本資料は 経済研究会 厚生労働記者会にて配布しております ( 会社概要 ) 株式会社日本総合研究所は 三井住友フィナンシャルグループのグループ IT 会社であり 情報システム コンサルティング シンクタンクの 機能により顧客価値創造を目指す 知識エンジニアリング企業 です システムの企画 構築 アウ

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Microsoft Word - 28概況(所得・貯蓄)(170929)(全体版・正)

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

図表 1 個人保険の新規契約 保有契約 ( 万件 % 億円) 新規契約 保有契約 件数 金額 ( 契約高 ) 件数 金額 ( 契約高 ) 前年度比 前年度比 前年度比 前年度比 平成 25 年度 1, , , ,575,

Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について

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1 1 A % % 税負 300 担額

平成 24 年度国民健康保険税税率改定案 1 医療保険分 ( 基礎課税額 ) 現行 改定 増減 伸率 所得割額 4.30 % 4.63 % % 資産割額 % 9.80 % % 税率等 均等割額 17,100 円 18,000 円 900 円 5.3%

Microsoft Word - 個人住民税について(2018~2022)

第 9 回社会保障審議会年金部会平成 2 0 年 6 月 1 9 日 資料 1-4 現行制度の仕組み 趣旨 国民年金保険料の免除制度について 現行制度においては 保険料を納付することが経済的に困難な被保険者のために 被保険者からの申請に基づいて 社会保険庁長官が承認したときに保険料の納付義務を免除す

住宅宿泊事業の宿泊実績について 令和元年 5 月 16 日観光庁 ( 平成 31 年 2-3 月分及び平成 30 年度累計値 : 住宅宿泊事業者からの定期報告の集計 ) 概要 住宅宿泊事業の宿泊実績について 住宅宿泊事業法第 14 条に基づく住宅宿泊事業者から の定期報告に基づき観光庁において集計

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

平成19年度税制改正.xls

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( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

都道府県別私立高校生への授業料等支援制度

 

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スライド 1

22. 都道府県別の結果及び評価結果一覧 ( 大腸がん検診 集団検診 ) 13 都道府県用チェックリストの遵守状況大腸がん部会の活動状況 (: 実施済 : 今後実施予定はある : 実施しない : 評価対象外 ) (61 項目中 ) 大腸がん部会の開催 がん部会による 北海道 22 C D 青森県 2

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平成28年版高齢社会白書(概要版)

厚生年金 健康保険の強制適用となる者の推計 粗い推計 民間給与実態統計調査 ( 平成 22 年 ) 国税庁 5,479 万人 ( 年間平均 ) 厚生年金 健康保険の強制被保険者の可能性が高い者の総数は 5,479 万人 - 約 681 万人 - 約 120 万人 = 約 4,678 万人 従業員五人

短時間労働者への厚生年金 国民年金の適用について 1 日又は 1 週間の所定労働時間 1 カ月の所定労働日数がそれぞれ当該事業所 において同種の業務に従事する通常の就労者のおおむね 4 分の 3 以上であるか 4 分の 3 以上である 4 分の 3 未満である 被用者年金制度の被保険者の 配偶者であ

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平成19年度分から

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医療保険制度の保険料はどうやって決まるの?

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金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

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図表 1 個人保険の新規契約 保有契約 ( 万件 % 億円) 新規契約 保有契約 件数 金額 ( 契約高 ) 件数 金額 ( 契約高 ) 前年度比 前年度比 前年度比 前年度比 平成 25 年度 1, , , ,575,

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

表 3 の総人口を 100 としたときの指数でみた総人口 順位 全国 94.2 全国 沖縄県 沖縄県 東京都 東京都 神奈川県 99.6 滋賀県 愛知県 99.2 愛知県 滋賀県 神奈川

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計-

( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

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Ⅱ. 赤字の解消計画 Ⅱ (1) 赤字解消のための基本方針 Ⅱ (2) 赤字解消のための具体的取組 国保は構造的な問題を抱えており 被保険者の保険料負担軽減のために法定外繰入金を繰入れているといった状況は 全国的な状況であることから 国は全国で約 3,400 億円の公費を拡充し 国保の財政基盤の強化

税・社会保障等を通じた受益と負担について

第2回税制調査会 総2-2

参考資料

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>

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共通基準による観光入込客統計 ~ 共通基準に基づき 平成 22 年 月期調査を実施した 39 都府県分がまとまりました~ 平成 23 年 10 月 31 日観光庁 各都道府県では 平成 22 年 4 月より順次 観光入込客統計に関する共通基準 を導入し 信頼 性の高い観光入込客統計調査を

別紙様式 3( 付表 1) 平成 年度介護職員処遇改善加算実績報告書積算資料 薄い黄色のセルに必要事項を入力してください 1. 加算受給額 ( 現行の加算 Ⅰと 現行の加算 Ⅱの比較額について ) 別紙様式 3の56を記載する場合のみ記載 別紙様式 3の34により報告した場合は記載不要です 単位 :

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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Ⅰ 調査の概要 1. 調査の目的 本調査は 今後の公的年金制度について議論を行うにあたって 自営業者 被用者 非就業者を通じた横断的な所得に関する実態を総合的に把握し その議論に資する基礎資料を得ることを目的とする なお 本調査は 平成 22 年公的年金加入状況等調査 の特別調査として 当該調査の調

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

政策課題分析シリーズ15(本文2)

女性が働きやすい制度等への見直しについて

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平成25年 国民生活基礎調査【所得票】 結果表一覧(案)

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

自殺者数の年次推移 平成 26 年の自殺者数は 25,427 人となり 対前年比 1,856 人 ( 約 6.8%) 減 平成 10 年以来 14 年連続して 3 万人を超える状況が続いていたが 3 年連続で 3 万人を下回った 男女別にみると 男性は 5 年連続 女性は 3 年連続で減少した また

国民健康保険税率等の諮問 について 国立市健康福祉部健康増進課国民健康保険係 国立市富士見台 : ( 代表 ) 内線

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そこで 本稿では 単独世帯に着目して217 年の賃金水準から年金額を算出し 高齢単独世帯の平均的な支出額と比較することにより 超高齢社会における所得基盤確保のあり方の課題を確認する 2. 単独世帯の年金額と支出額の比較 (1) 月額の年金額と支出額の比較厚生労働省 賃金構造基本統計調査 (217 年

第6回税制調査会 総6-3

0. ポイント低いが, 宮城県では 歳代における出生率の低さが, 京都府では0 歳代の低さが影響しており, その要因が異なる. 次に, 平均出生年齢と合計特殊出生率との関係をみたものが図 である. 概して, 平均出生年齢と合計特殊出生率との間には負の相関関係がみられる. ただし, 各都道府県が直線上

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厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

別紙2

第3回税制調査会 総3-2

通話品質 KDDI(au) N 満足やや満足 ソフトバンクモバイル N 満足やや満足 全体 21, 全体 18, 全体 15, NTTドコモ

1. 改革の方向性 女性の働き方に中立的な制度整備に当たっては 可処分所得の大幅な減少が生じないよう 負担を最小化 負担増減を円滑化するとともに こうした見直しが 負担増の生じる世帯 個人に ベネフィットとして戻ってくる制度改革とすることが不可欠 改革の進め方についての方針を明示し できるものから早

介護職員処遇改善加算実績報告チェックリスト 提出前に 次の書類が揃っているか最終の確認をお願いします このチェックリストは 提出する実績報告書類に同封してください チェック 介護職員処遇改善実績報告書 ( 別紙様式 3) 事業所一覧表 ( 別紙様式 3 添付書類 1) 必要に応じて 別紙様式 3 添

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2. 長期係数の改定 保険期間を2~5 年とする契約の保険料を一括で支払う場合の保険料の計算に使用する長期係数について 近年の金利状況を踏まえ 下表のとおり変更します 保険期間 2 年 3 年 4 年 5 年 長期係数 現行 改定後

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市場と経済A

相対的貧困率等に関する調査分析結果について

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これだけは知っておきたい地震保険

保険料は個人ごとに 後期高齢者医療制度では 被保険者一人ひとりに保険料を負担していただくことになります 新たに 75 歳になられた方 (65 歳以上 75 歳未満で一定以上の障害があり 認定を受けた方を含む ) は 以前に加入していた国民健康保険や被用者保険を脱退して この制度に移行することになりま

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2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

タイトル

木造住宅の価格(理論値)と建築数

129

81 平均寿命 女 単位 : 年 全 国 長野県 島根県 沖縄県 熊本県 新潟県 三重県 岩手県 茨城県 和歌山県 栃木県

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News Release ビジネス環境レポート No9- 貧困線近辺の所得層の国民健康保険料負担 - 試算と提言 - 年 月 8 日 株式会社日本総合研究所 調査部ビジネス戦略研究センター http://wwwjricojp/

本資料は 経済研究会 厚生労働記者会にて配布しております ( 会社概要 ) 株式会社日本総合研究所は 三井住友フィナンシャルグループのグループ IT 会社であり 情報システム コンサルティング シンクタンクの 機能により顧客価値創造を目指す 知識エンジニアリング企業 です システムの企画 構築 アウトソーシングサービスの提供に加え 内外経済の調査分析 政策提言等の発信 経営戦略 行政改革等のコンサルティング活動 新たな事業の創出を行うインキュベーション活動など 多岐にわたる企業活動を展開しております 名称 : 株式会社日本総合研究所 (http//wwwjricojp/) 創立 :969 年 月 日資本金 : 億円従業員 :, 名社長 : 木本泰行理事長 : 薄井信明 東京本社 : -8 東京都千代田区一番町 6 番 TEL -88-4( 代 ) 大阪本社 : - 大阪市西区土佐堀 丁目 番 4 号 TEL 6-649-8( 代 ) 本件に関するご照会等は 調査部調査部 西沢和彦西沢和彦あて (Tel:-88-) お願いいたします

はじめに 最近の議論 - ナショナルミニマムの議論議論へ 民主党政権移行後 最低限確保されるべき可処分所得の水準を明確に意識した 税および社会保険料の整合的な議論へ向かう機運が高まりつつある 例えば 9 年 月 厚生労働省は 厚生労働大臣の指示により相対的貧困率の試算を公表し 同年 月 ナショナルミニマム研究会 の初会合を開いた さらに 平成 年度税制改正大綱 では 次のように税と社会保障の一体改革がうたわれている 税制改革と社会保障制度改革とを一体的にとらえて その改革を推進します 論点は大きく つ () 先ず そもそもナショナルミニマムの水準をどのように設定するのかが論点となる わが国では 現在 この点コンセンサスが形成されていない () 次に その水準を保障するため 税と社会保険料をどのように一体的に設計するのかが論点となる ( 相対的貧困率で対象としているのも可処分所得 ) 本稿はまずはまず 相対的貧困率相対的貧困率 に関するする留意点留意点を整理 (P) の () に関し コンセンサスが形成されていないのみならず 昨今 注目を集める相対的貧困率における貧困線も このままナショナルミニマムとして採用するには留意すべき点が多い そこで 本稿ではまずこの点について整理した

4 国民健康保険の保険料保険料を試算 (P68) () 税と社会保険料社会保険料の一体的設計一体的設計の鍵を握る国民健康保険国民健康保険の保険料保険料 ナショナルミニマムの水準が今後どのように設定されようとも それを保障するには 税と社会保険料の一体的設計が不可避であり その鍵を握るのが 国民健康保険 ( 国保 ) の保険料である 税 社会保険料うち 国保のみ市町村ごとに計算方法 水準が大きく異なり 低所得層にとっての負担感が重いとの指摘があるにもかかわらず 実態解明が不充分であるため ナショナルミニマムの議論を進めるにあたって その解明が不可欠となる ( 注 ) () 試算の具体的方法 そこで 本稿では 厚生労働省試算の相対的貧困率における貧困線 4 万円を 留意点はあるものの 暫定的にナショナルミニマムと仮定し 貧困線近辺の所得層 ( 人 4 人の 4 世帯類型 ) の国保保険料を,84 の市町村ごとに試算 それを踏まえて 改革に向けた提言を行った ( 注 ) ( 注 )9 年 6 月に 毎日新聞が独自に保険料の全国調査を行い 国保加入の平均所得の 4 人世帯で平均 万円という負担水準や 最高 (4 万円 ) と最低 (4 万円 ) とで 6 倍に及ぶ市町村格差などを明らかにした そこで想定されているのは 夫婦 ( 人とも 4 歳以上 ) 子 人 国保加入世帯として平均的な所得 万円 ( 給与収入に換算すると 4 万円 ) 固定資産税支払い 万円の世帯 なお 民主党 [9] でも このデータが引用されている ( 注 ) 市町村毎の保険料率などは 国民健康保険中央会 都道府県国民健康保険団体連合会 国民健康保険の実態 に公表されており 本稿ではこの平成 年度版 ( 対象となる年度は平成 9 年度 ) を用いた 先行研究には北浦 [] がある

相対的貧困率 定義 OECD 諸国比較 留意点 相対的貧困率の定義想定的貧困率の定義は 世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割ることによって求めた世帯員 人あたり所得 (= 等価可処分所得 ) の中央値の%(= 貧困線 ) に満たない世帯員の割合 厚生労働省 [9] では 中央値 8 万円 貧困線 4 万円 世帯人員の平方根で割る 中央値の% という割り切りに基づく点などに留意 OECD 諸国とのとの比較 () 相対的貧困率 OECD 統計によれば わが国 49%( 中央値の% を貧困線とした場合 ) 第 4 位 () もっとも 中央値の6% を貧困線とした場合 わが国は 韓国 ポーランドと同率 8% の 位 このように 中央値の何 % をとるかによって 諸外国中の順位は変動し得る点にも留意 % % % % ( 図表 ) 相対的貧困率のOECD 比較 ( 中央値の6% % 4% の場合 ) 中位の6% 中位の% 中位の4% % % % デンマ ク スウ デン チ ェーーェェーー コ オ ストリア ノルウ フランス アイスランド ハンガリ ー フ ィ ンランド オランダ ルクセンブルグ ス英ロ国バキア スイス ベルギ ー O E C D ニ ュー ジ ー ランド ドイツ ( 資料 )OECD[8] 図表 ( 注 ) 貧困線を中央値の % とした場合の 相対的貧困率の低い国から高い国の順 イタリア カナダ オ ー ストラリア ギリシ ャ ポルト ガル スペイン ポ韓国ランド ー ア日米イ本国ルランド トルコ メキシコ

相対的貧困率 所得分布の違いによる数値例 相対的貧困率 貧困線貧困線が同じでもじでも 所得分布所得分布パターンパターンによってによって数値数値が異なるなる点にもにも留意 その数値例 ( 図表 ) 所得分布パターンは それぞれ 人の所得 中央値は何れも 万円 よって貧困線は その% をとると何れも 万円 所得分布パターンのみが異なる 貧困線を下回る所得の人は パターン それぞれ 人 ( 相対的貧困率 8%) 人 ( 同 48%) 人 ( 同 %) ( 図表 ) 所得分布パターンの違いによる相対的貧困率の違い ( 数値例 ) 所得分布パターン 所得分布パターン 所得分布パターン ID 所得 ( 万円 ) 人数 所得 ( 万円 ) 人数 所得 ( 万円 ) 人数 49 4 9 8 4 64 8 4 694 8 6 4 8 6 96 9 8 84 9 9 8 898 9 9 949 9 4 4 4 6 6 6 8 9 8 48 9 49 中央値 貧困線 ( 中央値の%) 相対的貧困 ( 人数 ) ( 資料 ) 日本総合研究所作成 ( 注 ) 所得の平均値は何れのパターンも 万円 ( 注 ) 斜体の数値が相対的貧困となっている人 ( 人 ) 4 ( 人 ) 4 ( 人 ) 4 - - 4 - - - - 所得分布パターン ( 度数分布 ) 6-9- - 所得分布パターン ( 度数分布 ) 4-6- 8-9 - 8-6 9 ( 万円 以上 未満 ) - - 4-6- 8- - 9 ( 万円 以上 未満 ) 所得分布パターン ( 度数分布 ) 4-6- 8-9 - - 4-6- 8- - 9 ( 万円 以上 未満 ) 4

絶対的貧困の考え方も 他方 生活必需品のバスケットを基準としてそれを満たすことができない状態にあることを貧困とする絶対的貧困の考え方もある 絶対的貧困の国際比較は技術的に難しい (OECD[8]) とされるものの 平成 8 年度年次経済財政報告では次のような見解 貧困度を絶対的貧困という尺度で国際比較を行うと 日本が厳しい貧困状況にあるという結論を導き出すことは難しい ( その数値的根拠は下図 ) このように 今後 貧困を測る指標の精査 および 貧困の水準に関するコンセンサス形成不可欠

試算の準備 - 貧困線 4 万円を 収入 に換算 貧困線をナショナルミニマムナショナルミニマムと仮定仮定し国保保険料試算国保保険料試算へ 以上のように 相対的貧困率の貧困線には 留意すべき点が多々あるものの ここでは暫定的にナショナルミニマムと仮定し 税と社会保険料の一体的設計の鍵を握りつつも実態解明が不充分な国保の保険料について 市町村ごとに試算 準備としてとして貧困線 4 万円を収入収入に換算 貧困線として 厚生労働省 [9] の 4 万円を採用 もっとも 保険料の試算には 可処分所得ではなく 収入 の仮定が必要 そこで 人 4 人世帯に関し 貧困線 4 万円 ( 図表 の b) を収入 ( 同 d) に独自に換算し直した ( 注 ) 収入換算は 人 4 人世帯 それぞれ 9 万円 88 万円 8 万円 69 万円 健康保険料は それぞれ 6 万円 89 万円 万円 万円 ( 収入の 469%) 但し これは あくまでこの世帯が被用者保険である厚生年金 協会けんぽに加入している場合 ( 注 ) では この収入の世帯が 国保に加入している場合 保険料負担はどうなるであろうか ( 注 )c=d-e(d)-f(a,d)-g(a,d) となる d を求めた 人的控除の前提は 図表 の注 の通り ( 注 ) 国保加入世帯のうち 4% は被用者 ( 平成 8 年度 ) 48% は年金受給者等であり 有職者のなかでは被用者が最大のウェイト 世帯人員 等価可処分所得 ( 図表 ) 貧困線の収入換算 ( 万円 ) 可処分所得 収入 社会保険料 所得税住民税 c=b a 厚生年 協会け a b =d-(e+f+g) d e 金んぽ f g 人 4 4 9 6 9 人 4 6 88 44 48 89 8 4 人 4 9 8 96 9 9 4 人 4 8 69 9 6 ( 資料 ) 日本総合研究所作成 ( 注 ) 等価可処分所得 4 万円は 厚生労働省 [9] の貧困線 それ以外は日本総合研究所試算 ( 注 ) 厚生年金 協会けんぽに加入している世帯の場合 ( 注 ) 可処分所得から 収入を求めるにあたっては 次の前提を置いた 人以上世帯は片働き 扶養控除の対象となる子どもの人数をそれぞれ 人 人 人とした 社会保険料率 ( 自己負担分のみ ) は 94%( 厚生年金 8% 協会けんぽ469% 雇用 4%) とした 雇用 6

国保保険料の試算 収入 9 万円 人世帯 まず 収入 9 万円 ( 貧困線 4 万円の 人世帯の被用者保険加入時の収入換算 万円の固定資産税額支払いあり 以下同 ) の 人世帯 保険料の全市町村の平均は 万円 ( 図表 4) 収入対比 8% 同収入の協会けんぽ加入の保険料 6 万円 ( 図表 参照 ) を 48 万円上回る 標準偏差は 万円 最低は 48 万円 最高は 8 万円 最高 / 最低は 8 倍 ( 数値の解釈は補論 も参照 ) ほぼ全ての市町村で 協会けんぽの 6 万円を上回る ( 図表 ) ( 図表 4) 試算結果 ( 市町村数 ) ( 図表 ) 国民健康保険料の度数分布 ( 人世帯 ) ( 人世帯 ) 6 収入 ( 万円 ) 9 万円未満 ( 国保の課税所得 ) (9) 6 448 国保保険料 6 8 平均 ( 円 ),88 4 8 4 ( 収入対比 %) (8) 89 6 中央値 ( 円 ),46 9 標準偏差 ( 円 ),89 48 変動係数 6 最高 ( 円 ) 8,844 6 4 最低 ( 円 ) 4,89 4 4 最高 / 最低 ( 倍 ) 8 4 4 8 4 44 度数分布図表 6 8 6 8 9 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 8 4 89 6 8 9 集計せず 6 ( 注 ) 医療分 介護分とも旧ただし書方式を採用している全, 市町村 ( よって東京 区など 6 市区町村は除いた ) それでもなお 実際の市町村数,84 より多いのは 合併市町村において 合併後もなお複数の料率を用いている場合があり それぞれ 市町村として試算したため 4 人世帯も同様 ( 注 ) 年齢は 4 歳以上と仮定 ( 注 ) 固定資産税 万円を支払っていると仮定 この仮定は 4 人世帯も同様 万円未満 4 44 8 6 6 8 8 9 ( 万円 )

国保保険料の試算 収入 88 万円 人世帯 収入 88 万円の 人世帯 ( 母子 ) 保険料平均は 万円 収入対比 94% 同収入の協会けんぽ加入者の保険料 89 万円のほぼ 倍 収入対比が 人世帯より高いのは 国保保険料には 世帯人員 人当たり定額部分 ( 均等割 ) があり 世帯人員が増えるにつれ負担が重くなることに起因 ( 補論 参照 ) 標準偏差 6 万円 最高 9 万円 最低 万円 最高 / 最低 8 倍 ( 図表 6) 試算結果 ( 人世帯 ) 収入 ( 万円 ) 88 ( 国保の課税所得 ) (8) 国保保険料 平均 ( 円 ) 6,69 ( 収入対比 %) (94) 中央値 ( 円 ),66 標準偏差 ( 円 ) 6,9 変動係数 最高 ( 円 ) 9, 最低 ( 円 ) 6,86 最高 / 最低 ( 倍 ) 8 度数分布 図表 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 全, 市町村 ( 注 ) 母は 4 歳以上と仮定 ( 市町村数 ) 8 6 4 ( 図表 ) 国民健康保険料の度数分布 ( 人世帯 ) 9 6 8 9 6 ( 万円 ) 8

国保保険料の試算 収入 8 万円 人世帯 収入 8 万円の 人世帯 ( 夫婦子 人 ) 人世帯でもみられた定額部分 ( 均等割 ) の影響がより強く出ており 保険料平均は 4 万円 収入対比 % 同収入の協会けんぽ加入者の 万円比 万円高い 標準偏差 4 万円 最高 8 万円 最低 9 万円 最高 / 最低 4 倍 ( 図表 8) 試算結果 ( 人世帯 ) 収入 ( 万円 ) 8 ( 国保の課税所得 ) (88) 国保保険料 平均 ( 円 ) 4,4 ( 収入対比 %) () 中央値 ( 円 ),6 標準偏差 ( 円 ) 4,49 変動係数 最高 ( 円 ) 8,4 最低 ( 円 ) 9,8 最高 / 最低 ( 倍 ) 4 度数分布 図表 9 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 全, 市町村 ( 注 ) 両親は 4 歳以上と仮定 4 人世帯も同様 ( 市町村数 ) 6 4 ( 図表 9) 国民健康保険料の度数分布 ( 人世帯 ) 8 6 8 6 8 6 48 4 ( 万円 ) 9

国保保険料の試算 収入 69 万円 4 人世帯 収入 69 万円の 4 人世帯 ( 夫婦子 人 ) 定性的に言えることは 人世帯の場合とほぼ同様 保険料の平均 万円 収入対比 96% 同収入の協会けんぽ加入者の 万円比 9 万円高い 但し 収入対比が 人世帯に比べ低くなっているのは この世帯の場合 保険料免除の対象となっているため ( 人世帯の場合 試算対象の収入では免除対象に至らない 補論 参照 ) ( 図表 ) 試算結果 (4 人世帯 ) 収入 ( 万円 ) 69 ( 国保の課税所得 ) () 国保保険料 平均 ( 円 ), ( 収入対比 %) (96) 中央値 ( 円 ) 49,6 標準偏差 ( 円 ),886 変動係数 最高 ( 円 ) 4,84 最低 ( 円 ) 99,8 最高 / 最低 ( 倍 ) 4 度数分布 図表 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 全, 市町村 ( 市町村数 ) 6 4 ( 図表 ) 国民健康保険料の度数分布 (4 人世帯 ) 498 4 4 4 4 4 4 ( 万円 )

試算 固定資産税支払いがない場合 (4 人世帯 ) 以上の試算は 固定資産を保有し固定資産税額 万円を支払い 国保保険料の資産割部分を負担している世帯の場合 ここでは 固定資産税額を支払っていない世帯の場合を試算 国保保険料 固定資産税を支払っている場合 ( 図表 4 6 8 ) に比べた低下幅は 平均でみると何れの世帯も年 6,4 円 市町村格差は 変動係数 最高 / 最低の倍率などをみると 固定資産税を支払っている場合に比べやや拡大 ( 図表 ) 試算結果 ( 固定資産税の支払いがない場合 ) 人世帯 人世帯 人世帯 4 人世帯 収入 ( 万円 ) 9 88 8 69 ( 国保の課税所得 ) (9) (8) (88) () 国保保険料平均 ( 円 ) 94,48 6,,6, ( 収入対比 %) () (8) (9) (9) 医療分,8 6,89 8,68,6 ( 収入対比 %) (8) () (8) () 介護分 6,96,64 4,86 4,66 ( 収入対比 %) () () () () 中央値 ( 円 ) 9,8 8,968 6,69,9 標準偏差 ( 円 ),84 6,8,86 9,6 変動係数 6 6 6 最高 ( 円 ) 44,46 48,9 48,96 89,8 最低 ( 円 ) 9,4 48,6 66,48, 最高 / 最低 ( 倍 ) 49 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 全, 市町村 ( 注 ) 固定資産税の支払いなしと仮定 ( 注 ) 度数分布は省略した

試算結果の総括 平均的所得の世帯を対象とした毎日新聞 [9] にみられた保険料水準の高さや市町村格差が貧困線近辺の所得層でも同様にみられる ( 但し 度数分布をみると平均を頂点とした山型 ) 国保加入者の保険料負担感は 平均すると 同じ収入の協会けんぽ加入者の保険料労使計を自らの収入のなかから支払っているイメージ 市町村によっては 国保加入者の協会けんぽ加入者との差はさらに拡大 こうした実態を踏まえれば 国保保険料の水準引き下げおよび市町村格差是正は 貧困線近辺の所得層に限れば ナショナルミニマムの議論のなかで核心的論点の つ 加入している健康保険固定資産税の支払い 有り 無し 世帯人員 人 人 人 4 人 4 人 人 人 人 4 人 人 人 人 4 人 収入 ( 万円 ) 9 88 8 69 4 9 88 8 69 9 88 8 69 ( 国保の課税所得 ) (9) (8) (88) () () (9) (8) (88) () - - - - 保険料 平均 ( 円 ),88 6,69 4,4,,6 94,48 6,,6, 6,8 88,6,,98 ( 収入対比 %) (8) (94) () (96) (4) () (8) (9) (9) (4) (4) (4) (4) 中央値 ( 円 ),46,66,6 49,6 na 9,8 8,968 6,69,9 6,866 88,9,8,966 標準偏差 ( 円 ),89 6,9 4,49,886 na,84 6,8,86 9,6 8 9 変動係数 6 na 6 6 6 最高 ( 円 ) 8,844 9, 8,4 4,84 4, 44,46 48,9 48,96 89,8 6,68 89,6,89, 最低 ( 円 ) 4,89 6,86 9,8 99,8 9,9 9,4 48,6 66,48, 6, 88, 6,6, 最高 / 最低 ( 倍 ) 8 8 4 4 6 49 出所 本稿 ( 図表 ) 試算結果の総括 国保 毎日新聞 [9] ( 資料 ) 日本総合研究所作成 国保加入のデータ出所本稿分は 図表 4 6 8 の再掲 協会けんぽの保険料平均のみ図表 の再掲 ( 注 ) 毎日新聞 [9] の収入 4 万円は 同紙で報告されている国保の課税所得 万円から日本総研が試算した数値 ( 注 ) 国保加入の固定資産税の支払い有りの場合の固定資産税額の想定は 万円 ( 注 ) 協会けんぽ加入者の保険料率 ( 収入対比の行に計上 ) は 介護保険第 号被保険者に該当する場合の本人負担分 ( 注 4) 協会けんぽ加入者の中央値 標準偏差 最高 最低は都道府県単位の数値 本稿 協会けんぽ -

提言 - 給付付き税額控除の活用など 低所得層の保険料負担保険料負担へのへの上限設定 改革に向けた具体的な方策として つは 低所得層の国保保険料負担への上限設定がある 例えば 収入 9 万円の 人世帯の国保保険料上限は 万円といったように予め上限を定めておく このことにより ナショナルミニマムが確保されやすくなると同時に 保険料の市町村間および協会けんぽとの極端な格差は回避される 給付付き税額控除税額控除の活用 もう つは 給付付き税額控除 の活用である 具体的には 国保自体には手を付けず 個人所得課税において給付付き税額控除を導入し それを通じてナショナルミニマムの確保を図る 例えば 収入 9 万円の 人世帯の国保保険料がそれぞれ A 町 B 町 C 町という居住する自治体の違いにより 万円であるとする ( 図表 4) それぞれ 本稿の試算で得られた最低 平均 最高に近い ( 図表 4 参照 ) 現行 AC 町居住者の可処分所得は 国保保険料の差がほぼそのまま反映され それぞれ 4 万円 万円 万円となる C 町居住者の場合 その可処分所得は 貧困線を 4 万円とすれば それを下回ることとなる 他方 国保保険料を現行の所得控除ではなく 給付付き税額控除に切り替える個人所得課税改革を行なった場合 算出税額の相殺 ( 図表 4 の g,h) および給付 ( 同 i) により 可処分所得は何れのケースも 8 万円で同額となる ( ここでは 税額控除に上限を設けない案を想定しているが 上限を設ける案も考えられる ) ( つづく )

この方法のメリットは 第 に 社会保険料の特徴の つである負担と給付の対応関係を損なわず 税による再分配を通じてナショナルミニマムを保障するという社会保険料と税の本来的な役割に則った仕組みとなることである 第 に 前政権で政策課題として掲げられた国民年金保険料軽減 ( 中期プログラム 盛り込まれていた ) や今後税率引き上げが必至な消費税の逆進性対策を個々にではなく 一括して行えることである 他方 これを公平性を確保しつつ実現するには 正確な所得捕捉など執行面における環境整備が不可欠となる ( 西沢 [9]) この点に関し 民主党は歳入庁設置 税 社会保障共通の番号導入などを掲げており ナショナルミニマムの議論に合わせ これらの具体化も急がれる ( 図表 4) 国民健康保険料を個人所得課税上 税額控除に切り替えた場合の数値例 i=max(gf,) 収入 給与所得控除 人的控除 国民健康保険料 課税所得 算出税額 国民健康保険料 ( 所得控除 ) e=a-bc-d f=e 税 ( 税額控除 ) a b c d 率 g 納付税額 h=max(f -g,) 給付額 ( 万円 ) 可処分所得 現行 A 町 9 6 8 9 44 - - - 4 B 町 9 6 8 9 6 - - - C 町 9 6 8 9 - - - 改革 =a-h-i+j A 町 9 6 8-9 8 B 町 9 6 8-9 49 8 C 町 9 6 8-9 49 8 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 簡単にするため 年金保険料と雇用保険料は省略した 国民健康保険料も仮定の数値 人世帯の場合 ( 注 ) 現行の場合 算出税額 = 納付税額 ( 注 ) 掲載している人的控除は所得税における金額 j=a-d-f 4

( 補論 ) 国民健康保険料の構造 () 国民健康保険料の構造保険料を 目的別にみると 医療分と4 歳以上を対象とした介護分から構成され 課税ベース別にみると 所得 固定資産 世帯人員 人当たりの定額 ( 均等割 ) 世帯当たりの定額 ( 平等割 ) の4つから構成される ( 図表 ) 所得と固定資産が負担能力に応じた 応能部分 均等割と平等割が受益に応じた 応益部分 と位置付けられている 保険料軽減の概要応益部分には 保険基盤安定制度 ( 保険料軽減分 ) として 所得および世帯に属する被保険者数に応じて 割 割軽減される仕組みあり 世帯の被保険者数が 人 4 人世帯の場合 それぞれ 収入 万円 ( 所得 68 万円 ) 9 万円 ( 同 万円 ) 9 万円 ( 同 8 万円 ) 万円 ( 同 万円 ) を下回ると保険料の軽減対象となる ( 図表 6) ( 図表 ) 国民健康保険料 課税ベースの構成要素 課税ベース 保険料 ( 率 ) 単純平均 医療分 介護分 所得割 ( 所得 %) 9 9 4 資産割 ( 固定資産税額 %) 86 4 均等割 ( 世帯人員 人当たり 円 ),48,8,69 平等割 ( 世帯当たり 円 ) 9,9,86 4, ( 資料 ) 国民健康保険中央会 都道府県国民健康保険団体連合会 国民健康保険の実態平成 年度版 より日本総合研究所試算 ( 注 ) 旧但し書方式採用市町村のみの集計, 市町村 ( 注 ) 資産割 平等割を採用していない市町村は % 円として計算した ( 図表 6) 国民健康保険料軽減の基準となる収入 ( 給与所得世帯の場合 ) 軽減内容 基準となる収入 単身世帯 人世帯 人世帯 4 人世帯 根拠 割軽減給与収入 98 98 98 98 所得 万円 ( 給与所得 ) () () () () 割軽減給与収入 4 ( 給与所得 ) () (8) (6) 割軽減給与収入 9 9 ( 給与所得 ) (68) () (8) () ( 資料 ) 第 回社会保障審議会年金部会参考資料を日本総合研究所加筆修正 ( 注 ) 軽減されるのは 被保険者均等割と世帯別平等割 ( 注 ) 給与所得は 給与収入 - 給与所得控除 ( 万円 ) 所得 万円 + 4 万円 世帯主以外の被保険者数 所得 万円 + 万円 世帯に属する被保険者数

( 補論 ) 国民健康保険料の構造 () 国保保険料におけるにおける 所得所得 所得割の 所得 にも 個人所得税や住民税と異なる国民健康保険料固有の定義が用いられている () 給与所得者の場合 所得 = 給与収入 - 給与所得控除 - 住民税の基礎控除 万円 給与収入にそのまま保険料率が掛けられる訳ではないが 所得税や住民税のように社会保険料控除や扶養控除など広範な控除が認められる訳でもない () 事業所得者の場合 おおまかに言えば 事業収入から必要経費と専従者控除および基礎控除 万円を差し引いた額 () 年金受給者の場合 所得 = 年金収入 - 公的年金等控除 - 基礎控除 万円 なお 給与収入と年金収入では 給与所得控除と公的年金等控除の違いを通じて 同じ収入でも課税所得が異なって算出される この点も重要な論点である 6

( 補論 ) 医療サービス供給水準を考慮した比較 () 国保保険料の市町村格差評価市町村格差評価は 医療医療サービスサービス供給水準供給水準の差考慮差考慮が必要 市町村間で国保保険料に格差があることが不公平であると判断される場合 ( 例えば民主党 [9]) その根底には 同じ負担能力であれば同じ負担であることが公平であるとする租税原則である 水平的公平の原則 がある もっとも 租税と異なり 本来的には負担と給付の対応関係が特徴の つである健康保険料の場合 例えば A 町と B 町とで大病院へのアクセスの差や小児医療費自己負担無料化の有無など医療サービス供給水準が異なるのであれば それに応じて保険料が A 町と B 町で異なることはむしろ自然である すると 保険料の市町村格差を評価する場合 単に 水平的公平の原則 のみならず 各市町村における 医療サービス供給水準の差 を充分に考慮する必要がある 医療サービスサービス供給水準供給水準の差を考慮考慮したした保険料市町村格差 - 再評価の方法 このように 医療サービス供給水準の差 を考慮すると 保険料の地域格差はどのように再評価されるのだろうか この検討のために 便宜上 同一都道府県内の市町村は 同一の医療サービス供給水準にあるという仮定を置く この仮定は ラフではあるものの 都道府県が 医療圏の設定および病院 病床数 救急体制の整備計画である 医療計画 を策定したり 都道府県財政調整交付金を通じて国保財政の責任の一端を担っていたりすることを考えると 非現実的なものではない すると 国保保険料の水平的公平が全市町村間の比較において達成されていなくても 同一都道府県内の市町村において達成されていれば 保険料の市町村格差の問題としての程度は低下すると言える ( つづく )

( 補論 ) 医療サービス供給水準を考慮した比較 () ( つづき ) 結果 - 都道府県内の最高 / 最低倍率は平均平均して 倍程度 試算結果は 収入 9 万円の単身世帯のケースであるが ( 図表 ) 他の世帯構成 所得層であっても 以下に述べる定性的結果はほぼ同様である 結果を要すれば 同一都道府県内市町村での保険料の格差は 全市町村の比較における 8 倍 ( 図表 4) より明らかに小さい 都道府県内の最高 / 最低の倍率は おおむね 倍前後にある すなわち 水平的公平の観点だけでなく 医療サービス供給水準の観点をも踏まえれば 保険料の市町村格差はより許容され得るということになる ( 倍 ) 最高 / 最低 ( 左軸 ) ( 参考 ) 変動係数 ( 右軸 ) ( 図表 ) 都道府県内 国保保険料の最高 / 最低倍率 ( 年収 9 万円 単身世帯 ) 沖縄鹿児島宮崎大分熊本長崎佐賀福岡高知愛媛香川徳島山口広島岡山島根鳥取和歌山奈良兵庫大阪京都滋賀三重愛知静岡岐阜長野山梨福井石川富山新潟神奈川東京千葉埼玉群馬栃木茨城福島山形秋田宮城岩手青森北海道 ( 標準偏差 / 平均 ) 8 6 4 8 6 4 ( 資料 ) 日本総合研究所試算 ( 注 ) 最高 / 最低の倍率は外れ値の影響を受けやすいので 参考として都道府県内の変動係数も示した 変動係数をみても 平均は 9 にとどまる 8

参考文献 [] 栄畑潤 [] 医療保険の構造改革平成 8 年改革の軌跡とポイント 法研 [] 北浦義朗 [] 国民健康保険料 ( 税 ) の水平的不平等性 財団法人関西社会経済研究所 KISER Discussion Paper Series No8 [] 厚生労働省 [9] 相対的貧困率の年次推移 [4] 西沢和彦 [] 所得捕捉率推計の問題と今後の課題 Business & Economic Review Vol No( 通巻第 8 号 ) [] 西沢和彦 [9] 日本版 Working Tax Credit の設計 Business & Economic Review Vol9 No4 ( 通巻第 号 ) [6] 毎日新聞 (9 年 6 月 8 日 ) [] 民主党 [9] 崖っぷちの日本の医療 必ず救う! [8]OECD[8] Growing unequal? : Income Distribution and Poverty in OECD Countries 9