類し, 老研式活動能力指標,KDQOL スコアを Mann-Whitney の U 検定を用いて比較した. 統 計解析には JMP Pro11.2 を用い, 有意水準は 5% とした. なお OQL の評価について, 腎疾患特 異的尺度の 性機能 の項目は回答が少なかっ たため除外した. 本研究は,

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外来透析患者の QOL に関連する要因について ~ 運動習慣 社会活動状況からの検討 ~ 古川隼人 庄司健一 要旨本研究は, 外来人工透析を行っている腎不全患者の QOL に着目し, 年齢, 透析歴, 運動習慣別 に IADL と QOL とを比較検討した. 対象は長崎市内のクリニックで人工透析を行っている腎不全患 者 43 名とし, アンケート調査と問診評価を実施した. その結果, 対象者の QOL IADL は比較的保た れているものの, 年齢 透析歴 外出頻度 運動時間 リハビリテーションの有無が QOL IADL に影 響していることが明らかとなった. このことから透析患者においては透析状況により, 身体面 精神面における教育と早期のリハビリテーションの介入が必要であることが示唆された. 背景 2011 年末に我が国の慢性透析患者数は 30 万 人を超え 2013 年末には 314180 人となった 1). 長 期間透析治療を行っていると心不全や低血圧な どの合併症の発生や疲労感, 抑うつ感などが, 身体活動量の低下や運動諸機能の低下を引き 起こす 2). そのことが透析患者の QOL の低下を 招きさらに身体機能の低下を助長するといった 悪循環に陥っている. 近年, 透析施行中に下肢のレジスタンス運動 を行うなどの運動療法により, 下肢筋力や歩行 能力の向上,QOL スコアの上昇を認めたと報告 がされている 3,4). しかし, 透析患者の属性や日 頃の運動習慣, 生活活動能力と QOL の関連に ついて述べられた報告は少ない. そこで我々は 日常生活を送っている外来透析患者に焦点を当 て, 年齢, 透析歴, 運動習慣と日常生活活動能 力及び QOL を調査し, 比較検討したので報告す る. 対象と方法対象は, 長崎市内のクリニックにて腎不全によ り人工透析を受けている 68 名とし, アンケート調 査と問診評価を実施した. 対象者の除外基準は 重度の認知症を呈する患者, 歩行に解除を有す る患者, 重度の心疾患により運動制限がある患 者とし, アンケート調査及び問診評価を実施し得 た 43 名を分析対象とした. なお, アンケート調査, 問診評価とも, 無記名 方式とした. (1) アンケート調査 アンケート内容は, 一般情報として年齢, 性別, 透析情報として透析歴と透析時間, 運動習慣は 運動の程度, 時間, 外出頻度, 定期的なリハビリ テーション受診の有無について調査した. なお 外出頻度は透析以外の目的での外出とした. (2) 問診評価 問診は,IADL と QOL を評価した.IADL は, 老研式活動能力指標 5) を用いた. これは 13 項目 の質問に対して はい, いいえ で回答し,13 点満点で評価した. QOL は the Kidney Disease Quality of Life instrument Short Form ver1.3( 以下 KDQOL とす る ) 6) を用いて評価した.KDQOL は腎疾患特異 的尺度 11 項目, 包括的尺度 8 項目からなり, そ れぞれの項目に関して 100 点満点で評価し, ス コアが高値であるほど QOL が高いと判定される. 対象者の点数は KDQOL SF ver1.3 日本語版マニュアル ( 三浦,Green, 福原 ) をもとに算出し, 各項目の平均値を求めた. 分析方法分析はアンケート調査によって得られた一般 情報, 透析情報, 運動習慣をそれぞれ 2 群に分 1-45-

類し, 老研式活動能力指標,KDQOL スコアを Mann-Whitney の U 検定を用いて比較した. 統 計解析には JMP Pro11.2 を用い, 有意水準は 5% とした. なお OQL の評価について, 腎疾患特 異的尺度の 性機能 の項目は回答が少なかっ たため除外した. 本研究は, 長崎大学医学部保健学科倫理委 員会に承認を受けた後, 実施した. 結果対象者 43 名 ( 男性 32 名, 女性 11 名 ) の平均 年齢は 58.8±9.2 歳, 男性 59.6±9.5 歳, 女性 56.5±8.5 歳であった. 1. アンケート調査の結果 対象者 43 名の透析歴は 11.4±10.0 年, 透析時 間は 3.5 時間が 3 名,4 時間が 29 名,4.5 時間が 6 名,5 時間が 4 名であった. 運動状況について習慣的な運動を毎日行っ ている者が 3 名, 週 4~5 日が 2 名, 週 2~3 日 が 9 名, 週 1~2 日が 5 名, 行っていない者が 24 名であった. 運動を行っている 19 名について, 運動時間 1 時間以上の者が 6 名,30 分 ~1 時間 が 4 名,10 分 ~30 分が 7 名,10 分以下が 2 名 であった. 外出頻度では毎日外出する者が 10 名, 週 4 ~5 日が 9 名, 週 2~3 日が 12 名, 週 1 日以下 が 5 名, 月 2~3 日が 2 名, 透析日以外で外出し ないと答えた者が 5 名であった. また, 透析施設または他の病院で何かしらのリ ハビリテーションを受けている者が 6 名受けてい ない者が 37 名であった ( 表 1). 2. 問診評価の結果との比較 対象者の老研式活動能力指標の平均スコアと KDQOL スコアを示した. また比較対象として古 谷野ら 5) と Green ら 7) の先行研究のスコアを用い た. 本対象者においては睡眠と全体的健康感の 項目のみ低かった ( 表 2). 3. 各アンケート項目による比較 (1) 年齢 透析歴 外出頻度 運動の有無による 比較 各アンケート結果より対象者を 2 群に分け, 老研式活動能力指標と KDQOL の各平均点を比較した. 年齢については,65 歳以上群 11 名と 65 歳未満群 32 名に分け, 比較したところ, 老研式活動能力指標と KDQOL の勤労状況 身体機能 体の痛みの項目に有意差がみられ,65 歳以上群のスコアが有意に低かった ( 表 3-1). 透析歴では人数分布より,7 年以上群 20 名と 6 年以下群 23 名で比較し,KDQOL のソーシャルサポートの項目のみ有意差がみられ, 透析歴が長い群のスコアが有意に低かった.( 表 3-2) 外出頻度では週 2 日以上群 31 名と週 1 日以下群 12 名とで比較したところ, 老研式活動能力指標と KDQOL の勤労状況 透析スタッフからの励まし 身体機能の項目で有意差がみられ, 外出頻度の少ない群においてスコアが有意に低かった ( 表 3-3). しかし, 運動有群 19 名と運動無群 24 名の比較ではすべての項目で有意差は認められなかった ( 表 3-4). (2) 運動有群における比較運動実施による特徴を検討すべく運動有群 19 名について, 運動時間 30 分以上群 10 名と 30 分未満群 9 名を比較した. その結果,KDQOL の身体機能の項目で有意差があり,30 分未満群のスコアが有意に低かった ( 表 4). (3) リハビリテーション受診の有無における比較定期的にリハビリテーションを受診している者 6 名の年齢は,65.0±12.0 歳, 透析歴 12.5±12.9 年であり, リハ無群 37 名ではそれぞれ 56.9±8.5 歳, 10.2±9.8 年であった. リハビリテーションの受診の有無でスコアを比較したところ,KDQOL の 19 項目のうち 9 項目について有意差がみられ, リハ無群のスコアが有意に高値であった ( 表 5). またリハ無群について, 週 1 以上の運動習慣有群 16 名と運動習慣無群 21 名とで老研式活動能力指標と KDQOL スコアを比較した結果, 老研式活動能力指標で有意差が認められ, 運動有群で有意に高い値を示した ( 表 6). 2-46-

表 1 アンケート調査の結果 表 2 老研式活動能力指標 KDQOL の平均スコアと比較 3-47-

表 3-1 年齢におけるスコア比較 表 3-2 透析歴におけるスコア比較 4-48-

表 3-3 外出頻度におけるスコア比較 表 3-4 運動の有無におけるスコア比較 5-49-

表 4 運動有群の運動時間におけるスコア比較 表 5 リハビリテーションの有無における年齢 透析歴 表 6 リハビリテーションの有無におけるスコア比較 6-50-

表 7 リハ無群の運動の有無におけるスコア比較 考察今回, 腎不全によって外来透析を受けている 患者に焦点を当て, 年齢, 透析歴, 運動習慣に よる日常生活活動能力と QOL を調査し, 比較検 討した. 本研究対象者の老研式活動能力指標は 10.8 点であり, 古谷野ら 5) による地域高齢者を対象と した結果と同等であった. また,KDQOL は Green ら 7) によるスコアより高い結果であった. つまり今 回の対象者の IADL と QOL は比較的保たれて おり, 外来で通院することができることから,ADL が自立しており, 身体機能 精神機能 社会機能 が比較的保たれているものと考えられた. 各アンケート結果による比較において, 老研式 活動能力指標のスコアが有意に低い要因として, 65 歳以上であること, 外出頻度週 1 日以下である ことが挙げられた. また KDQOL のスコアが有意に低い要因としては, 同じく 65 歳以上であること, 外出頻度週 1 日以下であること, そして透析歴が 7 年以上であること, 運動時間が 30 分未満であることが挙げられた. これらの要因の理由として加齢や閉じこもりによる身体機能の低下や社会参加の減少, そして, 家族など周囲からのサポートが減少していること, また, 運動不足であることが考えられた. 先行研究において, 外来透析患者に対するソーシャルサポート, 家族からの協力の必要性も示唆されており 8), 従って活動量 社会参加が少ない高齢透析患者に対するケアやサポート, そして患者および家族への教育が重要であると考えられた. またリハビリテーション受診の有無により老研式活動能力指標,KDQOL を比較した結果, リハ有群において KDQOL の 9 項目で有意に低い値を 7-51-

示し, かつ高齢であり透析歴が長かった. Stojanovic 9) らによると透析患者の QOL と年齢, 透析歴には相関関係があるとの報告がされている. さらに, 高齢透析患者や長期透析患者は合併症や二次障害が多いことが明らかになっている 8). このことから, 高齢で透析歴の長い患者に対する早期のリハビリテーション介入の必要性が示唆された. さらにリハビリを受けていない群では運動習慣有群の IADL が有意に高値を示しており, リハビリを受診していない者であっても最低週 1 回程度の運動による身体活動を促すことが IADL や QOL の維持につながることが示唆された. 今回の結果より腎不全による外来透析患者の QOL を維持するためには透析状況に応じ, 障害 予防の観点からの患者教育とリハビリテーション の早期介入が重要であるものと考えられた. 謝辞本研究を進めるにあたり, 研究に参加, 協力し ていただいた新里クリニック浦上の患者様並び にスタッフの皆様に感謝申し上げます. 参考文献 1) 日本透析医学会ホームページ我が国の透析療法の現状平成 26 年度版. http://www.jsdt.or.jp/ (2014 年 12 月 1 日引用 ) 2) 上月正博 : 透析患者における障害とリハビリテーションの考えかた.JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION.2010; 6: 522-530. 3) 塩田琴美, 橋本俊彦, 他 : 透析患者における継続した運動処方の効果が身体機能および Activities of Daily Living(ADL) Quality of Life(QOL) に与える影響について. 理学療法学.2010; 37: 112-113. 4) 下田博司, 刈谷康之, 他 : 高齢血液透析患者の血液透析中運動的介入の効果. 理学療法京都. 2013; 42: 47-51. 5) 古谷野亘, 橋本廸生, 他 : 地域老人の生活機能 : 老研式活動能力指標による測定値の分布. 日本公 衆衛生雑誌.1993; 40: 468-474. 6) 三浦靖彦,Green J, 他 :KDQOL-SFver1.3 日本語版マニュアル. 7) Green J, Fukuhara S, et al.: Translation,cultural adaptation,and initial reliability and multitrait testing of the Kidney Disease Quality of Life instrument for use in Japan. Quality of Life Research 2001; 10: 93-100. 8) 下山節子, 甲斐真弓, 他 : 外来透析患者の QOL の実態, 日本赤十字九州国際看護大学, intramural research report,2004; 2: 165-176. 9) Stojanovic M, Stefanovic V:Assessment of health-related quality of life in patients treated with hemodialysis in Serbia:influence of comorbidity, age,and income. Artificial Organ. 2007; 31: 53-60. ( 指導教官松坂誠應井口茂 ) 8-52-