博 東口高志 飯田俊雄ほか 周術期栄養管理における栄養サポートチーム NST の役割 外科67 12481253 2005. 7 小野寺時夫ほか.Stage IV V Vは大腸癌 消化器癌の非治療切除 姑息手術に対する TPNの適応と限界 日本外 科学会雑誌85 1001-1005 1984 8 Buzby, G. P. et al. Prognostic nutritional index in gastrointestinal surgery. Am. J. Surg. 139 160-167, 1980. 9 Smedley F, Bowling T, James M, et al. Randomized clinical trial of the effects of preoperative and postoperative oral nutritional supplements on clinical course and cost of care. Br J Surg. 91 8 : 983-90, 2004. 10 Cerantola, Y. et al. Immunonutrition in gastrointestinal surgery. Br. J. Surg. 98: 37-48, 2011. 11 Heyland, D. K. et al. Should immunonutrition become routinne in critically ill patients A systematic review of the evidence. JAMA 286: 944-953, 2001. 12 Consensus recommendations from the U. S. summit on immune-enhancing enteral therapy. JPEN 25: S61-63, 2001. 13 聖隷三方原病院 コア栄養管理チーム SEIREI 栄養ケア マネジメントアニュア川西秀徳 監修 医歯薬出版 東京 2003 14 第一出版部 厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準 2010年版 第一出版 東京 2010 21 1297