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Technical Article

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電圧制御発振器 (VCO) の回路技術 (Voltage-Controlled Oscillator) 高周波の F アナログ回路総集編 (Ⅱ-3) 07.Oct._VCO_Ver. 0.0 800MHz から 60GHz 帯までの移動体通信応用 UHF/ マイクロ波 ミリ波帯 F アナログ回路設計応用 アールエフアナログ研究所 www.ranalog.co *) 執筆中の為 予告なく改編する場合があります F-VCO 回路技術まえがき 総集編 (Ⅱ-) 及び(Ⅱ-) で 携帯電話 無線 LN などの移動体通信に内蔵される FIC で必須の4つの基本回路技術の内 LN エルエヌエー; ローノイズ アンプ 及び Mixer ミキサ について述べました 続いて Mixer の変復調回路で使うローカル信号を発生するための発振源として必要となる電圧制御発振器 (VCO) ブイシーオー について記述します F 信号を携帯端末等ののアンテナで受信し LN で増幅した電気信号 ( 変調された サイン波 コサイン波 ) から 高周波の搬送波を取り除いて データを取り出す受信回路や 逆に ベースバンドで生成したアナログやデジタルのデータを高周波の搬送波に載せて送信するための送信回路に於いて Mixer に入力する周波数や振幅 位相の安定なローカル信号が必要になります これを端末内でチャネルごとに中心周波数をスイープし 安定に発生させるための源信号

を生成する高周波 (F) 発振回路として バイアス電圧を変化することで周波 数を広い範囲で制御する VCO 回路が必須となります 内容 3. 電圧制御発振器 (VCO) の原理と回路技術 4.PLL 水晶発振器の原理と回路技術 3. 電圧制御発振器 (VCO) の原理と回路技術 () 一般的な発振器の原理 電子回路を使った発振回路は 古くから3 極管や5 極管等の非線形動作をする真空管を利用した様々な方式が考え出された 代表的な発振回路として 例えば ) タンク回路 ( インダクタンスコイル L とコンデンサ C で構成 ) の出力側の並列共振回路と その一部を分けて入力側へフィードバックする回路で構成する分離型タイプ ) L と C//C の入力 出力一体型の共振回路を持つコルピッツ型 3) L//L と C の入力 出力一体型の共振回路を持つハートレー型 等が挙げられる また 4) 一方の出力を他方の入力にたすき掛けをした 対の真空管やトランジスタを使い 一定の周期で反転を繰り返し 矩形波やのこぎり波を発生するマルチバイブレータも発振回路の一種である 真空管の時代から変遷し トランジスタやダイオード およびIC 等の半導体素子の時代にそれらの非線形電子部品が変わっても 発振回路の原理は同じなので 今日の移動体通信用の FIC や F-LSI の時代に至るまで 発振器の構成要素として普遍的に内蔵され応用されている 図 3-a に 発振回路の安定時の時間軸を固定した 周波数軸での線形解析ファンクションを示した機能図を示す 発振回路は増幅器の出力の一部を 80 度位相回転して入力部にフィードバックする回路で繋がる 一方 反転型増幅器によって 信号の入力と出力はさらに 80 度反転する 従って トータルで 360 度位相が回転し 出力からフィードバックした入力が同相で増幅器に入力され続け 発振が増大し 持続する 式 (3-a) 式(3-b) に 外部からの継続的な入力 Vin がなくても発振条件が成

り立つ場合の関数式 および入力 / 出力間の位相 ( 出力の実数項と虚数項の Tangent の偏角で表す ) を示す 発振器は一般に 外部から 入力端に継続的に入る信号は無く 電源を立ち上げると 回路や素子内にランダムに発生して来る周波数の雑音電力が増幅 帰還を繰り返し 一定の時間や周期 (~ μs オーダーのレベル?) を経過後 出力端に安定な信号となって出てくるものである 発振回路の電源や内部の回路は トランジスタやダイオード等の半導体を用いた非線形増幅回路 及び /L/C の線形回路等で構成されている 電源を立ち上げた瞬間 素子内部で熱雑音やフリッカーノイズなどの様々な微弱な雑音信号が 発振器の入力端を介して 増幅回路に入力される この入力がさらに増幅され 出力端から入力にフィーフィードバックする動作を安定するまで繰り返す その発振出力の内 出力側の共振回路で共振した信号が 発振器の外部へ出力 入力側へのフィードバック 3 発振出力側 ( 発振ノード ) から逆に増幅回路の出力として増幅回路の内部へ戻り Tr. のドレイン電流を供給 の3 経路に分かれた電力供給を継続的に賄う 発振現象の全体像を時間軸と周波数軸を含め 統一的に完全に説明する理論は発表されて無い 古くは ナイキストがその生涯をかけて発振の根幹をなす 回路の安定 非安定条件や 発振が起こる場合の複素数で表すインピーダンスや周波数の軌跡範囲の研究などが基本になる 発振条件を 非線形電子回路条件で時間軸と周波数軸で同時に表すのは非常に困難であるので ここでは F アナログ回路で有用な理論で説明する 即ち 数学 物理学的に取り扱いが容易なパッシブ回路のファンクションとしての従来からの一般的な線形伝達関数による 図 3-a に示す 静的な発振回路条件に加え 電流 電圧で考える電子回路と共に 統一的に取り扱う独自のFアナログ理論見解として 図 3-b に示す ) 線形回路に基づく周波数軸での伝達関数機能解析 ( 発振安定時刻 t 固定 ) 図 3-a 及び 非線形電子回路として見た場合の発振条件を図 3-b に示す 安定発振時 外部入力 0 の伝達関数式を 式 (3-a ), 入力と出力の位相関係式 rguent rg { } を 式 (3-b) に示す ) 電気 電子回路理論の小信号電流と電圧で考えた発振回路条件の数式的な証明を 式 (3- ) に示す 以上 つを合わせて 連の動的な時間軸 および周波数軸での回路技術的な発振条件と考える手法を提案する

なお 最終的に設計 / 動作確認は 小信号及び大信号 Sパラメータと測定データとの一致の精度は 高周波回路経験則によるところが大である 本稿では簡易的な純抵抗オームの法則のマッチング回路理論内にとどめる 負性抵抗を含む S-パラメータやスミスチャートは別の機会とする 偏角 : アーギュメント rguent rg,{ } 実数と虚数の Tangent 角 余談で 07 年 最近話題の ( 拡張現実 ) は rgented eality

図発振回路周波数軸線形伝達関数解析図 Vo ) (3 80 ) ( ) ( arg, ) ( 0 0 b H G H G H G V V o o in 式出力条件 ) (3 a H G G V V in o 式 H G in V 増幅回路フィードバック回路

発振条件を電力 ( 電流ー電圧 ) で考える著者の独自見解 発振電力の電流分岐原理 ( 小信号 C 解析 ) V in 0 負性抵抗 : sall_signal G 負荷側を見た マッチング インピーダンス (W) +osc_load Tr.( トランジスタ ) 側を見たマッチング負性インピーダンス (W) 発振 Vo H (W) 注 図電子回路電流電圧安定発振条件小信号 注 *) 通常の増幅器を N 型トランジスタ (N-Tr.) で構成する場合 出力端の電流電圧の関係は正抵抗を示す 従って 出力電流は 負荷側から Tr. の出力端を通り Tr. のソース側 (GND) に流れる ( 電子は逆に ソースである GND 側から ドレイン出力端側に動く ) 一方 発振器を構成する N 型トランジスタ出力端は発振動作時 回路条件を満たせば負性抵抗を示す 即ち出力端は同じ正電圧で考えると そのトータルの発振出力電流は逆向きで Tr. の出力端から負荷側に向かって流れ Tr. 内部のドレイン電流より大きい電流が逆に流れ出してくる 発振器の発振ノードから Tr. 側 ( 左 ) と負荷側 ( 右 ) を見たそれぞれの回路インピーダンスは お互いのリアクタンス分を打ち消し Tr. 側を見た負性抵抗の /3 の大きさの負荷側の正抵抗とマッチングする 負荷側に繋がる発振ノードは 次の 3つの抵抗 ( 電流経路 ) に枝分かれしている ( 図 3-b 参照 ) と仮定する (Kato's F-Negative Ipedance Matching Theory). 発振出力として 発振器の外部端子に出力する負荷への抵抗経路 -. 発振器の増幅回路部分 {G(ω)} を構成する Tr. の入力側にフィードバックする抵抗経路 - 3. Tr. の出力端に戻り 増幅回路 {G(ω)} としてのドレイン電流を供給する抵抗経路 -3 発振ノードの電圧振幅を +(V) で規定すると N-Tr 出力側への W の内部入力により 3W が逆にでる (Tr. のドレインに流れ込んだ電力 ( 電流 ) より大きな電力 ( 電流 ) が逆に出てくる ; 負性抵抗 ) この出てきた電力 ( 電流 ) が 負性抵抗の /3 の+ 抵抗の 3 つの各経路に別れ その /3 が N-Tr 側の入力フィードバックと出力側ドレイン電流として それぞれ づつ流れ 残りの /3 の (V = W) の発振出力が発振器の外部に出てくる ( 実際の FIC の発振電圧振幅は +/- 0.33V 程度 発振出力電流は ~ 4 程度が設計の目安 ) W が発振器の入力側にフィードバックされ 残りの W が増幅器としての Tr. の出力端のドレイン電流として戻り この動作を繰り返し 安定な増幅 発振が持続する ( 大信号の発振条件は 大信号 Sパラメータ解析と実際のデバイスの動作時測定データと比較 )

発振器のマッチング電子回路理論で考えると 全ての電流分岐点 ( ノード ) で 負性の インピーダンスマッチングと 電流 電圧 ( 電力 ) の F のオームの法則 および キルヒホッフの法則に従い 回路の増幅 発振条件を満足する 発振ノードで 3 つの分岐回路の抵抗に並列分割され 負荷側を見た入力抵抗が -{-/3}= + /3 (3 つの抵抗の並列回路 ) に見え +/3 が Tr. に戻る経路となる P ( ) sall _ signal ( ) 3 発振回路 残 従 osc osc dp d 発振 発振 osc _ load ax sall _ signal evi * 出 sall _ signal 発振状態発振器負荷側外部端子出力側 全発振電力 見 発振状態 見 電流振幅 sall _ signal / 3 負荷回路条件, X 3 式 (3 ) osc 最適 3 ax ( ) ax 側 時最大発振出力 I ax osc _ load, 0 / 3 出力 得 X 出力端子側 最大電流振幅 発振器 電力 sall _ signal 戻 sall _ signal 出力 Tr. 出力端子側 負荷側発振器出力 負性抵抗 P ax

() 電圧制御発振器 (VCO) の原理 これまで 発振器の原理について 一般的 簡易的に説明される安定発振状態での周波数上の線形フィードバック機能条件に加え 著者の見解も加え 電子回路理論に基づく電流 電圧の負性抵抗による電流の3 分岐による発振条件について述べた これらを踏まえ 本題の VCO の原理について以下に説明する 初めに 図 3-c に FET を用いた F 回路で用いるコルピッツ型発振回路例を示す 入力のフィードバック回路として コルピッツ回路を構成するインダクタンス L と キャパシタンス C,C で発振周波数が決まる 図 3-c に示す共振回路に流れるループ電流を iin とすると 発振条件を満たす場合 入力インピーダンスがオープンに見え 並列共振となる この場合 共振電流 iin が C,Cの直列回路を経由して ループする したがって 発振回路の発振周波数 及び入力インピーダンス ( 容量 )Cin は 以下のように表される 発振周波数 : OSC LC in 入力容量 C in C C C C

C in L C i in C 図 3-c F で使う典型的なコルピッツ発振回路 (FET 例 ) 以上の一般的なコルピッツ回路を用いて VCO 回路を構成することができる 図 3-d にこのタイプで構成した実用的な VCO 回路例を示す

VCO(Voltage Controlled Oscillator) 入力バイアス電圧を制御し 出力周波数を変化させる発振器 PLL の主要発振回路部分で 安定なローカル信号を生成する 温度変化を含めた周波数安定性がキーポイント GHz 帯の高周波での広帯域動作が必要 高い周波数精度が求められる 入力バイアス電圧 出力周波数の線形動作特性がキーバラクタダイオードに直流の制御バイアス電圧を加え 接合容量 Cv を変動する 結果的に 等価のインダクタンス L が変わり コルピッツ発振器の発振周波数をスイープ出来る コルピッツ回路 特徴 : 位相雑音特性が優れているが 周波数可動範囲が狭い :KHz~ MHz ==> 携帯電話,PHS 向き DC 電源 周波数制御用 入力バイアス スイープ電源 L Cv バラクタ ダイオード C C 図 3-d VCO ( Voltage Controlled Oscillator) 回路例 -

Voltage Controlled Oscillator 回路例 - (CMOS 差動型 ) 図 3-e に別のタイプの広帯域の差動型 VCO 回路例をしめす 特徴 : 位相雑音特性はベストでないが 周波数可動範囲が広い : MHz ~ 50MHz ==>WLN, UWB, 4G 向き Q load Q c Q L QL バラクタ ダイオード Out+ バイアス QC スパイラルインダクタ FIC チップ内蔵のスパイラルインダクタのQの低下を防ぎ 位相雑音を下げるためには Out- メタルを厚くする メタル下の絶縁層を厚くする Dierential Inductor 図 3-e CMOS 差動型 VCO 回路例 CMOS 差動型でインダクタLと バイアスでコントロールされたバラクタダイオードのCの並列共振周波数 cを持つ内蔵したタンク回路が形成される この周波数でマルチバイブレータ動作により P-MOS と N-MOS たすき掛けのブートストラップ回路を介して 周期的に一方の出力側から他方の入力側に反転電圧のフィードバックがかかり その結果両出力が反転を繰り返し 発振が持続する VCO 等の発振器の出力信号特性は 中心の発振周波数での電力が限りなく大きく その他の周波数スペクトルは0に近いものが理想的である しかし 実際の発振器を構成する配線や浮遊の /L/C 等の線形素子の熱雑音 およびトランジスタ等の半導体接合部分のエネルギーバンド間でランダムに発生する非線形素子のフリッカーノイズ等により 中心周波数の両サイドに位相の偏移として周波数が離れた ローカル信号に寄与しない余分な位相雑音が発生する ローカル信号の両サイドに必要とする音声やデジタルデータを載せる

ので 発振出力の周波数スペクトル特性の良し悪しはこの位相雑音特性により 決まる. 位相雑音の式 e. FIC Syposiu 003 L( ) 0log lo Q load c FkT plo KvV 式 (3 3) 単位 L( Q P lo load F kt V l0 c ) : 全信号電力対 : 4.0 Kv : VCO 回路 ( 室温 発振出力平均 Hz / Volt 周波数 電力比周波数発振周波数周波数 低周波雑音電圧 離 Hz帯域内共振回路の Q が大きいほど VCO ゲインの最適値に対して位相雑音は小さくなる 位相雑音特性 ; 縦軸単位 - dbc 図 3- 位相雑音の周波数偏移特性

式 (3-3) に位相雑音に影響を与える様々な要因による位相雑音特性を表す式を示す 位相雑音特性は ローカルの中心周波数からの周波数偏移 の-n 乗で減少する 特に - 乗で減少する / ノイズをフリッカーノイズと称する 特に 半導体デバイス接合部で発生するフリッカーノイズや 線形素子の熱雑音などがデータ帯域に影響を及ぼす それ以外に 図 3-e で示す VCO 回路の共振回路として用いる 上述のインダクタやバラクタダイオードの共振特性の良さ (QL, Qc) が大きいほど 全体の位相雑音が低減できる VCO 回路の FIC 化で インダクタやバラクタダイオードを IC チップ内蔵にする場合 市販の外付けの単体の L や C の Q(~ 30) に比べ メタルの厚みや平面的なスパイラルインダクタ構造では限界があり Q は最大でも0 以下となるのは FIC 化の利点を考えればやむを得ないトレードオフであると考える 図 3- に 位相雑音特性の周波数偏移の簡略図を Q が低い場合と 高い場合について表した 実際には 中心周波数の両サイドに同じ左右対象的な位相雑音特性が現れる ( 図 3- では 周波数偏移の+ 側のみを図示 ー側は省略 ) もう つのVCOの性能を表す重要な要素として 入力の制御電圧と周波数 および出力電力の関係がある これらは できるだけ直線性を求められる 図 3-g に 例として コルピッツ型のVCOについて 制御電圧を変化した場合の 発振周波数 および出力電圧の可動特性を示す このタイプのVCOとして 十分良好なな線形性を保っている 図 3-g に 中心周波数からの周波数偏移と位相雑音特性についても 合わ せて示す

周波数 出力 入力制御電圧 図 3-g 制御電圧ー出力と周波数特性 位相雑音 周波数偏位 図 3-g 周波数偏移ー位相雑音特性 以上

補足 3- 増幅器の場合は その増幅特性をスカラー値やデシベル (db) 値の電圧増幅度 ( 電圧ゲイン VG や S に相当する ) 又は電力増幅度(PG) で表す この場合 入力電力を基準とした値がわかっているので 出力値や出力増幅度は単純に実数や db 値で理解できる しかし 発振器の場合は どれほどの入力に対しての出力や増幅度なのか それぞれの回路でさまざまで 分らない 従って 発振器の場合はスカラーやデシベルで 中心の発振周波数 と発振出力電圧振幅値 (V) { V (sin π t)} や電力値 ( W) を特性として用いる また 位相雑音特性は ローカル中心周波数の発振電力値があらかじめ 決まってないので 出力されたローカル中心周波数の発振電力に対し 相対的に何デシベル下がるかで表す デシベル相対表示の場合 -dbc ; と表示するので注意 読み方は マイナス デー ビー シー小文字の c は 中心周波数の搬送波 (Carrier Wave) に対し どのぐらい下がるかの意味を表す 研究所